JP6229879B2 - 車両用挙動制御装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、ドライバが車両を減速させようとし、ブレーキペダルを大きく踏み込んでいるほど、ドライバは減速度の変化に敏感になるので、ブレーキペダルが大きく踏み込まれつつ操舵が行われた場合(例えば、立体駐車場のらせん状のスロープを下っている場合)に、ブレーキペダルが大きく踏み込まれていないときに操舵が行なわれた場合(例えば、平地を定速走行中におけるカーブやレーンチェンジ)と同程度に車両の駆動力を低減させると、ドライバは自分が要求する以上の減速度が生じているような違和感を感じる。
このように構成された本発明においては、車両の操舵が開始され、車両のヨーレート関連量が増大し始めると、駆動力制御手段は駆動力低減量を迅速に増大させるので、車両の操舵開始時において減速度を迅速に車両に生じさせ、十分な荷重を操舵輪である前輪に迅速に加えることができる。これにより、操舵輪である前輪と路面との間の摩擦力が増加し、前輪のコーナリングフォースが増大するので、カーブ進入初期における車両の回頭性を向上することができ、ステアリングの切り込み操作に対する応答性を向上できる。また、駆動力制御手段は、ヨーレート関連量が増大するほど、車両の駆動力低減量の増大割合を低減させるので、カーブ走行中に車両に発生させる減速度が過大にならず、操舵終了時に減速度を迅速に減少させることができる。従って、カーブ脱出時において、ドライバが駆動力低減の引きずり感を感じることを防止できる。さらに、駆動力低減量補正手段は、車両に対する要求減速度が大きくなるほど、駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量を減少させるように補正するので、車両に対する要求減速度が大きくなるほど車両に付加的に発生させる減速度を小さくすることができ、これにより、ドライバがブレーキペダルを大きく踏み込んでおり、減速度の変化に敏感な場合に、ドライバが要求する以上の減速度が生じているような違和感を感じることを防止できる。このように、本発明の車両用挙動制御装置によれば、ドライバに違和感を感じさせることなく、車両のコーナリング時におけるドライバの操作が自然で安定したものとなるように車両の挙動を制御することができる。
また、本発明においては、駆動力低減量補正手段は、要求減速度が大きくなるほど、駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量を減少させるように補正するので、車両に対する要求減速度が大きくなるほど車両に付加的に発生させる減速度を小さくすることができ、これにより、ドライバがブレーキペダルを大きく踏み込んでおり、減速度の変化に敏感な場合に、ドライバが要求する以上の減速度が生じているような違和感を感じることを防止できる。
このように構成された本発明においては、要求減速度が所定値以上の場合には、車両のヨーレート関連量に応じて最小限の減速度を車両に発生させるか又は減速度を発生させず、要求減速度が所定値未満の場合には、要求減速度が小さくなるほど車両に付加的に発生させる減速度を大きくするので、ドライバがブレーキペダルを大きく踏み込んでおり、減速度の変化に敏感な場合に、ドライバが要求する以上の減速度が生じているような違和感を感じることを防止できると共に、ドライバがブレーキペダルを大きく踏み込んでおらず、減速度の変化にそれ程敏感ではない場合には、ブレーキペダルの踏み込み量が小さいほどステアリングの切り込み操作に対する応答性を向上できる。
このように構成された本発明においては、ステアリングの切り込み操作が行われることにより車両の操舵角の絶対値が増大している場合に、車両の駆動力を低減させるので、ステアリングの切り込み操作が行われているときに、十分な荷重を操舵輪である前輪に加えることができ、ステアリングの切り込み操作に対する車両の応答性を確実に向上することができる。
このように構成された本発明においては、駆動力制御手段は、車両のヨーレート関連量に応じてモータのトルクを低減させるので、直接的に車両の駆動力を低減させることができる。従って、油圧ブレーキユニットを制御することにより車両の駆動力を低減させる場合と比較して、駆動力低減の応答性を高めることができ、よりダイレクトに車両の挙動を制御することができる。
このように構成された本発明においては、駆動力制御手段は、モータが発生させる回生電力をバッテリに回収させるとバッテリが過充電になる場合や、バッテリの温度が許容温度範囲を超えてしまう場合、モータのトルクを低減させず、回生電力を発生させないので、過充電や許容温度範囲逸脱によるバッテリの損傷を防止することができる。また、駆動力制御手段は、車両の駆動力を低減させない旨の情報を表示手段に表示させるので、カーブ進入時に駆動力が低減されないことによりドライバが違和感を感じることを防止できる。
