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JP5120113B2 - 車両用差動装置 - Google Patents

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JP5120113B2 JP2008173393A JP2008173393A JP5120113B2 JP 5120113 B2 JP5120113 B2 JP 5120113B2 JP 2008173393 A JP2008173393 A JP 2008173393A JP 2008173393 A JP2008173393 A JP 2008173393A JP 5120113 B2 JP5120113 B2 JP 5120113B2
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Description

本発明は、車両用差動装置に関し、特にドライブ側から回転駆動力を受けるピニオンギヤ、及びピニオンギヤにギヤ軸を直交させて噛合するサイドギヤを備えた車両用差動装置に関する。
従来の車両用差動装置として、エンジントルクを受けて回転するデフケースと、このデフケースの回転軸線に沿って互いに並列する1対のサイドギヤと、これら1対のサイドギヤに噛合する1対のピニオンギヤと、これら1対のピニオンギヤを支持するピニオンギヤシャフトとを備えたものがある(例えば特許文献1)。
デフケースには、1対のサイドギヤ及び1対のピニオンギヤを収容する収容空間が設けられている。また、デフケースには、収容空間に連通して1対のピニオンギヤの軸線と直交する方向に開口する1対の車軸挿通孔が設けられている。
1対のサイドギヤは、ボス部及びギヤ部を有する無底筒状の傘歯車からなり、デフケースの回転軸線に沿って移動可能に配置され、かつボス部をそれぞれ車軸挿通孔内に臨ませてデフケース内に回転自在に支持されている。1対のサイドギヤ内には、左右の車軸がそれぞれ車軸挿通孔を挿通してスプライン嵌合されている。
1対のピニオンギヤは、無底筒状の傘歯車からなり、ピニオンギヤシャフトの両端部にそれぞれ回転自在に支持されている。1対のピニオンギヤの軸心部には、ピニオンギヤシャフトを挿通させるシャフト挿通孔が設けられている。
ピニオンギヤシャフトは、1対のサイドギヤ間に介在してデフケースの収容空間に配置され、ピンによって抜け止めされている。
以上の構成により、車両のエンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤを介してデフケースに入力されると、デフケースがその回転軸線の回りに回転される。次に、デフケースが回転されると、この回転力がピニオンギヤシャフトを介して1対のピニオンギヤに伝達され、さらに1対のピニオンギヤから1対のサイドギヤに伝達される。この場合、1対のサイドギヤにはそれぞれ車軸がスプライン嵌合によって連結されているため、エンジン側からのトルクが車両の運転状況に応じて分配され、ドライブピニオン,リングギヤ,デフケース,ピニオンギヤシャフト,1対のピニオンギヤ及び1対のサイドギヤを介して左右の車軸に伝達される。
この場合、1対のピニオンギヤが回転すると、ピニオンギヤシャフトの両端部の支持面で摺動するため、これら各支持面と各ピニオンギヤとの間に摩擦抵抗を発生し、これら摩擦抵抗によって1対のサイドギヤの差動回転が制限される。
また、1対のピニオンギヤの回転によって1対のサイドギヤとの噛み合い面でスラスト力が発生し、これらスラスト力により1対のサイドギヤが互いに離間する方向に移動して各車軸挿通孔の内側開口周縁に圧接するため、1対のサイドギヤと1対の車軸挿通孔の内側開口周縁との間に摩擦抵抗を発生し、これら摩擦抵抗によっても1対のサイドギヤの差動回転が制限される。
ところで、この種の車両用差動装置において、十分に大きな差動制限トルクを得るためには、ピニオンギヤがその軸線をピニオンギヤシャフトの軸線に平行にした状態で摩擦摺動することが重要であるため、シャフト挿通孔の内周面とピニオンギヤシャフトの支持面との間におけるクリアランスがピニオンギヤシャフトの軸線に沿って均一な寸法に設定されている。
