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JP6319258B2 - エンジンの断熱構造 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンの断熱構造に関するものである。
従来、エンジン部品のような高温ガスに晒される金属製品では、高温ガスからの熱伝達、すなわち冷却損失を抑制するために、その金属製母材の表面に断熱層を形成することが行われている。その一例として、エンジンの燃焼室を区画するピストン本体の頂面に、ジルコニア等の無機酸化物や、中空粒子を含有する有機系材料からなる断熱層を形成することが知られている。
ところで、燃焼室を区画するピストン本体の頂面とシリンダヘッドの下面との間隙部にスキッシュエリアが形成されることがある。このようなピストン本体の頂面のうち、スキッシュエリアを形成する面(スキッシュエリア面)に断熱層が設けられている場合、当該断熱層の温度は高温となり、延いてはスキッシュエリア面自体が高温となる。このため、燃焼工程において、スキッシュエリアに高温高圧のエンドガス(点火プラグから遠い場所にある未燃焼の混合気)が流れ込んだ際に、高温のスキッシュエリア面により、エンドガスからスキッシュエリア面への放熱が妨げられて、ノッキングが発生し得る。そして、スキッシュエリア面に形成された断熱層にクラックが生じ、断熱層の損傷・剥離が引き起こされ、断熱性能が失われる。
そこで、ピストン本体の頂面のうち、スキッシュエリア面上には断熱層を形成せず、それ以外の部分にのみ断熱層を形成した内燃機関が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の内燃機関によれば、スキッシュエリア面上には断熱層を形成していないので、エンドガスからのスキッシュエリア面への放熱が促進され、ノッキングの発生が抑制される。
特開2011−169232号公報
しかしながら、特許文献1の構成では、スキッシュエリアにおけるノッキング発生を抑制できるものの、冷却損失の低減という観点からは、スキッシュエリア面も含めたピストン本体の頂面全体に断熱層を形成することが望ましい。
そこで、本発明では、スキッシュエリア面に断熱層を形成しつつ、ノッキングの発生によって当該断熱層に大きなクラックが生じるのを防止し、断熱層の損傷・剥離を抑えることを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明では、エンジン部品の表面に設けられた断熱層に自己修復機能材としての金属顔料を含有させるようにした。
すなわち、ここに開示するエンジンの断熱構造は、エンジン部品の基材表面に断熱層が設けられたものであって、上記断熱層は、金属顔料を含有し、上記エンジン部品の基材表面は、上記エンジンの燃焼室を区画するピストン本体の頂面であり、上記ピストン本体の頂面は、上記燃焼室のスキッシュエリアを形成するスキッシュエリア面を備えており、上記ピストン本体の頂面に設けられた断熱層のうち、上記スキッシュエリア面上に設けられた断熱層にのみ上記金属顔料が含有されており、上記金属顔料は、上記断熱層にクラックが生じた場合に、エンドガスに晒されることにより溶融してクラックの隙間を埋め、クラックの進行を止めるとともにクラックを修復する自己修復機能を有することを特徴とする。
エンジン部品の表面が高温高圧のガスに晒された状態で、ノッキングが発生すると、その表面に形成された断熱層にクラックが生じ得る。このクラックが大きく深くなると断熱層の重大な損傷・剥離をもたらし、その断熱性能が失われる。
本発明によれば、上述のごとく断熱層にクラックが生じた場合であっても、当該クラックに高温高圧のエンドガスが侵入して断熱層に含有される金属顔料に到達する。そして、この金属顔料が溶融することによりクラックが修復される。すなわち、上記金属顔料は、上記断熱層にクラックが生じた場合に、エンドガスに晒されることにより溶融してクラックの隙間を埋め、クラックの進行を止めるとともにクラックを修復する自己修復機能を有する。このような金属顔料の自己修復機能によって、上記クラックの進行が抑制され、断熱層の損傷・剥離による断熱性能の低下を防ぐことができる。
