以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1に、本実施形態における駆動システムを示す。この駆動システムは、半導体スイッチング素子1および半導体スイッチング素子1を駆動する電子回路100を備えている。
半導体スイッチング素子1は、電子回路100から供給される電流により、駆動状態(オン状態)と非駆動状態(オフ状態)が切り替わる(以降、スイッチングを行うとも称する)半導体素子である。半導体スイッチング素子1は、駆動状態では電流を流し、非駆動状態では電流を流さない。本実施形態では、この半導体スイッチング素子1は高耐圧パワーMOSFET(Metal Oxide Semicinductor Field Effect Transistor、以降MOSFETはMOSトランジスタと称する)とする。なお、高耐圧パワーMOSトランジスタは例示であり、他の種類の素子でもよい。例えば、この半導体スイッチング素子1は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、サイリスタなどでもよいし、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)などの化合物半導体を用いた素子でもよい。また、半導体スイッチング素子1は、今後開発される半導体を用いた素子を含む。
半導体スイッチング素子1は、スイッチングを行うことで、半導体スイッチング素子1に接続されている負荷を駆動させる(図示せず)。この負荷は電流を流すことで駆動する電子機器であり、例えばエアコンや冷蔵庫、電車、ロボットなどに搭載されるモータ、サーバ電源用のPFC(Power Factor Correction)回路などである。スイッチング素子1が駆動状態のときに、この負荷に電流が供給される。
また、半導体スイッチング素子1のゲート端子は電子回路100と接続され、半導体スイッチング素子1のソース端子は基準電位に接続されている。ここで、半導体スイッチング素子1のゲート端子は制御端子とも称される。半導体スイッチング素子1が例えばバイポーラトランジスタであれば、この制御端子はベース端子に相当する。基準電位の説明は後述する。
電子回路100は、半導体スイッチング素子1に対して供給する電流を制御することができる。電子回路100は、制御回路101、検知回路102、レベルシフタ103および104、記憶部105、および少なくとも1つのp型トランジスタMpx(xは0以上の整数)、少なくとも1つのn型トランジスタMnxを有する電流供給回路110を備える。
検知回路102は、半導体スイッチング素子1の電圧や電圧の微分値を検知し、制御回路101に送る。例えば半導体スイッチング素子1のドレイン端子およびソース端子間の電圧Vds(以降、電圧Vdsと称する)や、電圧Vdsの時間微分値の絶対値|dVds/dt|である。本実施形態では、検知回路102はこの|dVds/dt|を検知し、制御回路101に送る。この電圧Vdsや|dVds/dt|などを含んで電圧に関連する値とも称することとする。
以降、説明のために、|dVds/dt|を微分値Diと称する。iは1以上の整数であり、例えば半導体スイッチング素子1の1回目のスイッチングにおける電圧Vdsの絶対値はD1、2回目のスイッチングにおける電圧Vdsの絶対値はD2などのように表される。
この微分値Diは、制御回路101において、電流供給回路110が半導体スイッチング素子1のゲート端子に対して供給する電流を制御するために使われる。
この検知回路102は、制御回路101および半導体スイッチング素子1のドレイン端子と接続されている。
また、この検知回路102は、電圧以外にも半導体スイッチング素子1の状態を検知するようにしてもよい。例えば、半導体スイッチング素子1が駆動しているか否か、ドレイン端子およびソース端子間の電流や電流の微分値などを検知するようにしてもよい。
記憶部105は情報を保持する電子装置である。本実施形態では、例えば制御回路101によって決定される、電流供給回路110が半導体スイッチング素子1のゲート端子に対して供給する電流を制御するための情報を保持する。
記憶部105はメモリ等であり、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、EEPROM(Electrically EPROM)、フラッシュメモリ、レジスタなどである。
制御回路101は、半導体スイッチング素子1のゲート端子に電流を供給する電流供給回路110の電流供給量を制御する。制御回路は、電流供給回路110の制御を通じて、半導体スイッチング素子1のスイッチングを制御する。
制御回路101は、半導体スイッチング素子1の駆動に関する指令と、微分値Diに基づいて電流供給回路110を制御する。この半導体スイッチング素子1の駆動に関する指令は、図示しないプロセッサなどの処理装置から制御回路101に送られる。微分値Diは、検知回路102から制御回路101に送られる。
制御回路101は、電流供給回路110が有するトランジスタMpxおよびMnxのうち、半導体スイッチング素子1のゲート端子に電流を供給する(以降、駆動させるとも称する)トランジスタを決定する。制御回路101は、決定したトランジスタに対してそれぞれ電圧を出力し、駆動させることで、電流供給回路110の電流供給量を制御する。
また、制御回路101は、半導体スイッチング素子1のドレイン端子およびソース端子間の電圧における、目標微分値Dtを決定する。この目標微分値Dtは、半導体スイッチング素子1のスイッチングにおいて、伝導ノイズ、放射ノイズの抑制(EMI対策、EMI:Electromagnetic Interference)およびスイッチング損失の低減を両立できる値である。目標微分値Dtは、記憶部105に保持されていてもよい。
また、制御回路101は、半導体スイッチング素子1のスイッチングにおいて、微分値Diおよび目標微分値Dtから、次のスイッチングにおける電流供給回路110の電流供給量を決定する。すなわち、制御回路101は、トランジスタMpx、Mnxのうち、駆動させるトランジスタを決定する。時間帯によって駆動させるトランジスタを調整するようにしてもよい。決定されたこのトランジスタに関する情報は記憶部105に保持され、半導体スイッチング素子1の次のスイッチングにて使われる。
なお、本実施形態では制御回路101に微分値Diが入力されるが、制御回路101がこの微分値Diを算出するようにしてもよい。この場合では検知回路102が電圧Vdsを検知し、制御回路101が電圧Vdsに応じて微分値Diを算出する。
レベルシフタ103および104は、制御回路101から電流供給回路110に対して送られた電圧を調整する装置である。このレベルシフタによって調整された電圧は、接続点Dp0〜Dp5、およびDn0〜Dn5を通じて電流供給回路110に届けられる。図1にはレベルシフタ103および104の2つのレベルシフタが表されているが、制御回路101の動作電圧やバッファBpxおよびBnxによって、これらのレベルシフタの数を変えるようにしてもよい。
電流供給回路110は、半導体スイッチング素子1のゲート端子に対して電流を供給する。電流供給回路110は少なくとも1つのp型トランジスタMpxおよび少なくとも1つのn型トランジスタMnxを備える。これらのトランジスタが駆動することで電流を供給し、駆動させるトランジスタの種類(p型またはn型)および数によって、半導体スイッチング素子1のゲート端子に供給する電流の量を調整することができる。
本実施形態では、MpxはPMOSトランジスタ、MnxはNMOSトランジスタとして説明するが、他のトランジスタ、例えばバイポーラトランジスタでもよい。
図1ではx=5として、PMOSトランジスタ、NMOSトランジスタはともに6個ずつ備えられた電流供給回路110が表されている(一部省略)。また、図1では、それぞれのトランジスタを区別するために、PMOSトランジスタをMp0〜Mp5、NMOSトランジスタをMn0〜Mn5と表している。
さらに電源供給回路110は、それぞれのPMOSトランジスタMpx、NMOSトランジスタMnxに対応して、バッファBpx(xは0以上の整数)およびBnxを備えている。これらのバッファは、入力された電圧を調整して出力する。また、これらのバッファは、p型トランジスタおよびn型トランジスタによって構成される。
制御回路101から送られた電圧は、レベルシフタ103および104、接続点Dp0〜Dp5およびDn0〜Dn5を通じて、それぞれ対応するバッファに入力される。これらのバッファから対応するトランジスタに対して電圧が入力され、トランジスタは駆動し、半導体スイッチング素子1のゲート端子に対して電流を供給する。
駆動するトランジスタから半導体スイッチング素子1のゲート端子に電流が供給されることにより、ゲート端子の電圧はVg、ゲート端子の電流はIgとなる。
