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JPWO2002072131A1 - 肝疾患治療薬 - Google Patents

肝疾患治療薬 Download PDF

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聡太郎 虫明
宏樹 近藤
宏樹 近藤
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Abstract

LSKL(Leu−Ser−Lys−Leu)又はその塩を肝疾患の治療、改善、予防等に優れた薬剤の有効成分として使用する。特に、肝実質細胞の障害や線維化を抑制し得る薬剤として有用である。更に、上記肝疾患等の障害を処置する方法も提供する。

Description

技術分野
本発明はLSKL(Leu−Ser−Lys−Leu)又はその塩を有効成分として含有する新規肝疾患薬に関する。各種の肝臓疾患(肝疾患)の治療、改善、進展防止、予防等のための薬剤として使用することができる。更に、本発明は、肝疾患の治療、改善、進展防止、予防等の処置方法等や、特定活性成分(上記有効成分)の肝疾患薬への使用にも関する。
背景技術
代表的な肝疾患である、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性非ウイルス性肝炎等の炎症性肝疾患、胆道閉鎖症をはじめとする胆汁鬱滞性肝疾患においては、種々の原因で肝実質細胞が障害を受け、肝の線維化が引き起こされ、その結果、門脈圧亢進を生じ、更に肝硬変、肝不全へと移行する。
現在、肝実質細胞の障害や線維化を抑制し得る選択的な薬物は存在しない。
線維化に関してはこれまで、TGFβが線維化の誘導に重要な役割を果たしていることが明らかになっている。TGFβは非活性の潜在型TGFβとして分泌され細胞外マトリックスに蓄積されている。このため、TGFβの活性制御は主に、非活性潜在型TGFβから活性型の変換過程にあると考えられている。潜在型TGFβはプラスミン(plasmin)等の蛋白分解酵素、活性酸素、インテグリン、トロンボスポンジン−1(thrombospndin−1;TSP−1)等によって活性型に変換されることが知られているが、生理的条件での活性化分子は確定されていない。
TSP−1の部分構造であるKRFK(Lys−Arg−Phe−Lys)は潜在型のTGFβの一部分であるN末端前駆体ペプチド(latency associated peptide;LAP)のLSKLと相互作用を起こす。その結果、LAPの構造変化が起こり、潜在型TGFβから切断され、活性化TGFβとなる。また、LAPの部分構造であるLSKLがTSP−1と競合して潜在型TGFβの活性化型TGFへの変換を阻害することが明らかとなっている。Crawford等はTGFβ1とTSP−1のノックアウトマウスを用いてTSP−1がin vivoで主要なTGFβの活性化因子であること、LSKLの投与はTSP−1ノックアウトマウス、TGFβノックアウトマウスと同様な膵臓と気管支の組織学的な変化をもたらすことを示した(Cell,93,1159−1170,1998参照。)。
これに対して、Abdelouahed等は血小板ではTSP−1がTGFβの活性化因子ではないことを示し(J.Bilo.Chem.,275,17933−17936,2000年参照。)、TSP−1によるTGFβの制御が全ての臓器で生理的普遍的に行われているか論議の分かれるところであった。
このような情況下に、肝臓疾患に対する優れた薬剤の開発が求められている。
発明の課題
本発明が解決しようとする課題は、各種の肝臓疾患に適用可能な優れた薬剤(予防薬を含む。)、特に肝線維化、或いはこのような肝線維化に繋がる肝実質細胞障害を抑制できる薬剤を開発することにある。
発明の開示
本発明者等は、前記テトラペプチドであるLSKL(以下、「LSKLペプチド」とも称する。)が肝臓において線維化抑制作用と共に肝実質細胞の変性、壊死の抑制、即ち障害抑制作用、保護作用を持つことを見出し本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、LSKLペプチド又はその塩を有効成分として含有することに特徴を有する肝疾患薬、好ましくは肝実質細胞障害抑制薬、より好ましくは肝線維化抑制薬に向けられる。上記有効成分として、LSKLの遊離体と塩とを併用して使用することもでき、当然のことながらこの内容もこの発明に含まれる。
LSKLは、ロイシル−セリル−リジル−ロイシン(Leu−Ser−Lys−Leu)を表し、本発明ではその塩の形態(医薬品として許容される塩)でも使用することができる。このテトラペプチドを構成するアミノ酸にはL−体及びD−体何れも採用可能であるが、L−体が好ましく、全てL−体のアミノ酸で構成されるLSKLを使用することがより好ましい。
本発明ではLSKL又はその塩を有効成分として使用するが、塩の例としては、例えば塩酸、硫酸、シュウ酸等の有機酸或いは無機酸との塩や、トリエチルアンモニウム塩、ナトリウム塩等の有機、無機塩基との塩等医薬品として許容できる塩を挙げることができる。
本発明において、肝疾患薬とは肝臓の疾患或いは肝臓の疾患を予防するために使用する薬剤であり、より詳しくは肝疾患の治療、改善、進展防止、予防等のために使用される薬剤が含まれる。
