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JP7277401B2 - 制振構造 - Google Patents

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Description

本発明は、床面に対する構造物の振動を低減する制振構造に関する。
従来より、構造物の振動を低減する制振部材として、超弾性合金材を用いることが提案されている(特許文献1~3参照)。
特許文献1には、構造物の曲げ変形する柱に、上層から下層へ数層に亘って引張り材が取り付けられた構造物の減衰装置が示されている。引張り材の途中には、超弾性合金材によるジョイント部が設けられ、プレストレスが導入されている。
特許文献2には、締結具を用いて建造物に取り付けられた制振部材が示されている。この制振部材は、Al:7.5~9質量%、Mn:8~14質量%を含み、さらにS を0.001~0.5質量% を含み、残部Cuからなる超弾性合金からなる。
特許文献3には、鋼材と、この鋼材に直列に接合された超弾性合金材と、超弾性合金材の伸びを規制する伸び規制部材と、を有する制振部材が示されている。
特開平7-34718号公報 特開2009-52097号公報 特開2013-87908号公報
超弾性合金を使用した耐震性能の高い制振構造を提供することを目的とする。
本発明者らは、ユニット式ラック倉庫において、床面に対するラックの振動を低減する制振構造として、超弾性合金からなるばね部材とオイルダンパとを並列に配置し、これらばね部材とオイルダンパの両端同士を連結することで、ばね部材およびオイルダンパによって加速度を低減しつつ、大地震時には過大な変形を防止できる点に着眼して開発を行い、本発明に至った。
第1の発明の制振構造(例えば、後述の制振構造20、40)は、床面(例えば、後述の床面2)に対する構造物(例えば、後述のラック3)の振動を低減する制振構造であって、前記床面と前記構造物との間に設けられて鉛直方向に延びる超弾性合金からなるばね部材(例えば、後述のばね部材21B、41)と、前記床面と前記構造物との間に設けられて振動を減衰するオイルダンパ(例えば、後述のオイルダンパ22、42)と、を備え、前記ばね部材および前記オイルダンパは、並列に配置されて上下両端部同士が連結されていることを特徴とする。
超弾性合金は、繰り返し荷重によるひずみが約1/10以上になっても、ひずみと応力とが比例関係を示すハードニング特性を有する。
この発明によれば、大きな地震が発生しても、超弾性合金のハードニング特性により、ばね部材が引張力に抵抗するとともに、オイルダンパが構造物の振動を減衰させる。よって、構造物の振動を確実に低減できるから、耐震性能が向上する。
第2の発明の制振構造は、前記ばね部材および前記オイルダンパは、それぞれ、コンクリート体(例えば、後述のコンクリート体45)に埋設されていることを特徴とする。
この発明によれば、超弾性合金からなるばね部材をコンクリート体の内部に埋設したので、ばね部材に圧縮力が作用した場合に、コンクリート体がばね部材の変形を拘束して、ばね部材の座屈を防止できる。よって、ばね部材を圧縮材としても利用できる。
また、オイルダンパをコンクリート体の内部に埋設したので、オイルダンパに圧縮力が作用した場合に、コンクリート体がオイルダンパの変形を拘束して、オイルダンパの座屈を防止できる。
第3の発明の制振構造は、前記構造物は、床面に設けられた略V字形状または棒状の支持部材(例えば、後述の支持部材12)と、当該支持部材の頂部に設けられた柱部材(例えば、後述の柱部材13)と、を備え、前記ばね部材およびオイルダンパは、前記床面と前記柱部材の下端部との間に設けられることを特徴とする。
この発明によれば、構造物の自重は支持部材を介して床面で支持しつつ、構造物の倒れ止めとしてばね部材が抵抗することで、構造物を制振化できる。
本発明によれば、超弾性合金を使用した耐震性能の高い制振構造を提供できる。
