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JP5784565B2 - 内容物付着防止蓋材 - Google Patents

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JP5784565B2 JP2012213592A JP2012213592A JP5784565B2 JP 5784565 B2 JP5784565 B2 JP 5784565B2 JP 2012213592 A JP2012213592 A JP 2012213592A JP 2012213592 A JP2012213592 A JP 2012213592A JP 5784565 B2 JP5784565 B2 JP 5784565B2
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Description

本発明は、主として食品類の包装用容器に適用されるヒートシール蓋材、更に具体的には、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ジャム等の包装用のカップ状容器に適用される内容物付着防止性を備えた蓋材に関する。
この種の熱封緘用の蓋材は、一般に基材フィルムとアルミニウム箔との積層からなる基材層のアルミ箔面側に、中間樹脂層を介してヒートシール層、即ち熱封緘層を設けたものとなされ、ヨーグルト等の被包装物を充填したカップ状の容器本体の上面開口に被せて、周縁部を容器本体の上縁フランジ部上に熱融着することによって密封包装物を形成するものとなされている。
従って、かかる蓋材においては、良好なヒートシール性、密封性と、開封のための適当な易剥離性が求められるのと同時に、内容物の非付着性、即ち容器の内面側の蓋材裏面に内容物が付着するのを防止しうるものであることが望まれる。蓋材の裏面に内容物が付着すると、開封時に手指や衣服、あるいは周辺を汚すおそれがあると共に、内容物の棄損による無駄を生じ、あるいは付着物を剥がし取る手間がかかり、更には不潔感を催す等の不利益を生じるためである。
そこで、従来、内容物付着防止性能を備えた蓋材について、下記特許文献1〜6に示されるような種々の提案がなされてきた。
特開2002−37310号公報 特開2007−153385号公報 特開2008−100736号公報 特開2009−73523号公報 特開2009−241943号公報 特許第4348401号公報
上記特許文献1〜3に示す先行技術は、基材の片面の熱封緘層に、付着防止効果を有する非イオン界面活性剤又は疎水性添加物、あるいはワックス等を添加するものであり、熱封緘層そのものに付着防止性能を付与しようとしているものであるが、いずれも未だ所期する内容物付着防止効果の点で不満足なものでしかなかった。
また、特許文献4〜5の先行技術は、熱封緘層の外面(容器側の面)に、別途内容物付着防止層を付加形成するというものであり、該付着防止層をワックスと、その中に分散された固体微粒子充填剤との組成物で構成するものである。これらの先行技術は、前記特許文献1〜3の先行技術に比べて内容物付着防止効果は一段と改善されるが、それでも未だ十分とはいえないのに加えて、ワックス中に充填剤を分散させているものであるため、熱封緘層のヒートシール性に悪影響を及ぼして密封性が不安定なものになりやすい懸念があった。
更に、特許文献6に示される先行技術は、熱封緘層の外面に、極めて微細な疎水性シリカ等の酸化物微粒子による三次元網目状構造の多孔質層を形成するというものである。
この先行提案技術は、内容物付着防止効果の点では非常に優れた効果を奏し得るものの、付着防止層が耐熱性に劣り、好ましくない熱履歴を受けた場合に付着防止効果が損なわれるという難点があった。即ち、疎水性微粒子として、合成シリカ、なかでも特に乾式法で製造されるシリカ微粒子を代表例とする一次粒子平均径が3〜100nmというような超微細な疎水性酸化物微粒子を用いるものであり、これを最も一般的なホットメルトタイプの熱封緘層を備えた蓋材の内容物付着防止層に適用した場合、付着防止層の形成工程における微粒子分散液の塗工後の乾燥時において、加熱温度が高すぎたり乾燥時間が長くなると、内容物付着防止効果が著しく損なわれる。また微粒子分散液の塗布ムラにより乾燥状態に差が生じ、塗布量の多いところが乾燥するまでの間に塗布量の少ない領域部分が過度に熱せられることになり、その部分の内容物付着防止効果が部分的に損なわれる恐れがあった。更にまた、ヨーグルト、ゼリー、プリン等の容器への充填シール時においても、待機中あるいはヒートシール中に蓋材が熱板から受けるいささか過酷な熱影響によっても、内容物付着防止効果が損なわれる恐れがあり、特にヒートシール部周辺、即ち容器のフランジ部近傍領域において内容物付着防止効果が他の部分に較べて相対的に著しく低下してしまうことが懸念されていた。このため、蓋材の製造時及びヒートシール時の工程管理がいささか厄介であり、取扱いが困難であるという難点があった。
