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JP6213093B2 - 液体現像剤 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂と着色剤とを含むトナー粒子が絶縁性液体中に分散されてなる液体現像剤に関する。
取扱い時におけるトナー粒子の飛散防止という観点から、液体現像剤の使用が高まっている。液体現像剤には、低温定着性、定着性、耐熱性などが要求されており、種々の研究がなされている(たとえば特許文献1、2)。
特開2009−42730号公報 特開2009−96994号公報
液体現像剤の低温定着性とその耐熱性とは相反する特性であるが、これらの相反する特性の両立が要求されている。また、これらの相反する特性を両立させると、ドキュメント(紙などの記録媒体上に形成されたトナー層)の耐傷性の低下を招くことが分かった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温定着性および耐熱性に優れ、ドキュメントの耐傷性の低下を防止可能な液体現像剤の提供である。
本発明に係る液体現像剤は、樹脂と着色剤とを含むトナー粒子が絶縁性液体中に分散されてなる。樹脂は、ポリエステル樹脂に由来する成分がイソシアネート基を含む化合物により鎖長されてなるウレタン変性ポリエステル樹脂である第1樹脂と、第1樹脂とは異なる第2樹脂とを含む。第1樹脂は、第1樹脂と第2樹脂との合計に対し70質量%以上含まれる。ポリエステル樹脂に由来する成分は、酸成分に由来する構成単位と、アルコール成分に由来する構成単位とを含む。酸成分に由来する構成単位およびアルコール成分に由来する構成単位に占める脂肪族モノマーに由来する構成単位の割合は、80質量%以上である。第1樹脂の数平均分子量をMnとし、第1樹脂の重量平均分子量をMwとしたとき、2.3≦Mw/Mn≦4(但し、10000≦Mn≦50000)を満たす。
「ポリエステル樹脂に由来する成分」とは、ウレタン変性ポリエステル樹脂からイソシアネート基に由来する部分を除いた部分を意味する。「脂肪族モノマー」は、ポリエステル樹脂を構成するモノマーであり、好ましくは炭素数が4以上である直鎖状のアルキル骨格を有する。
第1樹脂のウレタン基濃度は、0.5%以上5%以下であることが好ましい。第1樹脂のウレタン基濃度は、(ウレタン変性ポリエステル樹脂に含まれるウレタン基の質量)/(当該ウレタン変性ポリエステル樹脂の質量)×100により求めることができる。
第2樹脂は、ビニル樹脂であることが好ましい。「ビニル樹脂」は、重合性二重結合を有するモノマーを重合して得られる樹脂を意味する。
トナー粒子は、コア・シェル構造を有することが好ましい。「コア・シェル構造」は、第1樹脂をコアとし、第2樹脂をシェルとする構造である。コア・シェル構造には、第2樹脂が第1粒子(第1粒子は第1樹脂を含む)の表面の少なくとも一部を被覆してなる構造だけでなく、第2樹脂が第1粒子の表面の少なくとも一部に付着してなる構造も含まれる。
本発明に係る液体現像剤は、低温定着性および耐熱性に優れ、ドキュメントの耐傷性の低下を防止可能である。
ウレタン変性ポリエステル樹脂の貯蔵弾性率の温度依存性を模式的に示すグラフである。 ウレタン変性ポリエステル樹脂の分子量分布を模式的に示すグラフである。 電子写真方式の画像形成装置の概略概念図である。
<液体現像剤の構成>
本実施形態に係る液体現像剤は、複写機、プリンタ、デジタル印刷機もしくは簡易印刷機などの電子写真方式の画像形成装置(後述)において用いられる電子写真用液体現像剤、塗料、静電記録用液体現像剤、インクジェットプリンタ用油性インクまたは電子ペーパー用インクとして有用である。本実施形態に係る液体現像剤は、トナー粒子が絶縁性液体中に分散されてなり、好ましくは10〜50質量%のトナー粒子を含み50〜90質量%の絶縁性液体を含む。本実施形態に係る液体現像剤は、トナー粒子および絶縁性液体以外の任意の成分を含んでいても良い。トナー粒子および絶縁性液体以外の任意の成分は、たとえば、荷電制御剤、増粘剤または分散剤などであることが好ましい。
<トナー粒子>
本実施形態におけるトナー粒子は、樹脂と、樹脂中に分散された着色剤とを含む。紙などの記録媒体へのトナー粒子の付着量を所定の範囲内とした場合に所望の画像濃度が得られるように、トナー粒子における樹脂および着色剤のそれぞれの含有量を決定することが好ましい。本実施形態に係るトナー粒子は、樹脂および着色剤以外の任意の成分を含んでいても良い。樹脂および着色剤以外の任意の成分は、たとえば、顔料分散剤、ワックスまたは荷電制御剤などであることが好ましい。
<樹脂>
本実施形態における樹脂は、第1樹脂と、第1樹脂とは異なる第2樹脂とを含む。第1樹脂は、第1樹脂と第2樹脂との合計に対し70質量%以上含まれている。第2樹脂は、1種類の樹脂であっても良いし、2種以上の樹脂が混合されたものであっても良い。樹脂における第1樹脂または第2樹脂の含有量は、たとえば、赤外線吸収スペクトルを用いて求めることができ、核磁気共鳴により得られたスペクトルを用いても求めることができ、GCMS(Gas Chromatograph Mass Spectrometer)によっても求めることができる。
<第1樹脂>
第1樹脂は、ウレタン変性ポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂に由来する成分は、酸成分に由来する構成単位と、アルコール成分に由来する構成単位とを含む。酸成分に由来する構成単位およびアルコール成分に由来する構成単位に占める脂肪族モノマーに由来する構成単位の割合は、80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは100質量%である。この割合は、核磁気共鳴により得られたスペクトルを用いて求められても良いし、GCMSによって求められても良い。以下では、本実施形態に係る液体現像剤を完成させるにあたって本発明者らが検討した事項を示してから、本実施形態における第1樹脂をさらに示す。
液体現像剤では、取扱い時におけるトナー粒子の飛散を防止できるので、トナー粒子の粒径を乾式現像剤よりも小さくすることができ、よって、記録媒体へのトナー粒子の付着量を低減させることができる。しかし、記録媒体へのトナー粒子の付着量が低減すると、画像濃度の低下を招くので、着色剤の含有量を多くする必要がある。一方、着色剤の含有量が多くなると、液体現像剤の溶融粘度が高くなるので、低温での定着が困難となる。そのため、従来では、トナー粒子に含まれる非線形のポリエステル樹脂の分子量を調整することにより液体現像剤の溶融粘度の低下を図っていた。
ところで、非線形のポリエステル樹脂は、結晶性に優れず、ガラス転移点を有する。トナー粒子に含まれる樹脂は絶縁性液体により膨潤される。非線形のポリエステル樹脂は、液体中に存在する方が乾式状態で存在するよりも、ガラス転移点が低くなる。そのため、液体現像剤の耐熱性の低下を招く。液体現像剤の耐熱性を高める方法として非線形のポリエステル樹脂の分子量を調整してそのガラス転移点を高くすることが考えられるが、この方法を採用すると低温での定着が困難となる。
液体現像剤の耐熱性を高める別の方法として、トナー粒子に含まれる樹脂として結晶性に優れた樹脂を用いることが考えられる。本発明者らが鋭意検討した結果、トナー粒子に含まれる樹脂としてウレタン変性ポリエステル樹脂を用いれば、低温定着性および耐熱性に優れた液体現像剤を提供できるということが分かった。詳細を以下に示す。
図1は、ウレタン変性ポリエステル樹脂の貯蔵弾性率の温度依存性を模式的に示すグラフである。図1の横軸は温度を表わし、図1の縦軸はG’(貯蔵弾性率)を表わす。図1において、L11はウレタン変性ポリエステル樹脂のウレタン基濃度が相対的に高い場合を表わし、L12はウレタン変性ポリエステル樹脂のウレタン基濃度が相対的に低い場合を表わす。
図1に示すように、ウレタン変性ポリエステル樹脂の温度がその軟化温度付近となると、その貯蔵弾性率は急激に減少する。よって、ウレタン変性ポリエステル樹脂の軟化温度付近で定着を行なうことができる。一般に、結晶性樹脂の軟化温度は、非結晶性樹脂のガラス転移点よりも低い。したがって、低温での定着が可能となる。