それぞれのPMOSトランジスタMpxのソース端子は電源電位VDDに接続され、それぞれのNMOSトランジスタのソース端子は基準電位に接続される。この電源電位VDDは外部電源から電子回路100に供給された電源の電位であるが、図示しない電子回路100内の機器、例えばDC/DCコンバータやLDOなどを通じて調整された電位を含む。また、基準電位は電源電位VDDより低く定められた電位であればよく、グランドの0Vに限られない。
また、PMOSトランジスタMnxのドレイン端子およびNMOSトランジスタMnxのドレイン端子は、半導体スイッチング素子1のゲート端子においてそれぞれ接続されている。例えば、PMOSトランジスタMp0のドレイン端子およびNMOSトランジスタMnxのドレイン端子は、半導体スイッチング素子1のゲート端子において互いに接続されている。
また、バッファBpxおよびBnxは、対応するPMOSトランジスタMpxおよびNMOSトランジスタMnxのゲート端子にそれぞれ接続されている。図1では、12個のバッファが備えられた電流供給回路110が表されている(一部省略)。例えば、PMOSトランジスタMp0のゲート端子にはバッファBp0が接続され、NMOSトランジスタMn0のゲート端子にはバッファBn0が接続される。
また、バッファBpxはバッファ用の電位VBpおよび半導体スイッチング素子1のゲート端子と接続され、バッファBnxはバッファ用の電位VBnおよび基準電位と接続されている。
以上に説明した電子回路100は、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路で実装される。1チップ上にまとめて実装されてもよいし、一部の回路が別のチップ上に実装されてもよい。また、制御回路101、検知回路102の機能は、プロセッサなどの処理部で実現するようにしてもよい。
また、図1は電子回路100を説明するための一例である。PMOSトランジスタ、NMOSトランジスタの数はそれぞれ任意に取りうる。PMOSトランジスタ、NMOSトランジスタの数がそれぞれで異なっていてもよい。バッファの数についても任意に取りうる。バッファは電流供給回路110だけでなく電子回路100に備えられるようにしてもよい。
次に、電子回路100の動作を、図2から図7を用いて説明する。
まず、制御回路101は図示しない処理装置から半導体スイッチング素子1のスイッチングの指令を受け取る。例えば、図2はスイッチングの指令の一例を表す図である。図2では、制御回路101は時間帯t1、t3、t5、t7、t9でスイッチング素子1を駆動させ、時間帯t2、t4、t6、t8、t10でスイッチング素子1を非駆動にさせることが表されている。これらの時間帯t1からt10は、半導体スイッチング素子1の駆動及び非駆動が実際に切り替わる時刻を含む前後の時間帯を表し、図2では白抜きの円で表されている。
このスイッチングの指令は、逐次制御回路101に送られるようにしてもよい。
検知回路102は、逐次スイッチング素子1の微分値Diを検知しており、制御回路101に対して送っている。
制御回路101は、これらのスイッチング素子1のスイッチングにおいて、微分値Diが目標微分値Dtに漸近するように、電流供給回路110の電流供給量を制御する。具体的には、制御回路101は、トランジスタMpxおよびMnxのうち、駆動させるトランジスタに対して電圧を入力する。
また、制御回路101は、半導体スイッチング素子1の現在のスイッチングにおいて駆動するトランジスタおよび微分値Di、目標微分値Dtから、次のスイッチングにおいて駆動させるトランジスタおよび駆動させる時間帯を決定する。
例えば、時間帯t1の1回目の半導体スイッチング素子1を駆動させる処理(以降、立ち上げとも称する)において駆動するトランジスタおよび微分値D1、目標微分値Dtから、半導体スイッチング素子1の2回目の立ち上げが行われる時間帯t3に駆動させるトランジスタおよび駆動させる時間帯を決定する。
同様に、時間帯t2の1回目の半導体スイッチング素子1を非駆動にさせる処理(以降、立ち下げとも称する)において、駆動するトランジスタおよび微分値D1、目標微分値Dtから、半導体スイッチング素子1の2回目の立ち下げが行われる時間帯t4に駆動させるトランジスタおよび駆動させる時間帯を決定する。
すなわち、制御回路101は、半導体スイッチング素子1のスイッチングにおいて駆動するトランジスタ、微分値Diおよび目標微分値Dtをフィードバックし、次のスイッチングにおける条件を決定する。この条件は、トランジスタMpxおよびMnxのうち、駆動させるトランジスタおよび駆動させる時間帯などである。
以下、図3から図7を用いて、制御回路101の動作を具体的に説明する。制御回路101の動作を説明するにあたり、本実施形態におけるPMOSトランジスタMp0〜Mp5、NMOSトランジスタMn0〜Mn5の駆動力について説明する。駆動力とは、それぞれのトランジスタが駆動した場合における半導体スイッチング素子1のゲート端子への電流供給量を表す。本実施形態では、PMOSトランジスタMp0〜Mp5は対応する駆動力Wp0〜Wp5を有し、NMOSトランジスタMn0〜Mn5は対応する駆動力Wn0〜Wn5を有することとする。これらの駆動力はトランジスタによって任意でよい。
図3は、制御回路101が時間帯t1に半導体スイッチング素子1の1回目の立ち上げを行い、時間帯t2に半導体スイッチング素子1の1回目の立ち下げを行う際の、パラメータを説明する図である。駆動力Wpsとは、PMOSトランジスタMp0〜Mp5のうち、駆動するトランジスタの駆動力の合計を表す。駆動力Wnsとは、NMOSトランジスタMn0〜Mn5のうち、駆動するトランジスタの駆動力の合計を表す。図3は、半導体スイッチング素子1の立ち上げおよび立ち下げにおける駆動力Wps、Wns、電圧Vdsおよび微分値|dVds/dt|=Diを表している。本実施形態では、電圧Vdsは直接制御回路101が取得しないが、微分値Diの説明のために表している。
なお、PMOSトランジスタの駆動力Wps、NMOSトランジスタの駆動力Wnsは駆動させているトランジスタから制御回路101が任意の時間で算出している。また、微分値Diは検知回路102が取得し、制御回路101に送られている。
また、半導体スイッチング素子1の立ち上げが行われる時間帯t1以前では、1つ以上のNMOSトランジスタが駆動しているものとする。例えば、NMOSトランジスタMn0〜Mn5のすべてが駆動しているものとする。
NMOSトランジスタの駆動については、制御回路101がNMOSトランジスタMn0〜Mn5に対して電圧を出力する。これらの電圧はレベルシフタ103を通じて調整される。調整された電圧は接続点Dn0〜Dn5およびバッファBn0〜Bn5を通じて、それぞれのNMOSトランジスタMn0〜Mn5に入力される。これにより、NMOSトランジスタMn0〜Mn5は駆動し、半導体スイッチング素子1のゲート端子に電流を供給する。これにより、半導体スイッチング素子1は非駆動が保たれている。
時間帯t1の半導体スイッチング素子1の立ち上げにおける制御回路101の動作を、図3および図4を用いて説明する。
まず、制御回路101は駆動しているトランジスタを非駆動にさせる(ステップS101)。すなわち、時刻t1aにおいて制御回路101はNMOSトランジスタMn0〜Mn5に対する電圧の入力を停止する。
次に、制御回路101は事前に決定されたトランジスタを駆動させる(ステップS102)。時間帯t1における半導体スイッチング素子1の立ち上げが初の立ち上げとなるので、初期に設定されているトランジスタを駆動させる。
半導体スイッチング素子1の立ち上げでは、制御回路101は、PMOSトランジスタMp0〜Mp5のうち、少なくとも1つを駆動させる。例えば、制御回路101は時刻t1bにおいてPMOSトランジスタMp0〜Mp5のすべてを駆動させ、NMOSトランジスタMnxは駆動させない。
具体的には、制御回路101はPMOSトランジスタMp0〜Mp5に対して電圧を出力する。これらの電圧はレベルシフタ103および104を通じて調整される。調整された電圧は接続点Dp0〜Dp5およびバッファBp0〜Bp5を通じて、それぞれのPMOSトランジスタMp0〜Mp5に入力される。これにより、PMOSトランジスタMp0〜Mp5は駆動し、半導体スイッチング素子1のゲート端子に電流を供給する。
図3では駆動させたPMOSトランジスタの駆動力をWps1と表している。すなわち、PMOSトランジスタMp0〜Mp5の駆動力Wp0〜Wp5の合計がWps1である。
電流供給回路110のトランジスタが駆動することにより、電圧Vdsが変化する。したがって、微分値DiがD1として制御回路101により算出される。
