JP2017015053A - 内燃機関の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】断熱性能に優れ、亀裂や剥離の生じ難い断熱膜を効率的に形成できる内燃機関の製造方法を提供する。【解決手段】燃焼室に臨む基材の表面に断熱膜を備えた内燃機関の製造方法であって、基材の表面に多孔質断熱層を形成する第1のステップと、多孔質断熱層の表面を溶融させ、凝固させることで、多孔質断熱層の表面に表面緻密層を形成し、多孔質断熱層と表面緻密層からなる断熱膜を形成する第2のステップと、を備える内燃機関の製造方法である。【選択図】図1
Description
本発明は、たとえば燃焼室に臨む基材の表面に断熱膜を備えた内燃機関の製造方法に関するものである。
ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関は、主にエンジンブロックやシリンダヘッド、ピストンから構成されており、その燃焼室は、シリンダブロックのボア面と、このボアに組み込まれたピストン頂面と、シリンダヘッドの底面と、シリンダヘッド内に配設された吸入および排気バルブの頂面から構成されている。昨今の内燃機関に要求される高出力化にともなってその冷却損失を低減することが重要になってくるが、この冷却損失を低減する方策の一つとして、燃焼室の内壁に熱伝導率の低い多孔質の断熱膜を形成する方法を挙げることができ、この多孔質の断熱膜によってエンジンの熱効率を高めることができる。
ところで、内燃機関の燃焼室の基材の表面に多孔質の断熱膜が露出している場合に、断熱膜の気孔内に燃料が入り込み、正常な燃焼が妨げられる惧れがある。また、多孔質の表面から付着粒子が脱落し、ピストンやピストンリングとシリンダの間に噛み込んで傷付きやスカッフィングを発生させる惧れがある。
そこで、このような問題を解消するべく、特許文献1には、エンジンの燃焼室を構成する内壁に多孔質断熱層(断熱多孔質層)が形成され、この上に緻密な断熱層(表面緻密層)が形成されたエンジン燃焼室構造が開示されている。特許文献1に記載のエンジン燃焼室構造によれば、断熱層が表面緻密層と断熱多孔質層の二層構造であることから、エンジン燃焼室の断熱性能が向上し、燃費が向上するとしている。
ところで、特許文献1で開示される断熱層を構成する表面緻密層と断熱多孔質層は全くの別部材であり、これら別部材同士を接着剤やろう材等の接合層を介して接続する旨の記載がある。
このように、断熱多孔質層と表面緻密層が異なる材料からなる別部材であることより、双方の熱膨張率が異なり、エンジンの駆動や停止に伴う熱応力が繰り返し印加された際に、断熱多孔質層と表面緻密層の界面から表面緻密層に亘る亀裂が生じ易く、表面緻密層が剥離するといった問題が懸念される。また、断熱膜の製造においては、断熱多孔質層と表面緻密層を別工程で製作し、断面多孔質層の表面に接着剤を塗布し、乾燥したり、ろう付け等した後に表面緻密層の接着を図ることから、製造に多工程を要し、生産性が低くなるといった問題もある。
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、内燃機関の燃焼室に臨む基材の表面において、断熱性能に優れ、亀裂や剥離の生じ難い断熱膜を効率的に形成できる内燃機関の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による内燃機関の製造方法は、燃焼室に臨む基材の表面に断熱膜を備えた内燃機関の製造方法であって、前記基材の表面に多孔質断熱層を形成する第1のステップと、前記多孔質断熱層の表面を溶融させ、凝固させることで、該多孔質断熱層の表面に表面緻密層を形成し、該多孔質断熱層と該表面緻密層からなる前記断熱膜を形成する第2のステップと、を備えたものである。