また、図1に示すように、ウレタン変性ポリエステル樹脂の温度がその軟化温度よりも高くなると、その貯蔵弾性率はそれほど変化しない。このように、ウレタン変性ポリエステル樹脂では、その軟化温度よりも高い温度領域(以下では「高温領域」と記す)に、貯蔵弾性率がそれほど変化しない領域(安定領域)が存在する。そして、ポリエステル樹脂に由来する成分を構成するモノマーの種類、または、ウレタン変性ポリエステル樹脂の分子量などを変更すれば、高温領域における貯蔵弾性率が変わる。たとえば、ウレタン変性ポリエステル樹脂のウレタン基濃度を高くすれば、貯蔵弾性率は図1に示すL12からL11へ変化するので、液体現像剤の耐熱性を高めることができる。具体的には、高温オフセット(定着時に、溶融したトナーが定着ローラに付着し易くなること)の発生を防止できる。
しかし、今般、本発明者らは、ウレタン変性ポリエステル樹脂を含む液体現像剤には以下に示す固有の課題が存在することを見出した。ウレタン変性ポリエステル樹脂の分子量を小さくすると、ウレタン変性ポリエステル樹脂の強靭性が失われることが分かった。そのため、ドキュメントの耐傷性の低下を招くことがある。一方、ドキュメントの耐傷性の低下を防止するためにウレタン変性ポリエステル樹脂の分子量を大きくすると、ウレタン変性ポリエステル樹脂の軟化温度が低くなることが分かった。そのため、液体現像剤の耐熱性の低下を招くことがあり、具体的にはドキュメントオフセット(トナー粒子が記録媒体へ定着されてなる印刷物を高温状態または加圧状態で保管したときにトナー粒子が軟化して色移りし易くなること)の発生を招くことがある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なったところ、第1樹脂の数平均分子量をMnとし、第1樹脂の重量平均分子量をMwとしたとき、2.3≦Mw/Mn≦4(但し、10000≦Mn≦50000)を満たせば、上記課題が解決されることを見出した。
図2は、ウレタン変性ポリエステル樹脂の分子量分布を模式的に示すグラフである。図2において、L21は分子量が大きい場合の分子量分布を模式的に表わし、L22は分子量が小さい場合の分子量分布を模式的に表わし、L23は第1樹脂の分子量分布を模式的に表わす。
Mw/Mnは、第1樹脂の分子量分布を表わす指標である。Mw/Mnが大きければ大きいほど第1樹脂の分子量分布が広い(図2に示すグラフのバンド幅が広い)ことを意味する。2.3≦Mw/Mnであれば、Mnの大きさに関係なく、ドキュメントオフセットの発生を防止できるとともにドキュメントの耐傷性の低下を防止できる。Mw/Mnが大きければ大きいほどMnに依存する不具合の発生を防止できると考えられる。しかし、Mw/Mn>4を満たすウレタン変性ポリエステル樹脂を調製することは難しい。仮にMw/Mn>4を満たすウレタン変性ポリエステル樹脂を調製できたとしても、高温オフセットの発生または光沢性の低下を招くことがある。よって、Mw/Mn≦4であることが好ましい。より好ましくは、2.5≦Mw/Mn≦3.5を満たしていることである。これにより、ドキュメントオフセットの発生をさらに防止できるとともにドキュメントの耐傷性の低下をさらに防止できる。
しかし、2.3>Mw/Mnであれば、ドキュメントオフセットの発生の防止とドキュメントの耐傷性の低下の防止とを両立させ難い。具体的には、Mnが大きければ、ウレタン変性ポリエステル樹脂の結晶性が低下して、その軟化温度が低下する。そのため、ドキュメントオフセットの発生を招く。Mnが小さければ、第1樹脂の強靭性が失われるので、ドキュメントの耐傷性の低下を招く。
10000≦Mnであれば、第1樹脂が定着時に過度に軟化することを防止できるので、高温オフセットの発生を防止することができる。Mn≦50000であれば、第1樹脂が定着時に軟化し難くなることを防止できるので、定着性を確保することができる。好ましくは、10000≦Mn≦30000である。これにより、定着性を向上させることができる。一方、10000>Mnであれば、第1樹脂が定着時に過度に軟化されることがあるので、高温オフセットの発生を招くことがある。Mn>50000であれば、第1樹脂が定着時に軟化し難いことがあるので、定着強度の低下を招くことがある。
第1樹脂のMnおよびMwは、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用い、テトラヒドロフラン(THF)への可溶分に対し、以下の条件で測定することができる。測定された第1樹脂のMnおよびMwを用いて、Mw/Mnを算出することができる。なお、ポリウレタン樹脂以外の樹脂のMnおよびMwも以下に示す条件で測定可能である。
測定装置:東ソー株式会社製の「HLC−8120」
カラム:東ソー株式会社製の「TSKgelGMHXL」(2本)と東ソー(株)製の「TSKgelMultiporeHXL−M」(1本)
試料溶液:0.25質量%のTHF溶液
カラムへの試料溶液の注入量:100μl
流速:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:東ソー株式会社製の標準ポリスチレン(TSK standard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1050、2800、5970、9100、18100、37900、96400、190000、355000、1090000、2890000)。
なお、ポリウレタン樹脂の数平均分子量および質量平均分子量は、GPCを用いて以下の条件で測定することができる。
測定装置:東ソー(株)製の「HLC−8220GPC」
カラム:「Guardcоlumn α」(1本)と「TSKgel α―M」(1本)
試料溶液:0.125質量%のジメチルホルムアミド溶液
カラムへのジメチルホルムアミド溶液の注入量:100μl
流速:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:東ソー(株)製の標準ポリスチレン(TSK standard PОLYSTYRENE)12点(分子量:500、1050、2800、5970、9100、18100、37900、96400、190000、355000、1090000、2890000)。
2.3≦Mw/Mn≦4を満たすためには、第1樹脂は、数平均分子量が互いに異なる2種以上のウレタン変性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。たとえば、図2のL21で示される分子量分布を有するウレタン変性ポリエステル樹脂と図2のL22で示される分子量分布を有するウレタン変性ポリエステル樹脂とを混ぜると、図2のL23で示される分子量分布を有するウレタン変性ポリエステル樹脂(大きな分子量分布を有するウレタン変性ポリエステル樹脂)が得られる。より具体的には、第1樹脂は、5質量%以上80質量%以下の低分子量ウレタン変性ポリエステル樹脂と20質量%以上95質量%以下の高分子量ウレタン変性ポリエステル樹脂とを含むことが好ましい。低分子量ウレタン変性ポリエステル樹脂の数平均分子量は、3000以上25000以下であることが好ましく、高分子量ウレタン変性ポリエステル樹脂の数平均分子量は、低分子量ウレタン変性ポリエステル樹脂の数平均分子量の1.5倍以上10倍以下であることが好ましい。
第1樹脂に含まれる2種以上のウレタン変性ポリエステル樹脂では熱物性などを同一とすることが好ましいので、低分子量ウレタン変性ポリエステル樹脂と高分子量ウレタン変性ポリエステル樹脂とでは構成単位が同一であることが好ましい。ここで、ウレタン変性ポリエステル樹脂は次に示す方法にしたがって得られる。まず、ポリオールと、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸の酸無水物またはポリカルボン酸の低級アルキルエステルなどとを重合させて、ポリエステル樹脂(骨格)を得る。得られたポリエステル樹脂をジ(トリ)イソシアネートにより鎖長させる。ジ(トリ)イソシアネートとは、ジイソシアネートおよび/またはトリイソシアネートを意味する。そのため、低分子量ウレタン変性ポリエステル樹脂と高分子量ウレタン変性ポリエステル樹脂とでは、ポリオール成分の組成は同一であることが好ましく、ポリカルボン酸成分などの組成も同一であることが好ましい。よって、ポリエステル樹脂に由来する成分におけるモノマーの重合度または第1樹脂のウレタン基濃度を変更して、ウレタン変性ポリエステル樹脂の数平均分子量を変更することが好ましい。
第1樹脂は、低分子量ウレタン変性ポリエステル樹脂よりも小さな数平均分子量を有する第1のウレタン変性ポリエステル樹脂をさらに含んでも良い。第1樹脂は、高分子量ウレタン変性ポリエステル樹脂よりも大きな数平均分子量を有する第2のウレタン変性ポリエステル樹脂をさらに含んでも良い。第1樹脂は、低分子量ウレタン変性ポリエステル樹脂よりも大きく且つ高分子量ウレタン変性ポリエステル樹脂よりも小さな数平均分子量を有する第3のウレタン変性ポリエステル樹脂をさらに含んでも良い。
