図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。この車両用駆動装置10は横置き型自動変速機であって、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の動力源としてエンジン12を備えている。内燃機関にて構成されているエンジン12の出力は、エンジン12のクランク軸、流体式伝動装置としてのトルクコンバータ14から前後進切換装置16、ベルト式の無段変速機(CVT)18、減速歯車装置20を介して差動歯車装置22に伝達され、左右の駆動輪24L、24Rへ分配される。
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、およびトルクコンバータ14の出力側部材に相当するタービン軸34を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それ等のポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tの間にはロックアップクラッチ26が設けられており、油圧制御回路(油圧回路)100(図2、図3参照)内の図示しないロックアップコントロールバルブ(L/C制御弁)などによって係合側油室および解放側油室に対する油圧供給が切り換えられることにより、係合または解放されるようになっており、完全係合させられることによってポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tは一体回転させられる。ポンプ翼車14pには、無段変速機18を変速制御したりベルト挟圧力を発生させたり、ロックアップクラッチ26を係合解放制御したり、或いは各部に潤滑油を供給したりするための油圧をエンジン12により回転駆動されることにより発生する機械式のオイルポンプ28が連結されている。
前後進切換装置16は、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1とダブルピニオン型の遊星歯車装置16pとを主体として構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸34はサンギヤ16sに一体的に連結され、無段変速機18の入力軸36はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介してハウジングに選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は断続装置に相当するもので、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
そして、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が解放されると、前後進切換装置16は一体回転状態とされることによりタービン軸34が入力軸36に直結され、前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が解放されると、前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、入力軸36はタービン軸34に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に解放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル状態(動力伝達遮断状態)になる。
無段変速機18は、入力軸36に設けられた入力側部材である有効径が可変の入力側可変プーリ(プライマリシーブ)42と、出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変の出力側可変プーリ(セカンダリシーブ)46と、それ等の可変プーリ42、46に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えており、可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。
可変プーリ42および46は、入力軸36および出力軸44にそれぞれ固定された固定回転体42aおよび46aと、入力軸36および出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた可動回転体42bおよび46bと、それらの間のV溝幅を可変とする推力を付与するアクチュエータとしての入力側油圧シリンダ42cおよび出力側油圧シリンダ46cとを備えて構成されており、入力側油圧シリンダ42cの油圧(変速制御圧PRATIO)が油圧制御回路100によって制御されることにより、両可変プーリ42、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が連続的に変化させられる。また、出力側油圧シリンダ46cの油圧(挟圧力制御圧PBELT)は、伝動ベルト48が滑りを生じないように油圧制御回路100によって調圧制御される。
図2は、図1の車両用駆動装置10などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御や無段変速機18の変速制御およびベルト挟圧力制御やロックアップクラッチ26のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や無段変速機18およびロックアップクラッチ26の油圧制御用等に分けて構成される。
電子制御装置50には、エンジン回転速度センサ52により検出されたクランク軸回転角度(位置)ACR(°)およびエンジン12の回転速度(エンジン回転速度)NEに対応するクランク軸回転速度を表す信号、タービン回転速度センサ54により検出されたタービン軸34の回転速度(タービン回転速度)NTを表す信号、入力軸回転速度センサ56により検出された無段変速機18の入力回転速度である入力軸36の回転速度(入力軸回転速度)NINを表す信号、車速センサ(出力軸回転速度センサ)58により検出された無段変速機18の出力回転速度である出力軸44の回転速度(出力軸回転速度)NOUTすなわち出力軸回転速度NOUTに対応する車速Vを表す車速信号、スロットルセンサ60により検出されたエンジン12の吸気配管32(図1参照)に備えられた電子スロットル弁30のスロットル弁開度θTHを表すスロットル弁開度信号、冷却水温センサ62により検出されたエンジン12の冷却水温TWを表す信号、CVT油温センサ64により検出された無段変速機18等の油圧回路の油温TCVTを表す信号、アクセル開度センサ66により検出されたアクセルペダル68の操作量であるアクセル開度Accを表すアクセル開度信号、フットブレーキスイッチ70により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無BONを表すブレーキ操作信号、レバーポジションセンサ72により検出されたシフトレバー74のレバーポジション(操作位置)PSHを表す操作位置信号などが供給されている。
また、電子制御装置50からは、エンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号SE、例えば電子スロットル弁30の開閉を制御するためのスロットルアクチュエータ76を駆動するスロットル信号や燃料噴射装置78から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号や点火装置80によるエンジン12の点火時期を制御するための点火時期信号などが出力される。また、無段変速機18の変速比γを変化させる為の変速制御指令信号ST例えば変速制御圧PRATIOを制御するための指令信号、伝動ベルト48の挟圧力を調整させる為の挟圧力制御指令信号SB例えば挟圧力制御圧PBELTを制御するための指令信号、ロックアップクラッチ26の係合、解放、スリップ量を制御させる為のロックアップ制御指令信号例えば油圧制御回路100内の前記ロックアップコントロールバルブの弁位置を切り換える図示しないオンオフソレノイド弁DSUを駆動するための指令信号やロックアップクラッチ26のトルク容量を調節するソレノイド弁DS2を駆動するための指令信号、ライン油圧PLを制御するリニアソレノイド弁SLTやリニアソレノイド弁SLSを駆動するための指令信号などが油圧制御回路100へ出力される。