本発明者らは、このような付着防止層の熱的な影響による性能劣化の問題に対し、その原因の解明のために鋭意実験と研究を重ねたところ、付着防止層そのものの組成や組織構造に起因するというより、むしろその下地層である熱封緘層の成分組成に1つの重大な原因があることを突きとめるに至った。
即ち、上記のような耐熱性の低下、即ち付着防止効果の熱安定性の低下は、乾燥時に受ける熱や、充填シール時に熱板から直接受ける熱、さらには待機中に熱板から受ける輻射熱等の影響で熱封緘層のホットメルト接着剤が溶融すると、微細な疎水性酸化物微粒子がホットメルト接着剤の中に沈み込んだり、あるいは微粒子間の隙間にホットメルト接着剤の溶融成分が毛細管現象で入り込んで粒子間を埋めてしまい、撥水性表面積を減殺してしまうことで内容物付着防止効果が充分得られなくなるものであることを見出すに至り、このような知見に基づいて本発明を完成し得たものである。
本発明は、従来技術における上記のような諸問題に鑑み、それらの更なる改善をはかること、更に具体的には、良好なヒートシール性、密封性、開封時のための適当な易剥離性と同時に、熱安定性に優れた内容物付着防止性能を発現する新たな改善技術を提供することを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成する手段として、内容物付着防止蓋材について次の[1]〜[6]項の手段を提示する。ここで軟化点は、環球法(JIS K6863 「ホットメルト接着剤の軟化点試験方法」に準拠)により求め、融点はDSC法(JIS K7121 「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠)により求めたものである。
[1]少なくとも基材層と熱封緘層とを有し、該熱封緘層の外面に疎水性無機微粒子を主成分として含む内容物付着防止層が設けられた蓋材において、
前記熱封緘層は、前記エチレン−不飽和エステル共重合体を30〜50wt%、ワックスを30〜50wt%、粘着付与剤を5〜25wt%配合した樹脂組成物からなり、
前記エチレン−不飽和エステル共重合体の融点が70〜100℃であり、
かつ前記ワックスの融点が80℃以上であ
前記樹脂組成物の軟化点が90℃以上であり、
一方、前記内容物付着防止層は、前記熱封緘層の外面に、極性基を有する液体分散媒中に前記疎水性無機微粒子を分散させて調製したコート液を塗布し乾燥させることによって形成されたものであることを特徴とする内容物付着防止蓋材。
[2]前記樹脂組成物の軟化点が100℃以上であり、かつ前記ワックスの融点が90℃以上であることを特徴とする前項[1]に記載の内容物付着防止蓋材。
[3]前記エチレン−不飽和エステル共重合体の融点が75〜95℃であり、
前記ワックスの融点が90〜120℃であり、
前記樹脂組成物の軟化点が100〜140℃に設定されていることを特徴とする前項[1]または[2]に記載の内容物付着防止蓋材。
[4]前記疎水性無機微粒子が疎水性シリカである前項1〜3のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
[5]前記疎水性無機微粒子は、平均粒径1nm〜5,000nmである前項1〜4のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
[6]前記付着防止層が、疎水性無機微粒子と、熱可塑性樹脂微粒子との混合組成物からなる前項1〜5のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
本発明は、前記[1]項の構成において、熱封緘層の外面に疎水性シリカ等の疎水性無機微粒子による内容物付着防止層を、極性基を有する液体分散媒中に前記疎水性無機微粒子を分散させて調製したコート液を塗布し乾燥させることによって形成したものとしたことにより、それ自体が前記特許文献6に記載されているような固有の優れた内容物付着防止性能を有する。しかも該付着防止層の下面側に位置する熱封緘層が、融点70〜100℃のエチレン−不飽和エステル共重合体を30〜50wt%、融点80℃以上のワックスを30〜50wt%、粘着付与剤を5〜25wt%配合した軟化点90℃以上の樹脂組成物からなるものとしたことにより、付着防止層の耐熱性を向上し、その付着防止性能の熱安定性を顕著に向上し得て、容器本体への封緘使用後においても上記の優れた内容物付着防止効果を良好に維持しうる。
