以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図であり、図2は、車両用空調装置1の電気制御部の構成を示すブロック図である。本実施形態では、この車両用空調装置1を、内燃機関であるエンジンEGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力を、車両に搭載されたバッテリ(車載バッテリ)81に充電可能なプラグインハイブリッド車両として構成されている。
このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停車時に外部電源から供給された電力をバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをEV運転モードという。また、EV運転モードは特許請求の範囲に記載された第2運転モードに対応している。
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量SOCが走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをHV運転モードという。また、HV運転モードは特許請求の範囲に記載された第1運転モードに対応している。
より詳細には、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。つまり、走行用電動モータから出力される走行用の駆動力(モータ側駆動力)がエンジンEGから出力される走行用の駆動力(内燃機関側駆動力)よりも大きくなる運転モードである。
換言すると、内燃機関側駆動力に対するモータ側駆動力の駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より大きくなっている運転モードであると表現することもできる。
一方、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。つまり、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなる運転モードである。換言すると、駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より小さくなっている運転モードであると表現することもできる。
本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、このようにEV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。また、このようなEV運転モードとHV運転モードとの切り替え、および、駆動力比の制御は、後述する駆動力制御装置70によって制御される。
さらに、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示す冷凍サイクル10、室内空調ユニット30、図2に示す空調制御装置50等を備えている。
まず、室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、蒸発器15、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替箱20が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、ケーシング31内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。
従って、内外気切替ドア23は、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア23は、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吸込口モードとしては、内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段である送風機32(ブロア)が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される。従って、この電動モータは、送風機32の送風能力変更手段を構成している。
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器15が配置されている。蒸発器15は、その内部を流通する冷媒と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて、送風空気を冷却する冷却手段として機能する。具体的には、蒸発器15は、圧縮機11、凝縮器12、気液分離器13および膨張弁14等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を構成している。
ここで、本実施形態に係る冷凍サイクル10の主要な構成について説明すると、圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。
また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
凝縮器12は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン12aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮機11吐出冷媒を凝縮させる室外熱交換器である。送風ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
気液分離器13は、凝縮器12にて凝縮された冷媒を気液分離して余剰冷媒を蓄えるとともに、液相冷媒のみを下流側に流すレシーバである。膨張弁14は、気液分離器13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器15は、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させる室内熱交換器である。これにより、蒸発器15は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。
以上が本実施形態に係る冷凍サイクル10の主要構成の説明であり、以下、室内空調ユニット30の説明に戻る。ケーシング31内において、蒸発器15の空気流れ下流側には、蒸発器15通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
加熱用冷風通路33には、蒸発器15通過後の空気を加熱するためのヒータコア36およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順に配置されている。ヒータコア36は、エンジンEGを冷却するエンジン冷却水(以下、単に冷却水という。)と蒸発器15通過後の送風空気とを熱交換させて、蒸発器15通過後の送風空気を加熱する加熱手段として機能する。
具体的には、ヒータコア36とエンジンEGは、冷却水配管によって接続されて、ヒータコア36とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ40aが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環流量)が制御される電動式の水ポンプである。
PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア36通過後の空気を加熱する補助加熱手段(補助空気加熱手段)としての電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
より具体的には、このPTCヒータ37は、図3に示すように、複数(本実施形態では、3本)のPTCヒータ37a、37b、37cから構成されている。なお、図3は、本実施形態のPTCヒータ37の電気的接続態様を示す回路図である。
図3に示すように、各PTCヒータ37a、37b、37cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。従って、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ37a、37b、37cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
