以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
なお、本発明において「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリルおよび/またはメタクリル」、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸および/またはメタクリル酸」を意味するものとする。
また「全固形分」とは、後記する溶剤成分以外の本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物の全成分を意味するものとする。
本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物は、(a)バインダー樹脂、(b)溶剤および(c)色材を含有し、(c)色材が下記(1)〜(3)のいずれかであることを特徴とする。いずれも、従来の色材化合物より耐光性に優れることを特徴とする。
(1) 下記一般式(I)で表される化合物を含有する。
(上記一般式(I)において、Zはアントラキノン骨格またはフタロシアニン骨格を有するm価のアニオンを表す。mは1〜4の整数を表す。
Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基を表すか、或いは隣接するR同士が結合して環を形成する。該環は置換基を有していてもよい。それぞれのRは同一でも異なっていてもよい。
R
101は置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、またはフッ素原子を表す。
R
102は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、またはフッ素原子を表す。
或いはR
101とR
102とが結合し、環を形成していてもよく、該環は置換基を有していてもよい。
また、上記一般式(I)のカチオン部分における3つのベンゼン環は、いずれも、−NR
2、−R
101および−R
102以外の基で置換されていてもよい。
なお、1分子中に複数の
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
(2) 下記一般式(V)で表される化合物を含有する。
(上記一般式(V)において、Zはアントラキノン骨格またはフタロシアニン骨格を有するm価のアニオンを表す。mは1〜4の整数を表す。
Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基を表すか、或いは隣接するR同士が結合して環を形成する。該環は置換基を有していてもよい。それぞれのRは同一でも異なっていてもよい。
R
201は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、ベンジル基、置換基を有していてもよいフェニル基、または置換基を有していてもよいナフチル基を表す。
R
202は置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
R
203、R
204、R
205、R
206は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、フッ素原子、置換基を有していてもよいフェニル基、−CO
2R
46、−SO
3R
47、または−SO
2NHR
48(但し、R
46〜R
48は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を表す。
また上記一般式(V)のカチオン部分における2つのベンゼン環は、いずれも−NR
2以外の基で置換されていてもよい。
なお、1分子中に複数の
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
(3) カチオン系青色色素(色素1)とアニオン系色素(色素2)からなる化合物(以下、この化合物を「色素1−色素2化合物」と称す場合がある。)を含有し、この色素1−色素2化合物における色素1および色素2が以下の(イ)または(ロ)を満たす。
(イ)色素2が偶数電子系化合物であり、時間依存密度汎関数(B3LYP/6-31G(d,p))計算により得られる、色素1の最低一重項起状態(S1状態)の励起エネルギー(ΔES1(色素1))と、色素2の最低一重項励起状態(S1状態)の励起エネルギー(ΔES1(色素2))が下記式(i)を満たし、かつ色素2の最低三重項励起状態(T1状態)の励起エネルギー(ΔET1(色素2))が下記式(ii)を満たす。
(ロ)色素2が奇数電子系化合物であり、時間依存密度汎関数(B3LYP/6-31G(d,p))計算により得られる、色素1の最低一重項起状態(S1状態)の励起エネルギー(ΔES1(色素1))と、色素2のエネルギー的に最も低い励起状態の励起エネルギー(ΔElowest(色素2))が、下記式(iii)を満たす。
本発明の着色樹脂組成物において、(c)色材以外の成分としては、カラーフィルター形成材料として使用できるものであれば、特に制限無く使用できる。例えば、特開昭60−184202号公報などに記載された熱硬化性樹脂組成物、後述する光重合性樹脂組成物など、いずれのタイプの樹脂組成物であってもよい。フォトリソグラフィー法にてカラーフィルター用画素を形成する場合には、熱硬化性樹脂組成物を用いるとパターン形成のために、更にポジ型レジスト層などを1層設けて画像形成を行う必要があるため、プロセスの簡便性の点からは、光重合性樹脂組成物であることが好ましい。一方、インクジェット法にて画素形成を行う場合には、露光工程等が不要となることから、熱硬化性樹脂組成物が好ましい。
本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物は、(a)バインダー樹脂、(b)溶剤、および(c)色材を必須成分とし、好ましくは更に(d)モノマー、(e)光重合開始系および/または熱重合開始系、(f)顔料を含み、更に必要に応じて配合されるその他の成分を含む。
[(c)色材]
まず、本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物に含有される(c)色材について、態様毎に説明する。
<第1の態様に係る(c)色材>
本発明の第1の態様に係る(c)色材は、下記一般式(I)で表される化合物を含有するものであり、一般式(I)で表される化合物のうち、特に、R101とR102とが結合して環を形成していない化合物の場合、耐熱性、耐光性、色味のいずれもバランスよく良好な画素を形成し得るカラーフィルター用着色樹脂組成物を提供し、また、R101とR102とが結合して後述の一般式(III)におけるようなナフタレン環を形成している化合物の場合、色味が著しく良好な画素を形成し得るカラーフィルター用着色樹脂組成物を提供する。
(上記一般式(I)において、Zはアントラキノン骨格またはフタロシアニン骨格を有するm価のアニオンを表す。mは1〜4の整数を表す。
Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基を表すか、或いは隣接するR同士が結合して環を形成する。該環は置換基を有していてもよい。それぞれのRは同一でも異なっていてもよい。
R
101は置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、またはフッ素原子を表す。
R
102は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、またはフッ素原子を表す。
或いはR
101とR
102とが結合し、環を形成していてもよく、該環は置換基を有していてもよい。
また、上記一般式(I)のカチオン部分における3つのベンゼン環は、いずれも、−NR
2、−R
101および−R
102以外の基で置換されていてもよい。
なお、1分子中に複数の
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
一般式(I)におけるRは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基を表すか、或いは隣接するRが結合して環を形成する。一般式(I)において、複数あるRは同一であっても異なるものであってもよい。従って、−NRR基は左右対称であっても、左右非対称であってもよい。
隣接するRが結合して環を形成する場合、これらはヘテロ原子で架橋された環であってもよい。この環の具体例として、例えば以下のものが挙げられる。これらの環は置換基を有していてもよい。
化学的安定性の点から、Rとして好ましくは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基であるか、或いは隣接するRが結合して環を形成する場合であり、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基である。
R101は置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、またはフッ素原子を表す。特にR101として水素原子以外の基を有するか、またはR102と結合して環の一部を構成することにより、トリアリールメチン構造の中心にあるsp2炭素と隣接するベンゼン環からなる平面に対して、R101が結合するベンゼン環がねじれの位置関係になるため、青色の吸収を有するようになり、これを用いたカラーフィルター用着色組成物の分光特性が向上し、青色表示部材のコントラストが改善されるため、好ましい。
R102は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、またはフッ素原子を表す。隣接するアミノ基の平面性を維持するの点から、R102として好ましくは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、或いはR101と結合して環の一部を構成するものであり、より好ましくは水素原子、或いはR101と結合して環の一部を構成するものである。
なお、R101とR102が結合し、環を形成していても良い。R101とR102が結合して形成される環の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。該環は置換基を有していてもよい。
Rがアルキル基またはフェニル基である場合、並びにR101およびR102が各々独立してアルキル基、アルケニル基またはフェニル基である場合、これらの基は更に置換基を有していてもよい。また、隣接するR同士や、R101とR102とが結合して形成される環についても置換基を有していてもよい。
該置換基としては、例えば、以下の置換基群Wに例示したものが挙げられる。
(置換基群W)
フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルケニル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、フェニル基、メシチル基、トリル基、ナフチル基、シアノ基、アセチルオキシ基、炭素数2〜9のアルキルカルボキシル基、スルホン酸アミド基、炭素数2〜9のスルホンアルキルアミド基、炭素数2〜9のアルキルカルボニル基、フェネチル基、ヒドロキシエチル基、アセチルアミド基、炭素数1〜4のアルキル基が結合してなるジアルキルアミノエチル基、トリフルオロメチル基、炭素数1〜8のトリアルキルシリル基、ニトロ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、ビニル基。
これらの内、R、R101、R102が有する置換基としては、炭素数2〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルコキシル基、シアノ基、アセチルオキシ基、炭素数2〜8のアルキルカルボキシル基、スルホン酸アミド基、炭素数2〜8のスルホンアルキルアミド基が好ましい。
また、隣接するR同士、或いはR101とR102が結合して形成される環が有する置換基としては、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、シリル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホン酸アミド基などが挙げられる。
なお、一般式(I)で表される化合物において、そのカチオン部分における3つのベンゼン環は、いずれも−NR2、−R101および−R102以外の基で置換されていてもよい。つまり、本発明の効果を損なわない範囲で、一般式(I)中に明記した以外の置換基を有していてもよい。
このような置換基としては、例えばハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルコキシ基、シアノ基などが挙げられる。
これらアルキル基及びアルコキシ基が有しうる置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜9のアシル基、炭素数2〜9のアルコキシカルボニル基、シアノ基、上記いずれかの基で置換されていてもよいフェニル基、及び上記いずれかの基で置換されていてもよいナフチル基などが挙げられる。
なお、これらのベンゼン環において、トリアリールメチン構造の中央に位置する炭素原子との結合に対し、o−位にあまり嵩高い基が結合すると、後述するように分子の平面性が阻害され、化合物の色純度が低下する傾向がある。従って、o−位には置換基を有さないか、またはハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基で置換されていることが好ましい。
また、一般式(I)において、mは1〜4の整数を表す。mの値が大きいと、得られる化合物が緑色を帯びてくる傾向があるため、コントラストの点から好ましくはmは1または2であり、特に好ましくはm=2である。
一般式(I)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(I’)で表される化合物である。
(上記一般式(I’)において、Z、m、R、R
101およびR
102は、前記一般式(I)におけると同義である。
R
103およびR
104は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜8のアルキル基を表す。
なお、1分子中に複数の
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
一般式(I’)において、R103およびR104は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜8のアルキル基を表す。なおR103およびR104があまり嵩高い基であると、分子の平面性が阻害され、化合物の色調が変化するため、該化合物は色純度の高い青色を示さなくなる傾向がある。従って、R103およびR104が水素原子でない場合には、ハロゲン原子であるか、或いは炭素数1〜4程度のアルキル基であることが好ましい。すなわち、R103およびR104として、より好ましくは各々独立に、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基である。色純度及び耐熱性の点から特に好ましくは各々独立に、水素原子、塩素原子またはメチル基である。中でも、R103およびR104のうち少なくとも一方が水素原子以外である化合物は、耐熱性がより高いため好ましい。
なお、高い色純度と、高い耐熱性を併せもつ点から、R103およびR104のうち一方が水素原子であり、他方がそれ以外の基である化合物が特に好ましい。
一般式(I’)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(II)で表される化合物、または、下記一般式(IV)で表される化合物である。一般式(II)で表される化合物のうち、下記一般式(III)で表される化合物が特に好ましい。また一般式(IV)で表される化合物のうち、下記一般式(IV’)で表される化合物が特に好ましい。
(上記一般式(II)において、Mは2個の水素原子、Cu、Mg、Al、Ni、Co、Fe、Zn、Ge、Mn、Si、Ti、VまたはSnを表し、各金属原子には、酸素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基またはアリールオキシ基が配位していてもよい。
式中の−SO
3 −基は、フタロシアニン骨格におけるベンゼン環を構成するいずれかの炭素原子に結合している。これら4つのベンゼン環を構成する炭素原子のうち、−SO
3 −基が結合していない炭素原子は、任意の基で置換されていてもよい。
m、R、R
101〜R
104は一般式(I’)におけると同義であり、1分子中に複数の
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
(上記一般式(III)において、−SO
3 −基は、フタロシアニン骨格におけるベンゼン環を構成するいずれかの炭素原子に結合しており、該フタロシアニン骨格は−SO
3 −基以外に置換基を有さない。
m、M、R、R
103およびR
104は一般式(I’)におけると同義であり、1分子中に複数の
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
(上記一般式(IV)において、アントラキノン骨格が有する置換基のうち、
R
31は水素原子、または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
R
32、R
33、R
34は、各々独立に、水素原子、水酸基、−NHR
41(R
41はR
31と同義である。)、−SO
3 −、ハロゲン原子、−CO
2R
42(R
42は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)のいずれかであるが、R
32〜R
34のうち、少なくとも一つは−NHR
41基である。
R
35、R
36、R
37、R
38は、各々独立に、水素原子、−SO
3 −、ハロゲン原子、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、炭素数1〜12のアルコキシル基、−CO
2R
43、フェニル基、−SO
3R
44、または−SO
2NHR
45(但し、R
43〜R
45は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を表す。
なお、1つのアントラキノン骨格中に、−SO
3 −基はm個結合している。
m、R、R
101〜R
104は一般式(I’)におけると同義であり、1分子中に複数の
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
(上記一般式(IV’)において、m、R、R
31〜R
38、R
103およびR
104は前記一般式(IV)におけると同義であり、1分子中に複数の
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
一般式(II),(III)において、Mは2個の水素原子、Cu、Mg、Al、Ni、Co、Fe、Zn、Ge、Mn、Si、Ti、VまたはSnを表し、各金属原子には、酸素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基またはアリールオキシ基が配位していてもよい。Mは、好ましくは2個の水素原子、Cu、AlCl、AlOH、NiまたはCoであり、中でも、青色表示部材のコントラスト向上の点から、より好ましくはCuである。
前記一般式(II)における−SO3 −基は、フタロシアニン骨格におけるベンゼン環を構成するいずれかの炭素原子に結合している。これら4つのベンゼン環を構成する炭素原子のうち、−SO3 −基が結合していない炭素原子は、任意の基で置換されていてもよい。
この「任意の基」の例としては、Rがアルキル基またはフェニル基である場合に有していてもよい置換基として例示した前記置換基群Wが挙げられ、好ましい基も前述したものと同様である。
なお、フタロシアニン骨格における各ベンゼン環は、無置換であるか、−SO3 −基以外に置換基を有さない場合が特に好ましい。
前記一般式(IV)および(IV’)において、アントラキノン骨格が有する置換基のうち、R31は水素原子、または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。該置換基は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はないが、カチオン色素の色相を補助する役割も担っており、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、−SO3 −、ベンジル基または−NHCOR40(R40は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)である。R31としてより好ましくは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、−SO3 −、または−NHCOR40である。
また、R32、R33、R34は、各々独立に、水素原子、水酸基、−NHR41(R41はR31と同義である。)、−SO3 −、ハロゲン原子、−CO2R42(R42は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)のいずれかであり、R32〜R34のうち、少なくとも一つは−NHR41基を表すが、カチオン色素の色相を補助する役割も担っていることから、好ましくは水素原子、水酸基または−NHR41である。
また、R35、R36、R37、R38は、各々独立に、水素原子、−SO3 −、ハロゲン原子、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、炭素数1〜12のアルコキシル基、−CO2R43、フェニル基、−SO3R44、または−SO2NHR45(但し、R43〜R45は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を表すが、カチオン色素の色相を補助する役割も担っていることから、好ましくは水素原子または−SO3 −である。
なお、前記一般式(I)〜(IV’)および後述する一般式(V)〜(VII)のいずれかで表される化合物の中で、前記一般式(III)または(IV’)で表される化合物、すなわちトリアリールメチン構造におけるベンゼン環の一つがナフタレン環である化合物の場合に、R103およびR104のうち少なくとも一方に、水素原子以外の基を有することによる耐熱性向上効果が、特に顕著に顕れる。