まず、図1により、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載する車両について説明する。図1は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載する車両の全体構成を示すブロック図である。
さらに、車両1は、車両用挙動制御装置18による車両1の挙動制御に関する情報を表示するインジケータ20を有する。
また、バッテリ2は、このバッテリ2のSOC(State Of Charge)及び温度を検出するバッテリ状態検出部22を備えている。
車両用挙動制御装置18は、車両1の目標ヨー加速度を算出するヨー加速度算出部24と、車両1の目標ヨー加速度に応じて車両1の駆動力を低減させる駆動力制御部26とを備える。
この車両用挙動制御装置18には、操舵角センサ12が検出した操舵角、ブレーキ液圧センサ14が検出したブレーキ液圧、ヨーレートセンサ16が検出したヨーレート、並びにバッテリ状態検出部22が検出したバッテリ2のSOC及び温度が入力される。
駆動力制御部26は、算出された目標ヨー加速度、ブレーキ液圧、及びバッテリ2の状態に基づき、モータ6のトルク低減量(即ち駆動力低減量)を決定し、そのモータ6のトルク低減量を実現するように、モータ6が発生させる回生電力量を制御する。また、駆動力制御部26は、駆動力制御部26がモータ6の駆動力を制御可能な状態か否かを示す情報をインジケータ20に出力する。
これらのヨー加速度算出部24、及び、駆力動制御部26は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。
図3は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置18が車両1の挙動を制御する挙動制御処理のフローチャートである。この挙動制御処理は、車両1のイグニッションがオンにされ、車両用挙動制御装置18に電源が投入された場合に起動され、繰り返し実行される。
具体的には、駆動力制御部26は、目標ヨー加速度と基本制御介入トルクとの関係を示すマップを参照し、ステップS6においてヨー加速度算出部24が算出した目標ヨー加速度に対応する基本制御介入トルクを特定する。
図4は、本発明の実施形態による駆動力制御部26が目標ヨー加速度に基づいて基本制御介入トルクを決定する際に参照するマップである。この図4における横軸は目標ヨー加速度を示し、縦軸は基本制御介入トルクを示す。図4に示すように、目標ヨー加速度が増大するに従って、この目標ヨー加速度に対応する基本制御介入トルクは、所定の上限値(図4においては12Nm)に漸近する。即ち、駆動力制御部26は、目標ヨー加速度が増大するほど、基本制御介入トルクを増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように制御する。
具体的には、駆動力制御部26は、要求減速度と補正係数Kとの関係を示すマップを参照し、ステップS8において取得した要求減速度に対応する補正係数Kを特定する。
図5は、本発明の実施形態による駆動力制御部26が要求減速度に基づいてトルク低減量の補正係数を決定する際に参照するマップである。この図5における横軸は要求減速度を示し、縦軸は補正係数Kを示す。図5に示すように、要求減速度が1m/s2未満の場合、要求減速度が大きくなるほど補正係数Kが小さくなるように設定されている。要求減速度が1m/s2以上の場合には、補正係数Kは最小値0で一定となっている。また、要求減速度が0m/s2の場合、補正係数Kは最大値1となっている。
具体的には、駆動力制御部26は、バッテリ2のSOC及び温度に基づき、バッテリ2がモータ6から回収可能な回生電力量及びバッテリ2に通電可能な最大電流を特定し、これらの回生電力量及び最大電流に基づき、モータ6に許容する回生電力を算出する。そして、この許容回生電力に対応する回生トルクを、制御介入受入可能トルクとして算出する。
この図6(b)に示すように、位置Aにおいて右向きの操舵が開始され、ステアリングの切り込み操作が行われることにより右向きの操舵角が徐々に増大し、位置Bにおいて右向きの操舵角が最大となる。その後、ステアリングの切り戻し操作が行われることにより右向きの操舵角が徐々に減少し、位置Cにおいて操舵角が0になる。
