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JP5819275B2 - 製版処理廃液のリサイクル方法 - Google Patents

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Description

本発明は感光性平版印刷版原版の製版処理廃液のリサイクル方法に関し、特に特定の界面活性剤を含む現像液を用い、且つ、発生する製版処理廃液を濃縮し、得られた再生水を再利用する製版処理廃液のリサイクル方法に関する。
従来から、感光性平版印刷版原版を自動現像機で現像処理する場合は、処理や経時で失われる成分の濃度やpHを一定に保ち、現像液の性能を維持するために現像補充液を各工程の現像液に供給する手段が採られている。このような補充を行っても、現像液の性能が許容限度外になるような場合には、現像液の全てが廃棄処分される。製版処理廃液はアルカリ性が強い為、近年、公害規制の強化により、廃液をそのまま下水道に流すことは実質的に不可能で、製版業者が自ら廃液処理設備を設置するか、廃液処理業者に処理を委託する等による廃液処理が必要である。
しかし、廃液処理業者に委託する方法では、委託までの間に廃液を貯蔵するために多大なスペースが必要となるし、またコスト的にもきわめて高価である。また、廃液処理設備の設置は、設置に必要な初期投資が極めて大きく、整備するのにかなり広大な場所を必要とする等の問題を有している。
このような問題に対して、例えば特許文献1では廃液貯蔵タンクに温風を吹き込み濃縮する方法が、特許文献2では処理廃液を中和し、凝集剤を添加して凝集成分を凝集させる技術が提案されている。
特許文献1の技術では、蒸発量が多くないので、製版処理廃液を濃縮するのに長時間を必要とする。そのため廃液量減少の効果は充分ではない。また、蒸発した水分の処理について検討されていない。
特許文献2の技術では、凝集剤を必要とするため廃液の処理にコストがかかるという問題があった。また、ポリマーを含有する製版処理廃液の場合、蒸発釜内に残った固形物が飴状で蒸発釜の壁面に付着し、汚れやすく、また廃液処理装置の配管が詰まり易い問題があった。
また、製版処理廃液の排出量を削減することができ、製版処理廃液の処理過程で生じる水を容易に再利用できる平版印刷版製版処理廃液削減装置が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
一方、平版印刷版の現像処理廃液の問題に対する平版印刷版の現像液処方の観点から、非還元糖、及び塩基を含む現像液が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
特開平5−341535号公報 特開平2−157084号公報 特許第4774124号公報 特開2011−90282号公報
本発明の課題は、製版処理廃液の濃縮時における発泡が抑制され、再生水中に製版処理廃液が混在したり、濃縮中に粘度が著しく上昇したり、あるいは固形分が析出したりすることがなく、長時間連続的に製版処理した場合においても濃縮装置の洗浄が容易であり、且つ、得られた再生水は再利用が可能であり、製版処理廃液として廃却する廃液が極めて少ない製版処理廃液のリサイクル方法を提供することである。
上記した課題は下記の手段で達成される。
<1> 支持体上にラジカル重合性の画像記録層を有する感光性平版印刷版原版を露光後に現像するための自動現像機において、露光後の平版印刷版原版を現像する製版処理を、ナフタレン骨格を有するアニオン性界面活性剤及びナフタレン骨格を有するノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を1質量%〜10質量%含有し、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を含有しないか、又は含有する場合は2質量%以下含有し、且つ、pHが10〜13である現像補充液を用いて行うこと、
製版処理を行った際に排出される製版処理廃液を、廃液濃縮装置を用いて、濃縮後の製版処理廃液容量/濃縮前の製版処理廃液容量が1/2〜1/10の範囲となるように連続的に蒸発濃縮して水蒸気と残留する廃液濃縮物スラリーとに分離すること、
分離された水蒸気を凝縮して再生水とすること、
分離された廃液濃縮物スラリーを回収タンクに回収すること、及び、
得られた再生水を、前記自動現像機における現像補充液調製用の希釈水及びリンス水の少なくとも一方に使用すること、を含む
感光性平版印刷版原版の製版処理廃液のリサイクル方法。
<2> 前記現像補充液が、さらに、有機酸又はその塩を0.05質量%〜5質量%含有する<1>に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
<3> 前記現像補充液におけるシリケート成分の含有量が、1質量%以下である<1>又は<2>に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
<4> 前記ナフタレン骨格を有するアニオン性界面活性剤が、スルホン酸塩及び硫酸塩から選ばれる少なくとも1種のアニオン性界面活性剤である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
<5> 前記ラジカル重合性の画像記録層が、重合開始剤と、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する重合可能な化合物と、バインダーポリマーと、を含有する<1>〜<4>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
> 前記感光性平版印刷版原版が、ラジカル重合性の画像記録層の上に保護層を有し、前記自動現像機において、前記現像に先立って、さらに、前記保護層の水洗処理を行なうことを含む<1>〜<>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
> 前記廃液濃縮装置が、加熱手段を有し、該加熱手段により前記製版処理廃液を加熱することで前記製版処理廃液の蒸発濃縮が連続的に行われる<1>〜<>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
> 前記廃液濃縮装置が、さらに、該廃液濃縮装置内を減圧する減圧手段を備え、前記製版処理廃液の加熱が、減圧された状態で行われる<>に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
> 前記廃液濃縮装置における加熱手段が、放熱部と吸熱部を備えたヒートポンプを備え、前記ヒートポンプの放熱部で前記製版処理廃液を加熱して水蒸気を発生させるとともに、前記ヒートポンプの吸熱部で前記水蒸気を冷却する加熱手段である<>又は<>に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
10> 前記廃液濃縮装置において蒸発濃縮により濃縮された前記製版処理廃液の水蒸気を分離した後の濃縮物スラリーをポンプで加圧して、回収タンクに回収することを含む、<1>〜<>のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
本発明においては、現像補充液として、アニオン性又はノニオン性であってナフタレン骨格を有する界面活性剤を1質量%〜10質量%含有し、100℃〜300℃の沸点を有する有機溶剤の含有量を2質量%以下とした現像補充液を用いることにより、製版処理廃液を濃縮する時に生じる発泡を抑制することができ、発泡によって生じる飛沫同伴等によって、濃縮機を汚したり、得られる再生水中に製版処理廃液が混在したりすることを防止できる。これによって、得られた再生水は現像補充液調製用の希釈水やリンス水として好適に使用される。
なお、リンス水とは、現像処理後の平版印刷版を洗浄し、平版印刷版表面に残存する各処理液を除去するために用いられる水を指す。
また、前記現像補充液の使用とともに、前記連続的な蒸発濃縮における濃縮率を容量基準で1/2〜1/10の範囲とすることにより、濃縮廃液スラリーが粘度の著しい上昇を起こしたり、固形分が析出したりすることがない。従って、これらの原因によって、製版処理廃液を濃縮できなくなるという問題が生じることもなく、また、濃縮装置や、回収設備等の汚れの発生を抑制することができるので、濃縮装置等の洗浄が容易となりメンテナンス性が格段に向上する。
アニオン性又はノニオン性であって、ナフタレン骨格を有する界面活性剤は、製版処理廃液に含まれる固形物の乳化を促進しているものと推測され、しかも、アニオン性又はノニオン性のナフタレン骨格を有する界面活性剤による乳化物は、濃縮による粘度上昇が少なく、また、固形分の析出を抑制するとともに、濃縮装置等の設備に付着することが少なく、洗浄等が容易になるものと考えられる。
本発明によれば、製版処理廃液の濃縮時における発泡が抑制され、再生水中に製版処理廃液が混在したり、濃縮中に粘度が著しく上昇したり、あるいは固形分が析出したりすることがなく、長時間連続的に製版処理した場合においても濃縮装置の洗浄が容易であり、且つ、得られた再生水は再利用が可能であり、製版処理廃液として廃却する廃液が極めて少ない製版処理廃液のリサイクル方法を提供することができる。
本発明の製版処理廃液のリサイクル方法に係る装置のフローを示す概念図である。 従来の現像処理廃液の濃縮装置を有する現像処理装置のフローを示す概念図である。
以下、本発明のリサイクル方法について詳細に説明する。
本発明の感光性平版印刷版原版の製版処理廃液のリサイクル方法は、支持体上にラジカル重合性の画像記録層を有する感光性平版印刷版原版を露光後に現像するための自動現像機において、露光後の平版印刷版原版を現像する製版処理を、ナフタレン骨格を有するアニオン性界面活性剤及びナフタレン骨格を有するノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を1質量%〜10質量%含有し、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を含有しないか、又は含有する場合は2質量%以下含有し、且つ、pHが10〜13である現像補充液を用いて行うこと、製版処理を行った際に排出される製版処理廃液を、廃液濃縮装置を用いて、濃縮後の製版処理廃液容量/濃縮前の製版処理廃液容量が1/2〜1/10の範囲となるように蒸発濃縮して水蒸気と廃液濃縮物とに分離すること、分離された水蒸気を凝縮して再生水とすること、及び、得られた再生水を、前記自動現像機における現像補充液調製用の希釈水及びリンス水の少なくとも一方に使用すること、を含む感光性平版印刷版原版の製版処理廃液のリサイクル方法である。
なお、本明細書では、「感光性平版印刷版原版」とは、露光前の感光性画像記録層を有する平版印刷版の原版を意味し、露光後の画像記録層は、すでに感光性を有しないことから、これを単に「平版印刷版原版」と称する。「感光性平版印刷版原版」から、印刷に適用される「平版印刷版」を得るための露光、現像、その他の処理を含めて「製版処理」と称する。本明細書に記載される「現像処理」は「製版処理」に包含される一工程である。
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の一例について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る現像処理廃液のリサイクル方法では、感光性平版印刷版原版の製版処理に伴って自動現像機10から排出される現像液及び現像補充液の廃液を中間タンク20に貯蔵し、該中間タンク20より送られた廃液を、蒸発濃縮手段を備えた廃液濃縮装置30を用いて減圧を行わずに加熱又は減圧下で加熱し、蒸発する水分(水蒸気)と残留する濃縮物(スラリー)とに分離し、水蒸気として分離された水分を、冷却・凝結して再生水を生成し、生成された再生水は再生水タンク50に導入される。また、廃液濃縮装置30で濃縮された廃液は廃液回収タンク40に回収される。廃液回収タンク40への濃縮された廃液の移送は、ポンプで加圧して行うことも好ましい。
本発明においては、既述のように、本システムにおいて、ナフタレン骨格を有するアニオン性界面活性剤及びナフタレン骨格を有するノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を1質量%〜10質量%含有し、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を含有しないか、含有する場合は2質量%以下含有し、且つ、pHが10〜13である現像補充液を用いること及び廃液の濃縮割合を上記範囲に調整することにより、感光性平版印刷版原版の製版処理を行った際に発生する製版処理廃液の前記蒸発濃縮と再生水の生成が効率よく行われ、且つ、廃液濃縮装置中の汚れの発生が抑制される。
廃液を濃縮する蒸発濃縮装置を備えた廃液濃縮装置30には、中間タンク20より送られた廃液を、減圧を行わずに加熱するか、又は、減圧下で加熱し、蒸発する水分と残留する濃縮物(スラリー)とに分離する蒸発釜(図示しない)と、蒸発釜で水蒸気(有機溶剤を含有していてもよい)として分離された水分を導入し、冷却・凝結して再生水とする冷却釜(図示しない)とを少なくとも具備する。
蒸発釜内部と冷却釜内部との間で熱を移動させるヒートポンプユニットが設けられていることが好ましい。即ち、蒸発釜の加熱手段及び冷却釜の冷却手段としてヒートポンプを使用し、前記ヒートポンプの放熱部で前記製版処理廃液を加熱する一方、前記ヒートポンプの吸熱部が前記冷却釜の冷却手段として機能し、該吸熱部で水蒸気を冷却することが好ましい。