本発明の内燃機関の製造方法は、多孔質断熱層の表面を溶融させ、凝固させて多孔質断熱層の表面に表面緻密層を形成することにより、同じ素材で気孔率の異なる二つの連続した層(表面緻密層は気孔がない層であってもよい)からなる断熱膜を形成することにより、別部材同士を接着して形成された断熱膜の場合に生じ得る亀裂や剥離といった課題を解消できるものである。また、多孔質断熱層の表面を溶融させて表面緻密層を形成することから、多孔質断熱層と表面緻密層を別部材で形成し、双方を接着等する形成方法に比して工程数は格段に少なくなり、生産効率も格段に向上する。
ここで、断熱膜が形成される内燃機関の燃焼室に臨む基材とは、シリンダブロックのボア面、このボアに組み込まれたピストン頂面、シリンダヘッドの底面、シリンダヘッド内に配設された吸入および排気バルブの頂面のいずれか一つもしくは複数が対象である。また、基材を構成する母材としては、アルミニウムやその合金、鉄系の材料にアルミメッキを施したものなどを挙げることができる。
また、多孔質断熱層は、たとえば低密度のZrO2−SiO2を多孔質化することで、多孔質構造と相俟って、低熱伝導率と低体積熱容量の両立を図ることができる。ZrO2−SiO2粉末等を溶射することにより、基材の表面に吹き付ける等することで多孔質断熱層の形成をおこなうことができる(第1のステップ)。
なお、多孔質断熱層を二層の溶射層から形成してもよい。たとえば、無機粉末(ベントナイト粉末等)とNi系合金粉末(Ni-Cr粉末等)を混合し、この混合粉末を溶射にて基材の表面に吹き付けて第一の溶射層を形成し、この上に、ZrO2−SiO2粉末等を溶射にて吹き付けて第二の溶射層を形成することができる。
第2のステップにおける多孔質断熱層の表面の溶融は、たとえばレーザビーム、電子ビーム、イオンビーム等の高エネルギビームを照射することによっておこなわれる。
ここで、第2のステップにて多孔質断熱層の表面に形成される「表面緻密層」とは、多孔質断熱層の溶融および凝固によって気孔が完全に閉塞した表面層、もしくは、気孔が残っていても断熱層に比して格段に気孔率の低い表面層のことである。
なお、溶射された多孔質断熱層の表面を封孔処理する従来の方法としては、低融点金属(Cu、Zn等)を含浸させたり、シリカ系に変化する溶剤を塗布し、焼付ける方法などが挙げられる。しかしながら、これらの方法では、熱伝導率が増加したり、溶剤が気孔の全部に浸入したり、焼付け処理に高温で長時間を要するなどの課題があり、内燃機関の製造ラインに導入し難い。これらの方法に対し、本発明のように多孔質断熱層の表面を溶融させて表面緻密層を形成する方法では、この表面処理に上記するレーザビーム等を使用することで短時間の処理が実現でき、内燃機関の製造ラインへの導入に好適となる。
ここで、第2のステップにおいて、多孔質断熱層の表面にカーボンを被覆した後にレーザビームを照射することにより、多孔質断熱層の表面を溶融させるのが好ましい。
多孔質断熱層の表面にカーボンを被覆した後にレーザビームの照射をおこなうことで、レーザビームの吸収率を高めることができ、多孔質断熱層の全体を効率的かつ均一に溶融(再溶融)させることが可能になる。
また、再溶融されてできた表面緻密層にカーボンが含有されていることで燃焼時の輻射熱を吸収し易くでき、輻射伝熱を有効に多孔質断熱層に吸収させることができ、多孔質断熱層の表面温度を急峻に上昇させることができる。
さらに、燃焼後の多孔質断熱層の温度を放射によって早期に降下させることができ、高い冷却損失低減効果が得られる。
ここで、「カーボン」とは、グラファイトや煤などを包含する意味である。
また、第2のステップにおいて、多孔質断熱層の厚みの20%以下で、10μm以上の層厚の表面緻密層を形成するのが好ましい。
たとえばレーザビームの照射にて多孔質断熱層の表面を溶融させて表面緻密層を形成するに当たり、多孔質断熱層と表面緻密層の界面から多孔質断熱層にかけて、亀裂が生じない表面緻密層の層厚を本発明者等が検証した。その結果、表面緻密層の厚みを多孔質断熱層の厚みの20%以下にするのがよいことが特定されている。
