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JP5040766B2 - 記録装置 - Google Patents

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JP5040766B2
JP5040766B2 JP2008078425A JP2008078425A JP5040766B2 JP 5040766 B2 JP5040766 B2 JP 5040766B2 JP 2008078425 A JP2008078425 A JP 2008078425A JP 2008078425 A JP2008078425 A JP 2008078425A JP 5040766 B2 JP5040766 B2 JP 5040766B2
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Description

本発明は、記録装置に関する。
インクを利用した画像やデータ等を記録の一つとして、インクジェット記録方式がある。インクジェット記録方式の原理は、ノズル、スリット、或いは多孔質フィルム等から液体或いは溶融固体インクを吐出(付与)し、紙、布、フィルム等に記録を行うものである。インクを吐出する方法については、静電誘引力を利用してインクを吐出させる、いわゆる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用してインクを吐出させる、いわゆるドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、高熱により気泡を形成、成長させることにより生じる圧力を利用してインクを吐出させる、いわゆる熱インクジェット方式等、各種の方式が提案されており、これらの方式により、極めて高精細の画像やデータの記録物を得ることができる。
このインクジェット記録方式も含め、インクを利用した記録方式では、浸透媒体や非浸透媒体などの多様な記録媒体に対し高画質で記録を行うために、中間転写体に記録した後、記録媒体に転写する方式が提案されている。
例えば、特許文献1には、画像層のインク流れや混色を防止する目的で、紫外線硬化性インクを噴射して受像体に画像層を形成し、記録媒体と受像体上の画像層とのニップを転写に十分な圧力を用いて形成し、画像層に紫外線を照射するインクジェット印刷装置において、紫外線供給装置と画像層との間に受像体又は紫外線供給装置用ハウジングが設けられているインクジェット印刷装置が開示されている。
また、特許文献2には、インク使用量を低減する目的で、UV硬化型インクを中間転写媒体に付与し、中間転写媒体を押圧してUV硬化型インクを最終基材へ転写し、UV硬化型インクへ紫外線を照射するインクジェット画像形成方法において、最終基材上のUV硬化型インクドット径が中間転写媒体上のUV硬化型インクドット径より大きいことを特徴とするインクジェット画像形成方法が開示されている。
さらに特許文献3には、飛翔インク滴が中間転写体に転写されるのに先だって、中間転写体の表面に液体を付着させ、その液体上にインクを付着させてから、中間転写体上のインクを液体とともに被印刷体に転写することを特徴とする記録方法について開示されている。
特開平2007−152945号公報 特開平2007−15241号公報 特開平2001−212956号公報
本発明は、中間転写体から記録媒体への硬化性溶液層の転写効率が高く、中間転写体の劣化を抑制し、かつ、画像の定着性に優れた記録装置を提供することを目的とする。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
中間転写体と、
前記中間転写体上に、外部からの刺激により硬化する硬化性材料を少なくとも含む硬化性溶液を供給し、硬化性溶液層を形成する硬化性溶液層形成手段と、
前記中間転写体上に形成された前記硬化性溶液層を、記録媒体に接触させた後に前記中間転写体から剥離することにより、前記中間転写体から前記記録媒体に前記硬化性溶液層を転写する転写手段と、
前記硬化性溶液層を硬化させる前記刺激を、前記硬化性溶液層と前記記録媒体との接触直前及び接触中の少なくとも何れか一方において、前記硬化性溶液層に供給する第1の刺激供給手段と、
前記硬化性溶液層を硬化させる前記刺激を、前記中間転写体から剥離した後の前記硬化性溶液層に供給する第2の刺激供給手段と、を有し、
前記硬化性溶液層が前記中間転写体から剥離される前に前記第1の刺激供給手段が前記硬化性溶液層に供給する刺激の量は、転写刺激量以上であり、かつ、定着刺激量よりも少なく、
前記第1の刺激供給手段及び前記第2の刺激供給手段が前記硬化性溶液層に供給する刺激の全体量は、前記定着刺激量以上であり、
前記第1の刺激供給手段及び前記第2の刺激供給手段は、紫外線を含む光を前記硬化性溶液層に照射する紫外線照射装置であり、
前記第1の刺激供給手段が前記硬化性溶液層に照射する紫外線を含む光の250nmから500nmの波長領域における積算照射強度(I 1T )に対する硬化波長領域における積算照射強度(I 1C )の割合(I 1C /I 1T )は、前記第2の刺激供給手段が前記硬化性溶液層に照射する紫外線を含む光の250nmから500nmの波長領域における積算照射強度(I 2T )に対する硬化波長領域における積算照射強度(I 2C )の割合(I 2C /I 2T )よりも大きいことを特徴とする記録装置である。
請求項2に係る発明は、
前記硬化性溶液層形成手段は、前記中間転写体上に、前記硬化性材料を少なくとも含むインク受像用の硬化性溶液を供給し、受像層を形成する受像層形成手段であり、
前記中間転写体上に形成された前記受像層に、インクを付与するインク付与手段をさらに含み、
前記転写手段は、前記インクが付与された前記受像層を、記録媒体に接触させた後に前記中間転写体から剥離することにより、前記中間転写体から前記記録媒体に前記受像層を転写することを特徴とする請求項1に記載の記録装置である。
請求項に係る発明は、
前記第1の刺激供給手段は、紫外線発光ダイオードであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録装置である。
請求項1に係る発明によれば、中間転写体から記録媒体への硬化性溶液層の転写効率が高く、中間転写体の劣化を抑制し、かつ、画像の定着性に優れる、といった効果を奏する。
請求項2に係る発明によれば、非浸透媒体及び浸透媒体を問わず多様な記録媒体に対して高画質な画像が形成される、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、より中間転写体の劣化を抑制する、といった効果を奏する。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同じ機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
第1実施形態に係る記録装置101は、図1に示すように、例えば、無端ベルト状の中間転写ベルト10(中間転写体)の周囲に、中間転写ベルト10の移動方向(矢印方向)における上流側から順に、中間転写ベルト10上にインク受像用の硬化性溶液12A(硬化性溶液)を供給し受像層12B(硬化性溶液層)を形成する溶液供給装置12(硬化性溶液層形成手段)、中間転写ベルト10上に形成された受像層12Bにインク滴14Aを付与し画像Tを形成するインクジェット記録ヘッド14(インク付与手段)、画像Tが形成された受像層12Bを記録媒体Pに接触させ圧力を加えることにより画像Tが形成された受像層12Bを記録媒体P上に転写する転写装置16(転写手段)、及び中間転写ベルト10表面に残留する受像層12Bの残留物や付着した異物(記録媒体Pの紙粉等)等を除去するクリーニング装置20が配置されている。
中間転写ベルト10の内側には、受像層12B及び記録媒体Pの接触中に紫外線を含む光(以下、「紫外線等」と称する場合がある)を受像層12Bに照射する紫外線照射装置18(第1の刺激供給手段)が設けられている。すなわち、受像層12Bが記録媒体Pと接触している領域に対向して紫外線照射装置18を設置している。
また、紫外線照射装置18よりもさらに記録媒体Pの進行方向下流側には、記録媒体Pに転写された受像層12Bをさらに硬化させることにより受像層12Bを記録媒体Pに定着させる紫外線照射装置28(第2の刺激供給手段)が配置されている。
中間転写ベルト10は、例えば、3つの支持ロール10Aから10C、及び加圧ロール16B(転写装置16)により内周面側から張力を掛けつつ回転するように支持されて配設されている。また中間転写ベルト10は、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。
中間転写ベルト10の材料としては、例えば、各種の樹脂(例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、フッ素系樹脂等)、各種のゴム(例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)等、ステンレス等の金属材料等が挙げられる。中間転写ベルト10は、単層構成でもよいし、積層構成でもよい。
上記の通り、本実施形態においては、紫外線照射装置18が中間転写ベルト10の内側に設けられているため、紫外線等は中間転写ベルト10を透過した後に受像層12Bに照射される。したがって、中間転写ベルト10は、受像層12Bに効率よく紫外線を照射させ、反応熱の発生を抑制するため、紫外線透過性が高く、紫外線に対する耐久性が高いものが望ましい。具体的には、例えば、中間転写ベルト10の紫外線透過率が70%以上であることが望ましい。中間転写ベルト10の紫外線透過率が上記範囲であることにより、受像層12Bの硬化反応に必要な紫外線エネルギーが効率よく受像層12Bに供給されると共に、中間転写ベルト10が紫外線を吸収すること等による熱の発生が抑制される。
このような中間転写ベルト10を形成する材料としては、具体的には、例えば、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、ポリイミドフイルム、ポリオレフィン系フィルム等が挙げられる。
また、本実施形態においては、受像層12Bに接する表面における中間転写ベルト10の表面自由エネルギー(γ)が低いことが望ましい。特に、表面自由エネルギー(γ)は、受像層12Bに接する表面における記録媒体Pの表面自由エネルギー(γ)よりも低いことが望ましく、下記式が成り立つ条件であることがより望ましい。
式:γ−γ>10
表面自由エネルギーの値は、例えば、以下の方法により求めることができる。
具体的には、接触角計CAM−200(KSV社製)を用い、Zisman法を用いた装置内臓のプログラム計算にて算出した。
中間転写ベルト10は、上記表面自由エネルギー(γ)の値を低くするために、受像層12Bに接する表面に表面離型層を設けてもよい。
表面離型層に用いられる材料としては、例えば、フッ素系樹脂材料等が挙げられ、具体的には、例えば、フッソ樹脂、フッソ変性ウレタン及びシリコーン樹脂、共重合フッソゴム、フッソ樹脂−共重合ビニルエーテル、PFA(4フッ化エチレンパーフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合塗料)などの粉体塗料または樹脂チューブ、PTFE(4フッ化エチレン)塗料、PTFE分散ウレタン塗料、さらにETFE(ポリテトラフルオロエチレン)チューブ、PVdF(ポリビニリデンフルオライド)、PHV(ポリテトラフルオロビニリデン)樹脂材料等が挙げられる。
この中でも、上記刺激に対する透過性の高い材料を用いることが望ましい。また、上記刺激に対する透過性の低い材料を用いる場合は、表面離型層の膜厚を薄くする方が望ましい。
溶液供給装置12は、例えば、インク受像用の硬化性溶液12A(以下、「硬化性溶液12A」と略す場合がある)を収納する筐体12C内に、当該硬化性溶液12Aを中間転写ベルト10へ供給する供給ローラ12Dと、供給された硬化性溶液12Aにより形成された受像層12Bの層厚を規定するブレード12Eと、を含んで構成されている。
溶液供給装置12は、その供給ローラ12Dが中間転写ベルト10に連続的に接触するようにしてもよいし、中間転写ベルト10から離間する構成としてもよい。また、溶液供給装置12は、独立した溶液供給システム(図示せず)より硬化性溶液12Aを筐体12Cへ供給させ、硬化性溶液12Aの供給がとぎれないようにしてもよい。硬化性溶液12Aの詳細については後述する。