一方、冷風バイパス通路34は、蒸発器15通過後の空気を、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、蒸発器15の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア39を配置している。従って、エアミックスドア39は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。
より具体的には、エアミックスドア39は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動される回転軸と、その一端側に回転軸が連結された板状のドア本体部を有して構成される、いわゆる片持ちドアで構成されている。また、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口24〜26が配置されている。この吹出口24〜26としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口25、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口26が設けられている。
また、フェイス吹出口24、フット吹出口25、およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口24を全開してフェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口24とフット吹出口25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口25を全開するとともにデフロスタ吹出口26を小開度だけ開口して、フット吹出口25から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口25およびデフロスタ吹出口26を同程度開口して、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
さらに、乗員が後述する操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口26を全開してデフロスタ吹出口26から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、乗員が着座する座席の表面温度を上昇させる補助加熱手段としてのシート空調装置90を備えている。具体的には、このシート空調装置90は、座席表面に埋め込まれた電熱線で構成され、電力を供給されることによって発熱するシート加熱手段である。
そして、室内空調ユニット10の各吹出口24〜26にから吹き出される空調風によって車室内の暖房が不十分となり得る際に作動させて乗員の暖房感を補う機能を果たす。なお、このシート空調装置90は、空調制御装置50から出力される制御信号によって作動が制御され、作動時には座席の表面温度を約40℃程度となるまで上昇させるように制御される。
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50および駆動力制御装置70は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
駆動力制御装置70の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器および走行用電動モータへ交流電流を供給する走行用インバータ等が接続されている。各種エンジン構成機器としては、具体的に、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
また、駆動力制御装置70の入力側には、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計、バッテリ81へ流れ込む電流ABinあるいはバッテリ81から流れる電流ABioutを検出する電流計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ、車速Vvを検出する車速センサ(いずれも図示せず)等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
空調制御装置50の出力側には、送風機32、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、送風ファン12a、各種電動アクチュエータ62、63、64、第1〜第3PTCヒータ37a、37b、37c、冷却水ポンプ40a、シート空調装置90等が接続されている。
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、蒸発器15からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ58、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度検出手段としての湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器15の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器15のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器15を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。また、湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、オートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ、エコノミースイッチ60a等が設けられている。
オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除するスイッチである。車室内温度設定スイッチは、乗員の操作によって車室内目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。また、エコノミースイッチ60aは、乗員の投入操作によって車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段である。
さらに、エコノミースイッチ60aを投入することにより、EV運転モード時に、走行用電動モータを補助するために作動させるエンジンEGの作動頻度を低下させる信号がエンジン制御装置に出力される。
また、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50が駆動力制御装置70へエンジンEGの要求信号を出力することによって、エンジンEGの作動を要求することが可能となっている。
ここで、空調制御装置50および駆動力制御装置は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
例えば、空調制御装置50のうち、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御手段50aを構成し、吹出口モードの切り替えを制御する構成が吹出口モード切替手段50bを構成している。
次に、図4〜図11により、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。図4は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器にバッテリ81や外部電源等から電力が供給された状態で、車両用空調装置1の作動スイッチが投入されるとスタートする。なお、図4〜図11中の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内目標温度Tset、吸込口モードスイッチの設定信号等がある。
次に、ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58の検出信号や、外部電源からの電力の供給状態を示す電力状態信号等を読み込む。