このような耐熱性の向上効果は、本発明者らの考察によれば、次のような現象によって達成されているものと考えられる。即ち熱封緘層の外面に付加して設けられた内容物付着防止層が疎水性シリカ等の疎水性微粒子の層によって形成されているものであることとの関係において、該微粒子分散液の塗工後の乾燥時の加熱、あるいは内容物充填後の容器シール時の待機中に受ける熱板からの軸射熱、更にはヒートシール時に直接熱板から受ける熱影響等によっても、樹脂組成物中の低融点成分が早期かつ過度に溶融して高い流動性を発現するのを抑制ないし防止しうる。即ち、樹脂組成物の軟化点が高いことで、その溶融を遅らせることができ、また抑制することができる。その結果、付着防止層の疎水性無機微粒子が、不本意に熱封緘層中に沈み込んだり、あるいは微粒子間の隙間に熱封緘層の溶融成分が毛細管現象で入り込んで上記隙間を埋めてしまうのを防止しうる。従って、上記微粒子の疎水性表面の露出面積の極端な減少を防いで、良好な内容物付着防止効果を維持しうるものと考えられる。
このような耐熱性の向上効果は、前記[2]項に記載のように、樹脂組成物の軟化点を100℃以上のものに設定することにより、一層確実かつ良好に享受することができる。
また、前記[3]項に記載のように、エチレン−不飽和エステル共重合体の融点が75〜95℃であり、 前記ワックスの融点が90〜120℃であり、前記樹脂組成物の軟化点が100〜140℃に設定されているものを採用することにより、良好なヒートシール性、密封性、開封時のための適当な易剥離性と同時に、熱安定性に優れた内容物付着防止性能を確実に確保しうる。エチレン−不飽和エステル共重合体の不飽和エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニルのようなビニルエステル等である。好ましくは、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体である。
また、前記[4]項に記載のように、疎水性無機微粒子に疎水性シリカを選択使用するときは、市場から入手し易い比較的安価な材料をもって、優れた内容物付着防止効果を達成することができる。
また、前記[5]項に記載のように、平均粒径1nm〜5,000nmである疎水性無機微粒子を用いることにより、愈々市場から入手しやすい比較的安価な材料を用いて、前記のような内容物付着防止効果を一層確実に実現することができる
また、前記[6]項に記載のように、付着防止層を主成分である疎水性無機微粒子と、熱可塑性樹脂微粒子との混合組成物からなるものとすることにより、熱可塑性樹脂微粒子によって疎水性無機微粒子相互間の結合力を補うと同時に、それの熱封緘層に対する密着性をも向上し、不本意な粒子の脱落、付着防止層の剥落を防いで長期に亘り安定した内容物付着防止効果を維持しうる。加えて、付着防止層への上記熱可塑性樹脂微粒子の含有により、これが熱封緘層のヒートシール性を補うべく作用し、疎水性無機微粒子群の介在にかかわらず蓋材の容器本体に対する良好で安定した、適度なヒートシール性、つまり易開封性と封緘性とが調和した好適な密封性を確保しうる。
図1は本発明による内容物付着防止蓋材の積層構成の概要を示す断面図である。
図1は、本発明に係る内容物付着防止蓋材の積層構成の一例を示す。該蓋材は、基材フィルム層(2)と金属箔層(3)との積層からなる基材層(1)と、該基材層(1)の金属箔(3)側の外面、即ち施蓋使用時に容器本体の内部に向く側の面に中間樹脂層(4)を介して熱封緘層(5)が設けられている。上記の積層構成は従来の蓋材のそれと同様であり、基材層(1)と熱封緘層(5)とを含む積層体をここでは「蓋材本体」と呼称することとする。
本発明に係る内容物付着防止蓋材は、上記蓋材本体の熱封緘層(5)の外面に、更に付加的に付着防止層(6)を有するものである。
基材フィルム層(2)は、包装容器の表側に配置されるもので、その材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、セルロースアセテート、セロハンなどの単層または複合フィルム、あるいはこれらのフィルムを紙などにラミネートしたものなどを例示することができる。基材フィルム層(2)は通常適宜印刷(7)が施されて意匠性が付与される。