本発明は、別の形態として、LSKL又はその塩を生体内に投与することに特徴を有する肝疾患の治療、改善、進展防止、予防等、肝疾患に必要な処置方法(単に、「肝疾患の治療、改善又は予防方法」とも称する。)に存する。更に、LSKL又はその塩を生体内に投与することに特徴を有する肝実質細胞障害抑制方法、又は肝線維化抑制方法にも存する。
同様に、LSKLの遊離体と塩とを併用して投与することもでき、当然のことながらこの内容もこれらの発明に含まれる。
上記投与形態には、前記肝疾患薬(前記肝実質細胞障害抑制薬や、肝線維化抑制薬を含む。)を採用することができる。
本発明は、更に別の形態として、LSKL又はその塩の肝疾患薬への使用にも存する。
同様に、LSKLの遊離体及びその塩を併用使用することができ、当然のことながらこの内容もこの発明に含まれる。当該肝疾患薬(前記肝実質細胞障害抑制薬や、肝線維化抑制薬を含む。)については前記説明の通りである。
実施の形態
以下に本発明の実施の形態について説明する。
本発明の肝臓疾患薬を投与する対象については、肝臓疾患の治療、改善、進展防止、予防等を求めるものであれば特に制限は無いが、哺乳動物、通常はヒト(患者)に対して適用される。
本発明の薬剤が適用される肝疾患の種類については、特に制限は無い。代表的な肝疾患としてウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性非ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎等の炎症性肝疾患、胆道閉鎖症をはじめとする胆汁鬱滞性肝疾患、肝硬変、肝不全等を挙げることができる。特に、種々の原因で肝実質細胞が障害を受け、これに起因し、また起因することなく肝線維化を引き起こし、その結果として、門脈圧亢進、静脈瘤の形成、肝硬変、肝不全へ移行するような肝臓疾患に好ましく適用することができる。
本発明に使用するLSKLペプチドは公知(WO95/05191号国際公開公報等参照。)であり、公知の方法に基づいて容易に調製することが可能であり、例えば、後述の製造例に基づいて調製することもできる。
本発明の薬剤の投与形態については特に制限は無い。従って、経口投与、非経口投与(静脈内投与等)各種の投与形態が採用可能であり、本発明の薬剤の有効成分の入手については前記した通りであるが、注射投与等非経口投与が好ましい。
本発明の薬剤の投与量については、肝臓疾患の種類、症状の程度、製剤の形態等に応じて適当に選択される。例えば、有効成分のLSKLペプチドを注射投与する場合の投与量については、LSKLペプチドを患者に対して1日当たり0.01〜1000mg程度、より好ましくは0.05〜500mg程度、更に好ましくは0.1〜100mg程度使用することができる。重篤な場合には更に増量することもできる。投与の回数、時期については、数日に1回でも、または1日1回でも可能であるが、通常は1日当たり数回、例えば2〜4回に分けて、若しくは点滴等に混合して持続投与することができる。
一方、経口投与する場合には、上記注射投与に比べて十〜二十倍程度の投与量を基準に選択、投与することができる。
本発明においては、他の薬剤成分(医薬活性物質)と共に、例えば混合又は組み合わせて使用することができ、このような場合本発明で目的とする有効成分を含み本発明で目的とする前記薬理活性を示すものであれば本発明の薬剤である肝疾患薬に含まれる。
その他、薬理学的に許容し得る各種の製剤用物質(補助剤等として)を含むこともできる。製剤用物質は製剤の剤型により適宜選択することができるが、例えば、賦形剤、希釈剤、添加剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑走剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、可溶化剤等を挙げることができる。更に、製剤用物質を具体的に例示すると、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及びその他の糖類、タルク、牛乳蛋白、ゼラチン、澱粉、セルロース及びその誘導体、動物及び植物油、ポリエチレングリコール、及び溶剤、例えば滅菌水及び一価又は多価アルコール、例えばグリセロールを挙げることができる。
本発明の薬剤は、前述の如く公知の又は将来開発される様々な医薬製剤の形態、例えば、経口投与、腹腔内投与、経皮的投与、吸入投与等各種の投与形態に調製することができる。本発明の薬剤をこれ等様々な医薬製剤の形態に調製するためには公知の又は将来開発される方法を適宜採用することができる。
これ等様々な医薬製剤の形態として、例えば適当な固形又は液状の製剤形態、例えば顆粒、粉剤、被覆錠剤、錠剤、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、ジュース、懸濁液、乳濁液、滴下剤、注射用溶液、活性物質の放出を延長する製剤等を挙げることができる。
以上に例示した製剤形態にある本発明の薬剤には、薬効を奏するに有効な量の前記成分のLSKLを含有すべきことは当然のことであり、前記投与量等を参考にして有効成分を薬剤中に配合することができる。
その有効成分として、LSKL塩を使用する場合やLSKLの遊離体とその塩とを併用する場合等でも、前記LSKLについての説明に基づいて或いは知られている製剤技術を利用して、また各種の剤型に応じて必要な製剤を調製することができる。
