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JP4362780B2 - アナフィラトキシンC5aを不活性化するペプチド - Google Patents

アナフィラトキシンC5aを不活性化するペプチド Download PDF

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Description

敗血症、DIC、多臓器不全、アレルギー性疾患、虚血再環流障害、などを含む病態の起因物質のひとつとして働くC5aを不活性化する新規ペプチド、及び治療薬に関する。
C5aは74個のアミノ酸からなる分子量が約11000の糖タンパク質である。C5コンバーターゼであるC4b2aC3bやC3bBbC3bによってC5aとC5bに分解されることによって生成される。これはC5のN末端、すなわち補体の5番目の成分のタンパク質分解性切断により生成される(Ntlsson et al.,J.Immunol.114:815-822(1975))。C5a の生物学的性質は、急性及び慢性炎症過程の両者に関与する多数の細胞及び組織を通して拡大する(Hugli,CRC Crit.Rev.Immunol.,1:321-366(1981))。それらの性質のうち多くは免疫学的に有益である。C5a は、種々の病理学的状態に応答して宿主の防御機構を仲介することが見出されている。C5a は炎症応答、たとえば平滑微収縮、血管透過性の上昇、ヒト皮膚中に注入される場合、膨疹及び発赤の発生、肥満細胞からのヒスタミン放出、及び多形核白血球(PMNL)からの酸化群発及びリソソーム酵素放出の誘発に通常関連する広範囲の種類の特定の生物学的機能に関与する。C5a は、好塩基球、好酸球、単球及び好中球を包含するあらゆる循環する白血球細胞からの測定できる応答を刺激する(Hugli、前記;Bautsch et al.,Immunobiol.185:41-52(1992))。更に血管内皮細胞や神経細胞など、種々の細胞にもC5aに対するレセプター(C5aR)が存在することが発見されている。
C5aと多形核白血球ならびに他の標的細胞および標的組織との相互作用は、増大したヒスタミン放出、血管透過性、平滑筋収縮、ならびに好中球、好酸球、および好塩基球を含む炎症細胞の組織への流入を生ずる(Hugli,T.E.,Springer, Semin.Immunopathol.,7:193-219(1981))。C5aはまた、慢性炎症部位に蓄積する食作用性単核細胞の炎症効果の媒介において重要な役割を果たす(Allison, A.C.ら、H.U.Agents and Actions,8:27(1978))。C5aは、単球において走化性を誘導し得、そしてこれらの因子により誘起される好中球の応答と類似の方法で、単球にリソゾームの酵素を放出させ得る。C5aは抗体反応を増強することにより、特に炎症部位で免疫調節の役割を有する(Morgan,E.L.ら、J.Exp.Med.,155:1412(1982))ことが知られている。
それ故に、強い炎症反応に起因する血管炎や多臓器不全などではC5aの制御が治療法の1つとして期待されている。また、喘息や種々のアレルギー反応の増悪因子としてもC5aが働く場合があるので、C5aの制御が治療法の手段の一つとして期待されている。さらに、種々のショック症状にもアナフィラトキシンとしてC5aが関与する場合があるので、その場合にはC5aの制御が重要な治療法の1つとなる。したがって、C5aを不活化する作用を持つ本発明の相補性ペプチドを上記の病態などを含む種々の急性疾患等の治療薬として活用することができる。この目的のために、C5aを阻害する薬剤としてはC5aレセプターの阻害剤の開発や、C5aに直接働いてその作用を阻害するものとしてはC5aに対する抗体が開発されている。
例えば、特表平9−506258の発明では、C5a 類似体は、C5a(1−74)のC−末端領域:N′−Asn(64)-Ile(65)-Ser(66)-His(67)-Lys(68)-Asp(69)-Met(70)-Gln(71)-Leu(72)-Gly(73)-Arc(74)−C′(配列番号5)(C5a(1−74)のアミノ酸配列の内64−74)が開示されている。また、特許文献2では、C5aのアミノ末端から37番目から53番目のペプチド(PL37と命名)がC5aのアゴニストとして働くと共に、そのペプチドをMAPペプチドとして多荷にするとC5aレセプターを持つ細胞などにアポトーシスを誘導する作用を持つことを発見し、この部分(PL37)に対する相補性ペプチドで、ASGAPAPGPAGPLRPMFのアミノ酸配列からなるペプチド(mimetic"A"と命名)を報告している。
しかし、未だC5aを制御して敗血症、DIC、多臓器不全、アレルギー性疾患、虚血再環流障害、などを含む病態の増悪因子を押さえることができるものではなく、その出現が望まれている。
特表平9−506258号公報 特開2004−269520号公報