また、このステップS3では、駆動力制御装置70の入力側に接続されたセンサ群の検出信号、および駆動力制御装置70から出力される制御信号等の一部も、駆動力制御装置70から読み込んでいる。
次に、ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、以下の数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
なお、目標吹出温度TAOは、車室内を所望の温度に保つために車両用空調装置1が生じさせる必要のある熱量に相当するもので、車両用空調装置1に要求される空調熱負荷として捉えることができる。
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、エアミックスドア39の目標開度SWを目標吹出温度TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された吹出空気温度TE、冷却水温度Twに基づいて算出する。
ステップS5の詳細については、図5のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS51では、以下数式F2により仮のエアミックス開度SWを算出して、ステップS52へ進む。
SWdd=[{TAO−(TE+2)}/{MAX(10、Tw−(TE+2))}]×100(%)…(F2)
なお、数式F2の{MAX(10、Tw−(TE+2))}とは、10およびTw−(TE+2)のうち大きい方の値を意味している。
続く、ステップS52では、ステップS51にて算出された仮のエアミックス開度SWddに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、エアミックス開度SWを決定して、ステップS6へ進む。なお、この制御マップでは、図5のステップS52に示すように、仮のエアミックス開度SWddに対するエアミックス開度SWの値を非線形的に決定している。
これは、前述の如く、本実施形態では、エアミックスドア39として片持ちドアを採用しているために、エアミックス開度SWの変化に対する実際の送風空気の流れ方向から見た冷風バイパス通路34の開口面積および加熱用冷風通路33の開口面積の変化が非線形的な関係となるからである。
ステップS6では、送風機32により送風される空気の目標送風量を決定する。具体的には、送風機32の電動モータに印加するブロワモータ電圧を決定する。このステップ6のより詳細な制御内容については、図6を用いて説明する。まず、ステップS601では、操作パネル60のオートスイッチが投入されているか否かが判定される。
ステップS601にてオートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS602へ進み、操作パネル60の風量設定スイッチによって設定された乗員の所望の風量となるブロワモータ電圧が決定されて、ステップS7へ進む。具体的には、本実施形態の風量設定スイッチは、Lo→M1→M2→M3→Hiの5段階の風量を設定することができ、それぞれ4V→6V→8V→10V→12Vの順にブロワモータ電圧が高くなるように決定される。
一方、ステップS601にてオートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS603へ進み、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、ステップS4で決定された目標吹出温度TAOに基づいて第1仮ブロワレベルf(TAO)を決定する。換言すると、空調負荷に基づいて送風機32の稼働率を決定する。
より詳細には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)で第1仮ブロワレベルf(TAO)を最大値にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じて第1仮ブロワレベルf(TAO)を低下させて、送風機32の風量を減少させる。
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じて第1仮ブロワレベルf(TAO)を低下させて、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、第1仮ブロワレベルf(TAO)を最小値にして送風機32の風量を最小値にする。
次のステップS604では、暖房モードにおいてエンジン冷却水温度TwおよびPTCヒータ37の作動本数に応じてブロワレベルを調整するための第2仮ブロワレベルf(TW)を決定する。換言すると、送風機32の稼働率の上限値をエンジン冷却水温度Twに基づいて決定する。
本実施形態では、ステップS604中に記載のエンジン冷却水温度Twと第2仮ブロワレベルf(TW)との関係図の通り、エンジン冷却水温度Twが予め定めた第1基準温度T1より低い低温領域ではブロワレベルを0、すなわち送風機32を停止させ、エンジン冷却水温度Twが第1基準温度T1以上になった場合には、エンジン冷却水温度Twの上昇に伴ってブロワレベルが上昇するように、第2仮ブロワレベルf(TW)を決定する。換言すると、エンジン冷却水温度Twが第1基準温度T1以上になった場合には、エンジン冷却水温度Twが低い程、送風機32の稼働率が制限されるように、第2仮ブロワレベルf(TW)を決定する。
これによれば、ヒータコア36を流れる冷却水の温度が第1基準温度T1より低く、ヒータコア36により送風空気を加熱することができない場合に、送風機32の作動を停止することができるので、充分加熱されていない送風空気が乗員に吹き出されて乗員の空調フィーリングが悪化することを抑制できる。
このとき、PTCヒータ37が作動している場合は、エンジン冷却水温度Twが低くても、PTCヒータ37により送風空気を加熱することができる。したがって、本ステップS604では、後述するステップS12で決定されるPTCヒータ37の作動本数が増加するに伴って、上記第1基準温度T1を低下させている。換言すると、PTCヒータ37の稼働率が高くなるに応じて送風機32の稼働率を増加させている。これにより、PTCヒータ37の作動本数が多い程、より低いエンジン冷却水温度Twにおいて、送風機32の作動が開始される。
また、エンジン冷却水温度Twが第1基準温度T1以上になる高温領域では、PTCヒータ37の作動の有無に関わらず、エンジン冷却水温度Twの上昇に伴うブロワレベルの上昇度合が一定になっている。換言すると、エンジン冷却水温度Twが第1基準温度T1以上になると、PTCヒータ37の稼働率が高くなるに応じた送風機32の稼働率の増加度合を小さくしている。
具体的には、エンジン冷却水温度Twが上昇過程にある場合には、エンジン冷却水温度Twが第1基準温度T1を下回っているとき、第2仮ブロワレベルf(TW)を0レベルに設定し、送風機32の作動を停止させておく。ここで、第1基準温度T1は、PTCヒータ37の作動本数が0本→1本→2本→3本と増加するに伴い、それぞれ40℃→37℃→34℃→30℃の順に低くなるように設定される。
また、エンジン冷却水温度Twが第1基準温度T1以上のとき、PTCヒータ37の作動本数に関わらず、エンジン冷却水温度Twの上昇に伴い徐々に第2仮ブロワレベルf(TW)を上昇させる。そして、エンジン冷却水温度Twが第2基準温度T2(例えば70℃)以上になると、第2仮ブロワレベルf(TW)を最大値(例えば30レベル)に設定する。
一方、エンジン冷却水温度Twが下降過程にある場合には、エンジン冷却水温度Twが第3基準温度T3(例えば65℃)以下になると、エンジン冷却水温度Twの低下に伴い徐々に第2仮ブロワレベルf(TW)を低下させる。そして、エンジン冷却水温度Twが第4基準温度T4より低く、第5基準温度T5以上の範囲では、第2仮ブロワレベルf(TW)を極小値(例えば1レベル)に設定する。
ここで、第4基準温度T4は、PTCヒータ37の作動本数が0本→1本→2本→3本と増加するに伴い、それぞれ36℃→33℃→30℃→26℃の順に低くなるように設定される。また、第5基準温度T5は、PTCヒータ37の作動本数が0本→1本→2本→3本と増加するに伴い、それぞれ29℃→26℃→23℃→19℃の順に低くなるように設定される。