これにより、デフケースの回転時にピニオンギヤとサイドギヤとの噛み合いによって発生するピニオンギヤに対するピニオンギヤシャフトからの反力がその軸線と直交する方向に沿って作用し、この状態を維持しながらシャフト挿通孔の内周面がピニオンギヤシャフトの支持面を摩擦摺動する。
特開2000−297856号公報
しかし、ピニオンギヤとピニオンギヤシャフトとの間のクリアランスがピニオンギヤシャフトの軸線に沿って均一な寸法に設定された従来の車両用差動装置によると、デフケースの回転時にピニオンギヤがサイドギヤとの噛み合いによって発生する反力をピニオンギヤシャフトから受け、その軸線と直交する方向に移動するため、ピニオンギヤのサイドギヤに対する歯当たりが変動していた。すなわち、ピニオンギヤのギヤ軸の延長線がサイドギヤの回転軸と交差せず、ピニオンギヤの回転軸がピニオンギヤシャフトの中心軸に直交する方向にずれるため、ピニオンギヤとサイドギヤとの噛み合いが理論的な噛合位置からずれて行われ、歯面の圧力上昇によって歯面強度が低下するばかりか、安定した差動制限トルクが得られないという問題があった。
従って、本発明の目的は、歯面の圧力上昇による歯面強度の低下発生を抑制することができるとともに、安定した差動制限トルクを得ることができる車両用差動装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために、1対のサイドギヤと、前記1対のサイドギヤにギヤ軸を直交させて噛合し、軸心部にシャフト挿通孔が設けられた少なくとも1対のピニオンギヤと、前記少なくとも1対のピニオンギヤ及び前記1対のサイドギヤを回転自在に収容する収容空間を有し、前記1対のピニオンギヤをそのギヤ外周面による摺動によって回転自在に支持する少なくとも一部が円弧面からなる第1ピニオンギヤ支持部を有するデフケースと、前記デフケースに前記シャフト挿通孔を挿通して支持され、前記シャフト挿通孔の内周面による摺動によって前記少なくとも1対のピニオンギヤを回転自在に支持する第2ピニオンギヤ支持部を前記第1ピニオンギヤ支持部よりも前記デフケースの回転軸線に近い位置に有するピニオンギヤシャフトとを備え、前記少なくとも1対のピニオンギヤは、そのピニオンギヤ軸と前記第1ピニオンギヤ支持部の前記円弧面の中心軸とが一致した場合における前記ギヤ外周面と前記第1ピニオンギヤ支持部との間のクリアランスを寸法Cとするとともに、前記ピニオンギヤ軸と前記ピニオンギヤシャフトの中心軸とが一致した場合における前記シャフト挿通孔の内周面と前記第2ピニオンギヤ支持部との間のクリアランスを寸法Cとすると、前記寸法Cが前記寸法Cよりも大きい寸法に設定されていることを特徴とする車両用差動装置を提供する。
本発明によると、歯面の圧力上昇による歯面強度の低下発生を抑制することができるとともに、安定した差動制限トルクを得ることができる。
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用差動装置の全体を説明するために示す斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係る車両用差動装置の全体を説明するために示す断面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤとその支持面との間のクリアランスについて説明するために示すグラフである。図4は、本発明の実施の形態に係る車両用差動装置においてピニオンギヤの軸線とピニオンギヤシャフトの軸線とが一致した状態を模式化して示す断面図である。図5は、本発明の実施の形態に係る車両用差動装置においてピニオンギヤの軸線がピニオンギヤシャフトの軸線に対して傾斜した状態を模式化して示す断面図である。
(車両用差動装置の全体構成)
図1及び図2において、符号1で示す車両用差動装置は、エンジントルクを受けて回転するデフケース2と、このデフケース2の回転軸線Oと直交する軸線上に位置するピニオンギヤシャフト50と、このピニオンギヤシャフト50上で互いに並列する1対のピニオンギヤ3,4と、これら1対のピニオンギヤ3,4にギヤ軸を直交させて噛合する1対のサイドギヤ5L,5Rと、これら1対のサイドギヤ5L,5Rの背面側に位置する1対のスラストワッシャ6L,6Rとから大略構成されている。
(デフケース2の構成)