なお、上記エンジン部品の基材表面は、上記エンジンの燃焼室を区画するピストン本体の頂面であり、上記ピストン本体の頂面は、上記燃焼室のスキッシュエリアを形成するスキッシュエリア面を備えており、上記ピストン本体の頂面に設けられた断熱層のうち、上記スキッシュエリア面上に設けられた断熱層にのみ上記金属顔料が含有されている。上述のごとく、スキッシュエリアではノッキングが発生しやすい傾向があり、ピストン本体の頂面のスキッシュエリア面上に設けられた断熱層にのみ金属顔料を含有させることにより、効果的に断熱層の損傷を防ぐことができる。
好ましい態様では、上記金属顔料の平均粒径は、1μm以上30μm以下であり、上記金属顔料の溶融温度は、350℃以上600℃以下である。これにより、金属顔料の自己修復機能を効果的に発揮させることができ、断熱層の損傷・剥離による断熱性能の低下を防ぐことができる。
好ましい態様では、上記断熱層は、多数の中空粒子と、上記中空粒子を上記エンジン部品の基材表面に保持するとともに、上記中空粒子間を埋めて上記断熱層の母材を形成するバインダとを含む。これにより、断熱層の断熱性能を効果的に向上させることができる。
エンドガスの温度は約600℃程度になることから、当該温度近傍か、それ以下の溶融温度を有し且つ通常の燃焼工程では溶融しない金属顔料を使用することが好ましい。具体的には例えば、Alを含有する亜鉛アルミニウム合金粉末(溶融温度380℃)や、Si、Zn、Mg、Cu等を含有するAl合金粉末等が挙げられる。特に好ましくは、上記金属顔料は、亜鉛アルミニウム合金粉末である。これにより、断熱層にクラックが生じた場合であっても、効果的にクラックを修復させることができる。
好ましい態様では、上記バインダは、シリコーン系樹脂である。これにより、スキッシュエリア面以外の頂面における断熱層の熱伝導性を低下させることができるとともに、ピストン本体の頂面と断熱層との優れた密着性を得ることができる。
好ましい態様では、上記中空粒子は、ガラスバルーンである。これにより、スキッシュエリア面以外の頂面における断熱層の熱伝導性を低くすることができるとともに、その強度も向上させることができる。
以上述べたように、本発明によると、断熱層にクラックが生じた場合、当該クラックに高温高圧のガスが侵入したとしても、エンジン部品表面に到達する前に、断熱層に含有される金属顔料に到達し、この金属顔料が溶融することによって、すなわち金属顔料の自己修復機能によって、上記クラックがさらに深く大きくなるのを防止し、断熱性能の喪失を防ぐことができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジンを模式的に示す断面図である。 図2は、図1の実施形態に係るピストンの冠面を示す平面図である。 図3は、図2のピストンの縦断面図である。 図4は、図3の断熱層のうちキャビティ面に設けられた断熱層を示す拡大断面図である。 図5は、図3の断熱層のうちスキッシュエリア面に設けられた断熱層を示す拡大断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
<エンジンの構成>
図1に示す直噴エンジンEは、ピストン1、シリンダブロック2、シリンダヘッド3、シリンダヘッド3の吸気ポート5を開閉する吸気バルブ4、排気ポート7を開閉する排気バルブ6、インジェクタ8、点火プラグ9を備える。ピストン1がシリンダブロック2のシリンダボア内を往復動する。
エンジンの燃焼室は、ピストン1の冠面10、シリンダブロック2、シリンダヘッド3、吸排気バルブ4,6の傘部前面(燃焼室に臨む面)で形成される。図1、図2に示すように、ピストン1の冠面10の略中央部には、燃焼室のキャビティを形成する凹陥状のキャビティ部11が設けられている。また、冠面10の外縁側には、燃焼室のキャビティから離れた外縁側にスキッシュエリアを形成するスキッシュエリア部12が存在する。本実施形態に係るピストン1の冠面10において、スキッシュエリア部12はスキッシュエリア部12a,12b,12c,12dからなっている。
<断熱層>
図3に示すように、ピストン1は、該ピストン1の基材であるピストン本体19と、エンジンEの燃焼室の冷却損失低減の観点からピストン本体19の頂面に設けられた断熱層21,22とを備えている。
ピストン本体19はT7処理又はT6処理を施してなるアルミニウム合金製である。ピストン本体19の頂面は、上記キャビティ部11を構成するキャビティ面11’と、上記スキッシュエリア部12を構成するスキッシュエリア面12’とを備えている。本実施形態において、断熱層22は、上記スキッシュエリア面12’上に設けられており、断熱層21は、スキッシュエリア面12’以外の頂面、例えば上記キャビティ面11’等の頂面に設けられている。
