JP4848116B2 - 工作機械用むくドリル - Google Patents
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Description
本発明は、ドリル本体と、互いに半径方向間隔をおいて切屑搬出溝の範囲内のドリル本体の各々1つの凹部内に配置された少なくとも2個のスローアウェイチップとを備え、このスローアウェイチップが長方形または直方体の輪郭を有し、スローアウェイチップの端面側の主切れ刃がドリル本体から軸方向に突出し、その作用範囲が半径方向において互いにオーバーラップし、半径方向外側のスローアウェイチップの外側の丸められたコーナーと、このコーナーに接続する、主切れ刃に対して直角の副切れ刃とが、ドリル本体の外周から半径方向に突出し、この副切れ刃がコーナーからその縦延長方向においてドリル本体の方に所定の逃げ角をなして傾斜している、工作機械用のむくドリルに関する。
【0002】
直方体状の2個のスローアウェイチップを備えたこの種の穿孔工具は公知である(独国特許出願公開第2843788号公報)。直方体状の両スローアウェイチップは互いに異なる半径方向間隔をおいて配置されている。スローアウェイチップの端面側の主切れ刃は正の端面角度でドリル本体から軸方向に突出している。スローアウェイチップは更に、回転方向において180°と異なる角度を有する。この場合、内側のスローアウェイチップが周方向において外側のスローアウェイチップよりも先行する。軸方向において、内側のスローアウェイチップは荒削りを行う。この場合、間隔はコーナーの範囲の曲率半径にほぼ一致している。内側のスローアウェイチップの主切れ刃はドリル軸線から突出していない。最も外側のスローアウェイチップの副切れ刃の傾斜は、穴の壁に摩擦するように選定されている。摩擦作用を避けるために、副切れ刃の逃げ角は少なくとも5°である。他の内側のスローアウェイチップの逃げ角は幾分大きく、しかもスローアウェイチップで均一な負荷分布を生じるという役目を有する。
【0003】
本発明の根底をなす課題は、切削能力が少なくとも同じであると共に、精度が高められる、冒頭に記載した種類の公知のむくドリルを改良することである。
この課題を解決するために、請求項1に記載した特徴の組み合わせが提案される。本発明の有利な実施形および発展形態は従属請求項から明らかである。
本発明による解決策は特に、最も外側のスローアウェイチップの副切れ刃が、案内エッジと、当該案内エッジに対して半径方向内側にずらされる切削エッジとを有し、この案内エッジが、穿孔の際に半径方向外向きの押しのけ力の作用を受けてその長さの少なくとも一部にわたって、その前に形成された穴の壁に滑動接触し、且つ、この案内エッジ(44)が副切れ刃(38)の逃げ面面取り部およびまたは逃げ面丸め部によって形成されているという思想に基づいている。これを達成するために、本発明では、副切れ刃の逃げ角が3.2°以下、特に1.2〜2.2°である。副切れ刃がその案内エッジの長さの20%以上、特に30〜60%にわたって穴の壁に滑動接触すると有利である。工作材料の所定の弾性係数の場合、特にできるだけ小さな逃げ角のときに、副切れ刃がその案内エッジの全長にわたって穴の壁に滑動接触する。副切れ刃の範囲において切削摩擦作用を生じるときに、逃げ角の限界に達する。
【0004】
スローアウェイチップの副切れ刃が位置の移動によって主切れ刃になるので、切削エッジのすぐ近くの範囲において摩耗が生じないように留意すべきである。これは、案内エッジが副切れ刃の逃げ面面取り部およびまたは逃げ面丸め部によって形成されていることによって回避される。工具内でのスローアウェイチップの正しい位置決めは、先行の際に逃げ面面取り部の範囲内において副切れ刃長さの少なくとも一部にわたって材料平滑化が生じることから確認可能であるがしかし、副切れ刃の範囲では確認不可能である。この現象は、副切れが部分的な弾性変形と場合によっては凹凸の平滑化を受けて穴の壁に滑動接触する表れである。
【0005】
スローアウェイチップが少なくとも主切れ刃と副切れ刃の範囲において、摩擦を低減する耐摩耗性のコーティングを有すると、上記の観点における一層の改善が達成される。これは例えば窒化チタン、浸炭窒化チタン、窒化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのグループの材料からなっている。
【0006】
本発明の有利な実施形では、内側のスローアウェイチップの内側の丸められたコーナーがドリル軸線と交叉している。この手段によって、内側のスローアウェイチップと外側のスローアウェイチップの範囲において、主切れ刃から拡がるほぼ同じ大きさの切屑室が生じる。それによって、穿孔の際に生じる比較的に幅の広い切屑が挟まる危険なしに切屑搬出溝を通って排出可能である。
【0007】
内側のスローアウェイチップの主切れ刃が、外側のスローアウェイチップの主切れ刃から荒削り間隔を有し、この間隔がスローアウェイチップのコーナー半径よりも小さく、特にコーナー半径の30%よりも小さいと、穿孔工具の遠心特性が改善される。絶対的な寸法で表現すると、荒削り間隔は0.5mmよりも小さく、特に0.15〜0.3mmである。