そして、エンジン冷却水温度Twが第5基準温度T5を下回っているとき、第2仮ブロワレベルf(TW)を0レベルに設定し、送風機32の作動を停止させる。なお、各基準温度には、T2>T3>T1>T4>T5の関係がある。また、各基準温度の温度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
次のステップS605では、後述するステップS8で決定される吹出口モードがフットモード、バイレベルモードおよびフットデフモードのいずれかであるか否かを判定する。ステップS605にて吹出口モードがフットモード、バイレベルモードおよびフットデフモードのいずれかであると判定された場合は、ステップS606へ進む。
ステップS606では、後述するステップS117で決定されるエンジン禁止フラグが1であるか否かを判定する。ステップS606にて、ステップS117で決定されるエンジン禁止フラグが1であると判定された場合は、ステップS607へ進み、最低ブロワレベルである第3仮ブロワレベルf(エンジン禁止)を極小値(例えば1レベル)に設定し、ステップS609へ進む。
一方、ステップS606にて、ステップS117で決定されるエンジン禁止フラグが1でないと判定された場合は、ステップS608へ進み、第3仮ブロワレベルf(エンジン禁止)を0レベルに設定し、ステップS609へ進む。
ステップS609では、ステップS603にて決定された第1仮ブロワレベルf(TAO)と、ステップS604にて決定された第2仮ブロワレベルf(TW)とを比較して小さい方の値を算出し、当該小さい方の値と、ステップS706にて決定された第3仮ブロワレベルf(TW)とを比較して、大きい方の値を今回のブロワレベルと決定して、ステップS610へ進む。
ステップS610では、ステップS609にて決定された今回のブロワレベルに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワモータ電圧を決定して、ステップS7へ進む。
具体的には、ステップS610では、ブロワレベルが1レベルを下回っている場合には、ブロワモータ電圧を0Vに設定する。一方、ブロワレベルが1レベル以上になる場合には、ブロワレベルの上昇とともにブロワ電圧を上昇させる。そして、ブロワレベルが30レベルより高くなると、ブロワ電圧を最大電圧(12V)に設定する。
一方、ステップS605にて吹出口モードがフットモード、バイレベルモードおよびフットデフモードのいずれでもないと判定された場合は、ステップS611へ進む。
ステップS611では、ステップS603にて決定された第1仮ブロワレベルf(TAO)を今回のブロワレベルと決定して、ステップS612へ進む。すなわち、吹出口モードがフットモード、バイレベルモードおよびフットデフモードのいずれでもない、すなわち暖房モードが選択されていない場合には、暖房モードにおいてブロワレベルを調整するための第2仮ブロワレベルf(TW)に関わらず、第1仮ブロワレベルf(TAO)を今回のブロワレベルと決定する。
ステップS612では、ステップS610と同様に、ステップS611にて決定された今回のブロワレベルに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照してブロワモータ電圧を決定して、ステップS7へ進む。なお、本ステップS612で用いる制御マップは、上述のステップS708で用いる制御マップと同様であるため説明を省略する。
次のステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱20の切替状態を決定する。このステップS7の詳細については、図7のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS71では、後述するステップS117で決定されるエンジン禁止フラグが1であるか否を判定する。
ステップS71にて、後述するステップS117で決定されるエンジン禁止フラグが1であると判定された場合には、ステップS72へ進み、内外気切替箱20を外気モードとすることが決定されて、ステップS8へ進む。すなわち、エンジン禁止フラグが1である時には、内外気切替箱20を外気モードとすることで、車室内に車室外空気を導入する。
一方、ステップS71にて、後述するステップS117で決定されるエンジン禁止フラグが1でないと判定された場合には、ステップS73へ進み、操作パネル60のオートスイッチが投入されているか否かが判定される。ステップS73にて、オートスイッチが投入されていると判定された場合は、ステップS74へ進む。
ステップS74では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、吸込口モードを決定する。具体的には、TAOが上昇過程にあるときは、TAO≧第1所定温度T1であれば外気モードとし、第1所定温度T1>TAO≧第2所定温度T2であれば内外気混入モードとし、第2所定温度T2>TAOであれば内気モードとする。
一方、TAOが下降過程にあるときは、第3所定温度T3≧TAOであれば内気モードとし、第3所定温度T3≧TAO>第2所定温度T2であれば内外気混入モードとし、TAO>第2所定温度T2であれば、外気モードとしてステップS9へ進む。なお、各所定温度には、T1>T2>T3の関係がある。また、各所定温度の温度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
一方、ステップS73にて、オートスイッチが投入されていないと判定された場合は、ステップS75へ進む。ステップS75では、ステップS2で読み込んだ吸込口モードスイッチの設定信号に応じて、内気モードあるいは外気モードが決定されて、ステップS8へ進む。
ステップS8では、吹出口モードを決定する。このステップS8のより詳細な制御内容については、図8を用いて説明する。まず、ステップS81では、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、仮の吹出口モードf1(TAO)を決定する。具体的には、TAOが上昇過程にあるときは、TAO≦第1所定温度T’1(例えば30℃)であればフェイスモードに決定し、第1所定温度T’1<TAO≦第2所定温度T’2(例えば40℃)であればバイレベルモードに決定し、第2所定温度T’2<TAOであればフットモードに決定する。
一方、TAOが下降過程にあるときは、第3所定温度T’3(例えば38℃)≦TAOであればフットモードに決定し、第4所定温度T’4(例えば27℃)≦TAO<第3所定温度T’3であればバイレベル入モードに決定し、TAO<第4所定温度T’4であればフェイスモードに決定する。なお、各所定温度には、T’4<T’1<T’3<T’2の関係がある。また、各所定温度の温度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
次のステップS82では、後述するステップS117で決定されるエンジン禁止フラグが1であるか否かを判定する。ステップS82にて、後述するステップS117で決定されるエンジン禁止フラグが1であると判定された場合には、ステップS83へ進み、今回の吹出口モードをデフモードと決定し、ステップS9へ進む。
一方、ステップS82にて、後述するステップS117で決定されるエンジン禁止フラグが1でないと判定された場合には、ステップS84へ進む。ステップS84では、ステップS81にて決定された仮の吹出口モードf1(TAO)を、今回の吹出口モードとして決定し、ステップS9へ進む。
ステップS9では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機11の回転数)を決定する。ここで、圧縮機11の基本的な回転数の決定手法を説明する。例えば、本実施形態では、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器26からの吹出空気温度Teの目標吹出温度TEOを決定する。
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fn−1に対する回転数変化量Δfを求める。
このステップS9のより詳細な制御内容については、図9を用いて説明する。まず、ステップS91では、回転数変化量Δfを求める。図9のステップS91には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、上述の偏差Enと偏差変化率Edotに基づいて蒸発器15の着霜が防止されるようにΔfが決定される。