シフトレバー74は、例えば運転席の近傍に配設され、順次位置させられている5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、および「L」(図3参照)のうちの何れかへ手動操作されるようになっている。
「P」ポジション(レンジ)は車両用駆動装置10の動力伝達経路を解放しすなわち車両用駆動装置10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力軸44の回転を阻止(ロック)するための駐車ポジション(位置)であり、「R」ポジションは出力軸44の回転方向を逆回転とするための後進走行ポジション(位置)であり、「N」ポジションは車両用駆動装置10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とするための中立ポジション(位置)であり、「D」ポジションは無段変速機18の変速を許容する変速範囲で自動変速モードを成立させて自動変速制御を実行させる前進走行ポジション(位置)であり、「L」ポジションは強いエンジンブレーキが作用させられるエンジンブレーキポジション(位置)である。このように、「P」ポジションおよび「N」ポジションは車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであり、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「L」ポジションは車両を走行させるときに選択される走行ポジションである。
図3は、油圧制御回路100のうち無段変速機18のベルト挟圧力制御、変速比制御、およびシフトレバー74の操作に伴う前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1の係合油圧制御に関する部分を示す要部油圧回路図である。図3において、油圧制御回路100は、伝動ベルト48が滑りを生じないように出力側油圧シリンダ46cの油圧である挟圧力制御圧PBELTを調圧する挟圧力コントロールバルブ110、リニアソレノイド弁SLTにより調圧された第1油圧としての制御油圧PSLTを出力する第1位置とライン圧モジュレータNO.2バルブ122からの第2油圧としての出力油圧PLM2を出力する第2位置とに切り換えられる切換弁として機能するクラッチアプライコントロールバルブ112、変速比γが連続的に変化させられるように入力側油圧シリンダ42cの油圧である変速制御圧PRATIOを調圧する変速比コントロールバルブUP114および変速比コントロールバルブDN116、変速制御圧PRATIOと挟圧力制御圧PBELTとの油圧比(比率)を予め定められた関係とする推力比コントロールバルブ118、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が係合或いは解放されるようにシフトレバー74の操作に従って油路が機械的に切り換えられるマニュアルバルブ120等を備えている。
また、ライン油圧PLは、エンジン12により回転駆動される機械式のオイルポンプ28(図1参照)から出力(発生)される作動油圧を元圧として、例えばリリーフ型のプライマリレギュレータバルブ(調圧弁)124によりリニアソレノイド弁SLTからの信号圧PSLT或いはリニアソレノイド弁SLSからの信号圧PSLSに基づいてエンジン負荷等に応じた値に調圧されるようになっている。上記出力油圧PLM2は、ライン油圧PLを元圧として前記ライン圧モジュレータNO.2バルブ122によりリニアソレノイド弁SLTからの信号圧PSLT或いはリニアソレノイド弁SLSからの信号圧PSLSに基づいて調圧されるようになっている。出力油圧PLM3は、制御油圧(信号圧)PSLTおよび信号圧PSLSの元圧となるものであって、ライン油圧PLを元圧としてライン圧モジュレータNO.3バルブ126により一定圧に調圧されるようになっている。モジュレータ油圧PMは、電子制御装置50によってデューティ制御されるソレノイド弁DS1の出力油圧である制御油圧PDS1およびソレノイド弁DS2の出力油圧である制御油圧PDS2の元圧となるものであって、出力油圧PLM3を元圧としてモジュレータバルブ128により一定圧に調圧されるようになっている。
前記マニュアルバルブ120において、入力ポート120aにはクラッチアプライコントロールバルブ112から出力された係合油圧PAが供給される。そして、シフトレバー74が「D」ポジション或いは「L」ポジションに操作されると、係合油圧PAが前進走行用出力圧として前進用出力ポート120fを経て前進用クラッチC1に供給され且つ後進用ブレーキB1内の作動油が後進用出力ポート120rから排出ポートEXを経て例えば大気圧にドレーン(排出)されるようにマニュアルバルブ120の油路が切り換えられ、前進用クラッチC1が係合させられると共に後進用ブレーキB1が解放させられる。
また、シフトレバー74が「R」ポジションに操作されると、係合油圧PAが後進走行用出力圧として後進用出力ポート120rを経て後進用ブレーキB1に供給され且つ前進用クラッチC1内の作動油が前進用出力ポート120fから排出ポートEXを経て例えば大気圧にドレーン(排出)されるようにマニュアルバルブ120の油路が切り換えられ、後進用ブレーキB1が係合させられると共に前進用クラッチC1が解放させられる。
また、シフトレバー74が「P」ポジションおよび「N」ポジションに操作されると、入力ポート120aから前進用出力ポート120fへの油路および入力ポート120aから後進用出力ポート120rへの油路がいずれも遮断され且つ前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1内の作動油が何れもマニュアルバルブ120からドレーンされるようにマニュアルバルブ120の油路が切り換えられ、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に解放させられる。
前記クラッチアプライコントロールバルブ112は、軸方向へ移動可能に設けられることにより制御油圧PSLTを入力ポート112iから出力ポート112sを経て係合油圧PAとしてマニュアルバルブ120へ供給し且つ信号圧PSLSを入力ポート112jから出力ポート112tを経てライン圧モジュレータNO.2バルブ122およびプライマリレギュレータバルブ124へ供給する第1の油路を構成する第1位置(CONTROL位置)と出力油圧PLM2を入力ポート112kから出力ポート112sを経て係合油圧PAとしてマニュアルバルブ120へ供給し且つ制御油圧PSLTを入力ポート112iから出力ポート112tを経てライン圧モジュレータNO.2バルブ122およびプライマリレギュレータバルブ124へ供給する第2の油路を構成する第2位置(NORMAL位置)とに位置させられるスプール弁子112aと、そのスプール弁子112aを第2位置側に向かって付勢する付勢手段としてのスプリング112bと、スプール弁子112aに第1位置側に向かう推力を付与するために制御油圧PDS1を受け入れる油室112cと、スプール弁子112aに第1位置側に向かう推力を付与するために制御油圧PDS2を受け入れる径差部112dとを備えている。
