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JP4680615B2 - 無段変速機の変速制御装置 - Google Patents

無段変速機の変速制御装置 Download PDF

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JP4680615B2 JP2005019883A JP2005019883A JP4680615B2 JP 4680615 B2 JP4680615 B2 JP 4680615B2 JP 2005019883 A JP2005019883 A JP 2005019883A JP 2005019883 A JP2005019883 A JP 2005019883A JP 4680615 B2 JP4680615 B2 JP 4680615B2
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Description

本発明は、車両に搭載される無段変速機の変速制御装置に関する。
車両の動力伝達系に搭載されるベルト式無段変速機(CVT)は、入力軸に設けられるプライマリプーリと、出力軸に設けられるセカンダリプーリと、これらのプーリに掛け渡される駆動ベルトとを備えており、プーリに対する駆動ベルトの巻き付け径を変化させて変速比を無段階に制御している。プライマリプーリやセカンダリプーリは、それぞれに固定シーブとこれに対面する可動シーブとを備えており、可動シーブを軸方向に移動させることによって駆動ベルトの巻き付け径を変化させることが可能となっている。
このような無段変速機は、一方のプーリ(たとえば、プライマリプーリ)によって変速比を制御するのに対し、他方のプーリ(たとえば、セカンダリプーリ)によって駆動ベルトの張力を制御するようにしている。プライマリプーリによって変速比を制御する際には、スロットル開度や車速などに基づいて変速特性マップが参照され、プライマリプーリの目標回転数が設定される。次いで、プライマリプーリを目標回転数で回転させるための目標変速比が設定され、この目標変速比に合わせてプライマリプーリの可動シーブが軸方向に移動制御されることになる。なお、セカンダリプーリのプーリ溝幅は駆動ベルトを介して従動的に制御されることになるが、駆動ベルトに滑りを生じさせることのないように、セカンダリプーリは所定の締め付け力で駆動ベルトを締め付けるようになっている。
このようにプライマリプーリやセカンダリプーリを駆動制御するため、プライマリプーリの作動油室には変速比制御弁を介して調圧されたプライマリ圧が供給される一方、セカンダリプーリの作動油室にはライン圧制御弁を介して調圧されたセカンダリ圧が供給されるようになっている。また、滑らかな変速制御を実現するため、プライマリ圧やライン圧を調圧する変速比制御弁やライン圧制御弁には、電磁圧力制御弁や電磁流量制御弁が採用されている。
このような電磁圧力制御弁や電磁流量制御弁は、電子制御ユニットからの制御信号に基づいてプライマリ圧やセカンダリ圧を調圧することになるが、万一、断線などによって制御不能となるフェール状態に陥った場合であっても、走行上の安全性を確保しながら最低限の走行性能を確保するため、制御回路にはフェールセーフ機能が組み込まれている。特に、変速比制御弁がフェール状態に陥った場合に、プライマリプーリから作動油が排出されると、ダウンシフトによって車両を急減速させてしまうことから、非通電状態において連通する常開式の変速比制御弁を採用することが多い。つまり、変速比制御弁を介してプライマリプーリに作動油を供給することにより、変速比をオーバードライブ側に制御することができ、急減速を回避して車両の安全性を確保することが可能となる。
ところで、変速比制御弁がフェール状態に陥ることにより、変速比がオーバードライブ側に制御されると、車両を停止させた後に再発進させることが困難となる。そこで、フェール時の安全性を確保するとともに、車両の発進性能を確保するため、フェール状態となった変速比制御弁から出力されるプライマリ圧を所定の圧力に保つことにより、変速比を最大変速比(ロー状態)と最小変速比(オーバードライブ状態)との間に設定するようにした無段変速機の変速制御装置が提案されている(たとえば、特許文献1および2参照)。
特開2004−169895号公報 特開平5−106728号公報