前記一般式(I)で表される化合物は、例えばJ.Chem.Soc.,PerkinTrans.1998,2,297.、WO2006/120205号公報に記載の方法に準じて合成することができる。なお、前記一般式(I)で表される化合物は、その製造プロセスより、必然的にmの値が異なる複数種の化合物の混合物として得られる。本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物においては、前記一般式(I)で表される化合物は、混合物のまま使用しても、単離した単一化合物を使用してもよい。混合物の場合、前述した「好ましい」mの値を満たす化合物が、最も大きな割合を占める混合物であることが好ましい。
前記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、本発明はその主旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。なお、以下の例示において、C6H5−はフェニル基であり、TSはトシル基を示す。
その他、一般式(I)で表される化合物のうち、一般式(IV),(IV’)で表される化合物として、次のようなものも挙げられる。
本発明の第1態様に係るカラーフィルター用着色樹脂組成物は、前記一般式(I)で表される化合物を、好ましくは全固形分中1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%溶解させてなる組成物である。
この範囲よりも一般式(I)で表される化合物の含有量が多いと塗膜の硬化性が低下し、膜強度が不充分になる可能性があり、少ないと着色力が不充分となり、充分な濃度の色度が得られないか、膜厚が厚くなりすぎる場合がある。
なお、前記一般式(I)で表される化合物の、着色樹脂組成物(特に該組成物中に含まれる溶剤)への溶解性が低い場合には、後述する任意成分である顔料と同様に、分散剤などを使用して組成物中へ分散させて使用してもよい。しかし、液晶表示装置に適用した場合のコントラストの高さ等の点からは、前記一般式(I)で表される化合物は、着色樹脂組成物中に溶解した状態で存在することが好ましい。
なお、本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物中には、(c)色材として、一般式(I)で表される化合物の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよく、更に他の色材の1種または2種以上が含まれていてもよいが、本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物中の全(c)色材の含有割合は、1〜30重量%であることが好ましい。
<第2の態様に係る(c)色材>
本発明の第2の態様に係る(c)色材は、下記一般式(V)で表される化合物を含有するものであり、耐光性、耐熱性がいずれも特に良好な画素を形成し得るカラーフィルター用着色樹脂組成物を提供する。
(上記一般式(V)において、Zはアントラキノン骨格またはフタロシアニン骨格を有するm価のアニオンを表す。mは1〜4の整数を表す。
Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基を表すか、或いは隣接するR同士が結合して環を形成する。該環は置換基を有していてもよい。それぞれのRは同一でも異なっていてもよい。
R
201は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、ベンジル基、置換基を有していてもよいフェニル基、または置換基を有していてもよいナフチル基を表す。
R
202は置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
R
203、R
204、R
205、R
206は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、フッ素原子、置換基を有していてもよいフェニル基、−CO
2R
46、−SO
3R
47、または−SO
2NHR
48(但し、R
46〜R
48は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を表す。
また上記一般式(V)のカチオン部分における2つのベンゼン環は、いずれも−NR
2以外の基で置換されていてもよい。
なお、1分子中に複数の
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
一般式(V)におけるRは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基を表すか、或いは隣接するRが結合して環を形成する。一般式(V)において、複数あるRは同一であっても異なるものであってもよい。従って、−NRR基は左右対称であっても、左右非対称であってもよい。
隣接するRが結合して環形成する場合、これらはヘテロ原子で架橋された環であってもよい。この環の具体例として、例えば以下のものが挙げられる。これらの環は置換基を有していてもよい。
化学的安定性の点から、Rとして好ましくは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基であるか、或いは隣接するRが結合して環を形成する場合であり、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基である。
R201は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、ベンジル基、置換基を有していてもよいフェニル基、または置換基を有していてもよいナフチル基を表すが、(b)溶剤への溶解性が高まることにより、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、またはベンジル基である。
R202は置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表すが、トリアリールメチン構造の中心にあるsp2炭素を主体的に保護する役割を果たすことから、好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基、または置換基を有していてもよいナフチル基である。
R203、R204、R205、R206は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、フッ素原子、置換基を有していてもよいフェニル基、−CO2R46、−SO3R47、または−SO2NHR48(但し、R46〜R48は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を表すが、(b)溶剤への溶解性が向上することより、好ましくは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基、またはフッ素原子である。
R、R201、R203〜R206が、各々独立に、アルキル基またはフェニル基である場合、並びにR202がアルキル基、フェニル基またはナフチル基である場合、これらの基は更に置換基を有していてもよい。また、隣接するR同士が結合して形成される環についても置換基を有していてもよい。
該置換基としては、例えば、以下の置換基群Wに例示したものが挙げられる。
(置換基群W)
フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、フェニル基、メシチル基、トリル基、ナフチル基、シアノ基、アセチルオキシ基、アルキルカルボキシル基、スルホン酸アミド基、スルホンアルキルアミド基、アルキルカルボニル基、フェネチル基、ヒドロキシエチル基、アセチルアミド基、ジアルキルアミノエチル基、トリフルオロメチル基、トリアルキルシリル基、ニトロ基、アルキルチオ基、ビニル基。
これらの内、R、R201、R202が有する置換基としては、(b)溶剤への溶解性が向上することから、炭素数1〜8のアルキル基、トリフロオロメチル基、または炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、R203〜R206が有する置換基としては、(b)溶剤への溶解性が向上することから、炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。また、隣接するR同士が結合して形成される環が有する置換基としては、好ましくはアルキル基、アルコキシル基、シリル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホン酸アミド基などが挙げられる。
なお、一般式(V)で表される化合物において、そのカチオン部分における2つのベンゼン環は、いずれも−NR2以外の基で置換されていてもよい。つまり、本発明の効果を損なわない範囲で、一般式(V)中に明記した以外の置換基を有していてもよい。
このような置換基としては、例えばハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基などが挙げられる。
なお、これらのベンゼン環において、トリアリールメチン構造の中央に位置する炭素原子との結合に対し、o−位にあまり嵩高い基が結合すると、後述するように分子の平面性が阻害され、化合物の色純度が低下する傾向がある。従って、o−位には置換基を有さないか、またはハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基などで置換されていることが好ましい。
また、一般式(V)において、mは1〜4の整数を表す。mの値が大きいと、得られる化合物が緑色を帯びてくる傾向があるため、コントラストの点から好ましくはmは1または2であり、特に好ましくはm=2である。
一般式(V)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(V’)で表される化合物である。
(上記一般式(V’)において、Z、m、R、R
201〜R
206は、いずれも前記一般式(V)におけると同義である。
R
207およびR
208は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜8のアルキル基を表す。
なお、1分子中に複数の
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
一般式(V’)におけるR207およびR208としては、前記一般式(I’)におけるR103およびR104として挙げた基と同様の基が挙げられる。好ましい基と、該基が好ましい理由も前述と同様である。
一般式(V’)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(VI)で表される化合物、または下記一般式(VII)で表される化合物である。
(上記一般式(VI)において、Mは2個の水素原子、Cu、Mg、Al、Ni、Co、Fe、Zn、Ge、Mn、Si、Ti、VまたはSnを表し、各金属原子には、酸素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基またはアリールオキシ基が配位していてもよい。
式中の−SO
3 −基は、フタロシアニン骨格におけるベンゼン環を構成するいずれかの炭素原子に結合している。これら4つのベンゼン環を構成する炭素原子のうち、−SO
3 −基が結合していない炭素原子は、任意の基で置換されていてもよい。
m、R、R
201、R
202、R
207、R
208は一般式(V’)におけると同義であり、1分子中に複数の
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
(上記一般式(VII)において、アントラキノン骨格が有する置換基のうち、
R
31は水素原子、または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
R
32、R
33、R
34は、各々独立に、水素原子、水酸基、−NHR
41(R
41はR
31と同義である。)、−SO
3 −、ハロゲン原子、−CO
2R
42(R
42は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)のいずれかであるが、R
32〜R
34のうち、少なくとも一つは−NHR
41基である。
R
35、R
36、R
37、R
38は、各々独立に、水素原子、−SO
3 −、ハロゲン原子、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、炭素数1〜12のアルコキシル基、−CO
2R
43、フェニル基、−SO
3R
44、または−SO
2NHR
45(但し、R
43〜R
45は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を表す。
なお、1つのアントラキノン骨格中に、−SO
3 −基はm個結合している。
m、R、R
201、R
202、R
207、R
208は一般式(V’)におけると同義であり、1分子中に複数の
が含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。)
一般式(VI)において、Mは2個の水素原子、Cu、Mg、Al、Ni、Co、Fe、Zn、Ge、Mn、Si、Ti、VまたはSnを表し、各金属原子には、酸素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基またはアリールオキシ基が配位していてもよい。Mは、好ましくは2個の水素原子、Cu、AlCl、AlOH、NiまたはCoであり、中でも、青色表示部材のコントラスト向上の点から、好ましくはCuである。
前記一般式(VI)における−SO3 −基は、フタロシアニン骨格におけるベンゼン環を構成するいずれかの炭素原子に結合している。これら4つのベンゼン環を構成する炭素原子のうち、−SO3 −基が結合していない炭素原子は、任意の基で置換されていてもよい。
この「任意の基」の例としては、Rがアルキル基またはフェニル基である場合に有していてもよい置換基として例示した前記置換基群Wが挙げられ、好ましい基も前述したものと同様である。なお、フタロシアニン骨格における各ベンゼン環は、無置換であるか、−SO3 −基以外に置換基を有さない場合が特に好ましい。
前記一般式(VII)において、アントラキノン骨格が有する置換基のうち、R31は水素原子、または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。該置換基は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はないが、カチオン色素の色相を補助する役割も担っており、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、−SO3 −、ベンジル基または−NHCOR40(R40は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)である。R31としてより好ましくは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、−SO3 −、または−NHCOR40である。
また、R32、R33、R34は、各々独立に、水素原子、水酸基、−NHR41(R41はR31と同義である。)、−SO3 −、ハロゲン原子、−CO2R42(R42は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)のいずれかであり、R32〜R34のうち、少なくとも一つは−NHR41基を表すが、カチオン色素の色相を補助する役割も担っていることから、好ましくは水素原子、水酸基または−NHR41である。
また、R35、R36、R37、R38は、各々独立に、水素原子、−SO3 −、ハロゲン原子、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、炭素数1〜12のアルコキシル基、−CO2R43、フェニル基、−SO3R44、または−SO2NHR45(但し、R43〜R45は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を表すが、カチオン色素の色相を補助する役割も担っていることから、好ましくは水素原子または−SO3 −である。
前記一般式(V)で表される化合物は、例えばJ.Chem.Soc.,PerkinTrans.1998,2,297.、WO2006/120205号公報に記載の方法に準じて合成することができる。なお、前記一般式(V)で表される化合物は、その製造プロセスより、必然的にmの値が異なる複数種の化合物の混合物として得られる。本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物においては、前記一般式(V)で表される化合物は、混合物のまま使用しても、単離した単一化合物を使用してもよい。混合物の場合、前述した「好ましい」mの値を満たす化合物が、最も大きな割合を占める混合物であることが好ましい。
前記一般式(V)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、本発明はその主旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。なお、以下の例示において、C6H5−、Ph−はフェニル基であり、TSはトシル基を示す。
その他、一般式(V)で表される化合物のうち、一般式(VII)で表される化合物として、次のようなものも挙げられる。
本発明の第2態様に係るカラーフィルター用着色樹脂組成物は、前記一般式(V)で表される化合物を、好ましくは全固形分中1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%溶解させてなる組成物である。
この範囲よりも一般式(V)で表される化合物の含有量が多いと塗膜の硬化性が低下し、膜強度が不充分になる可能性があり、少ないと着色力が不充分となり、充分な濃度の色度が得られないか、膜厚が厚くなりすぎる場合がある。
なお、前記一般式(V)で表される化合物の、着色樹脂組成物(特に該組成物中に含まれる溶剤)への溶解性が低い場合には、後述する任意成分である顔料と同様に、分散剤などを使用して組成物中へ分散させて使用してもよい。しかし、液晶表示装置に適用した場合のコントラストの高さ等の点からは、前記一般式(V)で表される化合物は、着色樹脂組成物中に溶解した状態で存在することが好ましい。
なお、本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物中には、(c)色材として、一般式(V)で表される化合物の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよく、更に他の色材の1種または2種以上が含まれていてもよいが、本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物中の全(c)色材の含有割合は、1〜30重量%であることが好ましい。
<第3の態様に係る(c)色材>
本発明の第3の態様に係る(c)色材は、カチオン系青色色素(色素1)とアニオン系色素(色素2)からなる化合物(色素1−色素2化合物)を含有し、この色素1−色素2化合物における色素1および色素2が以下の(イ)または(ロ)を満たすものであり、耐光性の高い画素を形成し得るカラーフィルター用着色樹脂組成物を提供する。
なお、色素1と色素2とからなる化合物の形態はカチオン系化合物である色素1とアニオン系化合物である色素2からなる塩である。また、色素1−色素2化合物を構成する色素1および色素2の数には特に制限はない。
(イ)色素2が偶数電子系化合物であり、時間依存密度汎関数(B3LYP/6-31G(d,p))計算により得られる、色素1の最低一重項起状態(S1状態)の励起エネルギー(ΔES1(色素1))と、色素2の最低一重項励起状態(S1状態)の励起エネルギー(ΔES1(色素2))が下記式(i)を満たし、かつ色素2の最低三重項励起状態(T1状態)の励起エネルギー(ΔET1(色素2))が下記式(ii)を満たす。
(ロ)色素2が奇数電子系化合物であり、時間依存密度汎関数(B3LYP/6-31G(d,p))計算により得られる、色素1の最低一重項起状態(S1状態)の励起エネルギー(ΔES1(色素1))と、色素2のエネルギー的に最も低い励起状態の励起エネルギー(ΔElowest(色素2))が、下記式(iii)を満たす。
このような関係を満たす色素1および色素2を選択することにより、得られる色素1−色素2化合物は、色素1の光励起に伴う活性酸素の発生を抑制し、光酸化反応による分解を制御出来るため、好ましい。また、色素1と色素2からなる化合物においては、色素1と色素2の間での分子間相互作用が充分に働く。従って、このような色素1−色素2化合物ではない単独色素化合物、もしくは色素1に相当する化合物と色素2に相当する化合物との混合物では得られなかった、高い耐光性や、独自の色彩を達成することも可能となる。
なお本発明において、色素のエネルギー準位は、分子構造の構造最適を行った後、B3LYP/6−31G、TDDF計算により求めることができる。
この第3の態様における関係を満たす組み合わせの色素よりなる化合物で、このような効果が得られることの理由の詳細は明らかではないが、次のように推定される。
式(i)満たすことにより、カチオンの光吸収による最低一重項励起状態(S1状態)の励起エネルギーがアニオンに効率よくエネルギー移動し、カチオンの一重項励起状態から三重項への緩和を経由して起こる基底状態の酸素へのエネルギー移動のパスを潰す効果がある。その結果、カチオンの励起状態からのエネルギー移動による、一重項酸素(1Δg状態の酸素)の生成が抑制される点で好ましい。
計算によるアニオンの最低三重項励起状態(T1状態)への励起エネルギーが式(ii)を満たすことは、アニオンのT1状態が酸素の1Δg状態への励起エネルギーより小さいことに対応しており、アニオンの最低三重項励起状態からの基底状態の酸素へのエネルギー移動が起こらないことになり、一重項酸素(1Δg状態の酸素)の生成が抑制される点で好ましい。
また、アニオンが奇数電子系の場合、式(iii)を満たすことはカチオンの光吸収による最低一重項励起状態(S1状態)の励起エネルギーがアニオンに効率よくエネルギー移動し、カチオンの一重項励起状態から三重項への緩和を経由して起こる基底状態の酸素へのエネルギー移動のパスを潰す効果がある。さらにアニオンが奇数電子系なので最低励起状態は三重項にはならないため、三重項状態である酸素の基底状態とは相互作用が大きくならずアニオンの励起状態から基底状態酸素へのエネルギー移動の確率は小さく、一重項酸素(1Δg状態の酸素)の生成が抑制される点で好ましい。
系中の一重項酸素(1Δg状態の酸素)は活性酸素の一種であり、色素1−色素2化合物を攻撃し結果的に色素1−色素2化合物が破壊されると考えられるが、本発明では色素1−色素2化合物の構造を工夫することにより、一重項酸素(1Δg状態の酸素)の発生を防ぎ、組成物の耐光性を向上させた。
なお、式(i)におけるΔES1(色素1)とΔES1(色素2)の差、および式(iii)におけるΔES1(色素1)とΔElowest(色素2)の差は、各々、0.2eV程度以上であることが好ましい。