溶液供給装置12は、上記構成に限られず、公知の供給法(塗布法:例えば、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布等)などを利用した装置が適用される。
インクジェット記録ヘッド14は、例えば、中間転写ベルト10の移動方向上流側から、ブラックインクを付与するための記録ヘッド14Kと、シアンインクを付与するための記録ヘッド14Cと、マゼンタインクを付与するための記録ヘッド14Mと、イエローインクを付与するための記録ヘッド14Yと、の各色の記録ヘッドを含んで構成されている。無論、記録ヘッド14の構成は上記構成に限られず、例えば、記録ヘッド14Kのみで構成してもよいし、記録ヘッド14C、記録ヘッド14M、及び記録ヘッド14Yのみで構成してもよい。
各記録ヘッド14は、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルト10における非屈曲領域上で、且つ中間転写ベルト10表面と記録ヘッド14のノズル面との距離が例えば0.7から1.5mmにして配置されている。
また、各記録ヘッド14は、例えば、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅を持つライン型インクジェット記録ヘッドが望ましいが、従来のスキャン型のインクジェット記録ヘッドを用いてもよい。
各記録ヘッド14のインク付与方式は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等、インク付与可能な方式であれば制限はない。なお、インクの詳細については後述する。
転写装置16は、以下のように構成されている。具体的には、例えば、加圧ロール16B及び支持ロール10Cにより中間転写ベルト10を張架し、非屈曲領域を形成している。中間転写ベルト10の非屈曲領域において、加圧ロール16B及び支持ロール10Cに対向する位置には、記録媒体Pを支持する支持体22が設けられている。また、加圧ロール16Aは、中間転写ベルト10の加圧ロール16Bと対向する位置に配置され、支持体22に設けられた開口部(図示せず)を通して記録媒体Pに接触する。
すなわち、中間転写ベルト10及び記録媒体Pが加圧ロール16A及び16Bにより挟み込まれた位置(以下、「接触開始位置」と称する場合がある)から、支持ロール10C及び支持体22により挟み込まれた位置(以下、「剥離位置」と称する場合がある)までの転写領域においては、受像層12Bは中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態となっている。
紫外線照射装置18は、中間転写ベルト10の内側に設けられ、転写領域の中間転写ベルト10を介して、中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態の受像層12Bに紫外線等を照射する。
また紫外線照射装置28は、中間転写ベルト10の外側で、記録媒体Pの受像層12Bが形成された面と対向する位置に設けられ、中間転写ベルト10から剥離された受像層12Bに直接紫外線等を照射する。
ここで、紫外線照射装置18及び紫外線照射装置28としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、デイープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザー、キセノンランプ、UV−LED(紫外線発光ダイオード)などが適用される。望ましい紫外線照射装置及び紫外線照射条件については後述する。
記録媒体Pとしては、浸透媒体(例えば、普通紙や、コート紙等)、非浸透媒体(例えば、アート紙、樹脂フィルムなど)、いずれも適用される。記録媒体Pは、これらに限られず、その他、半導体基板など工業製品も含まれる。
以下、本実施形態に係る記録装置101の画像記録プロセスにつき、説明する。
本実施形態に係る記録装置101では、中間転写ベルト10が回転駆動され、まず、溶液供給装置12により、中間転写ベルト10表面に硬化性溶液12Aを供給して、受像層12Bを形成する。
ここで、受像層12Bの層厚(平均膜厚)は、特に制限はないが、画像形成性と転写性とを両立させる観点から、1μm以上50μm以下が望ましく、3μm以上20μm以下がより望ましい。
また、例えば、受像層12Bの厚みをインク滴14Aが受像層12Bの最下層まで到達しない程度とすれば、記録媒体Pへの転写後では受像層12Bのうちインク滴14Aが存在する領域が露出せず、インク滴14Aが存在しない領域が硬化後には保護層として機能する。
次に、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを付与し、中間転写ベルト10上に供給された受像層12Bに当該インク滴14Aを付与する。インクジェット記録ヘッド14は所定の画像情報に基づき、受像層12Bの所定の位置にインク滴14Aを付与する。
この際、インクジェット記録ヘッド14によるインク滴14Aの付与は、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルト10における非屈曲領域上で行われる。つまり、ベルト表面がたわみのない状態で受像層12Bにインク滴14Aの付与がなされる。
次に、転写装置16の加圧ロール16A及び16Bにより記録媒体Pと中間転写ベルト10とを挟み込んで圧力をかける。このとき、中間転写ベルト10上の受像層12Bが記録媒体Pに接触する(接触開始位置)。その後、支持ロール10C及び支持体22によって挟まれた位置(剥離位置)までは、受像層12Bが中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態が維持される。
ここで、加圧ロール16A及び16Bによって受像層12Bに加えられる圧力は、転写効率の向上及び画像乱れの抑制といった観点から、0.001MPa以上2MPa以下の範囲とすることが望ましい。
次に、紫外線照射装置18によって、中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態の(接触中の)受像層12Bに、中間転写ベルト10を透過した紫外線等が照射されることにより、受像層12Bが硬化する。具体的には、中間転写ベルト10上の受像層12Bが記録媒体Pに接触した後(接触開始位置を通過した後)に紫外線等の照射を開始し、受像層12Bが中間転写ベルト10から剥離される前(剥離位置に到達する前)に紫外線等の照射を終了する。
次に、剥離位置において受像層12Bが中間転写ベルト10から剥離されることにより、インク滴14Aによる画像Tが含まれる硬化性樹脂層(画像層)が記録媒体Pに形成される。
次に、中間転写ベルト10から剥離された記録媒体P上の受像層12Bは、紫外線照射装置28により、記録媒体Pとは接していない面に直接紫外線等が照射され、さらに硬化することにより記録媒体Pに定着する。
一方、受像層12Bが記録媒体Pへ転写された後の中間転写ベルト10表面に残った受像層12Bの残留物や異物は、クリーニング装置20により除去される。
そして、再び中間転写ベルト10上に、溶液供給装置12により硬化性溶液12Aを供給して受像層12Bを形成し、画像記録プロセスが繰り返される。
以上のようにして、本実施形態に係る記録装置101では、画像記録が行われる。
本実施形態においては、紫外線照射装置18によって受像層12Bに照射された紫外線等の量(以下、「第1紫外線照射量」と称する場合がある)が、「転写刺激量」以上であり、かつ、「定着刺激量」よりも少ない。また、紫外線照射装置28によって受像層12Bに照射された紫外線等の量(以下、「第2紫外線照射量」と称する場合がある)及び第1紫外線照射量の合計が、「定着刺激量」以上である。そのため、受像層12Bが中間転写ベルト10から記録媒体Pへ転写する効率が高くなる上に、中間転写ベルト10の劣化も抑制され、かつ、画像の定着性も良好となる。
ここで、本実施形態において「転写刺激量」とは、剥離位置において受像層12Bが中間転写ベルト10から剥離されやすくなる程度に受像層12Bが硬化するのに必要最低限の紫外線等照射量(刺激供給量)を意味する。具体的には、「転写刺激量」とは、受像層12Bの硬化率が10%となるために必要な紫外線等照射量である。
また、本実施形態において「定着刺激量」とは、受像層12Bが完全に硬化するのに必要最低限の紫外線等照射量を意味する。具体的には、「定着刺激量」とは、受像層12Bの硬化率が80%となるために必要な紫外線等照射量である。
第1紫外線照射量の紫外線等を照射された受像層12Bの硬化率は、上記の通り10%以上80%未満であり、10%以上70%未満が望ましく、10%以上60%未満がより望ましい。
第1紫外線照射量及び第2紫外線照射量の紫外線等を照射された受像層12Bの硬化率は、上記の通り80%以上であり、85%以上100%以下が望ましい。
ここで、受像層12Bの硬化率とは、受像層12Bにおける硬化反応の進行度であり、具体的には、以下のようにして測定する。具体的には、フーリエ変換型赤外分光(FT−IR)装置を用い、IRスペクトルのピーク強度の変化率より計算した。
第1紫外線照射量の望ましい数値は、積算強度で例えば、10mJ/cm以上5000mJ/cm未満が望ましく、10mJ/cm以上1000mJ/cm未満がより望ましい。
また、第1紫外線照射量及び第2紫外線照射量の合計についても、望ましい数値は紫外線硬化性材料種や受像層12Bの厚みなどに依存するが、例えば、20mJ/cm以上10000mJ/cm未満が望ましく、50mJ/cm以上4000mJ/cm未満がより望ましい。
本実施形態において、上記効果が得られる理由は以下の通りである。
中間転写ベルト10上の受像層12B及び記録媒体Pの接触中に、紫外線照射装置18が受像層12Bに対し、転写刺激量以上の紫外線等を照射するため、受像層12Bの転写効率が向上する。
すなわち、中間転写ベルト10上の受像層12Bは、紫外線等が照射される前に液状のまま接触開始位置において記録媒体Pと接触し、その状態で紫外線照射装置18により転写刺激量以上の紫外線等が照射されて硬化反応が進行することにより、記録媒体Pと強固に密着する。また、転写刺激量以上の紫外線等が照射された受像層12Bは、内部凝集力が十分に上昇し、受像層12B表面の粘着性が下がっているため、剥離位置において中間転写ベルト10から剥離しやすくなっている。よって、受像層12Bが中間転写ベルト10から記録媒体Pへ転写する際における受像層12Bの液別れ(すなわち、受像層12Bが分離し、中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に受像層12Bの一部が密着したまま剥離されること)が抑制されることにより、受像層12Bの転写効率が向上する。
一方、上記の通り本実施形態においては、受像層12Bが中間転写ベルト10に接触した状態で、受像層12Bに紫外線等を照射する。そのため、中間転写ベルト10が紫外線を吸収することにより中間転写ベルト10が劣化したり、受像層12Bの硬化反応により発生した反応熱の影響で中間転写ベルト10が劣化したりする場合がある。
しかし、本実施形態においては、第1紫外線照射量が定着刺激量よりも少ないため、上記中間転写ベルト10の劣化が抑制される。
さらに、本実施形態においては、中間転写ベルト10から剥離された受像層12Bを紫外線照射装置28により紫外線等を照射することにより、第1紫外線照射量及び第2紫外線照射量の合計が定着刺激量以上となっているため、画像の定着性も向上する。
本実施形態においては、紫外線照射装置18により受像層12Bが照射される紫外線等の250nmから500nmの波長領域におけるスペクトル(以下、「第1紫外線スペクトル」と称する場合がある)と、紫外線照射装置28により受像層12Bが照射される紫外線等の250nmから500nmの波長領域におけるスペクトル(以下、「第2紫外線スペクトル」と称する場合がある)との関係が、以下の条件を満たす。
具体的には、第1紫外線スペクトルにおいて、250nmから500nmの全波長領域における積算照射強度を「I1T」、硬化波長領域における積算照射強度を「I1C」とし、第2紫外線スペクトルにおいて、250nmから500nmの全波長領域における積算照射強度を「I2T」、硬化波長領域における積算照射強度を「I2C」とすると、「I1C/I1T」の値が「I2C/I2T」の値よりも大きいという条件を満たす。
ここで、「硬化波長領域」とは、受像層12Bの硬化反応に用いられる波長の領域を意味し、例えば、受像層12Bに含まれる重合開始剤の種類等によって決まるものである。
具体的には、例えば、上記のように紫外線重合開始剤としてイルガキュア651(チバ・ジャパン株式会社製)を用いた場合、「硬化波長領域」は310nmから370nmとなる。すなわち、硬化波長領域における積算照射強度とは、受像層12Bが照射された紫外線のうち、310nmから370nmの波長領域における紫外線の強度を積算した値を意味する。
