以下、実施形態について図に基づいて説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図であり、図2は、車両用空調装置1の電気制御部の構成を示すブロック図である。本実施形態では、車両用空調装置1は、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用されている。
本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力を、車両に搭載されたバッテリ(車載バッテリ)81に充電可能なプラグインハイブリッド車両として構成されている。
このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停車時に外部電源から供給された電力をバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをEV運転モードという。
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量SOCが走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをHV運転モードという。
より詳細には、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。つまり、走行用電動モータから出力される走行用の駆動力(モータ側駆動力)がエンジンEGから出力される走行用の駆動力(内燃機関側駆動力)よりも大きくなる運転モードである。
換言すると、内燃機関側駆動力に対するモータ側駆動力の駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より大きくなっている運転モードであると表現することもできる。
一方、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。つまり、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなる運転モードである。換言すると、駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より小さくなっている運転モードであると表現することもできる。
本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、このようにEV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。また、このようなEV運転モードとHV運転モードとの切り替え、および、駆動力比の制御は、駆動力制御装置70によって制御される。
さらに、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。この車両用空調装置1は、バッテリ81から供給される電力による車室内の空調に加えて、車両走行前の車両停車時に外部電源から供給される電力によって車室内の空調(例えば、プレ空調)を実行可能に構成されている。
本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示す冷凍サイクル10、室内空調ユニット30、図2に示す空調制御装置50等を備えている。
まず、室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、蒸発器15、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内には、空気が互いに並列に流れる第1空気通路31aおよび第2空気通路31bが形成されている。
第1空気通路31aは、内外気2層流モード時に外気が流れる外気側通路である。第2空気通路31bは、内外気2層流モード時に内気が流れる内気側通路である。第1空気通路31aおよび第2空気通路31bは、仕切板31c(仕切部)によって仕切られている。
ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替箱20が配置されている。
より具体的には、内外気切替箱20には、第1内気導入口21A、第2内気導入口21B、第1外気導入口22Aおよび第2外気導入口22Bが形成されている。第1内気導入口21Aおよび第2内気導入口21Bは、ケーシング31内に内気を導入させる。第1外気導入口22Aおよび第2外気導入口22Bは、ケーシング31内に外気を導入させる。
さらに、内外気切替箱20の内部には、ケーシング31内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる第1内外気切替ドア23Aおよび第2内外気切替ドア23Bが配置されている。
第1内外気切替ドア23Aは、第1内気導入口21Aおよび第1外気導入口22Aの開口面積を連続的に調整する。第2内外気切替ドア23Bは、第2内気導入口21Bおよび第2外気導入口22Bの開口面積を連続的に調整する。
従って、第1内外気切替ドア23Aおよび第2内外気切替ドア23Bは、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段(内外気切替手段)を構成する。換言すれば、第1内外気切替ドア23Aおよび第2内外気切替ドア23Bは、第1空気通路31aおよび第2空気通路31bに導入される内気と外気との比率を調整する内外気比率調整手段である。
より具体的には、第1内外気切替ドア23Aは、電動アクチュエータ62Aによって駆動され、第2内外気切替ドア23Bは、電動アクチュエータ62Bによって駆動される。この電動アクチュエータ62A、62Bは、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吸込口モードとしては、全内気モード、全外気モード、内外気混入モード、および内外気2層流モードがある。
内気モードでは、第1内気導入口21Aおよび第2内気導入口21Bを全開とするとともに第1外気導入口22Aおよび第2外気導入口22Bを全閉としてケーシング31内の第1空気通路31aおよび第2空気通路31bへ内気を導入する。
外気モードでは、第1内気導入口21Aおよび第2内気導入口21Bを全閉とするとともに第1外気導入口22Aおよび第2外気導入口22Bを全開としてケーシング31内の第1空気通路31aおよび第2空気通路31bへ外気を導入する。
内外気混入モードでは、内気モードと外気モードとの間で、第1内気導入口21A、第2内気導入口21B、第1外気導入口22Aおよび第2外気導入口22Bの開口面積を連続的に調整することにより、ケーシング31内の第1空気通路31aおよび第2空気通路31bへの内気と外気の導入比率を連続的に変化させる。
内外気2層流モードでは、第1内気導入口21Aおよび第2外気導入口22Bを全開とするとともに第1外気導入口22Aおよび第2内気導入口21Bを全閉としてケーシング31内の第1空気通路31aへ外気を導入するとともに第2空気通路31bへ内気を導入する。
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段である送風機32(ブロア)が配置されている。この送風機32は、第1ファン32aおよび第2ファン32bを共通の電動モータ32cにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される。従って、この電動モータ32cは、送風機32の送風能力変更手段を構成している。
第1ファン32aおよび第2ファン32bは、遠心多翼ファン(シロッコファン)である。第1ファン32aは、第1空気通路31aに配置されており、第1内気導入口21Aからの内気、および第1外気導入口22Aからの外気を第1空気通路31aに送風する。第2ファン32bは、第2空気通路31bに配置されており、第2内気導入口21Bからの内気、および第2外気導入口22Bからの外気を第2空気通路31bに送風する。