本発明は、C5aに直接結合してC5aの活性を阻害する新規ペプチド、及びC5aが関与する病態、敗血症、DIC(Disseminated Intrabascular Coagulation:播種性血管内凝固症候群)、多臓器不全、アレルギー性疾患、虚血再環流障害等の治療薬を提供する。
本発明は、上記事実に鑑み、C5aの活性に大きな役割を果たすと考えられるアミノ末端37番目から53番目のアミノ酸にかけての17個のアミノ酸より成るペプチドのアミノ酸配列を標的ペプチドとして用い、このペプチドに相補性値の高いペプチドを設計したものである。
本発明の第1の特徴は、アナフィラトキシンC5aに結合し、C5aの活性を阻害するペプチドであって、アミノ酸配列がアミノ酸1文字記号で表記するとASTAPARAGFPQMMQGLである17アミノ酸から成る配列番号1(ペプチド1)のペプチドである。
本発明の第2の特徴は、アナフィラトキシンC5aに結合し、C5aの活性を阻害するペプチドであって、アミノ酸配列がアミノ酸1文字記号で表記するとASYAPANGFASRFTEFFである17アミノ酸から成る配列番号2(ペプチド2)のペプチドである。
本発明の第3の特徴は、アナフィラトキシンC5aに結合し、C5aの活性を阻害するペプチドであって、アミノ酸配列がアミノ酸1文字記号で表記するとAYTMPGHAGIPRFTKMLである17アミノ酸から成る配列番号3(ペプチド3)のペプチドである。
本発明の第4の特徴は、アナフィラトキシンC5aに結合し、C5aの活性を阻害するペプチドであって、アミノ酸配列がアミノ酸1文字記号で表記するとASTAPARAGLPRFTYTLである17アミノ酸から成る配列番号4(ペプチド4)のペプチドである。
本発明の第5の特徴は、アナフィラトキシンC5aに結合し、C5aの活性を阻害するペプチドであって、アミノ酸配列がアミノ酸1文字記号で表記するとASTAPARTIGTRLTKMFである17アミノ酸から成る配列番号5(ペプチド5)のペプチドである。
本発明の第6の特徴は、アナフィラトキシンC5aに結合し、C5aの活性を阻害するペプチドであって、アミノ酸配列がアミノ酸1文字記号で表記するとAPTMOGQTIYTQLMPDFである17アミノ酸から成る配列番号6(ペプチド6)のペプチドである。
本発明の第7の特徴は、アミノ酸配列において、1若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換、修飾、若しくは付加され、かつC5aの活性を阻害する作用を有する請求項1から請求項6のいずれかに記載のペプチドである。本発明ペプチドを化学修飾したり、アミノ酸を置換するなどによって、より活性が高く安定なペプチドを得ることが出来る。さらに、本発明ペプチドを直接薬剤として用いることも可能であるが、本発明ペプチドをプロトタイプペプチドとして高次構造を解析して、それより得られる知見にもとづいて、類似構造を有する化学合成薬剤の開発などに用いることもできる。
本発明の第8の特徴は、アナフィラトキシンC5aに結合し、C5aの活性を阻害する請求項1から請求項7に記載のいずれかのペプチドを少なくとも一つ含有するC5aが関与する疾病の予防、治療剤である。C5aが関与する病態としては、例えば、敗血症、DIC(Disseminated Intrabascular Coagulation:播種性血管内凝固症候群)、多臓器不全、アレルギー性疾患、虚血再環流障害等が例示できる。本発明は、アナフィラトキシンC5aに結合し、C5aの活性を阻害するペプチドと、C5aが関与する病態の予防、治療薬を提供することができる。
本発明は、C5aに直接結合してC5aの活性を阻害する新規ペプチドの提供、及びC5aが関与する病態、敗血症、DIC(Disseminated Intrabascular Coagulation:播種性血管内凝固症候群)、多臓器不全、アレルギー性疾患、虚血再環流障害等の重篤な病態の予防、治療薬を提供することができる。
上記の病態の急性期の患者を救命するには緊急に大量の薬剤を投与する必要があるが、本発明のペプチドを含む予防、治療薬は体内での分解が速いので、大量に投与しても投与を中止すれば速やかに分解消失すると考えられる。従って、薬剤が蓄積して副作用が発症したり、後遺症の懸念が少なく、緊急時に患者を救命するために本薬剤は有用な手段を提供することが出来る。さらに、薬理効果を有する当該ペプチドの高次構造をシュミレートして、その構造を模倣した化学合成薬剤を作製するプロトタイプとして応用することもできる効果を有している。
以下、本発明を具体的に説明する。本発明で使用するアミノ酸と三文字表記と一文字表記は以下の()内に示す。すなわち、天然には、20種類のアミノ酸が存在し、この20種類のアミノ酸はアルキル基の構造によって、親水性アミノ酸、疎水性アミノ酸及び中間型アミノ酸に分けることができる。親水性アミノ酸は、グルタミン(Gln;Q)、グルタミン酸(Glu;E)、リジン(Lys;K)、アスパラジン(Asn;N)、アスパラジン酸(Asp;D)、タイロシン(Tyr;Y)及びヒスチジン(His;H)である。疎水性アミノ酸としてはバリン(Val;V)、ロイシン(Leu;L)、イソロイシン(Ile:I)、フェニルアラニン(Phe;F)、及びメチオニン(Met;M)が含まれる。中間型のアミノ酸は、トリプトファン(Trp;W)、アルギニン(Arg;R)、グリシン(Gly;G)、システイン(Cys;C)、セリン(Ser;S)、プロリン(Pro;P)、アラニン(Ala;A)、及びスレオニン(Thr;T)である。