金属箔層(3)は、ガスバリヤ性、遮光性などを付与するものであり、多くはアルミニウム箔が用いられる。特にヨーグルトの容器用の蓋材にあっては、遮光性、軽量性を満足するものとして厚さ5〜50μm程度のアルミニウム箔が好適に用いられる。また、基材フィルム層(2)との積層接着には一般的な接着剤が用いられる。
なお、基材層(1)として、金属箔層(3)を使用せずに、シリカやアルミナ等の金属を基材フィルム層(2)に蒸着した金属蒸着フィルムを使用することも可能である。
中間樹脂層(4)は、基材層(1)と熱封緘層(5)との間に介在して、蓋材に所定の剛性やヒートシール時のクッション性を付与するものであり、適宜必要に応じて設けられる。一般的には厚さ5〜40μmのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等が用いられる。
熱封緘層(5)は、中間層樹脂層(4)および容器側との接着性が良好なものでなくてはならない。本発明において該熱封緘層は、エチレン−不飽和エステル共重合体、ワックス、および粘着付与剤を必須成分として含有し、必要に応じて更にブロッキング防止剤や酸化防止剤等の添加剤を任意成分として含む樹脂組成物からなる。
かかる組成の樹脂組成物を熱封緘層として用いること自体は、従来公知であるが、従来一般に汎用されている当該樹脂組成物は、その必須成分であるワックスとして、比較的低融点のものが用いられていた。例えば、最も一般的には融点65℃程度のパラフィンワックスが用いられており、比較的高い融点のポリエチレンワックスでもせいぜい融点75℃程度のものが用いられるにすぎなかった。
さらに上記樹脂組成物は、一般的には軟化点65℃〜90℃程度のものが用いられていた。
このような技術的背景下において、本発明では、上記樹脂組成物の必須成分の1つであるワックスとして、特に融点80℃以上、好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上のものを用い、樹脂組成物の軟化点を90℃以上、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは105℃以上とすることを特徴事項とする。このような比較的高融点のワックスを含有することで軟化点を高く設定した樹脂組成物を熱封緘層に用いることにより、前述したように熱封緘層の外面側に付加形成される疎水性無機微粒子による付着防止層の撥水性、ひいては付着防止性の熱安定性を顕著に向上しうるものである。
しかしながら、あまりに融点の高すぎるワックスの使用は、樹脂組成物の粘度が高くなり加工適性が低下する恐れがあり、熱封緘層の安定した良好なヒートシール性を阻害する恐れがあるため、融点130℃以下のものを使用すべきである。好ましくは融点120℃以下、更に好ましくは110℃以下のものを用いることが望ましい。
さらに、本発明では、上記樹脂組成物の軟化点は、ワックス以外の他の成分に、融点又は軟化点の高いものを使用することで上記軟化点を上げることも可能であるが、ワックスの融点を前述の通りとして、樹脂組成物の軟化点を90℃以上に設定することで最も簡易にかつ確実に所期効果を実現することができる。
樹脂の融点を上げることで樹脂組成物の軟化点を上げても、流動性の高い低融点のワックスが容易に溶け、付着防止層の疎水性微粒子間に入り込んで付着防止効果を低下させるため、付着防止効果の熱安定性に十分な改善効果を期待することが困難である。
また、あまりに軟化点の高すぎる樹脂組成物の使用は、熱封緘層の加工性や安定した良好なヒートシール性を阻害するおそれがあるため、軟化点160℃以下のものを使用すべきである。好ましくは軟化点140℃以下、更に好ましくは120℃以下のものを用いることが望ましい。
熱封緘層の必須成分であるエチレン−不飽和エステル共重合体は、その不飽和エステル単量体として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニルのようなビニルエステル等を用いることができるが、なかでも特に酢酸ビニル、メタクリル酸メチルの採用が好適である。
また、上記エチレン−不飽和エステル共重合体は、融点が70〜100℃の範囲のものを用いることが好ましい。これが70℃未満のものでは、熱封緘層のシール温度が低すぎるために付着防止層の付着防止効果の熱安定性が低下するおそれがある。逆に、100℃を超えるものでは、低温ヒートシール性が阻害され、シール速度が遅くなって実際の内容物充填シール時の作業能率が低下する。最も好ましくは、融点75〜95℃の範囲である。
また、樹脂組成物中の必須成分であるワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、変性ワックス等が挙げられるが、さらに好ましくはポリエチレンワックスである。