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器15が配置されている。蒸発器15は、第1空気通路31aおよび第2空気通路31bの全域に亘って配置されている。蒸発器15は、その内部を流通する冷媒(熱媒体)と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて、送風空気を冷却する冷却手段(熱交換手段)として機能する。具体的には、蒸発器15は、圧縮機11、凝縮器12、気液分離器13および膨張弁14等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を構成している。
ここで、本実施形態に係る冷凍サイクル10の主要な構成について説明すると、圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。
また、インバータ61は、空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
凝縮器12は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン12aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させて凝縮させる室外熱交換器(放熱器)である。送風ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
気液分離器13は、凝縮器12にて凝縮された冷媒を気液分離して余剰冷媒を蓄えるとともに、液相冷媒のみを下流側に流すレシーバである。膨張弁14は、気液分離器13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器15は、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させる室内熱交換器である。これにより、蒸発器15は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。
以上が本実施形態に係る冷凍サイクル10の主要構成の説明であり、以下、室内空調ユニット30の説明に戻る。ケーシング31内の第1空気通路31aおよび第2空気通路31bにおいて、蒸発器15の空気流れ下流側には、蒸発器15通過後の空気を流す加熱用冷風通路、冷風バイパス通路が並列に形成されている。加熱用冷風通路には、蒸発器15通過後の空気を加熱するためのヒータコア36およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順に配置されている。
第1空気通路31aおよび第2空気通路31bにおいて、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路の空気流れ下流側には、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路から流出した空気を混合させる混合空間35A、35Bが形成されている。
ヒータコア36は、エンジンEGを冷却するエンジン冷却水(以下、単に冷却水という。)を熱媒体として蒸発器15通過後の送風空気を加熱する加熱用熱交換器(空気加熱手段)である。エンジンEGは、冷却水を加熱する冷却水加熱手段(熱媒体加熱手段)である。
具体的には、ヒータコア36とエンジンEGは、冷却水配管によって接続されて、ヒータコア36とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ40aが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環流量)が制御される電動式の水ポンプである。
PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア36通過後の空気を加熱する補助加熱手段としての電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
より具体的には、このPTCヒータ37は、複数(本実施形態では、3本)のPTC素子から構成されている。各PTC素子の正極側はバッテリ81側に接続され、負極側はスイッチ素子を介して、グランド側へ接続されている。スイッチ素子は各PTC素子の通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。スイッチ素子の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
空調制御装置50は、各PTC素子の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えるようにスイッチ素子の作動を制御することによって、通電状態となり加熱能力を発揮するPTC素子の本数を切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
冷風バイパス通路は、蒸発器15通過後の空気を、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35A、35Bに導くための空気通路である。従って、混合空間35A、35Bにて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路を通過する空気および冷風バイパス通路を通過する空気の風量割合によって変化する。
そこで、本実施形態では、第1空気通路31aおよび第2空気通路31bにおける蒸発器15の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路の入口側に、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア39A、39Bを配置している。
エアミックスドア39A、39Bは、混合空間35A、35B内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。
より具体的には、エアミックスドア39A、39Bは、共通の電動アクチュエータ63によって駆動される共通の回転軸と、その共通の回転軸に連結された板状のドア本体部を有して構成される、いわゆる片持ちドアで構成されている。また、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、第1空気通路31aと第2空気通路31bとを連通させる連通路31dが形成されている。ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、連通ドア38が配置されている。連通ドア38は、連通路31dを開閉する連通路開閉手段である。
連通ドア38は、電動アクチュエータ65によって駆動される。この電動アクチュエータ65は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
吸込口モードが全内気モード、全外気モードおよび内外気混入モードのいずれかである場合、連通ドア38が連通路31dを開けるので、第1空気通路31aと第2空気通路31bとが連通される。
吸込口モードが内外気2層流モードである場合、連通ドア38が連通路31dを閉じるので、第1空気通路31aと第2空気通路31bとが連通せずに仕切られる。
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35A、35Bから空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口24〜26が配置されている。
この吹出口24〜26としては、具体的に、フェイス吹出口24、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26が設けられている。
フェイス吹出口24は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す上半身側吹出口である。フット吹出口25は、乗員の足元(下半身)に向けて空調風を吹き出す足元側吹出口(下半身側吹出口)である。デフロスタ吹出口26は、車両前面窓ガラスWの内側面に向けて空調風を吹き出す窓ガラス側吹出口である。