しかしながら、フェール時における急減速を回避するためには、変速比をオーバードライブ側に設定する必要があるのに対し、再発進時における発進性能を確保するためには、変速比をロー側に設定する必要があるため、急減速の回避と発進性能の確保とを両立させる変速比を設定することは困難となっていた。つまり、走行中における急減速を回避するように、フェール時の変速比をオーバードライブ側に設定すると、車両の発進性能が損なわれることになり、坂道発進などが不可能になるおそれもある。また、停車状態からの再発進を確実に行うように、フェール時の変速比をロー側に設定すると、急減速のおそれがあるだけでなく、車速を低く制限することになっていた。
本発明の目的は、変速比制御弁がフェール状態に陥った場合であっても、変速制御が可能な回路構造を採用することにより、車両の走行性能を確保することにある。
本発明の無段変速機の変速制御装置は、第1プーリと第2プーリとに駆動ベルトが巻き付けられ、前記第1プーリのプーリ溝幅を制御することによって前記駆動ベルトの巻き付け径を無段階に変化させる無段変速機の変速制御装置であって、油圧供給源と前記第1プーリとの間に設けられ、前記第1プーリに供給される変速油圧を調圧する変速比制御弁と、前記変速比制御弁と前記第1プーリとの間に設けられ、前記第1プーリに変速油圧を供給する連通状態と、前記第1プーリから変速油圧を排出する排出状態とに切り換えられるフェールセーフ弁と、前記油圧供給源と前記フェールセーフ弁との間に設けられ、前記フェールセーフ弁のパイロット圧室に作動油圧を供給するパイロット圧制御弁と、前記変速比制御弁が連通状態となるフェール時には、前記パイロット圧制御弁に駆動信号を出力して前記フェールセーフ弁を連通状態と排出状態とに切り換えるフェール制御手段とを有することを特徴とする。
本発明の無段変速機の変速制御装置は、前記フェールセーフ弁は変速油圧に基づいて作動するリリーフ弁であり、変速油圧が上限圧力を下回るときには連通状態に切り換えられる一方、変速油圧が上限圧力を上回るときには排出状態に切り換えられることを特徴とする。
本発明の無段変速機の変速制御装置は、車速が所定車速を下回るときには、前記フェール制御手段は前記フェールセーフ弁を切り換えてロー側に変速させることを特徴とする。
本発明の無段変速機の変速制御装置は、前記フェール制御手段は、車速が所定車速を上回った状態のもとで、スロットル開度が判定スロットル開度を上回るときには、前記フェールセーフ弁を切り換えてロー側に変速させる一方、スロットル開度が判定スロットル開度を下回るときには、前記フェールセーフ弁を切り換えてオーバードライブ側に変速させることを特徴とする。
本発明の無段変速機の変速制御装置は、前記判定スロットル開度は車速に基づいて設定されることを特徴とする。
本発明の無段変速機の変速制御装置は、前記フェール制御手段は、車速に基づき設定される判定変速比を実変速比が上回るときには、前記フェールセーフ弁を切り換えてオーバードライブ側に変速させることを特徴とする。
本発明によれば、変速比制御弁と第1プーリとの間にフェールセーフ弁を設けるとともに、このフェールセーフ弁を駆動制御するパイロット圧制御弁を設けるようにしたので、変速比制御弁がフェール状態に陥った場合であっても、パイロット圧制御弁を介してフェールセーフ弁を駆動制御することにより、第1プーリに対する変速油圧の供給制御が可能となる。つまり、変速比制御弁がフェール状態に陥った場合であっても、変速比をロー状態からオーバードライブ状態まで自在に制御することが可能となる。これにより、フェール状態に陥った車両を再発進させる場合には、変速比をロー側に制御することが可能となり、車両の発進性能を向上させることができる一方、再発進後には走行状況に応じて変速比をオーバードライブ側に制御することができるため、車両を低速走行から高速走行まで幅広いレンジで走行させることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である変速制御装置によって制御される無段変速機10を示すスケルトン図である。図1に示すように、この無段変速機10はベルト式無段変速機10であり、エンジン11に駆動されるプライマリ軸12と、これに平行となるセカンダリ軸13とを有している。プライマリ軸12とセカンダリ軸13との間には変速機構が設けられており、プライマリ軸12の回転は変速されてセカンダリ軸13に伝達される。そして、セカンダリ軸13の回転は、減速機構14やディファレンシャル機構15を介して左右の駆動輪16,17に伝達される。
プライマリ軸12には第1プーリとしてのプライマリプーリ20が設けられており、このプライマリプーリ20はプライマリ軸12に一体となった固定シーブ20aと、これに対向してプライマリ軸12に軸方向に摺動自在となって装着される可動シーブ20bとを有している。また、セカンダリ軸13には第2プーリとしてのセカンダリプーリ21が設けられており、このセカンダリプーリ21はセカンダリ軸13に一体となった固定シーブ21aと、これに対向してセカンダリ軸13に軸方向に摺動自在となって装着される可動シーブ21bとを有している。