前記の通り、本発明は、別の形態として、LSKL又はその塩を生体内に投与することに特徴を有する肝疾患の治療、改善又は予防方法、肝実質細胞障害抑制方法、或いは肝線維化抑制方法や、更に別の形態として、LSKL又はその塩の肝疾患薬への使用にも存する。
これらの発明については、何れも前記肝疾患薬(前記肝実質細胞障害抑制薬や、肝線維化抑制薬を含む。)についての説明や、後述の実施例等に基づいて、また必要により従来技術を参考にすることにより、容易に実施をすることができる。
好適な実施の形態
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれ等実施例により何等制約されるものではない。
(製造例)LSKLペプチドの製造
(保護ペプチドの合成)
PEアプライドバイオシステムズ社のペプチド自動合成機(ABI 433モデル)を使用し、プログラムに従ってC端より逐次Fmoc法による固相合成にてペプチド鎖を延長し目的の保護ペプチド樹脂の合成を行った。
出発アミノ酸樹脂担体はHMP−resin(1mmol,Wang−resin)を使用し、Leu,Ser(tBu),Lys(Boc)等通常のFmocアミノ酸誘導体を使用した。尚、ここに使用するアミノ酸には、全てL−体が使用された。
樹脂上へのペプチドの構築が終了した後、保護ペプチド樹脂を乾燥し、続いて脱保護に供した。
(固相樹脂からの切出しと脱保護)
得られた保護ペプチドの脱保護基とペプチドの樹脂担体からの切り離しはトリフルオロ酢酸処理によって行った。粗ペプチドをイソプロピルエーテルで沈殿させた後、0.1%トリフルオロ酢酸水によって抽出し、濾別により樹脂を除き、凍結乾燥体として得た。
(RP−HPLCによる精製)
続いて、粗ペプチドを逆相高速クロマトグラフィー(島津製作所、分取装置モデルLC8A、使用カラム 30X250mm,YMC SH−363−5 s−5 120A ODS)によりアセトニトリルー0.1%トリフリオロ酢酸水の系を用いて分取精製を行って目的とする表題精製ペプチド トリフルオロ酢酸塩を凍結乾燥粉末として得た。
以下、アセテート型Muromacにて処理し、塩交換により酢酸塩型とし配列表配列番号1に示す表題LSKLペプチドを調製した。
(実施例1)
前記製造例において調製されたLSKLペプチドの評価を行った。
4週令 70−80gのSDラット(日本エスエルシーより購入。)を生理食塩水投与群とLSKLペプチド投与群に割り付けた。1%濃度になるように生理食塩水に希釈したジメチルニトロソアミン(Dimethylnitrosamine;和光純薬工業より購入。)を10μl/kg量、腹腔内に連続3日間/週、4週間投与した。
前記ジメチルニトロソアミンの第1回目の投与から、各群それぞれ、生理食塩水、及びLSKLペプチド 100μg/ラットを連日、28日間、腹腔内投与した。経日的に体重、動物状態観察を行い、投与28日目にエーテル麻酔下で屠殺し、肝組織を回収した。
肝臓については重量を測定後、ホルマリン固定しヘマトキシリン−エオシン染色、アザン染色を実施した。臓器の線維化の程度はアザン染色組織切片を検鏡し、HAIスコア(hepatitis activity index score)で表示し、下記のような4段階の基準で評価を行った。
A: 線維形成無し、スコア 0;
B: 門脈域の線維性拡大、スコア 1;
C: 架橋性線維化(門脈域−門脈域、又は門脈域−中心静脈)、スコア 3;及び
D: 肝硬変、スコア 4。
尚、スコア1とスコア3の中間或いは移行形と見られる所見をスコア2とする。
肝小葉内の変性・壊死の程度はHE染色標本を検鏡し、HAIスコア(hepatitis activity index score)で表示した。具体的には下記の4段階の基準で評価を行った。
A: 無し(変性、壊死無し)、スコア 0;
B: 軽度(小葉若しくは結節の1/3以下に好酸体、肝細胞膨化、散在性の肝細胞壊死巣)、スコア 1;
C: 中等度(小葉若しくは結節の1/3から2/3に好酸体、肝細胞膨化、散在性の肝細胞壊死巣)、スコア 3;及び
D: 高度(小葉若しくは結節の2/3以上に好酸体、肝細胞膨化、散在性の肝細胞壊死巣)、スコア 4。
尚、スコア1とスコア3の中間或いは移行形と見られる所見をスコア2とする。
以上の結果を図1(肝細胞変性壊死抑制効果)及び図2(線維化抑制効果)に示した。
図1の結果から明らかなように、LSKLペプチド投与群では生理食塩水投与群に比べ肝細胞の変性壊死スコアが有意に低下した。(P<0.01)。更に、図2の結果から明らかなように、LSKLペプチド投与群では肝線維化スコアの抑制が観察された。
LSKLペプチド投与群では、生理食塩水投与群と比較し体重増加の亢進(図3参照。)、生存率の改善が観察された(図4参照。)。
LSKLペプチドの投与によりジメチルニトロソアミン誘発肝障害線維化モデルで肝実質細胞の変性壊死抑制及び線維化抑制が認められた。また、その結果が全身状態の改善(体重増加、生存率上昇)に繋がったと考えらる。
以上の結果から明らかなように、LSKLペプチドが肝疾患の薬剤として極めて優れていることが理解される。
発明の効果
本発明により、前記有効成分を使用する優れた肝疾患用の薬剤を提供することができる。特に、肝実質細胞の障害や線維化を抑制し得る薬剤として有用である。更に、前記有効成分を、好ましくは上記薬剤の形態で投与し、上記肝疾患等の障害の処置を行うことができる。
従って、本発明は産業上、特に医療、医薬品等の分野において極めて有用である。
【配列表】
Figure 2002072131