断熱層21は、図4に示すように、中空粒子31と、バインダ材(バインダ)32とを含む層である。
すなわち、断熱層21は、バインダ材32と、その中に分散された多数の中空粒子31とを含む。バインダ材32は、中空粒子31をピストン本体19の頂面に保持するとともに、中空粒子31間を埋めて断熱層21の母材を形成する。バインダ材32は例えばシリコーン系樹脂などの低熱伝導性材料であるとともに、中空粒子31は、その内部空間に熱伝導性の低い空気を含有する。このため、断熱層21は低熱伝導性の層になっている。
中空粒子31としては、シリカバルーン、ガラスバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、エアロゲルバルーン等のSi系酸化物成分(例えば、シリカ(SiO))又はAl系酸化物成分(例えば、アルミナ(Al))を含有するセラミック系中空粒子を採用することが好ましく、特にガラスバルーンを採用することが好ましい。これにより、断熱層21の熱伝導性を低くすることができるとともに、その強度も向上させることができる。
なお、中空粒子31は好ましくは球状である。中空粒子31の平均粒径は、断熱層21の断熱性向上の観点から、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上45μm以下、特に好ましくは15μm以上40μm以下である。断熱層21中における中空粒子31の含有量は、断熱層21の断熱性向上の観点から、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上45質量%以下、特に好ましくは15質量%以上40質量%以下である。
バインダ材32としては、低熱伝導性材料であるシリコーン系樹脂を用いることができ、例えば、メチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂に代表される、分岐度の高い3次元ポリマーからなるシリコーン系樹脂を好ましく用いることができる。シリコーン系樹脂の具体例としては、例えばポリアルキルフェニルシロキサンを挙げることができる。これにより、断熱層21の熱伝導性を低下させることができるとともに、ピストン本体19の頂面と断熱層21との優れた密着性を得ることができる。
断熱層22は、上記断熱層21と同様に、バインダ材32に多数の中空粒子31が分散して構成されているが、図5に示すように、さらに金属顔料33が含有されている点で、断熱層21と異なる。
本実施形態において、断熱層22に含有される中空粒子31及びバインダ材32は、断熱層21に含有される材料と同様の材料を使用しているが、これらは異なる材料を用いる構成としてもよい。すなわち、これらは断熱層21,22において、全く同一の材料を用い、同一の配合量としてもよいし、同一の材料で配合量を変化させたり、異なる材料を用いてもよい。これらの条件を調節することにより、ピストン本体19の頂面において、優れた断熱性能を備えつつ耐熱性の高い断熱構造を得ることができる。
ここで、本実施形態に係る断熱構造は、ピストン本体19のスキッシュエリア面上に設けられた断熱層22にのみ金属顔料33が含有されていることを特徴とする。
金属顔料33は、断熱層22にクラックが生じた場合に、高温のエンドガスに晒されることにより溶融してクラックの隙間を埋め、クラックの進行を止めるとともにクラックを修復する機能(自己修復機能)を有する。このような金属顔料33は、エンドガスの温度が600℃前後になることから、例えば溶融温度が約600℃以下であるとともに、通常の焼成工程では溶融しないように、溶融温度約350℃以上の材料が好ましい。具体的には、Alを含有するZn合金粉末、Si、Zn、Mg、Cu等を含有するAl合金粉末等を用いることができる。すなわち例えば、Zn−Al系合金粉末(亜鉛アルミニウム合金粉末、溶融温度約380℃)、Al−Si系合金粉末(溶融温度約530℃)、Al−Cu系合金粉末(溶融温度約500℃)、Al−Si−Mg系合金粉末(溶融温度約580℃)、Al−Zn−Mg−Cu系合金粉末(溶融温度約470℃)、Al−Si−Cu−Mg系合金粉末(溶融温度約580℃)等が挙げられ、特に好ましくは、Zn−Al系合金粉末を用いることができる。