プライマリプーリ20とセカンダリプーリ21には駆動ベルト22が巻き付けられており、プライマリプーリ20とセカンダリプーリ21とのプーリ溝幅を変化させ、駆動ベルト22の巻き付け径を変化させることにより、プライマリ軸12の回転を無段階に変速させてセカンダリ軸13に伝達することができる。駆動ベルト22のプライマリプーリ20に対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ21に対する巻き付け径をRsとすると、無段変速機10の変速比はRs/Rpとなる。
プライマリプーリ20のプーリ溝幅を変化させるために、プライマリ軸12にはプランジャ23が固定され、可動シーブ20bにはプランジャ23の外周面に摺動自在に接触するプライマリシリンダ24が固定され、プランジャ23とプライマリシリンダ24とによって作動油室25が区画されている。一方、セカンダリプーリ21のプーリ溝幅を変化させるために、セカンダリ軸13にはプランジャ26が固定され、可動シーブ21bにはプランジャ26の外周面に摺動自在に接触するセカンダリシリンダ27が固定され、プランジャ26とセカンダリシリンダ27とによって作動油室28が区画されている。それぞれのプーリ20,21のプーリ溝幅は、プライマリ側の作動油室25に導入される変速油圧としてのプライマリ圧Ppと、セカンダリ側の作動油室28に導入されるセカンダリ圧Psとを調圧することによって設定される。
また、プライマリプーリ20にエンジン動力を伝達するため、クランク軸11aとプライマリ軸12との間にはトルクコンバータ30および前後進切換機構31が設けられている。トルクコンバータ30はクランク軸11aに連結されるポンプシェル30aとこれに対面するタービンランナ30bとを備えており、タービンランナ30bにはトルクコンバータ軸32が連結されている。また、トルクコンバータ30内には、走行状態に応じてクランク軸11aとトルクコンバータ軸32とを締結するためのロックアップクラッチ33が組み込まれている。
前後進切換機構31は、ダブルピニオン式の遊星歯車列34、前進用クラッチ35および後退用ブレーキ36を備えており、前進用クラッチ35や後退用ブレーキ36を作動させることにより、エンジン動力の伝達経路を切り換えるようになっている。前進用クラッチ35および後退用ブレーキ36を共に開放すると、トルクコンバータ軸32とプライマリ軸12とは切り離され、前後進切換機構31はプライマリ軸12に動力を伝達しないニュートラル状態に切り換えられる。また、後退用ブレーキ36を開放した状態のもとで前進用クラッチ35を締結すると、トルクコンバータ軸32の回転がそのままプライマリプーリ20に伝達される。さらに、前進用クラッチ35を開放した状態のもとで後退用ブレーキ36を締結すると、トルクコンバータ軸32の回転が逆転されてプライマリプーリ20に伝達されることになる。
図2は無段変速機10の油圧制御系および電子制御系を示す概略図である。図2に示すように、プライマリプーリ20やセカンダリプーリ21に作動油を供給するため、無段変速機10にはエンジン11に駆動される油圧供給源としてのオイルポンプ40が設けられている。このオイルポンプ40の吐出口に接続されるライン圧路41にはライン圧制御弁42が接続されており、ライン圧制御弁42によって油圧制御回路の主要油圧であるライン圧が調圧される。また、ライン圧路41は分岐するようになっており、一方のライン圧路41aは変速比制御弁であるプライマリ圧制御弁43の入力ポート43aに接続され、他方のライン圧路41bはセカンダリ圧制御弁44の入力ポート44aに接続されている。
そして、プライマリ圧制御弁43によって調圧されるプライマリ圧Ppは、プライマリ圧路45を介してプライマリプーリ20の作動油室25に供給され、プライマリプーリ20のプーリ溝幅を制御して変速比を設定することになる。また、セカンダリ圧制御弁44によって調圧されるセカンダリ圧Psは、セカンダリ圧路46を介してセカンダリプーリ21の作動油室28に供給され、駆動ベルト22の滑りを抑制するようにセカンダリプーリ21を締め付け動作させることになる。
なお、ライン圧制御弁42、プライマリ圧制御弁43、およびセカンダリ圧制御弁44は、それぞれ電磁圧力制御弁(リニアソレノイドバルブ)であり、CVT制御ユニット47からソレノイドコイル42b〜44bに出力される電流を制御することによって、ライン圧、プライマリ圧Pp、セカンダリ圧Psを調圧することができる。このような制御弁42〜44としては、一義的に作動油の圧力を制御する電磁圧力制御弁に限られることはなく、一義的に作動油の流量を制御することによって作動油の圧力を制御する電磁流量制御弁を採用するようにしても良い。また、ライン圧制御弁42は非通電時に遮断される常閉式の電磁弁となっており、プライマリ圧制御弁43およびセカンダリ圧制御弁44は非通電時に連通する常開式の電磁弁となっている。
