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JP5856762B2 - 密封容器のヒートシール方法 - Google Patents

密封容器のヒートシール方法 Download PDF

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Description

本発明は、主として食器類の包装に用いられる密封容器、更に具体的にはヨーグルト、ゼリー、プリン、ジャム等の包装用のカップ状容器を、特に、容器内に面する下面側に内容物付着防止層を有する蓋材を用いて密封する場合に好適に適用される密封容器のヒートシール方法に関する。
この種のヒートシール密封容器は、一般にポリエチレン/紙/ポリエチレンの積層材料によるカップ状の容器本体に対し、基材フィルムとアルミニウム箔との積層からなる基材層のアルミ箔面側に、中間樹脂層を介してヒートシール層、即ち熱封緘層を設けた蓋材が用いられ、該蓋材をヨーグルト等の被包装物を充填した容器本体の上面開口に被せて、周縁部を容器本体の上縁フランジ部上に熱融着することによって密封包装体を形成するものとなされている。
そして、かかる密封容器においては、使用する蓋材について良好なヒートシール性、密封性と、開封のための適当な易剥離性が求められるのと同時に、内容物の非付着性、即ち容器の内面側の蓋材裏面に内容物が付着するのを防止しうるものであることが望まれる。蓋材の裏面に内容物が付着すると、開封時に手指や衣服、あるいは周辺を汚すおそれがあると共に、内容物の棄損による無駄を生じ、あるいは付着物を剥がし取る手間がかかり、更には不潔感を催す等の不利益を生じるためである。
そこで、従来、内容物付着防止性能を備えた蓋材について種々の提案がなされてきた。なかでも、下記特許文献1に示す先行提案技術は、熱封緘層の外面に付着防止層として、極めて微細な疎水性シリカ等の酸化物微粒子による三次元網目状構造の多孔質層を形成するというものであり、内容物付着防止効果の点で優れた効果を奏し得ることから、近時注目を浴びている。
しかしながら、上記先行提案技術は、ヒートシール部において微細な疎水性無機微粒子からなる付着防止層が、容器本体と蓋材の熱封緘層との間に介在する夾雑物となるため、ヒートシール性が損なわれる危惧がある。この点、上記先行特許文献1の記載では、疎水性無機微粒子はヒートシール時に溶融軟化する熱封緘層の中に入り込み、埋没してしまうことから、ヒートシール性を阻害しないものとされているが、このように疎水性無機微粒子を熱封緘層中に確実に取り込むものとするためには、ヒートシール温度を高めに設定する必要が生じる。このため、低温シール性が阻害されるだけでなく、ヒートシール時に蓋材が熱圧シール盤から受けるいささか苛酷な熱影響が増大し、熱封緘層中の特に低融点成分が付着防止層中に滲入し入り込むことで、該付着防止層が元来保有する付着防止性能が損なわれるおそれがある。特に、ヒートシール部周辺、即ち容器のフランジ部近傍領域においては、疎水性無機微粒子を含む熱封緘層の一部が容器内方向に溶融流動して樹脂溜まりを作ってしまうことにより、該部分の内容物付着防止効果が他の部分に較べて相対的に著るしく低下してしまうことが懸念される。
一方、従来から密封容器をヒートシールする場合の、夾雑物シール性を高めるための技術として、下記特許文献2,3に示されるような提案が行われている。
特許文献2に示す先行提案技術は、押圧シール面に格子状の凹凸を形成した第1シール盤を用いて仮シール工程を実施したのち、続いてシール面にリング状凸部が設けられた第2シール盤を用いて本シール工程を実施するというものである。この先行従案技術は、第1次の仮シール工程で蓋材とフランジ部との間の夾雑物をシール面の格子状凹部に対応するヒートシールされない部分に一旦逃したのち、次いでリング状凸部を有する第2シール盤を用いて本シールを行うことにより、夾雑物が完全に排除されたリング状の本シール部を形成するというものである。しかしながら、本発明が適用対象とするような例えば疎水性無機微粒子群からなる付着防止層を有する蓋材のヒートシールのための夾雑物対策としては未だ不十分なものでしかなく、特に熱封緘層の融点が低く熱流動性が高い場合には、熱封緘層が流れてシール不良を起こす可能性が懸念される。のみならず、仮シール工程と本シール工程の2回のシール工程を実施する必要があるため、コスト及び作業時間の点でも不利である。