フェイス吹出口24およびデフロスタ吹出口26は、第1空気通路31aの送風空気流れ最下流部に配置されている。フット吹出口25は、第2空気通路31bの送風空気流れ最下流部に配置されている。
また、フェイス吹出口24、フット吹出口25、およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モードドア(吹出口モード切替手段)を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
吹出口モードとしては、フェイスモード(FACE)、バイレベルモード(B/L)、フットモード(FOOT)、およびフットデフロスタモード(F/D)がある。
フェイスモード(FACE)では、フェイス吹出口24を全開してフェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す。バイレベルモード(B/L)では、フェイス吹出口24とフット吹出口25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す。フットモード(FOOT)では、フット吹出口25を全開するとともにデフロスタ吹出口26を小開度だけ開口して、フット吹出口25から主に空気を吹き出す。フットデフロスタモード(F/D)では、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26を同程度開口して、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気を吹き出す。
乗員が、図2に示す操作パネル60のデフロスタスイッチ60cをマニュアル操作することによって、デフロスタモード(DEF)とすることもできる。デフロスタモード(DEF)では、デフロスタ吹出口26を全開してデフロスタ吹出口26から車両フロント窓ガラスWの内面に空気を吹き出す。
吸込口モードが内外気2層流モードである場合において、フェイス吹出口24およびデフロスタ吹出口26からの合計吹出風量をフット吹出口25からの吹出風量よりも大きくする場合(例えばフェイスモード、フットデフロスタモード、デフロスタモード)、連通ドア38が連通路31dを開ける。これにより、第1空気通路31aの空気のみならず第2空気通路31bの空気もフェイス吹出口24およびデフロスタ吹出口26から吹き出すことが可能になる。
吸込口モードが内外気2層流モードである場合において、フット吹出口25からの吹出風量をフェイス吹出口24およびデフロスタ吹出口26からの合計吹出風量よりも大きくする場合(例えばフットモード)、連通ドア38が連通路31dを開ける。これにより、第2空気通路31bの空気のみならず第1空気通路31aの空気もフット吹出口25から吹き出すことが可能になる。
本実施形態の車両用空調装置1は、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
車両用空調装置1は、図2に示すシート空調装置90を備えている。シート空調装置90は、乗員が着座する座席の表面温度を上昇させる補助加熱手段である。具体的には、このシート空調装置90は、座席表面に埋め込まれた電熱線で構成され、電力を供給されることによって発熱するシート加熱手段である。
そして、室内空調ユニット10の各吹出口24〜26から吹き出される空調風によって車室内の暖房が不十分となり得る際に作動させて乗員の暖房感を補う機能を果たす。なお、このシート空調装置90は、空調制御装置50から出力される制御信号によって作動が制御され、作動時には座席の表面温度を約40℃程度となるまで上昇させるように制御される。
車両用空調装置1は、シート送風装置、ステアリングヒータ、膝輻射ヒータを備えていてもよい。シート送風装置は、座席の内側から乗員に向けて空気を送風する送風手段である。ステアリングヒータは、電気ヒータでステアリングを加熱するステアリング加熱手段である。膝輻射ヒータは、輻射熱の熱源となる熱源光を乗員の膝に向けて照射する暖房手段である。シート送風装置、ステアリングヒータ、膝輻射ヒータの作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御できる。
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50(空調制御手段)、駆動力制御装置70(駆動力制御手段)および電力制御装置71(電力制御手段)は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
駆動力制御装置70の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器および走行用電動モータへ交流電流を供給する走行用インバータ等が接続されている。各種エンジン構成機器としては、具体的に、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
また、駆動力制御装置70の入力側には、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計、バッテリ81へ流れ込む電流ABinあるいはバッテリ81から流れる電流ABoutを検出する電流計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ、車速Vvを検出する車速センサ(いずれも図示せず)等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
空調制御装置50の出力側には、送風機32、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、送風ファン12a、各種電動アクチュエータ62A、62B、63、64、65、PTCヒータ37、冷却水ポンプ40a、シート空調装置90等が接続されている。
空調制御装置50の入力側には、内気センサ51、外気センサ52(外気温検出手段)、日射センサ53、吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、冷却水温度センサ58、および窓表面湿度センサ59(湿度検出手段)等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
内気センサ51は、車室内温度Trを検出する。外気センサ52は、外気温Tamを検出する。日射センサ53は、車室内の日射量Tsを検出する。吐出温度センサ54は、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する。吐出圧力センサ55は、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する。
蒸発器温度センサ56は、蒸発器15からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する。冷却水温度センサ58は、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する。
本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器15の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器15のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器15を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。
窓表面湿度センサ59は、窓近傍湿度センサ、窓ガラス近傍空気温度センサ、および窓ガラス表面温度センサで構成されている。
窓近傍湿度センサは、車両フロント窓ガラスWの近傍の車室内空気の相対湿度(以下、窓近傍相対湿度と言う。)を検出する。窓ガラス近傍空気温度センサは、車両フロント窓ガラスWの近傍の車室内空気の温度を検出する。窓ガラス表面温度センサは、車両フロント窓ガラスWの表面温度を検出する。
