(第1実施形態)
以下、図面を用いて第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図であり、図2は、車両用空調装置1の電気制御部の構成を示すブロック図である。本実施形態では、この車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力を、車両に搭載されたバッテリ(車載バッテリ)81に充電可能なプラグインハイブリッド車両として構成されている。
このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停車時に外部電源から供給された電力をバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをEV運転モードという。
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量SOCが走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをHV運転モードという。
より詳細には、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。つまり、走行用電動モータから出力される走行用の駆動力(モータ側駆動力)がエンジンEGから出力される走行用の駆動力(内燃機関側駆動力)よりも大きくなる運転モードである。
換言すると、内燃機関側駆動力に対するモータ側駆動力の駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より大きくなっている運転モードであると表現することもできる。
一方、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。つまり、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなる運転モードである。換言すると、駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より小さくなっている運転モードであると表現することもできる。
本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、このようにEV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。また、このようなEV運転モードとHV運転モードとの切り替え、および、駆動力比の制御は、後述する駆動力制御装置70によって制御される。
さらに、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。この車両用空調装置1は、バッテリ81から供給される電力による車室内の空調に加えて、車両走行前の車両停車時に外部電源から供給される電力によって車室内の空調(例えば、プレ空調)を実行可能に構成されている。
本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示す冷凍サイクル10、室内空調ユニット30、図2に示す空調制御装置50等を備えている。
まず、室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、蒸発器15、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替箱20が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、ケーシング31内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。
従って、内外気切替ドア23は、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア23は、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吸込口モードとしては、内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段である送風機32(ブロア)が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される。従って、この電動モータは、送風機32の送風能力変更手段を構成している。
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器15が配置されている。蒸発器15は、その内部を流通する冷媒(熱媒体)と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて、送風空気を冷却する冷却手段(熱交換手段)として機能する。具体的には、蒸発器15は、圧縮機11、凝縮器12、気液分離器13および膨張弁14等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を構成している。
ここで、本実施形態に係る冷凍サイクル10の主要な構成について説明すると、圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。
また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
凝縮器12は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン12aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮機11吐出冷媒を凝縮させる室外熱交換器である。送風ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
気液分離器13は、凝縮器12にて凝縮された冷媒を気液分離して余剰冷媒を蓄えるとともに、液相冷媒のみを下流側に流すレシーバである。膨張弁14は、気液分離器13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器15は、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させる室内熱交換器である。これにより、蒸発器15は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。
以上が本実施形態に係る冷凍サイクル10の主要構成の説明であり、以下、室内空調ユニット30の説明に戻る。ケーシング31内において、蒸発器15の空気流れ下流側には、蒸発器15通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
加熱用冷風通路33には、蒸発器15通過後の空気を加熱するためのヒータコア36およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順に配置されている。ヒータコア36は、エンジンEGを冷却するエンジン冷却水(以下、単に冷却水という。)を熱媒体として蒸発器15通過後の送風空気を加熱する加熱手段(熱交換手段)として機能する。換言すると、ヒータコア36は、冷却水と蒸発器15通過後の送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器として機能する。