また、前記特許文献3に示される先行提案技術は、シール面に断面円弧状の凸部を形成したシール盤を用いて第1段階の仮シール工程を実施することにより、蓋材とフランジ部との間に介在する夾雑物をフランジの内外方向に追い出すようにしたのち、平坦なシール面を有するシール盤を用いて第2段階の本シールを行うことで、夾雑物の介在しない強固なシール部を形成するというものである。しかしながら、この先行提案技術によっても、本発明が適用対象とするような密封容器においては、ヒートシール時に疎水性無機微粒子を含んだ熱封緘層の樹脂が容器内方向に流動して樹脂溜まりを形成するおそれがあるため、フランジ部周辺の内容物付着防止効果が低下することが懸念されると共に、ヒートシール工程を2度繰返し行うためにコスト高につき、また時間がかかる点でも不利である。
特許第4348401号公報 特開2000−85708号公報 特開平2−109835号公報
本発明は、従来技術における上記のような問題点に鑑み、特に、疎水性無機微粒子による付着防止層を有する蓋材を使用して容器のヒートシールを行う場合にあっても、夾雑シール性に優れ、安定した良好なヒートシール性能を発現し、所要の封緘強度の確保と易開封性との好適な調和をはかりうると共に、好ましい低温シール性を保有し、ひいては付着防止層の熱影響による性能劣化を防止し、ヒートシール後も良好な内容物付着防止効果を保持しうる密封容器のヒートシール方法及び該方法を実施するためのヒートシール装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成する手段として、[1]〜[4]項に記載のヒートシール方法を提示する。
[1]熱封緘層の外面に内容物付着防止層が積層形成された蓋材であって、
前記熱封緘層が、必須成分としてエチレン−不飽和エステル共重合体、ワックス、および粘着付与剤を含有する樹脂組成物からなり、
かつ、前記内容物付着防止層が、疎水性無機微粒子を主成分として含むものである蓋材
を容器本体のフランジ部上にヒートシールするに際し、
前記蓋材を上面側から押圧加熱するヒートシール盤の環状シール面が、半径線方向の中心側から外周縁側に向って上方に0.3〜2.0度傾斜した傾斜面に形成されたシール盤を用いてヒートシールすることを特徴とする密封容器のヒートシール方法。
[2]前記環状シール面の幅方向の中間部に1ないし複数条の環状溝が設けられ、該環状溝によって前記環状シール面が半径線方向に複数の分割シール面に分割形成されてなる前項[1]に記載の密封容器のヒートシール方法。
[3]複数個の前記分割シール面が、単一の前記傾斜面内に位置されて、相互に軸線方向の高さ位置が異なるものとなされている前項[2]に記載の密封容器のヒートシール方法。
[4]複数個の前記分割シール面が、それぞれ相互に位相を異にする複数の傾斜面内に位置されて、互いに軸線方向の高さ位置がほぼ等しいものとなされている前項[2]に記載の密封容器のヒートシール方法。
本発明は、前記[1]項に記載のシール方法において、特定の樹脂組成物からなる熱封緘層の外面側に隣接して設けられた内容物付着防止層が、ヒートシールの障害物となる疎水性無機微粒子を主成分として含むものである蓋材を容器にヒートシールするに際し、シール装置の上型治具であるシール盤のシール面が所定方向に0.3〜2.0度傾斜されていることにより、該シール盤で熱圧された蓋材の熱封緘層が付着防止層を伴って容器のフランジ部の外側方向に流動し移行する傾向を示す。つまり、環状シール部の幅方向の内方領域が外方領域より強く押圧されるため、熱封緘層が加熱により軟化溶融するに従ってその外面側の付着防止層と共にフランジの外周縁方向に移行し、特に帯状シール部の内周縁部及びそれに近い領域部分においては付着防止層が排除された状態でヒートシールされる。従って、付着防止層がヒートシールを妨げる夾雑物とならず、容器本体のフランジ部に対して蓋材を必要かつ十分なシール強度でヒートシールすることができる。かつまた、部分的に濃度や厚さにバラツキを有することの多い付着防止層の夾雑にかかわらず、全周に亘ってほぼ均等なシール強度を実現しやすいことも相俟って、開封時に適当な力で比較的容易に開封可能とする適度の易開封性も容易に確保できる。
しかも、この所要のシール強度を得るために、徒らにヒートシール温度を上げる必要もないので、付着防止層を有しない蓋材のときとほぼ同等程度の、比較的低い温度でヒートシールすることが可能になる。つまり、好ましい低温シール性を保有しうる。
このことはまた、ヒートシール時にヒートシール盤から蓋材に対して高温の軸射熱や伝導熱による苛酷な熱影響を及ぼすことがなくなるので、内容物付着防止層のヒートシール熱による性能劣化現象の発生を抑制しうる。
また、ヒートシール時に前記のように付着防止層の成分を取り込んだ熱封緘層が、フランジ部の内側方向、即ち容器内方向へ流動するのを防止しうることにより、容器内におけるフランジ部と蓋材との境界部位近傍に付着防止性を喪失した樹脂溜まりが形成されるのを防止しうる。