<結晶性>
酸成分に由来する構成単位およびアルコール成分に由来する構成単位に占める脂肪族モノマーに由来する構成単位の割合が90質量%以上であるので、第1樹脂は結晶性に優れていると考えられる。ここで、「結晶性」とは、樹脂の軟化温度(以下「Tmp」と略記する)と樹脂の融解熱の最大ピーク温度(以下「Ta」と略記する)との比(Tmp/Ta)が0.8以上1.55以下であることを意味し、DSC(Differential scanning calorimetry)法により得られた熱量変化の結果が階段状の吸熱量変化を示すのではなく明確な吸熱ピークを有することを意味する。なお、TmpとTaとの比(Tmp/Ta)が1.55より大きければ、その樹脂は結晶性に優れないと言え、その樹脂は非結晶性を有するとも言える。
高化式フローテスター(たとえば株式会社島津製作所製のCFT−500D)を用いて、Tmpを測定することができる。具体的には、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながらプランジャーにより上記試料に1.96MPaの荷重を与え、直径1mmおよび長さ1mmのノズルから上記試料を押し出す。そして、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」との関係をグラフに描く。プランジャーの降下量が当該降下量の最大値の1/2であるときの温度をグラフから読み取り、その値(測定試料の半分がノズルから押し出されたときの温度)をTmpとする。本実施形態では、第1樹脂の軟化温度はドキュメントオフセットの発生を防止するという観点から40℃以上であることが好ましく、低温定着性の観点から80℃以下であることが好ましい。
示差走査熱量計(たとえばセイコーインスツル株式会社製の「DSC210」)を用いてTaを測定することができる。具体的には、試料を、130℃で溶融した後、130℃から70℃まで1.0℃/分の速度で降温させ、その後、70℃から10℃まで0.5℃/分の速度で降温させる。その後、DSC法により、試料を昇温速度20℃/分で昇温させて当該試料の吸発熱変化を測定し、「吸発熱量」と「温度」との関係をグラフに描く。このとき、20〜100℃に観測される吸熱ピークの温度をTa’とする。吸熱ピークが複数ある場合には最も吸熱量が大きいピークの温度をTa’とする。そして、試料を、(Ta’−10)℃で6時間保管した後、(Ta’−15)℃で6時間保管する。
試料に対する前処理が終了したら、DSC法により、上記前処理が施された試料を降温速度10℃/分で0℃まで冷却してから昇温速度20℃/分で昇温させる。このようにして測定された吸発熱変化から、「吸発熱量」と「温度」との関係をグラフに描く。そして、吸熱量が最大値をとったときの温度を融解熱の最大ピーク温度(Ta)とする。
<構成単位>
第1樹脂の製造過程で得られるポリエステル樹脂は、ポリオール(アルコール成分)と、ポリカルボン酸(酸成分)、ポリカルボン酸の酸無水物(酸成分)またはポリカルボン酸の低級アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4)エステル(酸成分)などとの重縮合物であることが好ましい。重縮合反応には、公知の重縮合触媒などを使用できる。ポリオールとポリカルボン酸との比率は、特に限定されない。水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])が好ましくは2/1〜1/5となるように、より好ましくは1.5/1〜1/4となるように、さらに好ましくは1.3/1〜1/3となるように、ポリオールとポリカルボン酸などとの比率を設定すれば良い。
本実施形態では、ポリオールは、炭素数が4以上である直鎖状のアルキル骨格を有することが好ましく、脂肪族ジオールであることがより好ましい。ポリカルボン酸は、炭素数が4以上である直鎖状のアルキル骨格を有することが好ましく、脂肪族ジカルボン酸であることがより好ましい。ポリカルボン酸の酸無水物およびポリカルボン酸の低級アルキルのそれぞれにおける「ポリカルボン酸」についても同様のことが言える。これにより、第1樹脂は結晶性を発現することとなる。なお、第1樹脂が結晶性を発現するのであれば、第1樹脂は芳香族ポリオールまたは芳香族ポリカルボン酸などを含んでいても良い。たとえば、酸成分に由来する構成単位およびアルコール成分に由来する構成単位に占める芳香族モノマーに由来する構成単位の割合が20質量%以下であってもよい。
脂肪族ジオールは、脂肪族モノマーの一種であり、炭素数が4〜10であるアルカンジオールであることが好ましく、たとえばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、または1,10−デカンジオールなどであることがより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸は、脂肪族モノマーの一種であり、たとえば、炭素数が4〜20であるアルカンジカルボン酸、炭素数が4〜36であるアルケンジカルボン酸、または、これらのエステル形成性誘導体などであることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、または、これらのエステル形成性誘導体などであることがより好ましい。
イソシアネート基を含む化合物は、分子内に複数のイソシアネート基を有する化合物であることが好ましく、鎖状脂肪族ポリイソシアネートまたは環状脂肪族ポリイソシアネートなどであることがより好ましい。
鎖状脂肪族ポリイソシアネートは、たとえば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略記する)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、または、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどであることが好ましい。これら2種以上を併用しても良い。
環状脂肪族ポリイソシアネートは、たとえば、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下、「水添MDI」とも記す)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(以下、「水添TDI」とも記す)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、または、2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどであることが好ましい。これら2種以上を併用しても良い。
<ウレタン基濃度>
第1樹脂のウレタン基濃度は、0.5%以上5%以下であることが好ましい。これにより、高温領域における第1樹脂の貯蔵弾性率を適切な値とすることができる。よって、定着性を確保することができるとともに高温オフセットの発生を防止することができる。本実施形態における第1樹脂のウレタン基濃度は、1%以上3%以下であることが好ましい。これにより、定着性を高めることができるとともに高温オフセットの発生をさらに防止することができる。
第1樹脂のウレタン基濃度は、GCMSを用いて測定可能である。具体的には、下記(ウレタン変性ポリエステル樹脂の熱分解の条件)に示す条件でウレタン変性ポリエステル樹脂を熱分解させてから、GCMSを用いて下記(ウレタン変性ポリエステル樹脂におけるウレタン基濃度の測定条件)に示す条件でウレタン基濃度を測定する。そして、熱分解されたウレタン変性ポリエステル樹脂から検出されたイオン強度の比率を用いて、第1樹脂のウレタン基濃度を算出する。
(ウレタン変性ポリエステル樹脂の熱分解の条件)
装置:フロンティア・ラボ株式会社製のPY−2020iD
試料の質量:0.1mg
加熱温度:550℃
加熱時間:0.5分。
(ウレタン変性ポリエステル樹脂におけるウレタン基濃度の測定条件)
装置:株式会社島津製作所製のGCMS−QP2010
カラム:フロンティア・ラボ株式会社製のUltraALLOY−5(内径:0.25mm,長さ:30m,厚さ:0.25μm)
昇温条件:昇温範囲:100℃〜320℃(320℃で保持)、昇温速度:20℃/分。
<第2樹脂>