C5aのアミノ末端から37番目から53番目のペプチドがC5aのアゴニストとして働くと共に、そのペプチドをMAPペプチドとして多荷にするとC5aレセプターを持つ細胞などにアポトーシスを誘導する作用を持つことを発見した。そこで、この部分に対する相補性ペプチドを設計し、アミノ酸17個からなるペプチドを得た。
このようにして得られたペプチドをC5aが関与する病態、敗血症、DIC(Disseminated Intrabascular Coagulation:播種性血管内凝固症候群)、多臓器不全、アレルギー性疾患、虚血再環流障害等の予防、治療剤として使用する場合は、治療的有効量の1つまたは複数の上記のペプチドを含む薬学的に許容し得る製剤が、1つまたは複数の薬学的に許容し得る担体(添加剤)および/または希釈剤とともに処方される。以下で詳細に説明するように、本発明の予防、治療剤は、以下のことに適応したものを含めて、固体または液体での投与のために具体的に処方され得る:(1)経口投与、例えば、水薬(水溶液もしくは非水溶液または懸濁液)、錠剤、巨丸剤、粉末薬、顆粒剤、舌に塗布するためのペースト;(2)吸入薬、ドライパウダーとスプレータイプがあり、気管支への投与と肺内投与により粒子径を変える。(3)非経口投与、例えば滅菌溶液もしくは懸濁液として例えば皮下、筋内もしくは静脈内等への注射、その他胸腔、腹腔、関節腔、脳脊髄腔等の体腔内投与;(4)局所応用、例えば皮膚に応用されるクリーム、軟膏またはスプレーとして;または(5)膣内または直腸内に、例えば膣座薬、クリームまたは発泡剤として。しかし、いくつかの実施形態では、本発明の化合物を単に滅菌水に溶解または懸濁してもよい。
「治療的有効量」とは、本明細書で使用される場合、いずれの医療にも適用可能な妥当な便益/リスク比で、何らかの所望の予防、治療効果を生じるために有効な作用物質または組成物の量を意味する。
「薬学的に許容し得る」とは、本明細書では、正しい医学的判断の範囲内で、妥当な便益/リスク比に見合って、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応等の問題や合併症なしに、人間および動物の組織に接触しての使用に好適な、化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を指すために使用される。
「薬学的に許容し得る担体」とは、本明細書で使用される場合、体の一器官または一部から体の別の器官または一部へ本発明のアゴニストを運搬または輸送することに関与する液体または固体の充填剤、希釈剤、補形薬、溶剤またはカプセル化材料のような、薬学的に許容し得る材料、組成物または賦形剤を意味する。各担体は、剤形の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味で「許容し得る」ものでなければならない。
薬学的に許容し得る担体として働き得る材料のいくつかの例には以下のものがある:(1)ラクトース、グルコース、トレハロースおよびスクロースのような糖;(2)トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンのようなデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのようなセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび座薬ワックスのような補形薬;(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油のような油;(10)プロピレングリコールのようなグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのようなポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩液;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;ならびに(21)薬物処方で使用される他の非毒性の適合物質。いくつかの実施形態では、薬物製剤は非発熱性である。すなわち、患者の体温を上昇させない。
この点で「薬学的に許容し得る塩」という用語は、本発明の化合物の比較的非毒性の無機または有機酸付加塩を指す。これらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製中にin situで調製してもよく、または本発明の精製された化合物をその遊離塩基形態で好適な有機または無機酸と別個に反応させ、こうして形成された塩を単離することによって調製してもよい。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩等がある。(例えば、Berge et al. (1977), J. Pharm. Sci. 66:1-19、を参照されたい。)