デフケース2は、図1及び図2に示すように、ピニオンギヤ3,4及びサイドギヤ5L,5R・スラストワッシャ6L,6Rを収容する収容空間2Aを内部に有し、全体が1ピースの部材によって形成されている。
デフケース2には、図1及び図2に示すように、回転軸線Oに沿って開口する車軸挿通孔9L,9R、これら車軸挿通孔9L,9Rの軸線と直交する方向に軸線をもつギヤ・シャフト支持部10,11、及びこれらギヤ・シャフト支持部10,11のうち一方のギヤ・シャフト支持部10の軸線回りに等間隔(180°)をもって並列するピン取付孔2b,2bが設けられている。また、デフケース2には、図1に示すように、回転軸線Oに関して対称な領域であって、ギヤ・シャフト支持部10,11から回転軸線Oの回りに等間隔をもって離間する部位に位置するサイドギヤ通過孔12L,12Rが設けられている。デフケース2の左方車軸側には、図1及び図2に示すように、回転軸線Oと直交する平面内で円周方向に沿う円環状のリングギヤ取付用フランジ13が一体に設けられている。
車軸挿通孔9L,9Rは、図2に示すように、回転軸線Oに沿う方向に開口する貫通孔によって形成されている。車軸挿通孔9Lには左側の車軸(図示せず)が、また車軸挿通孔9Rには右側の車軸(図示せず)がそれぞれ挿通されている。車軸挿通孔9L,9Rの内側開口周縁には、スラストワッシャ6L,6Rを受ける球面からなるスラストワッシャ受部9La,9Raが設けられている。
ギヤ・シャフト支持部10,11は、図2に示すように、デフケース2の内外に回転軸線Oと直交する軸線をもって開口し、かつ内側開口部の内径が外側開口部の内径よりも大きい段状の貫通孔(円形孔)によって形成されている。ギヤ・シャフト支持部10,11の内側開口サイズは、ピニオンギヤ3,4の外径と略同一の内径(サイドギヤ5L,5Rの外径より小さい内径)に設定されている。
ギヤ・シャフト支持部10,11の内側開口部の内面は、ピニオンギヤシャフト50の軸線方向においてピニオンギヤ3,4とサイドギヤ5L,5Rとの噛み合い中心点(ピニオンギヤ3,4からサイドギヤ5L,5Rへのトルク伝達時に両ギヤの歯面が接触する領域における荷重中心)よりもデフケース2の回転軸線Oから遠い位置に配置され、ピニオンギヤ3,4のギヤ鍔部3B,4B(後述)の外周面による摺動面積を実質的に変化させない摺動によってピニオンギヤ3,4を回転自在に支持する第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aで形成されている。第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aは円筒状(円周面)であるが、デフケース2とピニオンギヤ3,4とのトルク伝達時にピニオンギヤ3,4が確実に支持されるよう、少なくとも一部が円弧面で形成されていればよい。
ギヤ・シャフト支持部10,11の外側開口部の内面は、第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aよりもデフケース2の回転軸線Oから遠い位置に配置され、ピニオンギヤシャフト50の両端部を軸線回りに回転不能に、かつ軸線方向に移動不能に支持するピニオンギヤシャフト支持面10B,11Bで形成されている。
ギヤ・シャフト支持部10,11の段状面には、図2に示すように、所定の曲率をもつ球面で形成されたピニオンギヤ受部10C,11Cが設けられている。
ピン取付孔2b,2bは、図2に示すように、ギヤ・シャフト支持部10の内周面に回転軸線Oに沿って開口されている。ピン取付孔2b,2bには、ピニオンギヤシャフト50のピン挿通孔50Dを挿通するピン52の両端部が固定されている。これにより、ピニオンギヤシャフト50がデフケース2にピン52を介して支持されている。このため、ピニオンギヤシャフト50がその軸線回りに回り止めされ、かつ軸線方向に抜け止めされている。
サイドギヤ通過孔12L,12Rは、図1に示すように、平面非円形状の開口部を有する貫通孔によって形成されている。そして、その開口サイズは、ピニオンギヤ3,4及びサイドギヤ5L,5Rをデフケース2内に挿入し得るようなサイズに設定されている。
(ピニオンギヤシャフト50の構成)