上記色素1としては、骨格内にカチオン部位を有するか、もしくは置換基としてカチオン性置換基を有する、カチオン性色素が好ましい。
また、色素2としては、アニオン性置換基を有するアニオン性色素が好ましい。
なお、本発明において、カチオン性色素とは、分子全体が正に荷電している色素を意味し、アニオン性色素とは、分子全体が負に荷電している色素を意味する。
カチオン性色素としては、カチオンが分子全体に非局在化しやすいπ共役系の構造を有しており、かつ可視広域に吸収をもち、分子吸光度がアニオン色素に比べて大きい方が好ましい。
また、このようなカチオン性色素と塩を形成するアニオン性色素としては、カチオン性色素のLUMOよりも低いLUMOを有し、かつ、カチオン性色素の一重項エネルギーのバンドギャップより、狭いバンドギャップを有するものを組み合わせることが好ましい。なお、カチオン色素よりも長波長領域に吸収を有し、スルホ基などの酸性度の高い置換基を有するアニオン色素であることが望ましい。
より具体的には、カチオン性色素としては、例えばポリエン系、ポリメチン系、トリアリールメチン系、キサンテン系など骨格内にカチオンを有するものや、アンモニウムカチオンを置換基として有するアントラキノン系、インジゴ系、フタロシアニン系、アゾ系などの中性色素が挙げられる。中でも分子吸光度の大きさから、骨格内にカチオンを有するものが好ましく、溶解性の観点から放射状の分子構造をしている化合物が好ましい。具体的には、トリアリールメチン系色素がより好ましい。
またアニオン性色素としては、カルボン酸、リン酸、スルホン酸などの酸性度の高い酸性基を有し、分子全体として、アニオン性を有するアゾ系、キノリン系、キサンテン系、フタロシアニン系、アントラキノン系、インジゴ系、トリアリールメチン系、金属錯体系などの色素が挙げられる。中でも励起状態における三重項励起エネルギー準位が小さい点から、好ましくはフタロシアニン系(フタロシアニン骨格を有する)色素、またはアントラキノン系(アントラキノン骨格を有する)色素が挙げられる。
Cuなどとの金属錯体化が容易である点からは、より好ましくは酸性基を有するフタロシアニン系色素である。溶解性が高く、化学修飾が可能である点からは、より好ましくはアントラキノン系色素である。
なお、上述の説明から分かるように、同じ骨格でも有する置換基によってカチオン性またはアニオン性とすることができる。
本発明における、色素1および色素2からなる色素1−色素2化合物として、特に好ましくは、前記一般式(I)で表される化合物または前記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
なお、前記一般式(I)で表される化合物のうち、より好ましくは前記一般式(I’)で表される化合物であり、更に好ましくは前記一般式(II)または(IV)で表される化合物である。前記一般式(II)で表される化合物のうち、特に好ましくは前記一般式(III)で表される化合物である。前記一般式(IV)で表される化合物のうち、特に好ましくは前記一般式(IV’)で表される化合物である。
また、前記一般式(V)で表される化合物のうち、より好ましくは前記一般式(V’)で表される化合物であり、特に好ましくは前記一般式(VI)または(VII)で表される化合物である。
この場合、本発明のカラーフィルター用着色樹脂組成物中には、(c)色材として、一般式(I)または(V)で表される化合物の1種のみが含まれていてもよく、一般式(I)で表される化合物の1種または2種以上と一般式(V)で表される化合物の1種または2種以上が含まれていてもよく、更に他の色材の1種または2種以上が含まれていてもよい。
[(a)バインダー樹脂]
(a)バインダー樹脂としては、前述したように、どのような手段により硬化する着色樹脂組成物とするかにより、好ましい樹脂は異なる。
本発明の着色樹脂組成物が光重合性樹脂組成物である場合、(a)バインダー樹脂としては、例えば特開平7−207211号、特開平8−259876号、特開平10−300922号、特開平11−140144号、特開平11−174224号、特開2000−56118号、特開2003−233179号などの各公報等に記載される公知の高分子化合物を使用することができるが、好ましくは以下の(a−1)〜(a−5)の樹脂などが挙げられる。
(a−1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる、アルカリ可溶性樹脂(以下「樹脂(a−1)と称す場合がある。)
(a−2):カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂(a−2)(以下「樹脂(a−2)と称す場合がある。)
(a−3):前記樹脂(a−2)のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂(以下「樹脂(a−3)と称す場合がある。)
(a−4):(メタ)アクリル系樹脂(以下「樹脂(a−4)と称す場合がある。)
(a−5):カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂(以下「樹脂(a−5)と称す場合がある。)
以下、これら各樹脂について説明する。
(a−1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂
この樹脂(a−1)の特に好ましい樹脂の一つとして、エポキシ基含有(メタ)アクリレート5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体10〜95モル%との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の10〜100モル%に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
そのエポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が例示できる。中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのエポキシ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと共重合させる他のラジカル重合性単量体としては、下記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
式(1)中、R1〜R6は各々独立して、水素原子、または炭素数1〜3のアルキル基を示し、R7およびR8は各々独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、または連結して環を形成していてもよい。
式(1)において、R7とR8が連結して形成される環は、脂肪族環であるのが好ましく、飽和または不飽和の何れでもよく、又、炭素数が5〜6であるのが好ましい。
中でも、一般式(1)で表される構造としては、下記式(1a)、(1b)、または(1c)で表される構造が好ましい。
バインダー樹脂にこれらの構造を導入することによって、本発明の着色樹脂組成物をカラーフィルターや液晶表示素子に使用する場合に、該着色樹脂組成物の耐熱性を向上させたり、該着色樹脂組成物を用いて形成された画素の強度を増すことが可能である。
尚、一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
バインダー樹脂にこれらの構造を導入することによって、本発明の着色樹脂組成物をカラーフィルターや液晶表示素子に使用する場合に、該着色樹脂組成物の耐熱性を向上させたり、該着色樹脂組成物を用いて形成された画素の強度を増すことが可能である。
尚、一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、当該構造を有する限り公知の各種のものが使用できるが、特に下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
式(2)中、R9は水素原子またはメチル基を示し、R10は前記一般式(1)の構造を示す。
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体において、前記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートに由来す
る繰返し単位は、「他のラジカル重合性単量体」に由来する繰返し単位中、5〜90モル%含有するものが好ましく、10〜70モル%含有するものが更に好ましく、15〜50モル%含有するものが特に好ましい。
尚、前記一般式(1)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレート以外の、「他のラジカル重合性単量体」としては、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、スチレン、スチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル誘導体等のビニル芳香族類;ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、
(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸−1,1,1−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−iso−プロピルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド類;(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロイルニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル等のビニル化合物類;シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等のモノマレイミド類;N−(メタ)アクリロイルフタルイミド等が挙げられる。
これら「他のラジカル重合性単量体」の中で、着色樹脂組成物に優れた耐熱性および強度を付与させるためには、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、およびモノマレイミドから選択された少なくとも1種を使用することが有効である。特に「他のラジカル重合性単量体」に由来する繰返し単位中、これらスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、およびモノマレイミドから選択された少なくとも1種に由来する繰返し単位の含有割合が、1〜70モル%であるものが好ましく、3〜50モル%であるものが更に好ましい。
尚、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、前記他のラジカル重合性単量体との共重合反応には、公知の溶液重合法が適用される。使用する溶剤はラジカル重合に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機溶剤を使用することができる。
その溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等の酢酸エステル類;エチレングリコールジアルキルエーテル類;メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、オクタン、デカン等の炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの溶剤の使用量は得られる共重合体100重量部に対し、通常30〜1000重量部、好ましくは50〜800重量部である。溶剤の使用量がこの範囲外では共重合体の分子量の制御が困難となる。
又、共重合反応に使用されるラジカル重合開始剤は、ラジカル重合を開始できるものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機過酸化物触媒やアゾ化合物触媒を使用することができる。
その有機過酸化物触媒としては、公知のケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートに分類されるものが挙げられる。その具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシル−3,3−イソプロピルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
また、アゾ化合物触媒としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミド等が挙げられる。
これらの中から、重合温度に応じて、適当な半減期のラジカル重合開始剤の1種または2種以上使用される。
ラジカル重合開始剤の使用量は、共重合反応に使用される単量体の合計100重量部に対して、通常0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。
共重合反応は、共重合反応に使用される単量体およびラジカル重合開始剤を溶剤に溶解し、攪拌しながら昇温して行ってもよいし、ラジカル重合開始剤を添加した単量体を、昇温、攪拌した溶剤中に滴下して行ってもよい。また、溶剤中にラジカル重合開始剤を添加して昇温した中に単量体を滴下して行ってもよい。
反応条件は目標とする分子量に応じて自由に変えることができる。
本発明において、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと前記他のラジカル重合性単量体との共重合体としては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体に由来する繰返し単位10〜95モル%と、からなるものが好ましく、前者20〜80モル%と、後者80〜20モル%とからなるものが更に好ましく、前者30〜70モル%と、後者70〜30モル%とからなるものが特に好ましい。
共重合体中のエポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位が少なすぎると、後述する重合性成分およびアルカリ可溶性成分の付加量が不十分となるおそれがあり、一方、エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位が多すぎて、他のラジカル重合性単量体に由来する繰返し単位が少なすぎると、耐熱性や強度が不十分となる可能性がある。
続いて、エポキシ樹脂含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体のエポキシ基部分に、不飽和一塩基酸(重合性成分)と、更に多塩基酸無水物(アルカリ可溶性成分)とを反応させる。
ここで、エポキシ基に付加させる不飽和一塩基酸としては、公知のものを使用することができ、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。
具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、α−位がハロアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基などで置換された(メタ)アクリル酸等のモノカルボン酸等が挙げられる。中でも好ましくは(メタ)アクリル酸である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダー樹脂に重合性を付与することができる。
これらの不飽和一塩基酸は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%に付加させる。不飽和一塩基酸の付加割合が少なすぎると、着色樹脂組成物の経時安定性等に関して、残存エポキシ基による悪影響が懸念される。尚、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
更に、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させたときに生じる水酸基に付加させる多塩基酸無水物としては、公知のものが使用できる。
例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の三塩基以上の酸の無水物が挙げられる。中でも、テトラヒドロ無水フタル酸、および/または無水コハク酸が好ましい。これらの多塩基酸無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダー樹脂にアルカリ可溶性を付与することができる。
これらの多塩基酸無水物は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基に、不飽和一塩基酸を付加させることにより生じる水酸基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは20〜90モル%、より好ましくは30〜80モル%に付加させる。この付加割合が多すぎると、現像時の残膜率が低下するおそれがあり、少なすぎると溶解性が不十分となる可能性がある。尚、当該水酸基に多塩基酸無水物を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
更に、光感度を向上させるために、前述の多塩基酸無水物を付加させた後、生成したカルボキシル基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートや重合性不飽和基を有するグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。
また、現像性を向上させるために、生成したカルボキシル基の一部に、重合性不飽和基を有さないグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。
また、この両方を付加させてもよい。
重合性不飽和基を有さないグリシジルエーテル化合物の具体例としては、フェニル基やアルキル基を有するグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。市販品として、例えば、ナガセ化成工業社製の商品名「デナコールEX−111」、「デナコールEX−121」、「デナコールEX−141」、「デナコールEX−145」、「デナコールEX−146」、「デナコールEX−171」、「デナコールEX−192」等がある。
尚、このような樹脂の構造に関しては、例えば特開平8−297366号公報や特開2001−89533号公報に記載されている。
上述のバインダー樹脂(a−1)の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3000〜100000が好ましく、5000〜50000が特に好ましい。分子量が3000未満であると、耐熱性や膜強度に劣る可能性があり、100000を超えると現像液に対する溶解性が不足する傾向がある。また、分子量分布の目安として、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は、2.0〜5.0が好ましい。
なお、バインダー樹脂(a−1)の酸価は、通常10〜200mg−KOH/g、好ましくは15〜150mg−KOH/g、更に好ましくは25〜100mg−KOH/gである。酸価が低くなりすぎると、現像液に対する溶解性が低下する場合がある。逆に、高すぎると、膜荒れが生じることがある。
(a−2):カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂
カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基を有していれば特に限定されず、通常、カルボキシル基を含有する重合性単量体を重合して得られる。
カルボキシル基含有重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフタル酸等のビニル系単量体;アクリル酸にε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類を付加させた単量体;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにコハク酸、マレイン酸、フタル酸、或いはそれらの無水物等の酸或いは無水物を付加させた単量体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも好ましいのは、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸であり、更に好ましいのは、(メタ)アクリル酸である。
また、カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂は、上記のカルボキシル基含有重合性単量体に、カルボキシル基を有さない他の重合性単量体を共重合させたものであってもよい。
この場合、他の重合性単量体としては、特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレンおよびその誘導体等のビニル芳香族類;N−ビニルピロリドン等のビニル化合物類;N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド等のN−置換マレイミド類;ポリメチル(メタ)アクリレートマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマー、ポリ2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートマクロモノマー、ポリエチレングリコールマクロモノマー、ポリプロピレングリコールマクロモノマー、ポリカプロラクトンマクロモノマー等のマクロモノマー類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、特に好ましいのは、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミドである。
カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂は、さらに水酸基を有していてもよい。水酸基含有単量体として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等を、上述の各種単量体と共重合させることにより、カルボキシル基および水酸基を有する樹脂(a−2)を得ることができる。
カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂(a−2)として、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸と、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルマレイミド等の水酸基を含まない重合性単量体と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体との共重合体;(メタ)アクリル酸と、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体;(メタ)アクリル酸とスチレンとの共重合体;(メタ)アクリル酸とスチレンとα−メチルスチレンとの共重合体;(メタ)アクリル酸とシクロヘキシルマレイミドとの共重合体等が挙げられる。
顔料分散性に優れる点からは、樹脂(a−2)としては特にベンジル(メタ)アクリレートを含む共重合体樹脂が好ましい。
本発明におけるカルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂の酸価は、通常30〜500KOH−mg/g、好ましくは40〜350KOH−mg/g、さらに好ましくは50〜300KOH−mg/gである。
また、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常2000〜80000、好ましくは3000〜50000、さらに好ましくは4000〜30000である。重量平均分子量が小さすぎると、着色樹脂組成物の安定性に劣る傾向があり、大きすぎると、後述するカラーフィルターや液晶表示装置に使用する場合に、現像液に対する溶解性が悪化する傾向がある。
(a−3):樹脂(a−2)のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂
樹脂(a−3)において、前記カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂(a−2)の、カルボキシル基部分に付加させるエポキシ基含有不飽和化合物としては、分子内にエチレン性不飽和基およびエポキシ基を有するものであれば特に限定されるものではない。
このエポキシ基含有不飽和化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジル−α−エチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、N−(3,5−ジメチル−4−グリシジル)ベンジルアクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等の非環式エポキシ基含有不飽和化合物を挙げることができるが、耐熱性や、後述する顔料の分散性の観点から、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物が好ましい。
ここで、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては、その脂環式エポキシ基として、例えば、2,3−エポキシシクロペンチル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、7,8−エポキシ〔トリシクロ[5.2.1.0]デシ−2−イル〕基等が挙げられる。また、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基に由来するものが好ましく、好適な脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては、下記一般式(3a)〜(3m)で表される化合物が挙げられる。
式(3a)〜(3m)中、R11は水素原子またはメチル基を、R12はアルキレン基を、R13は2価の炭化水素基をそれぞれ示し、nは1〜10の整数である。
一般式(3a)〜(3m)における、R12のアルキレン基は、炭素数1〜10であるものが好ましい。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示できるが、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基である。また、R13の炭化水素基としては、炭素数が1〜10であるものが好ましく、アルキレン基、フェニレン基等が挙げられる。
これらの脂環式エポキシ基含有不飽和化合物は、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、一般式(3c)で表される化合物が好ましく、3,4−エポキシシクロヘキシル
メチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
前記樹脂(a−2)のカルボキシル基部分に、上記エポキシ基含有不飽和化合物を付加させるには、公知の手法を用いることができる。例えば、樹脂(a−2)とエポキシ基含有不飽和化合物とを、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン等の3級アミン;ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;ピリジン、トリフェニルホスフィン等の触媒の存在下、有機溶剤中、反応温度50〜150℃で数時間〜数十時間反応させることにより、樹脂(a−2)のカルボキシル基にエポキシ基含有不飽和化合物を導入することができる。
樹脂(a−2)にエポキシ基含有不飽和化合物を導入したカルボキシル基含有樹脂(a−3)の酸価は、通常10〜200KOH−mg/g、好ましくは20〜150KOH−mg/g、より好ましくは30〜150KOH−mg/gである。
また、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常2000〜100000、好ましくは4000〜50000、更に好ましくは5000〜30000である。重量平均分子量が小さすぎると、着色樹脂組成物の安定性に劣る傾向があり、大きすぎると、後述するカラーフィルターや液晶表示装置に使用する場合に、現像液に対する溶解性が悪化する傾向がある。
(a−4):(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル系樹脂(a−4)は、下記一般式(4)で表される化合物を必須とする単量体成分を重合してなるポリマー(以下「樹脂(a−4)と称す場合がある。)である。
上記一般式(4)中、R1aおよびR2aは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
まず、一般式(4)で表される化合物について説明する。
一般式(4)で表されるエーテルダイマーにおいて、R1aおよびR2aで表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。なお、R1aおよびR2aは、同種の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
前記エーテルダイマーの具体例としては、例えば、ジメチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジメチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマーは、1種のみ単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
樹脂(a−4)を得る際の、単量体成分中における一般式(4)で表されるエーテルダイマーの割合は、特に制限されないが、全単量体成分中、通常2〜60重量%、好ましくは5〜55重量%、さらに好ましくは5〜50重量%である。このエーテルダイマーの量が多すぎると、重合の際、低分子量のものを得ることが困難になったり、あるいはゲル化し易くなったりするおそれがあり、一方、少なすぎると、透明性や耐熱性などの塗膜性能が不充分となるおそれがある。
樹脂(a−4)は、酸基を有することが好ましい。酸基を有することにより、得られる着色樹脂組成物が、酸基とエポキシ基が反応してエステル結合を形成する架橋反応(以下、酸−エポキシ硬化と略する)により硬化が可能な着色樹脂組成物、あるいは未硬化部をアルカリ現像液で顕像可能な組成物、とすることができる。前記酸基としては、特に制限されないが、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基等が挙げられる。樹脂(a−4)中のこれらの酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
樹脂(a−4)に酸基を導入するには、例えば、酸基を有するモノマーおよび/または「重合後に酸基を付与しうるモノマー」(以下「酸基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として使用すればよい。なお「重合後に酸基を付与しうるモノマー」を単量体成分として使用する場合には、重合後に、後述するような酸基を付与するための処理が必要となる。
前記酸基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;N−ヒドロキシフェニルマレイミド等のフェノール性水酸基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマー等が挙げられるが、これらの中でも特に、(メタ)アクリル酸が好ましい。
前記重合後に酸基を付与しうるモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー;2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。
これら酸基を導入するための単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂(a−4)を得る際の単量体成分が、前記酸基を導入するための単量体をも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常は全単量体成分中5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%である。
また樹脂(a−4)は、ラジカル重合性二重結合を有するものであってもよい。
前記樹脂(a−4)にラジカル重合性二重結合を導入するには、例えば「重合後にラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマー」(以下「ラジカル重合性二重結合を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合した後に、後述するようなラジカル重合性二重結合を付与するための処理を行えばよい。
重合後にラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するモノマー等が挙げられる。これらラジカル重合性二重結合を導入するための単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂(a−4)を得る際の単量体成分が、前記ラジカル重合性二重結合を導入するための単量体をも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常は全単量体成分中5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%である。
また、樹脂(a−4)は、エポキシ基を有することが好ましい。
エポキシ基を導入するには、例えば、エポキシ基を有するモノマー(以下「エポキシ基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合すればよい。
前記エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらエポキシ基を導入するための単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂(a−4)を得る際の単量体成分が、前記エポキシ基を導入するための単量体をも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常は全単量体成分中5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%であるのがよい。
樹脂(a−4)を得る際の単量体成分は、上記必須の単量体成分のほかに、必要に応じて、他の共重合可能なモノマーを含んでいてもよい。
他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸メチル2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類;ブタジエン、イソプレン等のブタジエンまたは置換ブタジエン化合物;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、アクリロニトリル等のエチレンまたは置換エチレン化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレンが、透明性が良好で、耐熱性を損ないにくい点で好ましい。これら共重合可能な他のモノマーは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
また、特に樹脂(a−4)の一部または全部を、後述するように分散剤として用いる場合は、(メタ)アクリル酸ベンジルを用いることが好ましく、その含有量は、通常全単量体成分中1〜70重量%、好ましくは5〜60重量%であるのがよい。
前記樹脂(a−4)を得る際の単量体成分が、前記共重合可能な他のモノマーをも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常全単量体成分中95重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましい。
なお、樹脂(a−4)は、例えば国際公開パンフレットWO2008/156148A1に記載の方法により製造することができる。
樹脂(a−4)の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくはGPCにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が2000〜200000、より好ましくは4000〜100000である。重量平均分子量が200000を超える場合、高粘度となりすぎ塗膜を形成しにくくなる場合があり、一方2000未満であると、十分な耐熱性を発現しにくくなる傾向がある。
また、樹脂(a−4)が酸基を有する場合、好ましい酸価は30〜500mg−KOH/g、より好ましくは50〜400mg−KOH/gである。酸価が30mg−KOH/g未満の場合、アルカリ現像に適用することが難しくなる場合があり、500mg−KOH/gを超える場合、高粘度となりすぎ塗膜を形成しにくくなる傾向がある。
尚、前記樹脂(a−4)の例としては、例えば、特開2004−300203号公報および特開2004−300204号公報に記載の化合物を挙げることが出来る。
(a−5):カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂
エポキシアクリレート樹脂(a−5)は、エポキシ樹脂にα,β−不飽和モノカルボン酸またはエステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸無水物を反応させることにより合成される。かかる反応生成物は化学構造上、実質的にエポキシ基を有さず、かつ「アクリレート」に限定されるものではないが、エポキシ樹脂が原料であり、かつ「アクリレート」が代表例であるので、慣用に従いこのように命名したものである。
原料となるエポキシ樹脂として、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、油化シェルエポキシ社製の「エピコート828」、「エピコート1001」、「エピコート1002」、「エピコート1004」等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「NER−1302」(エポキシ当量323,軟化点76℃))、ビスフェノールF型樹脂(例えば、油化シェルエポキシ社製の「エピコート807」、「EP−4001」、「EP−4002」、「EP−4004等」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「NER−7406」(エポキシ当量350,軟化点66℃))、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルグリシジルエーテル(例えば、油化シェルエポキシ社製の「YX−4000」)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN−201」、油化シェルエポキシ社製の「EP−152」、「EP−154」、ダウケミカル社製の「DEN−438」)、(o,m,p−)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EOCN−102S」、「EOCN−1020」、「EOCN−104S」)、トリグリシジルイソシアヌレート(例えば、日
産化学社製の「TEPIC」)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN−501」、「EPN−502」、「EPPN−503」)、フルオレンエポキシ樹脂(例えば、新日鐵化学社製のカルドエポキシ樹脂「ESF−300」)、脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製の「セロキサイド2021P」、「セロキサイドEHPE」)、ジシクロペンタジエンとフェノールの反応によるフェノール樹脂をグリシジル化したジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「XD−1000」、大日本インキ社製の「EXA−7200」、日本化薬社製の「NC−3000」、「NC−7300」)、および下記構造式で示されるエポキシ樹脂(特許第2878486号公報参照)、等を好適に用いることができる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂の他の例としては共重合型エポキシ樹脂が挙げられる。共重合型エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルメチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイドなど(以下「共重合型エポキシ樹脂の第1成分」と称す。)と、これら以外の1官能エチレン性不飽和基含有化合物(以下、「共重合型エポキシ樹脂の第2成分」と称す。)、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、α−メチルスチレン、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、下記一般式(8)で表される化合物から選ばれる1種または2種以上、とを反応させて得られた共重合体が挙げられる。
式(8)中、R61は水素原子またはエチル基を表し、R62は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、rは2〜10の整数である。
一般式(8)で表される化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、等のアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記共重合型エポキシ樹脂の第1成分の使用量は、上記共重合型エポキシ樹脂の第2成分に対して好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。
このような共重合型エポキシ樹脂としては、具体的には日本油脂社製の「CP−15」、「CP−30」、「CP−50」、「CP−20SA」、「CP−510SA」、「CP−50S」、「CP−50M」、「CP−20MA」等が例示される。
原料エポキシ樹脂の分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として、通常200〜20万、好ましくは300〜100000の範囲である。重量平均分子量が上記範囲未満であると被膜形成性に問題を生じる場合が多く、逆に、上記範囲を超えた樹脂ではα,β−不飽和モノカルボン酸の付加反応時にゲル化が起こりやすく製造が困難となるおそれがある。
エポキシ樹脂に付加させるα,β−不飽和モノカルボン酸としては、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、好ましくは、アクリル酸およびメタクリル酸であり、特にアクリル酸が反応性に富むため好ましい。
エポキシ樹脂に付加させるエステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとしては、アクリル酸−2−サクシノイルオキシエチル、アクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル、アクリル酸−2−フタロイルオキシエチル、アクリル酸−2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、メタクリル酸−2−サクシノイルオキシエチル、メタクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル、メタクリル酸−2−フタロイルオキシエチル、メタクリル酸−2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、クロトン酸−2−サクシノイルオキシエチル等が挙げられ、好ましくは、アクリル酸−2−マレイノイルオキシエチルおよびアクリル酸−2−フタロイルオキシエチルであり、特にアクリル酸−2−マレイノイルオキシエチルが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記α,β−不飽和モノカルボン酸またはそのエステルとエポキシ樹脂との付加反応は、公知の手法を用いることができ、例えば、エステル化触媒存在下、50〜150℃の温度で反応させることにより実施することができる。エステル化触媒としてはトリエチルアミン、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等の3級アミン;テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩等1種または2種以上を用いることができる。