このように、プライマリ圧制御弁43やセカンダリ圧制御弁44を制御することにより、無段変速機10の変速制御を実行するCVT制御ユニット47は、図示しないマイクロプロセッサ(CPU)を備えており、このCPUにはバスラインを介してROM、RAMおよびI/Oポートが接続される。ROMには制御プログラムや各種マップデータなどが格納されており、RAMにはCPUで演算処理したデータが一時的に格納されるようになっている。また、I/Oポートを介してCPUには各種センサから車両の走行状態を示す検出信号が入力される。
CVT制御ユニット47に検出信号を入力する各種センサとしては、プライマリプーリ20の回転数を検出するプライマリ回転数センサ50、セカンダリプーリ21の回転数を検出するセカンダリ回転数センサ51、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度を検出するアクセルペダルセンサ52、車速Vを検出する車速センサ53、スロットルバルブのスロットル開度Toを検出するスロットル開度センサ54、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ55などがある。また、CVT制御ユニット47にはエンジン制御ユニット56が接続されており、無段変速機10とエンジン11とは相互に協調して制御されるようになっている。
なお、トルクコンバータ軸32の回転数を検出するタービン回転数センサを設け、このタービン回転数センサからの検出信号に基づいてプライマリプーリ20の回転数を検出するようにしても良い。また、セカンダリ回転数センサ51によって検出されるセカンダリプーリ21の回転数から車速Vを演算するようにしても良く、車速センサ53によって検出される車速Vからセカンダリプーリ21の回転数を演算するようにしても良い。さらに、スロットル開度Toやエンジン回転数Neをエンジン制御ユニット56から読み込むようにしても良い。
以下、CVT制御ユニット47による無段変速機10の変速制御について説明する。図3はCVT制御ユニット47の変速制御系を示すブロック図である。図3に示すように、CVT制御ユニット47は、目標プライマリ圧Ppを算出するため、目標プライマリ回転数算出部60、目標変速比算出部61、油圧比算出部62、目標プライマリ圧算出部63を備えている。目標プライマリ回転数算出部60は、車速Vとスロットル開度Toに基づいて変速特性マップを参照することにより目標プライマリ回転数Npを算出し、目標変速比算出部61は、目標プライマリ回転数Npと実セカンダリ回転数Ns’とに基づいて目標変速比iを算出する。次いで、油圧比算出部62は、目標変速比iに対応する目標プライマリ圧Ppと目標セカンダリ圧Psとの油圧比(Pp/Ps)を算出し、目標プライマリ圧算出部63は、この油圧比に目標セカンダリ圧Psを乗算することにより目標プライマリ圧Ppを算出する。
また、CVT制御ユニット47は、目標プライマリ圧Ppをフィードバック制御するため、実変速比算出部64、フィードバック値算出部65、加算部66を備えている。実変速比算出部64は、実プライマリ回転数Np’と実セカンダリ回転数Ns’とに基づいて実変速比i’を算出し、フィードバック値算出部65は、実変速比i’と目標変速比iとに基づいてフィードバック値を算出する。次いで、加算部66において目標プライマリ圧Ppにフィードバック値が加算され、目標プライマリ圧Ppはフィードバック制御される。そして、フィードバック制御された目標プライマリ圧Ppに基づいて、プライマリ圧制御弁43が制御され、プライマリプーリ20のプーリ溝幅が調整される。
さらに、CVT制御ユニット47は、目標セカンダリ圧Psを算出するため、入力トルク算出部67、必要セカンダリ圧算出部68、目標セカンダリ圧算出部69を備えている。入力トルク算出部67は、エンジン回転数Neとスロットル開度Toとに基づいて、エンジン11からプライマリ軸12に入力される入力トルクTiを算出し、必要セカンダリ圧算出部68は、目標変速比iに基づいて必要セカンダリ圧Psnを算出する。これらの入力トルクTiと必要セカンダリ圧Psnとは目標セカンダリ圧算出部69に入力され、目標セカンダリ圧算出部69により目標セカンダリ圧Psが算出される。そして、目標セカンダリ圧Psに基づいてセカンダリ圧制御弁44が制御され、セカンダリプーリ21は伝達トルク容量に見合った締め付け力によって駆動ベルト22を締め付けるようになっている。