第2樹脂は、たとえば、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、または、ポリカーボネート樹脂などであることが好ましい。第2樹脂は、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、または、エポキシ樹脂などであることがより好ましく、ビニル樹脂であることがさらに好ましい。これにより、トナー粒子のメジアン径D50(後述)およびトナー粒子の円形度(後述)などを制御し易くなる。第2樹脂も結晶性を有することが好ましい。
ビニル樹脂は、重合性二重結合を有する単量体が単独重合されて得られた単独重合体であっても良いし、重合性二重結合を有する二種以上の単量体が共重合されて得られた共重合体であっても良い。重合性二重結合を有する単量体としては、たとえば、下記(1)〜(9)が挙げられる。
(1) 重合性二重結合を有する炭化水素
重合性二重結合を有する炭化水素は、たとえば、下記(1−1)で示す重合性二重結合を有する脂肪族炭化水素、または、下記(1−2)で示す重合性二重結合を有する芳香族炭化水素などであることが好ましい。
(1−1) 重合性二重結合を有する脂肪族炭化水素
重合性二重結合を有する脂肪族炭化水素は、たとえば、下記(1−1−1)で示す重合性二重結合を有する鎖状炭化水素、または、下記(1−1−2)で示す重合性二重結合を有する環状炭化水素などであることが好ましい。
(1−1−1) 重合性二重結合を有する鎖状炭化水素
重合性二重結合を有する鎖状炭化水素は、たとえば、炭素数が2〜30のアルケン(たとえば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセンまたはオクタデセンなど);炭素数が4〜30のアルカジエン(たとえば、ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエンまたは1,7−オクタジエンなど)などであることが好ましい。
(1−1−2) 重合性二重結合を有する環状炭化水素
重合性二重結合を有する環状炭化水素は、たとえば、炭素数が6〜30のモノまたはジシクロアルケン(たとえば、シクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンまたはエチリデンビシクロヘプタンなど);炭素数が5〜30のモノまたはジシクロアルカジエン(たとえば、シクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエンなど)などであることが好ましい。
(1−2) 重合性二重結合を有する芳香族炭化水素
重合性二重結合を有する芳香族炭化水素は、たとえば、スチレン;スチレンのハイドロカルビル(たとえば、炭素数が1〜30のアルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体(たとえば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレンまたはトリビニルベンゼンなど);ビニルナフタレンなどであることが好ましい。
(2)カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体およびそれらの塩
カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体は、たとえば、炭素数が3〜15の不飽和モノカルボン酸[たとえば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸または桂皮酸など];炭素数が3〜30の不飽和ジカルボン酸(無水物)[たとえば、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸またはメサコン酸など];炭素数が3〜10の不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数が1〜10)エステル(たとえば、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノデシルエステル、フマル酸モノエチルエステル、イタコン酸モノブチルエステルまたはシトラコン酸モノデシルエステルなど)などであることが好ましい。本明細書では、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
上記単量体は、たとえば、アルカリ金属塩(たとえば、ナトリウム塩またはカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(たとえば、カルシウム塩またはマグネシウム塩など)、アンモニウム塩、アミン塩、または、4級アンモニウム塩などであることが好ましい。
アミン塩は、アミン化合物であれば特に限定されず、たとえば、1級アミン塩(たとえば、エチルアミン塩、ブチルアミン塩またはオクチルアミン塩など);2級アミン塩(たとえば、ジエチルアミン塩またはジブチルアミン塩など);3級アミン塩(たとえば、トリエチルアミン塩またはトリブチルアミン塩など)などであることが好ましい。
4級アンモニウム塩は、たとえば、テトラエチルアンモニウム塩、トリエチルラウリルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩またはトリブチルラウリルアンモニウム塩などであることが好ましい。
カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体の塩は、たとえば、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、マレイン酸モノナトリウム、マレイン酸ジナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、マレイン酸モノカリウム、アクリル酸リチウム、アクリル酸セシウム、アクリル酸アンモニウム、アクリル酸カルシウムまたはアクリル酸アルミニウムなどであることが好ましい。
(3) スルホ基と重合性二重結合を有する単量体およびそれらの塩
スルホ基と重合性二重結合を有する単量体は、たとえば、ビニルスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレートまたは2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸などであることが好ましい。スルホ基と重合性二重結合を有する単量体の塩は、たとえば、上記「(2)カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体」において「上記単量体の塩」として列挙した塩であることが好ましい。
(4) ホスホノ基と重合性二重結合を有する単量体およびその塩
ホスホノ基と重合性二重結合を有する単量体は、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェートまたは2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸などであることが好ましい。ホスホノ基と重合性二重結合を有する単量体の塩は、たとえば、上記「(2)カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体」において「上記単量体の塩」として列挙した塩であることが好ましい。
(5) ヒドロキシル基と重合性二重結合を有する単量体
ヒドロキシル基と重合性二重結合を有する単量体は、たとえば、ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミドまたはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどであることが好ましい。
(6) 重合性二重結合を有する含窒素単量体
重合性二重結合を有する含窒素単量体は、たとえば下記(6−1)〜(6−4)で示す単量体であることが好ましい。
(6−1) アミノ基と重合性二重結合を有する単量体
アミノ基と重合性二重結合を有する単量体は、たとえば、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、クロチルアミン、N,N−ジメチルアミノスチレン、メチル−α−アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルチオピロリドン、N−アリールフェニレンジアミン、アミノカルバゾール、アミノチアゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノイミダゾールまたはアミノメルカプトチアゾールなどであることが好ましい。アミノ基と重合性二重結合を有する単量体は、上記列挙した単量体の塩であっても良い。上記列挙した単量体の塩としては、たとえば、上記「(2)カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体およびそれらの塩」において「上記単量体の塩」として列挙した塩が挙げられる。