ピニオンギヤシャフト50は、図2に示すように、ピニオンギヤ3,4のシャフト挿通孔3D,4D(後述)の内周面による摺動によってピニオンギヤ3,4を回転自在に支持する第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bを有し、ピニオンギヤ3,4(シャフト挿通孔3D,4D)を挿通してデフケース2(ギヤ・シャフト支持部10,11)のピニオンギヤシャフト支持面10B,11Bに支持されている。この場合、ピニオンギヤシャフト50は、その外周面がピニオンギヤシャフト支持面10B,11Bとの間に実質的に空隙が存在せず、デフケース2に対して移動不能に固定される。そして、後に詳述する図3に示すように、第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bの摩擦摺動等に起因する温度上昇による常温時(20°)と比較した場合の熱膨張量に対応する径方向寸法Dが、シャフト挿通孔3D,4Dの第2摺動面30A,40Aとピニオンギヤシャフト50の第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bとの間の常温におけるクリアランスを寸法C(図4に示す)とすると、この寸法Cよりも小さい寸法に設定されている。なお、寸法Cは、ピニオンギヤ3のギヤ軸とピニオンギヤシャフト50の中心軸とが一致した場合におけるクリアランス寸法である。
ピニオンギヤシャフト50としては、ピニオンギヤ3,4の良好な支持特性を維持するために、デフケース2に最大の駆動トルクが作用した場合でも第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bと第2摺動面30A,40Aとの間のクリアランスが寸法C=0とならないような剛性をもつものであることが望ましい。
第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bは、それぞれが互いに第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aとピニオンギヤシャフト50の軸線に沿って並列し、かつギヤ・シャフト支持部10,11から所定の間隔をもって離間する位置に配置されている。第2ピニオンギヤ支持面50A,51Bの少なくとも一部は、ピニオンギヤシャフト50の軸線方向においてピニオンギヤ3,4とサイドギヤ5L,5Rとの噛み合い中心点よりもデフケース2の回転軸線Oに近い位置に配置されている。
(ピニオンギヤ3,4の構成)
ピニオンギヤ3,4は、略同一の構成であるため、例えばピニオンギヤ3のみについて説明する。なお、ピニオンギヤ4については、各部位の符号をピニオンギヤ3の各部位の符号に対応して付し(例えば、ピニオンギヤ4のギヤ胴部にはピニオンギヤ3のギヤ胴部3Aに対応して4Aを、またピニオンギヤ4のギヤ鍔部にはピニオンギヤ3のギヤ鍔部3Bに対応して4Bをそれぞれ付す。)、その説明は省略する。
ピニオンギヤ3は、図2に示すように、中心軸線をギヤ軸線Cとするギヤ胴部3A、このギヤ胴部3Aの外側に突出する第1被支持部としてのギヤ鍔部3B、及びこれらギヤ胴部3A,ギヤ鍔部3Bのサイドギヤ側に位置するギヤ部3C(サイドギヤ5L,5Rとの噛み合い部)を有する無底筒状の傘歯車からなり、ギヤ・シャフト支持面10の第1ピニオンギヤ支持面10A及びピニオンギヤシャフト50の第2ピニオンギヤ支持面50Aに回転自在に支持されている。ギヤ鍔部3Bの外周面は円筒状(円筒面)に形成されており、第1ピニオンギヤ支持面10Aと摩擦摺動する第1摺動面30Bとして構成されている。そして、図3に示すように、ギヤ鍔部3Bの摩擦摺動等に起因する温度上昇による常温時と比較した場合の熱膨張量に対応する径方向寸法Dが、第1摺動面30Bと第1ピニオンギヤ支持面10Aとの間の常温におけるクリアランスを寸法C(図4に示す)とすると、この寸法Cよりも小さい寸法に設定されている。なお、寸法Cは、ピニオンギヤ3のギヤ軸と前記第1ピニオンギヤ支持面10Aの円弧面の中心軸とが一致した場合におけるクリアランス寸法である。