続くステップS92では、操作パネル60の車両用空調装置1の作動スイッチがOFFになっているか否かが判定される。ステップS92にて車両用空調装置1の作動スイッチがOFFになっていない、すなわち車両用空調装置1の作動スイッチが投入されている(ONになっている)と判定された場合には、ステップS93へ進む。
ステップS93では、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δfを加えた値を、今回の圧縮機回転数fnと決定して、ステップS10へ進む。なお、ステップS93における仮の圧縮機回転数の決定は、制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。
一方、ステップS92にて車両用空調装置1の作動スイッチがOFFになっていると判定された場合には、ステップS94へ進み、後述するステップS117で決定されるエンジン禁止フラグが1であるか否かを判定する。ステップS94にて、後述するステップS117で決定されるエンジン禁止フラグが1であると判定された場合には、ステップS93へ進む。
一方、ステップS94にて、後述するステップS117で決定されるエンジン禁止フラグが1でないと判定された場合には、ステップS95へ進む。ステップS95では、今回の圧縮機回転数fnを0(停止)に決定して、ステップS10へ進む。
次のステップS10では、PTCヒータ37の作動本数および電熱デフォッガの作動状態を決定する。まず、PTCヒータ37の作動本数の決定について説明すると、ステップS10では、外気温Tam、ステップS51にて決定した仮のエアミックス開度SWdd、冷却水温度Twに応じて、PTCヒータ37の作動本数を決定する。
また、電熱デフォッガについては、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
次のステップS11では、空調制御装置50から駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定する。この要求信号としては、エンジンEGの作動要求信号(エンジンON要求信号)等がある。
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、走行時に常時エンジンを作動させているので冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両では冷却水をヒータコア36に流通させることで十分な暖房能力を発揮することができる。
これに対して、本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力を走行用電動モータからも得ることができることから、エンジンEGの作動を停止させることがあり、車両用空調装置1にて車室内の暖房を行う際に、冷却水の温度が暖房用の熱源として充分な温度にまで上昇していない場合がある。
そこで、本実施形態の車両用空調装置1は、走行用の駆動力を出力させるためにエンジンEGを作動させる必要がない走行条件であっても、所定条件を満した場合には、エンジンEGの駆動力を制御する駆動力制御装置70に対してエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)を出力して、冷却水温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させるようにしている。
ステップS11の詳細については、図10のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS111では、冷却水温度Twに基づくエンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号の出力を行うか否かの判定に用いる判定閾値としてのエンジンON水温TwonおよびエンジンOFF水温Twoffを決定する。なお、エンジンON水温Twonは、停止要求信号を出力することを決定する判定基準となる閾値であり、エンジンOFF水温Twoffは、エンジンEGの作動停止信号を出力することを決定する判定基準となる閾値である。
つまり、エンジンOFF水温Twoffは、駆動力制御装置70がエンジンEGを作動させて冷却水温度Twを昇温させる際の上限温度となる値である。つまり、駆動力制御装置70は、冷却水温度Twを昇温させる際に、冷却水温度TwがエンジンOFF水温TwoffとなるまでエンジンEGを作動させることになる。
具体的には、エンジンOFF水温Twoffは、車両用空調装置1が充分な暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度Twと、予め定められた基準温度(本実施形態では70℃)のうち小さい方の値に決定する。
ここで、車両用空調装置1が充分な暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度Twは、以下の数式F3を用いて算出する。
Tw={(TAO−ΔTptc)−(TE×0.2)}/0.8…(F3)
なお、ΔTptcは、PTCヒータ37の作動による吹出温上昇量、すなわち、各吹出口24〜26から車室内へ吹き出される空気の温度(吹出温)のうち、PTCヒータ37の発熱分が寄与した温度上昇量である。このΔTptcは、PTCヒータ37の作動本数の増加に伴って高い値が設定される。例えば、PTCヒータ37の作動本数が0本であればΔTptc=0℃、作動本数が1本であればΔTptc=3℃、作動本数が2本であればΔTptc=6℃、作動本数が3本であればΔTptc=9℃となるように設定されている。
ここで、冷却水目標温度f(TAO)から吹出温上昇量ΔTptcを減算した値は、車両用空調装置1が充分な暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度TwからPTCヒータ37を作動させることによる温度上昇分を減算した値なので、この温度をエンジンOFF水温Twoffとすれば、車両用空調装置1に確実に充分な暖房能力を発揮させることができる。
また、車両用空調装置1が充分な暖房能力を発揮するために望ましい冷却水温度Twと比較する基準温度は、確実にエンジンの作動停止信号を出力するための保護用の値として決定された値である。
一方、エンジンON水温Twonは、頻繁にエンジンがON/OFFするのを防止するため、エンジンOFF水温Twoffよりも所定の値(本実施形態では、5℃)だけ低く決定されており、この所定の値は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
続くステップS112では、冷却水温度Twに応じて、エンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号を出力するか否かの第1仮要求信号フラグf(Tw)を決定する。具体的には、冷却水温度TwがステップS111で決定されたエンジンON水温Twonより低ければ、第1仮要求信号フラグf(Tw)=ONとしてエンジンEGの作動要求信号を出力することを仮決定し、冷却水温度TwがエンジンOFF水温Twoffより高ければ、第1仮要求信号フラグf(Tw)=OFFとしてエンジンEGの作動停止信号を出力することを仮決定する。
続くステップS113では、シート空調装置90が作動しているか否か判定する。ステップS113にてシート空調装置90作動が作動していると判定された場合には、ステップS114へ進み、日射センサ53によって検出された車室内の日射量Tsに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、基準温度f(日射量)を決定し、ステップS116へ進む。この基準温度f(日射量)は、次のステップS116で第2仮要求信号フラグf(外気温)を決定するために用いられる。
本実施形態では、具体的に、図10のステップS114に示すように、日射量Tsが多い程、基準温度f(日射量)が低くなるように決定される。