【0008】
半径方向に作用する押しのけ力を最適化するために、本発明の他の有利な実施形では、内側のスローアウェイチップの主切れ刃の端面角度が外側のスローアウェイチップの主切れ刃の端面角度よりも大きく、特に2倍の大きさであることが提案される。
穿孔の際に穿孔工具に作用する半径方向力を更に最適化するために、本発明の好ましい実施形では、外側のスローアウェイチップの主切れ刃が内側のスローアウェイチップの主切れ刃に対して、ドリル軸線回りの回転方向において、180°よりも小さな角度をなしている。この手段によって更に、内側と外側のスローアウェイチップの範囲内においてほぼ同じ大きさの切屑搬出溝の通過横断面が設けられる。
【0009】
次に、図に略示した実施の形態に基づいて本発明を詳しく説明する。
図に示した工具は、工作機械用のむくドリルである。このむくドリルは2つの切屑搬出溝12,14を有するほぼ円筒状のドリル本体10を備えている。切屑搬出溝の端面側の端部には、直方体状のスローアウェイチップ20,22を収容するための凹部16,18が1つずつ設けられている。スローアウェイチップ20,22はドリル本体10のねじ穴24に係合する1本ずつの皿頭ねじ26によってドリル本体10に固定されている。図2a〜2cから判るように、丸められた内側のコーナー28を有する内側のスローアウェイチップ20はその端面側の主切れ刃のところでドリル軸線32と交叉し、一方、外側のスローアウェイチップ22は丸められた外側のコーナー36の範囲内の主切れ刃34と、その外側の副切れ刃38とがドリル本体10の外周を越えて突出している。スローアウェイチップは、更に、その主切れ刃と副切れ刃がドリル本体10に対して傾斜配置され、主切れ刃はドリル軸線と垂直な平面に対して、正の角度αi=4°またはαa=2°をなしている。この場合、添字iは内側のスローアウェイチップを、添字aは外側のスローアウェイチップを表す。副切れ刃38が主切れ刃34に対して垂直に向いているので、図示した実施の形態の場合、副切れ刃38はコーナー36からその縦延長方向においてドリル本体の方に逃げ角をなして傾斜している。この逃げ角は角度αaに一致している。図2aから更に判るように、外側のスローアウェイチップ22の主切れ刃34は内側のスローアウェイチップ20の主切れ刃30に対して、ドリル軸線32を中心とした矢印40で示す回転方向において、角度をなしている。この角度は角度βだけ180°よりも小さい。図示した実施の形態の場合、角度βは約5°である。図2bから判るように、内側のスローアウェイチップ20の主切れ刃30は外側のスローアウェイチップ22の主切れ刃34から荒削り間隔dを有する。この間隔は主切れ刃のコーナーの半径よりも小さく、図示した実施の形態の場合0.23mmである。角度αi,αa,βと、荒削り間隔dは、ドリルがその外側の副切れ刃38の範囲において、形成された穴の壁42に対して所定の半径方向押しのけ力で滑動接触するように選定されている。
【0010】
そのために、副切れ刃38は案内エッジ44を備えている。この案内エッジによって、外側のスローアウェイチップ22が穴の壁42に対して滑動接触する。案内エッジは図3bに示した実施の形態の場合、副切れ刃の逃げ面を丸めることによって形成されている。一方、図3cの場合には、副切れ刃の逃げ面を面取りすることによって形成されている。副切れ刃38の固有の切削エッジは案内エッジ44に対して幾分内側にずれているので、穿孔の際副切れ刃38の切削エッジの範囲に摩耗が生じない。案内エッジだけが穴の壁に対するその滑動接触に基づいて平滑化される。ドリル軸線32に対する副切れ刃38の逃げ角が非常に小さいので、副切れ刃の案内エッジ44はその長さの少なくとも一部にわたって穴の壁に接触する。それによって、押しのけ力が大きな面積に分配されるので、副切れ刃の範囲内において切削加工が行われず、精々穴の壁の平滑化が行われる。滑り作用を改善するために、スローアウェイチップは摩擦を低減させる層、例えば窒化チタン、浸炭窒化チタン、窒化アルミニウムまたは酸化アルミニウムからなる層を備えることができる。
【0011】
上記のようにスローアウェイチップ20,22を切屑搬出溝内に配置したことにより、幾分拡がる充分な切屑用通過横断面が形成され、それにもかかわらずスローアウェイチップのための安定した支持基礎がドリル本体10に残る。
【0012】
要約すると、次の通りである。本発明は、工作機械用のむくドリルに関する。むくドリルはドリル本体10と、互いに半径方向間隔をおいて切屑搬出溝12,14の範囲内のドリル本体10のインサート装着16,18内に配置された2個のスローアウェイチップ20,22を備えている。スローアウェイチップ20,22は長方形または直方体の輪郭を有する。スローアウェイチップの端面側の主切れ刃30,34はドリル本体10から軸方向に突出し、その作用範囲が半径方向においてオーバーラップしている。半径方向外側のスローアウェイチップ22はその外側のコーナー36とそれに接続する、主切れ刃34に対して直角の副切れ刃38が、ドリル本体10の外周を越えて半径方向に突出している。更に、当該の副切れ刃38はコーナー36からその縦延長方向においてドリル本体10の方に逃げ角をなして3.2°よりも小さな所定の逃げ角度だけ傾斜している。副切れ刃38は、副切れ刃38の逃げ面面取り部およびまたは逃げ面丸め部によって形成された案内エッジ44と、当該案内エッジに対して半径方向内側にずらされる切削エッジとを備えている。この案内エッジによって、副切れ刃は穿孔の際に、半径方向外向きの押しのけ力の作用を受けて少なくともその長さの一部にわたって穴の壁42に滑動接触する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 直方体のスローアウェイチップを備えた工作機械用むくドリルの斜視図である。