α,β−不飽和モノカルボン酸またはそのエステルの使用量は、原料エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対し0.5〜1.2当量の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.1当量の範囲である。α,β−不飽和モノカルボン酸またはそのエステルの使用量が少ないと不飽和基の導入量が不足し、引き続く多塩基酸無水物との反応も不十分となる。また、多量のエポキシ基が残存することも有利ではない。一方、該使用量が多いとα,β−不飽和モノカルボン酸またはそのエステルが未反応物として残存する。いずれの場合も硬化特性が悪化する傾向が認められる。
α,β−不飽和カルボン酸またはそのエステルが付加したエポキシ樹脂に、更に付加させる多塩基酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、好ましくは、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、特に好ましい化合物は、無水テトラヒドロフタル酸およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多塩基酸無水物の付加反応に関しても公知の手法を用いることができ、α,β−不飽和カルボン酸またはそのエステルの付加反応と同様な条件下で継続反応させることにより実施することができる。
多塩基酸無水物の付加量は、生成するエポキシアクリレート樹脂(a−5)の酸価が10〜150mg−KOH/gの範囲となるような量が好ましく、更に20〜140mg−KOH/gの範囲が特に好ましい。樹脂(a−5)の酸価が小さすぎるとアルカリ現像性に乏しくなる場合があり、また、樹脂(a−5)の酸価が大きすぎると硬化性能に劣る傾向が認められる。
その他、カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂(a−5)としては、例えば特開平6−49174号公報記載のナフタレン含有樹脂;特開2003−89716、特開2003−165830、特開2005−325331、特開2001−354735号公報記載のフルオレン含有樹脂;特開2005−126674、特開2005−55814、特開2004−295084号公報等に記載の樹脂を挙げることができる。
また、市販のカルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂(a−5)を用いることもでき、市販品としては例えばダイセル社製の「ACA−200M」等を挙げることが出来る。
本発明において、(a)バインダー樹脂としては、また、例えば特開2005−154708号公報などに記載のアクリル系のバインダー樹脂も用いることができる。
上述した各種バインダー樹脂のうち、特に好ましいのは、樹脂(a−1)、即ち、エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂である。
本発明における(a)バインダー樹脂としては、前述の各種バインダー樹脂のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前述の各種バインダー樹脂は、特に後述する任意成分である分散剤等との併用で、基板上の非画像部に未溶解物が残存することなく、基板との密着性に優れた、高濃度の色画素を形成し得るといった効果を奏し、好ましい。
本発明の着色樹脂組成物において、(a)バインダー樹脂の含有割合は、全固形分中、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上であり、また、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下である。(a)バインダー樹脂の含有量がこの範囲よりも少ないと、膜が脆くなり、基板への密着性が低下することがある。逆に、この範囲よりも多いと、露光部への現像液の浸透性が高くなり、画素の表面平滑性や感度が悪化する場合がある。
[(b)溶剤]
本発明の着色樹脂組成物は、(b)溶剤を必須成分とする。溶剤は、着色樹脂組成物に含まれる各成分を溶解または分散させ、粘度を調節する機能を有する。
かかる(b)溶剤としては、着色樹脂組成物を構成する各成分を溶解または分散させることができるものであればよく、沸点が100〜200℃の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120〜170℃の沸点をもつものである。
このような溶剤としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−モノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルのようなグリコールジアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートのようなグリコールアルキルエーテルアセテート類;
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテルのようなエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトンのようなケトン類;
エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンのような1価または多価アルコール類;
n−ペンタン、n−オクタン、ジイソブチレン、n−ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカンのような脂肪族炭化水素類;
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシルのような脂環式炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのような芳香族炭化水素類;
アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトンのような鎖状または環状エステル類;
3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸のようなアルコキシカルボン酸類;
ブチルクロライド、アミルクロライドのようなハロゲン化炭化水素類;
メトキシメチルペンタノンのようなエーテルケトン類;
アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル類:
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1およびNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。
これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記溶剤中、前述の本発明に係る(c)色材の溶解性の点から、グリコールモノアルキルエーテル類が好ましい。中でも、特に組成物中の各種構成成分の溶解性の点からプロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
また、例えば任意成分として後述する(f)顔料を含む場合には、塗布性、表面張力などのバランスが良く、組成物中の構成成分の溶解度が比較的高い点からは、溶剤としてさらにグリコールアルキルエーテルアセテート類を混合して使用することがより好ましい。なお、(f)顔料を含む組成物中では、グリコールモノアルキルエーテル類は極性が高く、顔料を凝集させる傾向があり、着色樹脂組成物の粘度を上げる等、保存安定性を低下させる場合がある。このため、グリコールモノアルキルエーテル類の使用量は過度に多くない方が好ましく、(b)溶剤中のグリコールモノアルキルエーテル類の割合は5〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
また、最近の大型基板等に対応したスリットコート方式への適性という観点からは、150℃以上の沸点をもつ溶剤を併用することも好ましい。この場合、このような高沸点溶剤の含有量は、(b)溶剤全体に対して3〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、5〜30重量%が特に好ましい。高沸点溶剤の量が少なすぎると、例えばスリットノズル先端で色材成分などが析出・固化して異物欠陥を惹き起こす可能性があり、また多すぎると組成物の乾燥速度が遅くなり、後述するカラーフィルター製造工程における、減圧乾燥プロセスのタクト不良や、プリベークのピン跡といった問題を惹き起こすことが懸念される。
なお、沸点150℃以上の溶剤は、グリコールアルキルエーテルアセテート類であっても、またグリコールアルキルエーテル類であってもよく、この場合は、沸点150℃以上の溶剤を別途含有させなくてもかまわない。
本発明の着色樹脂組成物は、インクジェット法によるカラーフィルター製造に供しても良いが、インクジェット法によるカラーフィルター製造においては、ノズルから発せられるインクは数〜数十pLと非常に微小であるため、ノズル口周辺あるいは画素バンク内に着弾する前に、溶剤が蒸発してインクが濃縮・乾固する傾向がある。これを回避するためには溶剤の沸点は高い方が好ましく、具体的には、(b)溶剤が沸点180℃以上の溶剤を含むことが好ましい。特に、沸点が200℃以上、とりわけ沸点が220℃以上の溶剤を含有することが好ましい。また、沸点180℃以上である高沸点溶剤は、(b)溶剤中50重量%以上であることが好ましい。このような高沸点溶剤の割合が50重量%未満である場合には、インク液滴からの溶剤の蒸発防止効果が十分に発揮されないおそれがある。
本発明の着色樹脂組成物において、(b)溶剤の含有割合に特に制限はないが、その上限は通常99重量%とする。組成物中の(b)溶剤の含有割合が99重量%を超える場合は、(b)溶剤を除く各成分の濃度が小さくなり過ぎて、塗布膜を形成するには不適当となるおそれがある。一方、(b)溶剤の含有割合の下限値は、塗布に適した粘性等を考慮して、通常75重量%、好ましくは80重量%、更に好ましくは82重量%である。
[(d)モノマー]
本発明の着色樹脂組成物は、(d)モノマーを含有することが好ましい。(d)モノマーは、重合可能な低分子化合物であれば特に制限はないが、エチレン性二重結合を少なくとも1つ有する付加重合可能な化合物(以下、「エチレン性化合物」と言う場合がある。)が好ましい。
エチレン性化合物は、本発明の着色樹脂組成物が活性光線の照射を受けた場合、後述する光重合開始系の作用により付加重合し、硬化するようなエチレン性二重結合を有する化合物である。尚、本発明における(d)モノマーは、いわゆる高分子物質に相対する概念を意味し、狭義の単量体以外に二量体、三量体、オリゴマーも包含する。
エチレン性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸;モノヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;不飽和カルボン酸と多価カルボン酸および前述の脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル;ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物;等が挙げられる。
脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、これら(メタ)アクリル酸エステルの(メタ)アクリル酸部分を、イタコン酸部分に代えたイタコン酸エステル、クロトン酸部分に代えたクロトン酸エステル、或いは、マレイン酸部分に代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、ハイドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシンジ(メタ)アクリレート、ピロガロールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸と多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステルは、必ずしも単一物ではなく、混合物であってもよい。代表例としては、(メタ)アクリル酸、フタル酸、およびエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、およびジエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、テレフタル酸、およびペンタエリスリトールの縮合物;(メタ)アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール、およびグリセリンの縮合物等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ〔1,1,1−トリ(メタ)アクリロイルオキシメチル〕プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物との反応物が挙げられる。
その他、本発明に用いられるエチレン性化合物の例としては、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が挙げられる。
これらの中では脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸エステルがより好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
また、エチレン性化合物は酸価を有するモノマーであってもよい。酸価を有するモノマーとしては、例えば、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能単量体が好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトールおよび/またはジペンタエリスリトールであるものである。
これらの単量体は1種を単独で用いてもよいが、製造上、単一の化合物を得ることは難しいことから、2種以上の混合物を使用してもよい。
また、必要に応じて(d)モノマーとして酸基を有しない多官能モノマーと酸基を有する多官能モノマーを併用してもよい。
酸基を有する多官能モノマーの好ましい酸価としては、0.1〜40mg−KOH/gであり、特に好ましくは5〜30mg−KOH/gである。この多官能モノマーの酸価が低すぎると現像溶解特性が低下する傾向があり、高すぎると製造や取扱いが困難になる場合があり、また光重合性能が落ちたり、画素の表面平滑性等の硬化性が劣る場合がある。従って、異なる酸基の多官能モノマーを2種以上併用する場合、或いは酸基を有しない多官能モノマーを併用する場合、全体の多官能モノマーとしての酸基が上記範囲に入るように調整することが好ましい。
本発明において、より好ましい酸基を有する多官能モノマーは、東亞合成社製の「TO1382」として市販されているジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸エステルを主成分とする混合物である。この多官能モノマーと他の多官能モノマーを組み合わせて使用することもできる。
本発明の着色樹脂組成物において、これらの(d)モノマーの含有割合は、全固形分中、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上であり、また、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。また、(d)モノマーの前述の(c)色材に対する比率は、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、また、通常200重量%以下、好ましくは100重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。
着色樹脂組成物中の(d)モノマー量が少なすぎると、光硬化が不十分となり現像時に密着不良を誘起する要因となるおそれがあり、逆に多すぎると、光硬化が強すぎて現像後の断面が逆テーパー形状となったり、また、溶解性が低下して剥離現像を起こしたり、抜け不良を発生させる原因となることがある。
[(e)光重合開始系および/または熱重合開始系]
本発明の着色樹脂組成物は、塗膜を硬化させる目的で、(e)光重合開始系および/または熱重合開始系を含むことが好ましい。ただし、硬化の方法はこれらの開始剤によるもの以外でもよい。
特に、本発明の着色樹脂組成物が、(a)成分としてエチレン性二重結合を有する樹脂を含む場合や、(d)成分としてエチレン性化合物を含む場合には、光を直接吸収し、または光増感されて分解反応または水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する光重合開始系および/または熱によって重合活性ラジカルを発生する熱重合開始系を含有することが好ましい。なお、本発明において光重合開始系としての(e)成分とは、光重合開始剤(以下、任意に(e1)成分と称する)に重合加速剤(以下、任意に(e2)成分と称する)、増感色素(以下、任意に(e3)成分と称する)などの付加剤が併用されている混合物を意味する。
<光重合開始系>
本発明の着色樹脂組成物に含有されていてもよい。光重合開始系は、通常、(e)光重合開始剤、および必要に応じて添加される(e3)増感色素、(e2)重合加速剤等の付加剤との混合物として用いられ、光を直接吸収し、或いは光増感されて分解反応または水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する成分である。
光重合開始系を構成する(e1)光重合開始剤としては、例えば、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号各公報等に記載のチタノセン誘導体類;特開平10−300922号、特開平11−174224号、特開2000−56118号各公報等に記載されるヘキサアリールビイミダゾール誘導体類;特開平10−39503号公報等に記載のハロメチル化オキサジアゾール誘導体類、ハロメチル−s−トリアジン誘導体類、N−フェニルグリシン等のN−アリール−α−アミノ酸類、N−アリール−α−アミノ酸塩類、N−アリール−α−アミノ酸エステル類等のラジカル活性剤、α−アミノアルキルフェノン誘導体類;特開2000−80068号公報等に記載のオキシムエステル系誘導体類等が挙げられる。
具体的には、例えば、チタノセン誘導体類としては、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムビスフェニル、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,4−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウム〔2,6−ジ−フルオロ−3−(ピロ−1−イル)−フェニ−1−イル〕等が挙げられる。
また、ビイミダゾール誘導体類としては、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ビス(3’−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(2’−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2’−メトキシフエニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、(4’−メトキシフエニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体等が挙げられる。
また、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体類としては、2−トリクロロメチル−5−(2’−ベンゾフリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−(6''−ベンゾフリル)ビニル)〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−フリル−1,3,4−オキサジアゾール等が挙げられる。
また、ハロメチル−s−トリアジン誘導体類としては、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
また、α−アミノアルキルフェノン誘導体類としては、2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、4−ジメチルアミノエチルベンゾエ−ト、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエ−ト、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−エチルヘキシル−1,4−ジメチルアミノベンゾエート、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノベンゾイル)クマリン、4−(ジエチルアミノ)カルコン等が挙げられる。
また、オキシムエステル系誘導体類としては、1,2−オクタンジオン、1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕、2−(o−ベンゾイルオキシム)、エタノン、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕、1−(o−アセチルオキシム)等が挙げられる。
その他に、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン誘導体類;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4’−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体類;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体類;p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体類;9−フェニルアクリジン、9−(p−メトキシフェニル)アクリジン等のアクリジン誘導体類;9,10−ジメチルベンズフェナジン等のフェナジン誘導体類;ベンズアンスロン等のアンスロン誘導体類等も挙げられる。
これら光重合開始剤の中では、α−アミノアルキルフェノン誘導体類およびチオキサントン誘導体類がより好ましい。
必要に応じて用いられる(e2)重合加速剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等のN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル類;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等の複素環を有するメルカプト化合物;脂肪族多官能メルカプト化合物等のメルカプト化合物類等が挙げられる。