図4は目標プライマリ回転数Npを算出する際に参照される変速特性マップの一例を示す線図である。図4に示すように、変速特性マップには、最大変速比(ロー状態)を示す特性線Lowと最大変速比(オーバードライブ状態)を示す特性線ODとが設定されており、これら特性線Low,ODの間にはスロットル開度Toに対応した複数の特性線T1〜T8が設定されている。スロットル開度Toが低い場合には特性線T1に従って目標プライマリ回転数Npが算出され、スロットル開度Toが高くなるにつれて目標プライマリ回転数Npは特性線T2〜T7に従って算出される。そして、スロットル開度Toが全開となった場合には、特性線T8に従って目標プライマリ回転数Npが算出されるようになっている。また、低車速域でスロットル開度Toが増大した場合には、特性線Lowに沿って目標プライマリ回転数Npが設定される一方、高車速域でスロットル開度Toが減少した場合には、特性線ODに沿って目標プライマリ回転数Npが設定されることになる。
たとえば、車両を停止状態から加速させるため、アクセルペダルを全開まで踏み込んだ場合には、目標プライマリ回転数Npは特性線Lowに沿ってA点に達し、変速比をオーバードライブ側に変化させるとともに目標プライマリ回転数Npを若干上昇させながらB点に達する。この状態からアクセルペダルを開放した場合には、目標プライマリ回転数Npは特性線ODに沿ってC点に達し、変速比をロー側に変化させるとともに目標プライマリ回転数Npを若干低下させながらD点に達する。そして、車両は変速比をロー側に維持した状態で停止することになる。なお、実際の走行においては、運転者の操作によってスロットル開度Toが変化するため、図4にA〜E点で示された太線の範囲内において目標プライマリ回転数Npが適宜設定されることになる。
以下、プライマリプーリ20およびセカンダリプーリ21に対して作動油を供給制御する油圧制御回路の構成について説明する。図5は油圧制御回路の一部を示す回路図であり、図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
図5に示すように、オイルポンプ40から延びるライン圧路41にはライン圧制御弁42の調圧ポート42aが接続されており、このライン圧制御弁42を介してライン圧が調圧されている。また、ライン圧路41は分岐するようになっており、一方のライン圧路41aはプライマリ圧制御弁43の入力ポート43aに接続され、他方のライン圧路41bはセカンダリ圧制御弁44の入力ポート44aに接続されている。そして、プライマリ圧制御弁43の出力ポート43cはプライマリ圧路45を介してプライマリプーリ20の作動油室25に接続され、セカンダリ圧制御弁44の出力ポート44cはセカンダリ圧路46を介してセカンダリプーリ21の作動油室28に接続されている。
また、プライマリ圧制御弁43とプライマリプーリ20とを接続するプライマリ圧路45には、プライマリ圧Ppが上限圧力を超えることのないよう減圧するフェールセーフ弁70が設けられている。このフェールセーフ弁70は、弁収容孔が形成されたハウジング71と、弁収容孔に移動自在に収容されるスプール弁軸72とを備えており、ハウジング71には、プライマリ圧制御弁43の出力ポート43cに連通する入力ポート70a、プライマリプーリ20の作動油室25に連通する出力ポート70b、オイルパンに連通する排出ポート70c、そしてプライマリ圧路45に連通するフィードバックポート70dが形成されている。フィードバックポート70dが連通するフィードバック圧室70eは、スプール弁軸72に設けられた受圧面積の異なる2つの弁体72a,72bによって区画されるため、プライマリ圧Ppの大きさに応じた推力がスプール弁軸72に作用することになる。さらに、スプール弁軸72の端部には、ばね部材73が組み付けられており、プライマリ圧Ppの推力に対向してスプール弁軸72はばね力によって付勢されている。
このフェールセーフ弁70は、フィードバック圧室70eに供給されるプライマリ圧Ppの大きさに応じて切り換えられるようになっており、プライマリ圧Ppが所定の上限圧力を上回ると、スプール弁軸72がばね力に抗して矢印a方向に移動するため、出力ポート70bと排出ポート70cとが連通する排出状態に切り換えられる。一方、プライマリ圧Ppが上限圧力を下回ると、スプール弁軸72がばね力によって矢印b方向に移動するため、入力ポート70aと出力ポート70bとが連通する連通状態に切り換えられることになる。つまり、フェールセーフ弁70はプライマリ圧Ppの大きさに基づいて作動するリリーフ弁となっており、フェールセーフ弁70によってプライマリプーリ20に流れ込むプライマリ圧Ppの上限圧力を制御することが可能となっている。