このように構成されたクラッチアプライコントロールバルブ112において、例えば所定の低車速時や車両停止時等にシフトレバー74が「N」ポジションから「D」ポジション或いは「R」ポジションへ操作されるガレージシフト(N→Dシフト或いはN→Rシフト)が行われ、所定圧以上の制御油圧PDS1が油室112cへ供給され且つ所定圧以上の制御油圧PDS2が径差部112dへ供給されると、中心線より右側半分に示す第1位置側に切り換えられて制御油圧PSLTがマニュアルバルブ120を介して前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1に供給される。これにより、ガレージシフト時のクラッチC1やブレーキB1の係合過渡油圧が第1の電磁弁としてのリニアソレノイド弁SLTによって調圧される。例えば、制御油圧PSLTは、N→Dシフト或いはN→RシフトにおいてクラッチC1やブレーキB1の過渡的な係合状態を制御するための油圧であって、クラッチC1或いはブレーキB1が滑らかに係合させられ、係合時のショックが抑制されるように、予め定められた規則に従って調圧される。
また、例えばガレージシフト後のクラッチC1やブレーキB1が係合させられた定常時等に、制御油圧PDS1および制御油圧PDS2のうち少なくとも一方の供給が停止させられると、中心線より左側半分に示す第2位置側に切り換えられて出力油圧PLM2がマニュアルバルブ120を介して前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1に供給される。これにより、ガレージシフト後のクラッチC1やブレーキB1の係合が出力油圧PLM2によって保持される。例えば、出力油圧PLM2は、クラッチC1やブレーキB1を完全係合状態とするための所定油圧であって、少なくとも予め定められた一定圧に調圧されると共に信号圧PSLTに応じた油圧分を加えて調圧される。
このように、クラッチアプライコントロールバルブ112は、クラッチC1或いはブレーキB1への油圧の供給油路を、ガレージシフト時には前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1の過渡的な係合状態を制御するために制御油圧PSLTを供給する第1油路と、定常時にはクラッチC1或いはブレーキB1を完全係合状態とするために出力油圧PLM2を供給する第2油路とのいずれかに、第2の電磁弁としてのソレノイド弁DS1およびソレノイド弁DS2からの制御油圧PDS1および制御油圧PDS2に基づいて切り換える切換弁として機能する。
尚、本実施例では、リニアソレノイド弁SLTの出力油圧を制御油圧PSLTと信号圧PSLTとで2通りの記載をしているが、ガレージシフト時の係合過渡油圧を制御油圧PSLTとし、ライン油圧PLを調圧するためのパイロット圧を信号圧PSLTとして明確に区別して用いる。すなわち、リニアソレノイド弁SLTは、クラッチアプライコントロールバルブ112が第1位置に切り換えられているときには前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1の過渡的な係合状態を制御するために制御油圧PSLTを出力し、クラッチアプライコントロールバルブ112が第2位置に切り換えられているときにはライン油圧PLを調圧するために信号圧PSLTを出力する。また、この信号圧PSLTはプライマリレギュレータバルブ124によりライン油圧PLを調圧するためのパイロット圧であり、クラッチC1或いはブレーキB1を係合するために直接的にそれら係合装置の油圧アクチュエータに供給される油圧でないことから、上記出力油圧PLM2よりも小さな油圧とされている。
前記変速比コントロールバルブUP114は、軸方向へ移動可能に設けられることによりライン油圧PLを入力ポート114iから入出力ポート114jを経て入力側可変プーリ42へ供給可能且つ入出力ポート114kを閉弁するアップシフト位置と入力側可変プーリ42が入出力ポート114jを介して入出力ポート114kと連通させられる原位置とに位置させられるスプール弁子114aと、そのスプール弁子114aを原位置側に向かって付勢する付勢手段としてのスプリング114bと、そのスプリング114bを収容し且つスプール弁子114aに原位置側に向かう推力を付与するために制御油圧PDS2を受け入れる油室114cと、スプール弁子114aにアップシフト位置側に向かう推力を付与するために制御油圧PDS1を受け入れる油室114dとを備えている。
また、変速比コントロールバルブDN116は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入出力ポート116jが排出ポートEXと連通させられるダウンシフト位置と入出力ポート116jが入出力ポート116kと連通させられる原位置とに位置させられるスプール弁子116aと、そのスプール弁子116aを原位置側に向かって付勢する付勢手段としてのスプリング116bと、そのスプリング116bを収容し且つスプール弁子116aに原位置側に向かう推力を付与するために制御油圧PDS1を受け入れる油室116cと、スプール弁子116aにダウンシフト位置側に向かう推力を付与するために制御油圧PDS2を受け入れる油室116dとを備えている。
このように構成された変速比コントロールバルブUP114および変速比コントロールバルブDN116において、中心線より左側半分に示すようにスプール弁子114aがスプリング114bの付勢力に従って原位置に保持されている閉じ状態では、入出力ポート114jと入出力ポート114kとが連通させられ、入力側可変プーリ42(入力側油圧シリンダ42c)の作動油が入出力ポート116jへ流通することが許容される。また、中心線より右側半分に示すようにスプール弁子116aがスプリング116bの付勢力に従って原位置に保持されている閉じ状態では、入出力ポート116jと入出力ポート116kとが連通させられ、推力比コントロールバルブ118からの推力比制御油圧Pτが入出力ポート114kへ流通することが許容される。
また、制御油圧PDS1が油室114dへ供給されると、中心線より右側半分に示すようにスプール弁子114aがその制御油圧PDS1に応じた推力によりスプリング114bの付勢力に抗してアップシフト位置側へ移動させられ、ライン油圧PLが制御油圧PDS1に対応する流量で入力ポート114iから入出力ポート114jを経て入力側油圧シリンダ42cへ供給されると共に、入出力ポート114kが遮断されて変速比コントロールバルブDN116側への作動油の流通が阻止される。これにより、変速制御圧PRATIOが高められ、入力側可変プーリ42のV溝幅が狭くされて変速比γが小さくされるすなわち無段変速機18がアップシフトされる。
また、制御油圧PDS2が油室116dへ供給されると、中心線より左側半分に示すようにスプール弁子116aがその制御油圧PDS2に応じた推力によりスプリング116bの付勢力に抗してダウンシフト位置側へ移動させられ、入力側油圧シリンダ42cの作動油が制御油圧PDS2に対応する流量で入出力ポート114jから入出力ポート114kさらに入出力ポート116jを経て排出ポートEXから排出される。これにより、変速制御圧PRATIOが低められ、入力側可変プーリ42のV溝幅が広くされて変速比γが大きくされるすなわち無段変速機18がダウンシフトされる。
このように、制御油圧PDS1が出力されると変速比コントロールバルブUP114に入力されたライン油圧PLが入力側油圧シリンダ42cへ供給されて変速制御圧PRATIOが連続的にアップシフトされ、制御油圧PS2が出力されると入力側油圧シリンダ42cの作動油が排出ポートEXから排出されて変速制御圧PRATIOが連続的にダウンシフトされる。