この図6(c)に示すように、車両1の目標ヨーレートは、操舵角の変化に比例して変化する。即ち、位置Aにおいて右向きの操舵が開始されると、時計回り(CW)の目標ヨーレートが算出され、位置Bにおいて時計回りの目標ヨーレートが最大になる。その後、時計回りの目標ヨーレートは徐々に減少し、位置Cにおいて目標ヨーレートは0になる。但し、位置Bから位置Cにおいては、ステアリングの切り戻し操作が行われているので、上述した挙動制御処理のステップS3において駆動力制御部26は操舵角の絶対値が増大中ではないと判定し、挙動制御処理を終了する。従って、位置Bから位置Cにおいては、駆動力制御部26は目標ヨーレートの算出を行わない。
車両1の目標ヨー加速度は、車両1の目標ヨーレートの時間微分により表される。即ち、図6(d)に示すように、位置Aにおいて右向きの操舵が開始され、時計回りの目標ヨーレートが算出されると、時計回り(CW)の目標ヨー加速度が算出され、位置Aと位置Bとの間において時計回りの目標ヨー加速度が極大になる。その後、時計回りの目標ヨー加速度は減少し、位置Bにおいて時計回りの目標ヨーレートが極大になると、目標ヨー加速度は0になる。更に、位置Bから位置Cまで時計回りの目標ヨーレートが減少すると、反時計回り(CCW)の目標ヨー加速度が算出され、位置Bと位置Cの間において反時計回りの目標ヨー加速度が極大になった後、位置Cにおいて目標ヨー加速度は0になる。但し、位置Bから位置Cにおいては、ステアリングの切り戻し操作が行われているので、上述した挙動制御処理のステップS3において、駆動力制御部26は操舵角の絶対値が増大中ではないと判定し、挙動制御処理を終了する。従って、位置Bから位置Cにおいては、駆動力制御部26は目標ヨー加速度の算出を行わない。
この図6(e)は、上述した挙動制御処理のステップS11において駆動力制御部26が決定した補正制御介入トルクが、ステップS9において決定した補正係数KをステップS7において決定した基本制御介入トルクに乗じたトルク値であるケース(即ち、補正係数Kを基本制御介入トルクに乗じたトルク値が、制御介入受入可能トルクよりも小さいケース)を示している。
上述したように、駆動力制御部26は、目標ヨー加速度が増大するほど、基本制御介入トルクを増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように制御する。従って、図6(e)に示すように、位置Aにおいて時計回りの目標ヨー加速度が算出されると、目標ヨー加速度の増大に伴ってトルク低減量が増大し、位置Aと位置Bとの間において時計回りの目標ヨー加速度が極大になると、トルク低減量も極大になる。その後、時計回りの目標ヨー加速度の減少に伴ってトルク低減量も減少し、位置Bにおいて目標ヨー加速度が0になると、トルク低減量も0になる。位置Bから位置Cにおいては、ステアリングの切り戻し操作が行われているので、上述した挙動制御処理のステップS3において、駆動力制御部26は操舵角の絶対値が増大中ではないと判定し、挙動制御処理を終了する。従って、位置Bから位置Cにおいては、駆動力制御部26はトルク低減を行なわない(即ち、トルク低減量=0)。
また、駆動力制御部26は、上述した挙動制御処理のステップS9において決定した補正係数KをステップS7において決定した基本制御介入トルクに乗じることにより補正制御介入トルクを決定し、その補正制御介入トルクに対応する大きさの駆動力を減少させる。上述したように、補正係数Kは、要求減速度が大きくなるほど小さくなるように設定されている。従って、要求減速度が大きくなるほど、補正制御介入トルクは小さくなり、図6(e)に示すように、トルク低減量は小さくなる。
位置Aにおいて右向きの操舵が開始され、時計回りの目標ヨー加速度が増大するにつれて図6(e)に示したようにトルク低減量が増大すると、車両1の操舵輪である前輪の荷重が増加する。その結果、前輪と路面との間の摩擦力が増加し、前輪のコーナリングフォースが増大するため、車両1の回頭性が向上する。即ち、図6(f)に示すように、位置Aと位置Bとの間において、モータ6のトルク制御を行わなかった場合よりも、モータ6のトルク制御を行った場合の方が実ヨーレートが大きくなる。また、図6(e)に示したように、要求減速度が大きくなるほどトルク低減量は小さくなるので、要求減速度が大きくなるほど、モータ6のトルク制御を行った場合の実ヨーレートとトルク制御を行なわなかった場合の実ヨーレートとの差が小さくなる。
上述した実施形態においては、車両用挙動制御装置18を搭載する車両1は、動力源としてバッテリ2を搭載すると説明したが、動力源としてガソリンエンジンやディーゼルエンジンを搭載する車両1に車両用挙動制御装置18を搭載してもよい。この場合、駆動力制御部26は、ヨー加速度に応じて燃料噴射量やトランスミッションを制御し、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンによる駆動力を低減させる。