なお、オイルポンプ40から吐出される作動油の供給先としては、プライマリプーリ20やセカンダリプーリ21だけに限られることはなく、潤滑回路80を介して駆動ベルト22などの摺動部に潤滑油として供給されるとともに、クラッチ回路81を介して前進用クラッチ35や後退用ブレーキ36などに供給されている。潤滑回路80は潤滑圧路82を介してライン圧制御弁42の排出ポート42cに接続されており、潤滑圧路82には潤滑圧を調圧する潤滑圧制御弁83が設けられている。また、クラッチ回路81はクラッチ圧路84を介してライン圧路41に接続されており、クラッチ圧路84にはクラッチ圧を調圧するクラッチ圧制御弁85が設けられている。
また、クラッチ圧路84は分岐するようになっており、分岐したクラッチ圧路84aはドレン弁とも言われるパイロット圧制御弁86の入力ポート86aに接続されている。このパイロット圧制御弁86の出力ポート86bは、パイロット圧路87を介してフェールセーフ弁70のパイロット圧室70fに接続されており、パイロット圧制御弁86によってフェールセーフ弁70を切換制御することが可能となっている。さらに、パイロット圧制御弁86は、CVT制御ユニット47からの制御信号に基づき作動する電磁切換弁となっており、パイロット圧制御弁86に対して通電がなされると、パイロット圧室70fに向けて作動油圧としてのパイロット圧が供給され、フェールセーフ弁70は排出状態に切り換えられる一方、パイロット圧制御弁86に対する通電が遮断されると、パイロット圧室70fからパイロット圧が排出され、フェールセーフ弁70は連通状態に切り換えられることになる。
なお、パイロット圧制御弁86は、プライマリ圧制御弁43が断線等のフェール状態に陥った場合に、CVT制御ユニット47によって制御される切換弁となっている。つまり、プライマリ圧制御弁43の正常状態にあっては、パイロット圧制御弁86に対する通電は遮断されており、プライマリ圧制御弁43とプライマリプーリ20との間に設けられるフェールセーフ弁70は、プライマリ圧Ppのみによって制御されるリリーフ弁として機能するようになっている。
続いて、プライマリ圧制御弁43がフェール状態に陥った場合に実行されるフェールセーフ変速制御について説明する。図6はCVT制御ユニット47によって実行されるフェールセーフ変速制御の手順の一例を示すフローチャートである。また、図7は図5と同じ範囲で油圧制御回路を示す回路図であり、フェールセーフ変速制御によって変速比がロー側にダウンシフトされた状態を示している。
フェール制御手段として機能するCVT制御ユニット47により、プライマリ圧制御弁43のフェール状態が検出されると、CVT制御ユニット47は以下の手順に従ってフェールセーフ変速制御を実行する。図6に示すように、まず、ステップS1では車速Vと実変速比i’とが検出され、ステップS2では車速Vに基づき判定変速比iaが設定される。続くステップS3では、実変速比i’と判定変速比iaとが比較判定され、判定変速比iaを実変速比i’が上回る場合、つまり判定変速比iaよりもロー側にダウンシフトされる場合には、ステップS4に進み、パイロット圧制御弁86に対する通電が遮断され、変速比がオーバードライブ側にアップシフトされることになる。つまり、図5に示すように、パイロット圧制御弁86からパイロット圧が出力されないため、フェールセーフ弁70は連通状態に切り換えられ、プライマリ圧Ppがフェールセーフ弁70を介してプライマリプーリ20に供給されることになる。このように、フェール時にあっては、車速Vに応じて設定される判定変速比iaを上回ることのないようアップシフトされるため、車両の急減速を回避することができ、車両の安全性を向上させることが可能となる。なお、プライマリ圧制御弁43は非通電時に連通する常開式の電磁弁であるため、フェール状態に陥った場合にはライン圧とほぼ同じ圧力のプライマリ圧Ppが出力されることになる。
続いて、ステップS5では、車速Vと判定車速Vaとが比較判定され、車速Vが所定車速である判定車速Vaを上回る場合には、再びステップS1から変速制御が実行される一方、車速Vが判定車速Vaを下回る場合には、ステップS6に進み、パイロット圧制御弁86に対して通電がなされ、変速比がロー側にダウンシフトされることになる。つまり、図7に示すように、パイロット圧制御弁86からパイロット圧が出力されるため、フェールセーフ弁70は排出状態に切り換えられ、フェールセーフ弁70を介してプライマリプーリ20からプライマリ圧Ppが排出されることになる。
このように、車速Vが低下した場合には、変速比をロー側にダウンシフトさせるようにしたので、大きな駆動力が要求される車両の再発進や再加速に備えることが可能となる。なお、ステップS5に示すように、ダウンシフトが必要な車両状態を車速Vに基づいて検出しているが、これに限られることはなく、アクセルペダルやブレーキペダルの踏み込み状態に基づいてダウンシフトが必要な車両状態を検出するようにしても良い。