また、断熱膜形成粒子の脱落を防止する観点から、表面緻密層の厚さは10μm以上にするのがよいことが特定されている。
以上の説明から理解できるように、本発明の内燃機関の製造方法によれば、多孔質断熱層と、当該多孔質断熱層の表面が溶融されてできた表面緻密層とからなる断熱膜を具備することにより、亀裂や剥離の生じ難い断熱膜によって断熱性に優れた内燃機関を提供することができる。
以下、図面を参照して、本発明の内燃機関の製造方法の実施の形態を説明する。
(内燃機関の製造方法の実施の形態1)
図1は本発明の内燃機関の製造方法の実施の形態1のフロー図である。
図1は本発明の内燃機関の製造方法の実施の形態1のフロー図である。
内燃機関の製造方法は、図1で示すように、まず、内燃機関の燃焼室に臨む基材の表面に多孔質断熱層を形成する(ステップS1:第1のステップ)。
ここで、内燃機関の燃焼室に臨む基材とは、シリンダブロックのボア面やこのボアに組み込まれたピストン頂面、シリンダヘッドの底面、シリンダヘッド内に配設された吸入および排気バルブの頂面のいずれか一つもしくは複数である。また、基材は、アルミニウムやその合金、鉄系の材料にアルミメッキを施したものなどから形成される。
対象の基材の表面に対し、たとえばZrO2−SiO2粉末等を溶射して吹き付けることにより、ZrO2−SiO2系の溶射被膜からなる多孔質断熱層を形成することができる。
また、無機粉末(ベントナイト粉末等)とNi系合金粉末(Ni-Cr粉末等)を混合し、この混合粉末を溶射にて基材の表面に吹き付けて第一の溶射層を形成し、この上に、ZrO2−SiO2粉末等を溶射にて吹き付けて第二の溶射層を形成し、第一、第二の溶射層からなる多孔質断熱層を基材の表面に形成してもよい。
基材の表面に多孔質断熱層が形成されたら、多孔質断熱層の表面を溶融させ、凝固させることで多孔質断熱層の表面に表面緻密層を形成し、多孔質断熱層と表面緻密層からなる断熱膜を形成する(ステップS2:第2のステップ)。
この多孔質断熱層の表面の溶融は、レーザビーム、電子ビーム、イオンビーム等の高エネルギビームを照射することによっておこなう。
レーザビーム等を多孔質断熱層の表面に照射し、表面を溶融させ、凝固させることにより、気孔が完全に閉塞した表面緻密層、もしくは、気孔が残っていても多孔質断熱層に比して格段に気孔率の低い表面緻密層が形成される。
図示する断熱膜の形成方法によれば、多孔質断熱層の表面を溶融させて表面緻密層を形成することから、多孔質断熱層と表面緻密層を別部材で形成し、双方を接着等する形成方法に比して工程数は格段に少なくなり、生産効率も格段に向上する。
また、多孔質断熱層の表面を溶融させ、凝固させて多孔質断熱層の表面に表面緻密層を形成することにより、同じ素材で気孔率の異なる二つの連続した層からなる断熱膜を形成することにより、別部材同士を接着して形成された断熱膜の場合に生じ得る亀裂や剥離といった課題を解消することができる。
(内燃機関の製造方法の実施の形態2)
図2は本発明の内燃機関の製造方法の実施の形態2のフロー図である。
図2は本発明の内燃機関の製造方法の実施の形態2のフロー図である。
図2で示す製造方法は、図1で示す形成方法のステップS1,S2の間に、多孔質断熱層の表面にカーボンを被覆するというステップS2’を含む製造方法である。
ここで、カーボンとは、グラファイトや煤などである。
多孔質断熱層の表面にカーボンを被覆した後にレーザビームの照射をおこなうことで、レーザビームの吸収率を高めることができ、多孔質断熱層の全体を効率的かつ均一に溶融(再溶融)させることができる。
また、再溶融されてできた表面緻密層にカーボンが含有されていることで燃焼時の輻射熱を吸収し易くでき、輻射伝熱を有効に多孔質断熱層に吸収させることができ、多孔質断熱層の表面温度を急峻に上昇させることができる。さらに、燃焼後の多孔質断熱層の温度を放射によって早期に降下させることができ、高い冷却損失低減効果が得られる。