廃液の濃縮は、前記蒸発釜内部を減圧手段で減圧して、加熱濃縮する方法で行うことが、廃液の沸点を低下させ、大気圧下におけるよりも低い温度で廃液を蒸発濃縮させることできるため好ましい。減圧手段を用いることで、より安全で蒸発釜、廃液及び廃液濃縮物が熱による影響を受けにくいという利点を有する。減圧手段としては、一般的な水封式や油回転式、ダイヤフラム式等の機械的真空ポンプ、油や水銀を用いた拡散ポンプ、多段ターボ圧縮機、往復圧縮機、ねじ圧縮機等の圧縮機、アスピレータが挙げられるが、この中ではアスピレータがメンテナンス性、コストの点で好ましく用いられる。
減圧条件としては、例えば、13332.2Pa(100mmHg)以下、好ましくは3999.66Pa(30mmHg)以下となるまで減圧することが挙げられる。
また、蒸発釜における加熱手段及び冷却釜の冷却手段としてヒートポンプを使用することも好ましい態様である。ヒートポンプの放熱部で製版処理廃液を加熱する一方、ヒートポンプの吸熱部で水蒸気を冷却することができ、廃液の加熱濃縮をヒートポンプの発熱で行い、水蒸気の凝縮をヒートポンプの吸熱で行うため熱効率がよく、電熱器等の加熱手段を用いた場合に比較し、局所的に高熱とならない、より安全性が高い、二酸化炭素の排出量が減少するなどの利点を有する。
加熱条件としては、水流ポンプや真空ポンプで得られやすい圧力である666.61Pa(5mmHg)〜13332.2Pa(100mmHg)に対応した温度域が選択される。具体的には20℃〜80℃の範囲であり、より好ましくは25℃〜45℃の範囲である。
高温で蒸留し、濃縮を行うと多くの電力を要するため、減圧することにより加熱温度を低くし、使用電力を抑制することができる。
この廃液濃縮装置30において、製版処理廃液を蒸発濃縮する工程では、製版処理廃液は、蒸発釜中で加熱手段により加熱されて容量基準で1/2〜1/10となるように蒸発濃縮される。ここで、濃縮比が1/2未満であると処理すべき廃液量の減少が効果的に行われず、また、1/10を超えて濃縮した場合、廃液濃縮装置30の蒸発釜内で濃縮された廃液に起因する固形物の析出が生じやすくなり、メンテナンス性が低下する懸念がある。
なお、廃液濃縮装置として、タカギ冷機製のヒートポンプ方式のXR−2000、XR−5000(商品名)、加熱方式のコスモテック社製フレンドリーシリーズ(商品名)が市販されている。
また、分離された再生水を一時貯蔵する再生水タンク50と、再生水の自動現像機10への供給を制御する蒸留再生水再利用装置60とを備える。蒸留再生水再利用装置60は、好ましくは、再生水を自動現像機10に供給する補充水タンク80と。該補充水タンク80と自動現像機10の現像浴とを連結する配管と、該配管内の圧力を測定する圧力計と、ポンプとを備える。また、分析装置を備え、再生水の成分を分析し、その成分に応じて中和、新水の供給、などを行い、再生水の組成を調整する手段を有していてもよい。
回収された再生水は、蒸留再生水再利用装置60が備える圧力計で測定された圧力値に応じて、前記ポンプの駆動を制御することにより、前記補充水タンク80から前記自動現像装置10に供給される。自動現像機10には、現像補充液タンク70から現像補充液が供給される。
このシステムで得られた再生水は、有機溶剤を容量基準で、0.5%以下であれば含んでいてもよい。
また、得られる再生水は生物化学的酸素要求量(BOD値)、化学的酸素要求量(COD値)の低い再生水である。本発明で用いられる現像補充液を使用した場合、おおよそ、BOD値は250mg/L以下、COD値は200mg/L以下となるので、得られる再生水を、自動現像機の現像補充液の希釈水、及びリンス水として用いる他に、余剰の再生水はそのまま一般排水に放出してもよい。但し、再生水が有機溶剤等を含む場合には、放出前に活性汚泥等による処理を施す。
本発明において規定された現像補充液の組成及びpHは、自動現像機において現像に使用される際の現像補充液の組成及びpHを指す。
本実施形態においては、自動現像機10の現像浴に供給される現像補充液は、本発明に規定する現像補充液の組成及びpHを満たす場合には、該現像補充液をそのまま供給してもよく、本発明で規定する組成及びpHを満たすように現像補充液調製用の原液を希釈して得られる現像補充液を供給してもよい。
現像補充液調製用の原液を希釈する場合には、図1に示すシステムにおけるように、現像補充液タンク70からの現像補充液調製用の原液の供給量に応じて補充水タンク80から供給する再生水の量を制御して、自動現像機10内に配置された図示されない現像浴内で所定倍率に現像補充液調製用の原液を希釈する態様であってもよく、予め、現像補充液調製用の原液と再生水とを混合し、該原液を所定の組成及びpHの条件を満たす倍率に希釈して得られた現像補充液を現像浴内に供給してもよい。即ち、本発明においては、現像補充液調製用の原液の希釈の態様は特に限定されない。
また、複数の自動現像機から発生する製版処理廃液が、一つの廃液濃縮装置30に集められて処理されたり、得られた再生水が、複数の自動現像機に希釈水又はリンス水として供給されたりしてもよい。
<現像液>
本発明の製版処理廃液のリサイクル方法において、露光後の平版印刷版原版の現像に好適に使用される現像液について説明する。
なお、本明細書中において、特にことわりのない限り、現像液とは、現像開始液(狭義の現像液)と現像補充液とを包含する意味で用いられる。
本発明の適用される現像液及び現像補充液としては、ラジカル重合性の画像記録層を有する感光性平版印刷版原版を現像するためのネガ型現像液である。現像液の詳細については、後述する。
本明細書におけるネガ型現像液とは、ネガ型の画像記録層を有する感光性平版印刷版原版の露光後の現像に使用される現像液を指す。
本発明に用いられる現像補充液は、ナフタレン骨格を有するアニオン性界面活性剤及びナフタレン骨格を有するノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を1質量%〜10質量%含有し、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を含有しないか、含有する場合は2質量%以下含有し、且つ、pHが10〜13であることを特徴とする。
通常、自動現像機において連続的に製版処理が行われる場合、一定量の版を処理した後の現像浴中においては、現像開始液は添加される現像補充液に置き換わる。本発明においては、少なくとも使用される「現像補充液」の組成及びpHが本発明に規定した条件を満たすものであるが、現像開始液を含め、現像処理に使用される際の現像液、現像補充液のいずれもが、本発明に規定された組成及びpHを満たすことが好ましい。
本発明における製版処理廃液は、濃縮度が、容量基準で、1/2〜1/10(=濃縮後の製版処理廃液/濃縮前の製版処理廃液)の範囲に濃縮されるが、1/3〜1/8の範囲に濃縮されることが好ましい。この範囲であると、濃縮釜の汚れが抑制され、連続運転が長期にわたって可能である。また、得られた再生水は再利用が可能であり、製版処理廃液として廃却する廃液が極めて少ない。本発明においては、濃縮度とは容量基準で、濃縮前の製版処理廃液の総量を分母とし、濃縮後の製版処理廃液の総量を分子にし、濃縮後の製版処理廃液を1として標準化して表す。
再生水タンク50に貯留された再生水は、蒸留再生水再利用装置60を介して、補充水タンク80に送られる。現像補充液タンク70から現像補充液原液が自動現像機10に適宜送液される。
本発明に好適に使用可能な製版処理廃液のリサイクル方法に係る装置の具体例としては、例えば、特許第4774124号公報に記載の平版印刷版製版処理廃液削減装置等、特開2011−90282号公報等に記載の廃液処理装置が挙げられる。
本発明のラジカル重合性の画像記録層を有する感光性平版印刷版原版に用いる現像液としては、ネガ型現像液が挙げられる。
また、本発明にかかる現像液は、アニオン性又はノニオン性のナフタレン骨格を有する界面活性剤の含有量が1〜10質量%であり、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤の含有量が2質量%以下であり、且つ、pHが10〜13であることを特徴とする。
〔ネガ型現像液〕
本発明の平版印刷版原版の現像に用いられるネガ型現像液は、前記界面活性剤と、アルカリ金属の水酸化物とを少なくとも含有し、前記有機溶剤の含有量が2質量%以下であり、シリケート成分を含まず、pHが10〜12.5のアルカリ性現像液であることが好ましい。
(界面活性剤)
本発明におけるネガ型現像液に含まれる界面活性剤は、ナフタレン骨格を有するアニオン性界面活性剤又はナフタレン骨格を有するノニオン性界面活性剤である。
ネガ型現像液において用いられる最適のアニオン性界面活性剤は、ナフタレン骨格を有するスルホン酸塩又はナフタレン骨格を有する硫酸塩が好ましく、より好ましくは置換基を有していてもよいナフタレンスルホン酸塩、及び下記一般式(A)で表される化合物から選ばれる1種以上である。
置換基を有していてもよいナフタレンスルホン酸塩において、置換基としては炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましく、これらのアルキル基が1〜4個ナフタレン環に置換されていることが好ましく、1〜2個ナフタレン環に置換されていることがより好ましい。スルホン酸塩基がナフタレン環に1〜3個置換しているものが好ましく、より好ましくは1〜2個置換しているものである。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が好ましい。
具体的にはジ−ターシャリーブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、モノターシャリーブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジ−ターシャリーブチルナフタレンジスルホン酸ナトリウム、モノターシャリーブチルナフタレンジスルホン酸ナトリウムあるいはこれらの混合物をあげることができる。
ナフタレン骨格を有するアニオン性界面活性剤としては、下記一般式(A)で表されるアニオン性界面活性剤であることが好ましい。
(一般式(A)中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し;Rは直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のアルキル基を表し;qは0、1又は2を表し;Qは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;pは1〜100の整数を表す。p、又はqが2以上の場合には、R、Rはそれぞれ同じ基であってもよく、2種類以上の基から選択されてもよい。Mは、Na、K、Li、又はNH を表す。)
本発明の好ましい実施態様において、上記一般式(A)中、Rの好ましい例としては、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、又は−CHCH(CH)−が挙げられ、より好ましくは−CHCH−が挙げられる。また、Rの好ましい例としては、CH、C、C、又はCが挙げられる。また、qは0又は1であることが好ましい。Qは単結合であることが好ましい。また、pは1〜20の整数であることが好ましい。
一般式(A)で表される化合物の具体例としては以下の化合物が挙げられる。
ナフタレン骨格を有するノニオン性の界面活性剤は、好ましくは、下記一般式(B)で表される界面活性剤である。
(一般式(B)中、Rは、水素原子、又は炭素数1〜100のアルキル基を表す。n、mはそれぞれ独立に0〜100の整数を表し、n、mが同時に0であることはない。)
一般式(B)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンメチルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルナフチルエーテル等が好ましい態様として挙げられる。
前記一般式(B)で表される化合物において、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位数は、好ましくは3〜50、より好ましくは5〜30である。ポリオキシエチレン部とポリオキシプロピレン部はランダムでもブロックの共重合体でもよく、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位数が3〜50の場合に、ポリオキシプロピレン鎖の繰り返し単位数は1〜10であることが好ましい。ポリオキシプロピレン鎖のみの場合は、mは1〜10が好ましい。
前記一般式(B)で表されるノニオン性界面活性剤は、単独又は2種類以上を組み合わせて使用される。
下記に一般式(B)で表される化合物の具体例を示す。
これらの界面活性剤は1種単独、もしくは複数種を組み合わせて使用することができる。
また、これらの界面活性剤の現像液中における含有量は、有効成分換算で、1〜10質量%の範囲であり、2〜10質量%の範囲で含むことが好ましい。含有量が1質量%以上であれば、現像性及び非露光部の画像記録層成分の溶解性が良好であり、10質量%以下とすることで印刷版の耐刷性が良好となる。
現像補充液における界面活性剤の含有量も同様である。
(有機溶剤)
本発明においては、感光性平版印刷版原版の現像に用いる現像液(現像補充液を含む)における、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤の含有量は2質量%以下の範囲であり、前記有機溶剤を含有しない場合もあり得る。
現像液に含まれる有機溶剤の沸点が、100℃より低いと揮発しやすく、300℃を越えるとより濃縮し難くなるので好ましくない。
