国際ボクシング連盟(IBF)バンタム級王者の西田凌佑(りょうすけ)(28)=六島=が、24日にダブル世界戦が開催される東京・有明アリーナを訪れる。 もちろん、3度目の防衛戦を迎える世界ボクシング評議会(WBC)同級王者の中谷潤人(27)=…
国際ボクシング連盟(IBF)バンタム級王者の西田凌佑(りょうすけ)(28)=六島=が、24日にダブル世界戦が開催される東京・有明アリーナを訪れる。
もちろん、3度目の防衛戦を迎える世界ボクシング評議会(WBC)同級王者の中谷潤人(27)=M・T=を偵察するためだ。西田が中谷の試合を現地で見るのは3試合連続になるが、今回は意味合いが違う。王者同士の統一戦が現実味を帯びており、参謀の武市晃輔チーフトレーナー(43)とともに目を光らせる。
中谷が勝てば、試合後に何らかの動きが出る可能性がある。
「(中谷は)バンタム級で一番強いと評価されている選手だから、やりたい。もう研究はしているので、どれだけもらわずに、作戦を練っているパンチを当てられるか……」
今月中旬、大阪市住吉区の所属ジムで、西田は改めて中谷戦への思いを語った。
西田は昨年5月、プロ9戦目で世界初挑戦。下馬評を覆して世界的強豪エマヌエル・ロドリゲス(32)=プエルトリコ=を破った。
その後、バンタム級は主要4団体の王座を日本選手が占める状況に。当初は中谷と、世界ボクシング協会(WBA)王者だった井上拓真(29)=大橋=の対決が期待されたが、昨年10月に井上が陥落。現状、統一戦を望む中谷と、強い相手と戦いたい西田は「相思相愛」の関係だ。
奈良・王寺工高、近大出身の西田はプロ10戦全勝(2KO)。そのうち3試合は下馬評をひっくり返してきた。4戦目で元世界王者の比嘉大吾(29)=志成=に勝ち、9戦目でロドリゲスを攻略した試合もそうだったが、「一番のターニングポイント」は別にある。
2020年12月。まだ無名だった西田は、3戦目で大森将平(32)=WOZ=に挑んだ。大森は元日本王者で、世界挑戦経験もあり、一発で試合を終わらせるパンチ力を持つ強打者だった。
試合まで眠れない夜が続いた。武市チーフトレーナーの指示は、大森を主として見るジャッジの目を引くために「走って相手に向かっていけ」というものだった。
西田が振り返る。「ずっと倒されるイメージしか湧かなくて。武市さんの指示ができるのかどうか、考えると眠れなくなって」
試合開始のゴングが鳴ると、西田は勢いよく大森に詰め寄った。相手の意表を突き、結果的に判定で快勝する。快進撃の起点になる勝利だった。
「覚悟を決めた、という意味では、あの試合が一番大きかった」。もともと、マイペースなところがあったが、この1試合で「メンタルが強くなった」と感じている。
武市チーフトレーナーは今月、別の選手の合宿のためオーストラリアに向かったが、中谷戦に合わせて帰国する予定を立てた。そこに西田陣営の本気度が表れている。
では、西田はどこで中谷と勝負するのか――。
「ディフェンスです。前の手(右手)を使っての距離感。相手に打たせず、自分だけ当てるという感覚は、他の選手より持っていると思うので」
中谷については「ほとんど全ての面で自分より優れている」。特にパンチ力は「もらったら終わり」と警戒する。一方で中谷のディフェンスは「攻撃は最大の防御という感じ」。
西田が距離を支配して相手を空転させ、その先に勝利をつかみ取る。そんなイメージを持っている。(伊藤雅哉)