(断熱膜の実施例)
図3(a)は、断熱膜の形成方法の実施の形態1によって形成された断熱膜の断面組織を示した写真図である。図示する断熱膜は、第一の溶射層、第二の溶射層の2層構造の断熱膜である。
図3(a)は、断熱膜の形成方法の実施の形態1によって形成された断熱膜の断面組織を示した写真図である。図示する断熱膜は、第一の溶射層、第二の溶射層の2層構造の断熱膜である。
図示する表面緻密層の厚みt2は、断熱膜全体の厚みt1の17%程度である。
本発明者等は、多孔質断熱層へのレーザビームの照射による再溶融と急冷凝固により、亀裂の発生の有無を検証した。そこで、まず、亀裂発生のないレーザビームの照射条件を検討した結果、レーザビームの種類としては、生産性の観点からレーザマーキング機を使用し、ナノ秒パルスのファイバーレーザ装置にて出力、周波数、スキャン速度を変化させながら、亀裂の生じない条件範囲を検証した。
その結果、表面緻密層の厚みを多孔質断熱層の厚みの20%以下に設定することで亀裂が生じないことが分かり、図示例のように20%以下の17%程度の厚みの表面緻密層としている。
また、断熱膜形成粒子の脱落を防止する観点から、表面緻密層の厚さは10μm以上にするのがよいことが分かった。
図示する断熱膜の表面緻密層は、多孔質断熱層の厚みの20%以下(多孔質断熱層全体が700μm程度で表面緻密層の厚みはその17%程度)で、10μm以上の層厚(100μm程度)を有しており、したがって、亀裂が生じていない。
これに対し、図3(b)で示す比較例は、表面緻密層の厚みが多孔質断熱層の厚みの30%程度であることから、多孔質断熱層内部や断熱膜内部から表面緻密層に亘る亀裂が発生していることが分かる。
また、図4は断熱膜の形成方法の実施の形態2によって形成された断熱膜の断面組織を示した写真図である。
写真図から明らかなように、表面緻密層の内部に多数のカーボンが内在している。ここで、図示例では、多孔質断熱層の表面にカーボンを塗布してレーザビームの照射をおこなうことで、レーザビームの吸収率は0.9と極めて高い値となった。
なお、高放射率材(高吸収率材)は金属酸化物系の材料もあり得るが、光の波長に対して高い放射を示すカーボン(グラファイト、煤系の材料)が好適である。また、カーボンの被覆に関し、通常の黒色潤滑・離型剤として適用されるグラファイトスプレーを使用することができ、このグラファイト成分は被膜を形成する樹脂材料に対して50質量%以下添加されている。
図4で示す断熱膜では、市販のグラファイトスプレーを多孔質断熱層に厚み10μm以下塗布し、レーザビームを照射したものである。表面緻密層におけるグラファイト量は塗布厚さや含有量によって制御できるが、面積率で0.5〜10%の範囲が望ましい。0.5%未満では放射に寄与する割合が小さく、10%を超えると熱伝導量が上昇するためである。
次に、内燃機関の製造方法の適用例を図5を参照して説明する。ここで、図5は、燃焼室に臨む基材の全部に断熱膜HBが形成されてなる内燃機関を模擬したものである。
図示する内燃機関Nは、ディーゼルエンジンをその対象としたものであり、その内部に冷却水ジャケットJが形成されたシリンダブロックSBと、シリンダブロックSB上に配設されたシリンダヘッドSHと、シリンダヘッドSH内に画成された吸気ポートKPおよび排気ポートHPとそれらが燃焼室NSに臨む開口に昇降自在に装着された吸気バルブKVおよび排気バルブHVと、シリンダブロックSBの下方開口から昇降自在に形成されたピストンPSから大略構成されている。
この内燃機関Nを構成する各構成部材はともに、アルミニウムもしくはその合金(高強度アルミニウム合金を含む)から形成されている。