ここで、図3は、デフケース2の回転軸線Oとピニオンギヤシャフト50の軸線Sとが交わる点を交点(円錐の頂点)a(図4に示す)とし、この交点aと第1摺動面30Bの荷重中心点及び第2摺動面30Aの荷重中心点との距離を横軸とし、第1摺動面30Bと第1ピニオンギヤ支持面10Aとの間及び第2摺動面30Aと第2ピニオンギヤ支持面50Aとの間におけるクリアランスを縦軸として、これらの関係を模式的に示した図である。前述のように、クリアランス寸法C,Cは、熱膨張量に対応する径方向寸法D,Dよりも大きくしなければならないが、大きくしすぎるとガタが大きくなり、第1摺動面30Bと第1ピニオンギヤ支持面10A及び第2摺動面30Aと第2ピニオンギヤ支持面50Aとの良好な接触が得られない。よって、クリアランス寸法C,Cは、図3の領域Aの範囲で設定することが望ましい。
ギヤ胴部3Aは、図2に示すように、その軸心部(中心軸線を含む部位)にピニオンギヤシャフト50を挿通させるシャフト挿通孔3Dを有し、全体が略円環状の第1ギヤ胴部30a及び略截頭円錐形状の第2ギヤ胴部31aからなる円筒体によって形成されている。
シャフト挿通孔3Dは、図2に示すように、各内径が互いに異なる大小2つの内面を有する丸孔によって形成されている。シャフト挿通孔3Dの内面のうち内径の小さい内面は、内径の大きい他の内面よりもデフケース2の回転軸線Oに近い位置に配置され、ピニオンギヤシャフト50の第2ピニオンギヤ支持面50Aを摺動する第2被支持部としての第2摺動面30Aで形成されている。そして、図4に示すように、デフケース2の回転軸線Oとピニオンギヤシャフト50の軸線Sが交わる点を交点(円錐の頂点)aとするとともに、この交点aと第2摺動面30Aの荷重中心点とを結ぶ仮想線(円錐の母線)Vの長さをLとすると、この寸法Lに比例して寸法Cが設定されている。図4において、符号Rはピニオンギヤ3の移動方向を示す。
一方、シャフト挿通孔3Dの内面のうち内径の大きい内面は、第2摺動面30Aと比べてデフケース2の回転軸線Oから遠い位置に配置され、ピニオンギヤシャフト50の外周面を摺動しない非摺動面31Aで形成されている。シャフト挿通孔3Dのギヤ背面側開口部は、ギヤ軸線方向中間部からギヤ背面側に向かって漸次広がるラッパ状の開口部によって形成されている。非摺動面31Aは、ピニオンギヤシャフト50の外周面を摺動せず、第2摺動面30Aにそれぞれ連接するテーパ面31a、及びこのテーパ面31aとギヤ鍔部3Bのギヤ背面側端面とに連接するなだらかな曲面32aで形成されている。
ここで、「ギヤ背面」とは、ピニオンギヤ3のギヤ軸線方向両端面のうちデフケース2の回転軸線Oから遠い位置に配置される端面のことをいう。
第1ギヤ胴部30aはギヤ胴部3Aのギヤ背面側に、また第2ギヤ胴部31aはギヤ胴部3Aのギヤ先端面側(ギヤ胴部3Aの軸線方向においてギヤ背面側とは反対の側)にそれぞれ配置されている。第1ギヤ胴部30aの外周面にはギヤ鍔部3Bが、また第2ギヤ胴部31aの外周面にはギヤ部3Cの歯元がそれぞれ配置されている。
ギヤ鍔部3Bは、図2に示すように、第1ギヤ胴部30aの外周面に全周にわたって一体に設けられ、全体がギヤ軸線方向に沿って外径を均一な寸法とする円環体によって形成されている。そして、ギヤ胴部3Aと共にピニオンギヤ3における断面略T字状のギヤ基部(ピニオンギヤ3において、ギヤ部3Cを除く部位)として機能するように構成されている。
ギヤ鍔部3Bの外周面は、ギヤ・シャフト支持面10の第1ピニオンギヤ支持面10Aを摺動する第1被支持部としての第1摺動面30Bで形成されている。そして、図4に示すように、交点aと第1摺動面30Bの荷重中心点とを結ぶ仮想線(円錐の母線)Vの長さを寸法Lとすると、この寸法Lに比例して寸法Cが設定されている。すなわち、LとLの比は、CとCの比に等しい。
ギヤ鍔部3Bの背面は、図2に示すように、ギヤ・シャフト支持部10のピニオンギヤ受部10Cに適合し、かつピニオンギヤ受部10Cを摺動する第3被支持部としての第3摺動面31Bで形成されている。
ギヤ部3Cは、図2に示すように、デフケース2に対する被支持部としての摺動部を含まず、ギヤ鍔部3Bよりもデフケース2の回転軸線Oに近い位置に配置されている。ギヤ部3Cのギヤ背面側端縁は、その一部がギヤ鍔部3Bのギヤ先端側端面に一体に設けられている。
(サイドギヤ5L,5Rの構成)
サイドギヤ5L,5Rは、図1及び図2に示すように、各外径が互いに異なるボス部5La,5Ra及びギヤ部5Lb,5Rbを有する略環状の歯車(ピニオンギヤ3,4の外径より大きい外径を有し、単一の歯先円錐角をもつ傘歯車)からなり、デフケース2の収容空間2Aに回転自在に支持され、ピニオンギヤ3,4に噛合するように構成されている。