従って、上記のような苛酷な熱影響による付着防止層の性能劣化、およびヒートシール部近傍領域での樹脂溜まりの発生による付着防止性能劣化をいずれも防止でき、ひいてはヒートシール後においても蓋材が本来有する内容物付着防止効果を毀損することなく良好に維持しうる。
また、前記[2]項に記載のように、環状シール面が1ないし複数条の環状溝によって半径線方向に複数の分割シール面に分割されたシール盤を用いる場合には、ヒートシール時に付着防止層の材料成分を含んで流動する熱封緘層をシール面の全体幅の中で上記環状溝の対応部分に分散させて集めることができ、夾雑物が排除された細幅な線状ヒートシール部分を複数条形成することができるので、前記のような好適なシール強度と易開封性の確保、低温シール性の保有、更には蓋材における内容物付着防止性能の安定的な確保の諸
効果を一層良好に達成しうる。
また、前記[3]項に記載のように前記分割シール面が単一の傾斜面内に位置されて、相互に軸線方向の高さ位置が異なるものとなされている場合には、熱封緘層の厚さが比較的厚く、あるいは熱流動性が比較的低い合成樹脂組成物からなるものであるような場合にも特に前記諸効果を遜色なく達成し易い。
また、前記[4]項に記載のように、前記分割シール面が、それぞれ相互に位相を異にする複数の傾斜面内に位置されて、互いに軸線方向の高さ位置がほぼ等しいものとなされている場合には、上記[4]項の場合とは逆に、熱封緘層の厚さが比較的薄く、あるいは熱流動性が高い合成樹脂組成物からなるものであるときに特に有効である。
本発明によるヒートシール装置の要部の断面図である。 本発明が適用される蓋材の積層構成の一例を示す断面図である。 本発明によるヒートシール工程における熱圧シールが行われる直前の状態の要部の断面図である。 本発明によるヒートシール工程における熱圧シール時の状態を模式的に示す要部の断面図である。 本発明によるヒートシール盤のシール面構成の第1変形態様例を示す断面図である。 本発明によるヒートシール盤のシール面構成の第2変形態様例を示す断面図である。
本発明の適用対象とする密封容器は、ヨーグルト、ジャム、ゼリー等の主として粘調質の流動性食品類(A)の密封包装に用いられるものであり、図1に示すようなカップ状の容器本体(10)と、これにヒートシールされるシート状蓋材(20)との組合せからなる。
容器本体(10)は、蓋材(20)に対してのヒートシール適性を有するものであればその材質、材料の種類を問わないが、一般的には、板紙を基材としてその両面にポリエチレン等の熱可塑性樹脂層をコートした積層材料を用いて、胴部(11)周壁にテーパーを有するカップ状に形成されたものであり、上端開口縁に蓋材(20)がヒートシールされるフランジ部(12)を有する。容器本体(10)としては、上記の厚紙基材による紙製カップの他、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製の成形カップを用いても良い。
一方、蓋材(20)は、本発明においては特に、図2に示すようにヒートシール用の熱封緘層(25)に隣接してその外面、即ち容器の内部側の表面に、別途内容物付着防止層(26)が積層形成された蓋材を適用対象とする。かかる内容物付着防止層(26)を有しない蓋材の場合には、本発明が解決すべき技術的課題を生じるおそれが少ないからである。
更に、本発明が適用対象とする上記蓋材(20)の具体的構成について説明すれば次のとおりである。
蓋材(20)は、図2に示すように基材フィルム層(22)と金属箔層(23)との積層からなる基材層(21)と、該基材層(21)の金属箔(23)側の外面、即ち施蓋使用時に容器本体(10)の内部に向く側の面に中間樹脂層(24)を介して熱封緘層(25)が設けられ、更に該熱封緘層(25)の外面に、付加的に内容物付着防止層(26)が積層形成されたものである。