本発明の作用物質の薬学的に許容し得る塩としては、例えば非毒性の有機または無機酸からの、化合物の従来の非毒性塩または第四アンモニウム塩がある。例えば、このような従来の非毒性塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等のような無機酸から誘導されたもの;ならびに酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸等のような有機酸から調製された塩がある。
他の場合、本発明の作用物質は、1つまたは複数の酸性官能基を含んでもよく、したがって、薬学的に許容し得る塩基と薬学的に許容し得る塩を形成することが可能である。これらの例で「薬学的に許容し得る塩」という用語は、本発明の化合物の比較的非毒性の無機または有機塩基付加塩を指す。これらの塩も同様に、作用物質の最終的な単離および精製中にin situで調製してもよく、または精製された作用物質をその遊離酸形態で、薬学的に許容し得る金属カチオンの水酸化物塩、炭酸塩または炭酸水素塩のような好適な塩基と、アンモニアと、または薬学的に許容し得る有機第一、第二または第三アミンと別個に反応させることによって調製してもよい。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびアルミニウム塩等がある。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン等がある。(例えば、Berge et al. (1977)、前掲、を参照されたい。)
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、被覆剤、甘味料、香味剤および香料、保存料および酸化防止剤もまた組成物中に存在してもよい。
薬学的に許容し得る酸化防止剤の例には以下のものがある:(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性酸化防止剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロール等のような油溶性酸化防止剤;ならびに(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤。
本発明の剤形は、経口、経鼻、局所(口内および舌下を含む)、直腸、膣および/または非経口投与に好適なものを含む。剤形は、単位投薬形態で都合よく差し出されてもよく、薬学分野で周知のいかなる方法によって調製されてもよい。担体材料と組み合わせて単一投薬形態を作製することができる活性成分の量は、治療されるホスト、特定の投与方式に応じて変わるであろう。担体材料と組み合わせて単一投薬形態を作製することができる活性成分の量は一般に、治療効果を生じる化合物の量であろう。一般に、100パーセントのうち、この量は、約1%から約99%まで、好ましくは約5%から約70%まで、最も好ましくは約10%から約30%までの範囲の活性成分である。
これらの剤形または組成物を調製する方法は、本発明の1つまたは複数の作用物質を担体と、および随意に1つまたは複数の副成分と結びつけるステップを含む。一般に、剤形は本発明の1つまたは複数の作用物質を液体担体、もしくは微粉化した固体担体、またはその両方と均一かつ緊密に結びつけ、必要であれば製品を整形することによって調製される。
経口投与に好適な本発明の剤形は、カプセル、カシェ、丸薬、錠剤、ロゼンジ(味付けされた主薬、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカント、を用いる)、粉末、顆粒、の形態でもよく、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油もしくは油中水液体乳剤として、またはエリキシルもしくはシロップとして、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴムのような不活性基剤を用いる)および/または含嗽剤等としてでもよく、それぞれ活性成分として所定量の本発明の化合物を含む。本発明の作用物質は、巨丸剤、舐剤、またはペーストとして投与されてもよい。