また上記のように、例えば、紫外線照射装置18として高圧水銀ランプを用いた場合、上記「I1C/I1T」値は0.48となり、紫外線照射装置28としてメタルハライドランプを用いた場合、上記「I2C/I2T」値は0.35となった。
第1紫外線スペクトルにおいて上記「I1C/I1T」値が大きいことは、250nmから500nmにおける硬化波長領域以外の紫外線等照射強度が小さいことを意味する。硬化波長領域以外の紫外線等は、受像層12Bに照射されてもエネルギーが硬化反応に用いられないため、熱エネルギーに変換されやすい。そのため、上記「I1C/I1T」値を上記「I2C/I2T」値よりも大きくすることにより、熱による中間転写ベルト10の劣化が抑制される。
一方、紫外線照射装置28による受像層12Bへの紫外線等照射では、受像層12Bが中間転写ベルト10から剥離された後に照射が行われる。そのため、上記「I2C/I2T」値が小さく、紫外線等照射による熱の発生が大きい場合においても、中間転写ベルト10はその熱の影響を受けることが無く、熱による中間転写ベルト10の劣化が生じることもない。
具体的には、上記「I1C/I1T」値は、例えば、0.30以上であることが望ましく、0.40以上であることがより望ましい。また「I2C/I2T」値は、例えば、0.05以上0.70以下であることが望ましく、0.05以上0.60以下であることがより望ましい。
さらに第2紫外線スペクトルは、ブロードであることが望ましい。受像層12Bに対し照射された紫外線等は、インク等による紫外線等の吸収のため強度が減衰し、受像層12Bの記録媒体Pに接している面まで到達しにくい場合がある。しかし第2紫外線スペクトルがブロードである場合、紫外線照射装置28により照射される紫外線等は様々な波長のものを含むため、そのうちインク等に吸収されにくい波長の紫外線等が受像層12Bの記録媒体Pと接する面にまで到達し、定着性が向上する。
第1紫外線スペクトル及び第2紫外線スペクトルは、紫外線照射装置18及び紫外線照射装置28の種類を適切に選択することにより上記条件をみたすことができる。
具体的には、望ましい紫外線照射装置18としては、例えば、高圧水銀ランプ、UV−LED等が挙げられる。紫外線照射装置18として上記装置を用いることにより、記録装置101が小型化されるという点においても好ましい。
特に、紫外線照射装置18として、UV−LEDを用いることがより望ましい。それにより第1紫外線スペクトルが非常にシャープとなるため、UV−LEDの発光スペクトルのピーク波長に合わせて紫外線重合開始剤の種類を選択したり、紫外線重合開始剤の種類に合ったピーク波長を持つUV−LEDを選択したりすることにより、上記「I1C/I1T」値がより大きな値となる。
また、望ましい紫外線照射装置28としては、例えば、メタルハライドランプ等が挙げられる。
また、第1紫外線スペクトル及び第2紫外線スペクトルは、紫外線照射装置(紫外線照射装置18及び紫外線照射装置28の一方又は両方)と受像層12Bとの間に、適切なフィルターを配置することによっても、上記条件を満たすことができる。さらに、紫外線照射装置18及び紫外線照射装置28の種類の適切な選択及びフィルターの配置を組み合わせることによって、第1紫外線スペクトル及び第2紫外線スペクトルが上記条件を満たすようにしてもよい。
本実施形態においては、上記の通り、受像層12Bにインク滴14Aを付与する構成であるため、記録媒体Pが浸透性であるか非浸透性であるかに関わらず、高画質な画像形成が行われる。
また本実施形態においては、上記の通り、中間転写ベルト10上に形成された受像層12Bにインク滴14Aを付与し、転写装置16により記録媒体Pへ転写される構成である。よって、例えば、受像層12Bの厚みをインク滴14Aが受像層12Bの最下層まで到達しない程度とすれば、記録媒体Pへの転写後では受像層12Bのうちインク滴14Aが存在する領域が露出せず、インク滴14Aが存在しない領域が硬化後には保護層として機能する。そのため、画像の印字部と非印字部との間に段差が無く、画像耐久性が向上する。
本実施形態においては、上記の通り、紫外線照射装置18が中間転写ベルト10の内側に配置されており、紫外線等が中間転写ベルト10を透過した後に受像層12Bに照射される。そのため、受像層12Bのうち、中間転写ベルト10と接している側の方が、記録媒体Pと接している側に比べて、相対的に紫外線等照射量が高いため硬化反応の進行度も高くなる。よって、受像層12Bは、記録媒体Pからは剥離しにくいが中間転写ベルト10からは剥離しやすい状態となり、中間転写ベルト10から記録媒体Pへの転写効率がより向上する。
さらに本実施形態では、上記の通り、中間転写ベルト10上に形成された受像層12Bにインク滴14Aを付与し、中間転写ベルト10を透過した紫外線等を受像層12Bに照射する構成である。よって、例えば、受像層12Bの厚みをインク滴14Aが受像層12Bの最下層まで到達しない程度とすると、受像層12Bの中間転写ベルト10と接している側に含まれるインク滴14Aの量は少なくなる。そのため、インク滴14Aが紫外線等を吸収することによる受像層12Bの硬化の阻害が抑制される。すなわち、転写刺激量が小さくなるため、第1紫外線照射量を低く抑えることにより、中間転写ベルト10の劣化がさらに抑制される。
また本実施形態では、上記の通り、紫外線照射装置18による紫外線等照射において、紫外線等が中間転写ベルト10を透過した後に受像層12Bに照射される構成であるため、装置構成の簡易化も実現される。すなわち、例えば、紫外線を中間転写ベルト10の外側から照射する場合、支持体22及び記録媒体Pに紫外線透過性の材料を用いる必要がある等の制約を受けずに、受像層12B及び記録媒体Pの接触中に紫外線を照射することが実現されやすくなる。
さらに、上記の通り、本実施形態においては、紫外線照射装置18が中間転写ベルト10の内側に配置されているため、紫外線照射装置18が中間転写ベルト10の外側に配置される場合に比べ省スペース化される。
なお、本実施形態においては、上記の通り、紫外線照射装置18による紫外線等照射において、受像層12Bが、接触開始位置を通過した後に紫外線等照射を開始し剥離位置に到達する前に紫外線等照射を終了している。しかし、受像層12B及び記録媒体Pの接触直前及び接触中の少なくとも何れか一方において、紫外線照射装置18による紫外線照射が行われれば、上記形態に限られない。
具体的には、例えば、受像層12Bが、接触開始位置を通過するのと同時に紫外線照射装置18による紫外線照射を開始してもよく、接触開始位置を通過する前に紫外線照射装置18による紫外線照射を開始していてもよい。また、例えば、受像層12Bが、剥離位置に到達するのと同時に紫外線照射装置18による紫外線照射を終了してもよく、剥離位置を通過した後に紫外線照射装置18による紫外線照射を終了してもよい。さらに、紫外線照射装置18による紫外線照射の開始から終了までの間において、一時的に紫外線照射を停止した後に紫外線照射を再開してもよい。また、受像層12Bが接触開始位置を通過する前に、紫外線照射装置18による紫外線照射を開始し終了してもよい(すなわち、接触直前のみにおいて紫外線照射を行ってもよい)。
なお、受像層12Bが剥離位置を通過した後に紫外線照射装置18による紫外線照射を終了する形態においては、紫外線照射装置18による受像層12Bへの紫外線照射が開始されてから、受像層12Bが剥離位置に到達するまでの間(前記硬化性溶液層が前記中間転写体から剥離される前)に、受像層12Bが紫外線照射装置18により照射された紫外線の量を「第1紫外線照射量」とする。つまり、受像層12Bが剥離位置を通過した後に、紫外線照射装置18により照射された紫外線の量については、「第1紫外線照射量」には含まれず、「第2紫外線照射量」に含まれることとなる。
上記「接触直前に紫外線照射」とは、受像層12Bが液状を保ったまま接触開始位置(受像層12Bが記録媒体Pに接触する位置)に到達する条件で、受像層12Bが接触開始位置に到達する前に、受像層12Bへの紫外線照射を開始することを言う。すなわち、受像層12Bが接触開始位置に到達する前に紫外線を照射することにより、接触開始位置において受像層12Bが硬化して液状ではなくなっている場合は、「接触直前に紫外線照射」ではない。
また、「接触直前のみにおいて紫外線照射」とは、受像層12Bが液状を保ったまま接触開始位置に到達する条件で、受像層12Bが接触開始位置に到達する前において、受像層12Bへの紫外線照射を開始し終了することを言う。すなわち、接触直前において紫外線照射を開始し終了した後、受像層12Bが液状を保ったまま接触開始位置に到達し、その後刺激を供給しなくてもさらに硬化反応が進み、受像層12Bが硬化し剥離しやすくなった状態で剥離位置に到達する形態である。
「接触直前に紫外線照射」とは、具体的には、例えば、硬化性材料としてラジカル硬化性材料を用いた場合、受像層12Bへの紫外線照射を開始してから受像層12Bが接触開始位置に到達するまでの時間が5秒以下であることを言う。また、硬化性材料としてカチオン硬化性材料を用いた場合、「接触直前に紫外線照射」とは、例えば、受像層12Bへの紫外線照射を開始してから受像層12Bが接触開始位置に到達するまでの時間が10秒以下であることを言う。
また、本実施形態においては、上記の通り、紫外線照射装置18が中間転写ベルト10の内側に配置され、紫外線等が中間転写ベルト10を透過した後に受像層12Bに照射されるが、これに限られない。具体的には、例えば、紫外線照射装置18を中間転写ベルト10の外側に配置され、中間転写ベルト10を透過せずに、直接(又は、支持体22及び記録媒体Pを透過した後に)中間転写ベルト10上の受像層12Bに紫外線を照射する形態であっても良い。
また、例えば、紫外線照射装置18の本体を中間転写ベルト10の外側に配置しつつ、中間転写ベルト10を透過した紫外線を受像層12Bに照射する形態もありうる。具体的には、例えば、紫外線照射装置18の本体を中間転写ベルト10の外側に配置し、例えば光ファイバー等を用いて紫外線を紫外線照射装置本体から中間転写ベルト10の内側に誘導し、中間転写ベルト10を透過した後の紫外線を受像層12Bに照射する形態等が挙げられる。
本実施形態においては、上記の通り、紫外線照射装置28が受像層12Bに直接紫外線等を照射する形態となっているが、これに限られず、記録媒体P等を透過した紫外線を受像層12Bに照射する形態であってもよい。
本実施形態においては、上記の通り、第1の刺激供給手段及び第2の刺激供給手段として、それぞれ、紫外線照射装置18及び紫外線照射装置28を用いているが、これに限られない。
第1の刺激供給手段及び第2の刺激供給手段の種類は、適用する硬化性溶液12Aに含まれる硬化性材料の種類に応じて選択される。具体的には、例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化性材料を適用する場合、第1の刺激供給手段及び第2の刺激供給手段としては、本実施形態のように、硬化性溶液12A(これにより形成された受像層12B)に紫外線を照射する紫外線照射装置18及び紫外線照射装置28を適用する。また、電子線の照射により硬化する電子線硬化性材料を適用する場合、第1の刺激供給手段及び第2の刺激供給手段としては、硬化性溶液12A(これにより形成された受像層12B)に電子線を照射する電子線照射装置を適用する。また、熱の付与により硬化する熱硬化性材料を適用する場合、第1の刺激供給手段及び第2の刺激供給手段としては、硬化性溶液12A(これにより形成された受像層12B)に熱を付与する熱付与装置を適用する。
電子線照射装置としては、例えば、走査型/カーテン型等があり、カーテン型はフィラメントで生じた熱電子を、真空チャンバー内のグリッドによって引き出し、さらに高電圧(例えば70乃至300kV)によって、一気に加速させ、電子流となり、窓箔を通過して、大気側に放出する装置である。電子線の波長は一般的に1nmより小さく、またエネルギーは大きいもので数MeVに及ぶが、電子線の波長数がpmのオーダーでエネルギーが数十乃至数百keVが適用される。
また、熱付与装置としては、例えば、ハロゲンランプ、セラミックヒータ、ニクロム線ヒータ、マイクロ波加熱、赤外線ランプなどが適用される。また、熱付与装置としては、電磁誘導方式の加熱装置も適用できる。
また本実施形態において、受像層12Bを形成する前の中間転写ベルト10に離型剤を供給し離型剤層を形成する離型剤塗布装置をさらに備えた形態としてもよい。