空調制御装置50は、窓近傍湿度センサ、窓ガラス近傍空気温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値に基づいて、車両フロント窓ガラスWの車室内側表面の相対湿度RHW(以下、窓表面相対湿度と言う。)を算出する。
窓表面相対湿度RHWは、窓ガラスが曇る可能性を表す指標である。具体的には、窓表面相対湿度RHWの値が大きいほど、窓ガラスが曇る可能性が高いことを意味する。
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、エアコンスイッチ、オートスイッチ60a、吹出口モードの切替スイッチ60b、デフロスタスイッチ60c、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ60d、現在の車両用空調装置1の作動状態等を表示する表示部等が設けられている。
エアコンスイッチは、乗員の操作によって圧縮機11の起動および停止を切り替える圧縮機作動設定手段である。エアコンスイッチには、エアコンスイッチの操作状況に応じて点灯・消灯するエアコンインジケータが設けられている。
オートスイッチ60aは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。デフロスタスイッチ60cは、乗員の操作によってデフロスタモードを設定するデフロスタモード設定手段である。車室内温度設定スイッチ60dは、乗員の操作によって車室内目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。
さらに、操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、エコノミースイッチが設けられている。エコノミースイッチは、環境への負荷の低減を優先させるスイッチである。エコノミースイッチを投入することにより、車両用空調装置1の作動モードが、空調の省動力化を優先させるエコノミーモード(略してエコモード)に設定される。したがって、エコノミースイッチを省動力優先モード設定手段と表現することもできる。
また、エコノミースイッチを投入することにより、EV運転モード時に、走行用電動モータを補助するために作動させるエンジンEGの作動頻度を低下させる信号が駆動力制御装置70に出力される。
また、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50が駆動力制御装置70へエンジンEGの要求信号を出力することによって、エンジンEGの作動を要求することが可能となっている。なお、駆動力制御装置70では、空調制御装置50からのエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)を受信すると、エンジンEGの作動の要否を判定し、その判定結果に応じてエンジンEGの作動を制御する。
さらに、空調制御装置50は、車両外部の電源から供給される電力やバッテリ81に蓄えられた電力に応じて、車両における各種電気機器に配分する電力の決定等を行う電力制御装置71が電気的に接続されている。本実施形態の空調制御装置50には、電力制御装置71から出力される出力信号(空調用に使用を許可する空調使用許可電力を示すデータ等)が入力される。
ここで、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
例えば、空調制御装置50のうち、送風手段である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風能力制御手段を構成している。圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御手段50aを構成している。吹出口モードの切り替えを制御する構成が吹出口モード切替手段50bを構成している。
また、冷却手段である蒸発器15の冷却能力を制御する構成が冷却能力制御手段50cを構成し、加熱手段であるヒータコア36の加熱能力を制御する構成が加熱能力制御手段を構成している。
また、空調制御装置50における駆動力制御装置70と制御信号の送受信を行う構成が、要求信号出力手段50dを構成している。また、駆動力制御装置70における空調制御装置50と制御信号の送受信を行うと共に、要求信号出力手段50d等からの出力信号に応じてエンジンEGの作動の要否を決定する構成(作動要否決定手段)が、信号通信手段を構成している。
次に、図3〜図10により、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。図3は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器にバッテリ81や外部電源等から電力が供給された状態で、車両用空調装置1の作動スイッチが投入されるとスタートする。なお、図3〜図9中の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内目標温度Tset、吸込口モードスイッチの設定信号等がある。
次に、ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58の検出信号や、外部電源からの電力の供給状態を示す電力状態信号等を読み込む。なお、電力状態信号が、外部電源から車両に電力を供給可能な状態(プラグイン状態)を示す場合には、外部電源フラグがONされ、外部電源から車両に電力を供給できない状態(プラグアウト状態)を示す場合には、外部電源フラグがOFFされる。
また、このステップS3では、駆動力制御装置70の入力側に接続されたセンサ群の検出信号、および駆動力制御装置70から出力される制御信号等の一部も、駆動力制御装置70から読み込んでいる。
次に、ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。従って、ステップS4は目標吹出温度決定手段を構成している。目標吹出温度TAOは、以下の数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
なお、目標吹出温度TAOは、車室内を所望の温度に保つために車両用空調装置1が生じさせる必要のある熱量に相当するもので、車両用空調装置1に要求される空調負荷(空調熱負荷)として捉えることができる。
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、エアミックスドア39の目標開度SWを目標吹出温度TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された吹出空気温度TE、冷却水温度Twに基づいて算出する。
具体的には、まず、次の数式F2により仮のエアミックス開度SWddを算出する。
SWdd=[{TAO−(TE+2)}/{MAX(10,Tw−(TE+2))}]×100(%)…(F2)
なお、数式F2の{MAX(10,Tw−(TE+2))}とは、10およびTw−(TE+2)のうち大きい方の値を意味している。
次に、仮のエアミックス開度SWddに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、エアミックス開度SWを決定する。この制御マップでは、仮のエアミックス開度SWddにほぼ比例するようにエアミックス開度SWを決定する。
次のステップS6では、送風機32の送風能力(具体的には、電動モータに印加するブロワモータ電圧)を決定する。このステップS6の詳細については、図4のフローチャートを用いて説明する。
図4に示すように、まず、ステップS611では、操作パネル60のオートスイッチ60aが投入(ON)されているか否かを判定する。この結果、オートスイッチ60aが投入されていないと判定された場合は、ステップS612で、操作パネル60の風量設定スイッチによってマニュアル設定された乗員の所望の風量となるブロワモータ電圧が決定されて、ステップS7に進む。
具体的には、本実施形態の風量設定スイッチは、Lo→M1→M2→M3→Hiの5段階の風量を設定することができ、それぞれ4V→6V→8V→10V→12Vの順にブロワモータ電圧が高くなるように決定される。