内燃機関Nの各構成部材で画成された燃焼室NS内には、それらが燃焼室NSに臨む基材の表面(シリンダボア面SB’、シリンダヘッド底面SH’、ピストン頂面PS’、バルブ頂面KV’,HV’)に対して図示する製造方法がそれぞれ適用され、それぞれの表面に断熱膜HBが形成される。なお、図示を省略するが、内燃機関Nを構成する各構成部材の一部の表面にのみ本発明の内燃機関の製造方法が適用されて断熱膜HBが形成されてもよいことは勿論のことである。
(内燃機関の製造方法の実施例)
本発明者等は、以下で示す溶射材料、溶射条件、およびレーザビームの照射条件にて断熱膜を形成した。ここで、図6(a)は多孔質断熱層(第一の溶射層)を形成する粉末の写真図であり、図6(b)は多孔質断熱層(第二の溶射層)を形成する粉末の写真図である。
本発明者等は、以下で示す溶射材料、溶射条件、およびレーザビームの照射条件にて断熱膜を形成した。ここで、図6(a)は多孔質断熱層(第一の溶射層)を形成する粉末の写真図であり、図6(b)は多孔質断熱層(第二の溶射層)を形成する粉末の写真図である。
<溶射材料>
まず、基材の表面に直接形成される第一の溶射層は、Ni-Cr合金粉末(ガスアトマイズ粒子:粒径10〜45μm)とベントナイト粉末(スプレー造粒粉末:粒径45μm以下)を造粒焼結し、図6(a)のような粉末を用いた。溶射皮膜中のベントナイト面積率60%を得るために、Ni-50Crとベントナイトの混合割合は重量比で65:35とした。
まず、基材の表面に直接形成される第一の溶射層は、Ni-Cr合金粉末(ガスアトマイズ粒子:粒径10〜45μm)とベントナイト粉末(スプレー造粒粉末:粒径45μm以下)を造粒焼結し、図6(a)のような粉末を用いた。溶射皮膜中のベントナイト面積率60%を得るために、Ni-50Crとベントナイトの混合割合は重量比で65:35とした。
次に、第二の溶射層は、ZrO2-SiO2粉末としてジルコンサンドの粉砕粉を分級し(粒径10〜45μm)、使用した(組成:ZrO2-33wt%SiO2-0.7Al2O3-0.15TiO2-0.1Fe2O3)。
<溶射条件>
シリンダヘッド(アルミ合金)にショットブラストを実施後(表面粗さRa7μm)、溶射はプラズマ溶射装置(METCO F4ガン)を使用し、以下の溶射条件にて実施した。
シリンダヘッド(アルミ合金)にショットブラストを実施後(表面粗さRa7μm)、溶射はプラズマ溶射装置(METCO F4ガン)を使用し、以下の溶射条件にて実施した。
第一の溶射層に関しては、プラズマガス:Ar-H2、ガス流量:Ar:30L/min 、H2:8L/min、プラズマ電流:450A、プラズマ電圧:60V、粉末供給量:30g/min、溶射距離:150mmである。
第二の溶射層に関しては、プラズマガス:Ar-H2、ガス流量:Ar:40L/min 、H2:12L/min、プラズマ電流:600A、プラズマ電圧:60V、粉末供給量:50g/min、溶射距離:100mmである。
溶射後に多孔質断熱層の仕上げ研削を実施し(表面粗さ:Ra2)、所定の膜厚(全膜厚300μm)に仕上げた。図7(a)はシリンダヘッドに溶射して多孔質断熱層を形成した際の写真図であり、図7(b)は多孔質断熱層の断面組織を示した写真図である。
<レーザビームの照射条件>
市販のレーザマーカー用ファイバーレーザにて、溶射部位全面にレーザビームの照射を実施した。ここで、表面緻密層の断熱膜に対する厚さ比率が10%になるように以下の条件に設定した。
市販のレーザマーカー用ファイバーレーザにて、溶射部位全面にレーザビームの照射を実施した。ここで、表面緻密層の断熱膜に対する厚さ比率が10%になるように以下の条件に設定した。
レーザビームの照射条件に関し、スポット径:φ50μ、周波数:200kHz、出力:60W、スキャンスピード:600mm/sec、走査ピッチ50μmである。
また、上記レーザビーム処理の前にグラファイトスプレーを施したもの(厚さ10μm)も併せて作製した。その後、平面研削盤によって仕上げ加工をおこなった。