これらの(e1)光重合開始剤および(e2)重合加速剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、必要に応じて感応感度を高める目的で、(e3)増感色素が用いられる。増感色素は、画像露光光源の波長に応じて、適切なものが用いられるが、例えば特開平4−221958号、特開平4−219756号各公報等に記載のキサンテン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の複素環を有するクマリン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の3−ケトクマリン系色素;特開平6−19240号公報等に記載のピロメテン系色素;特開昭47−2528号、特開昭54−155292号、特公昭45−37377号、特開昭48−84183号、特開昭52−112681号、特開昭58−15503号、特開昭60−88005号、特開昭59−56403号、特開平2−69号、特開昭57−168088号、特開平5−107761号、特開平5−210240号、特開平4−288818号各公報等に記載のジアルキルアミノベンゼン骨格を有する色素等を挙げることができる。
これらの増感色素のうち好ましいものは、アミノ基含有増感色素であり、更に好ましいものは、アミノ基およびフェニル基を同一分子内に有する化合物である。増感色素として特に好ましいのは、例えば、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ〔4,5〕ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ〔6,7〕ベンゾオキサゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジメチルアミノフェニル)キノリン、(p−ジエチルアミノフェニル)キノリン、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリミジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリミジン等のp−ジアルキルアミノフェニル基含有化合物等である。このうち最も好ましいものは、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の4,4’−ジアルキルアミノベンゾフェノンである。
(e3)増感色素もまた1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の着色樹脂組成物において、これらの(e)光重合開始系の含有割合は、全固形分中、通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上、また、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下の範囲である。この含有割合が著しく低いと、露光光線に対する感度が低下する原因となることがあり、反対に著しく高いと、未露光部分の現像液に対する溶解性が低下し、現像不良を誘起することがある。
<熱重合開始系>
本発明の着色樹脂組成物に含有されていてもよい熱重合開始系(熱重合開始剤)の具体例としては、アゾ系化合物、有機過酸化物および過酸化水素等を挙げることができる。これらのうち、アゾ系化合物が好適に用いられる。
アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル)、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−エチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(ジメチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(ジメチル−2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンテン)等を挙げることができ、これらのうちでも、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が好ましい。
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、クメンハイドロパーオキシド等が挙げられる。具体的には、ジイソブチリルパーオキシド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカルボネート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカルボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカルボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカルボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジカルボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジステアロイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカルボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、p−メンタンハイドロパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキシド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキシドとベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキシドとジベンゾイルパーオキシドの混合物等を挙げることができる。
これらの熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色樹脂組成物中の熱重合開始剤の割合が少な過ぎると膜の硬化が不十分であり、カラーフィルターとしての耐久性が不足する場合がある。多過ぎると熱収縮の度合が大きくなり、熱硬化後にヒビ割れ、クラックの発生が起こるおそれがある。また、保存安定性が低下する傾向が見られる。従って、熱重合開始剤の含有割合は、本発明の着色樹脂組成物の全固形分中0〜30重量%、特に0〜20重量%の範囲とすることが好ましい。
[(f)顔料]
本発明の着色樹脂組成物は、耐熱性を向上させるため等の目的で、本発明の効果を損なわない範囲で(f)顔料を含有していてもよい。
(f)顔料としては、例えばカラーフィルターの画素等を形成する場合には、青色、紫色等各種の色の顔料を使用することができる。また、その化学構造としては、例えばフタロシアニン系、キナクリドン系、ベンツイミダゾロン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料が挙げられる。この他に種々の無機顔料等も利用可能である。以下、使用できる顔料の具体例をピグメントナンバーで示す。以下に挙げる「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
青色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79などを挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6などであり、更に好ましくはC.I.ピグメントブルー15:6である。
紫色顔料としては、例えばC.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50などを挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントバイオレット19、23などであり、更に好ましくはC.I.ピグメントバイオレット23である。
又、無機顔料として、硫酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、黄色鉛、ベンガラ、酸化クロム等が挙げられる。
上記の各種の顔料は、複数種を併用することもできる。例えば、色度の調整のために、顔料として、青色顔料と紫色顔料とを併用したりすることができる。
尚、これらの顔料は、着色樹脂組成物中の平均粒径が通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下となるよう分散処理して使用する。
本発明の着色樹脂組成物において、これら(f)顔料の含有割合は、全固形分中、通常80重量%以下、好ましくは50重量%以下である。また、前述の(c)色材100重量部に対する含有量は、通常2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下である。(f)顔料の割合が多過ぎると、本発明に係る(c)色材による高色再現性と高輝度の両立という効果が薄れる。
[任意成分]
本発明の着色樹脂組成物は、前記各成分の外に、界面活性剤、有機カルボン酸および/または有機カルボン酸無水物、可塑剤、前記本発明に係る前述の(c)色材以外の染料、熱重合防止剤、保存安定剤、表面保護剤、密着向上剤、現像改良剤等を含有していてもよい。また、着色剤として(f)顔料を含有する場合には、分散剤や分散助剤を含有してもよい。これら任意成分としては、例えば特開2007−113000号公報記載の各種化合物を使用することができる。
[着色樹脂組成物の調製方法]
次に、本発明の着色樹脂組成物を調製する方法を説明する。
先ず前述の本発明に係る(c)色材を、必須成分である(a)バインダー樹脂、および(b)溶剤、場合によっては、任意成分である(d)モノマーや(e)光重合開始系および/または熱重合開始系、界面活性剤、およびそれら以外の成分と混合し、均一な溶液とすることにより、着色樹脂組成物を得る。混合に際しては、(c)色材が十分に溶解するまで撹拌することが好ましい。また、混合等の各工程において、微細なゴミが混入することがあるため、得られたインキ状液体をフィルター等によって濾過処理することが好ましい。
また、着色剤として(f)顔料を併用する場合には、まず前述の本発明に係る(c)色材、(f)顔料、(b)溶剤、および任意成分である分散剤や分散助剤などを各所定量秤量し、分散処理工程において、(f)顔料を十分に分散させてインキ状液体とする。この分散処理工程では、ペイントシェイカー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー等を使用することができる。この分散処理を行なうことによって(f)顔料が微粒子化されるため、着色樹脂組成物の塗布特性が向上し、製品のカラーフィルター基板等の透過率が向上する。
(f)顔料を分散処理する際には、(a)バインダー樹脂の一部を分散剤として使用したり、分散助剤等を適宜併用したりすることが好ましい。また、ペイントシェイカーまたはサンドグラインダーを用いて分散処理を行なう場合は、0.1〜数mm径のガラスビーズ、またはジルコニアビーズを用いることが好ましい。分散処理する際の温度は、通常0℃以上、好ましくは室温以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下の範囲に設定する。尚、分散時間は、インキ状液体の組成、およびサンドグラインダーの装置の大きさ等により適正時間が異なるため、適宜調整する必要がある。
上記分散処理によって得られたインキ状液体に、更に必須成分である(a)バインダー樹脂、および(b)溶剤、場合によっては、任意成分である(d)モノマーや(e)光重合開始系および/または熱重合開始系、界面活性剤、およびそれら以外の成分を混合し、均一な分散溶液とすることにより、着色樹脂組成物を得る。尚、分散処理工程および混合の各工程において、微細なゴミが混入することがあるため、得られたインキ状液体をフィルター等によって濾過処理することが好ましい。
[着色樹脂組成物の応用]
本発明の着色樹脂組成物は、通常、すべての構成成分が溶剤中に溶解或いは分散された状態である。このような着色樹脂組成物が基板上へ供給され、カラーフィルターや液晶表示装置、有機ELディスプレイなどの構成部材が形成される。
以下、本発明の着色樹脂組成物の応用例として、カラーフィルターの画素としての応用、およびそれらを用いた液晶表示装置(パネル)および有機ELディスプレイについて、説明する。
<カラーフィルターの画素>
カラーフィルターの画素は、後述するように様々な方法で形成することができる。ここでは光重合性の着色樹脂組成物を使用してフォトリソグラフィ法にて形成する場合を例に、詳細に説明するが、製造方法はこれに限定されるものではない。
カラーフィルターの透明基板としては、透明で適度の強度のものであれば、その材質は特に限定されるものではない。材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリスルホン系樹脂等の熱可塑性樹脂製シート;エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂シート;または各種ガラス等が挙げられる。この中でも、耐熱性の観点からガラス、耐熱性樹脂が好ましい。これらの透明基板には、接着性等の表面物性の改良のため、必要に応じ、コロナ放電処理やオゾン処理等の表面処理、シランカップリング剤やウレタン系樹脂等の各種樹脂等による薄膜形成処理等を行なってもよい。透明基板の厚さは、通常0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上、また、通常10mm以下、好ましくは7mm以下の範囲とされる。また、各種樹脂による薄膜形成処理を行なう場合、その膜厚は、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは5μm以下の範囲である。
上述の透明基板上にブラックマトリックスを設け、更に通常は赤色、緑色、青色の各画素画像を形成することにより、カラーフィルターを作製することができる。
ブラックマトリックスは、遮光金属薄膜、または本発明の着色樹脂組成物を利用して、透明基板上に形成される。
その遮光金属材料としては、金属クロム、酸化クロム、窒化クロム等のクロム化合物、ニッケルとタングステンの合金等が用いられ、これらを複数層状に積層させたものであってもよい。これらの遮光金属薄膜は、一般にスパッタリング法によって形成され、ポジ型フォトレジストにより、膜状に所望のパターンを形成する。
クロムに対しては硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸および/または硝酸とを混合したエッチング液を用い、その他の材料に対しては、材料に応じたエッチング液を用いて蝕刻され、最後にポジ型フォトレジストを専用の剥離剤で剥離することによって、ブラックマトリックスを形成することができる。この場合、先ず、蒸着またはスパッタリング法等により、透明基板上にこれら金属または金属・金属酸化物の薄膜を形成する。次いで、この薄膜上にポジ型フォトレジスト用樹脂組成物の塗布膜を形成する。次いで、ストライプ、モザイク、トライアングル等の繰り返しパターンを有するフォトマスクを用いて、塗布膜を露光・現像し、画像を形成する。その後、この塗布膜にエッチング処理を施してブラックマトリックスを形成することができる。
また、黒色の(f)顔料を含有する光重合性着色樹脂組成物を使用して、ブラックマトリックスを形成してもよい。例えば、カーボンブラック、黒鉛、鉄黒、チタンブラック等の黒色顔料を単独または複数、もしくは、無機または有機の顔料の中から適宜選択される赤色、緑色、青色等の顔料を混合して得られる黒色顔料を含有する着色樹脂組成物を使用し、後述する赤色、緑色、青色の画素画像を形成する方法と同様にして、ブラックマトリックスを形成することができる。
黒色の着色樹脂組成物に関しては透明基板上に、赤色、緑色、青色の着色樹脂組成物に関しては、透明基板上に形成された樹脂ブラックマトリックス形成面上、または、クロム化合物その他の遮光金属材料を用いて形成された金属ブラックマトリックス形成面上に、塗布、加熱乾燥、画像露光、現像および熱硬化の各処理を経て、各色の画素画像が形成される。
ブラックマトリックスを設けた透明基板上に、赤色、緑色、青色のうち一色の色材を含有する着色樹脂組成物を塗布し、乾燥した後、塗布膜の上にフォトマスクを重ね、このフォトマスクを介して画像露光、現像、必要に応じて熱硬化または光硬化により画素画像を形成させ、着色層を作成する。この操作を、赤色、緑色、青色の三色の着色樹脂組成物について各々行うことによって、カラーフィルター画像を形成することができる。
本発明の着色樹脂組成物は、ここで青色画素の形成に特に好適に使用される。
着色樹脂組成物の基板への供給方法としては、従来公知の方法、例えば、スピナー法、ワイヤーバー法、フローコート法、スリット・アンド・スピン法、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法等が挙げられる。中でも、スリット・アンド・スピン法、およびダイコート法が好ましい。本発明の着色樹脂組成物は、ディスペンスノズル先端に凝集異物が発生しにくいため、歩留まりを低下させることなく、平滑で美しい表面を有する塗布膜を提供することができる。また、その塗布の際の塗布ムラや、その後の乾燥工程における乾燥ムラ等も生じず、露光工程、現像工程、熱処理工程等を経て、極めて平滑な表面を有する層を形成することができる。
スリット・アンド・スピン法、およびダイコート法による塗布条件は、着色樹脂組成物の組成や、作製するカラーフィルターの種類等によって適宜選択すればよい。例えば、両方法のいずれにおいても、ノズル先端のリップ幅は50〜500μmとし、ノズル先端と基板面との間隔は30〜300μmとするのが好ましい。
ダイコート法において、塗布膜の厚さを調節するためには、リップの走行速度、およびリップからの液状の着色樹脂組成物の吐出量を調整すればよく、スリット・アンド・スピン法においては、主にスリット塗布後のスピン回転数および回転時間によって調整すればよい。
塗布膜の厚さは、厚過ぎるとパターン現像が困難となるとともに、液晶セル化工程でのギャップ調整が困難となることがある一方で、薄過ぎると顔料濃度を高めることが困難となり、所望の色発現が不可能となることがある。塗布膜の厚さは、乾燥後の膜厚として、通常0.2μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上、また、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下の範囲である。
基板に着色樹脂組成物を塗布した後の塗布膜の乾燥は、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブンを使用した乾燥法によるのが好ましい。通常は、予備乾燥の後、再度加熱させて乾燥させる。
予備乾燥の温度および乾燥時間などの条件は、溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能等に応じて適宜選択されるが、具体的には、乾燥温度は通常40℃以上、好ましくは50℃以上、また、通常80℃以下、好ましくは70℃以下の範囲であり、乾燥時間は通常15秒以上、好ましくは30秒以上、また、通常5分間以下、好ましくは3分間以下の範囲である。
また、再加熱乾燥の温度条件は、予備乾燥温度より高い温度が好ましく、具体的には、通常50℃以上、好ましくは70℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは160℃以下、特に好ましくは130℃以下の範囲である。また、乾燥時間は、加熱温度にもよるが、通常10秒以上、好ましくは15秒以上、また、通常10分以下、好ましくは5分以下の範囲とするのが好ましい。乾燥温度は、高いほど透明基板に対する接着性が向上するが、高過ぎるとバインダー樹脂が分解し、熱重合を誘発して現像不良を生ずる場合がある。尚、この塗布膜の乾燥工程としては、温度を高めず減圧チャンバー内で乾燥を行なう減圧乾燥法を用いてもよい。
画像露光は、着色樹脂組成物の塗布膜上に、ネガのマトリックスパターンを重ね、このマスクパターンを介し、紫外線または可視光線の光源を照射して行う。この際、必要に応じ、着色樹脂組成物により形成された光重合性層の酸素による感度の低下を防ぐため、光重合性層上にポリビニルアルコール層等の酸素遮断層を形成した後に露光を行ってもよい。
上記の画像露光に使用される光源は、特に限定されるものではない。光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプ等のランプ光源;アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フィルターを利用することもできる。
カラーフィルターは、着色樹脂組成物の塗布膜に対し、上記の光源によって画像露光を行なった後、有機溶剤、または、界面活性剤とアルカリ性化合物とを含む水溶液を用いて現像を行うことによって、基板上に画像を形成して作製することができる。この水溶液には、更に有機溶剤、緩衝剤、錯化剤、染料または顔料を含ませることができる。
ここで、アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸二水素カリウム、水酸化アンモニウム等の無機アルカリ性化合物;モノ−・ジ−・またはトリ−エタノールアミン、モノ−・ジ−・またはトリ−メチルアミン、モノ−・ジ−・またはトリ−エチルアミン、モノ−・またはジ−イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノ−・ジ−・またはトリ−イソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等の有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン系界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上の混合溶剤として用いてもよく、また、水溶液と併用して使用することもできる。
現像処理の条件には特に制限はないが、現像温度は通常10℃以上、中でも15℃以上、更には20℃以上、また、通常50℃以下、中でも45℃以下、更には40℃以下の範囲が好ましい。
現像方法は、浸漬現像法、スプレー現像法、ブラシ現像法、超音波現像法等の何れかの方法によることができる。
現像の後のカラーフィルターには、熱硬化処理を施す。この際の熱硬化処理条件は、温度は通常100℃以上、好ましくは150℃以上、また、通常280℃以下、好ましくは250℃以下の範囲で選ばれ、時間は5分間以上、60分間以下の範囲で選ばれる。
これら一連の工程を経て、一色のパターニング画像形成は終了する。この工程を順次繰り返し、ブラック(着色樹脂組成物を用いてブラックマトリックスを形成する場合)、赤色、緑色、青色をパターニングし、カラーフィルターを形成する。尚、赤色、緑色、青色の3色のパターニングの順番は、上記した順番に限定されるものではない。