ここに、本発明の技術課題を生じさせる内容物付着防止層(26)の構成材料は、特に限定されるものではなく、例えば特開2009−73523号公報あるいは特開2009−241943号公報に記載されているようなワックスとそれに分散された固体微粒子充填材との混合組成物で構成されたものであっても良いが、内容物付着防止性能に優れ、本発明の適用による効果が特に顕著である付着防止層(26)として、疎水性シリカを代表例とする疎水性無機微粒子を主成分として含むものであることが望ましい。疎水性無機微粒子は、蓋材の内容物付着防止性能の支配的役割を担うものであり、20mN/m以上の表面エネルギーを有する疎水性物質からなるものであればその材料は特に限定されない。具体的に例示すれば、疎水性のシリカ、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等の疎水性無機微粒子を挙げることができる。なかでも、疎水性能、コスト、超微粒子材料としての市場からの入手のし易さ等の観点から、疎水性シリカやアルミナの使用が好適である。疎水性シリカは、乾式法シリカ及び湿式法シリカのいずれでも好適に用いることができる。疎水性無機微粒子の平均粒径は1〜5,000nmの範囲のものが用いられる。平均粒径1nm未満の超微粒子は市場からの入手が困難であり、また平均粒径5,000nmを超えるものでは、ヒートシール性を阻害するおそれがあると共に、付着防止効果が低下するためである。好ましい平均粒径は3〜1,000nm、特に好ましくは3〜500nmの範囲である。
また、付着防止層(26)は、上記のような疎水性無機微粒子を主成分として、それに熱可塑性樹脂微粒子を50重量%未満、好ましくは30重量%以下の割合で配合した混合組成物をもって構成したものでも良い。かかる樹脂微粒子の好適例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−不飽和エステル共重合体等のオレフィン系樹脂の平均粒径1〜5,000nm、好ましくは50〜1,000nmの微粒子を挙げることができる。
また、蓋材(20)の熱封緘層(25)を構成する樹脂組成物の最も一般的で好ましい樹脂組成物としては、エチレン−不飽和エステル共重合体、ワックス、および粘着付与剤を必須成分として含有し、必要に応じて更にブロッキング防止剤や酸化防止剤等の添加剤を任意成分として含む樹脂組成物である。
かかる組成の樹脂組成物を熱封緘層として用いること自体は、従来公知であるが、従来一般に汎用されている当該樹脂組成物は、比較的低軟化点のものが用いられていた。例えば、最も一般的には軟化点65℃〜75℃程度の樹脂組成物が用いられていた。また、高軟化点のものは高粘度であった。
これに対し、本発明の最も好適な適用の場面では、上記樹脂組成物の軟化点として、特に90〜140℃、好ましくは100〜130℃、更に好ましくは110〜120℃のものを用い、160℃での溶融粘度が4000mPa・s以下、好ましくは2000〜4000mPa・s、さらに好ましくは2000〜3500mPa・sの樹脂組成物を用いたものであることが望ましい。このような比較的高軟化点でかつ一定の溶融粘度を有する樹脂組成物を熱封緘層に用いたものである場合、前述したように熱封緘層の外面側に付加形成される疎水性無機微粒子による付着防止層の撥水性、ひいては付着防止性の熱安定性の向上に貢献しうる。
熱封緘層に用いる樹脂組成物の上記のような軟化点の設定及び溶融粘度の設定は、当該組成物を構成する各成分の後述するような融点または軟化点の選択と組合せによることのほか、各成分の配合組成比の調整により容易に行うことができる。特に、樹脂組成物の高軟化点化をはかりながら、溶融粘度を可及的低く抑えるという、技術常識的にはジレンマを伴う特異な要請に対して、ワックス及び粘着付与剤に比較的高い融点または軟化点を有するものを選択使用しつつ、それらの配合量を接着成分であるオレフィン系等の樹脂成分の配合量との関係で、一般的な配合比率より多目に設定することで容易に対応することができる。
具体的には、上記エチレン−不飽和エステル共重合体として、融点が70〜100℃の範囲のものを用いることが好ましい。これが70℃未満のものでは、熱封緘層のシール温度が低すぎるために付着防止層の付着防止効果の熱安定性が低下するおそれがある。逆に、100℃を超えるものでは、低温ヒートシール性が阻害され、シール速度が遅くなって実際の内容物充填シール時の作業能率が低下する。最も好ましくは、融点75〜95℃の範囲である。また、ワックスおよび粘着付与剤は、軟化点または融点が80℃以上、好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上のものを用いることが望ましい。
また、樹脂組成物の必須成分の配合組成比は、該樹脂組成物に求める軟化点、溶融粘度を考慮して、設定する必要があるが、エチレン−不飽和エステル共重合体を20〜80wt%、好ましくは30〜60wt%、ワックスを20〜60wt%、好ましくは30〜50wt%、粘着付与剤を1〜30wt%、好ましくは5〜25wt%に設定することで、良好な結果を得ることができる。