例えば図4に示すようにアクセル開度Accをパラメータとして車速Vと無段変速機18の目標入力回転速度である目標入力軸回転速度NIN *との予め記憶された関係(変速マップ)から実際の車速Vおよびアクセル開度Accで示される車両状態に基づいて設定される所定回転部材としての入力軸36の目標入力軸回転速度NIN *と実際の入力軸回転速度(以下、実入力軸回転速度という)NINとが一致するように、それ等の回転速度差(偏差)ΔNIN(=NIN *−NIN)に応じて無段変速機18の変速がフィードバック制御により実行される、すなわち入力側油圧シリンダ42cに対する作動油の供給および排出により変速制御圧PRATIOが調圧されて変速比γがフィードバック制御により連続的に変化させられる。
図4の変速マップは変速条件に相当するもので、車速Vが小さくアクセル開度Accが大きい程大きな変速比γになる目標入力軸回転速度NIN *が設定されるようになっている。また、車速Vは出力軸回転速度NOUTに対応するため、入力軸回転速度NINの目標値である目標入力軸回転速度NIN *は目標変速比に対応し、無段変速機18の最小変速比γMINと最大変速比γMAXの範囲内で定められる。
但し、入力軸回転速度NINの目標値として目標入力軸回転速度NIN *をそのまま設定しても良いが、好適には、加速走行時や減速走行時(コースト走行時)や変速過渡時等の走行状態に応じて目標入力軸回転速度NIN *を処理した値である基本目標入力軸回転速度NINCを設定し、その基本目標入力軸回転速度NINCに基づいて最終的な入力軸回転速度NINの目標値である過渡目標入力軸回転速度NINTを設定する。従って、この場合には、その過渡目標入力軸回転速度NINTと実入力軸回転速度NINとが一致するように、それ等の回転速度差(偏差)ΔNINT(=NINT−NIN)に応じて無段変速機18の変速がフィードバック制御により実行される。
また、制御油圧PDS1は変速比コントロールバルブDN116の油室116cに供給され、制御油圧PDS2に拘らずその変速比コントロールバルブDN116を閉じ状態としてダウンシフトを制限する一方、制御油圧PDS2は変速比コントロールバルブUP114の油室114cに供給され、制御油圧PDS1に拘らずその変速比コントロールバルブUP114を閉じ状態としてアップシフトを禁止するようになっている。つまり、制御油圧PDS1および制御油圧PDS2が共に供給されないときはもちろんであるが、制御油圧PDS1および制御油圧PDS2が共に供給されるときにも、変速比コントロールバルブUP114および変速比コントロールバルブDN116は何れも原位置に保持されている閉じ状態とされる。これにより、電気系統の故障などでソレノイド弁DS1、DS2の一方が機能しなくなり、制御油圧PDS1または制御油圧PDS2が最大圧で出力され続けるオンフェール時となった場合でも、急なアップシフトやダウンシフトが生じたり、その急変速に起因してベルト滑りが発生したりすることが防止される。
前記挟圧力コントロールバルブ110は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入力ポート110iを開閉してライン油圧PLを入力ポート110iから出力ポート110tを経て出力側可変プーリ46および推力比コントロールバルブ118へ挟圧力制御圧PBELTを供給可能にするスプール弁子110aと、そのスプール弁子110aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング110bと、そのスプリング110bを収容し且つスプール弁子110aに開弁方向の推力を付与するために制御油圧PSLSを受け入れる油室110cと、スプール弁子110aに閉弁方向の推力を付与するために出力ポート110tから出力された挟圧力制御圧PBELTを受け入れるフィードバック油室110dと、スプール弁子110aに閉弁方向の推力を付与するためにモジュレータ油圧PMを受け入れる油室110eとを備えている。
このように構成された挟圧力コントロールバルブ110において、伝動ベルト48が滑りを生じないように制御油圧PSLSをパイロット圧としてライン油圧PLが連続的に調圧制御されることにより、出力ポート110tから挟圧力制御圧PBELTが出力される。
例えば図5に示すように伝達トルクに対応するアクセル開度Accをパラメータとして変速比γと必要油圧PBELT *(ベルト挟圧力に相当)とのベルト滑りが生じないように予め実験的に求められて記憶された関係(挟圧力マップ)から実際の変速比γおよびアクセル開度Accで示される車両状態に基づいて決定された必要油圧PBELT *が得られるように出力側油圧シリンダ46cの挟圧力制御圧PBELTが制御され、この挟圧力制御圧PBELTに応じてベルト挟圧力すなわち可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力が増減させられる。
前記推力比コントロールバルブ118は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入力ポート118iを開閉してライン油圧PLを入力ポート118iから出力ポート118tを経て変速比コントロールバルブDN116へ推力比制御油圧Pτを供給可能にするスプール弁子118aと、そのスプール弁子118aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング118bと、そのスプリング118bを収容し且つスプール弁子118aに開弁方向の推力を付与するために挟圧力制御圧PBELTを受け入れる油室118cと、スプール弁子118aに閉弁方向の推力を付与するために出力ポート118tから出力された推力比制御油圧Pτを受け入れるフィードバック油室118dとを備えている。
このように構成された推力比コントロールバルブ118において、油室118cにおける挟圧力制御圧PBELTの受圧面積をa、フィードバック油室118dにおける推力比制御油圧Pτの受圧面積をb、スプリング118bの付勢力をFSとすると、次式(1)で平衡状態となる。
Pτ×b=PBELT×a+FS ・・・(1)
従って、推力比制御油圧Pτは、次式(2)で表され、挟圧力制御圧PBELTに比例する。
Pτ=PBELT×(a/b)+FS/b ・・・(2)
そして、制御油圧PDS1および制御油圧PDS2が共に供給されないか、或いは所定圧以上の制御油圧PDS1および所定圧以上の制御油圧PDS2がともに供給されて、変速比コントロールバルブUP114および変速比コントロールバルブDN116が何れも原位置に保持されている閉じ状態とされたときには、推力比制御油圧Pτが入力側油圧シリンダ42cに供給されることから、変速制御圧PRATIOが推力比制御油圧Pτと一致させられる。つまり、推力比コントロールバルブ118により変速制御圧PRATIOと挟圧力制御圧PBELTとの油圧比(比率)を予め定められた関係に保つ推力比制御油圧PτすなわちPRATIOが出力される。
例えば、車速センサ58の精度上所定の極低車速未満の低車速状態では車速Vの検出精度が劣ることから、このような極低車速走行時や発進時には回転速度差(偏差)ΔNIN(またはΔNINT)に基づいた変速比γのフィードバック制御に替えて、例えば制御油圧PDS1および制御油圧PDS2を共に供給せず変速比コントロールバルブUP114および変速比コントロールバルブDN116を何れも閉じ状態とする所謂閉じ込み制御を実行する。これにより、極低車速走行時や発進時には変速制御圧PRATIOと挟圧力制御圧PBELTとの油圧比を一定とするようにPBELTに比例するPRATIOが入力側油圧シリンダ42cへ供給されて、車両停車時から極低車速時における伝動ベルト48のベルト滑りが防止されると共に、変速制御圧PRATIOと挟圧力制御圧PBELTとの前記予め定められた関係に基づいて、言い換えれば推力比τ(=出力側推力WOUT/入力側推力WIN;WOUTは挟圧力制御圧PBELT×出力側油圧シリンダ46cの断面積、WINは変速制御圧PRATIO×入力側油圧シリンダ42cの断面積)に基づいて、無段変速機18の変速比γが所定の変速比とされ良好な車両走行や車両発進が行われる(図6参照)。尚、上記所定の極低車速は、所定回転部材の回転速度例えば入力軸回転速度NINが検出不可能な回転速度となる車速Vとして予め定められたフィードバック制御を実行可能な下限の車速である。