次いで、ステップS7では車速Vが再び検出され、ステップS8では車速Vと所定車速である判定車速Vbとが比較判定される。なお、ステップS8において比較判定される判定車速Vbは前述した判定車速Vaよりも高速側に設定されている。ステップS8において、車速Vが判定車速Vbを下回ると判定された場合には、再びステップS6から変速制御が実行される一方、車速Vが判定車速Vbを上回ると判定された場合には、車両が低車速域を脱した状態であるため、続くステップS9において、車速Vに基づき判定スロットル開度としての判定開度Taが設定され、ステップS10においてスロットル開度Toが検出される。
続くステップS11では、スロットル開度Toと判定開度Taとが比較判定され、スロットル開度Toが判定開度Taを上回る場合、つまり加速が要求されている場合には、続くステップS12において、パイロット圧制御弁86を所定時間に渡って通電することにより、変速比をロー側にダウンシフトさせて加速性能を確保することが可能となっている。一方、ステップS11において、スロットル開度Toが判定開度Taを下回る場合、つまり加速が要求されていない場合には、ステップS13に進み、パイロット圧制御弁86に対する通電が遮断され、変速比がオーバードライブ側にアップシフトされることになる。このように、車速Vやスロットル開度Toに基づいて変速制御を実行するようにしたので、プライマリ圧制御弁43がフェール状態に陥った場合であっても、走行状況に応じて適切な変速制御を実行することが可能となる。
これまで説明したように、フェールセーフ弁70の切換制御は、電磁切換弁であるパイロット圧制御弁86によって行われており、図5に示すように、パイロット圧制御弁86に対する通電が遮断されると、パイロット圧制御弁86によるパイロット圧の供給が遮断され、フェールセーフ弁70は連通状態に切り換えられる。一方、図7に示すように、パイロット圧制御弁86に対して通電がなされると、パイロット圧制御弁86からフェールセーフ弁70に対してパイロット圧が供給され、フェールセーフ弁70は排出状態に切り換えられる。つまり、プライマリ圧制御弁43がフェール状態に陥った場合であっても、CVT制御ユニット47によってパイロット圧制御弁86を制御することにより、フェールセーフ弁70を連通状態と排出状態とに切り換えることができるため、プライマリプーリ20に対してプライマリ圧Ppを給排制御することができ、変速比をロー状態からオーバードライブ状態まで自在に制御することが可能となる。
図8は図5の油圧回路図を概略的に示すブロック図である。なお、図5に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。図5に示すように、本発明の変速制御装置にあっては、プライマリ圧制御弁43とプライマリプーリ20との間にフェールセーフ弁70を設けるとともに、このフェールセーフ弁70を切換制御するパイロット圧制御弁86を設けるようにしたので、プライマリ圧制御弁43がフェール状態に陥った場合であっても、パイロット圧制御弁86を介してフェールセーフ弁70を切り換えることにより、プライマリプーリ20に対するプライマリ圧Ppの給排制御が可能となる。
これにより、フェール状態に陥った車両を再発進させる場合には、変速比をロー側に制御することが可能となり、車両の発進性能を向上させることができる一方、再発進後には走行状況に応じて変速比をオーバードライブ側に制御することができるため、車両を低速走行から高速走行まで幅広いレンジで走行させることが可能となる。また、従来の無段変速機のように、オーバードライブ側に変速させた状態のもとで車両を再発進させる必要がないため、フェール状態を想定してセカンダリ圧Psを引き上げる必要が無いだけでなく、油圧制御回路、プライマリプーリ20、セカンダリプーリ21、駆動ベルト22など、無段変速機10を構成する各部材にかかる負荷を抑制することができる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、図示する場合には、プライマリプーリ20に供給されるプライマリ圧Ppを制御することにより、無段変速機10の変速比を制御するようにしているが、これに限られることはなく、セカンダリプーリ21に供給されるセカンダリ圧Psを制御することにより、無段変速機10の変速比を制御するようにしても良い。つまり、セカンダリ圧制御弁44を変速比制御弁として機能させるとともに、セカンダリ圧制御弁44とセカンダリプーリ21との間にフェールセーフ弁70を設けることにより、セカンダリプーリ21を第1プーリとして機能させるようにしても良い。