制御回路101は、この微分値Diと目標微分値Dtを比較し、次の半導体スイッチング素子のスイッチングにおいて、駆動させるトランジスタを決定し、記憶部105に保持させる(ステップS103)。
図3では、D1は目標微分値Dtより大きい。制御回路101は、時間帯t3の半導体スイッチング素子1の2回目の立ち上げにおいて、一部の時間帯でPMOSトランジスタの駆動力WpsをWps1より小さくする。具体的には、制御回路101は半導体スイッチング素子1の2回目の立ち上げにおいて、この一部の時間帯でPMOSトランジスタMp0〜Mp4を駆動させることを決定し、記憶部105に保持させる。この一部の時間帯の例は後述する半導体スイッチング素子1の2回目の立ち上げにて挙げる。
以上のようにして、制御回路101は半導体スイッチング素子1を立ち上げる。また、制御回路101は、次の半導体スイッチング素子1の立ち上げにおいて駆動させるトランジスタおよび駆動させる時間帯を決定し、記憶部105に保持させる。以降、半導体スイッチング素子1の1回目の立ち下げ、2回目以降の立ち上げおよび立ち下げにおける制御回路101の動作は、ステップS101からステップS103と同様である。
半導体スイッチング素子1の立ち下げにおいても、制御回路101の動作は立ち上げと同様である。図3を用いて、時間帯t2における半導体スイッチング素子1の1回目の立ち下げを説明する。
制御回路101は時刻t2aにおいて、駆動しているPMOSトランジスタを非駆動にさせる。具体的には、制御回路101はPMOSトランジスタMp0〜Mp5に対して出力していた電圧を停止する。
次に、制御回路101は、NMOSトランジスタMnxのうち、少なくとも1つを駆動させる。例えば、制御回路101はPMOSトランジスタMp0〜Mp5を非駆動にするとともに、NMOSトランジスタMn0〜Mn5のすべてを駆動させたとする。図3では駆動させたNMOSトランジスタの駆動力をWns1と表している。
電圧VdsはNMOSトランジスタを駆動させることで、Vds1まで上昇する。
次に制御回路101は、この微分値Diと目標微分値Dtを比較し、次の半導体スイッチング素子のスイッチングにおいて、駆動させるトランジスタを決定し、記憶部105に保持させる。
図3では、電圧VdsがVds1まで上昇する時における微分値DiはD1と表されている。D1は目標微分値Dtより大きい。制御回路101は、時間帯t4の半導体スイッチング素子1の2回目の立ち下げでは、一部の時間帯でNMOSトランジスタの駆動力WnsをWns1より小さくする。具体的には、制御回路101は、駆動させるNMOSトランジスタを決定し、記憶部105に保持させる。例えば、制御回路101は、この一部の時間帯でNMOSトランジスタMn0〜Mn4を駆動させることを決定し、記憶部105に保持させる。この一部の時間帯の例は後述する半導体スイッチング素子1の2回目の立ち下げにて挙げる。
以上のようにして、制御回路101は半導体スイッチング素子1の1回目の立ち下げを行う。
続いて、制御回路101は半導体スイッチング素子1を、時間帯t3で2回目の立ち上げ、時間帯t4で2回目の立ち下げを行う。図5は、半導体スイッチング素子1の2回目の立ち上げおよび立ち下げを説明する図である。
制御回路101は、時間帯t3において半導体スイッチング素子1の2回目の立ち上げを行う。制御回路101は、時刻t3aにおいて駆動しているNMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t3bにおいてPMOSトランジスタを図3と同様に駆動させる。このときのPMOSトランジスタの駆動力WpsはWps1である。また、時刻t3cにおいて制御回路101は、半導体スイッチング素子1の1回目の立ち上げにおいて記憶部105に保持させた情報に基づいて、PMOSトランジスタを駆動させる。
すなわち、PMOSトランジスタの駆動力WpsがWps1より小さくなるように、駆動しているPMOSトランジスタの少なくとも1つを非駆動にする。例えば、制御回路101は、PMOSトランジスタMp0〜Mp4を駆動させ、PMOSトランジスタMp5を非駆動にさせる。図5では、この時のPMOSトランジスタの駆動力WpsをWps2と表している。
PMOSトランジスタの駆動力Wpsが下がることにより、電圧Vdsの変化が緩やかになる。したがって、微分値Diを小さくすることができる。制御回路101は、この一部のPMOSトランジスタを非駆動にさせる制御を、半導体スイッチング素子1の1回目の立ち上げにおいて決定した一部の時間帯だけ行う。図5では、この一部の時間帯は時刻t3cから時刻t3dまでであることが表されている。
その後制御回路101は時刻t3dにおいて、PMOSトランジスタの駆動力WpsがWps1となるようにPMOSトランジスタを駆動させる。
次に制御回路101は、この微分値Diと目標微分値Dtを比較し、次の半導体スイッチング素子のスイッチングにおいて、駆動させるトランジスタを決定し、記憶部105に保持させる。
2回目の立ち上げにおいて、微分値DiはD2である。図5では、D2は依然目標微分値Dtより大きい。制御回路101は、時間帯t5の半導体スイッチング素子1の3回目の立ち上げでは、一部の時間帯でPMOSトランジスタの駆動力WpsをWps2より小さくする。具体的には、駆動させるPMOSトランジスタを決定し、記憶部105に保持させる。例えば、制御回路101は、この一部の時間帯でNMOSトランジスタMn0〜Mn3を駆動させることを決定し、記憶部105に保持させる。
以上のようにして、制御回路101は半導体スイッチング素子1の2回目の立ち上げを行う。
次に制御回路101は、時間帯t4において半導体スイッチング素子1の2回目の立ち下げを行う。制御回路101は、時刻t4aにおいて、駆動しているPMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t4bにおいてNMOSトランジスタを図3と同様に駆動させる。このときのNMOSトランジスタの駆動力はWns1である。
時刻t4cにおいて、制御回路101は、半導体スイッチング素子1の1回目の立ち下げにおいて記憶部105に保持させた情報に基づいて、NMOSトランジスタを駆動させる。
すなわち、NMOSトランジスタの駆動力WnsがWns1より小さくなるように、駆動しているNMOSトランジスタの少なくとも1つを非駆動にする。例えば、制御回路101は、NMOSトランジスタMn0〜Mn4を駆動させ、NMOSトランジスタMn5を非駆動にさせる。図5では、この時のNMOSトランジスタの駆動力WnsをWns2と表している。
NMOSトランジスタの駆動力Wnsが下がることにより、電圧Vdsの変化が緩やかになる。したがって、微分値Diを小さくすることができる。制御回路101は、この一部のNMOSトランジスタを非駆動にさせる制御を、半導体スイッチング素子1の1回目の立ち下げにおいて決定した一部の時間帯だけ行う。図5では、この一部の時間帯は時刻t4cから時刻t4dまでであることが表されている。
その後制御回路101は時刻t4cにおいて、NMOSトランジスタの駆動力WnsがWns1となるようにNMOSトランジスタを駆動させる。電圧VdsはVds1まで上昇する。
次に制御回路101は、この微分値Diと目標微分値Dtを比較し、次の半導体スイッチング素子のスイッチングにおいて、駆動させるトランジスタを決定し、記憶部105に保持させる。
2回目の立ち下げにおける微分値DiはD2である。図5では、D2は依然目標微分値Dtより大きい。制御回路101は、時間帯t6の半導体スイッチング素子1の3回目の立ち下げでは、一部の時間帯でNMOSトランジスタの駆動力WnsをWns2より小さくする。具体的には、制御回路101は、駆動させるNMOSトランジスタを決定し、記憶部105に保持させる。例えば、制御回路101は、この一部の時間帯でNMOSトランジスタMn0〜Mn3を駆動させることを決定し、記憶部105に保持させる。
以上のようにして、制御回路101は半導体スイッチング素子1の2回目の立ち下げを行う。
以上説明したように、制御回路101は、半導体スイッチング素子1の立ち上げおよび立ち下げごとに、微分値Diと目標微分値Dtとを比較する。この微分値Diが目標微分値Dtより大きい場合、制御回路101は一部の時間帯で非駆動にするトランジスタを増やしていく。すなわち、制御回路101はフィードバックをかけながら半導体スイッチング素子1のスイッチングを行う。なお、制御回路101は、半導体スイッチング素子1の立ち上げではPMOSトランジスタ、立ち下げではNMOSトランジスタの駆動数を減らしていく。
制御回路101は、時間帯t5の半導体スイッチング素子1の3回目の立ち上げにおいて、時間帯t7のおける4回目の立ち上げでは、一部の時間帯でPMOSトランジスタの駆動力Wpsを0にすると決定したとする。すなわち、制御回路101はこの一部の時間帯でPMOSトランジスタMpxをすべて非駆動にすると決定したとする。この場合の時間帯t7における半導体スイッチング素子1の4回目の立ち上げについて、図6を用いて説明する。