尚、本発明におけるカラーフィルターは、上記した作製方法の他に、(1)溶剤、色材、バインダー樹脂としてのポリイミド系樹脂を含む着色樹脂組成物を、基板に塗布し、エッチング法により画素画像を形成する方法によっても作製することができる。また、(2)色材を含む着色樹脂組成物を着色インキとして用い、印刷機によって、透明基板上に直接画素画像を形成する方法、(3)色材を含む着色樹脂組成物を電着液として用い、基板をこの電着液に浸漬させ所定パターンにされたITO電極上に、着色膜を析出させる方法、更に、(4)色材を含む着色樹脂組成物を塗布したフィルムを、透明基板に貼りつけて剥離し、画像露光、現像し画素画像を形成する方法、(5)色材を含む着色樹脂組成物を着色インキとして用い、インクジェットプリンターにより基板上に画素画像を形成する方法、等によっても作製することができる。カラーフィルターの作製方法は、本発明の着色樹脂組成物の組成に応じ、これに適した方法が採用される。
このようにして作製されたカラーフィルターを液晶表示装置に使用する場合には、このままの状態で画像上にITO等の透明電極を形成して、カラーディスプレー、液晶表示装置等の部品の一部として使用されるが、表面平滑性や耐久性を高めるため、必要に応じ、画像上にポリアミド、ポリイミド等のトップコート層を設けることもできる。また、一部、平面配向型駆動方式(IPSモード)等の用途においては、透明電極を形成しないこともある。また、垂直配向型駆動方式(MVAモード)では、リブを形成することもある。また、ビーズ散布型スペーサに代わり、フォトリソによる柱構造(フォトスペーサー)を形成することもある。
<液晶表示装置(パネル)>
本発明に係る液晶表示装置は、上述したカラーフィルター(以下、「本発明のカラーフィルター」と称す場合がある。)を備えてなり、例えば、上述した本発明のカラーフィルターと、薄膜トランジスタ(TFT)等の対向基板とを、液晶層を介して対向した構造とすることにより構成することができる。より具体的には、本発明のカラーフィルター上に配向膜を形成し、この配向膜上にスペーサを散布した後、対向基板と周辺シール材を介して貼り合わせて液晶セルを形成し、形成した液晶セルに液晶を注入し、対向電極に結線して作製される。
配向膜は、ポリイミド等の樹脂膜が好適である。配向膜の形成には、通常、グラビア印刷法および/またはフレキソ印刷法が採用され、塗布後、熱焼成によって配向膜の硬化処理を行った後、紫外線の照射やラビング布による処理によって表面処理し、液晶の傾きを調整しうる表面状態に加工される。このようにして形成される配向膜の厚さは通常数10nm程度とされる。
スペーサは、対向基板とのギャップ(隙間)に応じた大きさのものが用いられ、通常2〜8μmの大きさのものが好適である。カラーフィルターに、フォトリソグラフィ法によって透明樹脂膜のフォトスペーサー(PS)を形成し、これをスペーサの代わりに活用することもできる。
対向基板としては、通常、アレイ基板が用いられ、特にTFT(薄膜トランジスタ)基板が好適である。また、対向基板との貼り合わせのギャップは、液晶パネルの用途によって異なるが、通常2μm以上、8μm以下の範囲で選ばれる。
カラーフィルターを対向基板と貼り合わせた後、液晶注入口以外の部分は、エポキシ樹脂等のシール材によって封止する。シール材は、紫外線(UV)照射および/または加熱することによって硬化させ、液晶セル周辺がシールされる。
周辺をシールされた液晶セルは、パネル単位に切断した後、真空チャンバー内で減圧とし、上記液晶注入口を液晶に浸漬した後、チャンバー内をリークすることによって、液晶を液晶セル内に注入する。この場合、液晶セル内の減圧度は、通常1×10−2Pa以上、好ましくは1×10−3以上、また、通常1×10−7Pa以下、好ましくは1×10−6Pa以下の範囲である。また、減圧時に液晶セルを加温するのが好ましく、その加温温度は通常30℃以上、好ましくは50℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは90℃以下の範囲である。減圧時の加温保持時間は、通常10分間以上、60分間以下の範囲とされ、その後、液晶中に浸漬される。
液晶を注入した液晶セルは、液晶注入口を例えばUV硬化樹脂を硬化させて封止することによって、液晶表示装置が完成する。
尚、用いる液晶の種類には特に制限がなく、芳香族系、脂肪族系、多環状化合物等、従来から知られている液晶であって、リオトロピック液晶、サーモトロピック液晶等の何れでもよい。サーモトロピック液晶には、ネマティック液晶、スメクティック液晶およびコレステリック液晶等が知られているが、これらの何れであってもよい。
<有機ELディスプレイ>
本発明のカラーフィルターを備えてなる有機ELディスプレイを作成する場合、例えば図3に示すように、透明支持基板10上に、本発明の着色樹脂組成物により青色画素20が形成された青色カラーフィルター上に有機保護層30および無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって多色の有機EL素子を作製することができる。有機発光体500の積層方法としては、カラーフィルター上面へ透明陽極50、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53、電子注入層54、および陰極55を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして作製された有機EL素子100は、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
次に、合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
フェニルイミダゾール(3.86g,20mmol、東京化成工業社製)にジメチルホルムアミド(DMF)(100mL、関東化学社製)を加え、室温でゆっくりと水素化ナトリウム(1g,21mmol、和光純薬工業社製)を加え、水素が発生しなくなるまで撹拌した。その後、ベンジルクロライド(2.5g,20mmol、東京化成工業社製)を加え、室温で撹拌した。反応終了後、水を加え、トルエンで抽出し、有機層を炭酸カルシウムで乾燥し、濾過濃縮を行った。得られた生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物2を3.5g、62%の収率で得た。
窒素ライン接続三方コック、ジムロート、温度計、回転子を取り付けた100ml四口フラスコの窒素置換・減圧乾燥を行った。ここへ上記で得られた化合物2(1.13g,4.0mmol,1.0e.q.)、缶だしトルエン10ml(純正化学社製)を入れ、室温で撹拌した。そこにオキシ塩化リン(613mg,4.0mmol,1.0e.q.、和光純薬工業社製)を加えしばらく撹拌した。次いで、化合物1(1.30g,4.0mmol,1.0e.q.、東京化成工業社製)を加え、加熱撹拌を約5時間行い、放冷させてクロロホルム抽出を行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=15:1→10:1)で精製し、化合物3を2.15g,85.5%の収率で得た。
200mlの三角フラスコに化合物3(1.0g,1.6mmol,2.0e.q.)を加え、メタノール(20ml、純正化学社製)で溶解させ、それに化合物4(銅フタロシアニンスルホン酸ナトリウム)(620mg,0.8mmol,1.0e.q.)を加えて、しばらく撹拌した。脱塩水40mlを加え、さらに室温で1時間撹拌した。その後、反応液を濾過し、濾取したものを取り出し、脱塩水を加え超音波洗浄をした後、濾過して、得られた固体を80℃の真空乾燥機で乾燥させ、目的物V−A(830mg,収率54.3%)を得た。
フェニルイミダゾール(5.8g,30mmol、東京化成工業社製)、ヨードトルエン(9.8g,45mmol、東京化成工業社製)、ヨウ化銅(2.2g,12mmol、関東化学社製)、1,9−フェナントロリン(2.4g,12mmol、東京化成工業社製)、リン酸カリウム(9.5g,45mmol、関東化学社製)にトルエン100mLを加え、6時間加熱還流を行った。反応終了後、濾過し、沈殿を塩化メチレンで洗浄し、濾液を濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物5を2.0g、23%の収率で得た。
窒素ライン接続三方コック、ジムロート、温度計、回転子を取り付けた100ml四口フラスコの窒素置換・減圧乾燥を行った。ここへ上記で得られた化合物5(850mg,3.0mmol,1.0e.q.)、缶だしトルエン10ml(純正化学社製)を入れ、室温で撹拌した。そこにオキシ塩化リン(460mg,3.0mmol,1.0e.q.、和光純薬工業社製)を加えしばらく撹拌した。次いで、化合物1(973mg,3.0mmol,1.0e.q.、東京化成工業社製)を加え、加熱撹拌を約5時間行い、放冷させてクロロホルム抽出を行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=15:1→10:1)で精製し、化合物6を1.85g、98.5%の収率で得た。
200mlの三角フラスコに化合物6(925mg,1.64mmol,2.0e.q.)を加え、メタノール(15ml、純正化学社製)で溶解させ、それに化合物4(636mg,0.82mmol,1.0e.q.)を加えて、しばらく撹拌した。脱塩水40mlを加え、さらに室温で1時間撹拌した。その後、反応液を濾過し、濾取したものを取り出し、純水を加え超音波洗浄をした後、濾過して、得られた固体を80℃の真空乾燥機で乾燥させ、目的物V−B(1.17g,収率78.4%)を得た。
窒素ライン接続三方コック、ジムロート、温度計、回転子を取り付けた100ml四口フラスコの窒素置換・減圧乾燥を行った。ここへ、化合物7(1.55g,7.0mmol,1.0e.q.、東京化成工業社製)、缶だしトルエン15ml(純正化学社製)を入れ、室温で撹拌した。そこにオキシ塩化リン(1.07g,7.0mmol,1.0e.q.、和光純薬工業社製)を加えしばらく撹拌した。次いで、化合物1(2.27g,7.0mmol,1.0e.q.、東京化成工業社製)を加え、加熱撹拌を約5時間行い、放冷させてクロロホルム抽出を行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=15:1→10:1)で精製し、化合物8を3.82g、96.7%の収率で得た。
200mlの三角フラスコに化合物8(1.0g,1.6mmol,2.0e.q.)を加え、メタノール(15ml、純正化学社製)で溶解させ、それに化合物4(620mg,0.8mmol,1.0e.q.)を加えて、しばらく撹拌した。脱塩水40mlを加え、さらに室温で3時間撹拌した。その後、反応液を濾過し、濾取したものを取り出し、純水を加え超音波洗浄をした後、濾過して、得られた固体を80℃の真空乾燥機で乾燥させ、目的物V−C(1.25g,収率80.4%)を得た。
窒素ライン接続三方コック、ジムロート、温度計、回転子を取り付けた100ml四口フラスコの窒素置換・減圧乾燥を行った。ここへフェニルイミダゾール(3.87g,20.0mmol,1.0e.q.、東京化成工業社製)を入れ、脱水DMF(20ml、関東化学社製)で室温で溶解させて、氷冷した。次いで、水素化ナトリウム(960mg,22.0mmol,1.1e.q.、和光純薬工業社製)をゆっくり加え、撹拌した。ここへ、ブロムヘキサン(3ml,3.63g,22.0mmol,1.1e.q.、和光純薬工業社製)をゆっくり滴下した後、昇温して室温で約2時間撹拌した。反応容器を氷冷し、水でクエンチしてエーテル抽出を行った後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=40:1)で精製して、化合物9を3.91g、70.5%の収率で得た。
窒素ライン接続三方コック、ジムロート、温度計、回転子を取り付けた100ml四口フラスコの窒素置換・減圧乾燥を行った。ここへ、上記で得られた化合物9(832mg,3.0mmol,1.0e.q.)、缶だしトルエン8ml(純正化学社製)を入れ、室温で撹拌した。そこにオキシ塩化リン(506mg,3.3mmol,1.1e.q.、和光純薬工業社製)を加えしばらく撹拌した。次いで、化合物1(973mg,3.0mmol,1.0e.q.、東京化成工業社製)を加え、加熱撹拌を約6.5時間行い、放冷させてクロロホルム抽出を行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=15:1→10:1)で精製し、化合物10を1.67g、89.7%の収率で得た。
200mlの三角フラスコに化合物10(800mg,1.29mmol,2.0e.q.)を加え、メタノール(20ml、純正化学社製)で溶解させ、それに化合物4(500mg,0.65mmol,1.0e.q.)を加えて、しばらく撹拌した。脱塩水40mlを加え、さらに室温で1.5時間撹拌した。その後、反応液を濾過し、濾取したものを取り出し、純水を加え超音波洗浄をした後、濾過して、得られた固体を80℃の真空乾燥機で乾燥させ、目的物V−D(820mg,収率65.8%)を得た。
窒素ライン接続三方コック、ジムロート、温度計、回転子を取り付けた100ml四口フラスコの窒素置換・減圧乾燥を行った。4−フルオロフェニルイミダゾール(6.3g,30mmol,1.0e.q.、東京化成工業社製)を入れ、脱水DMF(100ml、関東化学社製)で室温で溶解させて、氷冷した。次いで、水素化ナトリウム(2.16mg,45mmol、和光純薬工業社製)をゆっくり加え、撹拌した。ここへ、ブロムヘキサン(6.6g,40mmol、和光純薬工業社製)をゆっくり滴下した。昇温して室温で約3時間撹拌した。反応容器を氷冷し、水でクエンチしてヘキサン抽出を行い、濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:塩化メチレン=9:1)で精製し、化合物11を4.6g、52%の収率で得た。
窒素ライン接続三方コック、ジムロート、温度計、回転子を取り付けた100ml四口フラスコの窒素置換・減圧乾燥を行った。ここへ、上記で得られた化合物11(975mg,3.3mmol,1.0e.q.)、缶だしトルエン10ml(純正化学社製)を入れ、室温で撹拌した。そこにオキシ塩化リン(557mg,3.63mmol,1.1e.q.、和光純薬工業社製)を加えしばらく撹拌した。次いで、化合物1(1.07g,3.3mmol,1.0e.q.、東京化成工業社製)を加え、加熱撹拌を約4時間行い、放冷させてクロロホルム抽出を行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=15:1→10:1)で精製し、化合物12を1.27g、60.3%の収率で得た。
100mlの三角フラスコに化合物12(638mg,1.0mmol,2.0e.q.)を加え、メタノール(15ml、純正化学社製)で溶解させ、それに化合物4(388mg,0.5mmol,1.0e.q.)を加えて、しばらく撹拌した。脱塩水50mlを加え、さらに室温で3時間撹拌した。その後、反応液を濾過し、濾取したものを取り出し、純水を加え超音波洗浄をした後、濾過して、得られた固体を80℃の真空乾燥機で乾燥させ、目的物V−E(790mg,収率80.3%)を得た。
N−エチルアニリン(10g,90mmol)のDMF(100ml、関東化学社製)溶液に0℃で水素化ナトリウム(4.3g,90mmol、関東化学社製)を加え、水素が発生しなくなるまで撹拌した。その後、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(6.5g,30mmol、東京化成工業社製)を少しずつ加え、室温まで昇温し、5時間撹拌を行った。反応終了後、水を加え、ジクロロメタンで抽出を行い、有機層を炭酸カルシウムで乾燥し、濾過濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物13を3.1g、24%の収率で得た。
窒素ライン接続三方コック、ジムロート、温度計、回転子を取り付けた100ml四口フラスコの窒素置換・減圧乾燥を行った。ここへ、化合物14(622mg,3.0mmol,1.0e.q.、東京化成工業社製)、缶だしトルエン15ml(純正化学社製)を入れ、室温で撹拌した。そこにオキシ塩化リン(506mg,3.3mmol,1.1e.q.、和光純薬工業社製)を加えしばらく撹拌した。次いで、上記で得られた化合物13(1.26g,3.0mmol,1.0e.q.)を加え、加熱撹拌を約4.5時間行い、放冷させてクロロホルム抽出を行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=15:1→10:1)で精製し、化合物15を1.48g、76.3%の収率で得た。
100mlの三角フラスコに化合物15(982mg,1.52mmol,2.0e.q.)を加え、メタノール(15ml、純正化学社製)で溶解させ、それに化合物4(590mg,0.76mmol,1.0e.q.)を加えて、しばらく撹拌した。脱塩水50mlを加え、さらに室温で3時間撹拌した。その後、反応液を濾過し、濾取したもの取り出し、純水を加え超音波洗浄をした後、濾過して、得られた固体を80℃の真空乾燥機で乾燥させ、目的物V−F(980mg,収率65.0%)を得た。
3−アミノビフェニル(5g,30mmol、東京化成工業社製)のエタノール溶液30mlにヨードブタン(11.6g,63mmol、東京化成工業社製)と、炭酸カリウム(8.7g,63mmol、純正化学社製)を加え、3日間加熱還流した。その後、濾過し、無機塩をトルエンで洗浄した後、カラムクロマトグラフィーにより化合物16を7g、83%の収率で得た。
窒素ライン接続三方コック、ジムロート、温度計、回転子を取り付けた100ml四口フラスコの窒素置換・減圧乾燥を行った。ここへ、上記で得られた化合物16(1.13g,4.0mmol,1.0e.q.)、缶だしトルエン10ml(純正化学社製)を入れ、室温で撹拌した。そこにオキシ塩化リン(675mg,4.4mmol,1.1e.q.、和光純薬工業社製)を加えしばらく撹拌した。次いで、化合物1(1.30g,4.0mmol,1.0e.q.、東京化成工業社製)を加え、加熱撹拌を約2.5時間行い、放冷させてクロロホルム抽出を行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=15:1→10:1)で精製し、化合物17を1.46g、58.5%の収率で得た。
200mlのナスフラスコに化合物17(1.24g,2.0mmol,2.0e.q.)を加え、メタノール(10ml、純正化学社製)で溶解させ、それに化合物4(782mg,1.0mmol,1.0e.q.)を加えて、しばらく撹拌した。脱塩水55mlを加え、さらに室温で1時間撹拌した。その後、反応液を濾過し、濾取したものを取り出し、脱塩水を加え超音波洗浄をした後、濾過して、得られた固体を80℃の真空乾燥機で乾燥させた。さらに固体に脱塩水を加え、超音波洗浄を行って目的物I−A(900mg,収率47%)を得た。
100mlの三角フラスコに合成例6で得られた化合物15(343mg,0.2mmol)を加え、メタノール(15ml、純正化学社製)で溶解させ、それに化合物18(acid blue 80)(169mg,0.2mmol,1.0e.q.)を加えて、しばらく撹拌した。脱塩水40mlを加え、さらに室温で3時間撹拌した。その後、反応液を濾過し、濾取したものを取り出し、純水を加え超音波洗浄をした後、濾過して、得られた固体を80℃の真空乾燥機で乾燥させ、目的物V−G(300mg,収率80%)を得た。
200mlの三角フラスコに化合物19(Basic Blue 7)(1.03g,2.0mmol、東京化成工業社製)を加え、メタノール(20ml、純正化学社製)に溶解させ、それに化合物4(776mg,1.0mmol)を加えて、均一になるまで30分程度撹拌した。ここに脱塩水70mlを加え、さらに室温で1時間撹拌した。得られた反応液を濾過し、濾取した固体を取り出し、水を加えて超音波洗浄をした。さらに濾過して、得られた固体を80℃の真空乾燥機で乾燥させ、目的物I−B(1.32g,収率78.2%)を得た。
化合物19(Basic Blue 7)(東京化成工業社製)(CI−42595)5.14重量部を水500重量部に溶解し、撹拌しながら1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム4.60重量部を加え、室温で1時間撹拌した。氷冷し、沈殿を濾取し、水で洗浄した。得られたケーキを風乾した後、減圧乾燥して、上記構造式で表される目的物X−A(6.11重量部、収率89%)を得た。
1−アミノナフタレン11.5gをN−メチル−2−ピロリドン120gに溶解し、室温で撹拌しながらナトリウムアミド3.74gを加えた。さらに触媒としてヨウ化ナトリウム1.20g、重合禁止剤として2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン0.89gを加えた後、p−クロロメチルスチレン13.4gを30分かけて添加し、室温で2時間撹拌した。撹拌後、クロロホルム200mlを加えて溶解し、水洗を3回行った。クロロホルム層を分離し溶媒留去して残留物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、中間物であるp−ビニルベンジルナフチルアミン10.8gを得た。
得られた中間体10.8g、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン17.6g、重合禁止剤として2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン0.46gおよびトルエン140gを溶媒として加え、窒素雰囲気下45℃に加熱し、オキシ塩化リン8.31gを10分かけて添加した。滴下終了後1時間かけて100℃まで昇温し、100℃で1時間撹拌した。撹拌終了後、室温まで冷却し、トルエンを減圧留去した。そこにクロロホルム200mlを加えて溶解し、水洗を3回行った。クロロホルム層を分離し、溶媒を留去して残留物を得、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物X−B(5.9g)を得た。
200mlの三角フラスコに化合物19(Basic Blue 7)(1.03g,2.0mmol、東京化成工業社製)を加え、メタノール(20ml、純正化学社製)で溶解させ、それに化合物4(776mg,1.0mmol)を加えて、しばらく撹拌した。脱塩水70mlを加え、さらに室温で1時間撹拌した。その後、反応液を濾過し、濾取したものを取り出し、脱塩水を加え超音波洗浄をした後、濾過して、得られた固体を80℃の真空乾燥機で乾燥させ、目的物I−C(1.32g,収率78.2%)を得た。