現像液が含む有機溶剤の種類としては、沸点が100℃〜300℃の範囲であれば、どのような有機溶剤であってもよいが、好ましくは、2−フェニルエタノール(沸点:219℃)、3−フェニル−1−プロパノール(沸点:238℃)、2−フェノキシエタノール(沸点:244〜255℃)、ベンジルアルコール(沸点:205℃)、シクロヘキサノール(沸点:161℃)、モノエタノールアミン(沸点:170℃)、ジエタノールアミン(沸点:268℃)、シクロヘキサノン(沸点:155℃)、エチルラクテート(沸点:155℃)、プロピレングリコール(沸点:187℃)、エチレングリコール(沸点:198℃)、γ−ブチロラクトン(沸点:205℃)、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)、N−エチルピロリドン(沸点:218℃)、グリセリン(沸点:290℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:120℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:124℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点:145℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:162℃)、グリセリン(沸点:299℃)であり、特にベンジルアルコール、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンが好ましい。
なお、後述するアルカリ剤のアミン類も、沸点が100℃〜300℃の範囲であれば、本発明における有機溶剤として取り扱う。
〔現像液に用いうるその他の成分〕
(有機酸又はその塩)
本発明にかかる現像液は、pHが10〜13であるが、pH調整剤を用いて、現像液のpHを調整してもよい。pH調製剤としては、クエン酸、りんご酸、酒石酸、安息香酸、フタル酸、p−エチル安息香酸、p−n−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−n−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−2−ヒドロキシエチル安息香酸、デカン酸、サリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の有機カルボン酸又はそれらの金属塩、アンモニウム塩などを含有することが好ましい。中でもクエン酸は緩衝剤としての機能があり、例えばクエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウムとして添加される。一般的には、現像液中に0.05〜5質量%、より好ましくは0.3〜3質量%の範囲で含有させる。
(キレート剤)
現像液には2価金属に対するキレート剤を含有させてもよい。2価金属の例としては例えば、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。該2価の金属に対するキレート剤としては、例えば、Na、Na、Na、NaP(NaOP)PONa、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類の他2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2,2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類が挙げられる。
このようなキレート剤の現像液中の含有量としては、現像液に使用される硬水の硬度及びその使用量に応じて変化するが、一般的には、キレート剤は、現像液中に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲で含有させてもよい。
(消泡剤)
アニオン性界面活性剤を現像液に含有させると、発泡しやすくなる懸念があるため、現像液にはさらに消泡剤を添加してもよい。消泡剤を添加する場合には、現像液に対して0.00001質量%以上添加することが好ましく、0.0001〜0.5質量%程度添加することがより好ましい。
本発明の現像液に用いうる消泡剤としては、フッ素系消泡剤、シリコーン系消泡剤、アセチレンアルコール、又はアセチレングリコール等が挙げられる。
フッ素系消泡剤としては、下記式で表される化合物等が挙げられる。
これらのうち、HLB1〜9のフッ素系消泡剤、特にHLB1〜4のフッ素系消泡剤が好ましく用いられる。上記のフッ素系消泡剤はそのまま、あるいは水その他の溶媒等と混合した乳濁液の形で現像液に添加される。
(上記式中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rfはアルキル基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置き換えたフッ化炭素基(C5〜C10程度)を表す。XはCO又はSOを表し、nは1〜10の整数を表す。)
シリコーン系消泡剤としては、ジアルキルポリジオキサン、好ましくは下記に示すジメチルポリジオキサンをそのまま、あるいはO/W型乳濁液としたもの、
下記に示すアルコキシポリ(エチレンオキシ)シロキサン、
ジメチルポリジオキサンにカルボン酸基あるいはスルホン酸基を一部導入して変性したもの、あるいはこれらシリコーン化合物を一般に知られるアニオン性界面活性剤と共に水と混合して乳濁液としたものを用いてもよい。
アセチレンアルコールとは、分子内にアセチレン結合(三重結合)をもつ不飽和アルコールである。また、アセチレングリコールとは、アルキンジオールとも呼ばれ、分子内にアセチレン結合(三重結合)をもつ不飽和グリコールである。
より具体的には、以下の一般式(1)、(2)で示されるものがある。
(一般式(1)中、Rは炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。)
(一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、a+bは0〜30の数である。)
一般式(2)中、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基などが挙げられる。
アセチレンアルコール及びアセチレングリコールの更なる具体例として以下のものが挙げられる。
(1)プロパルギルアルコール
(2)プロパルギルカルビノール
(3)3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール
(4)3−メチル−1−ブチン−3−オール
(5)3−メチル−1−ペンチン−3−オール
(6)1,4−ブチンジオール
(7)2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール
(8)3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール
(9)2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール
(10)2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの酸化エチレン付加物(下記の構造)
(11)2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール
これらのアセチレンアルコール、アセチレングリコールは市場で入手することができ、市販品として例えば Air Products and Chemicals Inc.の
商品名サフィノール シリーズ、及び、日信化学株式会社製の商品名オルフィン シリーズなどが知られている。市販品の具体例には、上記(3)としてサフィノール61、上記(4)としてオルフィンB、上記(5)としてオルフィンP、上記(7)としてオルフィンY、上記(8)としてサフィノール82、上記(9)としてサフィノール104、オルフィンAK−02、上記(10)としてサフィノール400シリーズ、上記(11)としてサフィノールDF−110(いずれも商品名)などがある。
(現像調整剤)
また、ネガ型現像液には現像調整剤として有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類を加えてもよい。たとえは炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、クエン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウムなどを単独もしくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
(アルカリ剤)
また、ネガ型現像液にはアルカリ剤として、たとえば第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、及び同リチウムなどの無機アルカリ剤及び、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤を単独もしくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
ネガ型現像液には、上記の成分の他に、必要に応じて以下の様な成分を併用することができる。例えば、キレート剤、還元剤、染料、顔料、硬水軟化剤、防腐剤等が挙げられる。
現像液のpHは、10〜13であることが必須であり、11〜12.5であるのが好ましい。また、導電率xは2mS/cm<x<30mS/cmであることが好ましく、5mS/cm<x<25mS/cmであることがより好ましい。
また、導電率調整剤として、有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類を加え、導電率を調整することができる。
(水)
前述のネガ型現像液の残余の成分は水である。本発明の現像液(現像原液)は、使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は各成分が分離や析出を起こさない程度が適当である。
本発明の現像液は、シリケート成分を含んでもよいが、現像液におけるシリケート成分の含有量は1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、含まないことが望ましい。シリケート成分の含有量が1質量%を超えると、製版処理廃液の濃縮装置の中で、シリケート成分の固着が発生し易く、濃縮後に廃液濃縮装置内部に固着して濃縮効率を低下させたり、排出不良を起こしたりすることがあるので好ましくない。
ここで、シリケート成分とは、1個又は数個のケイ素原子を中心とし、電気陰性な配位子がこれを取り囲んだ構造を持つ陰イオンを含む化合物であり、酸素を配位子とする珪酸塩やヘキサフルオロシリケート[SiF2−などの化学種を有する化合物である。
(現像補充液)
既述のように、本明細書においては、「現像液」は「現像補充液」を包含する意味で使用される。
本明細書における「現像開始液」とは、特にことわりのない限りは、製版処理に供される前の現像液を意味し、また、「現像補充液」とは、平版印刷版原版の現像処理や二酸化炭素の吸収等に伴い劣化した現像浴中の現像液に補充する現像用補充液を意味する。
以下、本発明における現像補充液の特徴を説明する。
現像補充液は、現像処理に使用される際に、本発明に規定される組成及びpHを満たすことを要し、これらの条件を満たす限りにおいて、劣化した現像液の活性度を回復させるため、現像開始液よりも高活性であってもよい。
現像液(現像補充液を含む)には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散性及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて前記した界面活性剤以外の種々の界面活性剤や有機溶剤を添加してもよい。更に、現像液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、硬水軟化剤を加えることもできる。
自動現像機10の現像浴内に最初に仕込んだ現像開始液は、感光性平版印刷版原版の処理により発生した溶出物により劣化する。また、現像液がアルカリ性であるため空気中の二酸化炭素の吸収に起因してpHが低下し劣化する。従って、自動現像機10において長期間連続的に現像処理を行うためには、通常、平版印刷版原版の現像品質を維持するために、劣化を補償する現像補充液を間欠的に又は連続的に補充する必要がある。
現像補充液の自動現像機の現像浴への導入方法としては、(1)当初用いた現像液よりも高活性の現像補充液調製用の原液と水とを一定の割合で、それぞれ別々に現像浴に導入する方法、(2)当初用いた現像開始液よりも高活性の現像補充液調製用の原液と水とを一定の割合で予め混合して希釈した後、現像浴に導入する方法、及び、(3)最初から一定濃度に調製された現像補充液をそのまま現像浴に導入する方法がある。いずれの場合においても、現像補充液は現像処理に使用される際において、本発明に規定される組成及びpHを満たすことを要する。
従来は、(1)又は(2)の方法において、発生する廃液量を少なくするため、できるだけ濃い濃度の(高活性の)現像補充液を少量添加することが行われている。しかしながら、現像補充液として高活性のものを使用すると、現像浴中の現像液の塩濃度が高くなるため現像処理により発生した溶出物が析出を起こしやすくなる懸念、現像処理により発生した溶出物の濃度が高くなるため溶出物が析出を起こしやすくなる懸念が生じる。さらに、少量の添加では精密な制御が必要となる。