サイドギヤ5L,5Rの背面には、スラストワッシャ受部9La,9Raにスラストワッシャ6L,6Rを介して適合する球面からなる摺動部5Lc,5Rcが設けられている。サイドギヤ5L,5R内には、それぞれ左右の車軸(図示せず)が車軸挿通孔9L,9Rに挿通してスプライン嵌合されている。
(スラストワッシャ6L,6Rの構成)
スラストワッシャ6L,6Rは、図2に示すように、サイドギヤ5L,5Rとピニオンギヤ3,4との噛み合いを調整する環状のワッシャからなり、サイドギヤ5L,5Rの摺動部5Lc,5Rcとスラストワッシャ受部9La,9Raとの間に介装されている。そして、左右の車軸をそれぞれ挿通させてサイドギヤ5L,5Rのスラスト力を受けるように構成されている。スラストワッシャ6L,6Rには、ワッシャ内周部からワッシャ外周部に潤滑油を導入する潤滑油導入路(図示せず)が設けられている。
〔車両用差動装置1の動作〕
車両のエンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤを介してデフケース2に入力されると、デフケース2が回転軸線Oの回りに回転する。デフケース2が回転すると、この回転力がピニオンギヤシャフト50を介してピニオンギヤ3,4に伝達され、さらにピニオンギヤ3,4からサイドギヤ5L,5Rに伝達される。この場合、左右のサイドギヤ5L,5Rにはそれぞれ車軸(図示せず)がスプライン嵌合されているため、エンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤ・デフケース2・ピニオンギヤシャフト50・ピニオンギヤ3,4・サイドギヤ5L,5Rを介して左右の車軸に伝達される。
ここで、車両が直進状態であり、左右各車輪と路面との間でスリップが発生しない場合には、エンジン側からのトルクがデフケース2に伝達されると、ピニオンギヤ3,4がサイドギヤ5L,5Rの中心軸回りを自転することなく公転し、ピニオンギヤ3,4及びサイドギヤ5L,5Rがデフケース2及びピニオンギヤシャフト50と共に一体に回転するため、エンジン側からのトルクが左右各車軸に等分に伝達され、左右各車輪が等しい回転数で回転する。
一方、例えば右側の車輪がぬかるみに落ち込んで路面との間でスリップが発生した場合には、ピニオンギヤ3,4がサイドギヤ5L,5Rと噛合しながら自転するため、エンジン側からのトルクが左右の車軸(車輪)間で差動分配され、左側の車輪がデフケース2の回転速度より低い速度で回転し、右側の車輪がデフケース2の回転速度より高い速度で回転する。
本実施の形態においては、デフケース2にトルクが作用した状態でピニオンギヤ3,4が自転すると、第1摺動面30B,40Bが第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aで摺動し、第2摺動面30A,40Aがピニオンギヤシャフト50の第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bで摺動するため、第1摺動面30B,40Bと第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aとの間及び第2摺動面30A,40Aと第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bとの間に摩擦抵抗を発生する。これら摩擦抵抗によってサイドギヤ5L,5Rの差動回転が制限され、左右各車輪と路面との間で発生するスリップが抑えられる。