制御回路101は、時刻t7aにおいて駆動しているNMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t7bにおいてPMOSトランジスタを図3、図5と同様に駆動させる。このときのPMOSトランジスタの駆動力WpsはWps1である。時刻t7cにおいて、制御回路101は、半導体スイッチング素子1の3回目の立ち上げにおいて記憶部105に保持させた情報に基づいて、駆動しているPMOSトランジスタを非駆動にする。
PMOSトランジスタの駆動力が0になることで、電圧Vdsの変化がより緩やかになる。図6は、2回目の立ち上げにおける電圧Vdsを破線で表し、4回目の立ち上げにおける電圧Vdsを実線で表している。したがって、微分値Diをより小さくすることができる。また、図6は2回目の立ち上げにおける微分値D2を破線で表し、4回目の立ち上げにおける微分値D4を実線で表している。
制御回路101は、PMOSトランジスタを非駆動にさせる制御を、半導体スイッチング素子1の3回目の立ち上げにおいて決定した一部の時間帯だけ行う。図6では、この一部の時間帯は時刻t7cから時刻t7dまでであることが表されている。また、図6は、2回目の立ち上げにおけるPMOSトランジスタの駆動力Wpsを破線で表し、4回目の立ち上げにおけるPMOSトランジスタの駆動力Wpsを実線で表している。
ここで、時刻t7cからt7dまでの時間が、図5における時刻t3cからt3dまでの時間よりも長い理由は、電圧Vdsの傾きがより緩やかになっているためである。電圧Vdsの傾きが緩やかになることは、微分値Diが生じる時間が長くなることを意味する。したがって、制御回路101は、PMOSトランジスタの駆動力Wpsを変化させる一部の時間帯をより長く決定する。
その後制御回路101は時刻t7dにおいて、PMOSトランジスタの駆動力WpsがWps1となるようにPMOSトランジスタを駆動させる。
次に制御回路101は、この微分値Diと目標微分値Dtを比較し、次の半導体スイッチング素子のスイッチングにおいて、駆動させるトランジスタを決定し、記憶部105に保持させる。
4回目の立ち上げにおいて、微分値DiはD4である。図6では、D4は依然目標微分値Dtより大きい。制御回路101は、時間帯t9の半導体スイッチング素子1の5回目の立ち上げにおいて、一部の時間帯でPMOSトランジスタを非駆動とし、さらにこの一部の時間帯の中で少なくとも1つのNMOSトランジスタを駆動させることを決定し、記憶部105に保持させる。例えば、制御回路101は、NMOSトランジスタMn0を駆動させることを決定し、記憶部105に保持させる。
以上のようにして、制御回路101は半導体スイッチング素子1の4回目の立ち上げを行う。
一方、時間帯t8の半導体スイッチング素子1の4回目の立ち下げについても、4回目の立ち上げと同様の前提であるとする。すなわち制御回路101は、時間帯t6の半導体スイッチング素子1の3回目の立ち下げにおいて、4回目の立ち下げでは一部の時間帯でNMOSトランジスタの駆動力Wnsを0にすると決定したとする。すなわち、制御回路101はこの一部の時間帯でNMOSトランジスタMnxをすべて非駆動にすると決定したとする。この場合の半導体スイッチング素子1の4回目の立ち上げについても、図6を用いて説明する。
制御回路101は、時刻t8aにおいて駆動しているPMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t8bにおいてNMOSトランジスタを図3、図5と同様に駆動させる。このときのNMOSトランジスタの駆動力WnsはWns1である。時刻t8cにおいて、制御回路101は、半導体スイッチング素子1の3回目の立ち下げにおいて記憶部105に保持させた情報に基づいて、駆動しているNMOSトランジスタを非駆動にする。
NMOSトランジスタの駆動力が0になることで、電圧Vdsの変化がより緩やかになる。図6は、2回目の立ち下げにおける電圧Vdsを破線で表し、4回目の立ち下げにおける電圧Vdsを実線で表している。したがって、微分値Diをより小さくすることができる。図6は、2回目の立ち下げにおける微分値D2を破線で表し、4回目の立ち下げにおける微分値D4を実線で表している。
制御回路101は、NMOSトランジスタを非駆動にさせる制御を、半導体スイッチング素子1の3回目の立ち下げにおいて決定した一部の時間帯だけ行う。図6では、この一部の時間帯は時刻t8cから時刻t8dまでであることが表されている。また、図6は、2回目の立ち上げにおけるPMOSトランジスタの駆動力Wpsを破線で表し、4回目の立ち上げにおけるPMOSトランジスタの駆動力Wpsを実線で表している。
ここで、時刻t8cからt8dまでの時間が、図5における時刻t4cからt4dまでの時間よりも長い理由は、4回目の立ち上げで説明した理由と同様である。
その後制御回路101は時刻t8dにおいて、NMOSトランジスタの駆動力WnsがWns1となるようにNMOSトランジスタを駆動させる。
次に制御回路101は、この微分値Diと目標微分値Dtを比較し、次の半導体スイッチング素子のスイッチングにおいて、駆動させるトランジスタを決定し、記憶部105に保持させる。
4回目の立ち下げにおいて、微分値DiはD4である。図6では、D4は依然目標微分値Dtより大きい。制御回路101は、時間帯t10の半導体スイッチング素子1の5回目の立ち下げでは、一部の時間帯でNMOSトランジスタを非駆動とし、この一部の時間帯の中でさらに少なくとも1つのPMOSトランジスタを駆動させることを決定し、記憶部105に保持させる。例えば、制御回路101は、PMOSトランジスタMp0を駆動させることを決定し、記憶部105に保持させる。
以上のようにして、制御回路101は半導体スイッチング素子1の4回目の立ち下げを行う。
以上説明したように、制御回路101は、半導体スイッチング素子1の立ち上げではPMOSトランジスタ、立ち下げではNMOSトランジスタを一部の時間帯で非駆動としても、微分値Diが目標微分値Dtに達しない場合、次の立ち上げおよび立ち下げでは、もう一方の型のトランジスタを、少なくとも1つ駆動させる決定をする。すなわち、制御回路101は、半導体スイッチング素子1の立ち上げではNMOSトランジスタを、立ち下げではPMOSトランジスタを一部の時間帯で少なくとも1つ駆動させる決定をする。図7を用いて、半導体スイッチング素子1の5回目の立ち上げおよび立ち下げについて説明する。
まず、時間帯t9における半導体スイッチング素子1の5回目の立ち上げについて説明する。制御回路101は、時刻t9aにおいて駆動しているNMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t9bにおいてPMOSトランジスタを図3から図6と同様に駆動させる。このときのPMOSトランジスタの駆動力WpsはWps1である。
時刻t9cにおいて、制御回路101は、半導体スイッチング素子1の4回目の立ち上げにおいて記憶部105に保持させた情報に基づいて、駆動しているPMOSトランジスタを非駆動にする。さらに、制御回路101は、時刻t9dにおいて、同様に記憶部105に保持させた情報に基づいて、NMOSトランジスタを少なくとも1つ駆動させる。例えば制御回路101は、NMOSトランジスタMn0を駆動させる。このときのNMOSトランジスタの駆動力WnsはWns3である。
PMOSトランジスタの駆動力を0とし、NMOSトランジスタを駆動させることで、電圧Vdsの変化がより緩やかになる。図7は、4回目の立ち上げにおける電圧Vdsを破線で表し、5回目の立ち上げにおける電圧Vdsを実線で表している。したがって、微分値Diをより小さくすることができる。図7は、4回目の立ち上げにおける微分値D4を破線で表し、5回目の立ち上げにおける微分値D5を実線で表している。
制御回路101は、PMOSトランジスタを非駆動にさせる制御およびNMOSトランジスタの少なくとも一部を駆動させる制御を、半導体スイッチング素子1の4回目の立ち上げにおいて決定した一部の時間帯だけ行う。図7では、制御回路101は時刻t9cから時刻t9fまでPMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t9dから時刻t9eまで少なくとも1つのNMOSトランジスタを駆動させることが表されている。
その後制御回路101は時刻t9eにおいてNMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t9fにおいて、PMOSトランジスタの駆動力WpsがWps1となるようにPMOSトランジスタを駆動させる。