なお、蓋材(20)におけるその他の構成材料中、基材フィルム層(22)は、包装容器の表側に配置されるもので、その材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、セルロースアセテート、セロハンなどの単層または複合フィルム、あるいはこれらのフィルムを紙などにラミネートしたものなどが用いられる。基材フィルム層(22)は通常適宜印刷(27)が施されて意匠性が付与される。
金属箔層(23)は、ガスバリヤ性、遮光性などを付与するものであり、多くはアルミニウム箔が用いられる。特にヨーグルトの容器用の蓋材にあっては、遮光性、軽量性を満足するものとして厚さ5〜50μm程度のアルミニウム箔が好適に用いられる。また、基材フィルム層(22)との積層接着には一般的な接着剤が用いられる。
中間樹脂層(24)は、基材層(21)と熱封緘層(25)との間に介在して、蓋材に所定の剛性やヒートシール時のクッション性を付与するものであり、適宜必要に応じて設けられる。一般的には厚さ5〜40μmのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等が用いられる。
さて、本発明の主旨とするヒートシール方法は、上記のような容器本体(10)にヨーグルト等の内容物を充填したのち、その上面開口に被せられる蓋材(20)の周縁部を容器本体(10)のフランジ部(12)にヒートシールするものである。このヒートシールに用いるヒートシール装置は、図1に示すようにカップ状容器本体(10)のフランジ部(12)を下側から支承する下型治具(1)と、前記容器本体(10)の上面開口に被せられた蓋材(20)の周縁部を前記フランジ部(12)上において上面側から押圧加熱するヒートシール盤(2)を備える。
ここに、本発明は、上記ヒートシール盤(2)の環状凸部(4)の下面のシール面(3)を、所定の傾斜面(S)に形成したものとし、該シール盤(2)を用いてヒートシールすることを特徴とする。
シール面(3)の上記の傾斜面(S)は、図3において傾斜角度をやや誇張して示している。同図に示すように傾斜面(S)は、環状シール面(3)の半径線方向の中心側から外周縁側に向かって上方に傾斜した傾斜面であり、かつその傾斜角度(θ)は、0.3〜2.0度の範囲に設定される。
シール面(3)をこのような傾斜面(S)に形成したシール盤(2)を用いて蓋材(20)のヒートシールを行うことにより、環状凸部(4)に対応する蓋材(20)の外周縁部において、図4にやや誇張して示すように、下降するシール盤(2)で圧下されかつ加熱されて熱封緘層(25)が軟化溶融されるに伴い、該熱封緘層(25)の一部が隣接する付着防止層(26)の一部を連行しつつフランジ部(12)の外周方向に押し出される傾向を示す。従って、特に環状シール部の内周縁部およびその近傍領域においては付着防止層(26)がほとんど排除された状態で熱封緘層(25)によるヒートシールが行われる。つまり、ヒートシール部において付着防止層(26)がほとんど夾雑しない。このため、容器本体(10)のフランジ部(12)に対して蓋材(20)を必要かつ十分なシール強度でヒートシールすることが可能になる。このことはまた、部分的に濃度や厚さにバラツキを有することの多い付着防止層(26)の夾雑にかかわらず、全周に亘ってほぼ均一なシール強度を実現しやすいので、開封時に適当な力で比較的容易に開封可能とする適度の易開封性も容易に確保することが可能になる。
また、付着防止層(26)が疎水性無機微粒子を主成分として含む多孔質層である場合にあっても、夾雑シール性に優れることから、所要のシール強度を得るためにヒートシール温度を格別高温に上げる必要がなく、比較的低い温度でヒートシールすることが可能であり、低温シール性にも優れる。従って、ヒートシール時にシール盤(2)から蓋材(20)に対して高温の軸射熱や伝導熱による苛酷な熱影響を及ぼすのを回避でき、内容物付着防止層(26)の熱影響による性能劣化を防止しうる。
また、ヒートシール時に前記のように付着防止層(26)の成分を取り込んだ熱封緘層(25)の一部は、図4に模式的に示すようにフランジ部(12)の外周部に押し出されてそこに樹脂溜まり(28)を形成することはあっても、フランジ部(12)の内側方向、即ち容器内方向へ流動するのを防止しうることにより、容器内におけるフランジ部と蓋材との境界部位近傍に付着防止性を喪失した樹脂溜まりが形成されることがない。
従って、上記のような苛酷な熱影響による付着防止層(25)の性能劣化、および容器内のヒートシール部近傍領域での樹脂溜まりの発生による付着防止性能劣化をいずれも防止でき、ひいてはヒートシール後においても蓋材が本来有する内容物付着防止効果を毀損することなく良好に維持しうる。