この際、図4に示すように、第1摺動面30B,40Bと第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aとの間のクリアランスの寸法Cが交点aと第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aの荷重中心点とを結ぶ仮想線Vの長さLに、また第2摺動面30A,40Aと第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bとのクリアランスの寸法Cが交点aと第2ピニオンギヤ支持面30A,40Aの荷重中心点とを結ぶ仮想線Vの長さLにそれぞれ比例して設定されているため、サイドギヤ5L,5R(図2に示す)とピニオンギヤ3,4(ピニオンギヤ3のみ図示)との噛合によってサイドギヤ5L,5Rからピニオンギヤ3,4に荷重が作用すると、図5に示すようにピニオンギヤ3,4(ピニオンギヤ3のみ図示)がサイドギヤ5L,5Rの軸線回りに回転する方向Rに傾動する。これに伴い、第1摺動面30B,40Bの荷重中心点と第2摺動面30A,40Aの荷重中心点とはそれぞれ所定の位置に、すなわち第1摺動面30B,40Bと第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aとの間のクリアランスの寸法C´が交点aと第1ピニオンギヤ支持面10A,11Aの荷重中心点とを結ぶ仮想線V´の長さL´に、また第2摺動面30A,40Aと第2ピニオンギヤ支持面50A,50Bとのクリアランスの寸法C´が交点aと第2ピニオンギヤ支持面30A,40Aの荷重中心点とを結ぶ仮想線V´の長さL´にそれぞれ比例して設定された位置に移動する。これにより、ピニオンギヤ3,4のサイドギヤ5L,5Rに対する歯当たりが変動せず、ピニオンギヤ3,4とサイドギヤ5L,5Rとの噛み合いが理論的な噛合位置で行われる。
また、本実施の形態においては、ピニオンギヤ3,4の回転によってサイドギヤ5L,5Rとの噛み合い面で各々のギヤの回転軸方向のスラスト力が発生する。このスラスト力によりサイドギヤ5L,5Rが互いに離間する方向に移動してスラストワッシャ6L,6Rをスラストワッシャ受部9La,9Raに圧接するため、スラストワッシャ6L,6Rとサイドギヤ5L,5Rとの間に摩擦抵抗を発生し、これら摩擦抵抗によってもサイドギヤ5L,5Rの差動回転が制限される。さらに、ピニオンギヤ3,4に発生するスラスト力によりピニオンギヤ3,4の第3摺動面31B,41Bがデフケース2のピニオンギヤ受部10C,11Cに圧接するため、ピニオンギヤ3,4の自転に対する摩擦抵抗が発生し、これによってもサイドギヤ5L,5Rの差動回転が制限される。
[実施の形態の効果]
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
(1)ピニオンギヤ3,4とサイドギヤ5L,5Rとの噛み合いが理論的な噛合位置で行われるため、歯面の圧力上昇による歯面強度の低下発生を抑制することができるとともに、安定した差動制限トルクを得ることができる。
(2)ピニオンギヤ3,4におけるシャフト挿通孔3D,4Dのギヤ背面側開口部がなだらかな曲面32a,42aを有するラッパ状の開口部によって形成されているため、ピニオンギヤ3,4の剛性が均一化され、比較的高い歯面強度を得ることができる。
以上、本発明の車両用差動装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
(1)本実施の形態では、ピニオンギヤ3,4が2個(1対)デフケース2内に配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、3個以上のピニオンギヤをデフケース内に配置してもよい。
(2)本実施の形態では、デフケース2が1ピースの部材によって形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、複数のケースエレメントからなるデフケースであっても勿論よい。
本発明の実施の形態に係る車両用差動装置の全体を説明するために示す斜視図。 本発明の実施の形態に係る車両用差動装置の全体を説明するために示す断面図。 本発明の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤとその支持面との間のクリアランスについて説明するために示すグラフ。 本発明の実施の形態に係る車両用差動装置においてピニオンギヤの軸線とピニオンギヤシャフトの軸線とが一致した状態を模式化して示す断面図。 本発明の実施の形態に係る車両用差動装置においてピニオンギヤの軸線がピニオンギヤシャフトの軸線に対して傾斜した状態を模式化して示す断面図。
符号の説明
1…車両用差動装置
2…デフケース、2A…空間部、2b…ピン取付孔