次に制御回路101は、この微分値Diと目標微分値Dtを比較し、次の半導体スイッチング素子のスイッチングにおいて、駆動させるトランジスタを決定し、記憶部105に保持させる。
5回目の立ち上げにおいて、微分値DiはD5である。図7では、D5=Dtと表されている。制御回路101は、次回から半導体スイッチング素子1の立ち上げでは、今回行った5回目の制御を行うことを記憶部105に保持させる。制御回路101は、記憶部105に半導体スイッチング素子1の種類を合わせて記憶させ、この半導体スイッチング素子1と同様の半導体スイッチング素子に対してこの制御を適用するようにしてもよい。
また、制御回路101は目標微分値Dtの近辺にしきい値を定めるようにしてもよい。微分値Diがこのしきい値以内であれば、微分値Diが目標微分値Dtに到達したとみなし、制御回路101は同様に今回行った制御を今後も行うことを記憶部105に保持させるようにしてもよい。
以上のようにして、制御回路101は半導体スイッチング素子1の5回目の立ち上げを行う。
一方、時間帯t10における半導体スイッチング素子1の5回目の立ち下げについて説明する。制御回路101は、時刻t10aにおいて駆動しているPMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t10bにおいてNMOSトランジスタを図3から図6と同様に駆動させる。このときのNMOSトランジスタの駆動力WnsはWns1である。
時刻t10cにおいて、制御回路101は、半導体スイッチング素子1の4回目の立ち下げにおいて記憶部105に保持させた情報に基づいて、駆動しているNMOSトランジスタを非駆動にする。さらに、制御回路101は、時刻t10dにおいて、同様に記憶部105に保持させた情報に基づいて、PMOSトランジスタを少なくとも1つ駆動させる。例えば制御回路101は、PMOSトランジスタMp0を駆動させる。このときのPMOSトランジスタの駆動力WpsはWps3である。
NMOSトランジスタの駆動力を0とし、PMOSトランジスタを駆動させることで、電圧Vdsの変化がより緩やかになる。図7は、4回目の立ち下げにおける電圧Vdsを破線で表し、5回目の立ち下げにおける電圧Vdsを実線で表している。したがって、微分値Diをより小さくすることができる。図7は、4回目の立ち下げにおける微分値D4を破線で表し、5回目の立ち上げにおける微分値D5を実線で表している。
制御回路101は、NMOSトランジスタを非駆動にさせる制御およびPMOSトランジスタの少なくとも一部を駆動させる制御を、半導体スイッチング素子1の4回目の立ち下げにおいて決定した一部の時間帯だけ行う。図7では、制御回路101は時刻t10cから時刻t10fまでNMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t10dから時刻t10eまで少なくとも1つのPMOSトランジスタを駆動させることが表されている。
その後制御回路101は時刻t10eにおいてPMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t10fにおいて、NMOSトランジスタの駆動力WnsがWns1となるようにNMOSトランジスタを駆動させる。
5回目の立ち下げにおいて、微分値DiはD5である。図7では、D5=Dtと表されている。制御回路101は、次回から半導体スイッチング素子1の立ち下げでは、今回行った5回目の制御を行うことを記憶部105に保持させる。制御回路101は、記憶部105に半導体スイッチング素子1の種類を合わせて記憶させ、この半導体スイッチング素子1と同様の半導体スイッチング素子に対してこの制御を適用するようにしてもよい。
また、制御回路101は目標微分値Dtの近辺にしきい値を定めるようにしてもよい。微分値Diがこのしきい値以内であれば、微分値Diが目標微分値Dtに到達したとみなし、制御回路101は同様に今回行った制御を今後も行うことを記憶部105に保持させるようにしてもよい。
以上のようにして、制御回路101は半導体スイッチング素子1の5回目の立ち下げを行う。
以上説明したように、立ち上げではPMOSトランジスタ、立ち下げではNMOSトランジスタを一部の時間帯非駆動にさせるだけでなく、もう一方の型の少なくとも1つのトランジスタを駆動させることで、取りうる微分値Diがより幅広くなる。取りうる微分値Diがより幅広くなることで、伝導ノイズ、放射ノイズの抑制およびスイッチング損失の低減を両立させたスイッチングを行うことができる。
以上では、微分値Diが目標微分値Dtより大きい場合について説明した。微分値Diが目標微分値Dtより小さい場合について、図8および図9を用いて説明する。なお、前提として、制御回路101は立ち上げではPMOSトランジスタ、立ち下げではNMOSトランジスタを一部の時間帯で非駆動とし、もう一方の型の少なくとも1つのトランジスタを駆動した場合(図7で説明した場合と同様)とする。
図8では、半導体スイッチング素子1のn回目の立ち上げおよび立ち下げが表されている。まず、半導体スイッチング素子1の立ち上げについて説明する。制御回路101は、時刻tmaにおいてNMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻tmbにおいてPMOSトランジスタの駆動力WpsがWps1となるように駆動させる。
制御回路101は、時刻tmcから記憶部105に保持されたトランジスタの制御を行う。すなわち、制御回路101は時刻tmcから時刻tmfまでPMOSトランジスタを非駆動とし、時刻tmdから時刻tmdまでNMOSトランジスタの駆動力がWns4となるように少なくとも1つ駆動させる。ここで、Wns4はWns3よりも大きいものとする。制御回路101は、時刻tmeには再びNMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻tmfにはPMOSトランジスタの駆動力WpsがWps1となるように駆動させる。
Wns4はWns3よりも大きいため、微分値Dnは目標微分値Dtより小さい。制御回路101はn+1回目の半導体スイッチング素子1の立ち上げでは、一部の時間帯で駆動させるNMOSトランジスタの駆動力WnsがWn4よりも小さくなるように、駆動させるトランジスタを決定し、記憶部105に保持させる。
以上のようにして、制御回路101は半導体スイッチング素子1のn回目の立ち上げを行う。
一方、この場合の半導体スイッチング素子1の立ち下げについて説明する。制御回路101は、時刻tm+1aにおいてPMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻tm+1bにおいてNMOSトランジスタの駆動力WnsがWns1となるように駆動させる。
制御回路101は、時刻tm+1cから記憶部105に保持されたトランジスタの制御を行う。すなわち、制御回路101は時刻tm+1cから時刻tm+1fまでNMOSトランジスタを非駆動とし、時刻tm+1dから時刻tm+1eまでPMOSトランジスタの駆動力がWps4となるように少なくとも1つ駆動させる。ここで、Wps4はWps3よりも大きいものとする。制御回路101は、時刻tm+1eには再びPMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻tm+1fにはNMOSトランジスタの駆動力WnsがWns1となるように駆動させる。
Wps4はWps3よりも大きいため、微分値Dnは目標微分値Dtより小さい。制御回路101はn+1回目の半導体スイッチング素子1の立ち下げでは、一部の時間帯で駆動させるPMOSトランジスタの駆動力WpsがWps4よりも小さくなるように、駆動させるトランジスタを決定し、記憶部105に保持させる。
以上のようにして、制御回路101は半導体スイッチング素子1のn回目の立ち下げを行う。
以上説明したように、微分値Diは目標微分値Dtより小さい場合は、制御回路101は一部の時間帯で駆動させるトランジスタの駆動力が小さくなるように決定する。すなわち制御回路101は、半導体スイッチング素子1の立ち上げではNMOSトランジスタを、立ち下げではPMOSトランジスタを、今回の制御よりも駆動力が小さくなるようにする。
本実施形態を以上に説明したが、図などはあくまで説明のための一例であり、表現が異なっていてもよい。例えば、図1に表される電子回路100は、半導体スイッチング素子1を含んでいないが、半導体スイッチング素子1まで含めて電子回路100を構成するようにしてもよい。また、
図3から図8の電圧Vds、微分値Diは直線で表されているが、曲線により表されていてもよい。
また、図3から図8のPMOSおよびNMOSの駆動力について、同時に駆動および非駆動の切り替わりが行われているように見えるが、半導体スイッチング素子1の切り替わりに影響を及ぼさない程度であれば、同時でなくてもよい。