(6−2) アミド基と重合性二重結合を有する単量体
アミド基と重合性二重結合を有する単量体は、たとえば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミドまたはN−ビニルピロリドンなどであることが好ましい。
(6−3) ニトリル基と重合性二重結合を有する炭素数が3〜10の単量体
ニトリル基と重合性二重結合を有する炭素数が3〜10の単量体は、たとえば、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレンまたはシアノアクリレートなどであることが好ましい。
(6−4) ニトロ基と重合性二重結合を有する炭素数が8〜12の単量体
ニトロ基と重合性二重結合を有する炭素数が8〜12の単量体は、たとえばニトロスチレンなどであることが好ましい。
(7) エポキシ基と重合性二重結合を有する炭素数が6〜18の単量体
エポキシ基と重合性二重結合を有する炭素数が6〜18の単量体は、たとえばグリシジル(メタ)アクリレートなどであることが好ましい。
(8) ハロゲン元素と重合性二重結合を有する炭素数が2〜16の単量体
ハロゲン元素と重合性二重結合を有する炭素数が2〜16の単量体は、たとえば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロロスチレン、ブロムスチレン、ジクロロスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレンまたはクロロプレンなどであることが好ましい。
(9) 重合性二重結合を有する炭素数が4〜16のエステル
重合性二重結合を有する炭素数が4〜16のエステルは、たとえば、酢酸ビニル;プロピオン酸ビニル;酪酸ビニル;ジアリルフタレート;ジアリルアジペート;イソプロペニルアセテート;ビニルメタクリレート;メチル−4−ビニルベンゾエート;シクロヘキシルメタクリレート;ベンジルメタクリレート;フェニル(メタ)アクリレート;ビニルメトキシアセテート;ビニルベンゾエート;エチル−α−エトキシアクリレート;炭素数が1〜11のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートまたは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど];ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数が2〜8の直鎖アルキル基、分枝アルキル基または脂環式のアルキル基である);ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数が2〜8の直鎖アルキル基、分枝アルキル基または脂環式のアルキル基である);ポリ(メタ)アリロキシアルカン類(たとえば、ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタンまたはテトラメタアリロキシエタンなど);ポリアルキレングリコール鎖と重合性二重結合を有する単量体[たとえば、ポリエチレングリコール(Mn=300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn=500)モノ(メタ)アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(以下「エチレンオキサイド」を「EO」と略記する)10モル付加物(メタ)アクリレートまたはラウリルアルコールEO30モル付加物(メタ)アクリレートなど];ポリ(メタ)アクリレート類{たとえば、多価アルコール類のポリ(メタ)アクリレート[たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]}などであることが好ましい。なお、本明細書では、「(メタ)アリロ」とは、アリロおよび/またはメタリロを意味する。
ビニル樹脂は、たとえば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(無水)マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−ジビニルベンゼン共重合体、または、スチレン−スチレンスルホン酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などであることが好ましい。
ビニル樹脂は、上記(1)〜(9)の重合性二重結合を有する単量体の単独重合体または共重合体であっても良いし、上記(1)〜(9)の重合性二重結合を有する単量体と分子鎖(k)を有する重合性二重結合を有する単量体(m)とが重合されたものであっても良い。分子鎖(k)は、たとえば、炭素数12〜27の直鎖状炭化水素鎖、炭素数12〜27の分岐状炭化水素鎖、炭素数が4〜20のフルオロアルキル鎖またはポリジメチルシロキサン鎖などであることが好ましい。単量体(m)中の分子鎖(k)と絶縁性液体とのSP値の差は2以下であることが好ましい。本明細書では、「SP値」は、Fedorsによる方法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]により計算された数値である。
分子鎖(k)を有する重合性二重結合を有する単量体(m)は、たとえば、下記の単量体(m1)〜(m3)などであることが好ましい。単量体(m)としては、単量体(m1)〜(m3)の2種以上を併用しても良い。
炭素数が12〜27(好ましくは16〜25)の直鎖状炭化水素鎖と重合性二重結合を有する単量体(m1)は、たとえば、不飽和モノカルボン酸のモノ直鎖状アルキル(アルキルの炭素数が12〜27)エステル、または、不飽和ジカルボン酸のモノ直鎖状アルキル(アルキルの炭素数が12〜27)エステルなどであることが好ましい。上記不飽和モノカルボン酸および不飽和ジカルボン酸としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸またはシトラコン酸などの炭素数が3〜24のカルボキシル基含有ビニル単量体などが挙げられる。単量体(m1)の具体例としては、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシルまたは(メタ)アクリル酸エイコシルなどが挙げられる。
炭素数が12〜27(好ましくは16〜25)の分岐状炭化水素鎖と重合性二重結合を有する単量体(m2)は、たとえば、不飽和モノカルボン酸の分岐状アルキル(アルキルの炭素数が12〜27)エステル、または、不飽和ジカルボン酸のモノ分岐状アルキル(アルキルの炭素数が12〜27)エステルなどであることが好ましい。上記不飽和モノカルボン酸および不飽和ジカルボン酸としては、たとえば、単量体(m1)において不飽和モノカルボン酸および不飽和ジカルボン酸の具体例として列挙したものと同様のものが挙げられる。単量体(m2)の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシルなどが挙げられる。
単量体(m3)は、炭素数が4〜20のフルオロアルキル鎖と重合性二重結合を有することが好ましい。
第2樹脂の融点は、0〜220℃であることが好ましく、30〜200℃であることがより好ましく、40〜80℃であることがさらに好ましい。トナー粒子の粒度分布および形状、ならびに、液体現像剤の粉体流動性、耐熱保管安定性および耐ストレス性などの観点から、第2樹脂の融点は液体現像剤を製造するときの温度以上であることが好ましい。第2樹脂の融点が液体現像剤を製造するときの温度よりも低いと、トナー粒子同士が合一することを防止し難くなることがあり、トナー粒子が分裂することを防止し難くなることがある。それだけでなく、トナー粒子の粒度分布における分布幅が狭くなり難い、別の言い方をすると、トナー粒子の粒径のバラツキが大きくなるおそれがある。「融点」は、示差走査熱量測定装置(セイコーインスツル(株)製の「DSC20」または「SSC/580」など)を用いてASTM D3418−82に規定の方法に準拠して測定可能である。
第2樹脂のMn(GPCで測定して得られたもの)は、100〜5000000であることが好ましく、200〜5000000であることがより好ましく、500〜500000であることがさらに好ましい。第2樹脂のSP値は、7〜18(cal/cm31/2であることが好ましく、8〜14(cal/cm31/2であることがさらに好ましい。