一方、ステップS611にて、オートスイッチ60aが投入されていると判定された場合は、ステップS613で、ステップS4にて決定されたTAOに基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して仮ブロワレベルf1A(TAO)を決定する。
仮ブロワレベルf1A(TAO)は、空調熱負荷に応じた基本ブロワレベルが算出される。仮ブロワレベルf1A(TAO)は、ステップS6で最終的に決定されるブロワレベルの候補値として用いられる。ブロワレベルは、送風機32の送風能力を決定するために電動モータに印加する送風機電圧に対応する値である。
本実施形態における仮ブロワレベルf1A(TAO)を決定する制御マップは、TAOに対する仮ブロワレベルf1A(TAO)の値がバスタブ状の曲線を描くように構成されている。
すなわち、図4のステップS613に示すように、TAOの極低温域(本実施形態では、−30℃以下)および極高温域(本実施形態では、80℃以上)では、送風機32の風量が最大風量付近となるように仮ブロワレベルf1A(TAO)を高レベルに上昇させる。
また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じて送風機32の送風量が減少するように、仮ブロワレベルf1A(TAO)を減少させる。さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じて、送風機32の風量が減少するように仮ブロワレベルf1A(TAO)を減少させる。
そして、TAOが所定の中間温度域内(本実施形態では、10℃〜40℃)に入ると、送風機32の風量が低風量となるように仮ブロワレベルf1A(TAO)を低レベルに低下させる。これにより、空調熱負荷に応じた基本ブロワレベルが算出される。
すなわち、仮ブロワレベルf1A(TAO)は、TAOに基づいて決定される値である。換言すれば、仮ブロワレベルf1A(TAO)は、車室内設定温度Tset、内気温Tr、外気温Tam、日射量Tsに基づいて決定される値に基づいて決定されている。
続くステップS614では、冷却水温度センサ58が検出した冷却水温度Tw(水温)に基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して暖機時上限ブロワレベルf2A(TW)を決定する。暖機時上限ブロワレベルf2A(TW)は、エンジンEGの暖機時(冷却水温度Twが低温の時)におけるブロワレベルの上限値である。
すなわち、図4のステップS614に示すように、冷却水温度Twが低温域から高温域へと上昇するにつれて暖機時上限ブロワレベルf2A(TW)を0以上30以下の範囲で上昇させる。なお、図4のステップS614に示す制御マップでは、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅が設定されている。
これにより、冷却水温度Twが十分に上昇しておらずヒータコア36で空気を十分に加熱できない状態のときに吹出風量が高くなって乗員が寒気を感じることを防止できる。
続くステップS615では、次の数式F3によりブロワレベルを算出して、ステップS616へ進む。
ブロワレベル=MIN(f1A(TAO),f2A(TW))…(F3)
なお、数式F3のMIN(f1A(TAO),f2A(TW))とは、f1A(TAO)およびf2A(TW)のうち小さい方の値を意味している。
ステップS616では、決定されたブロワレベルに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機電圧(ブロワモータ電圧)を決定する。すなわち、図4のステップS616に示すように、ブロワレベルの値が小さいほど送風機電圧(ブロワモータ電圧)を小さくする。
これにより、送風機32の送風能力が目標吹出温度TAOおよび冷却水温度Twに応じて適切に調整される。
次のステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱20の切替状態を決定する。このステップS7の詳細については、図5のフローチャートを用いて説明する。図5に示すように、まず、ステップS701では、操作パネル60のオートスイッチ60aが投入(ON)されているか否かを判定する。この結果、オートスイッチ60aが投入されていないと判定された場合は、ステップS702〜S704で、マニュアルモードに応じた外気導入率を決定してステップS8へ進む。
具体的には、マニュアル吸込口モードが全内気モード(RECモード)の場合、外気率を0%に決定し(ステップS703)、マニュアル吸込口モードが全外気モード(FRSモード)の場合、外気率を100%に決定する(ステップS704)。外気率は、内外気切替箱20からケーシング31内に導入される導入空気(外気および内気)のうち外気が占める比率である。
一方、ステップS701にて、オートスイッチ60aが投入されていると判定された場合は、ステップS705へ進み、ステップS4で算出した目標吹出温度TAOに基づいて、空調運転状態が冷房運転か暖房運転かを判定する。図5の例では、目標吹出温度TAOが25℃を上回っている場合、暖房運転と判定し、それ以外の場合、冷房運転と判定する。
冷房運転と判定した場合、ステップS706へ進み、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、外気率を決定してステップS8へ進む。
具体的には、TAOが低いときは外気率を小さくし、TAOが高いときは外気率を大きくする。図5の例では、TAO≦0℃であれば外気率を0%とし、TAO≧15℃であれば外気率を100%とし、0℃<TAO<15℃であればTAOが高いほど外気率を0〜100%の範囲で大きくする。
決定された外気率に応じて第1内外気切替ドア23Aおよび第2内外気切替ドア23Bの開度が変更される。
具体的には、外気率が0%に設定された場合、吸込口モードが全内気モードとなるように第1内外気切替ドア23Aおよび第2内外気切替ドア23Bの開度が制御される。外気率が100%に設定された場合、吸込口モードが全外気モードとなるように第1内外気切替ドア23Aおよび第2内外気切替ドア23Bの開度が制御される。
本例では、外気率が0%超50%未満または50%超75%未満に設定された場合、吸込口モードが内外気混入モードとなり、内外気2層流モード時の外気率が50%以上75%未満に設定された場合、内外気2層流モードとなるように第1内外気切替ドア23Aおよび第2内外気切替ドア23Bの開度が制御される。内外気混入モードおよび内外気2層流モードと外気率との関係は、室内空調ユニット30の仕様に応じて適宜変更可能である。
これにより、冷房負荷が高いほど内気の導入率を高くして冷房効率を高めることができる。
一方、ステップS705にて、暖房運転と判定された場合、ステップS707へ進み、窓表面相対湿度RHWに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、外気率を決定してステップS8へ進む。
具体的には、RHWが低いときは外気率を小さくし、RHWが高いときは外気率を大きくする。図5の例では、RHW≦75%であれば外気率を25%とし、RHW≧95%であれば外気率を100%とし、75%<RHW<95%であればRHWが高いほど外気率を25〜100%の範囲で大きくする。
これにより、窓ガラスが曇る可能性が高いほど、内気よりも湿度の低い外気の導入率を高くして車室内空間の湿度を低下させることができる。
次のステップS8では、吹出口モード、すなわちフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aの切替状態を決定する。このステップS8の詳細については、図6のフローチャートを用いて説明する。
図6に示すように、まず、ステップS81では、ステップS4で算出した目標吹出温度TAOに基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して仮吹出口モードf1(TAO)を決定する。