本発明の第1実施形態に係る制振構造が設けられたユニット式ラック倉庫の縦断面を示す模式図である。 図1のユニット式ラック倉庫の破線Aで囲んだ部分の拡大図である。 制振構造のばね部材を構成する超弾性合金のひずみ-応力関係を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る制振構造が設けられたユニット式ラック倉庫の縦断面を示す模式図である。 図4のユニット式ラック倉庫の破線Bで囲んだ部分の拡大図および断面図である。 ユニット式ラック倉庫の地震時の挙動についてのシミュレーションの説明図である。 ユニット式ラック倉庫のシミュレーション結果を示す図である。 本発明の変形例に係る制振構造が設けられたユニット式ラック倉庫の縦断面を示す模式図である。
本発明は、ユニット式ラック倉庫のラックの振動を低減する制振構造である。第1実施形態では、制振構造は、略V字形状の支持部材を備えており、第2実施形態では、制振構造は、ばね部材およびオイルダンパが埋設されたコンクリート体を備えている。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る制振構造20が設けられたユニット式ラック倉庫1の縦断面を示す模式図である。図2は、図1の破線Aで囲んだ部分の拡大図である。
ユニット式ラック倉庫1は、床面2と、この床面2の上に二列に設けられてパレットが複数段に亘って収納された構造物としてのラック3と、を備える。
ラック3のフレーム10は、床面2に支点11でピン接合された略V字形状の支持部材12と、支持部材12の2つの頂部に設けられた一対の柱部材13と、一対の柱部材13同士を連結するブレース14および水平部材15と、を備える。
制振構造20は、床面2の上に設けられたラック3の振動を低減するものである。制振構造20は、床面2とフレーム10の水平方向一端側との間に設けられて鉛直方向に延びるばね部材21Aと、床面2とフレーム10の水平方向他端側との間に並列に設けられて鉛直方向に延びるばね部材21Bおよびオイルダンパ22と、を備える。具体的には、ばね部材21Aは、床面2と一方の柱部材13との間に設けられ、ばね部材21Bおよびオイルダンパ22は、床面2と他方の柱部材13との間に設けられている。また、これにより、ばね部材21Aとばね部材21Bおよびオイルダンパ22とは、フレーム10の支点11を挟んで配置されている。
ばね部材21A、21Bは、形状記憶合金(SMA)のうち変態点が常温以下である超弾性合金からなる。この超弾性合金は、具体的には、Cu-Al-Mn合金やCu-Al-Ni合金など銅系の合金である。この超弾性合金は、図3に示すように、繰り返し荷重によるひずみが1/10を超えても、ひずみεと応力σとが比例関係を示すハードニング特性を有する。
また、この超弾性合金は、非線形ばねである。具体的には、図3に示すように、-ε≦ε≦εの場合、ひずみεと応力σとが比例関係を示す。しかし、-ε≦ε<-εおよびε<ε≦εの場合、ひずみεが増大しても応力σが増大しない。また、ε<-εおよびε<εの場合、再び、ひずみεと応力σとが比例関係を示す(ハードニング特性)。ここで、εは、約1/10である。
オイルダンパ22は、オイルの粘性を利用して、フレーム10の振動を減衰するものである。
床面2上には、下部プレート23が設けられており、フレーム10の水平方向他端側の柱部材13の下端部には、上部プレート24が設けられている。
ばね部材21Bおよびオイルダンパ22は、下端部が下部プレート23に接合され、上端部が上部プレート24に接合されている。これにより、ばね部材21Bおよびオイルダンパ22の両端部同士が、下部プレート23および上部プレート24により連結されている。
以上のユニット式ラック倉庫1では、ラック3の自重は、フレーム10下端の支点11を介して床面2に支持されており、ラック3の倒れ止めとして、支点11を挟んでばね部材21A、21Bが設けられている。各ばね部材21A、21Bは、圧縮力が作用すると座屈するため、引張力のみに抵抗するものとする。
ユニット式ラック倉庫1のラック3の挙動は、以下のようになる。
地震が発生していない平常時では、ばね部材21A、21Bのひずみεが0<ε≦εの範囲にあり、ひずみεと応力σとが比例する。よって、ばね部材21A、21Bがラック3の回転(倒れ)に抵抗し、ラック3の変形が抑制される。
地震が発生した場合、ばね部材21A、21Bのひずみεがε<ε≦εの範囲にあり、ひずみεが増大しても応力σが増大しない。よって、ばね部材21A、21Bがラック3の回転(倒れ)にそれほど抵抗せず、ラック3の固有周期が長期化する。