具体的には、ヒータコア36とエンジンEGは、冷却水配管によって接続されて、ヒータコア36とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ40aが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環流量)が制御される電動式の水ポンプである。
PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア36通過後の空気を加熱する補助加熱手段としての電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
より具体的には、このPTCヒータ37は、図3に示すように、複数(本実施形態では、3本)のPTCヒータ37a、37b、37cから構成されている。なお、図3は、本実施形態のPTCヒータ37の電気的接続態様を示す回路図である。
図3に示すように、各PTCヒータ37a、37b、37cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。従って、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ37a、37b、37cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
一方、冷風バイパス通路34は、蒸発器15通過後の空気を、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、蒸発器15の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア39を配置している。従って、エアミックスドア39は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。
より具体的には、エアミックスドア39は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動される回転軸と、その一端側に回転軸が連結された板状のドア本体部を有して構成される、いわゆる片持ちドアで構成されている。また、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口24〜26が配置されている。この吹出口24〜26としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口25、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口26が設けられている。
また、フェイス吹出口24、フット吹出口25、およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口24を全開してフェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口24とフット吹出口25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口25を全開するとともにデフロスタ吹出口26を小開度だけ開口して、フット吹出口25から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口25およびデフロスタ吹出口26を同程度開口して、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
さらに、乗員が、図2に示す操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、図2に示すシート空調装置90を備えている。シート空調装置90は、乗員が着座する座席の表面温度を上昇させる補助加熱手段である。具体的には、このシート空調装置90は、座席表面に埋め込まれた電熱線で構成され、電力を供給されることによって発熱するシート加熱手段である。
そして、室内空調ユニット10の各吹出口24〜26にから吹き出される空調風によって車室内の暖房が不十分となり得る際に作動させて乗員の暖房感を補う機能を果たす。なお、このシート空調装置90は、空調制御装置50から出力される制御信号によって作動が制御され、作動時には座席の表面温度を約40℃程度となるまで上昇させるように制御される。
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50(空調制御手段)、駆動力制御装置70(駆動力制御手段)および電力制御装置71(電力制御手段)は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
駆動力制御装置70の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器および走行用電動モータへ交流電流を供給する走行用インバータ等が接続されている。各種エンジン構成機器としては、具体的に、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
また、駆動力制御装置70の入力側には、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計、バッテリ81へ流れ込む電流ABinあるいはバッテリ81から流れる電流ABioutを検出する電流計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ、車速Vvを検出する車速センサ(いずれも図示せず)等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
空調制御装置50の出力側には、送風機32、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、送風ファン12a、各種電動アクチュエータ62、63、64、第1〜第3PTCヒータ37a、37b、37c、冷却水ポンプ40a、シート空調装置90等が接続されている。
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、蒸発器温度TE(換言すれば、蒸発器15からの吹出空気温度)を検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ58、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度検出手段としての湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器15の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器15のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器15を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。また、湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、オートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ60a、現在の車両用空調装置1の作動状態等を表示する表示部等が設けられている。