経口投与のための本発明の固体投薬形態(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉末薬、顆粒剤等)では、活性成分は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムのような1つまたは複数の薬学的に許容し得る担体、および/または以下のもののいずれかと混合される:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、トレハロースおよび/またはケイ酸のような充填剤または増量剤;(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアラビアゴムのような粘結剤;(3)グリセロールのような保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤;(5)パラフィンのような溶解遅延剤;(6)4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;(7)セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土のような吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物のような潤滑剤;ならびに(10)着色剤。カプセル、錠剤および丸薬の場合、薬物組成物は緩衝剤を含んでもよい。同様の種類の固体組成物が、ラクトースまたは乳糖のような補形薬と、高分子量ポリエチレングリコール等とを用いたソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル内の充填剤としても使用可能である。
錠剤は、圧縮または成形によって、随意に1つまたは複数の副成分とともに、作製され得る。圧縮された錠剤は、粘結剤(例えば、ゼラチンもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、グリコール酸ナトリウムデンプンもしくは架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を用いて調製され得る。成形タブレットは、不活性液体希釈剤で湿潤化された粉末化合物の混合物を好適な機械で成形することによって作製され得る。
糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒剤のような、本発明の薬物組成物の錠剤等の固体投薬形態は、随意に、刻み目を付けられ、または薬物調剤分野において周知の腸溶性被膜等の被膜のような被膜および殻を用いて調製されてもよい。それらは、例えば、所望の放出プロファイルを提供するための種々の比率でのヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いて、内部の活性成分の緩徐なまたは制御された放出を提供するように調剤されてもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用直前に滅菌水等の滅菌注射可能媒質に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌してもよい。これらの組成物は、随意に乳白剤を含んでもよく、胃腸管のある特定の部分のみで、またはそこで優先的に、随意に遅延したやり方で、1つまたは複数の活性成分を放出する組成であってもよい。使用可能な埋込み組成物の例として、ポリマー物質およびワックスがある。活性成分は、適当であれば1つまたは複数の上記の補形薬とともに、マイクロカプセル化された形態であってもよい。
本発明の化合物の経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に許容し得る乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルがある。液体投薬形態は、活性成分に加えて、例えば水や他の溶媒のような当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブタジエングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルのような可溶化剤および乳化剤、およびそれらの混合物を含んでもよい。
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味剤、着色剤、香料および保存剤のような補助薬を含んでもよい。
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物のような懸濁剤を含んでもよい。
直腸または膣投与のための本発明の薬物組成物の剤形は、座薬として提示され得る。この座薬は、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、座薬ワックスまたはサリチル酸塩を含む1つまたは複数の好適な非刺激性補形薬または担体と、本発明の1つまたは複数の作用物質を混合することによって調製することが可能であり、室温で固体であるが、体温では液体であるため、直腸または膣腔で融解し、活性化合物を放出することになる。
膣投与に好適な本発明の剤形はまた、当技術分野で適当であることが知られているような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡またはスプレー剤形も含む。
本発明の1つまたは複数の作用物質の局所的または経皮的投与の投薬形態は、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入薬を含む。活性作用物質は、薬学的に許容し得る基材と、および必要であれば保存料、緩衝液、または推進剤と、滅菌条件下で混合してもよい。