本実施形態では、図6のステップS81に示すように、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて仮吹出口モードf1(TAO)をフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択され易くなる。なお、図6のステップS81に示す制御マップでは、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅が設定されている。
続くステップS82では、仮吹出口モードf1(TAO)がバイレベルモードまたはフットモードであるか否かを判定する。仮吹出口モードf1(TAO)がバイレベルモードまたはフットモードであると判定した場合、ステップS83へ進み、窓表面相対湿度RHWに基づいて予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して吹出口モードを決定する。
具体的には、窓表面相対湿度RHWが95%未満の場合、吹出口モードを、ステップS81で決定した仮吹出口モードf1(TAO)とし、窓表面相対湿度RHWが95%以上99%未満の場合、吹出口モードをフットデフロスタモードとし、窓表面相対湿度RHWが99%以上の場合、吹出口モードをデフロスタモードとする。なお、図6のステップS83に示す制御マップでは、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅が設定されている。
一方、ステップS82にて仮吹出口モードf1(TAO)がバイレベルモードまたはフットモードでないと判定した場合、ステップS84へ進み、吹出口モードを、ステップS81で決定した仮吹出口モードf1(TAO)とする。
これにより、窓表面相対湿度RHWが高くて窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合にフットデフロスタモードまたはデフロスタモードを選択して、デフロスタ吹出口26から吹き出される風量の割合を増加させることができる。
次のステップS9では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機11の回転数)を決定する。なお、ステップS9における圧縮機回転数の決定は、図3のメインルーチンが繰り返される制御周期τ毎に行われるものではなく、所定の制御間隔(本実施形態では1秒)毎に行われる。
このステップS9の詳細については、図7のフローチャートを用いて説明する。図7に示すように、まず、ステップS901では、RHW閾値を、ステップS7で決定された外気率、およびステップS6で決定された送風機電圧(ブロワモータ電圧)に基づいて演算する。RHW閾値は、圧縮機停止モード(圧縮機停止制御)を解除するか否かを判定する際に用いられる閾値である。圧縮機停止モードは、圧縮機11を自動停止する制御モードである。
具体的には、外気率が高い場合、RHW閾値が高い値に設定される。すなわち、外気率が高い程、ケーシング31内に導入される空気の湿度が低くなって窓曇りが発生しにくくなることから、窓曇りを防止するために圧縮機停止モードを解除する必要がないためである。
また、送風機電圧が高い場合、RHW閾値が高い値に設定される。送風機電圧が高い程、窓ガラスへの送風量が増加して窓曇りが発生しにくくなることから、窓曇りを防止するために圧縮機停止モードを解除する必要がないためである。
続くステップS902では、前回の圧縮機回転数fn−1に対する回転数変化量Δfを求める。具体的には、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップ(例えば図8)を参照して、室内蒸発器26からの吹出空気温度TEの目標吹出温度TEOを決定する。
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度TEの偏差En(TEO−TE)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))を算出し、偏差Enと偏差変化率Edotとを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fn−1に対する回転数変化量Δfを求める。
次のステップS903では、操作パネル60のエコノミースイッチが投入されているか否か(エコモードになっているか否か)を判定する。
エコノミースイッチが投入されていないと判定した場合、ステップS904へ進み、圧縮機11の回転数の上限値(MAX回転数)を10000rpmとしてステップS906へ進む。
一方、エコノミースイッチが投入されていると判定した場合、ステップS905へ進み、圧縮機11の回転数の上限値(MAX回転数)を7000rpmとしてステップS906へ進む。
つまり、エコノミースイッチが投入されている場合は、投入されていない場合よりも圧縮機11の回転数の上限値を低下させて車室内の空調を行うために消費されるエネルギ(電気エネルギ)を低減させている。
続くステップS906〜S910では、圧縮機11を自動停止する圧縮機停止モード(圧縮機停止制御)を行うか否かを判定する。まず、ステップS906では、外気温が15℃未満であるか否かを判定する。外気温が15℃未満であると判定した場合、圧縮機11を停止しても外気を導入すれば蒸発器15の乾燥が遅く臭いが発生しにくいと判断できるので、ステップS907へ進み、ステップS8で決定された吹出口モードがバイレベルモードまたはフェイスモードであるか否かを判定する。
吹出口モードがバイレベルモードまたはフェイスモードでないと判定した場合、すなわちフットモード、フットデフロスタモードまたはデフロスタモードである場合、圧縮機11が停止して蒸発器15から臭いが発生しても臭いを含む空気がフェイス吹出口24から乗員の上半身に向けて吹き出されないので、ステップS908へ進み、窓表面相対湿度RHWがステップS901で演算されたRHW閾値以下であるか否かを判定する。
窓表面相対湿度RHWがRHW閾値以下であると判定した場合、圧縮機11を停止しても窓ガラスが曇りにくいと判断できるので、ステップS909へ進み、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOが25℃を上回っているか否かを判定する。
車室内吹出空気の目標吹出温度TAOが25℃を上回っていると判定した場合、冷房運転が必要ないと判断できるので、ステップS910へ進み、吸込口モードがマニュアル全内気モード(マニュアルRECモード)であるか否かを判定する。
ステップS910で吸込口モードがマニュアル全内気モード(マニュアルRECモード)でないと判定した場合、すなわち上述のステップ707にて外気率が25%以上に決定されている場合、圧縮機11を停止しても外気を導入することによって蒸発器15の乾燥が遅く臭いが発生しにくいと判断できるので、ステップS911へ進み、今回の圧縮機回転数を0に決定する。これにより、圧縮機停止モード(圧縮機停止制御)を行って圧縮機消費電力を減少させることができ、ひいては空調用電力を減少させることができる。すなわち省エネルギー化できる。
圧縮機11が停止することによって、蒸発器15表面の凝縮水が蒸発して臭いが発生する可能性があるが、低温の外気が蒸発器15に導入されるので、蒸発器15表面の凝縮水が蒸発することを抑制でき、ひいては乗員が悪臭を感じることを抑制できる。
一方、吸込口モードがマニュアル全内気モード(マニュアルRECモード)であると判定した場合、圧縮機11を停止すると蒸発器15が乾燥して臭いが発生すると判断できるので、ステップS912へ進み、今回の圧縮機回転数を次の数式F4により算出する。
今回の圧縮機回転数=MIN{(前回の圧縮機回転数+Δf),MAX回転数}…(F4)
なお、数式F4のMIN{(前回の圧縮機回転数+Δf),MAX回転数}とは、前回の圧縮機回転数+ΔfおよびMAX回転数のうち小さい方の値を意味している。
これにより、圧縮機11を作動させる必要がある場合であっても、エコモード時や圧縮機消費電力が大きい場合、すなわち空調用電力を減少させる必要がある場合に圧縮機11の冷媒吐出能力を低下させて圧縮機消費電力を減少させることができ、ひいては空調用電力を減少させることができる。