オートスイッチは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。車室内温度設定スイッチ60aは、乗員の操作によって車室内目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。
さらに、操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、エコノミースイッチ60bが設けられている。
エコノミースイッチ60bは、環境への負荷の低減を優先させるスイッチである。エコノミースイッチ60bを投入することにより、車両用空調装置1の作動モードが、空調の省動力化を優先させるエコノミーモード(略してエコモード)に設定される。したがって、エコノミースイッチ60bを省動力優先モード設定手段と表現することもできる。
また、エコノミースイッチ60bを投入することにより、EV運転モード時に、走行用電動モータを補助するために作動させるエンジンEGの作動頻度を低下させる信号が駆動力制御装置70に出力される。
また、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50が駆動力制御装置70へエンジンEGの要求信号を出力することによって、エンジンEGの作動を要求することが可能となっている。なお、駆動力制御装置70では、空調制御装置50からのエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)を受信すると、エンジンEGの作動の要否を判定し、その判定結果に応じてエンジンEGの作動を制御する。
さらに、空調制御装置50は、車両外部の電源から供給される電力やバッテリ81に蓄えられた電力に応じて、車両における各種電気機器に配分する電力の決定等を行う電力制御装置71が電気的に接続されている。本実施形態の空調制御装置50には、電力制御装置71から出力される出力信号(空調用に使用を許可する空調使用許可電力を示すデータ等)が入力される。
ここで、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
例えば、空調制御装置50のうち、送風手段である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風能力制御手段50aを構成し、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御手段を構成し、吹出口モードの切り替えを制御する構成が吹出口モード切替手段50bを構成している。
また、冷却手段である蒸発器15の冷却能力を制御する構成が冷却能力制御手段50cを構成し、加熱手段であるヒータコア36の加熱能力を制御する構成が加熱能力制御手段を構成している。
また、空調制御装置50における駆動力制御装置70と制御信号の送受信を行う構成が、要求信号出力手段50dを構成している。また、駆動力制御装置70における空調制御装置50と制御信号の送受信を行うと共に、要求信号出力手段50d等からの出力信号に応じてエンジンEGの作動の要否を決定する構成(作動要否決定手段)が、信号通信手段70aを構成している。
次に、図4〜図12により、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。図4は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器にバッテリ81や外部電源等から電力が供給された状態で、車両用空調装置1の作動スイッチが投入されるとスタートする。なお、図4〜図12中の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内目標温度Tset、吸込口モードスイッチの設定信号等がある。
次に、ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58の検出信号や、外部電源からの電力の供給状態を示す電力状態信号等を読み込む。なお、電力状態信号が、外部電源から車両に電力を供給可能な状態(プラグイン状態)を示す場合には、外部電源フラグがONされ、外部電源から車両に電力を供給できない状態(プラグアウト状態)を示す場合には、外部電源フラグがOFFされる。
また、このステップS3では、駆動力制御装置70の入力側に接続されたセンサ群の検出信号、および駆動力制御装置70から出力される制御信号等の一部も、駆動力制御装置70から読み込んでいる。
次に、ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、以下の数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
なお、目標吹出温度TAOは、車室内を所望の温度に保つために車両用空調装置1が生じさせる必要のある熱量に相当するもので、車両用空調装置1に要求される空調熱負荷として捉えることができる。
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、エアミックスドア39の目標開度SWを目標吹出温度TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された蒸発器温度TE、冷却水温度Twに基づいて算出する。
ステップS5の詳細については、図5のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS51では、次の数式F2により仮のエアミックス開度SWddを算出して、ステップS52へ進む。
SWdd=[{TAO−(TE+2)}/{MAX(10、Tw−(TE+2))}]×100(%)…(F2)
なお、数式F2の{MAX(10、Tw−(TE+2))}とは、10およびTw−(TE+2)のうち大きい方の値を意味している。
続く、ステップS52では、ステップS51にて算出された仮のエアミックス開度SWddに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、エアミックス開度SWを決定して、ステップS6へ進む。なお、この制御マップでは、図5のステップS52に示すように、仮のエアミックス開度SWddに対するエアミックス開度SWの値を非線形的に決定している。
これは、前述の如く、本実施形態では、エアミックスドア39として片持ちドアを採用しているために、エアミックス開度SWの変化に対する実際の送風空気の流れ方向から見た冷風バイパス通路34の開口面積および加熱用冷風通路33の開口面積の変化が非線形的な関係となるからである。
次のステップS6では、送風機32の送風能力(具体的には、電動モータに印加するブロワモータ電圧)を決定する。このステップS6の詳細については、図6のフローチャートを用いて説明する。
図6に示すように、まず、ステップS611では、操作パネル60のオートスイッチが投入(ON)されているか否かを判定する。この結果、オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS612で、操作パネル60の風量設定スイッチによってマニュアル設定された乗員の所望の風量となるブロワモータ電圧が決定されて、ステップS7に進む。