本構成によれば、ノッキングが発生しやすいスキッシュエリアにおいて、上述のごとくスキッシュエリア面に設けられた断熱層22にクラックが生じた場合、当該クラックに高温高圧のエンドガスが侵入して断熱層22に含有される金属顔料33に到達し、この金属顔料33が溶融する。すなわち金属顔料33の自己修復機能によって、上記クラックの進行が抑制され、断熱層22の損傷・剥離による断熱性能の低下を防ぐことができる。
また、スキッシュエリア面以外の頂面には、金属顔料33を含有しない構成の断熱層21を設けることにより、優れた断熱性能をもたらすことができる。そうして、ピストン本体19の頂面全体で優れた断熱性能を得つつ、断熱層の損傷・剥離を効果的に抑えることができる。
金属顔料33の平均粒径は、自己修復機能を効果的に発揮させる観点から、好ましくは1μm以上30μm以下、好ましくは2μm以上20μm以下、好ましくは3μm以上10μm以下である。また、金属顔料33の断熱層22への含有量は、効果的な自己修復機能をもたせつつ優れた断熱性を維持する観点から、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、より好ましくは1質量%以上7.5質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以上5質量%以下である。
なお、断熱層21の厚さは、優れた断熱性能を得る観点から、好ましくは50μm以上150μm以下、より好ましくは60μm以上120μm以下、特に好ましくは60μm以上100μm以下である。
また、断熱層22の厚さは、断熱層21と同程度の厚さか、又はその半分程度以下であってもよく、好ましくは15μm以上150μm以下、より好ましくは25μm以上120μm以下、特に好ましくは30μm以上100μm以下である。断熱層22の厚さが断熱層21の厚さの半分程度以下である場合には、断熱層22にクラックが生じたときであっても、そのクラックの進行を効果的に抑制することができる。
<断熱層の形成方法>
ピストン本体19と断熱層21,22を形成するための断熱材料を準備する。
ピストン本体19については、その頂面にキャビティ形成用の凹部を形成しておき、脱脂処理により、ピストン本体19の頂面に付着している油脂や指紋等の汚れを除去する。
また、断熱層21,22の断熱材料として、バインダ材32としての液状シリコーン樹脂と、中空粒子31としてのガラスバルーンとを攪拌・混合した断熱材料Aを準備する。必要に応じて、増粘剤や希釈溶剤を添加して断熱材料の粘度を調整する。また、上記断熱材料Aに、断熱層22に含有するための金属顔料33としての市販の亜鉛アルミニウム合金粉末を添加してさらに撹拌・混合した断熱材料Bを準備する。
ピストン本体19と断熱材料A,B、特にシリコーン樹脂との付着力を高めるべく、ピストン本体19の頂面に粗面化処理を施すことが好ましい。粗面化処理としては、例えばサンドブラスト等のブラスト処理を行うことが好ましい。例えば、ブラスト処理は、エアーブラスト装置を使用し、研削材として粒度#30のアルミナを用い、圧力0.39MPa、時間45秒、距離100mmの処理条件で行うことができる。なお、これに限らず、ピストン本体19がAl合金からなる場合、アルマイト処理によってピストン本体19の頂面に微小凹凸を形成するようにしてもよい。例えば、アルマイト処理は、シュウ酸浴を用い、浴温20℃、電流密度2A/dm、時間20分の処理条件で行うことができる。
断熱層21,22は、いずれを先に形成してもよい。以下の記載では、断熱層21を先に形成する場合について説明する。
まず、ピストン本体19のスキッシュエリア面12’に、例えばマスキングテープや樹脂系のマスキング膜等を用いてマスキングを行った後、上記断熱材料Aを、ピストン本体19のスキッシュエリア面12’以外の頂面にスプレーや刷毛等を用いて塗布する。続いて、熱風乾燥、赤外線ヒータ等により、塗布された断熱材料の予備乾燥を行う。
そして、必要に応じて、当該塗布と予備乾燥を繰り返し(重ね塗り)、所望の塗布厚さにする。
次に、断熱層21の断熱材料Aに対して、例えば、180℃前後の温度で数時間ないし数十時間の加熱処理を行う。これにより、シリコーン樹脂が硬化して、多数の中空粒子31が密に充填されるとともに、それら粒子間がバインダ材32で埋まった断熱層21が得られる。また、スキッシュエリア面12’上に施されたマスキングも焼失する。
