JP5238748B2 - 非水系二次電池およびその難燃剤 - Google Patents
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Description
リチウムイオン二次電池には、非水電解液が使用され、非水電解液は、リチウム塩のような電解質塩と非水系溶媒とから構成されている。非水系溶媒には、動作環境によらず、高い誘電率を有すること、酸化電位が高いこと、電池中で安定であることなどが要求されている。
具体的には、難燃剤として、特開2001−338682ではホスファゼン誘導体が提案され、特表2001−525597号公報ではアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)が提案され、特開平11−329495号公報ではイミダゾール系化合物が提案されている。
さらに、AIBNは、非プロトン性溶媒を主とする非水系溶媒に対して溶解度が低く、含有量を増やすことができないため、難燃性を十分向上できないことがある。さらに、AIBNは、リチウムイオン二次電池の充放電により電気分解することがあり、電池性能の悪化が懸念される。
また、イミダゾール系化合物においても、添加量を多くしないと十分な難燃性が得られず、添加量を多くすると、サイクル特性、動作環境安定性の悪化が懸念される。
したがって、電池性能を悪化させることなく、さらなる難燃性の向上が望まれている。
で表される、「窒素−酸素結合を有する官能基が結合するカルボニル基を分子内に有する化合物」を少なくとも含有することを特徴とする非水系二次電池が提供される。
本発明で難燃剤として使用される「窒素−酸素結合を有する官能基が結合するカルボニル基を分子内に有する化合物」が難燃性を示す機構は、非水系二次電池の熱暴走(火元が発生する)時に熱により分解し、CO2またはCOを主成分とする不活性ガスを発生し、その結果、周囲の酸素濃度を低下させることにより火元を消す(窒息消火)機構であると発明者は考えている。そのような機構を実現するための本発明の化合物は、分子内に「窒素−酸素結合を有する官能基が結合するカルボニル基」を有することが必須である。
以下の説明において、一般式(I)で表される化合物、すなわち「窒素−酸素結合を有する官能基が結合するカルボニル基を分子内に有する化合物」を「本発明の化合物」ともいう。
本発明において「低級」とは、炭素数1〜6を意味する。但し、シクロアルキル基の場合には、炭素数3〜6を意味する。
置換基を有してもよい基としては、例えば、p−トリル基などが挙げられる。
形成される環構造としては、例えば、環状アミノ基、環状ラクタム基、環状スクシニル基、イミダゾリル環などが挙げられる。これらの中でも、環状スクシニル基、イミダゾリル環が特に好ましい。
nが0のとき、R3は、水素原子、ハロゲン原子、または低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルカルボニル基、低級シクロアルキル基およびアリール基から選択されかつ置換基を有してもよい基である。
nが0であるとは、一般式(I)のカルボニル基の炭素原子とR3が直接結合していることを意味する。
R3としては、メチル基、ビニル基、イソプロポキシ基、フェニル基が特に好ましい。
本発明の化合物における分子内のカルボニル基に結合する「窒素−酸素結合を有する官能基」は、nが0のときには1つ、nが1のときには2つとなる。
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの炭素質材料が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などが挙げられる。
正極集電体としては、例えば、SUS、アルミニウムなどの導電性金属の箔や薄板が挙げられる。
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの炭素質材料が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などが挙げられる。
負極集電体としては、例えば、銅のような金属の箔が挙げられる。
セパレータは、通常多孔質フィルムよりなり、耐溶剤性や耐還元性を考慮して材質が選定される。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂からなる多孔質フィルムあるいは不織布が好適である。このような材質からなるものを単層または複数層にして用いることができる。複数層の場合は、サイクル特性、低温性能、負荷特性などの観点から少なくとも1枚は不織布を用いることが好ましい。
非水系二次電池のその他の構成部材としては、通常使用されている公知の部材を使用できる。
また、非水系二次電池の形態としては、特に制限されず、ボタン型、コイン型、角型、スパイラル構造の円筒型、ラミネート型電池などの種々の形態が挙げられ、これらは、その用途に応じて、薄型、大型などの種々の大きさにすることができる。
なお、実施例1〜4および6は参考例である。
エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートとの混合溶媒(混合比(体積比):エチレンカーボネート/ジエチレンカーボネート=1/2)(非プロトン性有機溶媒)80mlに、本発明の化合物として下記式で表されるN−アセトキシ−N―メチル−アセトアミド(シグマ-アルドリッチ社製、表1において「化A」と表記)20mlを添加した。得られた混合溶媒に、リチウム塩として、LiPF6を1.0モル/kgの濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。
得られた正極板と負極板とを、セパレータとしてのポリプロピレンの多孔質フィルムを介して積層し、次いで、積層体に前記非水電解液を注液することで、非水系二次電池を作製した。
エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートとの混合溶媒の使用量を99mlとし、本発明の化合物であるN−アセトキシ−N―メチル−アセトアミド(シグマ-アルドリッチ社製)の使用量を1mlとしたこと以外は、実施例1と同様にして非水系二次電池を作製した。
エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートとの混合溶媒の使用量を40mlとし、本発明の化合物であるN−アセトキシ−N―メチル−アセトアミド(シグマ-アルドリッチ社製)の使用量を60mlとしたこと以外は、実施例1と同様にして非水系二次電池を作製した。
エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートとの混合溶媒の使用量を90mlとし、本発明の化合物として下記式で表されるアクリル酸スクシンイミジル(シグマ-アルドリッチ社製、表1において「化B」と表記)を使用量10mlで用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水系二次電池を作製した。
エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートとの混合溶媒の使用量を90mlとし、本発明の化合物として下記式で表される炭酸ジ(N−スクシンイミジル)(東京化成工業株式会社製、表1において「化C」と表記)を使用量10mlで用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水系二次電池を作製した。
エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートとの混合溶媒の使用量を90mlとし、本発明の化合物として下記式で表されるアセトキシムベンゾアート(東京化成工業株式会社製、表1において「化D」と表記)を使用量10mlで用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水系二次電池を作製した。
本発明の化合物を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして非水系二次電池を作製した。
エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートとの混合溶媒の使用量を98mlとし、本発明の化合物の代わりにAIBN(アゾビスイソブチロニトリル、東京化成工業株式会社製)を使用量2mlで用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水系二次電池を作製した。
実施例1〜6ならびに比較例1および2で得られた非水系二次電池について、20℃および60℃における初回放電容量の測定、放電容量維持率の測定、安全性試験として釘刺し試験を以下の手順で行った。
0.1CmAレートにて4.2Vになるまで非水系二次電池を充電した後、0.1CmAレートにて放電し、電圧が3.0Vになるまで放電したときの容量を初回放電容量(mAh/g)とする。なお、測定は、20℃一定の恒温器の中で実施する。
1CmAレートにて4.2Vになるまで非水系二次電池を充電した後、1CmAレートにて電圧が3.0Vになるまで放電することを1サイクルとし、このサイクルを99回行い、トータル充放電サイクル100回目として、初回放電容量と同一の充放電条件で充放電を1サイクル行ったときの容量を求める。
100回目測定終了後、1CmAレートにて4.2Vになるまで非水系二次電池を充電した後、1CmAレートにて電圧が3.0Vになるまで放電することを1サイクルとし、このサイクルを499回行い、トータル充放電サイクル500回目として、初回放電容量と同一の充放電条件で充放電を1サイクル行ったときの容量を求める。
100回目および500回目の放電容量維持率(%)は、それぞれ初回放電容量に対する100回目および500回目の放電容量の割合とする。なお、測定は、20℃一定の恒温器の中で実施する。
60℃における初回放電容量(mAh/g)および放電容量維持率(%)は、恒温器の温度を60℃一定にすること以外は、20℃における初回放電容量および放電容量維持率と同様にして測定した値とする。
釘刺し試験は、0.1CmAレートにて4.2Vになるまで充電した非水系二次電池に、室温20℃において、直径3mmの釘を速度1mm/sで貫通させた時の状態を確認する試験である。
表1における略称は次のことを示す。
LiPF6:リチウム塩LiPF6
EC/DEC:エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートとの混合溶媒
化A:N−アセトキシ−N―メチル−アセトアミド
化B:アクリル酸スクシンイミジル
化C:炭酸ジ(N−スクシンイミジル)
化D:アセトキシムベンゾアート
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
非水系溶媒として一般的な有機溶媒を用い、難燃剤を含まない一般的な非水系二次電池(比較例1)は、釘刺し試験において、発煙および発火が生じている。また、一般的な難燃剤であるAIBNを含有する非水系二次電池(比較例2)も、比較例1と同様に釘刺し試験において、発煙および発火が生じている。
これに対して、非水系溶媒に本発明の化合物を含有する非水系二次電池(実施例1〜6)は、釘刺し試験でも発煙や発火のような異常が生じていない。さらに、電池性能についても、実施例1〜6の非水系二次電池は、一般的な難燃剤であるAIBNを含有する比較例2の非水系二次電池と比較して、非常に良好な結果が得られた。
以上のように、表1の結果から、本発明の化合物を非水電解液の難燃剤として使用することで、難燃性を向上させることができるだけなく、従来と同等程度の電気特性を備えた非水系二次電池が得られることが分かる。
Claims (6)
- 正極と、負極と、非水電解液とを備え、前記非水電解液が、非水系二次電池用難燃剤として、一般式(I):
で表される、窒素−酸素結合を有する官能基が結合するカルボニル基を分子内に有する化合物を少なくとも含有することを特徴とする非水系二次電池。 - 前記一般式(I)で表される化合物が、前記非水電解液中に、1〜60体積%の割合で含まれる請求項1に記載の非水系二次電池。
- 前記一般式(I)で表される化合物が、分解温度以上の加熱で、CO2またはCOを主成分とする不活性ガスを生じる化合物である請求項1または2に記載の非水系二次電池。
- 前記一般式(I)で表される化合物が、120〜250℃の分解温度を有する化合物である請求項3に記載の非水系二次電池。
- 前記一般式(I)で表される化合物が、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)である請求項1〜3のいずれか1つに記載の非水系二次電池。
- 一般式(I):
で表される、窒素−酸素結合を有する官能基が結合するカルボニル基を分子内に有する化合物からなる非水系二次電池用難燃剤。
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