従来の方法では、現像補充液の添加量を増加させると、それに伴い廃液量も増加して処理すべき製版処理廃液が増加するという問題があったところ、本発明のリサイクル方法によれば、当初用いた現像液と同じかそれ以上の現像活性度を有するが、標準濃度〔(1)又は(2)の方法で用いられる現像補充液調製用の原液+水、或いは、(3)の方法で用いられる希釈されない現像補充液の標準濃度〕よりも低い濃度を有する現像補充液調製用の原液+再生水を、同一の活性を達成するために標準補充量よりも多い量、現像浴に導入することにより、現像処理により発生した溶出物が析出しにくくなる。通常は、低濃度の現像補充液を大量に添加することで活性を一定に維持しようとした場合、現像浴中の現像液に起因する塩濃度は低く抑えられ、現像処理により発生した溶出物の濃度が低くなるため、析出物の発生を抑制しながら高品質の現像処理を継続することができるが、現像処理廃液量も多くなるところ、本発明の方法では、現像処理廃液から分離された再生水を自動現像機10へ供給し、再利用するために、従来法に比較して、システム外に排出される現像処理廃液の量を、現像補充液の供給量に対して飛躍的に低減させることができる。
自動現像機を用いて現像する場合には、現像開始液よりもアルカリ強度の高い現像補充液を希釈せずに現像液に加えることも可能であり、これによってさらに長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、平版印刷版原版を処理することができる。現像補充液のアルカリ強度(単位体積あたりのアルカリ剤添加量)としては、現像開始液のアルカリ強度の2倍〜20倍にすることも好ましい態様である。
<感光性平版印刷版原版>
以下、本発明の製版処理廃液のリサイクル方法において、好ましく適用できる感光性平版印刷版原版について詳しく説明する。
〔ネガ型感光性平版印刷版原版〕
本発明の製版処理廃液のリサイクル方法においては、以下に詳述するネガ型感光性平版印刷版原版を使用することにより、効果が特に顕著になり好ましい。
すなわち、本発明の製版処理廃液のリサイクル方法において処理される好ましい平版印刷版原版の感光性画像記録層形成に用いられる感光性組成物としては、赤外線吸収剤、重合開始剤、エチレン性不飽和結合含有単量体、及びバインダーポリマーを含むいわゆる熱重合系又はサーマル重合系感光性組成物と、光重合開始系、光重合性組成物、バインダーポリマーを含有するいわゆる光重合系感光性組成物とが挙げられる。
以下に、光重合系感光性組成物について説明する。
[光重合系感光性組成物]
本発明の製版処理廃液のリサイクル方法において処理される平版印刷版原版の画像記録層形成用感光性組成物として挙げられる光重合系感光性組成物は、可視光線〜紫外線波長域の光に感応する光重合開始系、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する重合可能な化合物、及びバインダーポリマーを含むことを特徴とする。
前記感光性組成物はアルミニウム板等の支持体上に塗布して感光層(画像記録層)を設け、感光性平版印刷版原版として用いることができる。このような感光性平版印刷版原版は、所望により下塗り層を設けた支持体上に、感光層と、任意に保護層とを順次積層してなるものである。ここで、「順次積層する」とは、支持体上に、下塗り層、感光層、及び保護層がこの順に設けられることを指す。ここで、下塗り層、保護層は必要に応じて設けられる層であり、さらに、目的に応じて設けられる他の層(例えば、中間層、バックコート層、等)を設けることを否定するものではない。
(可視光線〜紫外線波長域の光に感応する光重合開始系)
可視光線〜紫外線波長域の光に感応する光重合開始系とは、可視光線〜紫外線波長域の光を吸収して、光重合を開始し得る化合物を含む系を意味する。より具体的には、可視光線〜紫外線波長域、好ましくは330nm〜700nmに極大吸収波長を有する増感色素と、光重合開始剤との組み合わせが挙げられる。光重合開始剤は2種以上の光重合開始剤を用いてもよい(併用系)。このような光重合開始系として、使用する光源の波長により、特許、文献等で公知である種々の、増感色素(染料)と、光開始剤あるいは2種以上の光開始剤の併用系を適宜選択して用いることができる。
400nm以上の可視光線、Arレーザ、半導体レーザの第2高調波、SHG−YAGレーザを光源とする場合にも、種々の光開始系が提案されており、例えば、米国特許第2,850,445号に記載のある種の光還元性染料、例えばローズベンガル、エオシン、エリスロシンなど、あるいは、染料と開始剤との組み合わせによる系、例えば、染料とアミンの複合開始系(特公昭44−20189号)、ヘキサアリールビイミダゾールとラジカル発生剤と染料との併用系(特公昭45−37377号)、ヘキサアリールビイミダゾールとp−ジアルキルアミノベンジリデンケトンの系(特公昭47−2528号、特開昭54−155292号)、環状シス−α−ジカルボニル化合物と染料の系(特開昭48−84183号)、環状トリアジンとメロシアニン色素の系(特開昭54−151024号)、3−ケトクマリンと活性剤の系(特開昭52−112681号、特開昭58−15503号)、ビイミダゾール、スチレン誘導体、チオールの系(特開昭59−140203号)、有機過酸化物と色素の系(特開昭59−1504号、特開昭59−140203号、特開昭59−189340号、特開昭62−174203号、特公昭62−1641号、米国特許第4766055号)、染料と活性ハロゲン化合物の系(特開昭63−258903号、特開平2−63054号など)染料とボレート化合物の系(特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開昭64−13140号、特開昭64−13141号、特開昭64−13142号、特開昭64−13143号、特開昭64−13144号、特開昭64−17048号、特開平1−229003号、特開平1−298348号、特開平1−138204号など)ローダニン環を有する色素とラジカル発生剤の系(特開平2−179643号、特開平2−244050号)、チタノセンと3−ケトクマリン色素の系(特開昭63−221110号)、チタノセンとキサンテン色素さらにアミノ基あるいはウレタン基を含む付加重合可能なエチレン性不飽和化合物を組み合わせた系(特開平4−221958号、特開平4−219756号)、チタノセンと特定のメロシアニン色素の系(特開平6−295061号)、チタノセンとベンゾピラン環を有する色素の系(特開平8−334897号)等を挙げることができる。
また、最近400nm〜410nmの波長のレーザー(バイオレットレーザー)が開発され、それに感応する450nm以下の波長に高感度を示す光重合開始系が開発されており、これらの光開始系も使用される。例えば、カチオン色素/ボレート系(特開平11−84647号公報)、メロシアニン色素/チタノセン系(特開2000−147763号公報)、カルバゾール型色素/チタノセン系(特開2001−42524号公報)等を挙げることができる。
更に上記光開始系に必要に応じ、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール等のチオール化合物、N−フェニルグリシン、N,N−ジアルキルアミノ芳香族アルキルエステル等のアミン化合物等の水素供与性化合物を加えることにより更に光開始能力が高められることが知られている。これらの光重合開始系の使用量は、後述のエチレン性不飽和化合物100質量部に対し、0.05〜100質量部の範囲内であってもよく、好ましくは0.1〜70質量部、更に好ましくは0.2〜50質量部の範囲内である。
(少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する重合可能な化合物)
少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する重合可能な化合物(以下エチレン性不飽和結合含有化合物とも呼ぶ)とは、感光性組成物が活性光線の照射を受けた時、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋、硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。付加重合可能なエチレン性不飽和結合を含む化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができる。例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス[p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ジメチルメタン、ビス−[p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル]ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,5−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。さらに、前述のエステルモノマーの混合物も挙げることができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレシビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の例としては、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記の一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加せしめた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH=C(R)COOCHCH(R’)OH (A)
(ただし、R及びR’はHあるいはCHを示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。
(バインダーポリマー)
光重合系感光性組成物からなる画像記録層中のバインダーポリマー(高分子結合剤)としては、該画像記録層の皮膜形成剤としてだけでなく、アルカリ現像液に溶解する必要があるため、アルカリ水に可溶性又は膨潤性である有機高分子重合体が使用される。
この様な有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。
また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この外に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。特にこれらの中で〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体及び〔アリル(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が好適である。この他に水溶性有機高分子として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また、硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ポリアミドや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
また、特公平7−120040号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開平11−352691号に記載のポリウレタン樹脂も本発明の用途には有用である。
これら高分子重合体は側鎖にラジカル反応性基を導入することにより硬化皮膜の強度を向上させることができる。付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が、又光照射によりラジカルになり得る官能基としてはメルカプト基、チオール基、ハロゲン原子、トリアジン構造、オニウム塩構造等が挙げられる。上記付加重合反応し得る官能基としては、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基などエチレン性不飽和結合基が特に好ましいが、又アミノ基、ヒドロキシ基、ホスホン酸基、燐酸基、カルバモイル基、イソシアネート基、ウレイド基、ウレイレン基、スルホン酸基、アンモニオ基から選ばれる官能基も有用である。
上記画像記録層の現像性を維持するためには、バインダーポリマーは適当な分子量、酸価を有することが好ましく、重量平均分子量で5000〜30万、酸価20〜200の高分子重合体が有効に使用される。
これらのバインダーポリマーは光重合系感光層全組成中に任意な量を混和させることができる。好ましくは10〜90%、より好ましくは30〜80%である。90質量%以下の場合には形成される画像強度等の点で好ましい結果を与えるため好ましい。また光重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物とバインダーポリマーは、質量比で1/9〜9/1の範囲とするのが好ましい。より好ましい範囲は2/8〜8/2てあり、更に好ましくは3/7〜7/3である。
(その他の成分)
また、上記画像記録層においては、以上の基本成分の他に感光性組成物の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。
更に画像記録層の着色を目的として、着色剤を添加してもよい。着色剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料(C.I.Pigment Blue 15:3、15:4、15:6など)、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料がある。
[熱重合系感光性組成物]