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の活性化合物に加えて、動物または植物脂、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物のような補形薬を含んでもよい。
粉末およびスプレーは、本発明の化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物のような補形薬を含んでもよい。スプレーは、塩化フッ化炭化水素や、ブタンおよびプロパンのような揮発性非置換炭化水素のような通例の高圧ガスをさらに含んでもよい。
経皮的パッチは、本発明の作用物質を、体に制御して配送するという更なる利点を有する。このような投薬形態は、適当な媒質に本発明の化合物を溶解または分散させることによってなされ得る。吸収増進剤を用いて、皮膚を横切る本発明の作用物質のフラックスを上昇させることも可能である。このようなフラックスの速さは、速さ制御膜を設けるか、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に化合物を分散させるかのいずれかによって制御することができる。
非経口投与に好適な本発明の薬物組成物は、本発明の1つまたは複数の化合物とともに、1つまたは複数の薬学的に許容し得る滅菌等張水溶液または非水溶液、分散剤、懸濁液もしくは乳剤、または使用直前に滅菌注射可能溶液または分散剤中で戻すことが可能な滅菌粉末を含み、これは酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、調剤を目的レシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは濃縮剤を含み得る。
本発明の薬物組成物で使用可能な好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびそれらの好適な混合物、オリーブ油のような植物油、ならびにオレイン酸エチルのような注射可能有機エステルがある。固有の流動性は、例えば、レシチンのような被覆材料の使用によって、分散剤の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
これらの組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤のような補助薬を含んでもよい。微生物の活動の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノール等の種々の抗菌剤および抗真菌剤の含有によって確保し得る。糖、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に含めると望ましいかもしれない。さらに、注射可能薬物形態の持続性吸収が、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる作用物質の含有により引き起こされ得る。
本発明の化合物は、薬剤としてヒトおよび動物に投与される場合、化合物それ自体で与えられてもよく、または、薬学的に許容し得る担体とともに例えば0.1〜99.5%(より好ましくは、0.5〜90%)の活性成分を含む薬物組成物として与えられてもよい。
以下に本発明のペプチドのC5aの刺激によって起こるカルシュウムインフラックスに対する影響を調べた結果を示すが、本実施例は、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定することは意図していない。
ヒト末梢血を静脈から採血し、比重遠心法などを用いて、好中球を分離した。この分離した好中球に蛍光指示薬(Fula2)を取り込ませ、好中球にC5aを作用させたときに起こるカルシュウムインフラックスの測定を浜松フォトニックスのアルガス装置で検出した。
その結果、700 pMのC5aを作用させると、C5aの刺激によって起こるカルシュウムインフラックスが蛍光シグナルとして検出される(図1:左上)。この700 pMのC5aに配列番号1(ペプチド1)を700 nM(図1:右上)あるいは70 nM〔図1:左2段目〕添加するとC5aの活性を完全に抑制した。C5aの対照群に比較して配列番号1のペプチド1は700 nMでは44%の活性で、抑制が認められた(図1:3段目)。
ヒト末梢血を静脈から採血し、比重遠心法などを用いて、好中球を分離した。この分離した好中球に蛍光指示薬(Fula2)を取り込ませ、好中球にC5aを作用させたときに起こるカルシュウムインフラックスの測定を浜松フォトニックスのアルガス装置で検出した。
その結果、700 pMのC5aを作用させると、C5aの刺激によって起こるカルシュウムインフラックスが蛍光シグナルとして検出される(図2:左上)。この700 pMのC5aに配列番号2(ペプチド2)を700 nM(図2:右上)、あるいは70 nM(図2:左2段目)、7nM(図2:右2段目)を添加するとC5aの活性を抑制した。C5aの活性はペプチド2を700nMの添加では47%、70nMでは50%、および7 nMでも87%の活性を示した。この結果、ペプチド2は70nM以上で強い抑制作用を有しており、7nMの添加でもある程度の抑制が認められた(図2:3段目)。