さらに、粘着付与剤としては、ロジン、ロジン誘導体(水素化ロジン、不均化ロジン、ロジンエステル)、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂あるいはそれらの水添付加されたもの、テルペン樹脂(α−ピネン、β−ピネン)等が挙げられるが、好ましくは芳香族系石油樹脂の水添付加されたものを用いるのが最適である。
また、樹脂組成物の必須成分の配合組成比は、軟化点、溶融粘度、低温ヒートシール性、ヒートシール強度、開封強度等を考慮して、設定する必要があるが、好ましくは、エチレン−不飽和エステル共重合体を30〜50wt%、好ましくは35〜45wt%、ワックスを30〜50wt%、好ましくは35〜45wt%、粘着付与剤を5〜25wt%、好ましくは15〜25wt%に設定することで、良好なヒートシール性、密封性、開封時のための適当な易剥離性と内容物付着防止効果の熱安定性の向上を達成できる。即ち、エチレン−不飽和エステル共重合体の配合量が30wt%未満の樹脂組成物では、十分なシール強度が得られない。逆に50wt%を超えると、シール強度が大きくなりすぎてシール蓋の易開封性が損なわれる。またワックスの配合量が30wt%未満では、ホットメルト樹脂組成物のコーティング適性(加工適性)が損なわれると共に、易開封性が損なわれる。一方、50wt%を超えると、十分なシール強度が得られない。また、粘着付与剤は、その配合量が5wt%未満では十分なシール強度を得ることが困難であり、逆に25wt%を超えて過多に含有すると、付着防止層の付着防止効果が低下するおそれがある。
熱封緘層の厚みは特に限定されるものではないが、コスト、密封性、生産性等の点から、厚さ3〜100μm程度とするのが一般的であり、好適には、10〜50μmの範囲とするのが良い。
付着防止層(6)は、疎水性無機微粒子、または熱可塑性樹脂微粒子と疎水性無機微粒子との混合組成物からなるものである。
疎水性無機微粒子は、蓋材の内容物付着防止性能の支配的役割を担うものであり、20mN/m以上の表面エネルギーを有する疎水性物質からなるものであればその材料は特に限定されない。具体的に例示すれば、疎水性のシリカ、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等の疎水性無機微粒子を挙げることができる。なかでも、疎水性能、コスト、超微粒子材料の市場からの入手のし易さ等の観点から、疎水性シリカやアルミナの使用が好適である。疎水性シリカは、乾式法シリカ及び湿式法シリカのいずれでも好適に用いることができる。疎水性無機微粒子の平均粒径は、1〜5,000nmの範囲のものを用いるべきである。平均粒径1nmの未満の超微粒子は、市場からの入手が困難であり、またコストの面からも不利である。他方、平均粒径5,000nmを超えるものでは、ヒートシール性を阻害するおそれがあると共に、付着防止効果が低下するおそれがあるため不適である。好ましい平均粒径は3〜500nm、特に好ましくは3〜100nmの範囲である。
熱可塑性樹脂微粒子は、その材料が特に限定されるものではないが、熱封緘層(5)及び疎水性無機微粒子とのなじみが良く、容器本体の表面層と良好な接着性を有する熱可塑性樹脂を選択して用い、少なくとも該熱可塑性樹脂を主成分として含むものを用いることが望ましい。かかる熱可塑性樹脂を例示すれば、酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の単独重合体、または2種以上の共重合体等を挙示しうる。熱可塑性樹脂であるから、従来から蓋材の付着防止剤として良く使用されている分子量の小さいワックス類の使用は排除される。特に好ましい熱可塑性樹脂の種類としては、オレフィン系樹脂の1種または2種以上を少なくとも主成分として含む熱可塑性樹脂を用いることにより最も好ましい結果を得ることができる。
更に具体的には、オレフィン系樹脂の具体例としてポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−不飽和エステル共重合体を挙げることができる。またエチレン−不飽和エステル共重合体としてエチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、および酢酸ビニル−塩化ビニル−マレイン酸共重合体を挙げることができる。