(エンジン効率と耐久性を評価した実験、表面粒子の脱落の有無を検証した実験とそれらの結果)
本発明者等は、エンジン効率と耐久性を評価する実験をおこなうとともに、表面緻密層を構成する粒子の脱落性を評価するべく、テープ剥がし試験をおこなった。
本発明者等は、エンジン効率と耐久性を評価する実験をおこなうとともに、表面緻密層を構成する粒子の脱落性を評価するべく、テープ剥がし試験をおこなった。
テープは、NICHIBAN 布粘着テープ 高品位タイプ<LS> No.102N 橙 50mm×25mを使用し、多孔質断熱層を脱脂して表面にテープを貼り、引き剥がしを10回おこない、前後での気孔の増加を観察して2×20mm範囲での剥離数を測定した。実験結果を図8に示す。ここで、図8の上図は引き剥がし前の写真図であり、下図は引き剥がし後の写真図である。
まず、以下の表1に、実施例1、比較例1の断熱膜の仕様と、テープ試験結果、エンジン効率結果、および耐久性結果を示す。
表1より、表面緻密層を具備しない比較例1は粒子脱落数が45でピストン傷付きが発生したのに対し、表面緻密層を備えた実施例1は粒子脱落数が0でピストン傷付きも発生せず、亀裂や剥離もない良好な結果となった。
この結果より、多孔質断熱層の表面が溶融してできた表面緻密層を備えた断熱膜は耐久性が高く、粒子の脱落も生じないことが分かった。
次に、複数の実施例および比較例の結果を以下の表2に示す。
表2より、比較例2〜4は表面緻密層を有しているものの、比較例2、3は膜厚が10μm以下の5μmであることから、粒子の脱落数が40個であり、ピストン傷付きが発生した。また、比較例4は表面緻密層の厚さが断熱膜全体の25%(20%以上)と厚過ぎることで、粒子脱落数を評価することができなかった。
対して、実施例1〜5の表面緻密層の膜厚はいずれも断熱膜全体の20%以下となっており、10μm以上の膜厚であることにより、粒子脱落数は0、冷却損失低減率も低く、ピストン傷付きも発生せず、亀裂や剥離もない良好な結果となった。
この実験結果より、断熱膜が表面緻密層を有していることのみならず、表面緻密層の膜厚は断熱膜全体の20%以下で、かつ10μm以上が望ましいことが分かった。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
HB…断熱膜、N…内燃機関、NS…燃焼室
Claims (3)
- 燃焼室に臨む基材の表面に断熱膜を備えた内燃機関の製造方法であって、
前記基材の表面に多孔質断熱層を形成する第1のステップと、
前記多孔質断熱層の表面を溶融させ、凝固させることで、該多孔質断熱層の表面に表面緻密層を形成し、該多孔質断熱層と該表面緻密層からなる前記断熱膜を形成する第2のステップと、を備える内燃機関の製造方法。 - 前記第2のステップにおいて、前記多孔質断熱層の表面にカーボンを被覆した後にレーザビームを照射することにより、前記多孔質断熱層の表面を溶融させる請求項1に記載の内燃機関の製造方法。
- 前記第2のステップにおいて、前記多孔質断熱層の厚みの20%以下で、10μm以上の層厚の前記表面緻密層を形成する請求項1または2に記載の内燃機関の製造方法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018168836A (ja) * | 2017-03-30 | 2018-11-01 | 三菱重工業株式会社 | 遮熱被膜層形成方法、および、遮熱被膜層を備えるエンジン部品 |
CN113444997A (zh) * | 2020-03-24 | 2021-09-28 | 本田技研工业株式会社 | 氧化覆膜以及带有氧化覆膜的部件 |
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2015
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