また、ステップS906で外気温が15℃未満でないと判定した場合、ステップS907で吹出口モードがバイレベルモードまたはフェイスモードであると判定した場合、ステップS908で窓表面相対湿度RHWがRHW閾値未満でないと判定した場合、またはステップS909で車室内吹出空気の目標吹出温度TAOが25℃を上回っていないと判定した場合、圧縮機11を作動させて蒸発器15で空気を冷却・除湿する必要があると判断できるので、ステップS912へ進み、今回の圧縮機回転数を上述の数式F4により算出する。
次のステップS10では、PTCヒータ37の作動本数および電熱デフォッガの作動状態を決定する。まず、PTCヒータ37の作動本数の決定について説明すると、ステップS10では、外気温Tam、ステップS51にて決定した仮のエアミックス開度SWdd、冷却水温度Twに応じて、PTCヒータ37の作動本数を決定する。
具体的には、外気温が26℃よりも高いと判定された場合は、PTCヒータ37による吹出温アシストは必要無いと判断して、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。一方、外気温が26℃よりも低いと判定された場合は、仮のエアミックス開度SWddに基づいてPTCヒータ37作動の要否を決定する。
すなわち、仮のエアミックス開度SWddが小さくなることは、加熱用冷風通路にて送風空気を加熱する必要性が少なくなることを意味していることから、エアミックス開度SWが小さくなるに伴ってPTCヒータ37を作動させる必要性も少なくなる。
そこで、仮のエアミックス開度SWddを予め定めた基準開度と比較して、仮のエアミックス開度SWddが第1基準開度(本実施形態では、100%)以下であれば、PTCヒータ37を作動させる必要は無いものとして、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。
一方、仮のエアミックス開度SWddが第2基準開度(本実施形態では、110%)以上であれば、PTCヒータ37を作動させる必要があるものとして、冷却水温度Twに応じてPTCヒータ37の作動本数を決定する。
具体的には、ヒータコア36で空気を十分に加熱できる程度に冷却水温度Twが高い場合、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定し、冷却水温度Twが低いほどPTCヒータ37の作動本数を増加させる。
電熱デフォッガについては、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
次のステップS11では、空調制御装置50から駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定する。この要求信号としては、エンジンEGの作動要求信号(エンジンON要求信号)や、EV/HV運転モードの要求信号等がある。
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、走行時に常時エンジンを作動させているので冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両では冷却水をヒータコア36に流通させることで十分な暖房能力を発揮することができる。
これに対して、本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力を走行用電動モータからも得ることができることから、エンジンEGの作動を停止させることがあり、車両用空調装置1にて車室内の暖房を行う際に、冷却水の温度が暖房用の熱源として充分な温度にまで上昇していない場合がある。
そこで、本実施形態の車両用空調装置1は、走行用の駆動力を出力させるためにエンジンEGを作動させる必要がない走行条件であっても、所定条件を満たした場合には、エンジンEGの駆動力を制御する駆動力制御装置70に対してエンジンEGの作動を要求する要求信号(作動要求信号)を出力して、冷却水温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させるようにしている。
次に、ステップS12では、冷却水回路40にてヒータコア36とエンジンEGとの間で冷却水を循環させる冷却水ポンプ40aを作動させるか否かを決定する。このステップS12の詳細については、図9のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS121では、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高いか否かを判定する。
ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合は、ステップS124へ進み、冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。その理由は、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合に冷却水をヒータコア36へ流すと、ヒータコア36を流れる冷却水が蒸発器15通過後の空気を冷却してしまうことになるため、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうからである。
一方、ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高い場合は、ステップS122へ進む。ステップS122では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS122にて、送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS124に進み、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。
一方、ステップS122にて送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS123へ進み、冷却水ポンプ40aを作動(ON)させることを決定する。これにより、冷却水ポンプ40aが作動して、冷却水が冷媒回路内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
次に、ステップS13では、シート空調装置90の作動要否を決定する。シート空調装置90の作動状態は、ステップS5で決定した目標吹出温度TAO、仮のエアミックス開度Sdd、ステップS2で読み込んだ外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。
次に、ステップS14では、上述のステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器32、12a、61、62、63、64、65、12a、37、40a、80に対して制御信号および制御電圧が出力される。さらに、要求信号出力手段50cから駆動力制御装置70に対して、ステップS11にて決定された要求信号が送信される。
次に、ステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。これにより、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動するので、送風機32から送風された送風空気が、蒸発器15にて冷却される。そして蒸発器15にて冷却された冷風は、エアミックスドア39の開度に応じて、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路へ流入する。
加熱用冷風通路へ流入した冷風は、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過する際に加熱されて、混合空間35A、35Bにて冷風バイパス通路を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35A、35Bにて温度調整された空調風が、混合空間35A、35Bから各吹出口を介して車室内に吹き出される。