<着色剤>
着色剤の粒径は、0.3μm以下であることが好ましい。着色剤の粒径が0.3μmを超えると、着色剤の分散性の悪化を招くことがあるので、光沢度の低下を引き起こす場合がある。そのため、所望の色目を実現できなくなる場合がある。
着色剤は、公知の顔料などを特に限定されることなく使用できるが、コスト、耐光性、着色性などの観点から、以下の顔料を使用することが好ましい。なお、色彩構成上、これらの顔料は、通常、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料またはシアン顔料に分類され、ブラック以外の色彩(カラー画像)は、基本的には、イエロー顔料、マゼンタ顔料またはシアン顔料の減法混色により調色される。また、以下に示す顔料を単独で用いても良いし、必要に応じて以下に示す顔料の2種以上を併用して用いても良い。
ブラック着色剤に含まれる顔料(ブラック顔料)は、たとえば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、または、ランプブラックなどのカーボンブラックであっても良いし、バイオマス由来のカーボンブラックなどであっても良いし、マグネタイトまたはフェライトなどの磁性粉であっても良い。紫黒色染料であるニグロシン(アジン系化合物)を単独または併用して用いることもできる。ニグロシンとしては、C.I.ソルベントブラック7またはC.I.ソルベントブラック5などを用いることができる。
マゼンタ着色剤に含まれる顔料(マゼンタ顔料)は、たとえば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、または、C.I.ピグメントレッド222などであることが好ましい。
イエロー着色剤に含まれる顔料(イエロー顔料)は、たとえば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、または、C.I.ピグメントイエロー185などであることが好ましい。
シアン着色剤に含まれる顔料(シアン顔料)は、たとえば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、または、C.I.ピグメントグリーン7などであることが好ましい。
<顔料分散剤>
トナー粒子に対する添加剤の一例として、顔料分散剤を挙げる。顔料分散剤は、着色剤(顔料)をトナー粒子中で均一に分散させる作用を有するものであり、塩基性分散剤であることが好ましい。塩基性分散剤とは、以下に定義されるものをいう。すなわち、顔料分散剤0.5gと蒸留水20mlとをガラス製スクリュー管に入れ、それをペイントシェーカーを用いて30分間振り混ぜた後、ろ過することにより得られたろ液のpHをpHメータ(商品名:「D−51」、堀場製作所社製)を用いて測定し、そのpHが7より大きい場合を塩基性分散剤とする。なお、そのpHが7より小さい場合は、酸性分散剤と呼ぶものとする。
このような塩基性分散剤の種類は特に限定されない。塩基性分散剤は、たとえば、アミン基、アミノ基、アミド基、ピロリドン基、イミン基、イミノ基、ウレタン基、四級アンモニウム基、アンモニウム基、ピリジノ基、ピリジウム基、イミダゾリノ基、または、イミダゾリウム基などの官能基を分子内に有する化合物(分散剤)であることが好ましい。なお、分散剤としては、通常、分子中に親水性の部分と疎水性の部分とを有するいわゆる界面活性剤が該当するが、上記の通り着色剤(顔料)を分散させる作用を有する限り、種々の化合物を用いることができる。
このような塩基性分散剤の市販品は、たとえば、味の素ファインテクノ株式会社製の「アジスパーPB−821」(商品名)、「アジスパーPB−822」(商品名)または「アジスパーPB−881」(商品名)などであっても良いし、日本ルーブリゾール株式会社製の「ソルスパーズ28000」(商品名)、「ソルスパーズ32000」(商品名)、「ソルスパーズ32500」(商品名)、「ソルスパーズ35100」(商品名)または「ソルスパーズ37500」(商品名)などであっても良い。顔料分散剤は、絶縁性液体に溶解しないものであることがより好ましいので、たとえば、味の素ファインテクノ株式会社製の「アジスパーPB−821」(商品名)、「アジスパーPB−822」(商品名)または「アジスパーPB−881」(商品名)などであることがより好ましい。このような顔料分散剤を使用すると、理由は分からないが、所望の形状を有するトナー粒子が得られ易くなる。
このような顔料分散剤は、着色剤(顔料)に対して、1〜100質量%添加されることが好ましく、1〜40質量%添加されることがより好ましい。顔料分散剤の添加量が1質量%未満では、着色剤(顔料)の分散性が不十分となる場合がある。そのため、必要なID(画像濃度)を達成できないことがあり、トナー粒子の定着強度の低下を招くことがある。一方、顔料分散剤の添加量が100質量%を超えると、顔料を分散させるために必要な顔料分散剤よりも多くの顔料分散剤が添加されることになる。そのため、余剰の顔料分散剤が絶縁性液体中へ溶解する場合があり、トナー粒子の荷電性または定着強度などに悪影響を及ぼす場合がある。このような顔料分散剤は、1種単独で使用されても良いし、2種以上が混合されて使用されても良い。
<トナー粒子の形状>
トナー粒子の粒度分布を体積基準で測定したときのメジアン径D50(以下では「トナー粒子のメジアン径D50」と記す)は、0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましい。この粒径は、従来用いられていた乾式現像剤に含まれるトナー粒子の粒径よりも小さく、本発明の特徴の一つである。トナー粒子のメジアン径D50が0.5μm未満であれば、トナー粒子の粒径が小さすぎるので、電界でのトナー粒子の移動性の悪化を招くことがあり、よって、現像性の低下を招くことがある。一方、トナー粒子のメジアン径D50が5.0μmを超えると、トナー粒子の粒径の均一性の低下を招くことがあり、よって、画質の低下を招くことがある。より好ましくは、トナー粒子のメジアン径D50は0.5μm以上2.0μm以下である。
トナー粒子のメジアン径D50は、たとえばフロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製のFPIA−3000S)などを用いて計測可能である。この分析装置では、溶剤をそのまま分散媒体として使用することが可能である。よって、この分析装置を用いれば、水系で測定する系よりも実際の分散状態に近い状態におけるトナー粒子の状態を計測することができる。
<コア・シェル構造>
本実施形態におけるトナー粒子は、コア・シェル構造を有することが好ましい。これにより、トナー粒子のメジアン径D50およびトナー粒子の円形度などを制御しやすくなる。コア・シェル構造では、シェル樹脂(第2樹脂)とコア樹脂(第1樹脂)との質量比は、1:99〜80:20であることが好ましい。トナー粒子に含まれる樹脂における第2樹脂の含有割合が1質量%未満であれば、コア・シェル構造の粒子形成が難しくなることがある。トナー粒子に含まれる樹脂における第2樹脂の含有割合が20質量%を超えると、定着性の低下を招くことがある。
コア・シェル構造では、着色剤は、コア樹脂またはシェル樹脂に含まれていても良いし、コア樹脂とシェル樹脂との両方に含まれていても良い。トナー粒子に対する添加剤(たとえば顔料分散剤)についても同様のことが言える。
<絶縁性液体>
本実施形態における絶縁性液体は、その抵抗値が静電潜像を乱さない程度(1011〜1016Ω・cm程度)であることが好ましく、臭気および毒性が低い溶媒であることが好ましい。絶縁性液体としては、一般的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、またはポリシロキサンなどが挙げられる。特に、低臭気、低害性、コストなどの観点から、絶縁性液体は、ノルマルパラフィン系溶媒またはイソパラフィン系溶媒であることが好ましく、モレスコホワイト(商品名、松村石油研究所社製)、アイソパー(商品名、エクソンモービル社製)、シェルゾール(商品名、シェル石油化学社製)、IPソルベント1620、IPソルベント2028またはIPソルベント2835(いずれも商品名、出光興産社製)などであることが好ましい。
<液体現像剤の製造>
本実施形態に係る液体現像剤は、トナー粒子を絶縁性液体に分散させることにより製造されることが好ましい。トナー粒子は、以下に示す方法にしたがって製造されることが好ましい。
<トナー粒子の製造方法>