【図2】 図2a〜2cは図1のむくドリルの平面図と、2つの部分側面図である。
【図3】 図3aは、逃げ面面取り部の範囲内に案内エッジを備えた、図1と図2の穿孔工具の外側のスローアウェイチップの副切れ刃の部分断面図である。
図3b,3cは副切れ刃の逃げ面の範囲内に丸み付け部と付加的な面取り部を有する、図3aの部分図である。
Claims (11)
- ドリル本体(10)と、互いに半径方向間隔をおいて切屑搬出溝(12,14)の範囲内のドリル本体(10)の各々1つの凹部(16,18)内に配置された少なくとも2個のスローアウェイチップ(20,22)とを備え、このスローアウェイチップが長方形または直方体の輪郭を有し、スローアウェイチップの端面側の主切れ刃(30,34)がドリル本体(10)から軸方向に突出し、その作用範囲が半径方向において互いにオーバーラップし、半径方向で最も外側のスローアウェイチップ(22)の外側の丸められたコーナー(36)と、このコーナーに接続する、主切れ刃(34)に対して直角の副切れ刃(38)とが、ドリル本体(10)の外周から半径方向に突出し、この副切れ刃(38)がコーナー(36)からその縦延長方向においてドリル本体(10)の方に所定の逃げ角(αa)をなして傾斜していて、当該副切れ刃(38)の逃げ角が3.2°よりも小さい、工作機械用のむくドリルにおいて、
最も外側のスローアウェイチップ(22)の副切れ刃(38)が、案内エッジ(44)と、当該案内エッジに対して半径方向内側にずらされる切削エッジとを有し、
この案内エッジ(44)が穿孔の際に半径方向外側に向いた押しのけ力の作用を受けて、その長さの少なくとも一部にわたって、穴の壁(42)に滑動接触し、且つ、この案内エッジ(44)が副切れ刃(38)の逃げ面面取り部およびまたは逃げ面丸め部によって形成されている、ことを特徴とするむくドリル。 - 逃げ角(αa)が1.2〜2.2°であることを特徴とする請求項1に記載のむくドリル。
- 最も内側のスローアウェイチップ(20)の主切れ刃(30)がその内側の丸められたコーナー(28)の範囲においてドリル軸線(32)と交叉していることを特徴とする請求項1または2に記載のむくドリル。
- 最も内側のスローアウェイチップ(20)の主切れ刃(30)が、最も外側のスローアウェイチップ(22)の主切れ刃(34)から荒削り間隔(d)を有し、この間隔が主切れ刃のコーナー半径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のむくドリル。
- 荒削り間隔(d)がコーナー半径の50%よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載のむくドリル。
- 荒削り間隔(d)が0.5mmよりも小さく、特に0.15〜0,3mmであることを特徴とする請求項4または5に記載のむくドリル。
- 最も内側のスローアウェイチップ(20)の主切れ刃(30)の端面角度(αi)が最も外側のスローアウェイチップ(22)の主切れ刃(34)の端面角度(αa)よりも大きいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のむくドリル。
- 最も内側のスローアウェイチップ(20)の主切れ刃(30)の端面角度(αi)が最も外側のスローアウェイチップ(22)の主切れ刃(34)の端面角度(αa)の2倍であることを特徴とする請求項7に記載のむくドリル。
- 2個のスローアウェイチップ(20,22)が設けられ、最も外側のスローアウェイチップ(22)の主切れ刃(34)が最も内側のスローアウェイチップ(20)の主切れ刃(30)に対して、ドリル軸線(32)回りの回転方向(40)において、180°よりも小さな角度をなしていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載のむくドリル。
- スローアウェイチップ(20,22)が少なくとも主切れ刃と副切れ刃の範囲において、摩擦を低減する耐摩耗性のコーティングを有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載のむくドリル。
- コーティングが窒化チタン、浸炭窒化チタン、窒化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのグループの材料からなっていることを特徴とする請求項10に記載のむくドリル。
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