ヒト末梢血を静脈から採血し、比重遠心法などを用いて、好中球を分離した。この分離した好中球に蛍光指示薬(Fula2)を取り込ませ、好中球にC5aを作用させたときに起こるカルシュウムインフラックスの測定を浜松フォトニックスのアルガス装置で検出した。
その結果、700 pMのC5aを作用させると、C5aの刺激によって起こるカルシュウムインフラックスが蛍光シグナルとして検出される(図3:左上)。この700 pMのC5aに配列番号3(ペプチド3)を700 nM(図3:右上)、あるいは70 nM(図3:左2段目)を添加するとC5aの活性を抑制した。C5aの活性はペプチド3を700nMの添加では14%、70nMの添加では74%の活性を示した。この結果、ペプチド3は700nM以上の添加で非常に強い抑制作用が認められた(図3:3段目)。
ヒト末梢血を静脈から採血し、比重遠心法などを用いて、好中球を分離した。この分離した好中球に蛍光指示薬(Fula2)を取り込ませ、好中球にC5aを作用させたときに起こるカルシュウムインフラックスの測定を浜松フォトニックスのアルガス装置で検出した。
その結果、700 pMのC5aを作用させると、C5aの刺激によって起こるカルシュウムインフラックスが蛍光シグナルとして検出される(図2:左上)。この700 pMのC5aに配列番号4(ペプチド4)を700 nM(図4:右上)、あるいは70 nM(図4:左2段目)、7nM(図4:右2段目)、700pM(図4、左3段目)を添加するとC5aの活性を抑制した。C5aの活性はペプチド4を700nMの添加では21%、70nMでは24%、および7 nMで30%の活性を示した。この結果、ペプチド4は7nM以上の濃度で非常に強い抑制作用を有していることが認められた(図4:4段目)。
ヒト末梢血を静脈から採血し、比重遠心法などを用いて、好中球を分離した。この分離した好中球に蛍光指示薬(Fula2)を取り込ませ、好中球にC5aを作用させたときに起こるカルシュウムインフラックスの測定を浜松フォトニックスのアルガス装置で検出した。
その結果、700 pMのC5aを作用させると、C5aの刺激によって起こるカルシュウムインフラックスが蛍光シグナルとして検出される(図2:左上)。この700 pMのC5aに配列番号5(ペプチド5)を700 nM(図5:右上)、あるいは70 nM(図5:左2段目)を添加するとC5aの活性を抑制した。C5aの活性はペプチド5を700nMの添加では12%、70nMでは88%の活性を示した。この結果、ペプチド5は700nMで強い抑制作用を有していること判明した(図5:3段目)。
ヒト末梢血を静脈から採血し、比重遠心法などを用いて、好中球を分離した。この分離した好中球に蛍光指示薬(Fula2)を取り込ませ、好中球にC5aを作用させたときに起こるカルシュウムインフラックスの測定を浜松フォトニックスのアルガス装置で検出した。
その結果、700 pMのC5aを作用させると、C5aの刺激によって起こるカルシュウムインフラックスが蛍光シグナルとして検出される(図6:左上)。この700 pMのC5aに配列番号6(ペプチド6)を700 nM(図6:右上)、あるいは70 nM(図6:左2段目)を添加するとC5aの活性を抑制した。C5aの活性はペプチド6を700nMの添加では66%、70nMでは81%の活性を示した。この結果、ペプチド6は70nM以上で抑制作用を有していることが認められた(図6:3段目)。
以上の結果から、ペプチド1からペプチド6は、それぞれC5aの活性を抑制することが明らかとなった。
C5aの刺激によって起こるカルシュウムインフラックスに対する配列番号1(ペプチド1)の作用を示す図面である。 C5aの刺激によって起こるカルシュウムインフラックスに対する配列番号2(ペプチド2)の作用を示す図面である。 C5aの刺激によって起こるカルシュウムインフラックスに対する配列番号3(ペプチド3)の作用を示す図面である。 C5aの刺激によって起こるカルシュウムインフラックスに対する配列番号4(ペプチド4)の作用を示す図面である。 C5aの刺激によって起こるカルシュウムインフラックスに対する配列番号5(ペプチド5)の作用を示す図面である。 C5aの刺激によって起こるカルシュウムインフラックスに対する配列番号6(ペプチド6)の作用を示す図面である。

Claims (2)

  1. アナフィラトキシンC5aに結合し、C5aの活性を阻害するペプチドであって、アミノ酸配列がアミノ酸1文字記号で表記するとASTAPARAGLPRFTYTLである17アミノ酸から成る配列番号4(ペプチド4)のペプチド。
  2. アナフィラトキシンC5aに結合し、C5aの活性を阻害する請求項1に記載のペプチドを含有するC5aが関与する敗血症、DIC、多臓器不全、アレルギー性疾患、虚血再環流障害の予防、治療剤。
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