具体的には、本実施形態の風量設定スイッチは、Lo→M1→M2→M3→Hiの5段階の風量を設定することができ、それぞれ4V→6V→8V→10V→12Vの順にブロワモータ電圧が高くなるように決定される。
一方、ステップS611にて、オートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS613で、ステップS4にて決定されたTAOに基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して仮ブロワレベルf(TAO)を決定する。
本実施形態における仮ブロワレベルf(TAO)を決定する制御マップは、TAOに対する仮ブロワレベルf(TAO)の値がバスタブ状の曲線を描くように構成されている。
すなわち、図6のステップS613に示すように、TAOの極低温域(本実施形態では、−30℃以下)および極高温域(本実施形態では、80℃以上)では、送風機32の風量が最大風量付近となるように仮ブロワレベルf(TAO)を高レベルに上昇させる。
また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じて送風機32の送風量が減少するように、仮ブロワレベルf(TAO)を減少させる。さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じて、送風機32の風量が減少するように仮ブロワレベルf(TAO)を減少させる。
そして、TAOが所定の中間温度域内(本実施形態では、10℃〜40℃)に入ると、送風機32の風量が最低風量となるように仮ブロワレベルf(TAO)を低レベルに低下させる。これにより、空調熱負荷に応じた基本ブロワレベルが算出される。
なお、上述の説明から明らかなように、この仮ブロワレベルf(TAO)は、TAOに基づいて決定される値であるから、車室内設定温度Tset、内気温Tr、外気温Tam、日射量Tsに基づいて決定される値に基づいて決定されている。
続くステップS614では、空調用電力制限フラグf(空調用電力制限)が1であるか否かを判定する。ここで、空調用電力制限フラグf(空調用電力制限)は、空調用電力を制限する必要がある場合は1になり、空調用電力を制限する必要がない場合は0になる。
空調用電力を制限する必要がある場合(換言すれば、圧縮機11の冷媒吐出能力を制限する必要がある場合)としては、例えば、エコモードが設定されている場合、バッテリ81の蓄電残量SOCが所定値を下回った場合、または空調以外の用途で消費される電力が所定値を上回っている場合などが挙げられる。
空調用電力制限フラグf(空調用電力制限)が1でないと判定した場合、ステップS615に進み、送風機32の送風能力を決定するために電動モータに印加する送風機電圧に対応するブロワレベルを決定する。具体的には、次の数式F3によりブロワレベルを算出する。
ブロワレベル=MIN(f(TAO),30)…(F3)
なお、数式F3のMIN(f(TAO),30)とは、f(TAO)および30のうち小さい方の値を意味している。
一方、ステップS614にて空調用電力制限フラグf(空調用電力制限)が1であると判定された場合、ステップS616へ進み、蒸発器温度センサ56によって検出された蒸発器温度TEから、前回のステップS13で決定した目標蒸発器温度TEOを減算した差(TE−TEO)に基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワレベルの上限レベルf(TE−TEO)を決定する。目標蒸発器温度TEOは、蒸発器温度TEの目標温度であり、TAO等に基づいて決定される。
すなわち、図6のステップS616に示すように、TE−TEOの極小域では、ブロワレベルの上限レベルf(TE−TEO)を30に決定し、TE−TEOの極大域では、ブロワレベルの上限レベルf(TE−TEO)を4に決定し、TE−TEOの中間域では、TE−TEOの上昇に応じてブロワレベルの上限レベルf(TE−TEO)を減少させる。
図6のステップS616に示す制御マップは、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅が設定されている。
図6のステップS616に示す制御マップは、車室内温度に応じてシフトされる。具体的には、車室内温度が高いほどブロワレベルの上限レベルf(TE−TEO)が高くなる方向にシフトされる。図6のステップS616では、車室内温度が25℃の場合と車室内温度が55℃の場合とが示されている。車室内温度が25℃と55℃との間の場合は、車室内温度が25℃の場合の制御マップと車室内温度が55℃の場合の制御マップとを線形補間する。
続くステップS617では、送風機32の送風能力を決定するために電動モータに印加する送風機電圧に対応するブロワレベルを決定する。具体的には、次の数式F4によりブロワレベルを算出する。
ブロワレベル=MIN(f(TAO),f(TE−TEO))…(F4)
なお、数式F4のMIN(f(TAO),f(TE−TEO))とは、f(TAO)およびf(TE−TEO)のうち小さい方の値を意味している。
そして、ステップS618へ進み、ステップS615、S617にて決定したブロワレベルに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機電圧(ブロワモータ電圧)を決定する。
すなわち、図6のステップS618に示すように、ブロワレベルの上昇に応じて送風機電圧(ブロワモータ電圧)を上昇させる。
これにより、空調用電力を制限する必要がある場合(換言すれば、圧縮機11の冷媒吐出能力を制限して圧縮機11の消費電力を制限する必要がある場合)、蒸発器温度TEから目標蒸発器温度TEOを減算した差が増加するほど送風機32の送風能力を低下させて空調風量を低下させることができる。
このため、圧縮機11の冷媒吐出能力が制限されて蒸発器15を流通する冷媒の流量が少なくなっても、蒸発器温度TEの上昇を抑制して蒸発器温度TEを目標蒸発器温度TEOに近づけることができる。
ここで、ステップS616で説明した通り、車室内温度が高いほどブロワレベルの上限レベルf(TE−TEO)が高くなる方向にシフトされるので、車室内温度が高いほど高い空調風量が許容されることとなる。
次のステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱20の切替状態を決定する。このステップS7の詳細については、図7のフローチャートを用いて説明する。図7に示すように、まず、ステップS71では、操作パネル60のオートスイッチが投入(ON)されているか否かを判定する。この結果、オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS72で、マニュアルモードに応じた外気導入率を決定してステップS8へ進む。
具体的には、吸込口モードが全内気モード(RECモード)の場合、外気導入率を0%に決定し、吸込口モードが全外気モード(FRSモード)の場合、外気導入率を100%に決定する。
一方、ステップS71にて、オートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS73へ進み、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、吸込口モードを決定する。