離型剤塗布装置をさらに備えることにより、受像層12Bが接する表面における中間転写ベルト10の表面自由エネルギー(γ)の値を低く設定することが容易となり、より中間転写ベルト10から記録媒体Pへの受像層12Bの転写効率が向上する。
また、上記構成であることにより、中間転写ベルト10の表面状態の経時的な変化による影響を受けにくく経時安定性が向上すると共に、中間転写ベルト10表面のクリーニング性も向上する。
ここで、上記構成のように離型剤塗布装置を備えた形態において「表面自由エネルギー(γ)」とは、離型剤層が形成された中間転写ベルト10における、受像層12Bが接する表面の表面自由エネルギーを意味する。
離型剤塗布装置としては、公知の塗布法(例えば、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布等)などを利用した装置が適用される。具体的には、例えば、離型剤を収納する筐体内に、離型剤を中間転写ベルト10へ供給する供給ローラと、供給された離型剤により形成された離型剤層の層厚を規定するブレードと、離型剤を加熱溶融させる加熱手段を含むものが挙げられる。
離型剤としては、具体的には、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、炭化水素系・ポリアルキレングリコール、脂肪酸エステル、フェニルエーテル、リン酸エステル等が挙げられ、これらの中でもシリコーン系オイル、フッ素系オイル、ポリアルキレングリコールが望ましい。
シリコーン系オイルとしては、例えば、ストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイルが挙げられる。
ストレートシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。
変性シリコーンオイルとしては、例えばメチルスチリル変性オイル、アルキル変性オイル、高級脂肪酸エステル変性オイル、フッ素変性オイル、アミノ変性オイルが挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ポリブチレングリコールが挙げられ、これらの中でも、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールが望ましい。
本実施形態においては、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ヘッド14から画像データに基づいて選択的にインク滴14Aが付与されてフルカラーの画像が記録媒体Pに記録されるようになっているが、記録媒体上への文字や画像の記録に限定されるものではない。すなわち、工業的に用いられる液滴付与(噴射)装置全般、また版を用いた転写による画像を形成する方法、スクリーン印刷による画像形成方法などにも本発明に係る装置を適用することができる。
<第2実施形態>
図2は、第2実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
第2実施形態に係る記録装置102は、図2に示すように、第1実施形態における中間転写ベルト10の代わりに中間転写ドラム26を配置した形態である。
中間転写ドラム26は、単層構成でもよく、複層構成でもよい。複層構成としては、例えば、円筒状基体と、当該基体表面に被覆される表面層と、を有する構成が挙げられる。中間転写ドラム26は、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。
円筒状基体の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅、ガラス等が挙げられる。
表面層の材質としては、例えば、各種の樹脂[例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、フッ素系樹脂等]、各種のゴム(例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)等が挙げられる。表面層は、単層構成でもよいし、積層構成でもよい。
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、紫外線照射装置18が中間転写ドラム26の内側に設けられているため、紫外線等は中間転写ドラム26を透過した後に受像層12Bに照射される。したがって、受像層12Bに効率よく紫外線を照射させる観点から、中間転写ドラム26は、紫外線透過性の高いものが望ましい。また、中間転写ドラム26の耐久性の観点から、中間転写ドラム26は、紫外線耐久性の高いものが望ましい。
具体的には、例えば、エネルギー効率及び発熱抑制の観点から、中間転写ドラム26の紫外線透過率が70%以上であることが望ましい。そのような中間転写ドラム26の構成としては、具体的には、例えば、石英ガラスで構成されたもの、石英ガラス製の円筒状基体にフッ素系樹脂の表面層を形成したもの等が望ましい。
また、本実施形態においても、受像層12Bに接する表面における中間転写ドラム26の表面自由エネルギー(γ)が低いことが望ましく、特に受像層12Bに接する表面における記録媒体Pの表面自由エネルギー(γ)よりも低いことがより望ましく、下記式が成り立つ条件であることがさらに望ましい。
式:γ−γ>10
上記表面自由エネルギー(γ)の値を低くするという観点から、望ましい中間転写ドラム26の表面層の材料としては、例えば、上記第1実施形態における中間転写ベルト10の表面離型層に用いられる材料と同様のものが挙げられる。
各記録ヘッド14は、中間転写ドラム26表面とヘッドのノズル面との距離が例えば0.3乃至0.7mm程度にして配置されている。また、各記録ヘッド14は、例えば、その長手方向が中間転写ドラムの回転方向と交差(望ましくは直交)して配設されている。
転写装置16は、中間転写ドラム26に対し押し当てて配置される加圧ロール16Aを含んで構成されている。
本実施形態に係る記録装置102では、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを付与し、中間転写ドラム26上に形成された受像層12Bに当該インク滴14Aを付与する。
この際、インクジェット記録ヘッド14によるインク滴14Aの付与は、剛体である中間転写ドラム26上で行われる。つまり、ドラム表面がたわみのない状態で受像層12Bにインク滴14Aの付与がなされる。
次に、インク滴14Aを付与された受像層12Bは、転写装置16の加圧ロール16Aにより圧力を受けることによって記録媒体Pに接触する。そして、受像層12Bが記録媒体Pに接触する位置(接触開始位置)において、紫外線照射装置18は、中間転写ドラム26及び記録媒体Pの両方に接触した受像層12Bへの紫外線等照射を開始する。
その後、受像層12Bは中間転写ドラム26から剥離され、さらにその後に受像層12Bへの紫外線等照射が終了する。
次に、中間転写ドラム26から剥離され紫外線照射装置18による紫外線等照射が終了した記録媒体P上の受像層12Bは、紫外線照射装置28によりさらに紫外線等を照射され、さらに硬化することにより記録媒体Pに定着する。
本実施形態においては、紫外線照射装置18による受像層12Bへの紫外線照射が開始されてから、受像層12Bが剥離位置に到達するまでの間に、受像層12Bが紫外線照射装置18により照射された紫外線等の量が、上記「第1紫外線照射量」となる。また、受像層12Bが剥離位置を通過した後に受像層12Bが紫外線照射装置18により照射された紫外線等の量と、受像層12Bが紫外線照射装置28により照射された紫外線等の量と、の合計が、上記「第2紫外線照射量」となる。
これら以外は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
本実施形態の記録装置では、中間転写体として中間転写ドラム26を用いているが、第1実施形態の記録装置と同様に、中間転写ドラム26から記録媒体Pへの受像層12Bの転写効率が向上する上に、中間転写ドラム26の劣化も抑制され、かつ、画像の定着性も良好となる。具体的な作用は、中間転写体として中間転写ベルト10を用いた上記第1実施形態と同様である。
なお、本実施形態においては、上記の通り、受像層12Bが、接触開始位置において紫外線照射装置18による紫外線等照射を開始し、剥離位置を通過した後に紫外線照射装置18による紫外線等照射を終了しているが、上記形態に限られない。とりうる具体的な形態は、上記第1実施形態と同様である。
また、本実施形態においては、上記の通り、受像層12B及び記録媒体Pの接触中及び接触後に紫外線等を照射しているが、受像層12B及び記録媒体Pの接触直前及び接触中の少なくとも何れか一方において紫外線が照射されれば、上記形態に限られない。
また、本実施形態においては、上記の通り、紫外線照射装置18が中間転写ドラム26の内側に配置され、紫外線等が中間転写ドラム26を透過した後に受像層12Bに照射されるが、これに限られない。とりうる具体的な形態は、中間転写体として中間転写ベルト10を用いた上記第1実施形態と同様である。
本実施形態においては、上記の通り、第1の刺激供給手段及び第2の刺激供給手段として、それぞれ、紫外線照射装置18及び紫外線照射装置28を用いているが、これに限られない。とりうる具体的な形態は、中間転写体として中間転写ベルト10を用いた上記第1実施形態と同様である。
また本実施形態において、受像層12Bを形成する前の中間転写ドラム26に離型剤を供給し離型剤層を形成する離型剤塗布装置をさらに備えた形態としてもよい。とりうる具体的な形態は、中間転写体として中間転写ベルト10を用いた上記第1実施形態と同様である。
<第3実施形態>
図3は、第3実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
第3実施形態に係る記録装置103は、図3に示すように、第1実施形態における溶液供給手段12を用いず、インクジェット記録ヘッド14の代わりに、紫外線硬化性インク(硬化性溶液)のインク滴30Aを中間転写ベルト10に直接供給しインク層30B(硬化性溶液層)を形成するインクジェット記録ヘッド30(硬化性溶液層形成手段)を用いた形態である。
インクジェット記録ヘッド30は、上記第1実施形態におけるインクジェット記録ヘッド14と同様のものを用いることができる。
本実施形態に係る記録装置103では、インクジェット記録ヘッド30から吐出されたインク滴30Aが、中間転写ベルト10上に直接付与され、インク層30B(すなわち画像T)が形成される。
次に、第1実施形態と同様に、転写装置16によりインク層30Bが中間転写ベルト10から記録媒体Pへ転写される。すなわち、転写装置16の加圧ロール16A及び16Bにより記録媒体Pと中間転写ベルト10とを挟み込んで圧力をかける。このとき、中間転写ベルト10上のインク層30Bが記録媒体Pに接触する(接触開始位置)。その後、支持ロール10C及び支持体22によって挟まれた位置(剥離位置)までは、インク層30Bが中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態が維持される。
ここで、加圧ロール16A及び16Bによってインク層30Bに加えられる圧力は、転写効率の向上及び画像乱れの抑制といった観点から、0.001MPa以上2MPa以下の範囲とすることが望ましい。
次に、紫外線照射装置18によって、中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態の(接触中の)インク層30Bに、中間転写ベルト10を透過した紫外線等が照射されることにより、インク層30Bが硬化する。そして、転写刺激量以上の紫外線等を照射されたインク層30Bは、剥離位置において中間転写ベルト10から剥離される。
中間転写ベルト10から剥離された記録媒体P上のインク層30Bは、紫外線照射装置28により、記録媒体Pとは接していない面を直接紫外線等照射され、さらに硬化することにより記録媒体Pに定着する。
一方、インク層30Bが記録媒体Pへ転写された後の中間転写ベルト10表面に残ったインク層30Bの残留物や異物は、クリーニング装置20により除去される。
そして、再び中間転写ベルト10上に、インクジェット記録ヘッド30によりインク滴30Aを供給してインク層30Bを形成し、画像記録プロセスが繰り返される。
これら以外は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
本実施形態の記録装置では、硬化性溶液として紫外線硬化性インクを用いているが、第1実施形態の記録装置と同様に、中間転写ベルト10から記録媒体Pへのインク層30Bの転写効率が向上する上に、中間転写ベルト10の劣化も抑制され、かつ、画像の定着性も良好となる。具体的な作用は、硬化性溶液として硬化性溶液12Aを用いた上記第1実施形態と同様である。