上記熱可塑性樹脂は、微粒子に粉砕または溶剤に溶解させた後微粒子として析出させた状態で使用する。熱可塑性樹脂微粒子の平均粒径は、1nm〜5000nmが好ましい。5000nmより大きい場合は、熱封緘層から脱落し易くなり好ましくない。1nmより小さい場合は、工業的に得難いという問題が生じる。好ましい平均粒径は、50nm〜1000nm、さらに好ましくは、100nm〜500nmである。
熱可塑性樹脂微粒子は、一般的なプラスチックの粉砕機で粉砕できるが、粉砕時に樹脂を軟化溶融させないように低温状態に維持しうる冷却手段を具備する粉砕機を用いることが好ましい。
次に、熱可塑性樹脂微粒子と疎水性微粒子との好ましい配合割合は、熱可塑性樹脂微粒子(固形分):疎水性無機微粒子の重量比において、0〜50重量%:100〜50重量%である。疎水性無機微粒子の配合量は、好ましくは50重量%以上含有されておれば、比較的良好な付着防止性能を得ることができる。熱可塑性樹脂微粒子を配合することで容器とのシール性、熱封緘性が良くなる点で好ましい。
本発明に係る付着防止蓋材の製造において、上記付着防止層(6)の形成方法もまた、蓋材の内容物付着防止性能に重大な影響をもつ。
付着防止層(6)の形成は、液体分散媒中に疎水性無機微粒子、または熱可塑性樹脂微粒子と疎水性無機微粒子の所定量を均一に分散させてコート液を調製し、これを蓋材本体の熱封緘層の外面に塗布し、乾燥させることによって行われる。
コート液の調製は、熱可塑性樹脂微粒子と疎水性無機微粒子を水または有機液体分散媒を用いて分散させて所定濃度のコロイド溶液とするものであるが、分散媒には特に極性基を有する有機分散媒を用いるのが好ましい。なかでもアルコール類の使用が好適であり、特にコスト、安全性、撥水性の発現効果等の面からメタノール又はエタノールの使用が好適である。極性基を有しない溶剤、たとえばトルエンを使用するときは、付着防止性能が損なわれることが判明している。その機序は未だ不明確であるが、熱封緘層のワックスがトルエンによって一部溶解し疎水性シリカ粒子との密着性が高くなりすぎることによるものと推測される。
コート液の塗工は、公知の任意の方法を採用しうる。例えば、グラビアコート法、吹き付け、バーコート法等を任意に採用しうる。
コート液の塗布量は、付着防止層の前記の厚みに応じて設定すればよいが、乾燥後重量で0.1〜5.0g/m程度が好ましく、0.2〜1.2g/mがより好ましく、更には0.4〜0.8g/mの範囲に設定するのが最適である。0.1g/m未満の場合には、内容物付着防止効果が不十分になるおそれがある。他方、5.0g/mを超えるとコストアップを招くほか、微粒子の脱落の恐れが生じるため好ましくない。
塗布後の乾燥工程も重要な要素をなす。もとより自然乾燥させても良いが、生産性、熱封緘層との密着性を高めるためには加熱乾燥させるべきであり、その場合の乾燥条件としては、温度80〜140℃、時間5〜30秒の範囲に設定するべきである。温度が上記下限値80℃より低いと乾燥工程に時間がかかり、時間が5秒未満では乾燥が不十分なものとなり、その後の取扱いにおいて付着防止層の部分的剥離や脱落を生じ易い。反面、乾燥温度を140℃を超える高い温度に設定したり、あるいは時間を30秒を超える時間に設定すると、殊に疎水性無機微粒子に疎水性乾式シリカを用いている場合、それのもつ疎水性、撥水性が損なわれ易い傾向がみられる。
次に、本発明の効果を確認するために、その各種の実施例を比較例との対比において示す。
(蓋材本体の作製)
基材フィルム(2)として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、その片面に厚さ30μmのアルミニウム箔(3)をポリウレタン系ドライラミネート接着剤により貼合わせ、基材層(1)とした。
次に、上記基材層(1)のアルミニウム箔(3)側の表面に上記同様の接着剤により、厚さ20μmのポリエチレンフィルムを積層接着して中間樹脂層(4)を形成し、更にその外側にグラビアコート法により熱封緘層(5)を形成した。これによって得られた基材層(1)/中間樹脂層(4)/熱封緘層(5)の積層体をもって蓋材本体とした。
ここに、上記熱封緘層(5)としては、下記の材料により、後記表1に示すような各種配合の樹脂組成物を用意した。
ワックス(WX)
WX(I):融点108℃のポリエチレンワックス
WX(II):融点104℃のポリエチレンワックス
WX(III):融点94℃のポリエチレンワックス
WX(IV):融点80℃のマイクロワックス
WX(V):融点75℃のパラフィンワックス
WX(VI):融点67℃のパラフィンワックス
樹脂(EVA)
EVA(I):エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量26%)
、融点76℃