具体的には、TAOが上昇過程にあるときは、TAO≧第1所定温度T1であれば外気モードとし、第1所定温度T1>TAO≧第2所定温度T2であれば内外気混入モードとし、第2所定温度T2>TAOであれば内気モードとする。
一方、TAOが下降過程にあるときは、第3所定温度T3≧TAOであれば内気モードとし、第3所定温度T3≧TAO>第2所定温度T2であれば内外気混入モードとし、TAO>第2所定温度T2であれば、外気モードとしてステップS9へ進む。なお、各所定温度には、T1>T2>T3の関係がある。また、各所定温度の温度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
次のステップS8では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。
本実施形態では、図8に示すように、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択され易くなる。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
次のステップS9では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には回転数(rpm))を決定する。このステップS9の詳細については、図9のフローチャートを用いて説明する。図9に示すように、まず、ステップS91では、冷房モード(COOLサイクル)時の回転数変化量Δf_Cを求める。図9のステップS91には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、前回のステップS13で決定した目標蒸発器温度TEOと吹出空気温度TEとの偏差En(TEO−TE)、および今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))に基づいて室内蒸発器26の着霜が防止されるようにΔf_Cが決定される。
続くステップS92では、操作パネル60のエコノミースイッチ60bが投入(ON)されているか否か、すなわち車両用空調装置1の作動モードがエコモードであるか否かを判定する。
車両用空調装置1の作動モードがエコモードであると判定した場合、ステップS93にて、MAX回転数を10000rpmに決定してステップS95へ進む。一方、車両用空調装置1の作動モードがエコモードでないと判定した場合、ステップS94にて、MAX回転数を7000rpmに決定してステップS95へ進む。なお、MAX回転数は、圧縮機回転数の上限値である。
続くステップS95では、空調使用許可電力から圧縮機消費電力を減算した値、すなわち空調使用許可電力−圧縮機消費電力の値に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)を決定する。
空調使用許可電力は、「車両全体で使用可能な電力のうち、空調用に使用が許可された電力」であり、電力制御装置71から空調制御装置50に出力される。
本実施形態では、電力制御装置71は、空調使用許可電力を次のように算出する。まず、仮の空調使用許可電力と空調使用可能電力とを算出し、仮の空調使用許可電力および空調使用可能電力のうち小さい方の値を空調使用許可電力とする。
仮の空調使用許可電力は次のように算出される。エコモードでなく且つバッテリ81の蓄電残量SOCが20%を下回っていない場合、仮の空調使用許可電力を8000Wに決定する。エコモードである場合、またはバッテリ81の蓄電残量SOCが20%を下回っている場合、仮の空調使用許可電力を4000Wに決定する。
空調使用可能電力は、次の数式F5により算出される。
空調使用可能電力=最大供給電力−空調以外の消費電力…(F5)
最大供給電力は、バッテリ81が供給できる最大の電力のことであり、空調以外の消費電力は、空調以外の用途で消費される電力のことである。
ステップS95では、具体的には、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)を次のように決定する。図9のステップS95に示すように、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の極小域(本実施形態では、−1000W以下)では、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)が負の値(本実施形態では、−300rpm)に決定される。
また、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の極大域(本実施形態では、1000W以上)では、回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)が正の値(本実施形態では、+300rpm)に決定される。
また、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の中間域(本実施形態では、−1000W以上、1000W以下)では、空調使用許可電力−圧縮機消費電力の上昇に応じて回転数変化量の上限値f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)を増加させる。
続くステップS96では、圧縮機11の回転数変化量Δfを次の数式F6により算出して、ステップS97へ進む。
Δf=MIN(Δf_C,f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力))…(F6)
なお、数式F6のMIN(Δf_C,f(空調使用許可電力−圧縮機消費電力))とは、Δf_Cおよびf(空調使用許可電力−圧縮機消費電力)のうち小さい方の値を意味している。
続くステップS97では、今回の圧縮機回転数を次の数式F7により算出する。
今回の圧縮機回転数=MIN{(前回の圧縮機回転数+Δf),MAX回転数}…(F7)
なお、数式F7のMIN{(前回の圧縮機回転数+Δf),MAX回転数}とは、前回の圧縮機回転数+ΔfおよびMAX回転数のうち小さい方の値を意味している。
これにより、エコモード時や圧縮機消費電力が大きい場合、すなわち空調用電力を減少させる必要がある場合に、圧縮機11の冷媒吐出能力を低下させて圧縮機消費電力を減少させることができ、ひいては空調用電力を減少させることができる。
次のステップS10では、PTCヒータ37の作動本数および電熱デフォッガの作動状態を決定する。まず、PTCヒータ37の作動本数の決定について説明すると、ステップS10では、外気温Tam、ステップS51にて決定した仮のエアミックス開度SWdd、冷却水温度Twに応じて、PTCヒータ37の作動本数を決定する。
このステップS10の詳細については、図10のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS101では、外気温に基づいてPTCヒータ37の作動の要否を判定する。具体的には、外気センサ52が検出した外気温が所定温度(本実施形態では、26℃)よりも高いか否かを判定する。
ステップS101にて、外気温が26℃よりも高いと判定された場合は、PTCヒータ37による吹出温アシストは必要無いと判断して、ステップS105に進み、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。一方、ステップS101で、外気温が26℃よりも低いと判定された場合は、ステップS102に進む。