本実施形態においては、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ヘッド30から画像データに基づいて選択的にインク滴30Aが付与されてフルカラーの画像が記録媒体Pに記録されるようになっているが、記録媒体上への文字や画像の記録に限定されるものではない。すなわち、工業的に用いられる液滴付与(噴射)装置全般、また版を用いた転写による画像を形成する方法、スクリーン印刷による画像形成方法などにも本発明に係る装置を適用することができる。
以下、上記実施形態において用いられる材料(具体的には、硬化性溶液12A、インク滴14Aに含まれるインク、及びインク滴30Aに含まれる紫外線硬化性インク)の詳細について説明する。
まず、上記第1実施形態及び第2実施形態において用いられる硬化性溶液12Aについて説明する。
硬化性溶液12Aは、外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料を少なくとも含んでいる。ここで、硬化性溶液12Aに含有される「外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料」とは、外部からの刺激によって硬化し、「硬化性樹脂」となる材料を意味する。具体的には、例えば、硬化性のモノマー、硬化性のマクロマー、硬化性のオリゴマー、硬化性のプレポリマー等が挙げられる。
硬化性材料としては、例えば、紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料、熱硬化性材料等が挙げられる。紫外線硬化性材料は、硬化がし易く、他のものに比べ硬化速度も速く、取り扱いやすいため、最も望ましい。電子線硬化性材料は、重合開始剤が不要であり、硬化後の層の着色制御が実施しやすい。熱硬化性材料は、大掛りな装置を必要とすることなく硬化される。なお、硬化性材料は、これらに限られず、例えば湿気、酸素等により硬化する硬化性材料を適用することもできる。
紫外線硬化性材料を硬化することにより得られる「紫外線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性溶液12Aは、紫外線硬化性のモノマー、紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、及び紫外線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また、硬化性溶液12Aは、紫外線硬化反応を進行させるための紫外線重合開始剤を含んでいることが望ましい。さらに硬化性溶液12Aは、必要に応じて、重合反応をより進行させるための、反応助剤、重合促進剤等を含んでいてもよい。
ここで、紫外線硬化性のモノマーとしては、例えば、アルコール/多価アルコール/アミノアルコール類のアクリル酸エステル、アルコール/多価アルコール類のメタクリル酸エステル、アクリル脂肪族アミド、アクリル脂環アミド、アクリル芳香族アミド類等のラジカル硬化性材料;エポキシモノマー、オキセタンモノマー、ビニルエーテルモノマー等のカチオン硬化性材料;などが挙げられる。上記紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、紫外線硬化性のプレポリマーとしては、これらモノマーを所定の重合度で重合させたものの他、エポキシ、ウレタン、ポリエステル、ポリエーテル骨格に、アクリロイル基やメタクリロイル基の付加した、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエステルメタクリレート等のラジカル硬化性材料が挙げられる。
硬化反応がラジカル反応により進行するタイプである場合、紫外線重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン系、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシケトン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、 α-アミノケトン、α-アミノアルキルフェノン、モノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ヒドロキシベンゾフェノン、アミノベンゾフェノン、チタノセン型、オキシムエステル型、オキシフェニル酢酸エステル型などが挙げられる。
また硬化反応がカチオン反応により進行するタイプである場合、紫外線重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アレン-イオン錯体誘導体、トリアジン系開始剤等が挙げられる。
電子線硬化性材料を硬化することにより得られる「電子線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性溶液12Aは、電子線硬化性のモノマー、電子線硬化性のマクロマー、電子線硬化性のオリゴマー、及び電子線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。
ここで、電子線硬化性のモノマー、電子線硬化性のマクロマー、電子線硬化性のオリゴマー、電子線硬化性のプレポリマーとしては、紫外線硬化性の材料と同様のものが挙げられる。
熱硬化性材料を硬化することにより得られる「熱硬化性樹脂」としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性溶液12Aは、熱硬化性のモノマー、熱硬化性のマクロマー、熱硬化性のオリゴマー、及び熱硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また重合の際に硬化剤を添加してもよい。また、硬化性溶液12Aは、熱硬化反応を進行させるための熱重合開始剤を含んでもよい。
ここで、熱硬化性のモノマーとしては、例えば、フェノール、ホルムアルデヒド、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン、シアヌリル酸アミド、尿素、グリセリン等のポリアルコール、無水フタル酸、無水マレイン酸、アジピン酸等の酸などが挙げられる。熱硬化性のマクロマー、熱硬化性のオリゴマー、熱硬化性のプレポリマーとしては、これらのモノマーを所定の重合度で重合させたものや、エポキシプレポリマー、ポリエステルプレポリマーなどが挙げられる。
熱重合開始剤としては、例えば、プロトン酸/ルイス酸等の酸、アルカリ触媒、金属触媒などが挙げられる。
以上のように、硬化性材料は、紫外線、電子線、熱等の外部エネルギーにより硬化(例えば、重合反応が進行することによる硬化)するものであれば何でもよい。
上記硬化性材料の中でも、画像記録の高速化という観点を考慮すると、硬化速度の速い材料(例えば、重合の反応速度が速い材料)が望ましい。このような硬化性材料としては、例えば、放射線硬化型の硬化性材料(上記紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料等)が挙げられる。
硬化性材料は、中間転写体等との濡れ性を考慮して、Siやフッ素等による変性がされていてもよい。また硬化性材料は、硬化速度と硬化度を考慮すると、多官能のプレポリマーを含有するのが望ましい。
また、硬化性溶液には、上記硬化反応に寄与する主成分(モノマー、マクロマー、オリゴマー、及びプレポリマー、重合開始剤等)を溶解又は分散するための水や有機溶媒を含んでいてもよい。但し、当該主成分の比率が例えば30質量%以上、望ましくは60質量%以上、より望ましくは90質量%以上の範囲が挙げられる。
また、硬化性溶液は、硬化後の層を着色制御を行う目的で各種色材を含んでいてもよい。
また、硬化性溶液の粘度は、5mPa・sから10000mPa・sが望ましく、より望ましくは10mPa・sから1000mPa・sであり、さらに望ましくは15mPa・sから500mPa・sの範囲が挙げられる。また、硬化性溶液の粘度は、インクの粘度よりも高いことがよい。
上記硬化性溶液12Aは、画像均一性及び色間にじみの抑制という観点から、インク中の着色剤を固定化する材料を含むことが望ましい。
また、これらの材料としては、インクに対して吸液性を有する材料(吸液性材料)が好ましい。吸液性材料とは、吸液性材料とインクを重量比30:100で24時間混合した後、混合液中からフィルターにより吸液性材料を取り出した時、吸液性材料の重量がインク混合前に対して5%以上増加するものである。
このように、硬化性溶液12Aがインク吸液性材料を含有することによって、速やかにインク液体成分(例えば、水、水性溶媒)が、樹脂層に取り込まれ画像が固定化するため、インク間の境界部での混色が抑制され、画像均一性が向上し、さらには転写時の圧力によるインクの不均一な転写が軽減される。
吸液性材料は、例えば樹脂(以下、吸液樹脂と称する場合がある)や、表面親インク性を持たせた無機粒子(例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライトなど)等があげられ、用いるインクに応じて適宜選択される。
具体的には、インクとして水性インクを用いる場合は、吸液性材料として吸水材料を用いることが望ましい。また、インクとして油性インクを用いる場合は、吸液性材料として吸油材料を用いることが望ましい。
吸水材料としては、具体的には、例えば、ポリアクリル酸及びその塩、ポリメタクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸及びその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、ポリマレイン酸およびその塩、スチレン−マレイン酸及びその塩から構成される共重合体等、前記それぞれの樹脂のスルホン酸変性体、それぞれの樹脂のリン酸変性体等、等が挙げられ、望ましくは、ポリアクリル酸およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、が挙げられる。これら樹脂は、未架橋でも架橋されていてもよい。
また吸油材料としては、具体的には、例えば、ヒドロキシステアリン酸、コレステロール誘導体、ベンジリデンソルビトールといった低分子ゲル化剤や、ポリノルボルネン、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン共重合体、各種ロジン類等が挙げられ、望ましくは、ポリノルボルネン、ポリプロピレン、ロジン類が挙げられる。
吸液性材料が粒子状である場合には、硬化性溶液12Aの安定性と画質との両立といった観点から、体積平均粒径が0.05μm以上25μmの範囲であることが望ましく、0.5μm以上10μm以下がより望ましい。
この吸液性材料の硬化性溶液12A全体に対する比率は、例えば質量比で10%以上望ましくは20%以上であり、より望ましくは30%以上70%以下の範囲が挙げられる。
次に、硬化性溶液12Aに含まれる、その他の添加剤について説明する。
硬化性溶液12Aは、インクの成分を凝集又は増粘させる成分を含んでもよい。
この機能を有する成分は、上記吸液樹脂粒子を構成する樹脂(樹脂吸水性樹脂)の官能基として含んでもよいし、化合物として含んでもよい。当該官能基としては、例えば、カルボン酸、多価金属カチオン、ポリアミン類等などが挙げられる。
また、当該化合物としては、無機電解質、有機酸、無機酸、有機アミンなどの凝集剤が好適に挙げられる。
無機電解質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、及び、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム等のアルカリ金属類の塩、及び、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の多価金属類の塩等が挙げられる。
有機酸としては、具体的にはアルギニン酸、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、システイン、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、マレイン酸、マロン酸、リシン、リンゴ酸、及び、一般式(1)で表される化合物、これら化合物の誘導体などが挙げられる。