この車室内に吹き出される空調風によって車室内の内気温Trが外気温Tamより低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現されており、一方、内気温Trが外気温Tamより高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
本実施形態による作動の一例を図10に示す。図10の例では、外気温が10℃であるので、車両のイグニッションスイッチがオンされると(IG ON)、目標吹出温度TAOが高温域になる。図10の例では車両のイグニッションスイッチがオンされたときの窓表面相対湿度RHWが95%になっている。そのため、ステップS7にて外気率が100%(全外気モード)に決定される(ステップS705、S707)。
また、目標吹出温度TAOが高温域になるのでステップS8にて吹出口モードがフットモードに決定される(ステップS81〜S83)。
図10の例では車両のイグニッションスイッチがオンされたときのエンジン冷却水温度Tw(水温)が外気温と同程度の低温(10℃程度)になっている。そのため、ステップS6にて送風機電圧(ブロワ電圧)が0Vに決定される(ステップS613〜S616)。したがって、送風機32は起動されず停止している。
外気率が100%に決定され、送風機電圧が0Vに決定されるので、ステップS9にてRHW閾値が95%に決定される(ステップS901)。
外気温が10℃であり、吹出口モードがフットモードに決定され、窓表面相対湿度RHWがRHW閾値以下であり、目標吹出温度TAOが高温域(25℃超)になり、吸込口モードが全外気モード(FRS)に決定されるので、ステップS9にて、圧縮機11が自動的に停止される圧縮機停止モード(圧縮機停止制御)が開始される(ステップS906〜S911)。換言すれば、蒸発器15による除湿が自動的に停止されるオート除湿OFF制御が開始される。
圧縮機11が停止することによって、蒸発器15表面の凝縮水が蒸発して臭いが発生する可能性があるが、吸込口モードが全外気モード(外気率100%)であるので、全内気モードと比較して、低温の外気が蒸発器15に多く導入される。そのため、蒸発器15表面の凝縮水が蒸発することを抑制でき、ひいては乗員が悪臭を感じることを抑制できる。
イグニッションスイッチがオンされた後、エンジンEGの排熱によってエンジン冷却水温度Tw(水温)が上昇すると、送風機32が起動される(ステップS613〜S616)。図10の例では、送風機電圧が6Vに決定される。そのため、ステップS9にてRHW閾値が100%に決定される(ステップS901)。
これにより、送風機32によって外気が車室内空間へ送風されるので、窓表面相対湿度RHWが徐々に低下する。そのため、ステップS7にて決定される外気率も徐々に低下する(ステップS707)。その結果、ステップS9にて決定されるRHW閾値も徐々に低下するが、窓表面相対湿度RHWがRHW閾値以下であり続けるので圧縮機停止モード(オート除湿OFF制御)が継続される。
本実施形態では、ステップS9で説明したように、空調制御装置50は、窓ガラス近傍における車室内空間の相対湿度RHWが閾値を上回るまで、圧縮機11を停止させる圧縮機停止制御を行う(ステップS908、S911)。このとき、制御装置50は、空気通路31a、31bに導入される外気の比率が高いほど閾値を高くする(ステップS901)。
これによると、空気通路31a、31bに導入される外気の比率が高いほど、湿度の低い外気が車室内空間に多く導入されて窓曇りが抑制されるので、閾値を高くすることによって圧縮機停止制御が行われやすくなっても窓曇りが急激に進行することを抑制できる。したがって、窓曇りの発生を抑制しつつ圧縮機11を極力停止させて一層の省動力化を図ることができる。
本実施形態では、窓表面相対湿度RHWの検出精度を向上させることなく窓曇りの発生を抑制しつつ圧縮機11の稼動時間を低減できるので、安価な湿度センサを用いることができ、ひいては車両用空調装置のコストを低減できる。
本実施形態によると、窓曇りが急激に進行することを抑制できるので、圧縮機停止制御を行っているときに窓曇りが発生しても、乗員が操作パネル60のデフロスタスイッチ60cをマニュアル操作して窓曇りを解消する時間的余裕を確保できる。
本実施形態では、ステップS9で説明したように、空調制御装置50は、送風機32の送風量が多い場合、送風量が少ない場合と比較して閾値を高くする(ステップS901)。
これによると、送風機32の送風量が多いほど、車室内空間が換気されて窓曇りが抑制されるので、閾値を高くすることによって圧縮機停止制御が行われやすくなっても、窓曇りが急激に進行することを抑制できる。
ステップS901において、空調制御装置50は、内外気2層流モードが設定されている場合、内外気2層流モードが設定されていない場合と比較して閾値を高くしてもよい。
すなわち、内外気2層流モードが設定されている場合、湿度の低い外気が窓ガラスに向けて吹き出されて窓曇りが抑制されるので、閾値を高くすることによって圧縮機停止制御が行われやすくなっても、窓曇りが急激に進行することを抑制できる。
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば以下のように種々変形可能である。
(1)本実施形態では、ヒータコア36は、エンジン冷却水を熱源として蒸発器15通過後の送風空気を加熱するが、冷凍サイクル10は、外気から熱を汲み上げるヒートポンプ装置として構成され、ヒータコア36は、冷凍サイクル10が外気から汲み上げた熱を利用して蒸発器15通過後の送風空気を加熱するようになっていてもよい。
(2)上記実施形態では、室内空調ユニット30のケーシング31に第1空気通路31aおよび第2空気通路31bが形成されており、内外気混入モードと内外気2層流モードとを切り替え可能になっているが、ケーシング31内の空気通路が仕切られておらず、内外気2層流モードが設定されない室内空調ユニットにおいても同様の作用効果を奏することができる。
(3)上記実施形態において、車両のイグニッションスイッチがオンされてからオフされるまでの行程(トリップ)において圧縮機11が1回でも作動したら、その行程中は圧縮機停止モード(オート除湿OFF制御)を行わないようにしてもよい。
これによると、圧縮機11が作動することによって蒸発器15表面に凝縮水が発生した後、その凝縮水が蒸発して蒸発器15表面が乾燥することを抑制できるので、蒸発器15から臭いが発生することを抑制できる。
(4)上記実施形態のステップS83、S707、S908では、窓ガラスに曇りが発生する可能性を表す指標として窓表面相対湿度RHWを用いているが、窓表面相対湿度RHWの代わりに、窓ガラスが曇る可能性を推定できる種々の物理量を用いてもよい。例えば、車室内空間(好ましくは窓ガラス近傍)の空気の相対湿度を用いてもよい。
(5)上記実施形態では、ハイブリッド車両の車両走行用の駆動力について詳細を述べていないが、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に車両用空調装置1を適用してもよいし、エンジンEGを発電機80の駆動源として用い、発電された電力をバッテリ81に蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に車両用空調装置1を適用してもよい。
また、車両用空調装置1を、エンジンEGを備えることなく車両走行用の駆動力を走行用電動モータのみから得る電気自動車に適用してもよい。この場合、冷却水を加熱するための冷却水加熱手段として、例えばPTCヒータ等の電気ヒータを用いることができる。
また、車両用空調装置1を、走行用電動モータを備えることなく車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る自動車に適用してもよい。この場合、圧縮機11は、エンジンEGの駆動力によってエンジンベルトで駆動されるベルト駆動式圧縮機を用いることができる。