図6は、車速Vをパラメータとして変速比γと推力比τとの予め求められて記憶された関係であって、図示の関係になるように上記式(2)の右辺第1項の(a/b)が設定された場合の一例を示す図である。図6の一点鎖線で示した車速Vのパラメータは入力側油圧シリンダ42cおよび出力側油圧シリンダ46cにおける遠心油圧を考慮して算出した推力比τであり、実線との交点(V0、V20、V50)にて閉じ込み制御時に保持可能な所定の変速比としての変速比γが設定される。
図7は、電子制御装置50による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図7において、目標入力回転設定手段150は、例えば図4に示すような予め記憶された変速マップから実際の車速Vおよびアクセル開度Accで示される車両状態に基づいて入力軸回転速度NINの目標入力軸回転速度NIN *を逐次設定する。そして、目標入力回転設定手段150は、加速走行時や減速走行時(コースト走行時)や変速過渡時等の走行状態に応じて目標入力軸回転速度NIN *を基本目標入力軸回転速度NINCへ変換し、その加速要求の有無や変速過渡時等の走行状態に応じて基本目標入力軸回転速度NINCに対する過渡的な目標入力軸回転速度である過渡目標入力軸回転速度NINTを逐次設定する。
例えば、目標入力回転設定手段150は、ダウンシフト過渡時には目標入力軸回転速度NIN *となるようにステップ的に増加された基本目標入力軸回転速度NINCに向かって漸増するような例えば基本目標入力軸回転速度NINCに対して一次遅れの過渡目標入力軸回転速度NINTを設定する。この一次遅れの過渡目標入力軸回転速度NINTは変速速度や変速ショックの抑制が両立するように予め実験的に求められて定められる。また、目標入力回転設定手段150は、減速走行時には目標入力軸回転速度NIN *を予め定められた減速走行時の下限制限値(下限ガード値)が設定された基本目標入力軸回転速度NINCへ変換し、その基本目標入力軸回転速度NINCをそのまま過渡目標入力軸回転速度NINTに設定する。(図9参照)
変速制御手段152は、実入力軸回転速度NINが前記目標入力回転設定手段150によって設定された過渡目標入力軸回転速度NINTと一致するように、すなわち回転速度差(偏差)ΔNINT(=NINT−NIN)に応じてその回転速度差(偏差)ΔNINTを解消するように無段変速機18の変速をフィードバック制御する。すなわち、入力側油圧シリンダ42cの変速制御圧PRATIOを制御する変速制御指令信号(油圧指令)STを油圧制御回路100へ出力して変速比γを連続的に変化させる。
ベルト挟圧力設定手段154は、例えば図5に示すような予め実験的に求められて記憶された挟圧力マップから実際の変速比γおよびアクセル開度Accで示される車両状態に基づいて必要油圧PBELT *を設定する。
ベルト挟圧力制御手段156は、前記ベルト挟圧力設定手段154により設定された必要油圧PBELT *が得られるように出力側油圧シリンダ46cの挟圧力制御圧PBELTを制御する挟圧力制御指令信号SBを油圧制御回路100へ出力してベルト挟圧力を増減させる。
油圧制御回路100は、上記変速制御指令信号STに従って無段変速機18の変速が実行されるようにソレノイド弁DS1およびソレノイド弁DS2を作動させて変速制御圧PRATIOを調圧すると共に、上記挟圧力制御指令信号SBに従ってベルト挟圧力が増減されるようにリニアソレノイド弁SLSを作動させて挟圧力制御圧PBELTを調圧する。
エンジン出力制御手段158は、エンジン12の出力制御の為にエンジン出力制御指令信号SE、例えばスロットル信号や噴射信号や点火時期信号などをそれぞれスロットルアクチュエータ76や燃料噴射装置78や点火装置80へ出力する。例えば、エンジン出力制御手段158は、アクセル開度Accに応じたスロットル開度θTHとなるように電子スロットル弁30を開閉するスロットル信号をスロットルアクチュエータ76へ出力してエンジントルクTEを制御する動力源出力制御手段として機能する。
係合制御手段160は、ガレージシフト時には、クラッチアプライコントロールバルブ112を第1位置側へ切り換えると共に、前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1の過渡的な係合状態を制御するために係合ショックが抑制されるように係合油圧を緩やかに上昇させるための制御油圧PSLTを出力し且つライン油圧PLを調圧するために信号圧PSLSを出力する制御指令信号SAを油圧制御回路100へ出力する。例えば、係合制御手段160は、リニアソレノイド弁SLTをデューティー制御するための指令信号SLTDUTYとして係合過渡油圧指令圧pcltexcを油圧制御回路100へ出力する。
油圧制御回路100は、ガレージシフト時には上記制御指令信号SAに従って、クラッチアプライコントロールバルブ112が第1位置側へ切り換えられるようにソレノイド弁DS1およびソレノイド弁DS2を作動させて所定圧以上の制御油圧PDS1および所定圧以上の制御油圧PDS2を出力すると共に、予め定められた規則に従って前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1が係合されるようにリニアソレノイド弁SLTを作動させて制御油圧PSLTを出力し且つエンジン負荷等に応じてライン油圧PLが調圧されるようにリニアソレノイド弁SLSを作動させて信号圧PSLSを出力する。
また、係合制御手段160は、ガレージシフト後例えばガレージシフト開始から所定時間経過後や制御油圧PSLTが所定の係合油圧以上となった後等の定常時には、前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1へ出力油圧PLM2を供給して完全係合状態とするためにクラッチアプライコントロールバルブ112を第2位置側へ切り換えると共に、ライン油圧PLを調圧するために信号圧PSLTを出力する制御指令信号SAを油圧制御回路100へ出力する。例えば、係合制御手段160は、リニアソレノイド弁SLTをデューティー制御するための指令信号SLTDUTYとしてライン圧指令圧plctgtを油圧制御回路100へ出力する。
油圧制御回路100は、定常時には上記制御指令信号SAに従って、前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1へ出力油圧PLM2が供給されて完全係合状態とされるようにソレノイド弁DS1およびソレノイド弁DS2を同時に作動させずにクラッチアプライコントロールバルブ112を第2位置側へ切り換えると共に、エンジン負荷等に応じてライン油圧PLが調圧されるようにリニアソレノイド弁SLTを作動させて信号圧PSLTを出力する。
このように、リニアソレノイド弁SLTは、ガレージシフト時にはクラッチアプライコントロールバルブ112の第1位置において、前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1が係合されるように制御油圧PSLTを出力する(クラッチ圧モードという)。また、リニアソレノイド弁SLTは、定常時にはクラッチアプライコントロールバルブ112の第2位置において、ライン油圧PLが調圧されるように信号圧PSLTを出力する(ライン圧モードという)。また、このクラッチ圧モードにおいては、所定圧以上の制御油圧PDS1および所定圧以上の制御油圧PDS2が出力されていることから、前進用クラッチC1或いは後進用ブレーキB1へ制御油圧PSLTが供給されると同時に、所定の変速比となるように推力比コントロールバルブ118による閉じ込み制御が行われる。