また、フェールセーフ弁70を駆動制御するためのパイロット圧制御弁86として、電磁切換弁が組み込まれているが、これに限られることはなく、パイロット圧制御弁86として電磁圧力制御弁などを採用するようにしても良い。電磁圧力制御弁を採用することにより、フェールセーフ弁70を滑らかに切り換えることが可能となるため、プライマリ圧制御弁43がフェール状態に陥った場合であっても変速品質を維持することができる。
本発明の一実施の形態である変速制御装置によって制御される無段変速機を示すスケルトン図である。 無段変速機の油圧制御系および電子制御系を示す概略図である。 CVT制御ユニットの変速制御系を示すブロック図である。 目標プライマリ回転数を算出する際に参照される変速特性マップの一例を示す線図である。 油圧制御回路の一部を示す回路図である。 CVT制御ユニットによって実行されるフェールセーフ変速制御の手順の一例を示すフローチャートである。 油圧制御回路の一部を示す回路図である。 図5の油圧回路図を概略的に示すブロック図である。
符号の説明
10 無段変速機
20 プライマリプーリ(第1プーリ)
21 セカンダリプーリ(第2プーリ)
22 駆動ベルト
40 オイルポンプ(油圧供給源)
43 プライマリ圧制御弁(変速比制御弁)
47 CVT制御ユニット(フェール制御手段)
70 フェールセーフ弁
86 パイロット圧制御弁
Pp プライマリ圧(変速油圧)
V 車速
Va 判定車速(所定車速)
Vb 判定車速(所定車速)
To スロットル開度
Ta 判定開度(判定スロットル開度)
i’ 実変速比
ia 判定変速比

Claims (6)

  1. 第1プーリと第2プーリとに駆動ベルトが巻き付けられ、前記第1プーリのプーリ溝幅を制御することによって前記駆動ベルトの巻き付け径を無段階に変化させる無段変速機の変速制御装置であって、
    油圧供給源と前記第1プーリとの間に設けられ、前記第1プーリに供給される変速油圧を調圧する変速比制御弁と、
    前記変速比制御弁と前記第1プーリとの間に設けられ、前記第1プーリに変速油圧を供給する連通状態と、前記第1プーリから変速油圧を排出する排出状態とに切り換えられるフェールセーフ弁と、
    前記油圧供給源と前記フェールセーフ弁との間に設けられ、前記フェールセーフ弁のパイロット圧室に作動油圧を供給するパイロット圧制御弁と、
    前記変速比制御弁が連通状態となるフェール時には、前記パイロット圧制御弁に駆動信号を出力して前記フェールセーフ弁を連通状態と排出状態とに切り換えるフェール制御手段とを有することを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  2. 請求項1記載の無段変速機の変速制御装置において、前記フェールセーフ弁は変速油圧に基づいて作動するリリーフ弁であり、変速油圧が上限圧力を下回るときには連通状態に切り換えられる一方、変速油圧が上限圧力を上回るときには排出状態に切り換えられることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  3. 請求項1または2記載の無段変速機の変速制御装置において、車速が所定車速を下回るときには、前記フェール制御手段は前記フェールセーフ弁を切り換えてロー側に変速させることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の無段変速機の変速制御装置において、前記フェール制御手段は、車速が所定車速を上回った状態のもとで、スロットル開度が判定スロットル開度を上回るときには、前記フェールセーフ弁を切り換えてロー側に変速させる一方、スロットル開度が判定スロットル開度を下回るときには、前記フェールセーフ弁を切り換えてオーバードライブ側に変速させることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  5. 請求項4記載の無段変速機の変速制御装置において、前記判定スロットル開度は車速に基づいて設定されることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の無段変速機の変速制御装置において、前記フェール制御手段は、車速に基づき設定される判定変速比を実変速比が上回るときには、前記フェールセーフ弁を切り換えてオーバードライブ側に変速させることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
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