ステップS102、S103では、仮のエアミックス開度SWddに基づいてPTCヒータ37作動の要否を決定する。ここで、仮のエアミックス開度SWddが小さくなることは、加熱用冷風通路33にて送風空気を加熱する必要性が少なくなることを意味していることから、エアミックス開度SWが小さくなるに伴ってPTCヒータ37を作動させる必要性も少なくなる。
そこで、ステップS102では、ステップS5で決定したエアミックス開度SWを予め定めた基準開度と比較して、エアミックス開度SWが第1基準開度(本実施形態では、100%)以下であれば、PTCヒータ37を作動させる必要は無いものとして、PTCヒータ作動フラグf(SW)=OFFとする。
一方、エアミックス開度が第2基準開度(本実施形態では、110%)以上であれば、PTCヒータ37を作動させる必要があるものとして、PTCヒータ作動フラグf(SW)=ONとする。なお、第1基準開度と第2基準開度との開度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
そして、ステップS103では、ステップS102で決定したPTCヒータ作動フラグf(SW)がOFFであれば、ステップS105に進み、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。一方、PTCヒータ作動フラグf(SW)がONであれば、ステップS104へ進み、PTCヒータ37の作動本数を決定して、ステップS11へ進む。
ステップS104では、冷却水温度Twに応じてPTCヒータ37の作動本数を決定する。具体的には、冷却水温度Twが上昇過程にあるときは、冷却水温度Tw<第1所定温度T1であれば作動本数を3本とし、第1所定温度T1≦冷却水温度Tw<第2所定温度T2であれば作動本数を2本とし、第2所定温度T2≦冷却水温度Tw<第3所定温度T3であれば作動本数を1本とし、第3所定温度T3≦冷却水温度Twであれば作動本数を0本とする。
一方、冷却水温度Twが下降過程にあるときは、第4所定温度T4<冷却水温度Twであれば作動本数を0本とし、第5所定温度T5<冷却水温度Tw≦第4所定温度T4であれば作動本数を1本とし、第6所定温度T6<冷却水温度Tw≦第5所定温度T2であれば作動本数を2本とし、冷却水温度Tw≦第6所定温度T6であれば作動本数を3本としてステップS11へ進む。
なお、各所定温度には、T3>T2>T4>T1>T5>T6の関係があり、本実施形態では、具体的に、T3=75℃、T2=70℃、T4=67.5℃、T1=65℃、T5=62.5℃、T6=57.5℃としている。また、上昇過程、および下降過程、における各所定温度の温度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
また、電熱デフォッガについては、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
次のステップS11では、空調制御装置50から駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定する。この要求信号としては、エンジンEGの作動要求信号(エンジンON要求信号)等がある。
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、走行時に常時エンジンを作動させているので冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両では冷却水をヒータコア36に流通させることで十分な暖房能力を発揮することができる。
これに対して、本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力を走行用電動モータからも得ることができることから、エンジンEGの作動を停止させることがあり、車両用空調装置1にて車室内の暖房を行う際に、冷却水の温度が暖房用の熱源として充分な温度にまで上昇していない場合がある。
そこで、本実施形態の車両用空調装置1は、走行用の駆動力を出力させるためにエンジンEGを作動させる必要がない走行条件であっても、所定条件を満たした場合には、エンジンEGの駆動力を制御する駆動力制御装置70に対してエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)を出力して、冷却水温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させるようにしている。
次に、ステップS12では、冷却水回路40にてヒータコア36とエンジンEGとの間で冷却水を循環させる冷却水ポンプ40aを作動させるか否かを決定する。このステップS12の詳細については、図11のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS121では、冷却水温度Twが蒸発器温度TEより高いか否かを判定する。
ステップS121にて、冷却水温度Twが蒸発器温度TE以下となっている場合は、ステップS124へ進み、冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。その理由は、冷却水温度Twが蒸発器温度TE以下となっている場合に冷却水をヒータコア36へ流すと、ヒータコア36を流れる冷却水が蒸発器15通過後の空気を冷却してしまうことになるため、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうからである。
一方、ステップS121にて、冷却水温度Twが蒸発器温度TEより高い場合は、ステップS122へ進む。ステップS122では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS122にて、送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS124に進み、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。
一方、ステップS122にて送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS123へ進み、冷却水ポンプ40aを作動(ON)させることを決定する。これにより、冷却水ポンプ40aが作動して、冷却水が冷媒回路内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
次のステップS13では目標蒸発器温度TEOを決定する。本実施形態では、ステップS4で決定したTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、蒸発器温度TEの目標蒸発器温度TEOを決定する。従って、本実施形態の制御ステップS13は、目標蒸発器温度決定手段を構成している。
具体的には、図12の制御マップに示すように、TAOの極低温域では、目標蒸発器温度TEOを低温にする。TAOの極高温域では、目標蒸発器温度TEOを高温にする。TAOの中間温度域では、目標蒸発器温度TEOの上昇に応じて目標蒸発器温度TEOを上昇させる。なお、図12の制御マップは、目標蒸発器温度TEOが、蒸発器15に流入する空気の露点温度以下の温度となるように設定されている。