また、係合制御手段160は、ガレージシフト時のようにクラッチアプライコントロールバルブ112を第1位置側へ切り換える制御指令信号SAを出力するクラッチ圧モード時には、同時にクラッチ圧モード中フラグXddscltをON(オン)に切り換える。一方で、係合制御手段160は、ガレージシフト後の定常時のようにクラッチアプライコントロールバルブ112を第2位置側へ切り換える制御指令信号SAを出力するライン圧モード時には、同時にクラッチ圧モード中フラグXddscltをOFF(オフ)に切り換える。
クラッチ圧モード判定手段162は、クラッチ圧モード中フラグXddscltがOFFであるか否かを判定する。
また、係合制御手段160は、定常時の前進走行中にシフトレバー74が「D」ポジションから「N」ポジションを経て「R」ポジションへ操作される所謂前進走行時Rシフト(D→(N→)Rシフト)が行われたときには、例えばシフトポジション判定手段164によりレバーポジションPSHに基づいてD→Rシフトが行われたと判定されたときには、ガレージシフト時と同様に、クラッチアプライコントロールバルブ112を第1位置側へ切り換えると共に、ライン油圧PLを調圧するために信号圧PSLSを出力する制御指令信号SAを油圧制御回路100へ出力して、ライン圧モードからクラッチ圧モードに切り換える。
上記シフトポジション判定手段164は、レバーポジションPSHに基づいてすなわち各レバーポジションPSHのON信号に基づいて現在のレバーポジションPSHを判定したり、シフトレバー74の操作履歴を判定するものであって、上述したようなD→Rシフト判定以外に例えばN→Dシフト判定、N→Rシフト判定、「D」レンジ判定、「N」レンジ判定、「R」レンジ判定等を行う。
油圧制御回路100は、D→Rシフト時には上記制御指令信号SAに従って、クラッチアプライコントロールバルブ112が第1位置側へ切り換えられるようにソレノイド弁DS1およびソレノイド弁DS2を作動させて所定圧以上の制御油圧PDS1および所定圧以上の制御油圧PDS2を出力すると共に、エンジン負荷等に応じてライン油圧PLが調圧されるようにリニアソレノイド弁SLSを作動させて信号圧PSLSを出力する。
さらに、係合制御手段160は、この前進走行中のD→Rシフト時に、車速Vが所定車速すなわちリバースインヒビット車速VINH以下である場合にはガレージシフト時と同様に後進用ブレーキB1の過渡的な係合状態を制御するために制御油圧PSLTを出力する指令信号SLTDUTYとして係合過渡油圧指令圧pcltexcを油圧制御回路100へ出力してリバース(後進走行、「R」レンジ)を確定する。係合制御手段160は、このリバース確定後には、ガレージシフト後の定常時と同様に、後進用ブレーキB1へ出力油圧PLM2を供給して完全係合状態とするためにクラッチアプライコントロールバルブ112を第2位置側へ切り換えると共に、ライン油圧PLを調圧するために信号圧PSLTを出力する制御指令信号SAを油圧制御回路100へ出力して、クラッチ圧モードからライン圧モードに切り換える。
一方、係合制御手段160は、この前進走行中のD→Rシフト時に、車速Vがリバースインヒビット車速VINHを超えている場合にはガレージシフト時と異なり動力伝達経路がニュートラル状態とされるように後進用ブレーキB1を解放状態とするための制御油圧PSLTを出力する指令信号SLTDUTYとして解放油圧指令圧pclopenを油圧制御回路100へ出力してリバースインヒビット制御を実行する。同時に、係合制御手段160は、リバースインヒビット制御の実行中にはリバースインヒビット制御中フラグXRevinhをOFFからONへ切り換える。
この後進用ブレーキB1を解放状態とするための制御油圧PSLTは後進用ブレーキB1が係合トルク容量を持たない油圧であって、油圧制御回路100は、解放油圧指令圧pclopenに従って、後進用ブレーキB1が解放されるようにリニアソレノイド弁SLTを作動させて制御油圧PSLTを例えば零であったり或いは係合させるときの応答速度が早くなるように後進用ブレーキB1の油圧アクチュエータのリターンスプリング相当の油圧に調圧する。
リバースインヒビット判定手段166は、リバースインヒビット制御中フラグXRevinhがONであるか否かを判定する。
車速判定手段168は、車速Vがリバースインヒビット車速VINH以下であるか或いはリバースインヒビット車速VINHを超えているかを判定し、この判定結果を前記係合制御手段160へ出力する。このリバースインヒビット車速VINHは、例えば前進走行中にリバースが確定されたときの切換えショックや無段変速機18等の耐久性低下が抑制されるための予め実験的に求められて記憶された判定車速である。
つまり、係合制御手段160は、前進走行中のD→Rシフト時に、車速Vがリバースインヒビット車速VINH以下である場合にはガレージシフト時と同様に後進用ブレーキB1を係合させる一方で、車速Vがリバースインヒビット車速VINHを超えている場合には後進用ブレーキB1を係合させないリバースインヒビット制御を実行してリバースを成立させない。
リバースインヒビット復帰判定手段170は、リバースインヒビット制御中にシフトレバー74が「R」ポジション(レンジ)のまま車速Vがリバースインヒビット車速VINH以下となったか否かを判定し、すなわち前記リバースインヒビット判定手段166によりリバースインヒビット制御中フラグXRevinhがONであると判定されているときに前記シフトポジション判定手段164により「R」レンジであると判定され且つ前記車速判定手段168により車速Vがリバースインヒビット車速VINH以下であると判定されたか否かを判定し、リバースインヒビット制御中にシフトレバー74が「R」ポジションのまま車速Vがリバースインヒビット車速VINH以下となったと判定した場合には、リバースインヒビット復帰フラグであるRevinh復帰フラグをOFFからONへ切り換える。
係合制御手段160は、前記リバースインヒビット復帰判定手段170によりRevinh復帰フラグがONへ切り換えられた時には、リバースインヒビット制御から復帰してすなわちリバースインヒビット制御を中止してリバースインヒビット制御中フラグXRevinhをONからOFFへ切り換え、ガレージシフト時と同様に後進用ブレーキB1の過渡的な係合状態を制御するために制御油圧PSLTを出力する指令信号SLTDUTYとして係合過渡油圧指令圧pcltexcを油圧制御回路100へ出力してリバースを確定する。このリバース確定後には、係合制御手段160は、ガレージシフト後の定常時と同様に、後進用ブレーキB1へ出力油圧PLM2を供給して完全係合状態とするためにクラッチアプライコントロールバルブ112を第2位置側へ切り換えると共に、ライン油圧PLを調圧するために信号圧PSLTを出力する制御指令信号SAを油圧制御回路100へ出力して、クラッチ圧モードからライン圧モードに切り換える。
ところで、リバースインヒビット制御中やガレージシフト時はクラッチアプライコントロールバルブ112が第1位置に切り換えられるクラッチ圧モードとされることから、前述したように推力比コントロールバルブ118による閉じ込み制御が行われて所定の変速比に保持される。つまり、ライン圧モードとされているときの通常の変速制御である前記変速制御手段152による変速比γのフィードバック制御が実行されない。そして、リバースインヒビット制御からの復帰後にガレージシフトが終了するとクラッチ圧モードが終了して、通常の変速制御が開始される。