EVA(II):エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量20%)
融点82℃
EVA(III):エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量5%)
融点105℃
粘着付与剤(TF)
TF(I)石油系水添樹脂
TF(II)ロジン
そして、表1に示す各種組成のホットメルト樹脂組成物を、前記中間樹脂層(4)上にいずれも塗布量18g/mの割合でグラビアコート法により塗工し、熱封緘層(5)を形成した。
(付着防止層の形成)
付着防止層の材料として、下記の疎水性無機微粒子と熱可塑性樹脂微粒子を用意した。
疎水性無機微粒子(SP)
SP(I):疎水性乾式シリカ 一次粒子平均粒径 7nm
SP(II):疎水性湿式シリカ 平均粒径 2700nm
SP(III):疎水性湿式シリカ 平均粒径 3900nm
熱可塑性樹脂微粒子(MP)
MP(I):エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル20%、エチレン
80%、平均粒径 100nm)
MP(II):酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体(酢酸ビニル20%、塩化ビニ
ル80%、平均粒径 100nm)
上記各疎水性無機微粒子(SP)、または疎水性無機微粒子(SP)と熱可塑性微粒子(MP)の両方をエタノール中に均一分散させてコート液を作製した。疎水性無機微粒子の配合量、または、熱可塑性微粒子と疎水性無機微粒子の配合割合を表1に示す。
そして、これらの各種コート液を、蓋材本体(1)の前記熱封緘層(5)の外面にグラビアコート法により、塗布し、かつ強制乾燥して付着防止層を形成した。なお、塗布量は、試料No.1〜14および17〜21において0.5g/m(乾燥後重量)に設定し、試料No.15、16においては0.8g/m(乾燥後重量)に設定した。また、強制乾燥は、いずれも温度100℃×時間15秒の乾燥条件で行った。
(作製試料の種類)
上記により得た表1に示す各種蓋材の試料1〜21のうち、試料1〜9、19は、熱封緘層におけるワックス、樹脂、軟化点を変えて、その影響を調べたものである。試料10は粘着付与剤を変えてその影響を調べたものである。試料11〜14、20〜21は、熱封緘層の各成分の配合割合を変えてその影響を調べたものである。試料15、16は、付着防止層を疎水性無機微粒子と熱可塑性微粒子との混合物からなるものとし、かつ塗布量を0.8g/mに変えてその影響を調べたものである。試料17、18は、疎水性無機微粒子の粒径を変えてその影響を調べたものである。
(評価試験)
(1)付着防止性能
各試料No.1〜21の蓋材の裏面、即ち付着防止層の外面上に、アロエヨーグルト(森永乳業株式会社製 商標「森永アロエヨーグルト」)を約0.5ccの液滴として滴下し、試料をゆっくりと傾けたときに上記液滴が「転がりはじめたときの傾斜角度」を測定して、次の基準で判定評価した。
◎・・・15度以下
○・・・16度以上30度以下
×・・・31度以上
(2)熱処理後の付着防止性能
各試料No.1〜21の各蓋材について、第1の耐熱試験は「温度100℃×時間30秒」の加熱条件で、第2の耐熱試験は「温度100℃×時間10分」の加熱条件で、第3の耐熱試験は「温度100℃×時間15分」の加熱条件で、それぞれ各試料を加熱雰囲気中に保管後、常温まで冷却した各試料について前記(1)と同様の付着防止性能評価試験を行った。
(3)シール性
(封緘強度及び開封強度)
試料No.1〜21の蓋材を、150℃×90kgf×1.0secのシール条件で容器本体(紙/ポリエチレン製容器)のフランジ面上にヒートシールした。
そして、「封緘強度」は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和54年4月16日厚生省令第17号)の封緘強度試験法に準じて測定し、封緘強度が13.3kPa以上であるものを合格(◎印)、13.3kPa未満のものを不合格(×印)として判定した。
次に、「開封強度」は、仰角45°、100mm/分の速度で蓋材を引っ張り、開封時の最大荷重を開封強度(N)とした。そして最適な開封強度の範囲を8〜15Nとし、この範囲内のものを合格(◎印)、範囲外のものを不合格(×印)として評価した。
(ヒートシール強度)
試料No.1〜21の蓋材を15mm幅に切り出し、150℃×0.2MPa×1.0secのシール条件で容器本体(紙/ポリエチレン製容器)から切り出した15mm幅の短冊にヒートシールした。次いで、この蓋材を180°の方向に100mm/分の速度で引っ張り、剥離時の最大荷重をヒートシール強度とした。