【図面の簡単な説明】
[図1]
実施例において得られた肝細胞変性壊死抑制効果を図示したものである。
図左側に対照群(生理食塩水)、右側にLSKL投与群について、それぞれスコアで評価した結果を示す(p<0.01)。
DMN:ジメチルニトロソアミン;Saline:生理食塩水。
[図2]
実施例において得られた線維化抑制効果を図示したものである。
図左側に対照群(生理食塩水)、右側にLSKL投与群について、それぞれスコアで評価した結果を示す(p<0.05)。
DMN:ジメチルニトロソアミン;Saline:生理食塩水。
[図3]
実施例において得られた実験動物SDラットの体重変化を図示したものである。■:LSKL;●:生理食塩水(Saline)。
縦軸:体重(BW)(g);横軸:薬物投与開始日からの経過日数(Day)。
[図4]
実施例において得られた実験動物SDラットの生存曲線を示したものである。■:LSKL;●:生理食塩水(Saline)。
縦軸:生存率(%);横軸:薬物投与開始日からの経過日数(Day)。

Claims (11)

  1. LSKL又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする肝疾患薬。
  2. 肝実質細胞障害抑制薬である請求の範囲1記載の肝疾患薬。
  3. 肝線維化抑制薬である請求の範囲1記載の肝疾患薬。
  4. LSKLを構成するアミノ酸が、全てL−体である請求の範囲1記載の肝疾患薬。
  5. 非経口投与用である請求の範囲1〜4何れか記載の肝疾患薬。
  6. LSKL又はその塩を生体内に投与することを特徴とする肝疾患の治療、改善又は予防方法。
  7. LSKL又はその塩を生体内に投与することを特徴とする肝実質細胞障害抑制方法。
  8. LSKL又はその塩を生体内に投与することを特徴とする肝線維化抑制方法。
  9. 当該投与する形態が請求の範囲1〜5何れか記載の肝疾患薬である請求の範囲6〜8何れか記載の方法。
  10. LSKL又はその塩の肝疾患薬への使用。
  11. 当該肝疾患薬が請求の範囲1〜5何れか記載のものである請求の範囲10記載の使用。
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