ここで、式中、Xは、O、CO、NH、NR、S、又はSOを表す。Rはアルキル基を表し、Rとして望ましくは、CH,C、COHである。Rはアルキル基を表し、Rとして望ましくは、CH,C、COHである。なお、Rは式中に含んでいてもよいし、含んでいなくても構わない。Xとして望ましくは、CO、NH、NR,Oであり、より望ましくは、CO、NH、Oである。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアミン類を表す。Mとして望ましくは、H、Li、Na、K、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等であり、より望ましくは、H、Na,Kであり、更に望ましくは、水素原子である。nは、3以上7以下の整数である。nとして望ましくは、複素環が6員環又は5員環となる場合であり、より望ましくは、5員環の場合である。mは、1又は2である。一般式(1)で表される化合物は、複素環であれば、飽和環であっても不飽和環であってもよい。lは、1以上5以下の整数である。
一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、フラン、ピロール、ピロリン、ピロリドン、ピロン、ピロール、チオフェン、インドール、ピリジン、キノリン構造を有し、更に官能基としてカルボキシル基を有する化合物が挙げられる。具体的には、2−ピロリドン−5−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−カルボン酸、フランカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2,5−ジメチル−3−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、4−ブタノリド−3−カルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、2−ピロン−6−カルボン酸、4−ピロン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−4−ピロン−5−カルボン酸、4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、チオフェンカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、2,3−ジメチルピロール−4−カルボン酸、2,4,5−トリメチルピロール−3−プロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸、2,5−ジオキソ−4−メチル−3−ピロリン−3−プロピオン酸、2−ピロリジンカルボン酸、4−ヒドロキシプロリン、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸、5−カルボキシ−1−メチルピロリジン−2−酢酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジントリカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸、1,2,5,6−テトラヒドロ−1−メチルニコチン酸、2−キノリンカルボン酸、4−キノリンカルボン酸、2−フェニル−4−キノリンカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、6−メトキシ−4−キノリンカルボン酸等の化合物が挙げられる。
有機酸としては、望ましくは、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、フタル酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。より望ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。さらに望ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、フランカルボン酸、クマリン酸、若しくは、これらの化合物誘導体、又は、これらの塩である。
有機アミン化合物としては、1級、2級、3級及び4級アミン及びそれらの塩のいずれであっても構わない。具体例としては、テトラアルキルアンモニウム、アルキルアミン、ベンザルコニウム、アルキルピリジウム、イミダゾリウム、ポリアミン、及び、それらの誘導体、又は、塩等が挙げられる。具体的には、アミルアミン、ブチルアミン、プロパノールアミン、プロピルアミン、エタノールアミン、エチルエタノールアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチルメチルアミン、エチルベンジルアミン、エチレンジアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、シクロオクチルアミン、シクロブチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、ジ2−エチルヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジプロピルアミン、ジヘキシルアミン、ジペンチルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルエチレンジアミン、ジメチルオクチルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジメチルヘキシルアミン、アミノ−ブタノール、アミノ−プロパノール、アミノ−プロパンジオール、N−アセチルアミノエタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)−エタノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチルアミン、セチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリイソペンチルアミン、トリエタノールアミン、トリオクチルアミン、トリチルアミン、ビス(2−アミノエチル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ビス(トリメチルシリル)アミン、ブチルアミン、ブチルイソプロピルアミン、プロパンジアミン、プロピルジアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、2−メチル−シクロヘキシルアミン、メチル−プロピルアミン、メチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ラウリルアミン、ノニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレシジアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムク口ライド、ステアラミドメチルビリジウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体等が挙げられる。
より望ましくは、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、エタノールアミン、プロパンジアミン、プロピルアミンなどが使用される。
これら凝集剤の中でも、多価金属塩(Ca(NO)、Mg(NO)、Al(OH)、ポリ塩化アルミニウム等)が好適に用いられる。
凝集剤は単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、凝集剤の含有量としては、0.01質量%以上30質量%以下であることが望ましい。より望ましくは、0.1質量%以上15質量%以下であり、更に望ましくは、1質量%以上15質量%以下である。
以下、第1実施形態及び第2実施形態において用いられるインク滴14Aに含まれるインクの詳細について説明する。
インクとしては、溶媒として水性溶媒を含む水性インク、溶媒として油性溶媒を含む油性インクが挙げられる。本実施形態においては、水性インク又は油性インクを用い、記録媒体として非浸透媒体を用いた場合でも、ヒーター等により溶媒を揮発させることなく良い画像定着性が得られる。また、インクとしては、紫外線硬化型インクも使用される。紫外線硬化型インクを用いることにより、耐久性の高い画像が形成される。
水性インクとしては、例えば、記録材として水溶性染料又は顔料を水性溶媒に分散又は溶解したインクが挙げられる。また、油性インクとしては、例えば、記録材として油溶性染料を油性溶媒に溶解したインク、記録材として染料又は顔料を逆ミセル化して分散したインクが挙げられる。
油性インクを用いる場合は、低揮発性又は不揮発性の溶媒を用いた油性インクを用いることが望ましい。油性インクの溶媒が低揮発性又は不揮発性であることにより、ヘッドノズル端部において、溶媒揮発によるインク状態変化が起きにくいため、ヘッドノズル耐目詰まり性が良い。また油性インクの溶媒が低揮発性又は不揮発性であることにより、インク滴を受容した受像層が記録媒体に転写された後に、油性インクの溶媒が記録媒体に浸透しても、カール・カックルが生じにくい。さらに油性インクの溶媒は、カチオン硬化性のものであってもよい。
本実施形態においては、インクとして水性インクを用いることが望ましい。この場合、上記硬化性溶液12Aに含まれる吸液性材料としては、吸水材料を用いることが望ましい。
まず、記録材について説明する。記録材としては、主に色材が挙げられる。色材としては、染料、顔料のいずれも用いられるが、耐久性の点で顔料であること望ましい。顔料としては有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料ではファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用してもよい。また、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。
また、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等を顔料として使用する方法もある。
黒色顔料の具体例としては、Raven7000,Raven5750,Raven5250,Raven5000 ULTRAII,Raven 3500,Raven2000,Raven1500,Raven1250,Raven1200,Raven1190 ULTRAII,Raven1170,Raven1255,Raven1080,Raven1060(以上コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R,Regal330R,Regal660R,Mogul L,Black Pearls L,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black 18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex35,Printex U,Printex V,Printex140U,Printex140V,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25,No.33,No.40,No.47,No.52,No.900,No.2300,MCF−88,MA600,MA7,MA8,MA100(以上三菱化学社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シアン色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
マゼンタ色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−177,−184,−202, C.I.Pigment Violet −19等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
黄色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154,−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ここで、色材として顔料を使用した場合には、併せて顔料分散剤を用いることが望ましい。使用される顔料分散剤としては、高分子分散剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