例えば、ヨー加速度算出部24は、ヨーレートセンサ16から入力されたヨーレートに基づき、車両1に発生するヨー加速度を算出し、駆動力制御部26は、このように算出されたヨー加速度及び要求減速度に基づき、モータ6のトルク低減量を決定するようにしてもよい。この場合、駆動力制御部26は、車両1に発生するヨー加速度が増大するほど、車両1のモータ6のトルク低減量を増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように制御し、車両1の要求減速度が大きくなるほどトルク低減量を減少させるように補正する。
あるいは、車両1に搭載された加速度センサにより、車両1の旋回に伴って発生する横加速度を検出し、この横加速度に基づき、駆動力制御部26がモータ6のトルク低減量を決定するようにしてもよい。この場合、駆動力制御部26は、車両1に発生する横加速度が増大するほど、車両1のモータ6のトルク低減量を増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように制御し、車両1の要求減速度が大きくなるほどトルク低減量を減少させるように補正する。
2 バッテリ
4 駆動輪
6 モータ
8 インバータ
10 ステアリングホイール
12 操舵角センサ
14 ブレーキ液圧センサ
16 ヨーレートセンサ
18 車両用挙動制御装置
20 インジケータ
22 バッテリ状態検出部
24 ヨー加速度算出部
26 駆動力制御部
Claims (5)
- 前輪が操舵される車両の挙動を制御する車両用挙動制御装置において、
上記車両のヨーレートに関連するヨーレート関連量を取得するヨーレート関連量取得手段と、
上記ヨーレート関連量取得手段により取得されたヨーレート関連量に応じて上記車両の駆動力を低減させるように制御する駆動力制御手段と、を有し、
上記駆動力制御手段は、上記ヨーレート関連量が増大するほど、上記車両の駆動力低減量を増大させ且つこの増大量の増加割合を低減させるように上記駆動力低減量を決定する駆動力低減量決定手段と、ブレーキペダルの操作に応じた上記車両に対する要求減速度が大きくなるほど、上記駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量を減少させるように補正する駆動力低減量補正手段とを備え、
上記駆動力低減量補正手段は、上記要求減速度が大きくなるほど減少するように設定された係数を、上記駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量に乗ずることにより、上記駆動力低減量を補正する、ことを特徴とする車両用挙動制御装置。 - 上記駆動力低減量補正手段は、上記要求減速度が所定値未満の場合、上記要求減速度が大きくなるほど、上記駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量を減少させるように補正し、上記要求減速度が所定値以上の場合、上記駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量を一定の最小値となるように補正する、請求項1に記載の車両用挙動制御装置。
- 上記駆動力制御手段は、上記車両の操舵角の絶対値が増大している場合に、上記車両の駆動力を低減させる制御を行う請求項1又は2に記載の車両用挙動制御装置。
- 上記車両は、車輪を駆動するモータと、このモータに電力を供給すると共にモータが発生させた回生電力を回収するバッテリと、を有する電動駆動車両であり、
上記駆動力制御手段は、上記ヨーレート関連量に応じて、上記モータが発生させる回生電力量を制御することにより、上記車両の駆動力を低減させる、請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用挙動制御装置。 - 上記電動駆動車両は、さらに、上記バッテリの状態を検出するバッテリ状態検出手段と、上記駆動力制御手段による制御に関する情報を表示する表示手段と、を有し、
上記駆動力制御手段は、上記バッテリの状態に基づき、上記モータが発生させる回生電力を上記バッテリが回収できないと判定した場合、上記車両の駆動力を低減させず、且つ、上記車両の駆動力を低減させない旨の情報を上記表示手段に表示させる、請求項4に記載の車両用挙動制御装置。
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