次に、断熱層21が形成されたスキッシュエリア面12’以外の頂面上に新たにマスキングを施す。そして、亜鉛アルミニウム合金粉末を含有する断熱材料Bを、ピストン本体19のスキッシュエリア面12’上にスプレーや刷毛等を用いて塗布する。続いて、熱風乾燥、赤外線ヒータ等により、塗布された断熱材料の予備乾燥を行う。
この場合も、必要に応じて、当該塗布と予備乾燥を繰り返し(重ね塗り)、所望の塗布厚さにする。
そして、上記ピストン本体19のスキッシュエリア面12’以外の頂面に施したマスキングを除去した後、断熱層22の断熱材料Bに対して、同様に、180℃前後の温度で数時間ないし数十時間の加熱処理を行う。これにより、シリコーン樹脂が硬化して、多数のガラスバルーンが密に充填されるとともに、亜鉛アルミニウム合金粉末が分散し、それら粒子間がバインダ材32で埋まった断熱層22が得られる。
また、断熱材料の塗布方法の一形態として、ピストン本体19のスキッシュエリア面以外の頂面に断熱材料を載せ、その頂面形状に倣った成形面を有する成形型によって断熱材料を上記頂面に押し付けて頂面全体に拡げてもよい。この方法の場合、スキッシュエリア面とそれ以外の頂面とで断熱層の形成工程を分けてもよいが、ピストン本体19において各々の頂面上に必要量の断熱材料を各々置いて、成形型を押し付けることにより、断熱層21,22を一度に形成するようにしてもよい。なお、この方法によれば、成形中に成形型を加熱することにより、断熱層21,22の焼成も同時に行うことができる。これにより、断熱層21,22の製造工程を簡略化することができる。また、断熱層21,22の焼成を同時に行う場合には、ピストン本体19を、例えばピストンスカートの内側から水冷又は空冷する等の方法によって冷却する構成とすることができる。これにより、断熱層21,22とピストン本体19の頂面との密着性を向上させることができる。
本発明は、エンジン部品の基材表面に形成された断熱層に大きなクラックが発生するのを防止し、断熱層の損傷・剥離を抑えることができるので、極めて有用である。
1 ピストン
11’ キャビティ面
12’ スキッシュエリア面
19 ピストン本体
21 断熱層
22 断熱層
31 中空粒子
32 バインダ材
33 金属顔料
E エンジン

Claims (6)

  1. エンジン部品の基材表面に断熱層が設けられたエンジンの断熱構造であって、
    上記断熱層は、金属顔料を含有し、
    上記エンジン部品の基材表面は、上記エンジンの燃焼室を区画するピストン本体の頂面であり、
    上記ピストン本体の頂面は、上記燃焼室のスキッシュエリアを形成するスキッシュエリア面を備えており、
    上記ピストン本体の頂面に設けられた断熱層のうち、上記スキッシュエリア面上に設けられた断熱層にのみ上記金属顔料が含有されており、
    上記金属顔料は、上記断熱層にクラックが生じた場合に、エンドガスに晒されることにより溶融してクラックの隙間を埋め、クラックの進行を止めるとともにクラックを修復する自己修復機能を有する
    ことを特徴とするエンジンの断熱構造。
  2. 請求項1において、
    上記金属顔料の平均粒径は、1μm以上30μm以下であり、
    上記金属顔料の溶融温度は、350℃以上600℃以下である
    ことを特徴とするエンジンの断熱構造。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    上記金属顔料は、亜鉛アルミニウム合金粉末である
    ことを特徴とするエンジンの断熱構造。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
    上記断熱層は、
    多数の中空粒子と、
    上記中空粒子を上記エンジン部品の基材表面に保持するとともに、上記中空粒子間を埋めて上記断熱層の母材を形成するバインダとを含む
    ことを特徴とするエンジンの断熱構造。
  5. 請求項4において、
    上記バインダは、シリコーン系樹脂である
    ことを特徴とするエンジンの断熱構造。
  6. 請求項4又は請求項5において、
    上記中空粒子は、ガラスバルーンである
    ことを特徴とするエンジンの断熱構造。
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