次に、本発明に用いられる平版印刷版原版の感光性画像記録層形成用の熱重合系感光性組成物について説明する。熱重合系感光性組成物は通常、赤外線吸収剤、重合開始剤、エチレン性不飽和結合含有単量体、及びバインダーポリマーを含む。
(赤外線吸収剤)
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、後述する重合開始剤(ラジカル発生剤)が熱分解し、ラジカルを発生する。本発明において使用される赤外線吸収剤としては、波長760nmから1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料であることが好ましい。
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号公報、特開昭59−84356号公報、特開昭59−202829号公報、特開昭60−78787号公報等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号公報、特開昭58−181690号公報、特開昭58−194595号公報等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号公報、特開昭58−224793号公報、特開昭59−48187号公報、特開昭59−73996号公報、特開昭60−52940号公報、特開昭60−63744号公報等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書に記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号公報、同58−220143号公報、同59−41363号公報、同59−84248号公報、同59−84249号公報、同59−146063号公報、同59−146061号公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号公報、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、赤外線吸収剤の好ましい他の例としては、特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
一般式(a)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−NPh、X−L又は以下に示す基を表す。ここでXは酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を表し、Lは、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
Xaは後述するZ1−と同様に定義され、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、RとRとは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar、Arは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y、Yは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R、Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R、R、R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Z1−は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZ1−は必要ない。好ましいZ1−は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
これらの赤外線吸収剤は、熱重合系感光性組成物を感光性平版印刷版原版の画像記録層に適用する場合、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよいが、ネガ型感光性平版印刷版原版を作製した際に、画像記録層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.5〜1.2の範囲にあるように添加する。好ましくは、0.6〜1.15の範囲である。
(重合開始剤)
熱重合系感光性組成物は、後述する重合性化合物の硬化反応を開始、進行させるための重合開始剤として、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤であるスルホニウム塩重合開始剤を含有することが好ましい。本発明においては、スルホニウ
ム塩重合開始剤を前述した赤外線吸収剤と併用することで、赤外線レーザを照射した際に赤外線吸収剤が発熱し、その熱によりラジカルを発生することができる。本発明においては、これらの組合せにより、高感度なヒートモード記録が可能となるため、このような組合せが好ましい。
本発明において好適に用いられるスルホニウム塩重合開始剤としては、下記一般式(I)で表されるオニウム塩が挙げられる。
一般式(I)中、R11、R12及びR13は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11−はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
一般式(I)で表されるオニウム塩の具体例は、特開2006−220931号公報に記載の[OS−1]〜[OS−10]であるが、これらに限定されるものではない。
上記したものの他、特開2002−148790号公報、特開2002−148790号公報、特開2002−350207号公報、特開2002−6482号公報に記載の特定の芳香族スルホニウム塩も好適に用いられる。
本発明においては、上記スルホニウム塩重合開始剤の他、他の重合開始剤(他のラジカル発生剤)を併用することができる。
他のラジカル発生剤としては、スルホニウム塩以外の他のオニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジド、オキシムエステル化合物、トリアリールモノアルキルボレート化合物などが挙げられる。これらの中でも、オニウム塩が高感度であり好ましい。
本発明において好適に用い得る他のオニウム塩としては、ヨードニウム塩及びジアゾニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、ラジカル重合の開始剤として機能する。
本発明における他のオニウム塩としては、下記一般式(II)及び(III)で表されるオニウム塩が挙げられる。
一般式(II)中、Ar21とAr22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z21−は前記一般式(I)におけるZ11−と同義の対イオンを表す。
一般式(III)中、Ar31は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z31−は前記一般式(I)におけるZ11−と同義の対イオンを表す。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(II)、及び一般式(III)で示されるオニウム塩は、特開2006−220931号公報に記載の[OI−1]〜[OI−10]、[ON−1]〜[ON−5]などであるが、これらに限定されるものではな
い。
さらに、重合開始剤(ラジカル発生剤)として好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133696公報に記載されたもの等を挙げることができる。
なお、重合開始剤(ラジカル発生剤)は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、感光性平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
熱重合系感光性組成物における重合開始剤の総含有量は、全固形分中、0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。含有量が0.1質量%以上とすることで良好な感度が得られ、また50質量%以下であれば、感光性平版印刷版原版の画像記録層に適用した際に印刷時に非画像部に汚れが発生する問題もない。
重合開始剤は、スルホニウム塩重合開始剤を含むものが特に好ましく、スルホニウム塩重合開始剤1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の重合開始剤を併用する場合は、スルホニウム塩重合開始剤のみを複数種用いてもよいし、スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤を併用してもよい。
スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤とを併用する場合の含有比(質量比)としては、100/1〜100/50が好ましく、100/5〜100/25がより好ましい。
(重合性化合物)
熱重合系感光性組成物に用いられる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
重合性化合物の具体例としては、前述の光重合系感光性組成物に記載したエチレン性不飽和結合含有化合物として使用可能なものが同様に挙げられる。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
(バインダーポリマー)
熱重合系感光性組成物に用いられるバインダーポリマーは、膜性向上の観点から含有されるものであって、膜性を向上させる機能を有していれば、種々のものを使用することができる。中でも、本発明における熱重合系感光性組成物に用いられる好適なバインダーポリマーは、下記一般式(i)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーである。以下、このポリマーを適宜、「特定バインダーポリマー」と称し、詳細に説明する。
(一般式(i)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは連結基を表し、Aは酸素原子又はNR−を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
一般式(i)におけるRで表される連結基は、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から選択される原子又は原子の集団から構成され、その置換基を除いた原子数が2〜30である連結基であってもよい。その具体例としては、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、及び置換アリーレン、並びにこれらから選択される2価の基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造などが挙げられる。
で表される連結基が鎖状構造である場合、当該鎖状構造の連結基の例としては、エチレン及びプロピレンが挙げられる。また、上記のアルキレンがエステル結合を介して複数連結されている構造もまた、好ましい連結基の一例である。
この中でも、一般式(i)におけるRで表される連結基は、炭素原子数3から30までの脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。より具体的には、任意の置換基によって一個以上置換されていてもよいシクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、ターシクロヘキシル、ノルボルナン等の脂肪族環状構造を有する化合物を構成する任意の炭素原子上の水素原子を(n+1)個除き、(n+1)価の炭化水素基としたものを挙げることができる。また、Rは、置換基を含めて炭素数3から30であることが好ましい。
脂肪族環状構造を構成する化合物の任意の炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で、一個以上置き換えられていてもよい。耐刷性の点で、Rは縮合多環脂肪族炭化水素、橋架け環脂肪族炭化水素、スピロ脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環集合(複数の環が結合又は連結基でつながったもの)等、2個以上の環を含有してなる炭素原子数5から30までの置換基を有していてもよい脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。この場合も炭素数は置換基が有する炭素原子を含めてのものである。
で表される連結基としては、更に、原子数が5〜10のものが好ましい。Rで表される連結基の構造は、その構造中にエステル結合を有する鎖状構造、又はその構造中に前記の如き環状構造を有する鎖状構造であることが好ましい。
で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl))、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl))、ヒドロキシシリル基(−Si(OH))及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルボリル基(−B(alkyl))、ジアリールボリル基(−B(aryl))、アルキルアリールボリル基(−B(alkyl)(aryl))、ジヒドロキシボリル基(−B(OH))及びその共役塩基基、アルキルヒドロキシボリル基(−B(alkyl)(OH))及びその共役塩基基、アリールヒドロキシボリル基(−B(aryl)(OH))及びその共役塩基基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