さらに大きな地震が発生した場合、ばね部材21A、21Bのひずみεがε<εの範囲にあり、ひずみεと応力σとが比例する。よって、ばね部材21A、21Bがラック3の回転(倒れ)に抵抗し、ラック3の揺れが抑制されて、ラック3の過大な変形に伴う損傷が防止される。
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)大きな地震が発生しても、超弾性合金のハードニング特性によりばね部材21A、21Bが引張力に抵抗するとともに、オイルダンパ22がラック3の振動を減衰させる。よって、ラック3の振動を確実に低減できるから、耐震性能が向上する。
(2)ラック3の自重は支持部材12を介して床面2で支持しつつ、ラック3の倒れ止めとしてばね部材21A、21Bが抵抗することで、ラック3を制振化できる。
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態に係る制振構造40が設けられたユニット式ラック倉庫1Aの縦断面を示す模式図である。図5(a)は、図4の破線Bで囲んだ部分の拡大図である。図5(b)は、図5(a)のC-C断面図である。
本実施形態では、ラック3のフレーム30は、床面2に支点31でピン接合された柱部材32と、この柱部材32に隣接して設けられた柱部材33と、柱部材32、33同士を連結するブレース34と、を備える。
制振構造40は、床面2の上に設けられたラック3の振動を低減するものである。制振構造40は、床面2とフレーム30の柱部材33との間に並列に設けられて鉛直方向に延びる4本のばね部材41およびオイルダンパ42と、を備える。
ばね部材41は、第1実施形態のばね部材21A、21Bと同様の構成である。
オイルダンパ42は、オイルダンパ22と同様の構成であり、4本のばね部材41に囲まれて配置されている。
床面2上には、下部プレート43が設けられており、フレーム30の柱部材33の下端部には、上部プレート44が設けられている。
4本のばね部材41およびオイルダンパ42は、下端部が下部プレート43に接合され、上端部が上部プレート44に接合されている。これにより、ばね部材41およびオイルダンパ42の両端部同士が、下部プレート43および上部プレート44により連結されている。
また、下部プレート43の上には、コンクリート体45が構築されており、このコンクリート体45の上端面と下部プレート43の下端面との間にはPC鋼棒46が設けられており、このPC鋼棒46によりコンクリート体45に圧縮力が導入されている。
コンクリート体45の中央部には、上下に貫通する貫通孔が設けられ、この貫通孔には、オイルダンパ42がアンボンド状態で埋設されている。
また、コンクリート体45の周縁部には、上下に貫通する4つの貫通孔が設けられ、この貫通孔には、ばね部材41がアンボンド状態で埋設されている。ばね部材41をコンクリート体45に対してアンボンドとした理由は、以下の通りである。ばね部材41は超弾性合金からなるため、大地震時にはひずみεが大きくなる。よって、ばね部材41がコンクリート体45と一体化されていると、コンクリート体45にひびわれや損傷が発生するおそれがあるためである。
以上のユニット式ラック倉庫1Aでは、ラック3の自重は、フレーム10下端の支点11およびばね部材41を介して床面2に支持される。ばね部材41に圧縮力が作用すると、コンクリート体45がばね部材41の変形を拘束して座屈を防止するため、ばね部材41は、圧縮力および引張力に対して抵抗する。
ユニット式ラック倉庫1Aのラック3の挙動は、以下のようになる。
地震が発生していない平常時では、ばね部材41のひずみεが-ε<ε≦εの範囲にあり、ひずみεと応力σとが比例する。よって、ばね部材41がラック3の回転(倒れ)に抵抗し、ラック3の変形が抑制される。
地震が発生した場合、ばね部材41のひずみεが-ε<ε≦-εあるいはε<ε≦εの範囲にあり、ひずみεが増大しても応力σが増大しない。よって、ばね部材41がラック3の回転(倒れ)に抵抗しなくなり、オイルダンパ42がラック3の振動を減衰させて、ラック3の固有周期が長期化する。
さらに大きな地震が発生した場合、ばね部材41のひずみεがε<-εあるいはε<εの範囲にあり、ひずみεと応力σとが比例する。よって、ばね部材41がラック3の回転(倒れ)に抵抗し、ラック3の揺れが抑制されて、ラック3の過大な変形に伴う損傷が防止される。