シール盤(2)のシール面(3)の傾斜角度(θ)は、後掲の実験例の結果の対比からも分かるように、傾斜を付けない0度の場合にはシール温度を比較的高温にしないと所要のシール強度を得ることができない。そのために温度を上げると容器内のフランジ部(12)近傍に樹脂溜りができて内容物付着防止効果が損なわれることが危惧される。これに対し、傾斜角度(θ)を0.3〜2度の範囲に設定した場合に、内容物付着防止性を良好に維持しながら、低温シール性、夾雑シール性、易開封性を最も良好な調和のもとに発現しうる。傾斜角度(θ)が4度になると、上記性能がやや低下傾向を示し、5度を超えると特に低温シール性が悪化し、良好な結果を得ることができない。このような実験結果をもとに、本発明は上記傾斜角度(θ)を最も好ましい範囲として0.3度〜2.0度に特定するものである。
なお、上記の図1,3,4に示した基本的な実施態様では、シール面(3)を1つの平坦面に形成したものを示したが、該シール面(3)は、その外周縁またはその近接位置を最高位とする断面緩円弧状に形成したものとしても良いし、更には傾斜角度が僅かに段階的に変化した断面屈折形のものとしても良い。このような変形態様も、本発明の前記[1]項にいう「傾斜面」の概念に含まれるものとする。
更にまた、図5及び図6には、シール盤(2)のシール面(3)の構成の好ましい変形態様例を示す。
即ち、図1,3,4の基本的態様例においては、シール面(3)を単一の平坦面からなる平ら型のものとしたが、図5及び図6に示す変形態様例は、いずれも、環状シール面(3)の幅方向の中間部に3条の環状溝(5)が所定間隔置きに設けられ、これによってシール面(3)が分割されて、4つの細幅な環状の分割シール面(3a)・・・に形成されたものである。
そのうち、図5に示される第1の変形態様のシール盤(2A)では、前記分割シール面(3a)・・・が、いずれも単一の傾斜面(S)内に位置されて、相互にシール盤(2)の軸線方向の高さ位置が順次異なるものとなされている。即ち、シール面(3)の内周縁側に位置する分割シール面(3a)ほど段階的に高さが高く下型治具(1)の方向に大きく突出したものとなされている。
このような第1の変形態様のシール盤(2A)を用いて蓋材(20)のヒートシールを行う場合、図4に基づいて説明したような現象に加えて、付着防止層(26)の成分を伴って、あるいはそれを含んで外側方向に溶融流動する熱封緘層(25)の一部が、順次環状溝(5)の対応部分にある程度分散して集められる傾向を示す。このため、各分割シール面(3a)・・・によって、付着防止層(26)成分による夾雑がほぼ排除されあるいは夾雑成分が少なくなった細幅な複数条の線状シール部分が形成されることになり、一層安定したシール強度の確保と易開封性の調和をはかることができる。
一方、図6に示される第2の変形態様のシール盤(2B)では、分割シール面(3a)・・・が、それぞれ相互に位相を異にする傾斜面、即ち半径線方向に傾斜した各傾斜面が軸線方向において段階的にずれて位置するものとなされた第1〜第4の傾斜面(S)(S)(S)(S)内に位置されたものとなされている。そして、各分割シール面(3a)・・・が、互いに軸線方向の高さ位置をほぼ同じ高さに設定されたものとなされている。
このような第2の変形態様のシール盤(2B)を用いて蓋材(20)のヒートシールを行う場合にも、前記第1の変形態様のシール盤(2A)を用いる場合とほぼ同様の作用効果を発現するが、相対的な違いとしては、第1の実施態様のシール盤(2A)では熱封緘層(25)の厚さが比較的厚く、あるいは熱流動性が比較的低いものである場合に所期する作用効果を達成し易いのに対し、第2の変形態様のシール盤(2B)では、逆に熱封緘層(25)の厚さが薄く、あるいは熱流動性が高いものである場合に特に所期する作用効果を達成し易い。
なお、上記第1及び第2の変形態様によるシール盤(2A)(2B)に加えて、それらの折衷型ともいうべき変形態様のシール盤を採用しても良い。即ち、各分割シール面(3a)・・・が、図6の第2変形態様に準じて相互に位相を異にする傾斜面(S)(S)(S)(S)内に位置するものでありながら、図5の第1変形態様に準じて相互に僅かづつ高さ位置の異なるものとしたシール盤を採用することも可能である。
また、上記の変形態様ではいずれもシール面に3条の環状溝(5)を設けて4つの分割シール面(3a)・・・に分割した場合を例示したが、溝数はシール幅との関係を考慮して1条以上何条に設定しても良い。環状溝(5)の幅と深さも、概ね0.15〜0.35mmの範囲で適宜に設定しうる。
更にまた、上記第1及び第2の変形態様では、いずれもシール面(3)の周方向にのみ環状溝(5)を形成したものを示したが、半径線方向に多数個の放射状溝を等ピッチに付加形成して碁盤目状に溝を有するものとしても良いし、更には放射状溝のみを形成する場合も本発明は排除されるものではない。