次に、ステップS14では、上述のステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器32、12a、61、62、63、64、12a、37、40a、80に対して制御信号および制御電圧が出力される。さらに、要求信号出力手段50cから駆動力制御装置70に対して、ステップS11にて決定された要求信号が送信される。
次に、ステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。これにより、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動するので、送風機32から送風された送風空気が、蒸発器15にて冷却される。そして蒸発器15にて冷却された冷風は、エアミックスドア39の開度に応じて、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入する。
加熱用冷風通路33へ流入した冷風は、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過する際に加熱されて、混合空間35にて冷風バイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35にて温度調整された空調風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
この車室内に吹き出される空調風によって車室内の内気温Trが外気温Tamより低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現されており、一方、内気温Trが外気温Tamより高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS6で説明した通り、空調用電力を制限する必要がある場合(換言すれば、圧縮機11の冷媒吐出能力を制限して圧縮機11の消費電力を制限する必要がある場合)、蒸発器温度TEから目標蒸発器温度TEOを減算した差が増加するほど送風機32の送風能力を低下させて空調風量を低下させる。
このため、圧縮機11の冷媒吐出能力が制限されて蒸発器15を流通する冷媒の流量が少なくなっても、蒸発器温度TEの上昇を抑制して蒸発器温度TEを目標蒸発器温度TEOに近づけることができる。
その結果、蒸発器温度TEを低温に維持することができるので、蒸発器15の凝縮水が蒸発しにくくなり、ひいては凝縮水の蒸発による臭いの発生を抑制することができる。
しかも、制御ステップS616で説明した通り、車室内温度が高いほどブロワレベルの上限レベルf(TE−TEO)が高くなる方向にシフトされるので、車室内温度が高いほど高い空調風量が許容されることとなる。
このため、まだ蒸発器15が保水していないクールダウン初期に空調風量が低下することを防ぐことができ、ひいてはクールダウン初期の冷房性能低下を防ぐことができる。なお、このシーンではまだ蒸発器15が保水していないので、高い空調風量を許容することによって蒸発器温度TEが高温になっても、凝縮水の蒸発による臭いの発生はない。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、空調用電力を制限する必要がある場合、蒸発器温度TEを目標蒸発器温度TEOに近づけるように送風機32の送風能力を低下させるが、本第2実施形態では、蒸発器温度TEを一定温度(図13の例では0℃)に近づけるように送風機32の送風能力を低下させる。
本実施形態のステップS6の詳細を、図13のフローチャートを用いて説明する。図13のフローチャートでは、図6のフローチャートにおけるステップS616、S617をステップS626、S627に変更しており、それ以外のステップS611〜S615、618は図6のフローチャートと同じである。
ステップS614にて空調用電力制限フラグf(空調用電力制限)が1であると判定された場合、ステップS626へ進み、蒸発器温度センサ56によって検出された蒸発器温度TEに基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワレベルの上限レベルf(TE)を決定する。
すなわち、図13のステップS626に示すように、蒸発器温度TEの極小域では、ブロワレベルの上限レベルf(TE)を30に決定し、蒸発器温度TEの極大域では、ブロワレベルの上限レベルf(TE)を4に決定し、蒸発器温度TEの中間域では、TEの上昇に応じてブロワレベルの上限レベルf(TE)を減少させる。
図13のステップS626に示す制御マップは、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅が設定されている。
図13のステップS626に示す制御マップは、車室内温度に応じてシフトされる。具体的には、図13のステップS626では、車室内温度が25℃の場合と車室内温度が55℃の場合とが示されている。車室内温度が25℃と55℃との間の場合は、車室内温度が25℃の場合の制御マップと車室内温度が55℃の場合の制御マップとを線形補間する。
続くステップS627では、送風機32の送風能力を決定するために電動モータに印加する送風機電圧に対応するブロワレベルを決定する。具体的には、次の数式F8によりブロワレベルを算出する。
ブロワレベル=MIN(f(TAO),f(TE))…(F8)
なお、数式F8のMIN(f(TAO),f(TE))とは、f(TAO)およびf(TE)のうち小さい方の値を意味している。
そして、ステップS618へ進み、ステップS615、S627にて決定したブロワレベルに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機電圧(ブロワモータ電圧)を決定する。
これによると、空調用電力を制限する必要がある場合(換言すれば、圧縮機11の冷媒吐出能力を制限して圧縮機11の消費電力を制限する必要がある場合)、蒸発器温度TEが増加するほど送風機32の送風能力を低下させて空調風量を低下させることができる。
このため、圧縮機11の冷媒吐出能力が制限されて蒸発器15を流通する冷媒の流量が少なくなっても、蒸発器温度TEの上昇を抑制して蒸発器温度TEを一定温度(図13の例では、蒸発器15に流入する空気の露点温度以下の温度である0℃)に近づけることができる。
その結果、蒸発器温度TEを低温に維持することができるので、蒸発器15の凝縮水が蒸発しにくくなり、ひいては凝縮水の蒸発による臭いの発生を抑制することができる。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、TE−TEOの極大域で、ブロワレベルの上限レベルf(TE−TEO)を4に決定するが、本第3実施形態では、TE−TEOの極大域で、ブロワレベルの上限レベルf(TE−TEO)を非常に小さい値に決定する。
本実施形態のステップS6の詳細を、図14のフローチャートを用いて説明する。図14のフローチャートでは、図6のフローチャートにおけるステップS616〜S618をステップS636〜S639に変更しており、それ以外のステップS611〜S615は図6のフローチャートと同じである。