高分子分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体が好適に用いられる。親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体としては、縮合系重合体と付加重合体とが使用される。縮合系重合体としては、公知のポリエステル系分散剤が挙げられる。付加重合体としては、α,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の付加重合体が挙げられる。親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体と疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体を組み合わせて共重合することにより目的の高分子分散剤が得られる。また、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の単独重合体も用いられる。
親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、りん酸基等を有する単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロオキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
高分子分散剤として用いられる、望ましい共重合体の例としては、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。また、これらの重合体に、ポリオキシエチレン基、水酸基を有する単量体を共重合させてもよい。
上記高分子分散剤としては、例えば重量平均分子量で2000乃至50000のものが挙げられる。
これら顔料分散剤は、単独で用いても、二種類以上を併用しても構わない。顔料分散剤の添加量は、顔料により大きく異なるため一概には言えないが、一般に顔料に対し、合計で0.1乃至100質量%が挙げられる。
色材として水に自己分散可能な顔料も用いられる。水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で分散する顔料のことを指す。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散可能な顔料が得られる。
また、水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−300、IJX−157、IJX−253、IJX−266、IJX−273、IJX−444、IJX−55、Cab−o−jet−260M、Cab−o−jet−250C、Cab−o−jet−270Y、Cab−o−jet−1027R、Cab−o−jet−554B、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等の市販の自己分散顔料等も使用される。
自己分散顔料としては、その表面に官能基として少なくともスルホン酸、スルホン酸塩、カルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料であることが望ましい。より望ましくは、表面に官能基として少なくともカルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料である。
更に、樹脂により被覆された顔料等も使用される。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販のマイクロカプセル顔料だけでなく、本発明のために試作されたマイクロカプセル顔料等も使用される。
また、高分子物質を上記顔料に物理的に吸着又は化学的に結合させた樹脂分散型顔料も用いられる。
記録材としては、その他、親水性のアニオン染料、直接染料、カチオン染料、反応性染料、高分子染料等や油溶性染料等の染料類、染料で着色したワックス粉・樹脂粉類やエマルション類、蛍光染料や蛍光顔料、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フェライトやマグネタイトに代表される強磁性体等の磁性体類、酸化チタン、酸化亜鉛に代表される半導体や光触媒類、その他有機、無機の電子材料粒子類などが挙げられる。
記録材の含有量(濃度)は、例えばインクに対して5乃至30質量%の範囲が挙げられる。
記録材の体積平均粒径は、例えば10nm以上1000nm以下の範囲が挙げられる。
記録材の体積平均粒径とは、記録材そのものの粒径、又は記録材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒径をいう。体積平均粒径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析計 9340 (Leeds&Northrup社製)を用いた。その測定は、インク4mlを測定セルに入れ、所定の測定法に従って行った。なお、測定時の入力値として、粘度にはインクの粘度を、分散粒子の密度は記録材の密度とした。
次に水性溶媒について説明する。水性溶媒としては、水が挙げられ、特にイオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することがよい。また、水性溶媒と共に、水溶性有機溶媒を用いてもよい。水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
水溶性有機溶媒の具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2−へキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、キシリトールなどの糖アルコール類、キシロース、グルコース、ガラクトースなどの糖類等が挙げられる。
多価アルコール類誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
水溶性有機溶媒としては、その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等も用いられる。
水溶性有機溶媒は、少なくとも1種類以上使用してもよい。水溶性有機溶媒の含有量としては、例えば1質量%以上70質量%以下の範囲が挙げられる。
次に、油性溶媒について説明する。油性溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、グリコール類、含窒素溶媒、植物油等の有機溶媒が使用される。脂肪族炭化水素の例として、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルヘキサン、n−オクタン、メチルヘプタン、ジメチルヘキサン、ノナン、デカン等が挙げられ、アイソパーなどのn−パラフィン系溶剤、iso−パラフィン系溶剤、シクロパラフィン系溶剤などのパラフィン系溶剤でも構わない。また、芳香族炭化水素としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエータル等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。その他、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル等のグリコール誘導体を溶媒として用いても良い。植物油としては、乾性油、半乾性油、不乾性油などが挙げられる。乾性油としては、荏の油、アマニ油、桐油、ケシ油、くるみ油、紅花油、ひまわり油などが挙げられ、半乾性油としては菜種油、不乾性油としては、ヤシ油が挙げられる。上記溶媒は単独もしくは二種以上併用しても良い。
次に、その他の添加剤について説明する。インクには、その他、必要に応じて、界面活性材が添加される。
これら界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、望ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が用いられる。
以下、界面活性剤の具体例を列挙する。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が使用でき、望ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等が用いられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアルカノールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物等が挙げられ、望ましくは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物が用いられる。
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用される。
これらの界面活性剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。また界面活性剤の親水性/疎水性バランス(HLB)は、溶解性等を考慮すると例えば3乃至20の範囲が挙げられる。
これらの界面活性剤の添加量は、例えば0.001乃至5質量%、望ましくは0.01乃至3質量%の範囲が挙げられる。
また、インクには、その他、浸透性を調整する目的で浸透剤、インク吐出性改善等の特性制御を目的でポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等や、導電率、pHを調整するために水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属類の化合物等、その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤等も添加される。
次に、インクの好適な特性について説明する。まず、インクの表面張力は、例えば20乃至45mN/mの範囲が挙げられる。
ここで、表面張力としては、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値を採用した。
インクの粘度は、1.5mPa・s以上30mPa・s以下、望ましくは1.5mPa・s以上20mPa・s以下の範囲が挙げられる。ヘッド吐出性の観点からは、インクの粘度は20mPa・s以下が望ましい。また、インクの粘度は、上記硬化性溶液の粘度に比べ低いことがよい。
ここで、粘度としては、レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて、測定温度は23℃、せん断速度は1400s−1の条件で測定した値を採用した。
なお、インクは、上記構成に限定されるものではない。記録材以外に、例えば、液晶材料、電子材料など機能性材料を含むものであってもよい。
以下、第3実施形態において用いられるインク滴30Aに含まれる紫外線硬化性インクについて説明する。
紫外線硬化性インクは、外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料を少なくとも含んでいる。「外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料」については、上記硬化性溶液12Aに含まれる硬化性材料と同様である。
また紫外線硬化性インクには、上記硬化反応に寄与する主成分(モノマー、マクロマー、オリゴマー、及びプレポリマー、重合開始剤等)を溶解又は分散するための水や有機溶媒を含んでいてもよい。但し、当該主成分の比率が例えば30質量%以上、望ましくは60質量%以上、より望ましくは90質量%以上の範囲が挙げられる。
さらに紫外線硬化性インクは、記録材を含む。記録材については、上記インク滴14Aに含まれるインクに用いられる記録材と同様である。
紫外線硬化性インクの表面張力は、例えば20乃至45mN/mの範囲が挙げられる。
紫外線硬化性インクの粘度は、1.5mPa・s以上30mPa・s以下、望ましくは1.5mPa・s以上20mPa・s以下の範囲が挙げられる。ヘッド吐出性の観点からは、インクの粘度は20mPa・s以下が望ましい。
なお、紫外線硬化性インクは、上記構成に限定されるものではなく、その他の添加物や機能性材料を含むものであってもよい。
[試験例]
以下、本発明を、試験例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各試験例は、本発明を制限するものではない。
(試験例1から試験例8)