以下、本実施形態のユニット式ラック倉庫の地震時の挙動についてシミュレーションを行った。
具体的なシミュレーション条件は、以下の通りである。実施例は、図6に示すような上述の制振構造を設けたラック倉庫であり、比較例は、制振構造を設けないラック倉庫である。
幅4mの間に2つのラックを配置し、各ラックの高さは12段の20mとした。また、ラックの1次固有周期を1.4Sとし、1次減衰定数を2%とした。また、入力する地震波としては、ElCentro NS原波を用いた。
図7にシミュレーション結果を示す。制振構造を設けない場合、ラック上端の変位(ラック変位)を約60mmに抑えられるが、最上段(12段目)の荷物の変位(荷滑変位)が約300mmとなり、落下変位である200mmを超えているため、最上段の荷物が落下すると考えられる。これに対し、制振構造を設けた場合、上端のラック変位は約250mmになるものの、最上段(12段目)の荷滑変位が約70mmに抑えられており、最上段の荷物の落下を防止できることが判る。
本実施形態によれば、上述の(1)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(3)超弾性合金からなるばね部材41をコンクリート体45の内部にアンボンド状態で埋設したので、ばね部材41に圧縮力が作用した場合に、コンクリート体45がばね部材41の変形を拘束して座屈を防止できる。よって、ばね部材41を圧縮材として利用して、ラック3の自重を負担できる。
また、オイルダンパ42をコンクリート体45の内部にアンボンド状態で埋設したので、オイルダンパ42に圧縮力が作用した場合に、コンクリート体45がオイルダンパ42の変形を拘束して、オイルダンパ42の座屈を防止できる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の第1実施形態では、床面2とラック3との間に制振構造20を設けたが、これに限らず、図8に示すように、ラック3同士の間にばね部材21Bおよびオイルダンパ22を備える制振構造20Aを設けてもよい。
上述の第1実施形態では、ラック3のフレーム10を、床面2に支点11でピン接合された略V字形状の支持部材12と、支持部材12の2つの頂部に設けられた一対の柱部材13と、を含んで構成したが、これに限らず、支持部材を棒状とし、この支持部材の頂部に一本の柱部材を設けてもよい。
また、上述の各実施形態では、支点11、31をピン接合としたが、これに限らず、回転可能な半剛接合としてもよい。
1、1A…ユニット式ラック倉庫 2…床面 3…ラック(構造物)
10…フレーム 11…支点 12…支持部材 13…柱部材
14…ブレース 15…水平部材
20、20A…制振構造 21A、21B…ばね部材 22…オイルダンパ
23…下部プレート 24…上部プレート
30…フレーム 31…支点 32…柱部材 33…柱部材 34…ブレース
40…制振構造 41…ばね部材 42…オイルダンパ 43…下部プレート
44…上部プレート 45…コンクリート体 46…鋼棒

Claims (3)

  1. 床面に対する構造物の振動を低減する制振構造であって、
    前記床面と前記構造物との間に設けられて鉛直方向に延びる超弾性合金からなるばね部材と、前記床面と前記構造物との間に設けられて振動を減衰するオイルダンパと、を備え、
    前記ばね部材および前記オイルダンパは、並列に配置されて上下両端部同士が連結されていることを特徴とする制振構造。
  2. 前記ばね部材および前記オイルダンパは、それぞれ、コンクリート体に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の制振構造。
  3. 前記構造物は、床面に設けられた略V字形状または棒状の支持部材と、当該支持部材の頂部に設けられた柱部材と、を備え、
    前記ばね部材およびオイルダンパは、前記床面と前記柱部材の下端部との間に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の制振構造。
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