また、リバースインヒビット制御中は減速走行となることから、前述したように目標入力回転設定手段150により基本目標入力軸回転速度NINCが予め定められた減速走行時の基本目標入力軸回転速度NINCの下限制限値に設定される。そして、リバースインヒビット制御からの復帰時には、図4の変速マップに示されるように車速Vがリバースインヒビット車速VINH以下となるような低車速域では最大変速比γMAXやその近傍となるように目標入力軸回転速度NIN *が設定されることから、下限制限値からステップ的に増加された基本目標入力軸回転速度NINCが設定される。このリバースインヒビット制御からの復帰後、ガレージシフト終了(クラッチ圧モード終了)までの間は、変速比γは未だ所定の変速比に保持されることから、例えばガレージシフト終了後の通常の変速制御の開始に備えて目標入力回転設定手段150により過渡目標入力軸回転速度NINTが実入力軸回転速度NINに設定される。その後、通常の変速制御の開始に合わせて、目標入力回転設定手段150により上記ステップ的に増加された基本目標入力軸回転速度NINCに向かって漸増するような過渡目標入力軸回転速度NINTが設定される。
そうすると、リバースインヒビット制御後、通常の変速制御が開始されるときには、回転速度差(偏差)ΔNINT(=NINT−NIN)が大きくなって急ダウンシフトが生じやすくなり、つまり回転速度差(偏差)ΔNINTに比例して変速流量が大きくなり、プライマリプーリ側油圧シリンダ内から作動油が急速に排出されて、ベルトの緩みやそれに起因するベルト滑りなどが発生する可能性がある。特に、リバースインヒビット制御中やガレージシフト中の閉じ込み制御中にアップシフト側となるような変速比γに所定の変速比が保持されると、クラッチ圧モード中は実入力軸回転速度NINが小さくなり、ガレージシフト中はそれに合わせて過渡目標入力軸回転速度NINTも小さくなることから目標入力回転速度差ΔNINC(=|NINC−NINT|)が一層大きくなり、通常の変速制御が開始されるときには回転速度差(偏差)ΔNINTが大きくなって急ダウンシフトの発生によるベルトの緩みやベルト滑りなどの発生が顕著に表れる。
そこで、リバースインヒビット制御が解除されてガレージシフトが終了した後の通常の変速制御に復帰する復帰時に、急なダウンシフトが防止されてベルトの緩みやそれに起因するベルト滑りが発生することが防止されるように、復帰時変速制限手段172は無段変速機18の変速比変化を制限する。
具体的には、前記復帰時変速制限手段172は、前記リバースインヒビット復帰判定手段170によりRevinh復帰フラグがOFFからONへ切り換えられ、前記クラッチ圧モード判定手段162によりクラッチ圧モード中フラグXddscltがOFFであると判定された場合には、通常の変速制御に復帰する復帰時に回転速度差(偏差)ΔNINTが小さくされるように、基本目標入力軸回転速度NINCに向かって漸増する過渡目標入力軸回転速度NINTの変化を制限する指令を、すなわち過渡目標入力軸回転速度NINTが基本目標入力軸回転速度NINCに向かう傾き値(単位時間当たりの過渡目標入力軸回転速度NINTの変化)を小さくする指令を、目標入力回転設定手段150へ出力する。目標入力回転設定手段150は、復帰時変速制限手段172による指令に従って、その指令が出力されていないときに設定する過渡目標入力軸回転速度NINTよりも変化を制限した過渡目標入力軸回転速度NINTを新たに設定する。
このように、復帰時変速制限手段172は、過渡目標入力軸回転速度NINTの変化を制限する過渡目標入力軸回転速度NINTガードによって無段変速機18の変速比変化速度をベルトの緩みやそれに起因するベルト滑りが発生することが防止されるための所定値以下に制限する。この過渡目標入力軸回転速度NINTガードとしては、過渡目標入力軸回転速度NINTの変化を制限する以外に例えば過渡目標入力軸回転速度NINTの上限を設定しても良い。例えば、基本目標入力軸回転速度NINCに向かうときの過渡目標入力軸回転速度NINTの上限値を、絶対値で一律に定めたり、基本目標入力軸回転速度NINCに対する所定割合で定めたり、一定時間経過毎に定めたりする。
変速制限解除判定手段174は、前記復帰時変速制限手段172による無段変速機18の変速比変化の制限を解除するための所定の解除条件が成立したか否かを判定する。この所定の解除条件としては、例えば目標入力回転速度差ΔNINC(=|NINC−NINT|)が所定回転差以下となったとき或いは車速判定手段168により車速Vが前記所定の極低車速以下であると判定されたとき等である。
上記所定回転差は、過渡目標入力軸回転速度NINTガードを設定しなくてもベルトの緩みやそれに起因するベルト滑りが発生しないことが予め実験等により求められた変速制限解除判定値である。また、所定の極低車速未満の低車速状態では回転速度差(偏差)ΔNINTに基づく変速比γのフィードバック制御に替えて閉じ込み制御が実行されることから、ベルトの緩みやそれに起因するベルト滑りが発生しないので、その所定の極低車速を変速制限解除判定値として用いるのである。
前記復帰時変速制限手段172は、前記変速制限解除判定手段174により所定の解除条件が成立したと判定された場合には、無段変速機18の変速比変化の制限を解除する。これにより、無段変速機18の変速比変化を制限する以外の通常制御に復帰する。
図8は、電子制御装置50の制御作動の要部すなわちリバースインヒビット制御からの復帰後にガレージシフトが終了して通常の変速制御に復帰する復帰時に、ベルトの緩みやそれに起因するベルト滑りの発生を防止する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。また、図9は図8のフローチャートに示す制御作動の一例であって、閉じ込み制御中にアップシフトとなるときの制御作動を説明するタイムチャートである。
先ず、前記リバースインヒビット判定手段166に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、リバースインヒビット制御中フラグXRevinhがONであるか否かが判定される。このS1の判断が否定される場合はS2乃至S6の制御以外の通常制御に復帰して本ルーチンが終了させられる。
図9のt1時点は、前進走行中のD→Rシフト時に車速Vがリバースインヒビット車速VINHを超えており、ライン圧モードからクラッチ圧モードに切り換えられ、且つ動力伝達経路がニュートラル状態とされるように後進用ブレーキB1を解放状態とするための制御油圧PSLTを出力する指令信号SLTDUTYとして解放油圧指令圧pclopenが油圧制御回路100へ出力されてリバースインヒビット制御が実行開始されたことを示している。同時に、クラッチ圧モード中フラグXddscltがONに切り換えられると共にリバースインヒビット制御中フラグXRevinhがONに切り換えられたことを示している。尚、t1時点以前のリニアソレノイド弁SLTの指令信号SLTDUTYはライン油圧PLを調圧するために信号圧PSLTを出力するライン圧指令圧plctgtである。
また、t1時点乃至t2時点に示すようにリバースインヒビット制御中は、基本目標入力軸回転速度NINCが減速走行時の基本目標入力軸回転速度NINCの下限制限値に設定されると共に、その基本目標入力軸回転速度NINCがそのまま過渡目標入力軸回転速度NINTに設定される。また、閉じ込み制御において所定の変速比に保持されることから、この実施例では実入力軸回転速度NINが緩やかに低下するアップシフトされる。