また、図7の半導体スイッチング素子1の立ち上げにおいては、時刻t9dから時刻t9eまでの時間帯でNMOSトランジスタを駆動させているが、この時間帯に限定されない。PMOSトランジスタが一時的に非駆動となる時刻t9cからt9fの時間帯であれば、NMOSトランジスタを駆動させる時間帯は任意である。半導体スイッチング素子1の立ち下げでも同様に、NMOSトランジスタが一時的に非駆動となる時刻t10cからt10fの時間帯であれば、PMOSトランジスタを駆動させる時間帯は任意である。なお、図8の場合も同様である。
さらに、本実施形態の変形例は様々に実装、実行可能である。例えば、本実施形態では、半導体スイッチング素子1の立ち上げおよび立ち下げにおいて、図3から図8に表される目標微分値Dtは同じであったが、それぞれ異なる目標微分値を定めるようにしてもよい。
また、本実施形態では、検知回路102が微分値Diを取得して制御回路101に伝えていたが、検知回路102が電圧Vdsを取得して制御回路101に伝え、制御回路101が微分値Diを算出するようにしてもよい。
また、本実施形態においては、半導体スイッチング素子1の立ち上げおよび立ち下げの結果をフィードバックすることにより、微分値Diを目標微分値Dtに近づけていた。記憶部105は、個々のトランジスタが駆動、非駆動によって微分値Diに寄与する値をあらかじめ保持していてもよい。制御回路101は、微分値Diおよび目標微分値Dtの差分、および記憶部105に保持されているこの寄与する値によって駆動させるトランジスタを決定してもよい。このようにすることで、より少ない半導体スイッチング素子1の立ち上げおよび立ち下げの回数で、微分値Diを目標微分値Dtに近づけることができる。
また、本実施形態において、制御回路101は、検知回路102が通知する微分値Diを目標微分値Dtに近づけるようにトランジスタを制御していたが、この検知回路を持たない構成としてもよい。このような電子回路150の構成を図9に表す。電子回路100の構成要素のうち、同じものに関しては同じ符号を付して説明を省略する。
記憶部105は、半導体スイッチング素子1の立ち上げおよび立ち下げについて、伝導ノイズ、放射ノイズの抑制およびスイッチング損失の低減を両立するように駆動させるトランジスタが定められている駆動情報を、例えばルックアップテーブル(LUT)の形で保持している。図9には、記憶部105がルックアップテーブル(LUT)を保持していることが表されている。この駆動情報は、事前に本実施形態で説明した電子回路100によって取得したものでもよいし、シミュレーションや実験により取得したものでもよい。
制御回路101は、記憶部105から読みだしたこの駆動情報に基づいてトランジスタを駆動させ、半導体スイッチング素子1の立ち上げおよび立ち下げを行うようにしてもよい。
この駆動情報は、半導体スイッチング素子1の温度によって駆動させるトランジスタが定められているようにしてもよい。例えば、記憶部105は、半導体スイッチング素子1の温度によって駆動させるトランジスタが定められた、複数のルックアップテーブルを保持するようにしてもよい。図10には、記憶部105が複数のルックアップテーブル(LUT1、LUT2・・・)を保持していることが表されている。この駆動情報は、事前に本実施形態で説明した電子回路100に、さらに温度センサを取り付けた回路によって取得したものを保持していてもよい。
このような電子回路160の構成を図10に表す。電子回路100の構成要素のうち、同じものに関しては同じ符号を付して説明を省略する。
電子回路160は、新たに温度センサ120を備えている。この温度センサ120は、半導体スイッチング素子1の温度を測定し、その温度情報を制御回路101に伝えている。制御回路101はその温度情報に基づいて、記憶部105に保持されている複数のルックアップテーブルから、半導体スイッチング素子1の温度に適したルックアップテーブルを選択し、トランジスタの制御を行う。
なお、図10では温度センサ120は電子回路160に備えられているが、制御回路101に半導体スイッチング素子1の温度情報を伝えられれば温度センサ120の場所は問わない。例えば半導体スイッチング素子1に備えられていてもよいし、独立していてもよい。
また、本実施形態では、回路によって電圧Vdsの測定(検知回路102)、微分値Diの算出およびトランジスタの制御(制御回路101)を行っているが、制御回路101および検知回路102の一部またはすべての機能を、処理部でプログラムを処理することにより実現するようにしてもよい。
この処理部はハードウェアの制御装置と演算装置を含む電子回路である。プロセッサの例としては、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態マシン、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路(PLD)およびその組み合わせが可能である。
このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、メモリカード、CD−RおよびDVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由で提供されるようにしてもよいし、ROM、HDD、SSDなどの記憶媒体に組み込んで提供されるようにしてもよい。
以上説明したように、本実施形態の電子回路100は、半導体スイッチング素子1の立ち上げおよび立ち下げにおいて、微分値Diを参照しながら微分値トランジスタの制御を行う。
半導体スイッチング素子1の立ち上げでは、制御回路101は、駆動しているPMOSトランジスタの数を一時的に減らして微分値Diが目標微分値Dtとなるように制御する。PMOSトランジスタの駆動数が0になっても微分値Diが目標微分値Dtとならない場合、さらにNMOSトランジスタの駆動数を増やして微分値Diが目標微分値Dtとなるように制御する。
一方、半導体スイッチング素子1の立ち下げでは、制御回路101は、駆動しているNMOSトランジスタの数を一時的に減らして微分値Diが目標微分値Dtとなるように制御する。NMOSトランジスタの駆動数が0になっても微分値Diが目標微分値Dtとならない場合、さらにPMOSトランジスタの駆動数を増やして微分値Diが目標微分値Dtとなるように制御する。
このようにすることで、幅広い目標微分値Dtに微分値Diを対応させることができ、伝導ノイズ、放射ノイズの抑制およびスイッチング損失の低減を両立させたスイッチングを行うことができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態において半導体スイッチング素子1のスイッチングについて説明したが、半導体スイッチング素子1の立ち下げにおいて、半導体スイッチング素子1が非駆動となった後にノイズなどの影響によって、非駆動にさせる期間であるにもかかわらず、再び駆動してしまうことがある。
本実施形態では、この意図しない再駆動を防ぐ電子回路について説明する。本実施形態の電子回路200の構成を、図11を用いて説明する。電子回路100と同じ構成要素に関しては、同じ符号を付して説明を省略する。
電流供給回路210は、電流供給回路110に加えて、さらに抵抗R1とキャパシタC1とp型トランジスタを備えている。図11ではp型トランジスタはPMOSトランジスタMpex1と表されているが、第1の実施形態で説明した他のp型トランジスタでもよい。また、図11には表されていないが、PMOSトランジスタMpex1と接続点Dpex1の間にバッファが備えられていてもよい。
抵抗R1は電源電位VDDに接続され、キャパシタC1およびPMOSトランジスタMpex1は並列で抵抗R1に接続されている。キャパシタC1はさらに基準電位に接続され、PMOSトランジスタMpex1はさらに半導体スイッチング素子1のゲート端子と接続されている。
抵抗R1のインピーダンスは、駆動するPMOSトランジスタMpex1のインピーダンスよりも高い。
キャパシタC1の静電容量は、半導体スイッチング素子1によって異なる。半導体スイッチング素子1の内部構造を、図12を用いて説明する。半導体スイッチング素子1には、物理的な構造によって発生する抵抗およびキャパシタが存在する。この抵抗は寄生抵抗、このキャパシタは寄生キャパシタとも称される。
図12には、寄生抵抗Rg、抵抗ゲート端子およびドレイン端子間に発生する寄生キャパシタCgd、ゲート端子およびソース端子間に発生する寄生キャパシタCgsが表されている。