熱重合系感光性組成物を感光性平版印刷版原版の画像記録層に適用する場合には、画像記録層の設計にもよるが、水素結合可能な水素原子を有する置換基や、特に、カルボン酸よりも酸解離定数(pKa)が小さい酸性を有する置換基は、耐刷性を下げる傾向にあるので好ましくない。一方、ハロゲン原子や、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基などの疎水性置換基は、耐刷を向上する傾向にあるのでより好ましく、特に、環状構造がシクロペンタンやシクロヘキサン等の6員環以下の単環脂肪族炭化水素である場合には、このような疎水性の置換基を有していることが好ましい。これら置換基は可能であるならば、置換基同士、又は置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよく、置換基は更に置換されていてもよい。
一般式(i)におけるAがNR−である場合のRは、水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。このRで表される炭素数1〜10までの一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。Rが有してもよい置換基としては、Rが導入し得る置換基として挙げたものと同様である。但し、Rの炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。一般式(i)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。
一般式(i)におけるnは、1〜5の整数を表し、耐刷の点で好ましくは1である。
以下に、一般式(i)で表される繰り返し単位の好ましい具体例としては、特開2006−220931号公報[0134]〜[0143]に記載の具体例であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(i)で表される繰り返し単位は、バインダーポリマー中に1種類だけであってもよいし、2種類以上含有していてもよい。本発明における熱重合系感光性組成物に用いられる特定バインダーポリマーは、一般式(i)で表される繰り返し単位だけからなるポリマーであってもよいが、通常、他の共重合成分と組み合わされ、コポリマーとして使用される。コポリマーにおける一般式(i)で表される繰り返し単位の総含有量は、その構造や、組成物の設計等によって適宜決められるが、好ましくはポリマー成分の総モル量に対し、1〜99モル%、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは5〜20モル%の範囲で含有される。
コポリマーとして用いる場合の共重合成分としては、ラジカル重合可能なモノマーであれば従来公知のものを制限なく使用できる。具体的には、「高分子データハンドブック−基礎編−(高分子学会編、培風館、1986)」記載のモノマー類が挙げられる。このような共重合成分は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明における特定バインダーポリマーの分子量は、画像形成性や得られる平版印刷版の耐刷性の観点から適宜決定される。通常、分子量が高くなると、耐刷性は優れるが、画像形成性は劣化する傾向にある。逆に、低いと、画像形成性はよくなるが、耐刷性は低くなる。好ましい分子量としては、2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜200,000の範囲である。
本発明における熱重合系感光性組成物に用いられるバインダーポリマーは、特定バインダーポリマー単独であってもよいし、他のバインダーポリマーを1種以上併用して、混合物として用いてもよい。併用されるバインダーポリマーは、バインダーポリマー成分の総質量に対し1〜60質量%、好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは1〜20質量%の範囲で用いられる。併用できるバインダーポリマーとしては、従来公知のものを制限なく使用でき、具体的には、本業界においてよく使用されるアクリル主鎖バインダーや、ウレタンバインダー等が好ましく用いられる。
熱重合系感光性組成物中での特定バインダーポリマー及び併用してもよいバインダーポリマーの合計量は、適宜決めることができるが、組成物中の不揮発性成分の総質量に対し、通常10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%の範囲である。
また、このようなバインダーポリマーの酸価(meq/g)としては、2.00〜3.60の範囲であることが好ましい。
(併用可能な他のバインダーポリマー)
前記特定バインダーポリマーと併用可能な他のバインダーポリマーは、ラジカル重合性基を有するバインダーポリマーであることが好ましい。そのラジカル重合性基としては、ラジカルにより重合することが可能であれば特に限定されないが、α−置換メチルアクリル基[−OC(=O)−C(−CHZ)=CH、Z=ヘテロ原子から始まる炭化水素基]、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基が挙げられ、この中でも、アクリル基、メタクリル基が好ましい。
また、併用可能な他のバインダーポリマーは、更に、アルカリ可溶性基を有するものが好ましい。バインダーポリマー中のアルカリ可溶性基の含有量(中和滴定による酸価)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜3.0mmol、より好ましくは0.2〜2.0mmol、最も好ましくは0.45〜1.0mmolである。この含有量が、0.1mmolより少ないと現像時に析出し現像カスが発生する場合がある。また、含有量が3.0mmolよりも大きいと、親水性が高すぎて感光性平版印刷版原版に適用した際に耐刷性が低下する場合がある。
感光性組成物には、以上の基本成分の他に、更にその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤に関し例示する。
(重合禁止剤)
本発明においては、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、即ち、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、全組成物中の不揮発性成分の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
(着色剤)
更に、熱重合系感光性組成物には、その着色を目的として染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、多くの染料は熱重合系組成物からなる画像記録層(感光層)の感度の低下を生じるので、着色剤としては、特に顔料の使用が好ましい。具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。着色剤としての染料及び顔料の添加量は全組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
(その他の添加剤)
感光性組成物は、更に、硬化皮膜の物性を改良するための無機充填剤や、その他可塑剤、画像記録層表面のインク着肉性を向上させ得る感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、バインダーポリマーと付加重合性化合物との合計質量に対し一般的に10質量%以下の範囲で添加することができる。また、後述する感光性平版印刷版原版において、画像記録層の膜強度(耐刷性)向上を目的とした現像後の加熱・露光の効果を強化するためのUV開始剤や、熱架橋剤等を含んでいてもよい。
上述した熱重合系又は光重合系感光性組成物は、以下に述べる感光性平版印刷版原版における画像記録層(感光層)として好適に使用することができる。
[感光性平版印刷版原版]
感光性平版印刷版原版は、支持体上に、ラジカル重合性の画像記録層と、任意に保護層を順次積層してなるものであって、画像記録層が上述した感光性組成物を含むことを特徴とする。かかる感光性平版印刷版原版は、上述した感光性組成物を含む画像記録層塗布液及び、必要に応じて、保護層等の所望の層の塗布液用成分を溶媒に溶かしてなる塗布液を、適当な支持体上に又は支持体上に設けられた中間層上に塗布することにより製造することができる。
〔画像記録層(感光層)〕
本発明の平版印刷版原版における画像記録層(以下、適宜、感光層と称する)は、上述した感光性組成物、特に光重合系感光性組成物又は熱重合系感光性組成物を含むネガ型感光層である。このような光重合系又は熱重合性ネガ型感光層は、光又は熱により重合開始剤が分解し、ラジカルを発生させ、この発生したラジカルにより重合性化合物が重合反応を起こすという機構を有する。これらの感光層を有する感光性平版印刷版原版は、300〜1,200nmの波長を有するレーザ光での直接描画での製版に特に好適であり、従来の感光性平版印刷版原版に比べ、高い耐刷性及び画像形成性を発現するという特徴を有する。
前記感光層の被覆量は、主に、感光層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性に影響し得るもので、用途に応じ適宜選択することが望ましい。被覆量が少なすぎる場合には、耐刷性が充分でなくなる。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要するため好ましくない。本発明の主要な目的である走査露光用感光性平版印刷版原版としては、その被覆量は乾燥後の質量で約0.1g/m〜約10g/mの範囲が適当である。より好ましくは0.5g/m〜5g/mである。
[支持体]
本発明の感光性平版印刷版原版の支持体は、親水性表面を有するアルミニウム支持体であることが好ましい。
アルミニウム板とは、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属板であり、純アルミニウム板であってもよく、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板の中から選ばれてもよい。以下の説明において、上記に挙げたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる基板をアルミニウム基板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがあり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。本発明では純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来公知の素材のもの、例えば、JIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などを適宜利用することができる。
また、本発明に用いられるアルミニウム基板の厚みは、およそ0.1mm〜0.6mm程度であることが好ましい。この厚みは印刷機の大きさ、印刷版原版の大きさ及びユーザーの希望により適宜変更することができる。アルミニウム基板には適宜必要に応じて後述の基板表面処理が施されてもよい。
(粗面化処理)
粗面化処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレインなどがある。更に塩酸又は硝酸電解液中で電気化学的に粗面化する電気化学的粗面化方法、及びアルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立でするボールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を粗面化するブラシグレイン法のような機械的粗面化法を用いることができ、上記粗面化方法を単独或いは組み合わせて用いることもできる。その中でも粗面化に有用に使用される方法は塩酸又は硝酸電解液中で化学的に粗面化する電気化学的方法であり、適する陽極時電気量は50C/dm〜400C/dmの範囲である。更に具体的には、0.1〜50質量%の塩酸又は硝酸を含む電解液中、温度20〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm〜400C/dmの条件で交流及び/又は直流電解を行うことが好ましい。
このように粗面化処理したアルミニウム基板は、酸又はアルカリにより化学的にエッチングされてもよい。好適に用いられるエッチング剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等であり、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50質量%、20℃〜100℃である。エッチングのあと表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸は硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50℃〜90℃の温度の15〜65質量%の硫酸と接触させる方法及び特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。以上のように処理された後、処理面の中心線平均粗さRaが0.2〜0.5μmであれば、特に方法条件は限定しない。
(陽極酸化処理)