より詳細には、ステップS114中に記載の日射量Tsと基準温度f(日射量)との関係図の通り、日射量Tsが予め定めた第1基準日射量(本実施形態では300W/m2)より低い低日射領域では、基準温度f(日射量)を最高値である第1基準温度(本実施形態では12)に決定する。また、日射量Tsが予め定めた第2基準日射量(本実施形態では700W/m2)より高い高日射領域では、基準温度f(日射量)を最低値である第2基準温度(本実施形態では5)に決定する。また、日射量Tsが第1基準日射量以上、第2基準日射量以下の領域では、日射量Tsの増加に伴って基準温度f(日射量)が低下するように、基準温度f(日射量)決定する。
一方、ステップS113にてシート空調装置90が作動していないと判定された場合には、ステップS115へ進み、ステップS114と同様、日射センサ53によって検出された車室内の日射量Tsに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、基準温度f(日射量)を決定し、ステップS116へ進む。
本実施形態では、具体的に、図10のステップS115に示すように、日射量Tsが多い程、基準温度f(日射量)が低くなるように決定される。
より詳細には、ステップS115中に記載の日射量Tsとf(日射量)との関係図の通り、日射量Tsが第1基準日射量より低い低日射領域では、基準温度f(日射量)を最高値である第3基準温度(本実施形態では17)に決定する。また、日射量Tsが第2基準日射量より高い高日射領域では、基準温度f(日射量)を最低値である第2基準温度(本実施形態では10)に決定する。また、日射量Tsが第1基準日射量以上、第2基準日射量以下の領域では、日射量Tsの増加に伴って基準温度f(日射量)が低下するように、基準温度f(日射量)決定する。
ここで、第3基準温度は第1基準温度より高い値に設定されており、第4基準温度は第2基準温度より高い値に設定されている。つまり、ステップS115では、ステップS114よりも基準温度f(日射量)が高く設定されている。このため、補助加熱手段であるシート空調装置90が作動している場合は、シート空調装置90が作動していない場合よりも、基準温度f(日射量)が低く設定される。従って、本実施形態の制御ステップS114およびS115は、基準温度決定手段を構成している。
次のステップS116では、外気センサ52により検出された外気温Tamに応じて、エンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号を出力するか否かの第2仮要求信号フラグf(外気温)を決定する。具体的には、外気温TamがステップS114またはS115で決定された基準温度f(日射量)より低ければ、第2仮要求信号フラグf(外気温)=1と決定し、外気温TamがステップS114またはS115で決定された基準温度f(日射量)+2より高ければ、第2仮要求信号フラグf(外気温)=0と決定する。また、基準温度f(日射量)と基準温度f(日射量)+2との温度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
続くステップS117では、運転モードがエコモードであるか否か(操作パネル60のエコノミースイッチ60aが投入されているか否か)、目標吹出温度TAO、第1仮要求信号フラグf(Tw)、操作パネル60の車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度Tset、第2仮要求信号フラグf(外気温)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、駆動力制御装置70へ出力される要求信号およびエンジン禁止フラグを決定する。
具体的には、図10のステップS117中の図表に示すように、目標吹出温度TAOが予め定めた基準吹出温度(本実施形態では20℃)未満の場合は、エコモードであるか否か、第1仮要求信号フラグf(Tw)、車室内設定温度Tset、第2仮要求信号フラグf(外気温)の状態によらず、駆動力制御装置70へ出力する要求信号をエンジンEGの停止を要求する信号に決定するとともに、エンジン禁止フラグ=0と決定する。
また、運転モードがエコモード以外のモードであって、且つ目標吹出温度TAOが基準吹出温度以上の状態であれば、車室内設定温度Tset、第2仮要求信号フラグf(外気温)の状態によらず、第1仮要求信号フラグf(Tw)をそのまま要求信号に決定するとともに、エンジン禁止フラグ=0と決定する。
また、運転モードがエコモードであって、且つ目標吹出温度TAOが基準吹出温度以上の状態であり、さらに第1仮要求信号フラグf(Tw)がOFFとなっている状態であれば、車室内設定温度Tset、第2仮要求信号フラグf(外気温)の状態によらず、第1仮要求信号フラグf(Tw)をそのまま要求信号に決定するとともに、エンジン禁止フラグ=0と決定する。
また、運転モードがエコモードであって、且つ目標吹出温度TAOが基準吹出温度以上の状態であり、さらに第1仮要求信号フラグf(Tw)がONとなっている状態であり、車室内設定温度Tsetが基準設定温度(本実施形態では28℃)以上の状態であれば、第2仮要求信号フラグf(外気温)の状態によらず、エンジンEGを作動させる要求信号に決定するとともに、エンジン禁止フラグ=0と決定する。
また、運転モードがエコモードであって、且つ目標吹出温度TAOが基準吹出温度以上の状態であり、さらに第1仮要求信号フラグf(Tw)がONとなっている状態であり、車室内設定温度Tsetが基準設定温度未満の状態であり、第2仮要求信号フラグf(外気温)=1の状態であれば、第1仮要求信号フラグf(Tw)をそのまま要求信号に決定するとともに、エンジン禁止フラグ=0と決定する。
また、運転モードがエコモードであって、且つ目標吹出温度TAOが基準吹出温度以上の状態であり、さらに第1仮要求信号フラグf(Tw)がONとなっている状態であり、車室内設定温度Tsetが基準設定温度未満の状態であり、第2仮要求信号フラグf(外気温)=0の状態であれば、エンジンEGを停止させる要求信号に決定するとともに、エンジン禁止フラグ=1と決定する。すなわち、エンジン禁止フラグ=1の状態とは、駆動力制御装置70へ出力される要求信号が、エンジンEGを停止させる要求信号に決定されている状態を示している。
ここで、上記のステップS116にて説明したように、第2仮要求信号フラグf(外気温)=0の状態とは、外気温Tamが基準温度f(日射量)+2より高い状態である。したがって、本ステップS117では、運転モードがエコモードであり、外気温Tamが基準温度f(日射量)+2より高い場合に、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。これにより、運転モードがエコモードであり、外気温Tamが基準温度以上である際には、駆動力制御装置70へエンジンEGの作動を要求する要求信号の出力が禁止される。すなわち、駆動力制御装置70へエンジンEGの作動を要求する要求信号の出力が制限される。従って、本実施形態の制御ステップS117は、制限手段を構成している。
また、上記のステップS114、S115にて説明したように、シート空調装置90が作動している場合は、シート空調装置90が作動していない場合よりも、基準温度f(日射量)が低く設定される。一方、ステップS116にて説明したように、外気温Tamが基準温度f(日射量)より高ければ、第2仮要求信号フラグf(外気温)=0と決定される。
このことは、本実施形態の車両用空調装置1では、シート空調装置90が作動している場合は、シート空調装置90が作動していない場合よりも、エンジンEGを作動させる要求信号が出力されにくくなる、すなわちエンジンEGを作動させる要求信号の出力が禁止されやすくなることを意味している。
次に、ステップS12では、冷却水回路40にてヒータコア36とエンジンEGとの間で冷却水を循環させる冷却水ポンプ40aを作動させるか否かを決定する。このステップS12の詳細については、図11のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS121では、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高いか否かを判定する。
ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合は、ステップS124へ進み、冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。その理由は、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合に冷却水をヒータコア36へ流すと、ヒータコア36を流れる冷却水が蒸発器15通過後の空気を冷却してしまうことになるため、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうからである。
一方、ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高い場合は、ステップS122へ進む。ステップS122では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS122にて、送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS124に進み、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。
一方、ステップS122にて送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS123へ進み、冷却水ポンプ40aを作動(ON)させることを決定する。これにより、冷却水ポンプ40aが作動して、冷却水が冷媒回路内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
次に、ステップS13では、シート空調装置90の作動要否を決定する。シート空調装置90の作動状態は、ステップS5で決定した目標吹出温度TAO、仮のエアミックス開度Sdd、ステップS2で読み込んだ外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。
次に、ステップS14では、上述のステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器32、12a、61、62、63、64、12a、37、40a、80に対して制御信号および制御電圧が出力される。さらに、要求信号出力手段50cから駆動力制御装置70に対して、ステップS11にて決定された要求信号が送信される。
次に、ステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。これにより、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動するので、送風機32から送風された送風空気が、蒸発器15にて冷却される。そして蒸発器15にて冷却された冷風は、エアミックスドア39の開度に応じて、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入する。
加熱用冷風通路33へ流入した冷風は、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過する際に加熱されて、混合空間35にて冷風バイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35にて温度調整された空調風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
この車室内に吹き出される空調風によって車室内の内気温Trが外気温Tamより低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現されており、一方、内気温Trが外気温Tamより高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS117で説明したように、運転モードがエコモードであり、外気温Tamが基準温度以上である際には、空調制御装置50から駆動力制御装置70へのエンジンEGの作動を要求する要求信号(以下、作動要求信号ともいう)の出力を禁止している。
外気温Tamが高い場合、乗員が車両に乗り込んだ際の温感は不快なほど寒くないので、運転モードがエコモードであり、かつ、外気温Tamが基準温度以上である場合に、作動要求信号の出力を禁止することで、乗員の温感を少なくとも最低限確保しつつ、エンジンEGの稼働率を低減して省燃費を図ることができる。すなわち、乗員の快適性の悪化を抑制しつつ、車両燃費の向上を図ることが可能となる。
また、本実施形態の車両用空調装置1は、プラグインハイブリッド車両に適用されているが、運転モードがエコモードであり、かつ、外気温Tamが基準温度以上である場合に、作動要求信号の出力を禁止することで、車両起動時のようにバッテリが満充電に近い状態のときにエンジンEGが作動して乗員に違和感を与えることを抑制できる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS114、S115で説明したように、日射量Tsが多い程、基準温度f(日射量)を低く決定している。
ここで、日射量Tsが多い程、乗員の温感は高くなる。また、制御ステップS116にて説明したように、基準温度f(日射量)が低い程、第2仮要求信号フラグf(外気温)=0の状態になりやすくなる。一方、制御ステップS117にて説明したように、第2仮要求信号フラグf(外気温)=0の状態である場合、作動要求信号の出力が禁止されやすくなる。
このため、本実施形態によれば、日射量Tsが多い程、基準温度f(日射量)を低くすることで、乗員の温感が高くなる程、作動要求信号の出力が禁止されやすくできる。このため、暖房感がより必要な場合にのみ、作動要求信号の出力を行うことができるので、乗員の快適性の悪化を抑制しつつ、車両燃費のさらなる向上を図ることが可能となる。
ところで、シート空調装置90が作動している際には、シート空調装置90が作動していない際よりも、乗員の温感は高くなる。したがって、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS114、S115で説明したように、シート空調装置90が作動している場合は、シート空調装置90が作動していない場合よりも、作動要求信号の出力が禁止されやすくなっている。
これにより、暖房感がより必要な場合にのみ、作動要求信号の出力を行うことができるので、乗員の快適性の悪化を抑制しつつ、車両燃費のさらなる向上を図ることが可能となる。
ところで、車室内設定温度Tsetが高い場合、乗員は高い温感を要求しているので、エンジンEGを作動させて冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで昇温させる必要がある。したがって、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS117で説明したように、車室内設定温度Tsetが基準設定温度以上の状態であれば、第2仮要求信号フラグf(外気温)の状態によらず、エンジンEGを作動させる要求信号に決定している。これにより、乗員が高い温感を要求している場合に、乗員の温感を確保することができるので、乗員の快適性を向上できる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS83で説明したように、エンジン禁止フラグ=1の状態、すなわち駆動力制御装置70へ出力される要求信号がエンジンEGを停止させる要求信号に決定されている(作動要求信号の出力が禁止されている)状態であれば、今回の吹出口モードをデフモードと決定している。
ここで、作動要求信号の出力が禁止されている場合には、冷却水の温度が暖房用の熱源として充分な温度となるまで昇温されていないので、送風空気が充分加熱されないまま乗員の足元に吹き出されて乗員の暖房感が損なわれる可能性がある。
これに対し、本実施形態のように、作動要求信号の出力が禁止されている場合に、デフモードとすることで、車両窓ガラス近傍の湿度を低下させることができる。したがって、乗員の快適性の悪化を抑制しつつ、車両燃費の向上を図るとともに、車両窓ガラスの防曇性能を向上させることが可能となる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS93で説明したように、エンジン禁止フラグ=1の状態、すなわち作動要求信号の出力が禁止されている場合には、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δfを加えた値を今回の圧縮機回転数fnと決定している。換言すると、作動要求信号の出力が禁止されている場合には、圧縮機11を作動させるように決定している。