そして、付着防止層を設けていない蓋材本体のままの蓋材におけるヒートシール強度(蓋材の耐剥離強度・密封性)を基準値として、ヒートシール強度の低下率または増加率を下記の基準で判定評価した。
◎・・・強度低下又は増加10%未満
○・・・強度低下又は増加10%〜20%未満
×・・・強度低下又は増加20%以上
(4)密着性
試料No.1〜21の各蓋材の付着防止層の面に、黒い布を巻き付けた重り(500g)を垂直に載せ、ゆっくりと長さ200mm擦り、布の表面に付着した微粒子の有無を目視で検査した。
そして、黒い布における疎水性微粒子及び熱可塑性樹脂微粒子の転移付着量(剥離量)により下記の評価基準で評価した。
◎・・・ほとんど付着なし
○・・・許容範囲と認められる僅かな付着あり
×・・・明らかに多くの付着あり
上記(1)〜(4)の各評価試験の結果を、表2に示す。
Figure 0005784565
Figure 0005784565
表2の「付着防止性能」の試験結果に示すように、本発明による内容物付着防止蓋材においては、試料を僅かに傾けるだけでヨーグルト液滴が転がり移動を始める。しかもこの付着防止効果は、「熱処理後の付着防止性能」試験の結果に見られるように100℃×10分間、更には100℃×15分間のかなり過酷な熱履歴をうけたのちもほとんど低下することなく良好に維持される。このことは、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の粘稠な液体成分を含むような内容物を充填した容器に蓋材を熱封緘したのちにおいても該内容物に対し、蓋材裏面への該内容物の付着防止効果に優れたものであることを示す。しかも「シール性」試験の結果に示すように、付着防止層の存在によって封緘強度、ヒートシール性(シール強度)及び易開封性をいずれも大きく損なうことなく、適度な密封性を維持しつつ、上記付着防止性能を付与しうる。加えて、「密着性」試験の結果に見られるように、疎水性無機粒子及びそれを含む付着防止層の密着性が良好で、不本意な疎水性無機微粒子等の分離脱落、付着防止層の部分剥離等のおそれがなく、長期に亘って内容物付着防止性能を安定に維持しうると共に、容器内への異物混入のおそれもない。
1・・・基材層
2・・・基材フィルム層
3・・・金属箔層
4・・・中間樹脂層
5・・・熱封緘層
6・・・付着防止層

Claims (6)

  1. 少なくとも基材層と熱封緘層とを有し、該熱封緘層の外面に疎水性無機微粒子を主成分として含む内容物付着防止層が設けられた蓋材において、
    前記熱封緘層は、前記エチレン−不飽和エステル共重合体を30〜50wt%、ワックスを30〜50wt%、粘着付与剤を5〜25wt%配合した樹脂組成物からなり、
    前記エチレン−不飽和エステル共重合体の融点が70〜100℃であり、
    かつ前記ワックスの融点が80℃以上であ
    前記樹脂組成物の軟化点が90℃以上であり、
    一方、前記内容物付着防止層は、前記熱封緘層の外面に、極性基を有する液体分散媒中に前記疎水性無機微粒子を分散させて調製したコート液を塗布し乾燥させることによって形成されたものであることを特徴とする内容物付着防止蓋材。
  2. 前記樹脂組成物の軟化点が100℃以上であり、かつ前記ワックスの融点が90℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の内容物付着防止蓋材。
  3. 前記エチレン−不飽和エステル共重合体の融点が75〜95℃であり、
    前記ワックスの融点が90〜120℃であり、
    前記樹脂組成物の軟化点が100〜140℃に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の内容物付着防止蓋材。
  4. 前記疎水性無機微粒子が疎水性シリカである請求項1〜3のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
  5. 前記疎水性無機微粒子は、平均粒径1nm〜5,000nmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
  6. 前記付着防止層が、疎水性無機微粒子と、熱可塑性樹脂微粒子との混合組成物からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の内容物付着防止蓋材。
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