以上のようにして処理され酸化物層を形成したアルミニウム基板には、その後に陽極酸化処理がなされる。
陽極酸化処理は硫酸、燐酸、シュウ酸若しくは硼酸/硼酸ナトリウムの水溶液が単独若しくは複数種類組み合わせて電解浴の主成分として用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分はもちろん含まれても構わない。更には第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、3成分とは、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオンやアンモニウムイオン等の陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、硼酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては、0〜10000ppm程度であってもよい。陽極酸化処理の条件に特に限定はないが、好ましくは30〜500g/リットル、処理液温10℃〜70℃で、電流密度0.1A/m〜40A/mの範囲で直流又は交流電解によって処理される。形成される陽極酸化皮膜の厚さは0.5μm〜1.5μmの範囲である。好ましくは0.5μm〜1.0μmの範囲である。以上の処理によって作製された支持体の、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのポア径が5nm〜10nm、ポア密度が8×1015個/m〜2×1016個/mの範囲に入るように処理条件を選択することができる。
前記支持体表面の親水化処理としては、広く公知の方法が適用できる。特に好ましい処理としては、シリケート又はポリビニルホスホン酸等による親水化処理が施される。皮膜はSi、又はP元素量として好ましくは2mg/m〜40mg/m、より好ましくは4mg/m〜30mg/mで形成される。塗布量はケイ光X線分析法により測定できる。
上記の親水化処理は、アルカリ金属ケイ酸塩、又はポリビニルホスホン酸が好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜15質量%であり、25℃のpHが10〜13である水溶液に、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を、例えば、15〜80℃で0.5〜120秒浸漬することにより実施される。
上記感光性平版印刷版原版には、感光層と支持体との間の密着性や汚れ性を改善する目的で、中間層を設けてもよい。このような中間層の具体例としては、以下に挙げる各公報又は各明細書に記載のものを好適に適用することができる。
特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特開平11−38635号、特開平11−38629号、特開平10−282645号、特開平10−301262号、特開平11−327152号、特開2000−10292号、特開2000−235254号、特開2000−352824号、特開2001−209170号の各公報等が挙げられる。
[保護層(オーバーコート層)]
上述した感光層の上に保護層を設けることが好ましい。保護層は、感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の感光層への混入を防止し、大気中での露光を可能とする。基本的には感光層を保護するために設けているが、感光層がラジカル重合性の画像形成機構を有する場合には酸素遮断層としての役割を持ち、高照度の赤外レーザで露光する場合はアブレーション防止層としての機能を果たす。
また、保護層に望まれる特性としては、上記以外に、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。この様な保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3,458,311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
保護層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独又は混合して使用できる。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いる事が、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。
ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100%加水分解され、重合繰り返し単位が300から2400の範囲のものをあげる事ができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
上記のようにして作製された感光性平版印刷版原版は、画像様に露光され、その後、上記に詳述したアルカリ現像液・現像補充液を用いて現像処理を施され、所望により任意の工程である、プレ水洗工程、リンス工程(水洗工程を含む)、後述する後加熱工程、ガム引き工程などが適宜実施されて、製版され、平版印刷版が得られる。
現像は、図1の自動現像機10に、露光した平版印刷版原版を供給することによって行う。
即ち、感光性平版印刷版原版から平版印刷版を製版するために、本発明においては少なくとも、画像露光工程、及び現像工程が行われ、必要に応じて、さらに、水洗工程などの任意の工程が行われる。
[熱重合系感光性平版印刷版原版の露光工程]
本発明の製版法における熱重合系感光性平版印刷版原版の露光工程は、光源としては、赤外線レーザが好適なものとして挙げられ、また、紫外線ランプやサーマルヘッドによる熱的な記録も可能である。
感光性平版印刷版原版の像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー等が挙げられる。本発明においては、近赤外線から赤外領域において発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
なかでも、波長750nm〜1400nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。レーザの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。感光性平版印刷版原版に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cmであることが好ましい。露光のエネルギーが上記好ましい範囲において画像記録層の硬化が充分に進行し、且つ、露光時の画像記録層におけるレーザーアブレーションが発生し難く、画像の損傷が抑制される。
露光は光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えばビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.1以上であることが好ましい。
上記露光工程に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
本発明においては、露光後すぐに現像処理を行ってもよいが、露光工程と現像工程の間に加熱処理(いわゆるプレヒート)を行ってもよい。この加熱処理の条件としては、温度60〜150℃の範囲において、5秒〜5分間とすることが好ましい。
本発明においては、熱重合系感光性組成物を用い、プレヒートすることなく露光後すぐに現像処理を行うことが好ましい。
現像は、図1の自動現像機10に、露光した平版印刷版原版を供給し、前記したネガ型現像液によって現像することによって行う。
また、現像工程に先立って、保護層を除去する水洗工程(プレ水洗)を行ってもよい。プレ水洗には、例えば、水道水が用いられ、また、本発明の方法により生成された再生水を用いてもよい。
本発明のリサイクル方法を用いると、プレ水洗をなくすことも可能となる。すなわち、保護層と画像記録層とを現像液で同時に除去する場合には、現像液への溶出物が増えることにより現像液の粘度が上がり、さらには析出物が増加する。このため、一般にはプレ水洗が行われるが、本発明の方法においては、製版処理廃液から得られた再生水を循環させることにより、濃縮後に発生する廃液の量が低減されるため、現像補充液の補充量を多くすることが可能となり、結果として保護層と画像記録層とを同時に現像浴中で除去することで現像浴中の溶解物がプレ水洗を行う場合に比較して増加しても問題はないために、保護層だけを除去するプレ水洗は必要ではなくなるのである。
熱重合系感光性平版印刷版原版は、露光された後(又は、露光及び加熱工程を経た後)、上述した現像液により現像処理され、さらにアルミニウムイオンと水溶性キレート化合物形成能を有するキレート剤を含有した水洗水で処理される。
このようにして製版処理されて得られた平版印刷版は、特開昭54−8002号公報、同55−115045号公報、同59−58431号公報等に記載されているように、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を含む不感脂化液で後処理されてもよい。平版印刷版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
感光性平版印刷版原版の製版においては、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱、もしくは、全面露光を行うことが有効である。
現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は加熱温度が200〜500℃の範囲で実施される。現像後の加熱温度が上記範囲において充分な画像強化作用が得られ、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じ難い。
以上の処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
印刷時、版上の汚れ除去のため使用するプレートクリーナーとしては、従来公知のPS版用プレートクリーナーが使用され、例えば、CL−1、CL−2、CP、CN−4、CN、CG−1、PC−1、SR、IC(いずれも商品名、富士フイルム株式会社製)等が挙げられる。
以下、実施例に基づいて、本発明を説明する。本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。なお、「部」、「%」は質量基準である。
ネガ型感光性平版印刷版原版を用いて本発明のシステムにより実験した。
〔実施例1〕
富士フイルム(株)製のネガ型感光性平版印刷版原版である新聞CTP版HN−NV(サーマルLD800nm〜850nm対応のラジカル重合性の画像記録層と保護層を有する感光性平版印刷版原版)を露光後に、現像処理する際に、富士フイルム(株)製のネガ型感光性平版印刷版用現像液HN−D(商品名)と、富士フイルム(株)製の現像補充液HN−DR(商品名)とを用いた。現像液HN−D(商品名)は、本実施形態に使用される現像開始液調製用の原液であり、自動現像機に仕込む際には4倍量(質量基準)の水で希釈して、本発明に係る現像開始液とした。また、現像補充液HN−DR(商品名)は、本実施形態に使用される現像補充液調製用の原液であり、自動現像機に補充する際には2倍量(質量基準)の水で希釈して現像補充液を調製して補充した。
調製された現像開始液、及び現像補充液を用いて、自動現像機LP−1310NewsII(現像手段、リンス手段(水洗手段を含む)及びガム引き手段を備える)との組合せで、図1に記載したシステムによって1ヶ月間に3000mの製版処理を行った。
処理期間中、製版処理廃液をXR−2000(タカギ冷機製のヒートポンプ方式の廃液濃縮装置)で処理し、廃液を1/5の量に濃縮でき、また再生水は、溶剤成分を全く含まず、活性汚泥処理を行った後に、再生水の一部を一般下水道に放流することができた。また、再生水の一部は現像処理後の平版印刷版のリンス水として用いた。
処理期間中、自動現像機の現像浴内の現像液の組成は、界面活性剤A(ナフトールエチレンオキシド付加物の硫酸塩=例示化合物(1))の含有量は3〜6%の範囲、沸点が100℃〜300℃の有機溶剤の含有量は0〜0.05%、クエン酸三ナトリウム塩の含有量は0.1〜0.8%、シリケート成分の含有量は0%、pHは11.9〜12.3の範囲で推移した。
なお、現像の条件としては、現像温度:30℃、現像時間:12秒であり、製版処理廃液の濃縮条件としては、濃縮温度:35℃、圧力:32mmHgであり、冷却条件としては、冷却:5℃であった。
なお、現像液HN−Dは、界面活性剤として例示化合物(1)を25%含み、沸点が100℃〜300℃の有機溶剤及びシリケート成分(珪酸塩化合物)を含まない。水酸化カリウムを9.5%含有し、pHは12.3である。
現像補充液HN−DRは、界面活性剤として例示化合物(1)を9%含み、沸点が100℃〜300℃の有機溶剤及び珪酸塩化合物を含まない。クエン酸三ナトリウム塩の含有量は2%、水酸化カリウムを9.5%含有し、pHは12.9である。
〔実施例2〕
富士フイルム(株)製のネガ型感光性平版印刷版原版である新聞CTP版HN−NVを露光後に、現像処理する際に、富士フイルム(株)製のネガ型感光性平版印刷版用現像液HN−D(商品名)と、富士フイルム(株)製の現像補充液HN−DR(商品名)とを用いた。実施例1と同様、現像液HN−D(商品名)(現像開始液調製用の原液)は、自動現像機に仕込む際には4倍量(質量基準)の水で希釈して現像開始液とした。また、現像補充液HN−DR(商品名)(現像補充液調製用の原液)は、自動現像機に補充する際には2倍量(質量基準)の水で希釈して現像補充液として調製して用いた。