これにより、作動要求信号の出力が禁止されている場合に、蒸発器15により送風空気を除湿することができるので、乗員の快適性の悪化を抑制しつつ、車両燃費の向上を図るとともに、車両窓ガラスの防曇性能を向上させることが可能となる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS607で説明したように、エンジン禁止フラグ=1の状態、すなわち作動要求信号の出力が禁止されている場合には、最低ブロワレベルである第3仮ブロワレベルf(エンジン禁止)を1レベルに決定している。換言すると、作動要求信号の出力が禁止されている場合には、送風機32を停止させないように決定している。
これにより、作動要求信号の出力が禁止されている場合に、送風機32を作動させることができるので、確実に車室内の換気を行うことができる。したがって、車両窓ガラスの防曇性能をより確実に向上させることが可能となる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS72で説明したように、エンジン禁止フラグ=1の状態、すなわち作動要求信号の出力が禁止されている場合には、内外気切替箱20を外気モードとすることを決定している。
これにより、作動要求信号の出力が禁止されている場合に、確実に車室内の換気を行うことができる。したがって、車両窓ガラスの防曇性能をより確実に向上させることが可能となる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態の図10の制御ステップS11を図12に示すように変更した例を説明する。すなわち、本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、内気センサ51によって検出された車室内温度Trに応じて第2仮要求信号フラグf(室温)を決定した点が異なるものである。
まず、図12に示すように、本実施形態のステップS111〜S115では、第1実施形態と全く同様の処理が行われ、ステップS1161へ進む。
続くステップS1161では、次のステップS116では、内気センサ51によって検出された車室内温度Trに応じて、エンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号を出力するか否かの第2仮要求信号フラグf(室温)を決定する。具体的には、車室内温度TrがステップS114またはS115で決定された基準温度f(日射量)より低ければ、第2仮要求信号フラグf(室温)=1と決定し、車室内温度TrがステップS114またはS115で決定された基準f(日射量)+2より高ければ、第2仮要求信号フラグf(室温)=0と決定する。
続くステップS1171では、運転モードがエコモードであるか否か(操作パネル60のエコノミースイッチ60aが投入されているか否か)、目標吹出温度TAO、第1仮要求信号フラグf(Tw)、操作パネル60の車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度Tset、第2仮要求信号フラグf(室温)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、駆動力制御装置70へ出力される要求信号およびエンジン禁止フラグを決定する。
具体的には、図12のステップS1171中の図表に示すように、目標吹出温度TAOが予め定めた基準吹出温度(本実施形態では20℃)未満の場合は、エコモードであるか否か、第1仮要求信号フラグf(Tw)、車室内設定温度Tset、第2仮要求信号フラグf(室温)の状態によらず、駆動力制御装置70へ出力する要求信号をエンジンEGの停止を要求する信号に決定するとともに、エンジン禁止フラグ=0と決定する。
また、運転モードがエコモード以外のモードであって、且つ目標吹出温度TAOが基準吹出温度以上の状態であれば、車室内設定温度Tset、第2仮要求信号フラグf(室温)の状態によらず、第1仮要求信号フラグf(Tw)をそのまま要求信号に決定するとともに、エンジン禁止フラグ=0と決定する。
また、運転モードがエコモードであって、且つ目標吹出温度TAOが基準吹出温度以上の状態であり、さらに第1仮要求信号フラグf(Tw)がOFFとなっている状態であれば、車室内設定温度Tset、第2仮要求信号フラグf(室温)の状態によらず、第1仮要求信号フラグf(Tw)をそのまま要求信号に決定するとともに、エンジン禁止フラグ=0と決定する。
また、運転モードがエコモードであって、且つ目標吹出温度TAOが基準吹出温度以上の状態であり、さらに第1仮要求信号フラグf(Tw)がONとなっている状態であり、車室内設定温度Tsetが基準設定温度(本実施形態では28℃)以上の状態であれば、第2仮要求信号フラグf(室温)の状態によらず、エンジンEGを作動させる要求信号に決定するとともに、エンジン禁止フラグ=0と決定する。
また、運転モードがエコモードであって、且つ目標吹出温度TAOが基準吹出温度以上の状態であり、さらに第1仮要求信号フラグf(Tw)がONとなっている状態であり、車室内設定温度Tsetが基準設定温度未満の状態であり、第2仮要求信号フラグf(室温)=1の状態であれば、第1仮要求信号フラグf(Tw)をそのまま要求信号に決定するとともに、エンジン禁止フラグ=0と決定する。
また、運転モードがエコモードであって、且つ目標吹出温度TAOが基準吹出温度以上の状態であり、さらに第1仮要求信号フラグf(Tw)がONとなっている状態であり、車室内設定温度Tsetが基準設定温度未満の状態であり、第2仮要求信号フラグf(室温)=0の状態であれば、エンジンEGを停止させる要求信号に決定するとともに、エンジン禁止フラグ=1と決定する。
ここで、上記のステップS1161にて説明したように、第2仮要求信号フラグf(室温)=0の状態とは、車室内温度Trが基準温度f(日射量)+2より高い状態である。したがって、本ステップS1171では、運転モードがエコモードであり、車室内温度Trが基準温度f(日射量)+2より高い場合に、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。これにより、運転モードがエコモードであり、車室内温度Trが基準温度以上である際には、駆動力制御装置70へエンジンEGの作動を要求する要求信号の出力が禁止される。すなわち、駆動力制御装置70へエンジンEGの作動を要求する要求信号の出力が制限される。従って、本実施形態の制御ステップS1171は、制限手段を構成している。
その他の車両用空調装置1の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態の車両用空調装置1によれば、制御ステップS1171で説明したように、運転モードがエコモードであり、車室内温度Trが基準温度以上である際には、空調制御装置50から駆動力制御装置70へのエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)の出力を禁止している。
車室内温度Trが高い場合、乗員が車両に乗り込んだ際の温感は不快なほど寒くないので、運転モードがエコモードであり、かつ、車室内温度Trが基準温度以上である場合に、作動要求信号の出力を禁止することで、乗員の温感を少なくとも最低限確保しつつ、エンジンEGの稼働率を低減して省燃費を図ることができる。すなわち、乗員の快適性の悪化を抑制しつつ、車両燃費の向上を図ることが可能となる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
すなわち、上述の各実施形態では、車両用空調装置1を、プラグインハイブリッド車両の車両走行用の駆動力について詳細を述べていないが、車両用空調装置1は、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に適用してもよいし、エンジンEGを発電機80の駆動源として用い、発電された電力をバッテリ81に蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
また、車両用空調装置1を、エンジンEGを備えることなく車両走行用の駆動力を走行用電動モータのみから得る電気自動車に適用してもよい。