前記S1の判断が肯定される場合は前記リバースインヒビット復帰判定手段170に対応するS2において、「R」レンジであると判定され且つ車速Vがリバースインヒビット車速VINH以下であると判定されたか否かが判定される。このS2の判断が否定される場合はリバースインヒビット制御が継続されたり或いは「D」レンジに戻されたときには前進用クラッチC1が係合される等のS3乃至S6の制御以外の通常制御に復帰して本ルーチンが終了させられる。
前記S2の判断が肯定される場合は前記リバースインヒビット復帰判定手段170に対応するS3において、リバースインヒビット復帰フラグであるRevinh復帰フラグがOFFからONへ切り換えられる。
図9のt2時点は、リバースインヒビット制御中にシフトレバー74が「R」レンジのまま車速Vがリバースインヒビット車速VINH以下となり、リバースインヒビット制御が解除されてすなわちリバースインヒビット制御から復帰して、リバースインヒビット制御中フラグXRevinhがOFFに切り換えられると共に、図示はしてないがRevinh復帰フラグがOFFからONへ切り換えられたことを示している。
そして、t2時点乃至t3時点に示すようにクラッチ圧モードがそのまま維持され、後進用ブレーキB1の過渡的な係合状態を制御するために制御油圧PSLTを出力する指令信号SLTDUTYとして係合過渡油圧指令圧pcltexcが油圧制御回路100へ出力されてリバースが確定される。また、リバースインヒビット制御からの復帰時には、図4の変速マップに示されるように車速Vがリバースインヒビット車速VINH以下となるような低車速域では最大変速比γMAXやその近傍となるように目標入力軸回転速度NIN *が設定されることから、減速走行時の下限制限値からステップ的に増加された基本目標入力軸回転速度NINCが設定される。また、リバースが確定するガレージシフト終了(クラッチ圧モード終了)までの間は、閉じ込み制御が継続されて所定の変速比に保持されることから、実入力軸回転速度NINがさらに低下している。このとき、例えばガレージシフト終了後の通常の変速制御の開始に備えて、過渡目標入力軸回転速度NINTが実入力軸回転速度NINに設定される。
次いで、前記クラッチ圧モード判定手段162に対応するS4において、クラッチ圧モード中フラグXddscltがOFFであるか否かが判定される。
図9のt3時点は、リバースインヒビット制御からの復帰後にリバースが確定してガレージシフトが終了させられてすなわちクラッチ圧モードが終了させられてクラッチ圧モード中フラグXddscltがOFFへ切り換えられたことを示している。
前記S4の判断が否定される場合はこのS4の判断が繰り返し実行されるが肯定される場合は前記復帰時変速制限手段172および目標入力回転設定手段150に対応するS5において、過渡目標入力軸回転速度NINTガードにより無段変速機18の変速比変化が制限される。例えば、通常の変速制御に復帰する復帰時に回転速度差(偏差)ΔNINTが小さくされるように、基本目標入力軸回転速度NINCに向かって漸増する過渡目標入力軸回転速度NINTの変化を制限する指令が出力され、その指令に従って、その指令が出力されていないときに設定される通常の過渡目標入力軸回転速度NINTよりも変化を制限した過渡目標入力軸回転速度NINTが新たに設定される。
この過渡目標入力軸回転速度NINTガードとしては、過渡目標入力軸回転速度NINTの変化を制限する以外に例えば過渡目標入力軸回転速度NINTの上限が設定されても良い。
図9のt3時点以降は、変速比γのフィードバック制御が実行される通常の変速制御において、その通常の変速制御の開始に合わせて設定される過渡目標入力軸回転速度NINTの複数の例を示している。実線のAは、過渡目標入力軸回転速度NINTが基本目標入力軸回転速度NINCに向かう傾き値が小さくされた場合の一例である。実線のBは、過渡目標入力軸回転速度NINTが基本目標入力軸回転速度NINCに向かうときの上限値が絶対値で一律に定められた場合の一例である。破線は、無段変速機18の変速比変化を制限しない場合に設定される基本目標入力軸回転速度NINCであって、基本目標入力軸回転速度NINCに向かって漸増する従来の過渡目標入力軸回転速度NINTの一例である。
このように、実線Aや実線Bに示す過渡目標入力軸回転速度NINTの設定では、破線示す設定に比べて、回転速度差(偏差)ΔNINT(=NINT−NIN)が小さくされる。これにより、急ダウンシフトが防止されて、つまり回転速度差(偏差)ΔNINTが小さくなって変速流量が小さくされて、ベルトの緩みやそれに起因するベルト滑りが発生することが防止される。
次いで、前記変速制限解除判定手段174に対応するS6において、前記S5において実行されている無段変速機18の変速比変化の制限を解除するための所定の解除条件が成立したか否かが判定される。例えば、目標入力回転速度差ΔNINC(=|NINC−NINT|)が変速制限解除判定値ΔNinhret以下となったか或いは車速Vが変速制限解除判定値Vinhret以下と判定されたか否かが判定される。
前記S6の判断が否定される場合は前記S5以降が繰り返し実行されるが肯定される場合は無段変速機18の変速比変化を制限する以外の通常制御に復帰して本ルーチンが終了させられる。
上述のように、本実施例によれば、車速Vがリバースインヒビット車速VINH以下に低下することによりリバースインヒビット制御が解除され、動力伝達経路が動力伝達可能状態とされた後のすなわちガレージシフトにより後進用ブレーキB1が係合されてリバースが確定した後の、変速比γのフィードバック制御が実行される通常の変速制御に復帰する復帰時に、回転速度差(偏差)ΔNINT(=NINT−NIN)が小さくされるように復帰時変速制限手段172により過渡目標入力軸回転速度NINTの変化が制限されたり、過渡目標入力軸回転速度NINTの上限が設定されたりして無段変速機18の変速比変化が制限されるので、急なダウンシフトが防止されてベルトの緩みやそれに起因するベルト滑りが発生することが防止される。特に、クラッチ圧モード時の閉じ込み制御により所定の変速比とされることによってリバースインヒビット制御中に変速比γが比較的小さくされてアップシフトが行われるような場合であっても、通常の変速制御に復帰する復帰時に急なダウンシフトが防止されてベルトの緩みやそれに起因するベルト滑りが発生することが防止される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、復帰時変速制限手段172は過渡目標入力軸回転速度NINTガードにより無段変速機18の変速比変化を制限したが、無段変速機18の変速比変化が制限されれば良く、これに限らず他の方法が種々用いられても良い。例えば、過渡目標入力軸回転速度NINTガードに替えて、入力側油圧シリンダ42cへの作動油の流量を制限しても良い。このようにしても、急なダウンシフトが防止されてベルトの緩みやそれに起因するベルト滑りが発生することが防止される。
また、前述の実施例において、所定回転部材の回転速度として例示した入力軸回転速度NINやそれに関連する目標入力軸回転速度NIN *などは、それら入力軸回転速度NINなどに替えて、エンジン回転速度NEやそれに関連する目標エンジン回転速度NE *など、或いはタービン回転速度NTやそれに関連する目標タービン回転速度NT *などが用いられても良い。従って、入力軸回転速度センサ56等の回転速度センサは、制御する必要がある回転速度に合わせて適宜備えられれば良い。
また、前述の実施例において、流体伝動装置としてロックアップクラッチ26が備えられているトルクコンバータ14が用いられていたが、ロックアップクラッチ26は必ずしも設けられなくてもよく、またトルクコンバータ14に替えて、トルク増幅作用のない流体継手(フルードカップリング)などの他の流体式動力伝達装置が用いられてもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。