次ぎに本発明の効果を確認するために行った各種の実験例とその結果を、本発明の実施例と比較例または対照例との対比において示す。
実験例には、容器本体(10)、蓋材(20)、およびシール盤(3)(3A)(3B)についてそれぞれ下記の仕様によるものを用いた。
(容器本体)
厚紙を基材としその内外両面に樹脂層としてポリエチレンをコートした積層材料を用いて、テーパー筒状に成形した胴部(11)の底部に底部材を組み合わせてカップ状に成形した、開口径88mmのフランジ部(12)付きのカップ状容器本体(10)を用いた。
(蓋材)
基材フィルム(22)として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、その片面に厚さ30μmのアルミニウム箔(23)をポリウレタン系ドライラミネート接着剤により貼合わせ、基材層(1)とした。そして、この基材層(21)のアルミニウム箔(23)側の表面に上記同様の接着剤により、厚さ20μmのポリエチレンフィルムを積層接着して中間樹脂層(24)を形成し、更にその外側にグラビアコート法により熱封緘層(25)を形成した。これによって得られた基材層(21)/中間樹脂層(24)/熱封緘層(25)の積層体をもって蓋材本体とした。
ここに、上記熱封緘層(25)としては、下記の材料配合による樹脂組成物を塗布量18g/mの割合で塗工形成したものとした。
ワックス(融点104℃のポリエチレンワックス)・・・40重量部
樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体、融点76℃)・・・40重量部
粘着付与剤(石油系水添樹脂)・・・20重量部
上記の配合による樹脂組成物からなる熱封緘層(5)は、軟化点(環球法)110℃、160℃における溶融粘度2500Pa・sのものであった。
そこで、実験例における表1の「付着防止層・無し」の蓋材については、上記の基材層(21)/中間樹脂層(24)/熱封緘層(25)の積層体をそのまま用いるものとし、「付着防止層・有り」の蓋材については、更に上記蓋材本体の熱封緘層(25)の外面に、内容物付着防止層(26)を積層形成した蓋材(20)を用いた。この内容物付着防止層(26)は、疎水性乾式シリカ(一次粒子平均粒径7nm)をエタノールに均一分散させたコート液を、塗布量が乾燥後重量において0.8g/mとなるようにグラビアコート法で塗布したのち、乾燥させて形成したものとした。
(シール盤)
シール盤としては、図3,図5および図6のそれぞれに対応する基本態様のシール盤(I)、第1変形態様のシール盤(II)、および第2変形態様のシール盤(III)の3種類を用意した。いずれのシール盤(I)(II)(III)も、シール面(3)の幅(W)は8mmとし、傾斜面(S)の傾斜角度(θ)は後掲の表1,2に示すように特にシール盤(II)について種々変化させたものを製作して実験に用いた。なお、変形態様のシール盤(II)(III)における環状溝(5)は、いずれも幅0.3mmのものとし、深さについては上記の幅以上の深さを有するものとした。
[実験例1]
この実験では、先ず、シール盤におけるシール面の傾斜角度とシール強度(開封強度)との関係を調べるために、図5の第1変形態様によるシール盤(II)について、そのシール面(3)の傾斜角度(θ)を0〜6度の範囲で段階的に変化させたものを用いてヒートシール実験を行った。
具体的には、前記容器本体(10)に、市販のヨーグルトを120g充填したのち、これに前記蓋材(20)を被せ、シール盤(II)を用いてヒートシールした。ヒートシール条件は、押圧力90kgf、時間1.0secで、加熱温度を140℃〜200℃の範囲で20℃毎に変化させたものとして、各種の評価用の密封容器の検体を得た。
そして、これらの各検体密封容器について、シール強度を判定するため、仰角45°、速度100mm/minで蓋材を引っ張る開封強度試験を行い、開封時の最大荷重(N)を測定した。
この測定結果を表1に併記する。
Figure 0005856762