調製された現像開始液、及び現像補充液を用いて、自動現像機LP−1310NewsIIとの組合せで、図1のシステムによって1ヶ月間に3000mの処理を行った。
処理期間中、自動現像機の現像浴内の現像液の組成は、界面活性剤A(ナフトールエチレンオキシド付加物の硫酸塩=例示化合物(1))の含有量は3〜6%の範囲、沸点が100℃〜300℃の有機溶剤の含有量は0〜0.05%、クエン酸三ナトリウム塩の含有量は0.1〜0.8%、シリケート成分の含有量は0%、pHは11.9〜12.3の範囲で推移した。
現像の条件としては、現像温度:30℃、現像時間:12秒であり、製版処理廃液の濃縮条件としては、濃縮温度:30℃、圧力:30mmHgであり、冷却条件としては、冷却温度5℃とした。
また、製版処理廃液の濃縮度は1/5とし、得られた再生水は現像補充液の希釈水として用いた。希釈の際には、現像補充液調製用の原液の2倍の量の再生水を用いて原液を希釈し、現像補充液を調製した。
連続処理後の自動現像機の現像浴、水洗浴には堆積物の蓄積がなく、汚れはほとんど認められなかった。
廃液濃縮装置としては、タカギ冷機製XR−2000を用いた。
また、蒸留再生水再利用装置としては、タカギ冷機製XR−R60を用いて、自動現像機のタンクに再生水を送液し、既述のように現像補充液の希釈水として再利用した。
〔実施例3〕
実施例2において、現像液HN−D(商品名)(現像開始液調製用の原液)及び現像補充液HN−DR(商品名)(現像補充液調製用の原液)に含まれる界面活性剤である例示化合物(1)を界面活性剤B(Tert−ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム)に変更した以外は、実施例2と同様にして、現像液及び現像補充液をそれぞれ調製した。
即ち、実施例2において、該界面活性剤Bを含有する現像開始液調製用の原液及び現像補充液調製用の原液を、それぞれ現像液HN−D及び現像補充液HN−DRの代わりに用いることによって、自動現像機の現像浴内の現像液成分中の界面活性剤Aを界面活性剤B(Tert−ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム)に変えた以外は実施例2と同様にして、製版処理を行ったところ、実施例1と同様に処理でき、連続処理後の自動現像機の現像浴、及び水洗浴には堆積物の蓄積がなく、汚れはほとんど認められなかった。
〔実施例4〕
実施例2において、現像液HN−D(商品名)(現像開始液調製用の原液)及び現像補充液HN−DR(商品名)(現像補充液調製用の原液)に、さらにシリケート成分(ケイ酸カリウム)を0.5質量%添加した現像開始液調製用の原液及び現像補充液調製用の原液を、それぞれ調製した。実施例2において、この現像開始液調製用の原液及び現像補充液調製用の原液を、現像液HN−D及び現像補充液HN−DRの代わりに用いた以外は、実施例2と同様にして、製版処理を行ったところ、実施例1と同様に処理でき、連続処理後の自動現像機の現像浴、及び水洗浴には堆積物の蓄積がなく、汚れはほとんど認められなかった。
〔実施例5〕
実施例3において、ネガ型感光性平版印刷版原版をコダック社製TCC−353(サーマルLD800nm〜850nm対応のラジカル重合性の画像記録層と保護層を有する感光性平版印刷版原版)に変更し、1週間かけて、500mの製版処理を行ったところ、製版処理廃液を1/4の量に濃縮することができ、連続処理後の自動現像機の現像浴、及び水洗浴には堆積物の蓄積がなく、汚れはほとんど認められなかった。
〔比較例1〕
実施例2において、現像液HN−D(商品名)(現像開始液調製用の原液)及び現像補充液HN−DR(商品名)(現像補充液調製用の原液)の希釈量を調整して現像浴中における界面活性剤Aの濃度を0.8%にして、これ以外は実施例2と同様に製版処理したところ、製版処理廃液の濃縮装置内で、析出が起こり、濃縮ができなかった。
〔比較例2〕
実施例2において、現像液HN−D(商品名)(現像開始液調製用の原液)及び現像補充液HN−DR(商品名)(現像補充液調製用の原液)における界面活性剤の種類を、ナフタレン骨格を有しないアニオン性界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに換え、且つ、現像処理に供される際の現像補充液の界面活性剤の含有量が4%となるように調整したものを用いた以外は実施例2と同様に製版処理したところ、製版処理廃液の濃縮装置内で析出が起こり、濃縮ができなかった。
〔比較例3〕
実施例2において、現像補充液HN−DR(商品名)(現像補充液調製用の原液)における界面活性剤の種類と量を、同一分子内にカルボキシル基の塩とアミノ基を有する界面活性剤であるリポミン(商品名、竹本油脂(株)製)2%とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2%とに変えて、これ以外は実施例2と同様に製版処理したところ、製版処理廃液の濃縮装置内で発泡し、製版処理廃液が再生水中に流れ込んでしまい、使用可能な再生水は得られなかった。
〔比較例4〕
実施例3において、現像補充液HN−DR(商品名)(現像補充液調製用の原液)における界面活性剤の種類と量を、界面活性剤B(Tert−ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム)を0.8%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.2%とに変え、さらに現像処理に供される際の現像補充液を、シリケート成分(ケイ酸カリウム)2%を含有する現像補充液となるように調製した。調製した現像補充液を用いた以外は実施例3と同様に製版処理を行ったところ、製版処理廃液の濃縮装置内で、固着が発生し、濃縮効率が低下し、1週間で排出不良が発生してしまい、製版処理廃液を濃縮できなかった。
〔比較例5〕
実施例2において、現像液HN−D(商品名)(現像開始液調製用の原液)及び現像補充液HN−DR(商品名)(現像補充液調製用の原液)に、さらに、ベンジルアルコールを加えて、現像処理に供される際のベンジルアルコール濃度を2.5%としたものを用いた以外は、実施例2と同様にして製版処理を行った。処理後の平版印刷版の10%以下のハイライト部の耐刷性が実施例2の50%に低下し、実用に耐える平版印刷版が得られなかった。
〔実施例6〕
富士フイルム(株)製ネガ型CTP感光性平版印刷版原版LP−NNV(VioletLD405nm対応のラジカル重合性の画像記録層と保護層を有する感光性平版印刷版原版)を露光後、富士フイルム(株)製のネガ型感光性平版印刷版用現像液LP−DS(商品名)と、富士フイルム(株)製の現像補充液LP−DRN(商品名)と、を用いて、自動現像機InterPlater135(プレ加熱手段、保護層のプレ水洗手段、現像手段、リンス手段(水洗手段〕及びガム引き手段を備える)により、図1に示すシステムによって、1ヶ月間に1000m製版処理した。自動現像機InterPlater135においては、現像前に保護層を除去するプレ水洗工程が行われている。
処理期間中、製版処理廃液をXR−2000で処理し、製版処理廃液を1/4の量に濃縮できた。
この時、自動現像機の現像浴内の現像液の組成は、界面活性剤C(ナフトールエチレンオキシド付加物=例示化合物Y−1)の含有量は3〜6%の範囲、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤の含有量は0〜0.05%、シリケート成分の含有量は0%、で推移した。連続処理後の自動現像機の現像浴、及び水洗浴には堆積物の蓄積がなく、汚れはほとんど認められなかった。
再生水はリンス水に供した。
なお、現像液LP−DSには、界面活性剤として界面活性剤C(例示化合物Y−1)を5質量%含み、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤及び珪酸塩化合物は含まない。水酸化カリウムによりpHは12.0に調整している。
現像補充液LP−DRNには、界面活性剤として界面活性剤C(例示化合物Y−1)を5質量%含み、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤及び珪酸塩化合物は含まない。水酸化カリウムによりpHは12.8に調整している。
〔実施例7〕
富士フイルム(株)製ネガ型CTP感光性平版印刷版原版LH−NN2(サーマルLD800nm〜850nm対応のラジカル重合性の画像記録層と保護層を有する感光性平版印刷版原版)を露光後、自動現像機InterPlater135(現像手段、リンス手段(水洗手段)及びガム引き手段を備える)と、現像液LP−DS(商品名)、及び現像補充液LP−DRN(商品名)とを組み合わせて、図1に示すシステムによって、1ヶ月間に1000m製版処理した。なお、本実施形態では、プレ加熱処理及びプレ水洗処理は行っていない。
処理期間中、製版処理廃液をXR−2000で処理し、製版処理廃液を1/4の量に濃縮できた。連続処理後の自動現像機の現像浴、及び水洗浴には堆積物の蓄積がなく、汚れはほとんど認められなかった。
再生水はリンス水に供した。
この時、自動現像機の現像浴内の現像液の組成は、界面活性剤C(ナフトールエチレンオキシド付加物)含有量は3〜6%の範囲、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤の含有量は0〜0.05%、シリケート成分の含有量は0%、pHは11.9〜12.2の範囲で推移した。
10 自動現像機
20 中間タンク
30 廃液濃縮装置
40 廃液回収タンク
50 再生水タンク
60 蒸留再生水再利用装置
70 現像補充液タンク
80 補充水タンク

Claims (10)

  1. 支持体上に、ラジカル重合性の画像記録層を有する感光性平版印刷版原版を露光後に現像するための自動現像機において、露光後の平版印刷版原版を現像する製版処理を、ナフタレン骨格を有するアニオン性界面活性剤及びナフタレン骨格を有するノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を1質量%〜10質量%含有し、沸点が100℃〜300℃の範囲である有機溶剤を含有しないか、又は含有する場合は2質量%以下含有し、且つ、pHが10〜13である現像補充液を用いて行うこと、
    製版処理を行った際に排出される製版処理廃液を、廃液濃縮装置を用いて、濃縮後の製版処理廃液容量/濃縮前の製版処理廃液容量が1/2〜1/10の範囲となるように連続的に蒸発濃縮して水蒸気と残留する廃液濃縮物スラリーとに分離すること、
    分離された水蒸気を凝縮して再生水とすること、
    分離された廃液濃縮物スラリーを回収タンクに回収すること、及び、
    得られた再生水を、前記自動現像機における現像補充液調製用の希釈水及びリンス水の少なくとも一方に使用すること、を含む
    感光性平版印刷版原版の製版処理廃液のリサイクル方法。
  2. 前記現像補充液が、さらに、有機酸又はその塩を0.05質量%〜5質量%含有する請求項1に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
  3. 前記現像補充液におけるシリケート成分の含有量が、1質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
  4. 前記ナフタレン骨格を有するアニオン性界面活性剤が、スルホン酸塩及び硫酸塩から選ばれる少なくとも1種のアニオン性界面活性剤である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
  5. 前記ラジカル重合性の画像記録層が、重合開始剤と、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する重合可能な化合物と、バインダーポリマーと、を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
  6. 前記感光性平版印刷版原版が、ラジカル重合性の画像記録層の上に保護層を有し、前記自動現像機において、前記現像に先立って、さらに、前記保護層の水洗処理を行なうことを含む請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
  7. 前記廃液濃縮装置が、加熱手段を有し、該加熱手段により前記製版処理廃液を加熱することで前記製版処理廃液の蒸発濃縮が連続的に行われる請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
  8. 前記廃液濃縮装置が、さらに、該廃液濃縮装置内を減圧する減圧手段を備え、前記製版処理廃液の加熱が、減圧された状態で行われる請求項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
  9. 前記廃液濃縮装置における加熱手段が、放熱部と吸熱部を備えたヒートポンプを備え、前記ヒートポンプの放熱部で前記製版処理廃液を加熱して水蒸気を発生させるとともに、前記ヒートポンプの吸熱部で前記水蒸気を冷却する加熱手段である請求項又は請求項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
  10. 前記廃液濃縮装置において蒸発濃縮により濃縮された前記製版処理廃液の水蒸気を分離した後の濃縮物スラリーをポンプで加圧して、回収タンクに回収することを、含む、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の製版処理廃液のリサイクル方法。
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