トナー粒子は、粉砕法または造粒法などの公知の手法に基づいて製造されることが好ましい。粉砕法では、樹脂粒子と顔料とを混練してから粉砕する。粉砕は、乾式状態またはオイル内での湿式状態などで行われることが好ましい。
造粒法としては、たとえば、懸濁重合法、乳化重合法、微粒子凝集法、樹脂溶液に貧溶媒を添加して析出させる方法、スプレードライ法または互いに異なる2種類の樹脂でコア・シェル構造を形成する方法などが挙げられる。
小径でシャープな粒度分布を有するトナー粒子を得るためには、粉砕法よりも造粒法を用いることが好ましい。また、溶融性の高い樹脂または結晶性の高い樹脂は常温でも柔らかく、粉砕され難い。そのため、粉砕法よりも造粒法の方が所望のトナー粒径を得やすい。造粒法の中でも、次に示す方法を用いてトナー粒子を製造することが好ましい。まず、良溶媒に樹脂を溶解させてコア樹脂溶液を得る。次に、良溶媒とはSP値の異なる貧溶媒に上述のコア樹脂溶液を界面張力調整剤とともに混合してせん断を与え、液滴を形成する。その後、良溶媒を揮発させてコア樹脂粒子を得る。この方法では、せん断の与え方、界面張力差または界面張力調整剤(シェル樹脂の材料)などを変えることによるトナー粒子の粒径または形状の制御性が高い。よって、所望の粒度分布を有するトナー粒子が得られやすい。
<画像形成装置>
本実施形態に係る液体現像剤を用いて画像を形成するための装置(画像形成装置)の構成は特に限定されない。画像形成装置は、たとえば、単色の液体現像剤が感光体から中間転写体へ一次転写後に記録媒体に二次転写される単色画像形成装置(図3参照)、単色の液体現像剤が感光体から記録媒体に直接転写される画像形成装置、または、複数種の液体現像剤を重ね合わせてカラー画像を形成する多色画像形成装置などであることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<製造例1>[シェル粒子の分散液(W1)の製造]
ガラス製ビーカーに、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシル100質量部と、メタクリル酸30質量部と、メタクリル酸ヒドロキシエチルとフェニルイソシアネートとの等モル反応物70質量部と、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.5質量部とを入れ、20℃で撹拌して混合した。これにより、モノマー溶液を得た。
次に、撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、脱溶剤装置および窒素導入管を備えた反応容器を準備した。その反応容器にTHF195質量部を入れ、反応容器が備える滴下ロートに上記モノマー溶液を入れた。反応容器の気相部を窒素で置換した後、密閉下70℃で1時間かけてモノマー溶液を反応溶液内のTHFに滴下した。モノマー溶液の滴下終了から3時間後、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.05質量部とTHF5質量部との混合物を反応容器に添加し、70℃で3時間反応させた後、室温まで冷却した。これにより、共重合体溶液を得た。
得られた共重合体溶液400質量部を撹拌下のIPソルベント2028(出光興産株式会社製)600質量部に滴下してから、0.039MPaの減圧下で40℃でTHFを留去した。これにより、シェル粒子の分散液(W1)を得た。レーザー式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製の「LA−920」)を用いて分散液(W1)中のシェル粒子の体積平均粒径を測定すると0.12μmであった。
<製造例2>[コア樹脂形成用溶液(Y1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置および温度計を備えた反応容器に、セバシン酸とアジピン酸とエチレングリコール(モル比0.8:0.2:1)とから得られたポリエステル樹脂(Mn:6000)937質量部とアセトン300質量部とを入れ、撹拌し、アセトンに均一に溶解させた。得られた溶液にIPDIを63質量部を入れ、80℃で6時間反応させた。NCO価が0になったところで、無水フタル酸28質量部をさらに追加して180℃で1時間反応させた。これにより、ウレタン変性ポリエステル樹脂であるコア樹脂を得た。得られたコア樹脂800質量部とアセトン1200質量部とをビーカーで攪拌させて、コア樹脂をアセトンに均一に溶解させた。これにより、コア樹脂形成用溶液(Y1)を得た。
本製造例で得られたコア樹脂では、Mnは25000であり、Mwは45000であり、ウレタン基濃度は1.44%であった。
<製造例3>[コア樹脂形成用溶液(Y2)の製造]
セバシン酸とアジピン酸とエチレングリコール(モル比0.8:0.2:1)とから得られたポリエステル樹脂のMnが5000であることを除いては上記製造例2の方法にしたがって、製造例3のコア樹脂形成用溶液を得た。本製造例で得られたコア樹脂では、Mnは12000であり、Mwは23000であり、ウレタン基濃度は1.32%であった。
<製造例4>[コア樹脂形成用溶液(Y3)の製造]
セバシン酸とアジピン酸とエチレングリコール(モル比0.8:0.2:1)とから得られたポリエステル樹脂のMnが8000であることを除いては上記製造例2の方法にしたがって、製造例4のコア樹脂形成用溶液を得た。本製造例で得られたコア樹脂では、Mnは40000であり、Mwは72000であり、ウレタン基濃度は1.15%であった。
<製造例5>[コア樹脂形成用溶液(Y4)の製造]
セバシン酸とアジピン酸とエチレングリコール(モル比0.8:0.2:1)とから得られたポリエステル樹脂のMnが5000であることを除いては上記製造例2の方法にしたがって、製造例5のコア樹脂形成用溶液を得た。本製造例で得られたコア樹脂では、Mnは25000であり、Mwは47000であり、ウレタン基濃度は1.81%であった。
<製造例6>[コア樹脂形成用溶液(Y5)の製造]
セバシン酸とアジピン酸とエチレングリコール(モル比0.8:0.2:1)とから得られたポリエステル樹脂のMnが3000であることを除いては上記製造例2の方法にしたがって、製造例6のコア樹脂形成用溶液を得た。本製造例で得られたコア樹脂では、Mnは8000であり、Mwは17000であり、ウレタン基濃度は2.29%であった。
<製造例7>[顔料の分散液の製造]
ビーカーに、酸性処理銅フタロシアニン(DIC株式会社製「FASTGEN Blue FDB−14」)20質量部と顔料分散剤「アジスパーPB−821」(味の素ファインテクノ株式会社製)5質量部とアセトン75質量部とを入れて撹拌し、酸性処理銅フタロシアニンを均一に分散させた。その後、ビーズミルによって銅フタロシアニンを微分散させた。このようにして顔料の分散液を得た。顔料の分散液中の顔料(銅フタロシアニン)の体積平均粒径は0.2μmであった。
<実施例1>
ビーカーに、コア樹脂形成用溶液(Y1)28質量部とコア樹脂形成用溶液(Y2)12質量部とを入れた。これにより、コア樹脂形成用溶液(Y6)を得た。得られたコア樹脂形成用溶液(Y6)に含まれるウレタン変性ポリエステル樹脂では、Mnは21000であり、Mwは48500であり、Mw/Mnは2.31であった。
ビーカーにコア樹脂形成用溶液(Y6)40質量部と顔料の分散液20質量部とを入れ、25℃でTKオートホモミキサー[プライミクス株式会社製]を用いて8000rpmで撹拌させた。これにより、顔料が均一に分散された樹脂溶液(Y11)を得た。
別のビーカーに、IPソルベント2028(出光興産株式会社製)67質量部とシェル粒子の分散液(W1)11質量部とを入れて、シェル粒子を均一に分散させた。次いで、25℃でTKオートホモミキサーを用いて10000rpmで撹拌させながら、樹脂溶液(Y11)を入れて2分間撹拌させた。次いでこの混合液を、撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び脱溶剤装置を備えた反応容器に投入し、35℃に昇温後、同温度で0.039MPaの減圧下、アセトン濃度が0.5質量%以下になるまでアセトンを留去し、液体現像剤を得た。
<実施例2>
ビーカーに、コア樹脂形成用溶液(Y3)28質量部とコア樹脂形成用溶液(Y5)12質量部とを入れた。これにより、コア樹脂形成用溶液(Y7)を得た。得られたコア樹脂形成用溶液(Y7)に含まれるウレタン変性ポリエステル樹脂では、Mnは30000であり、Mwは84000であり、Mw/Mnは2.80であった。