上記第1実施形態と同様な構成の記録装置(図1参照)を用いて、溶液供給装置により硬化性溶液を中間転写ベルトに供給して受像層を形成し、その受像層に記録ヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ受像層を接触させながら第1の紫外線照射装置により紫外線を照射し受像層を硬化させて中間転写ベルトから剥離した。その後、第2の紫外線照射装置により、さらに紫外線等を照射して非硬化層を完全に硬化させて、評価を行った。条件は以下の通りである。
・中間転写ベルト:厚さ0.1mm、ベルト幅350mm、外径Φ168mmのETFE製無端ベルトにフッ素系樹脂を被覆したもの(プロセス速度:400mm/s)
・溶液供給装置:グラビアロールコーター(受像層の層厚15μm)
・各記録ヘッド:ピエゾ方式の記録ヘッド(解像度解像度1200×1200dpi(dpi:1インチ当たりのドット数)、ドロップサイズ2pL)
・転写装置(加圧ロール):径30mmの鋼製パイプにフッ素系樹脂を被覆したもの(中間転写ベルトに対する押し当て力:線圧0.1kgf/cm)
・第1の紫外線照射装置:UV−LED紫外発光ダイオードNCCU033(日亜化学工業(株)製)をレンズで集光し、アレイ状に複数個配列して使用した、ピーク波長:365nm)
・第2の紫外線照射装置:メタルハライドランプ(IntegrationTechnology社製、型番:Vzero140にDバルブランプを装着して使用)
・記録媒体:アート紙(OK金藤)
また、硬化性溶液、及び各色のインクは、以下のように作製したものを用いた。
<硬化性溶液(ラジカル硬化性材料)>
・ポリウレタンアクリレート:40重量部
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(UV硬化モノマー):20.0重量部
・ポリアクリル酸ナトリウム(吸液樹脂、ボールミル粉砕により数平均粒子径5μmとしたもの):35.0重量部
・イルガキュア651(チバ・ジャパン株式会社製) 0.2重量部
<ブラックインク作製方法>
Cab−o−jet−300(キャボット社製)を超音波ホモジナイザーで30分間処理した後、遠心分離処理(7000r.p.m.,20分間)して顔料分散液(カーボン濃度12.8%)を得た。
次に、下記の各成分を十分混合し、1μmフィルターで加圧ろ過し、インクを調製した
・上記顔料分散液:40重量部
・グリセリン:20重量部
・サーフィノール465:1.5重量部
・純水:35重量部
<インク作製方法1>
顔料30重量部に、スチレン−マレイン酸共重合体のナトリウム中和塩を3重量部加え、さらにイオン交換水を加えて、総量を300重量部とした。この液を超音波ホモジナイ
ザーを用いて分散した。この液を遠心分離装置で、遠心分離をし、残部分100重量部を除去した。この上澄み液を1μmのフィルターに通過させて、分散液を得た。適量の前記分散液に、グリセリン10重量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル5重量部、界面活性剤0.03重量部、イソプロピルアルコール3重量部、イオン交換水及び水酸化ナトリウムを適量加え、総量が100重量部、顔料濃度が5重量%となるように調整した。これを、混合し、1μmのフィルターを通過させることにより、目的とするインクを得た。
−シアンインク−
上記インク作成方法1に従い以下に示す組成のインクを得た
・C.I.アシッドブルー199:5重量部
・スチレン−マレイン酸−マレイン酸ナトリウム共重合体:0.3重量部
・グリセリン:15重量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:5重量部
・界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製):1.0重量部
・イソプロピルアルコール:3重量部
・イオン交換水:残部
計100重量部
−マゼンタインク−
上記インク作成方法1に従い以下に示す組成のインクを得た
・C.I.アシッドレッド52:3.5重量部
・スチレン−マレイン酸−マレイン酸ナトリウム共重合体:0.3重量部
・グリセリン:20重量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:5重量部
・界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製):1.0重量部
・イオン交換水:残部
計100重量部
−イエローインク−
上記インク作成方法1に従い以下に示す組成のインクを得た
・C.I.ダイレクトイエロ86:4.0重量部
・スチレン−マレイン酸−マレイン酸ナトリウム共重合体:0.4重量部
・グリセリン:15重量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:10重量部
・界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製):1.0重量部
・イオン交換水:残部
計100重量部
本試験例の条件における上記「転写刺激量」及び上記「定着刺激量」を求めたところ、転写刺激量が100mJ/cm、定着刺激量が500mJ/cmであった。
転写刺激量及び定着刺激量は、以下のようにして求めた。具体的には、UVD−S365(ウシオ電機株式会社製)を装置へ装着し、実際に紫外線照射装置下を通過させることで、「転写刺激量」および「定着刺激量」を計測した。
また、本試験例の条件における上記「硬化波長領域」を求めたところ、320nmから380nmであった。
硬化波長領域は、以下のようにして求めた。具体的には、光重合開始剤をアセトニトリル溶液中混合し、0.10%溶液状態で分光光度計により吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトルのピーク強度を中心に、固有の吸収波長として現れるピーク部の波長全領域を求めた。
また、本試験例の条件における上記「I1C/I1T」値及び上記「I2C/I2T」値を求めたところ、「I1C/I1T」値が1.0、「I2C/I2T」値が0.31であった。
「I1C/I1T」値及び「I2C/I2T」値は、以下のようにして求めた。具体的には、第1の紫外線照射装置(UV−LED)の発光スペクトルを測定し、上記硬化波長領域における発光強度の積算値(I1C)及び250nmから500nmにおける発光強度の積算値(I1T)の割合(I1C/I1T)を発光スペクトルから求めた。第2の紫外線照射装置(メタルハライド)についても同様である。
試験例1から試験例8における、第1紫外線照射量(第1の紫外線照射装置によって受像層が照射された紫外線の量、すなわち、中間転写ベルトを透過した後の紫外線照射量)及び第2紫外線照射量(第2の紫外線照射装置によって受像層が照射された紫外線の量)を表1に示す。
<中間転写体から記録媒体への転写性の評価>
アート紙(OK金藤 王子製紙社製)を記録媒体として、5枚連続で印字テストを実施し、テスト後の中間転写ベルト上の残留物を目視観察することによって受像層の剥離性を評価した。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表1に示す。
○:残留物が単位面積あたり面積で1%未満である。
△:残留物が単位面積あたり面積で1%以上20未満である。
×:残留物が単位面積あたり面積で20%以上である。
<記録媒体への画像定着性の評価>
アート紙(OK金藤 王子製紙社製)を記録媒体として、定着後のサンプルの表面を、ベンコットで擦り表面のベタつきを評価した。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表1に示す。
◎:表面はべたつかず画像乱れは発生しない。
○:表面は多少べたつくが、許容範囲。
×:表面がべたつき、画像が基材からはがれる。
<中間転写ベルトの劣化度の評価>
アート紙(OK金藤 王子製紙社製)を記録媒体として、5000枚連続で印字テストを実施し、テスト後の中間転写ベルトの状態を目視観察することによって、中間転写ベルトの劣化度を評価した。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表1に示す。
◎:中間転写ベルトの劣化が見られない。
○:中間転写ベルトの劣化がわずかに見られるが、許容範囲。
△:中間転写ベルトの劣化が見られるが、許容範囲。
×:中間転写ベルトの劣化が著しい。
(試験例9から試験例12)
第1の紫外線照射装置として高圧水銀ランプ(IntegrationTechnology社製、型番:Vzero140 にHバルブランプを装着して使用)を用いた以外は、試験例1から試験例8と同様な方法で、試験例9及び試験例10を行った。結果を表2に示す。
また、第1の紫外線照射装置としてメタルハライドランプ(IntegrationTechnology社製、型番:Vzero140 にHバルブランプを装着して使用)を用いた以外は、試験例1から試験例8と同様な方法で、試験例11及び試験例12を行った。結果を表2に示す。
試験例7から試験例12では、試験例1から試験例6に比べ、転写性及び画像定着性が良好であり、かつ、中間転写ベルトの劣化が抑制されることが確認された。
第1実施形態に係る記録装置を示す構成図である。 第2実施形態に係る記録装置を示す構成図である。 第3実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
符号の説明
10 中間転写ベルト(中間転写体)
12 溶液供給装置(硬化性溶液層形成手段)
12A インク受像用の硬化性溶液(硬化性溶液)
12B 受像層(硬化性溶液層)
14 インクジェット記録ヘッド(付与手段)
14A インク滴
16 転写装置(転写手段)
18 紫外線照射装置(第1の刺激供給手段)
26 中間転写ドラム(中間転写体)
28 紫外線照射装置(第2の刺激供給手段)
30 インクジェット記録ヘッド(硬化性溶液層形成手段)
31A インク滴(硬化性溶液)
31B インク層(硬化性溶液層)
101、102、103 記録装置

Claims (3)

  1. 中間転写体と、
    前記中間転写体上に、外部からの刺激により硬化する硬化性材料を少なくとも含む硬化性溶液を供給し、硬化性溶液層を形成する硬化性溶液層形成手段と、
    前記中間転写体上に形成された前記硬化性溶液層を、記録媒体に接触させた後に前記中間転写体から剥離することにより、前記中間転写体から前記記録媒体に前記硬化性溶液層を転写する転写手段と、
    前記硬化性溶液層を硬化させる前記刺激を、前記硬化性溶液層と前記記録媒体との接触直前及び接触中の少なくとも何れか一方において、前記硬化性溶液層に供給する第1の刺激供給手段と、
    前記硬化性溶液層を硬化させる前記刺激を、前記中間転写体から剥離した後の前記硬化性溶液層に供給する第2の刺激供給手段と、を有し、
    前記硬化性溶液層が前記中間転写体から剥離される前に前記第1の刺激供給手段が前記硬化性溶液層に供給する刺激の量は、転写刺激量以上であり、かつ、定着刺激量よりも少なく、
    前記第1の刺激供給手段及び前記第2の刺激供給手段が前記硬化性溶液層に供給する刺激の全体量は、前記定着刺激量以上であり、
    前記第1の刺激供給手段及び前記第2の刺激供給手段は、紫外線を含む光を前記硬化性溶液層に照射する紫外線照射装置であり、
    前記第1の刺激供給手段が前記硬化性溶液層に照射する紫外線を含む光の250nmから500nmの波長領域における積算照射強度(I 1T )に対する硬化波長領域における積算照射強度(I 1C )の割合(I 1C /I 1T )は、前記第2の刺激供給手段が前記硬化性溶液層に照射する紫外線を含む光の250nmから500nmの波長領域における積算照射強度(I 2T )に対する硬化波長領域における積算照射強度(I 2C )の割合(I 2C /I 2T )よりも大きいことを特徴とする記録装置。
  2. 前記硬化性溶液層形成手段は、前記中間転写体上に、前記硬化性材料を少なくとも含むインク受像用の硬化性溶液を供給し、受像層を形成する受像層形成手段であり、
    前記中間転写体上に形成された前記受像層に、インクを付与するインク付与手段をさらに含み、
    前記転写手段は、前記インクが付与された前記受像層を、記録媒体に接触させた後に前記中間転写体から剥離することにより、前記中間転写体から前記記録媒体に前記受像層を転写することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
  3. 前記第1の刺激供給手段は、紫外線発光ダイオードであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録装置。
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