本実施形態では、キャパシタC1の静電容量は、寄生キャパシタCgdの静電容量、寄生キャパシタCgsの静電容量および半導体スイッチング素子1のしきい値電圧Vthから決定される。キャパシタC1の静電容量は、半導体スイッチング素子1の寄生キャパシタCgdの静電容量、寄生キャパシタCgsの静電容量のいずれか一方およびしきい値電圧Vthから定められるようにしてもよい。
なお、半導体スイッチング素子1の寄生抵抗Rgのインピーダンス、寄生キャパシタCgdの静電容量、寄生キャパシタCgsの静電容量の測定は既存の方法によって行うことが可能である。
PMOSトランジスタMpex1は、制御回路101からレベルシフタ103および104、接続点Dpex1を通じて駆動する電圧が入力される。
第1の実施形態と同様に、半導体スイッチング素子1のスイッチングにおける制御回路101および電流供給回路210の動作を説明する。なお、第1の実施形態で説明した1回目から4回目までの立ち上げおよび立ち下げ、5回目の立ち上げ(図3から図7)は第1の実施形態と同様であるため省略する。第1の実施形態で説明した、半導体スイッチング素子1の5回目の立ち下げ(図7)における、制御回路101および電流供給回路210の動作を説明する。なお制御回路101は、半導体スイッチング素子1の4回目の立ち下げにおいて、5回目の立ち下げでは一部の時間帯でNMOSトランジスタを非駆動とし、この一部の時間帯の中でさらにPMOSトランジスタMpex1を駆動させることを決定し、記憶部105に保持させているものとする。
制御回路101は、時刻t10aにおいて駆動しているPMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t10bにおいてNMOSトランジスタを図3から図6と同様に駆動させる。このときのNMOSトランジスタの駆動力WnsはWns1である。
時刻t10cにおいて、制御回路101は、半導体スイッチング素子1の4回目の立ち下げにおいて記憶部105に保持させた情報に基づいて、駆動しているNMOSトランジスタを非駆動にする。さらに、制御回路101は、時刻t10dにおいて、同様に記憶部105に保持させた情報に基づいて、PMOSトランジスタMpex1を駆動させる。このときのPMOSトランジスタの駆動力WpsはWps3であるとする。図7では、制御回路101は時刻t10bから時刻t10dまでNMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t10dから時刻t10eまでPMOSトランジスタMpex1を駆動させることが表されている。
第1の実施形態で行った説明と同様に、NMOSトランジスタの駆動力を0とし、PMOSトランジスタを駆動させることで、電圧Vdsの変化がより緩やかになる。また、微分値D5=目標微分値Dtと表される。制御回路101は、今回駆動させたトランジスタおよび駆動させた時間帯を記憶部105に保存し、次回以降の立ち下げに使用する。
ここで、第1の実施形態と異なり、PMOSトランジスタMpex1を駆動させることで、キャパシタC1から電荷が供給され、半導体スイッチング素子1のゲート端子に電流が流れる。このキャパシタC1の電荷がなくなると、半導体スイッチング素子1のゲート端子に電流が流れなくなる。したがって、半導体スイッチング素子1が非駆動となった後に、ノイズなどの影響によって再び駆動することを防ぐことができる。
その後制御回路101は時刻t10eにおいてPMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t10fにおいてNMOSトランジスタの駆動力WnsがWns1となるようにNMOSトランジスタを駆動させる。
なお、キャパシタC1への電荷の充電は、電圧Vdsが遷移しない間に、電源電位VDDから抵抗R1を通じて行われる。電圧Vdsの遷移とは、一定以上の電圧Vdsの変動が起こる場合のことである。例えば、図7においては、時間帯t9において電圧VdsがVds1から0まで変動することを遷移すると表現する。時間帯t10においても、電圧Vdsが0からVds1まで変動することを遷移すると表現する。
以上のようにして制御回路101は半導体スイッチング素子1の立ち下げを行う。
以上に本実施形態を説明したが、本実施形態においても変形例は様々に実装、実行可能である。まず、第1の実施形態で説明した変形例はそれぞれ実装、実行可能である。
また、本実施形態では、抵抗R1はキャパシタC1に電荷を充電するために備えられている。この抵抗R1の代わりに、p型トランジスタを備えてもよい。抵抗R1の代わりにp型トランジスタを備えた電子回路250の構成を、図13を用いて説明する。電子回路250は、電子回路200と比較して電流供給回路が異なる。他の構成要素は同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
電流供給回路220は、電流供給回路210と異なり、抵抗R1の代わりにp型トランジスタとしてPMOSトランジスタMpcを備えている。PMOSトランジスタMpcは、第1の実施形態で説明した他の種類のp型トランジスタでもよい。また、図13には表されていないが、PMOSトランジスタMpcと接続点Dpcの間にバッファが備えられていてもよい。
PMOSトランジスタMpcのドレイン端子およびソース端子の接続は抵抗R1の接続と同様である。PMOSトランジスタMpcのゲート端子は、接続点Dpc、レベルシフタ103および104を通じて、制御回路101に接続されている。すなわち、PMOSトランジスタMpcは、制御回路101からの電圧を受けて駆動する。
このPMOSトランジスタMpcはキャパシタC1に電荷を充電するために備えられており、半導体スイッチング素子1が駆動している間に、制御回路101からの電圧を受けて駆動し、キャパシタC1に電荷を充電する。
抵抗R1からPMOSトランジスタMpcとすることで、キャパシタC1に電荷を充電するタイミングを制御回路101が決定することができる。また、抵抗R1のインピーダンスは、駆動するPMOSトランジスタMpex1のインピーダンスよりも高いので、PMOSトランジスタMpcとすることで、よりキャパシタC1に電荷を充電しやすくすることができる。
また、本実施形態において、図11ではPMOSトランジスタMpex1は1つだけだったが、複数であってもよい。このような電子回路260は、図14に表されている。すなわち、電子回路260の電流供給回路230では、キャパシタC1および複数のPMOSトランジスタMpexk(kは1以上の整数)は並列で抵抗R1に接続されている。図14では、k=3として、3つのPMOSトランジスタMpexkが備えられている。ここで、PMOSトランジスタMpexkの数および駆動力Wpexkはそれぞれ任意に取りうる。他の構成要素については同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
PMOSトランジスタMpxと同様に、PMOSトランジスタMpexkもバッファBpexkにゲート端子が接続されている。PMOSトランジスタMpexkは、接続点Dpexk、レベルシフタ103および104を通じて制御回路101と接続されている。すなわち、PMOSトランジスタMpexkは、制御回路101から電圧を受けて駆動する。
キャパシタC1に並列して複数のPMOSトランジスタMpexkとすることで、第1の実施形態で説明したPMOSの駆動力Wpsを様々に取ることができる。本実施形態では、PMOSトランジスタMpex1を駆動させることで微分値Diが目標微分値Dtをなる場合を説明したが、複数のPMOSトランジスタMpexkとすることで、様々な目標微分値Dtに対応することができる。
以上説明したように、抵抗R1とキャパシタC1と新たにp型トランジスタをさらに備え、キャパシタC1とこの新たなp型トランジスタを並列に抵抗R1に接続した電流供給回路とすることで、第1の実施形態で説明した効果に加えて、半導体スイッチング素子1の立ち下げにおいて意図しない再駆動が行われることを防ぐことができる。また、この新たなp型トランジスタは複数であってもよいし、抵抗R1はp型トランジスタであってもよい。
(第3の実施形態)
第1の実施形態において半導体スイッチング素子1のスイッチングについて説明したが、半導体スイッチング素子1の立ち上げにおいて、半導体スイッチング素子1が駆動した後にノイズなどの影響によって、駆動させる期間であるにもかかわらず、再び非駆動になってしまうことがある。
本実施形態では、この意図しない再駆動を防ぐ電子回路について説明する。本実施形態の電子回路300の構成を、図15を用いて説明する。電子回路100と同じ構成要素に関しては、同じ符号を付して説明を省略する。
電流供給回路310は、電流供給回路110に加えて、さらに抵抗R1とキャパシタC1とn型トランジスタを備えている。図15ではn型トランジスタはNMOSトランジスタMnex1と表されているが、第1の実施形態で説明した他のn型トランジスタでもよい。また、図15には表されていないが、NMOSトランジスタMnex1と接続点Dnex1の間にバッファが備えられていてもよい。