ビーカーにコア樹脂形成用溶液(Y7)40質量部と顔料の分散液20質量部とを入れ、25℃でTKオートホモミキサー[プライミクス株式会社製]を用いて8000rpmで撹拌させた。これにより、顔料が均一に分散された樹脂溶液(Y12)を得た。
別のビーカーに、IPソルベント2028(出光興産株式会社製)67質量部とシェル粒子の分散液(W1)11質量部とを入れて、シェル粒子を均一に分散させた。次いで、25℃でTKオートホモミキサーを用いて10000rpmで撹拌させながら、樹脂溶液(Y12)を入れて2分間撹拌させた。次いでこの混合液を、撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び脱溶剤装置を備えた反応容器に投入し、35℃に昇温後、同温度で0.039MPaの減圧下、アセトン濃度が0.5質量%以下になるまでアセトンを留去し、液体現像剤を得た。
<実施例3〜4、比較例1〜3>
表2に示す割合にしたがってコア樹脂形成用溶液(Y1)〜(Y5)を混ぜたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって、実施例3〜4の液体現像剤を得た。表2に示すコア樹脂形成用溶液を用いたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって、比較例1〜3の液体現像剤を得た。
<定着プロセス>
図3に示す画像形成装置を用いて画像を形成した。図3に示す画像形成装置の構成を以下に示す。液体現像剤21は、アニロックスローラ23により現像槽22内から汲み上げられる。アニロックスローラ23上の余剰の液体現像剤21は、アニロックス規制ブレード24により掻き取られ、残余の液体現像剤21は、ならしローラ25に送られる。ならしローラ25上では、液体現像剤21は厚さが均一且つ薄くなるように調整される。
ならしローラ25上の液体現像剤21は、現像ローラ26へ送られる。現像ローラ26上の余剰の液体現像剤は現像クリーニングブレード27により掻き取られ、残余の液体現像剤21は現像チャージャー28により帯電されて感光体29上に現像される。詳細には、感光体29の表面は、帯電部30により一様に帯電されており、感光体29の周囲に配置された露光部31は、所定の画像情報に基づく光を感光体29の表面に照射する。これにより、感光体29の表面には、所定の画像情報に基づく静電潜像が形成される。形成された静電潜像が現像されることにより、トナー像が感光体29上に形成される。なお、感光体29上の余剰の液体現像剤はクリーニングブレード32に掻き取られる。
感光体29上に形成されたトナー像は一次転写部37において中間転写体33に一次転写され、中間転写体33に転写された液体現像剤は二次転写部38において記録媒体40に二次転写される。記録媒体40に転写された液体現像剤は定着ローラ36a,36bにより定着される。なお、二次転写されずに中間転写体33に残った液体現像剤は、中間転写体クリーニング部34により掻き取られる。
本実施例では、感光体29の表面は帯電部30によりプラスに帯電しており、中間転写体33の電位は−400Vであり、二次転写ローラ35の電位は−1200Vであり、定着NIP時間は40m秒であり、定着ローラ36a,36bの温度は120℃であった。記録媒体40としてはOKトップコート(王子製紙株式会社製 128g/m2)を用い、記録媒体40の搬送速度は400mm/sであった。
<メジアン径D50>
フロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製FPIA−3000S)を用いて実施例1〜4および比較例1〜3の液体現像剤の平均粒径を測定した。フロー溶媒には、絶縁性液体と同じ溶媒であるIPソルベント2028を用いた。まず、分散剤としてS13940(日本ルーブリゾール株式会社製)を30mg含むアイソパーL(20g)に50mgの液体現像剤(実施例1〜4および比較例1〜3の各液体現像剤)を入れて懸濁液を得た。次に、超音波分散機(ウエルボクリア社製ウルトラソニッククリーナーモデルVS−150)を用いて、得られた懸濁液に対して約5分間分散処理を行った。上記フロー式粒子像分析装置を用いて、得られたサンプルの粒度分布を体積基準で測定したときのメジアン径D50を測定した。結果を表2のD50に示す。
<ドキュメントオフセット>
定着された画像同士を互いに重ね合わせた状態で、80g/m2の加重をかけて55℃で1週間保管した。その後、室温下に戻して加重を外してから、2枚を剥がし、剥がすときに画像が損傷したか否かを調べた。結果を表2のドキュメントオフセットに示す。表2では、剥がす時に画像が剥離しなかった場合にA1と記し、剥がす時に画像が剥離した場合にB1と記している。剥がす時に画像が剥離しなければ、ドキュメントオフセットが発生していないと言える。
<耐傷性>
鉛筆硬度試験を行った。JISK5400にしたがって、HBの鉛筆を、画像面に対して45度の角度で、荷重1kgをかけた状態で、当該画像面に押し当てた。結果を表2の耐傷性に示す。表2では、画像面に傷が付かなかった場合にA2と記し、画像面に傷が付いた場合にB2と記している。画像面に傷が付かなければ、ドキュメントの耐傷性に優れると言える。
Figure 0006213093
Figure 0006213093
表2に示すように、実施例1〜4では、ドキュメントオフセットは発生しておらず、ドキュメントの耐傷性に優れていた。一方、比較例1、2では、ドキュメントオフセットが発生した。その理由としては、比較例1、2では、2.3>Mw/MnであってMnが大きいことが挙げられる。比較例3では、ドキュメントの耐傷性に優れなかった。その理由として、比較例3では、2.3>Mw/MnであってMnが小さいことが挙げられる。なお、本発明者らは、Mw/Mn>4を満たすウレタン変性ポリエステル樹脂を製造することはできなかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
20 分散液、21 液体現像剤、23 アニロックスローラ、24 アニロックス規制ブレード、25 ローラ、26 現像ローラ、27 現像クリーニングブレード、28 現像チャージャー、29 感光体、30 帯電部、31 露光部、32 クリーニングブレード、33 中間転写体、34 中間転写体クリーニング部、35 二次転写ローラ、36a,36b 定着ローラ、37 一次転写部、38 二次転写部、40 記録媒体。

Claims (4)

  1. 樹脂と着色剤とを含むトナー粒子が絶縁性液体中に分散されてなる液体現像剤であって、
    前記樹脂は、ポリエステル樹脂に由来する成分がイソシアネート基を含む化合物により鎖長されてなるウレタン変性ポリエステル樹脂である第1樹脂と、前記第1樹脂とは異なる第2樹脂とを含み、
    前記第1樹脂は、第1ウレタン変性ポリエステル樹脂および第2ウレタン変性ポリエステル樹脂を含み、
    前記第1ウレタン変性ポリエステル樹脂および前記第2ウレタン変性ポリエステル樹脂は、互いに数平均分子量が異なり、
    前記第1樹脂は、前記第1樹脂と前記第2樹脂との合計に対し70質量%以上含まれ、
    前記ポリエステル樹脂に由来する成分は、酸成分に由来する構成単位と、アルコール成分に由来する構成単位とを含み、
    前記酸成分に由来する構成単位および前記アルコール成分に由来する構成単位に占める脂肪族モノマーに由来する構成単位の割合は、80質量%以上であり、
    前記第1樹脂の数平均分子量をMnとし、前記第1樹脂の重量平均分子量をMwとしたとき、2.3≦Mw/Mn≦4(但し、10000≦Mn≦50000)を満たし、
    前記第1ウレタン変性ポリエステル樹脂の数平均分子量をMn1とし、前記第1ウレタン変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量をMw1としたとき、Mw1/Mn1の値は2.1以下であり、
    前記第2ウレタン変性ポリエステル樹脂の数平均分子量をMn2とし、前記第2ウレタン変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量をMw2としたとき、Mw2/Mn2の値は2.1以下である、液体現像剤。
  2. 前記第1樹脂のウレタン基濃度は、0.5%以上5%以下である請求項1に記載の液体現像剤。
  3. 前記第2樹脂は、ビニル樹脂である請求項1または2に記載の液体現像剤。
  4. 前記トナー粒子は、コア・シェル構造を有する請求項3に記載の液体現像剤。
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