200mlの三角フラスコに化合物19(Basic Blue 7)(874g,1.7mmol、東京化成工業社製)を加え、メタノール(20ml、純正化学社製)で溶解させ、それに化合物20(Acid blue 40)(805mg,1.7mmol)を加えて、しばらく撹拌した。脱塩水70mlを加え、さらに室温で1時間撹拌した。その後、反応液を濾過し、濾取したものを取り出し、脱塩水を加え超音波洗浄をした後、濾過し、得られた固体を80℃の真空乾燥機で乾燥させ、目的物I−D(960mg,収率60%)を得た。
300mlの三角フラスコに化合物19(Basic Blue 7)(2.06g,4.0mmol)と化合物18(Acid Blue 80)(2.47g,2.0mmol)を加え、メタノール(20ml、純正化学社製)で溶解させ、室温で3時間攪拌した。ここに脱塩水200mlを加え、更に室温で3時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、濾取したものを取り出し、脱塩水を加えて超音波洗浄した後、再度濾過し、母液が透明になるまで、脱塩水にて洗浄を繰り返した。得られた固体を80℃の真空乾燥機で6時間以上乾燥させ、目的物I−E(2.87g,収率90%)を得た。
ジイソブチルアミン(1.62g,12.5mmol,2.5e.q.)を脱水トルエン20mlに溶解させ、t−ブトキシナトリウム(1.2g,12.5mmol,2.5e.q.)、4,4−ジフルオロベンゾフェノン(1.26g,5mmol,1.0e.q.)、酢酸パラジウム(168mg,0.75mmol,0.15e.q.)、トリt−ブチルホスフィン(303mg,1.5mmol,0.3e.q.)を加え、100℃で5時間攪拌した。その後室温に戻し、1N塩酸水溶液、1N水酸化ナトリウム水溶液を加えpHを調整後、トルエンで抽出した。飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=12:1)で精製し、化合物21を1.86g(収率85%)得た。
化合物14(573mg,2.77mmol,1.3e.q.)をトルエンに溶解し、オキシ塩化リン(652mg,4.3mmol,2.0e.q.)、化合物21(929mg,2.1mmol,1.0e.q.)を加え、120℃で5時間加熱還流させた。その後室温に戻し、1N塩酸を加え、クロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノ−ル=12:1)で精製し、ヘキサンで洗浄して化合物22を1.34g(収率96%)得た。
300mlの三角フラスコに化合物22(662mg,1.0mmol,2.0e.q.)と化合物18(365mg,0.5mmol,1.0e.q.)を加え、メタノール20mlで溶解させ、室温で3時間攪拌した。脱塩水200mlを加え、更に室温で3時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、濾取したものを取り出し、脱塩水を加えて超音波洗浄した後、再度濾過し、母液が透明になるまで、脱塩水にて洗浄を繰り返した。得られた固体を80℃の真空乾燥機で6時間以上乾燥させ、目的物V−H(789mg,収率84%)を得た。
化合物23と化合物14を原料として用い、化合物22の合成法と同様に化合物24を合成し、その800mg(収率71%)を得た。
化合物24と化合物18を原料として用い、目的物V−Hの合成法と同様に目的物V−Iを合成し、その990mg(収率91%)を得た。
4−ジエチルアミノ安息香酸(25g,129mmol)とトルエン(100ml)の混合物に塩化チオニル(14ml,200mmol)を加え80℃で1時間攪拌後、減圧濃縮し、酸クロリドを得た。別容器に無水塩化アルミニウム(20.4g,155mmol)および1,2−ジクロロエタン(100ml)の混合物を取り氷浴で冷却し、酸クロリドの1,2−ジクロロエタン(50ml)溶液を滴下した。15分攪拌後、N,N−ジエチル−m−トルイジン(21.1g,129mmol)を滴下し、室温にした後、氷水に注いだ。4N水酸化ナトリウム水溶液でpH10以上として、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を1N水酸化ナトリウム水溶液で洗い、セライト濾過して不溶物を除いた。このものを飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル800g,ヘキサン/酢酸エチル4/1)で精製し、生じた結晶をヘキサンにて洗浄して化合物23を得た(14.6g,収率33%)。
化合物23(3.38g,10mmol)、N−エチル−1−ナフチルアミン(1.71g,10mmol)およびトルエン(15ml)の混合物にオキシ塩化リン(1.4ml,15mmol)を加え、120℃で2時間攪拌した。室温に冷却後、1N塩酸水溶液を加えて15分攪拌し、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学、シリカゲル60球状,400g,クロロホルム/メタノ−ル15/1→7/1)で精製し、固体をヘキサンで洗浄して化合物26(3.21g,収率61%)を得た。
化合物26(1.06g,2.0mmol)、化合物18(0.70g,1.03mmol)、およびメタノール(10ml)の混合物を室温で1.5時間攪拌した。水(20ml)を加え、生じた塊を粉砕した後、室温で1.5時間攪拌した。その後、吸引濾過し、得られた固体を乾燥した。乾燥固体にメタノール(30ml)と水(60ml)の混合物を加え、2時間攪拌し、沈殿を濾取し、水で洗浄して目的物I−F(1.34g,収率83%)を得た。
N,N−ジエチル−m−トルイジン(408mg,2.5mmol,1.0e.q.)を脱水トルエンに溶解させ、オキシ塩化リン(575mg,3.75mmol,1.5e.q.)と化合物1(973mg,3mmol,1.2e.q.)を加え、120℃で5時間加熱還流させた。その後室温に戻し、1N飽和食塩水を加え、クロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノ−ル=15:1)で精製し、ヘキサンで洗浄して化合物27(485mg,収率38%)を得た。
化合物27と化合物18を原料として用い、目的物V−Hの合成法と同様に目的物I−Gを合成し、その578mg(収率91%)を得た。
1−アミノナフタレン(14.3g,100mmol)、2−エチルヘキシルブロミド(19.2g,100mmol)、炭酸カリウム(15.2g,110mmol)、およびN−メチル−2−ピロリドン(100ml)の混合物を120℃で2時間、次いで140℃で2時間攪拌した。室温に冷却後、トルエン(100ml)加え、吸引濾過して沈殿を除去した。母液にトルエンと水を加えて分液し、トルエン層を水で4回洗浄した後、減圧濃縮してカラムクロマトグラフィー(Merck7734,300g,ヘキサン/酢酸エチル100/1→50/1→30/1)で精製して化合物28(8.88g,収率37%)を得た。
化合物23と化合物28を原料に用い、化合物26の合成と同様にして化合物29を合成した。
化合物29と化合物18を原料に用い、目的物V−Hの合成と同様にして目的物I−Hを合成し、その739mg(収率92%)を得た。
[合成例20]
WO2008/003604A2に記載の方法にて得られた下記化合物30と、市販の4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを原料に用い、目的物I−Fの合成(合成例17)と同様にして目的物I−Iを合成した(収量4.17g,収率61%)。
m−トルイジン(18.6g,174mmol)、ヨウ化イソブチル(50ml,434mmol)、炭酸カリウム(60g,435mmol)、及びN−メチルピロリドン(200ml)の混合物を120℃で3時間、次いで140℃で14時間攪拌した。室温に冷却後、トルエン(400ml)で希釈し、吸引濾過してトルエン(100ml)で洗い込んだ。濾液に水を加え、分液し、トルエン層を水で4回洗浄した。トルエン層を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Merck7734,800g,ヘキサン/酢酸エチル100/0→100/1→50/1→30/1)で精製してN,N−ジイソブチル−m−トルイジン24.4g(収率64%)を得た。
500ml反応容器にジムロートをセットして、窒素置換し、氷冷した。そこに塩化アルミニウム(8.75g,65.6mmol)と1,2−ジクロロエタン(10ml)を入れた。ここへ、4−ブロモ安息香酸クロリド(12.0g,54.7mmol)の1,2−ジクロロエタン(20ml)溶液を15分かけて滴下した(内温0℃以下)。20分撹拌し、次にN,N−ジイソブチル−m−トルイジン(12.0g,54.7mmol)の1,2−ジクロロエタン(20ml)溶液を10分かけて滴下し、そのまま1時間撹拌した。室温に昇温しながら、約2.5時間撹拌し続けた。このものを氷水に注ぎ、クロロホルムで洗い込んだ。次いで、4N水酸化ナトリウム水溶液でpH10以上にし(氷冷下)、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を1N水酸化ナトリウム水溶液で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル15/1−10/1)で精製し、化合物31(8.85g,収率40%)を黄色粉末として得た。
500ml反応容器にジムロートをセットして、窒素置換した。そこに化合物31(8.5g,21.1mmol)を取り、脱水トルエン(100ml)で溶解させた。次にジイソブチルアミン(7.3ml,42.2mmol,東京化成)、t−ブトキシナトリウム(4.06g,42.2mmol)、酢酸パラジウム(II)(284mg,1.27mmol)、およびトリ−t−ブチルホスフィン(10%ヘキサン溶液,552mg,2.53mmol)を加え、5.5時間加熱還流した。室温に冷却後、水を少量加えセライトで濾過し、トルエンで洗い込み、濾液をトルエンで抽出した。
トルエン層を飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル15/1→10/1)で精製し、化合物32(8.3g,収率88%)を黄色オイルとして得た。
化合物32と1−イソブチルアミノナフタレンを原料に用い、目的物I−Fの合成(合成例17)と同様にして目的物I−Jを合成した(収量386mg,収率92%)。
[合成例22]
化合物23とWO2008/003604A2に記載の方法で得られた化合物30を原料に用い、目的物I−Fの合成(合成例17)と同様にして目的物I−Kを合成した(収量791mg,収率88%)。
以上の合成例3、5〜10、12〜22で得られた各目的物を構成する色素1および2について、偶数電子系のカチオン系青色色素(色素1)と偶数電子系のアニオン系色素(色素2)について、時間依存密度汎関数(B3LYP/6-31G(d,p))計算により得られる、色素1の最低一重項励起状態(S1状態)の励起エネルギー(ΔES1(色素1))と、色素2の最低一重項励起状態(S1状態)の励起エネルギー(ΔES1(色素2))と、色素2の最低三重項励起状態(T1状態)の励起エネルギー(ΔET1(色素2))および式(i)、式(ii)を満たしているか否かを、以下の表41に示す。
また奇数電子系の色素2に関しては最低励起状態の励起エネルギー(ΔElowest(色素2))と、式(iii)を満たしているかどうかを表41に示す。
なお、目的物において、色素2はフタロシアニン化合物またはアントラキノン化合物部分であり、色素1はトリアリールメチン化合物部分である。
<参考例1>
前記合成例10にて得られた目的物X−A 1mgを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノメチルエーテル混合溶剤(重量比4/6)に溶解し、得られた溶液の吸光スペクトルを、(株)日立ハイテクノロジーズ製 日立分光光度UV−3500(Xe光源)にて測定した。
溶液の極大吸収波長λmaxは630nmであり、励起エネルギー(ΔEobs)への換算式 ΔEobs(eV)=1239.8/λmax(nm) を用いて計算すると、目的物X−Aの実測の励起エネルギーは1.97eVであった。
一方、時間依存密度汎関数(B3LYP/6-31G(d,p))計算による、目的物X−Aの強吸収励起状態の励起エネルギーは2.52eVであった。よって、本発明では実測値と計算値のシフト量を2.52eV−1.92eV=0.55eVと見積もった。
一重項酸素を発生させるための励起エネルギーの実測値0.92eVに、このシフト量0.55eVを足した値、すなわち1.5eV(少数第2位を四捨五入)より、計算により求められたT1状態の励起エネルギーが小さいアニオンを有する薄膜(例えばカラーフィルター用画素)では、アニオンのT1状態の励起エネルギーが一重項酸素の励起エネルギーより小さくなることが期待され、励起エネルギー移動による一重項酸素の発生が抑制されることが期待できる。
[2]バインダー樹脂の合成
[合成例23]
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら撹拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン20重量部、グリシジルメタクリレート57部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成(株)製FA−513M)82重量部を滴下し、更に120℃で2時間撹拌し続けた。次に、反応容器内を空気置換し、アクリル酸27重量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部およびハイドロキノン0.12重量部を投入し、120℃で6時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)52重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、120℃で3.5時間反応させ、固形分濃度62重量%の樹脂溶液を得た。こうして得られたバインダー樹脂aのGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は約15000であった。バインダー樹脂aの構造は以下に示す通り(以下の4種の繰り返し単位を含む高分子化合物)であった。
{実施例および比較例}
[着色樹脂組成物の調製]
<染料系組成物の調製(実施例1〜8,10〜18および比較例1〜4)>
表42に、実施例1〜8,10〜18、および比較例1〜4に含有される染料(色材)を示す。
表42記載の各染料および合成例23で得られたバインダー樹脂aに他の成分を混合して、表43に表す配合で着色樹脂組成物を調製した。混合に際しては、染料が十分に溶解するまで1時間以上撹拌し、最後に孔径5μmの駒型フィルターによって濾過し、異物を取り除いた。
<溶剤に対する溶解度の低い色材(染料および顔料)系組成物の調製(実施例9および比較例5)>
色材として表44に記載の色材11.36重量部(比較例5については2種類の合計量)、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート57.5重量部、分散剤として実施例9についてはアビシア社製「ソルスパース55000」、比較例5についてはビックケミー社製「ディスパービック2000」をそれぞれ固形分換算で3.02重量部、径0.5mmのジルコニアビーズ215.7重量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させてブルー色材分散液を調製した。
得られた色材分散液に、合成例23で得られたバインダー樹脂aと他の成分を混合して表45に表す配合で着色樹脂組成物を調製した。
<分光特性および耐熱性・耐光性評価>
5cm角に切断したガラス基板上に、上記各着色樹脂組成物をスピンコート法により乾燥膜厚1.8μmとなるように塗布し、減圧乾燥させた後、ホットプレート上にて80℃で3分間プリベークした。その後、60mJ/cm2の露光量にて全面露光した後、日立製作所製分光光度計「U−3310」にて、分光透過率を測定し、XYZ表色系における色度(C光源)を算出した。これらの結果を表46、表47に示す。
次に、上記基板を2枚の偏光板の間に、隙間を空けずに密着して挟み、色彩輝度計(トプコン社製「BM−5A」)を用いて偏光板が直交の時の光量A(cd/cm2)と平行の時の光量B(cd/cm2)の比(B/A)から、コントラスト比を算出した。この結果を表48に示した。
表46〜48より次のことが分かる。
有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイの双方で要求される輝度(Y)については、同一色度(y)座標での比較では、比較例3が最も高く、以下、実施例14、10、9、16、17、15、13、12、8、11、比較例4、実施例18、7、3、比較例5、実施例1、5、6、4、2の順となっている。比較例5が従来使われている顔料系であるから、実施例1、5、6、4、2は、従来品より低く使いづらい。しかし一方、液晶ディスプレイにおいて極めて重要な特性であるコントラストに関しては、実施例1〜8,10〜18、および比較例1〜4で、比較例5の従来顔料系に比べて極めて高い値を示しており、輝度が低いものであっても補って余りあるほどの特性と言える。
尚、特許文献3に記載の染料(比較例1、2)との比較においては、同一染料濃度、同一膜厚において実施例に記載の着色樹脂組成物が濃い青色を表現しているのに対し、比較例1、2の着色樹脂組成物は淡い青緑色を表現しているに過ぎない(表47の色度データ参照)ことから、色再現性の点で圧倒的な優位性を示しているといえる。
続いて、上記基板について、クリーンオーブンにて200℃および230℃にて30分焼成した後、上記と同様、分光透過率を測定し、色差(ΔE*ab)を測定した結果を表49に示す。また、同基板をクリーンオーブンにて180℃で30分焼成した後、キセノンフェードメーターにて紫外線を16時間照射した際の、照射前後の色差(ΔE*ab)を測定した結果を表50に示す。尚、照射条件としては基板に直接照射した場合と、図1に示した透過スペクトルを有するUVカットフィルター乃至図2に示した透過スペクトルを有する偏光板を介して照射した場合の計3条件について耐光性評価を実施した。
表49,50より、実施例の着色樹脂組成物は、分光特性が比較的良好であった比較例3、4の組成物(比較例3は特許文献4に記載の染料に類似の構造)に比べて、極めて高い耐熱性、耐光性を有することがわかる。
次に、上記塗布基板を、有機電界蛍光発光(EL)素子と組合せて色度測定を行った。
<有機電界蛍光発光素子の作成>
図4に示す有機電界蛍光発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板1の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(スパッター製膜品;シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥し、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。続いて、正孔輸送層3として、下記構造式に示す9,9−ビス[4−(N,N−ビスナフチルアミノ)フェニル]−9H−フルオレン(LT−N121,LuminescentTechnology社製)をるつぼ温度285〜310℃として、蒸着速度0.1nm/秒で40nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は1.7×10−4Paであった。
次に、発光層4として、下記構造式に示す2,2’−ジペリレニル−9,9’−スピロビフルオレン(LT−N428,LuminescentTechnology社製)と2,7−ビス[9,9’−スピロビフルオレニル]−9,9’−スピロビフルオレン(LT−N628、Luminescent Technology社製)とを、以下の条件で共蒸着した。
(発光層の蒸着条件)
LT−N428のるつぼ温度:320〜330℃
LT−N628のるつぼ温度:450〜455℃
LT−N428の蒸着速度 :0.1nm/秒
LT−N628の蒸着速度 :0.05nm/秒
上記の条件により、30nmの膜厚で積層して発光層4を形成した。蒸着時の真空度は1.7〜1.9×10−4Paであった。
続いて、発光層4の上に、電子輸送層5として下記構造式に示す1,3−ビス[2−(2,2’−ビピリジニル)−1,3,4−オキサジアゾイル]−ベンゼン(LT−N820,Luminescent Technology社製)を同様にして30nmの膜厚で蒸着した。このときのLT−N820のるつぼ温度は255〜260℃、蒸着速度は0.08〜0.1nm/秒の範囲で制御し、蒸着時の真空度は1.2×10−4Paとした。
なお上記の正孔輸送層3、発光層4および電子輸送層5を真空蒸着する際の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層5まで形成した素子を、一旦、真空蒸着装置内より大気中に取り出した。次に、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプと直交するように素子に密着させた。続いて、この素子を別の真空蒸着装置内に設置し、有機層を形成した場合と同様に、真空蒸着装置内の真空度が2.3×10−5Pa以下になるまで排気した。
次に、陰極6として、先ず、フッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.008〜0.01nm/秒、真空度3.7×10−6Paで、0.5nmの膜厚で電子輸送層5の上に製膜した。続いて、同様に、アルミニウムをモリブデンボートにより加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒、真空度2.7×10−6〜2.5×10−6Paで膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極6を完成させた。以上の2層型の陰極6を形成する際の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界蛍光発光素子を調製した。
この素子に6Vの電圧を印加した際の発光の有無と発光色を評価した。この時のEL発光スペクトルの極大波長は436nmであり、CIE色度座標(正面輝度10〜1000cd/m2時のCIE色度座標)は(0.16、0.15)であった。
<分光特性評価>
上記有機電界蛍光発光素子と、実施例1〜18、比較例1〜5の塗布基板を組合せて色度を測定した。結果を表51に示す。
表51より、有機電界蛍光発光素子を光源とした場合の比較においても、上記C光源での比較との序列は変わらないが、コントラストの概念が存在しないため、従来顔料系である比較例5に対して優位性を示す実施例は、実施例7〜18であるといえる。(なお、表51によると実施例11及び12のYの値は比較例5より低い。しかし実施例11及び12のyの値を、比較例5と同じ値に換算すると、実施例11及び12の方が優位になる。)