NMOSトランジスタMnex1は半導体スイッチング素子1のゲート端子に接続され、キャパシタC1および抵抗R1は並列でNMOSトランジスタMnex1および基準電位に接続されている。
抵抗R1のインピーダンスは、駆動するNMOSトランジスタMnex1のインピーダンスよりも高い。
キャパシタC1の静電容量は第2の実施形態で説明したように、寄生キャパシタCgdの静電容量、寄生キャパシタCgsの静電容量および半導体スイッチング素子1のしきい値電圧Vthから決定される。キャパシタC1の静電容量は、半導体スイッチング素子1の寄生キャパシタCgdの静電容量、寄生キャパシタCgsの静電容量のいずれか一方およびしきい値電圧Vthから定められるようにしてもよい。
図15では、抵抗R1およびキャパシタC1と表されているが、第2の実施形態で説明した抵抗およびキャパシタとは同じものであってもよいし、別のものであってもよい。
NMOSトランジスタMpex1は、制御回路101からレベルシフタ103および接続点Dnex1を通じて駆動する電圧が入力される。
第1の実施形態と同様に、半導体スイッチング素子1のスイッチングにおける制御回路101および電流供給回路310の動作を説明する。なお、第1の実施形態で説明した1回目から4回目までの立ち上げおよび立ち下げ(図3から図6)は第1の実施形態と同様であるため省略する。第1の実施形態で説明した、半導体スイッチング素子1の5回目の立ち上げ(図7)における、制御回路101および電流供給回路310の動作を説明する。
また、制御回路101は、半導体スイッチング素子1の4回目の立ち上げにおいて、5回目の立ち上げでは一部の時間帯でPMOSトランジスタを非駆動とし、この一部の時間帯の中でさらにNMOSトランジスタMnex1を駆動させることを決定し、記憶部105に保持させているものとする。
制御回路101は、時刻t9aにおいて駆動しているNMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t9bにおいてPMOSトランジスタを図3から図6と同様に駆動させる。このときのPMOSトランジスタの駆動力WpsはWps1である。
時刻t9cにおいて、制御回路101は、半導体スイッチング素子1の4回目の立ち上げにおいて記憶部105に保持させた情報に基づいて、駆動しているPMOSトランジスタを非駆動にする。さらに、制御回路101は、時刻t9dにおいて、同様に記憶部105に保持させた情報に基づいて、NMOSトランジスタMnex1を駆動させる。このときのNMOSトランジスタの駆動力WnsはWns3であるとする。図7では、制御回路101は時刻t9cから時刻t9fまでPMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t9dから時刻t9eまでNMOSトランジスタMnex1を駆動させることが表されている。
第1の実施形態で行った説明と同様に、PMOSトランジスタの駆動力を0とし、NMOSトランジスタを駆動させることで、電圧Vdsの変化がより緩やかになる。また、微分値D5=目標微分値Dtと表される。制御回路101は、今回駆動させたトランジスタおよび駆動させた時間帯を記憶部105に保存し、次回以降の立ち上げに使用する。
ここで、第1の実施形態と異なり、NMOSトランジスタMnex1を駆動させることで、キャパシタC1から電荷が供給され、半導体スイッチング素子1のゲート端子に電流が流れる。このキャパシタC1の電荷がなくなると、半導体スイッチング素子1のゲート端子に電流が流れなくなる。したがって、半導体スイッチング素子1が駆動した後に、ノイズなどの影響によって再び非駆動となることを防ぐことができる。
その後制御回路101は時刻t9eにおいてNMOSトランジスタを非駆動にさせ、時刻t9fにおいて、PMOSトランジスタの駆動力WpsがWps1となるようにPMOSトランジスタを駆動させる。
なお、キャパシタC1への電荷の充電は、第2の実施形態で説明したように、電圧Vdsが遷移しない間に電源電位VDDから抵抗R1を通じて行われる。
以上のようにして、制御回路101は半導体スイッチング素子1の立ち上げを行う。
以上に本実施形態を説明したが、本実施形態においても変形例は様々に実装、実行可能である。まず、第1の実施形態で説明した変形例はそれぞれ実装、実行可能である。
また、本実施形態では、抵抗R1はキャパシタC1に電荷を充電するために備えられている。この抵抗R1の代わりに、n型トランジスタを備えてもよい。抵抗R1の代わりにn型トランジスタを備えた電子回路350の構成を、図16を用いて説明する。電子回路350は、電子回路300と比較して電流供給回路が異なる。他の構成要素は同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
電流供給回路320は、電流供給回路310と異なり、抵抗R1の代わりにn型トランジスタとしてNMOSトランジスタMncを備えている。NMOSトランジスタMncは、第1の実施形態で説明した他の種類のn型トランジスタでもよい。また、図16には表されていないが、PMOSトランジスタMncと接続点Dncの間にバッファが備えられていてもよい。
NMOSトランジスタMncのドレイン端子およびソース端子の接続は抵抗R1の接続と同様である。NMOSトランジスタMncのゲート端子は、接続点Dpc、レベルシフタ103および104を通じて、制御回路101に接続されている。すなわち、NMOSトランジスタMncは、制御回路101からの電圧を受けて駆動する。
このNMOSトランジスタMncはキャパシタC1に電荷を充電するために備えられており、半導体スイッチング素子1が駆動している間に、制御回路101の電圧を受けて駆動し、キャパシタC1に電荷を充電する。
抵抗R1からNMOSトランジスタMncとすることで、キャパシタC1に電荷を充電するタイミングを制御回路101が決定することができる。また、抵抗R1のインピーダンスは、駆動するNMOSトランジスタMnex1のインピーダンスよりも高いので、NMOSトランジスタMncとすることで、よりキャパシタC1に電荷を充電しやすくすることができる。
また、本実施形態において、図15ではNMOSトランジスタMnex1は1つだけだったが、複数であってもよい。このような電子回路360は、図17に表されている。すなわち、電子回路360の電流供給回路330では、キャパシタC1および複数のNMOSトランジスタMnexk(kは1以上の整数)は並列で抵抗R1およびキャパシタC1に接続されている。図14では、k=3として、3つのNMOSトランジスタMnexkが備えられている。ここで、NMOSトランジスタMpexkの数および駆動力Wnexkはそれぞれ任意に取りうる。他の構成要素については同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
NMOSトランジスタMnxと同様に、NMOSトランジスタMnexkもバッファBnexkにゲート端子が接続されている。NMOSトランジスタMnexkは、接続点Dnexk、レベルシフタ103および104を通じて制御回路101と接続されている。すなわち、NMOSトランジスタMnexkは、制御回路101から電圧を受けて駆動する。
抵抗R1およびキャパシタC1に並列して複数のNMOSトランジスタMnexkとすることで、第1の実施形態で説明したNMOSの駆動力Wnsを様々に取ることができる。本実施形態では、NMOSトランジスタMnex1を駆動させることで微分値Diが目標微分値Dtをなる場合を説明したが、複数のNMOSトランジスタMnexkとすることで、様々な目標微分値Dtに対応することができる。
また、第2の実施形態で説明した電子回路200、250および260と、本実施形態で説明した電子回路300、350および360と組み合わせてもよい。例えば、電子回路260と電子回路360を組み合わせ、図18に示す電子回路370としてもよい。電子回路370の電流供給回路340の接続関係は、電子回路260の電流供給回路230と電子回路360の電流供給回路330を組み合わせたものである。
以上説明したように、抵抗R1とキャパシタC1と新たにn型トランジスタをさらに備え、キャパシタC1とこの新たなn型トランジスタを並列に抵抗R1に接続した電流供給回路とすることで、第1の実施形態で説明した効果に加えて、半導体スイッチング素子1の立ち下げにおいて意図しない再駆動が行われることを防ぐことができる。また、この新たなn型トランジスタは複数であってもよいし、抵抗R1はn型トランジスタであってもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。