一般にこの種の密封容器の最適な開封強度の範囲は、8〜15N程度とされているところ、表1の結果から判るように、シール面(3)に傾斜がない場合には、付着防止層(26)を有する蓋材(20)においてはシール温度が低いと強度不足を生じる。即ち低温シール性に劣る。このためシール温度を高温にすると、ヒートシール後の内容物付着防止性能の維持の点で前述したような弊害を生じる。これに対しシール面(3)に傾斜を設けた場合には、低温でのヒートシールでも十分なシール強度を確保できる。しかしながら、傾斜角度(θ)が大きくなるにしたがって、ヒートシール温度の変化に対するシール強度の変化の度合いが大きいものとなり、最適なシール強度を得るためにはヒートシール温度を狭い温度範囲でコントロールする必要が生じ、その温度管理がいささか困難になる欠点が生じる。また、傾斜角度(θ)が6度に達すると、低温シールによるシール強度までもが低下する傾向を示すため、所要のシール強度の確保の点からも好ましくない。
[実験例2]
上記のような実験例1の結果を踏まえ、実験例2では、低温シール性を前提とした中での封緘強度、易開封性、内容物付着防止性の総合的な観点から、シール盤におけるシール面(3)の好適な傾斜角度(θ)を探究した。
即ち、ヒートシール条件として、シール温度140℃×押圧力90kgf×時間1.0secの一定条件を採用し、表2に示すようにシール面(3)の構成態様を異にした3種類のシール盤(I)(II)(III)を用い、かつそれらのシール面(3)の角度(θ)を変化させたものとして蓋体(20)のヒートシールを行い、多数個の評価用の密封容器検体を得た。
そして、各密封容器検体について、下記の判定方法と判定基準により、封緘強度、易開封性、内容物付着防止性を調べ、その評価結果を後掲の表2に併記した。
(1)封緘強度
「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和54年4月16日厚生省令第17号)に規定される封緘強度試験法に準じて測定を行い、付着防止層を有しない蓋体を用いた密封容器検体に比べて、封緘強度がほとんど低下していないか又は低下の程度が小さいものを「○」印、低下の程度がやや大きいものを「△」印、低下の程度が大きく強度不足であったものを「×」印で評価判定した。
(2)易開封性
シールされた蓋材(20)を実際に指先で引っ張って容器本体(10)から剥離する人力開封操作を行い、剥離に要する力、剥離の進行の滑らかさ等の点で感得される開封感の良好性を評価し、付着防止層を有しない蓋体を用いた密封容器検体の場合と較べて開封感が良好もしくは同等であるものを「○」印、やや悪いものを「△」印、明らかに悪いものを「×」印で判定した。
(3)内容物付着防止性
蓋体(20)のヒートシールによる密封後、各検体を上下逆さにして常温下に12時間放置したのち、開封して蓋体(20)の裏面へのヨーグルトの付着状態を目視観察し、ヨーグルトの付着がほとんど無いものを「○」印、付着が認められたものを「×」印で判定評価した。
Figure 0005856762
以上
上記表2の結果に見られるように、シール面に所定の傾斜角度を有するシール盤を用いてヒートシールを行った場合、シール温度140℃の低温シールにおいても封緘強度、易開封性、付着防止性の総合評価において明らかな改善効果が得られること、しかしながら上記傾斜角度が6℃以上では、却って封緘強度が低下し、易開封性も悪くなることが確認される。
1・・・下型治具
2、2A、2B・・・シール盤
3・・・環状シール面
3a・・分割シール面
4・・・環状凸部
5・・・環状溝
S、S、S、S、S・・・傾斜面
θ・・・傾斜角度

Claims (4)

  1. 熱封緘層の外面に内容物付着防止層が積層形成された蓋材であって、
    前記熱封緘層が、必須成分としてエチレン−不飽和エステル共重合体、ワックス、および粘着付与剤を含有する樹脂組成物からなり、
    かつ、前記内容物付着防止層が、疎水性無機微粒子を主成分として含むものである蓋材
    を容器本体のフランジ部上にヒートシールするに際し、
    前記蓋材を上面側から押圧加熱するヒートシール盤の環状シール面が、半径線方向の中心側から外周縁側に向って上方に0.3〜2.0度傾斜した傾斜面に形成されたシール盤を用いてヒートシールすることを特徴とする密封容器のヒートシール方法。
  2. 前記環状シール面の幅方向の中間部に1ないし複数条の環状溝が設けられ、該環状溝によって前記環状シール面が半径線方向に複数の分割シール面に分割形成されてなる請求項1に記載の密封容器のヒートシール方法。
  3. 複数個の前記分割シール面が、単一の前記傾斜面内に位置されて、相互に軸線方向の高さ位置が異なるものとなされている請求項2に記載の密封容器のヒートシール方法。
  4. 複数個の前記分割シール面が、それぞれ相互に位相を異にする複数の傾斜面内に位置されて、互いに軸線方向の高さ位置がほぼ等しいものとなされている請求項2に記載の密封容器のヒートシール方法。
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