3,4…ピニオンギヤ、3A,4A…ギヤ胴部、30a,40a…第1ギヤ胴部、31a,41a…第2ギヤ胴部、30A,40A…第2摺動面、31A,41A…非摺動面、31a,41a…テーパ面、32a,42a…曲面、3B,4B…ギヤ鍔部、30B,40B…第1摺動面、31B,41B…第3摺動面、3C,4C…ギヤ部、3D,4D…シャフト挿通孔
5L,5R…サイドギヤ、5La,5Ra…ボス部、5Lb,5Rb…ギヤ部、5Lc,5Rc…摺動部
6L,6R…スラストワッシャ
9L,9R…車軸挿通孔、9La,9Ra…スラストワッシャ受部
50…ピニオンギヤシャフト、50A,50B…第2ピニオンギヤ支持面、50D…ピン挿通孔
10,11…ギヤ・シャフト支持部、10A,11A…第1ピニオンギヤ支持面、10B,11B…ピニオンギヤシャフト支持面、10C,11C…ピニオンギヤ受部
12L,12R…サイドギヤ通過孔
13…リングギヤ取付用フランジ
a…交点
C…ギヤ軸線
S…ピニオンギヤシャフトの軸線
,C,C´1,C´2…クリアランスの寸法
,V,V´1,V´2…仮想線
,L,L´1,L´2…仮想線の長さ
O…回転軸線
L…荷重
F1,F2…反力

Claims (5)

  1. 1対のサイドギヤと、
    前記1対のサイドギヤにギヤ軸を直交させて噛合し、軸心部にシャフト挿通孔が設けられた少なくとも1対のピニオンギヤと、
    前記少なくとも1対のピニオンギヤ及び前記1対のサイドギヤを回転自在に収容する収容空間を有し、前記1対のピニオンギヤをそのギヤ外周面による摺動によって回転自在に支持する少なくとも一部が円弧面からなる第1ピニオンギヤ支持部を有するデフケースと、
    前記デフケースに前記シャフト挿通孔を挿通して支持され、前記シャフト挿通孔の内周面による摺動によって前記少なくとも1対のピニオンギヤを回転自在に支持する第2ピニオンギヤ支持部を前記第1ピニオンギヤ支持部よりも前記デフケースの回転軸線に近い位置に有するピニオンギヤシャフトとを備え、
    前記少なくとも1対のピニオンギヤは、そのピニオンギヤ軸と前記第1ピニオンギヤ支持部の前記円弧面の中心軸とが一致した場合における前記ギヤ外周面と前記第1ピニオンギヤ支持部との間のクリアランスを寸法Cとするとともに、前記ピニオンギヤ軸と前記ピニオンギヤシャフトの中心軸とが一致した場合における前記シャフト挿通孔の内周面と前記第2ピニオンギヤ支持部との間のクリアランスを寸法Cとすると、前記寸法Cが前記寸法Cよりも大きい寸法に設定されている
    ことを特徴とする車両用差動装置。
  2. 前記デフケースは、前記ピニオンギヤシャフトの軸線方向において前記第1ピニオンギヤ支持部が前記少なくとも1対のピニオンギヤと前記1対のサイドギヤとの噛み合い中心点よりも前記回転軸線から遠い位置に配置され、
    前記ピニオンギヤシャフトは、その軸線方向において前記第2ピニオンギヤ支持部の少なくとも一部が前記少なくとも1対のピニオンギヤと前記1対のサイドギヤとの噛み合い中心点よりも前記回転軸線に近い位置に配置されている請求項1に記載の車両用差動装置。
  3. 前記少なくとも1対のピニオンギヤは、前記第1ピニオンギヤ支持部に対応する第1被支持部、及び前記第2ピニオンギヤ支持部に対応する第2被支持部を有し、前記デフケースの回転軸線と前記ピニオンギヤシャフトの軸線とが交わる点を交点aとするとともに、前記交点aと前記第1被支持部とを結ぶ仮想線の長さを寸法Lとし、かつ前記交点aと前記第2被支持部とを結ぶ仮想線の長さを寸法Lとすると、前記寸法Cが前記寸法Lに、また前記寸法Cが前記寸法Lにそれぞれ比例して設定されている請求項1に記載の車両用差動装置。
  4. 前記少なくとも1対のピニオンギヤは、前記第1被支持部と前記第2被支持部とが前記ピニオンギヤシャフトの軸線方向において所定の間隔をもって配置されている請求項3に記載の車両用差動装置。
  5. 前記少なくとも1対のピニオンギヤは、前記ギヤ外周面の焼き付きによる熱膨張量に対応する径方向寸法が寸法Cよりも小さい寸法に設定され、
    前記ピニオンギヤシャフトは、前記第2ピニオンギヤ支持部の焼き付きによる熱膨張量に対応する径方向寸法が寸法Cよりも小さい寸法に設定されている請求項1に記載の車両用差動装置。
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