ステップS614にて空調用電力制限フラグf(空調用電力制限)が1であると判定された場合、ステップS636へ進み、外気温に基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワレベルの最小レベルf(外気温)を決定する。
すなわち、図14のステップS636に示すように、外気温の低温域では、ブロワレベルの最小レベルf(外気温)を0.5に決定し、外気温の高温域では、ブロワレベルの最小レベルf(外気温)を0に決定する。これにより、窓曇りの可能性がなければf(外気温)=0とされ、窓曇りの可能性があればf(外気温)=0.5とされる。
図14のステップS636に示す制御マップは、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅が設定されている。
なお、ブロワレベルの最小レベルは、窓曇りの可能性に応じて決定される値である。したがって、外気温の代わりに、湿度センサによって検出された車室内の湿度に基づいてブロワレベルの最小レベルを決定してもよい。また、外気温および車室内の湿度の両方に基づいてブロワレベルの最小レベルを決定してもよい。
続くステップS637では、蒸発器温度センサ56によって検出された蒸発器温度TEから、前回のステップS13で決定した目標蒸発器温度TEOを減算した差(TE−TEO)に基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワレベルの上限レベルf(TE−TEO)を決定する。
すなわち、図14のステップS637に示すように、TE−TEOの極小域では、ブロワレベルの上限レベルf(TE−TEO)を30に決定し、TE−TEOの極大域では、ブロワレベルの上限レベルf(TE−TEO)を、ステップS636で決定したf(外気温)に決定し、TE−TEOの中間域では、TE−TEOの上昇に応じてブロワレベルの上限レベルf(TE−TEO)を減少させる。
図14のステップS637に示す制御マップは、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅が設定されている。
図14のステップS637に示す制御マップは、車室内温度に応じてシフトされる。具体的には、図14のステップS637では、車室内温度が25℃の場合と車室内温度が55℃の場合とが示されている。車室内温度が25℃と55℃との間の場合は、車室内温度が25℃の場合の制御マップと車室内温度が55℃の場合の制御マップとを線形補間する。
続くステップS638では、送風機32の送風能力を決定するために電動モータに印加する送風機電圧に対応するブロワレベルを決定する。具体的には、次の数式F9によりブロワレベルを算出する。
ブロワレベル=MIN(f(TAO),f(TE−TEO))…(F9)
なお、数式F9のMIN(f(TAO),f(TE−TEO))とは、f(TAO)およびf(TE−TEO)のうち小さい方の値を意味している。
そして、ステップS639へ進み、ステップS615、S638にて決定したブロワレベルに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機電圧(ブロワモータ電圧)を決定する。
すなわち、図14のステップS639に示すように、ブロワレベルが0.5未満の領域では送風機電圧(ブロワモータ電圧)を0Vにし、ブロワレベルが0.5のときは送風機電圧(ブロワモータ電圧)を2Vにし、ブロワレベルが30以上の領域では送風機電圧(ブロワモータ電圧)を12Vにし、ブロワレベルが0.5と30の間の領域ではブロワレベルの上昇に応じて送風機電圧(ブロワモータ電圧)を上昇させる。
これにより、上記第1実施形態と同様に、圧縮機11の冷媒吐出能力が制限されて蒸発器15を流通する冷媒の流量が少なくなっても、蒸発器温度TEの上昇を抑制して蒸発器温度TEを目標蒸発器温度TEOに近づけることができるので、凝縮水の蒸発による臭いの発生を抑制することができる。
しかも、ステップS636にて、外気温の低温域ではf(外気温)=0とされるので、蒸発器温度TEと目標蒸発器温度TEOとの差が所定値よりも大きい場合、ステップS637にてf(TE−TEO)=0となって、送風機32による送風を停止することができる。このため、蒸発器温度TEと目標蒸発器温度TEOとの差が大きいために凝縮水の蒸発による臭いの発生の可能性が高い場合に臭いが送風空気によって車室内に流れることを防止できる。この場合、車両の走行中に走行風(ラム圧)が室内空調ユニット30に導入されて車室内に流れることがあるが、吹出口モードをフェイスモード以外とすれば、走行風が乗員の顔部へ流れることを抑制できるので、乗員に臭いを感じさせにくくすることができる。
送風機32による送風を停止している間、圧縮機11は作動しているので蒸発器温度TEは低下する。その結果、蒸発器温度TEと目標蒸発器温度TEOとの差が所定値よりも小さくなって、ステップS637にてf(TE−TEO)が0よりも大きくなるので、送風機32による送風が再開される。換言すれば、凝縮水の蒸発による臭いの発生の可能性が低くなった場合、送風機32による送風が再開される。
送風機32による送風が再開されることによって蒸発器温度TEが上昇して、蒸発器温度TEと目標蒸発器温度TEOとの差が所定値よりも大きくなると、再び送風機32による送風が停止される。このような作動が繰り返されることによって、送風機32による送風が間欠的に行われることとなる。
一方、ステップS636にて、外気温の高温域ではf(外気温)=0.5とされるので、蒸発器温度TEと目標蒸発器温度TEOとの差が大きい場合、ステップS637にてf(TE−TEO)=0.5となって、送風機32による送風風量を非常に少なくすることができる。
このため、蒸発器温度TEと目標蒸発器温度TEOとの差が大きいために凝縮水の蒸発による臭いの発生の可能性が高い場合であっても、窓曇りの可能性がある場合には、送風機32による送風を停止せず、車室内に少ない風量で送風することによって、臭いが車室内に流れることを抑制しつつ車室内を換気して防曇性を確保することができる。この場合、吹出口モードをフェイスモード以外とすれば、乗員の顔部への送風が抑制されて、乗員に臭いを感じさせにくくすることができる。また、車室内に少ない風量で送風するので、乗員の足元寒さを抑えつつ換気を行って防曇性を確保することができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
すなわち、上述の各実施形態では、ハイブリッド車両の車両走行用の駆動力について詳細を述べていないが、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に車両用空調装置1を適用してもよいし、エンジンEGを発電機80の駆動源として用い、発電された電力をバッテリ81に蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に車両用空調装置1を適用してもよい。
また、車両用空調装置1を、エンジンEGを備えることなく車両走行用の駆動力を走行用電動モータのみから得る電気自動車に適用してもよい。
また、上記第2実施形態では、蒸発器温度TEの増加に伴って空調風量を低下させるが、蒸発器温度TEが所定温度(例えば送風機32から送風された送風空気の露点温度)以下になるように空調風量を低下させてもよい。このような空調風量の制御は、例えばファジー制御を用いることによって実現できる。