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JP4799293B2 - 無線装置 - Google Patents

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Description

本発明は、無線装置に関し、特に複数のサブキャリアを使用する無線装置に関する。
高速なデータ伝送を可能にしつつ、マルチパス環境下に強い通信方式として、マルチキャリア方式のひとつであるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式がある。このOFDM変調方式は、無線LAN(Local Area Network)の標準化規格であるIEEE802.11a,gやHIPERLAN/2に適用されている。このような無線LANにおけるパケット信号は、一般的に時間と共に変動する伝送路環境を介して伝送され、かつ周波数選択性フェージングの影響を受けるので、受信装置は一般的に伝送路推定を動的に実行する。
受信装置が伝送路推定を実行するために、パケット信号内に、2種類の既知信号が設けられている。ひとつは、パケット信号の先頭部分において、すべてのキャリアに対して設けられた既知信号であり、いわゆるプリアンブルやトレーニング信号といわれるものである。もうひとつは、パケット信号のデータ区間中に一部のキャリアに対して設けられた既知信号であり、いわゆるパイロット信号といわれるものである(例えば、非特許文献1参照。)。
Sinem Coleri,Mustafa Ergen,Anuj Puri, and Ahmad Bahai,"Channel Estimation Techniques Based on Pilot Arrangement in OFDM Systems",IEEE Transactions on broadcasting,vol.48,No.3,pp.223−229,Sept.2002.
ワイヤレス通信において、周波数資源を有効利用するための技術のひとつが、アダプティブアレイアンテナ技術である。アダプティブアレイアンテナ技術は、複数のアンテナのそれぞれにおいて、処理対象の信号の振幅と位相を制御することによって、アンテナの指向性パターンを制御する。このようなアダプティブアレイアンテナ技術を利用して、データレートを高速化するための技術にMIMO(Multiple Input Multiple Output)システムがある。当該MIMOシステムは、送信装置と受信装置がそれぞれ複数のアンテナを備え、並列に送信されるべきパケット信号を設定する(以下、パケット信号において並列に送信されるべきデータのそれぞれを「系列」という)。すなわち、送信装置と受信装置との間の通信に対して、最大アンテナ数までの系列を設定することによって、データレートを向上させる。
さらに、このようなMIMOシステムに、OFDM変調方式を組み合わせると、データレートはさらに高速化される。MIMOシステムにおいて、データの通信に使用すべきアンテナの数を増減することによって、データレートの調節も可能になる。さらに、適応変調の適用によって、データレートの調節がより詳細になされる。このようなデータレートの調節を確実に実行するために、送信装置は、受信装置から、受信装置との間の無線伝送路に適したデータレートに関する情報(以下、「レート情報」という)を取得すべきである。また、このようなレート情報の精度を高めるために、受信装置では、送信装置に含まれた複数のアンテナと、受信装置に含まれた複数のアンテナ間のそれぞれの伝送路特性を取得する方が望ましい。
また、MIMOシステムでの送信装置と受信装置におけるアンテナの指向性パターンの組合せは、例えば、以下のとおりである。ひとつは、送信装置のアンテナがオムニパターンを有し、受信装置のアンテナがアダプティブアレイ信号処理でのパターンを有する場合である。別のものは、送信装置のアンテナと受信装置のアンテナの両者が、アダプティブアレイ信号処理でのパターンを有する場合である。これは、ビームフォーミングともいわれる。前者の方がシステムを簡略化できるが、後者の方が、アンテナの指向性パターンをより詳細に制御できるので、特性を向上できる。後者の場合、送信装置では、送信のアダプティブアレイ信号処理を実行するために、受信装置から、伝送路推定用の既知信号を予め受信する必要がある。
以上のような要求において、レート情報の精度、およびビームフォーミングの精度を向上させるために、伝送路特性の特性の取得が高い精度にてなされる必要がある。伝送路特性の取得の精度を向上させるために、送信装置に含まれた複数のアンテナと、受信装置に含まれた複数のアンテナ間のそれぞれの伝送路特性が取得される方が望ましい。そのため、送信装置あるいは受信装置は、すべてのアンテナから伝送路推定用の既知信号を送信する。以下、データの通信に使用すべきアンテナの本数に関係なく、複数のアンテナから送信される伝送路推定用の既知信号を「トレーニング信号」という。
一方、基地局装置が複数の端末装置との通信を多重化するために、CSMA(Carrier Sense Multiple Access)が実行される。このような場合において伝送効率を向上させるために、パケット信号の長さは長い方が望ましい。そのため、基地局装置は、複数の端末装置に対するデータをひとつのパケット信号にまとめる。端末装置は、受信したパケット信号の中から、自らへ送信されたデータを抽出する。
基地局装置と端末装置との間における無線伝送路は、一般的に時間とともに変動する。そのため、パケット信号の受信開始のタイミングと受信終了とのタイミングとの間において、無線伝送路が変動している場合もある。このような場合であっても、パケット信号を受信している間にわたって、無線伝送路の変動に追従するようにウエイト等を端末装置が更新していれば、受信特性の悪化は小さくてすむ。一方、端末装置における処理量の低減や回路規模の削減を目的とする場合、パケット信号を受信する際にウエイトを設定し、パケット信号を受信している間において当該ウエイトが固定的に使用される。この場合、パケット信号の長さが長くなると、受信特性の悪化が大きくなる。特に、複数の端末装置に対するデータがひとつのパケット信号に含まれる場合、パケット信号の後方に配置されたデータを受信すべき端末装置にとって、すべてのデータを受信できない可能性が大きくなる。
本発明者はこうした状況下、以下の課題を認識するに至った。伝送効率を低下させないためにも、パケット信号の中間に伝送路推定用既知信号を配置させたくない。また、伝送路推定用既知信号をパケット信号の途中に配置させない場合でも、受信特性の悪化を抑制したい。また、パケット信号に複数のデータ信号を含ませる場合であっても、伝送路推定の精度を悪化を抑制したい。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、伝送路推定用の既知信号を伝送する際に、伝送効率の低下を抑制しながら、伝送路推定の精度を向上させる無線装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の無線装置は、少なくともひとつの系列によって形成されるデータ信号を複数入力する入力部と、入力部において入力した複数のデータ信号のうち、高いデータレートのデータ信号を前方にするように複数のデータ信号を配置することによって、パケット信号を生成する生成部と、生成部において生成したパケット信号に含まれた複数のデータ信号のそれぞれの送信先となる端末装置のうち、データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号を送信すべき端末装置を特定する特定部と、特定部において特定した端末装置に送信すべきデータ信号が、生成部において生成したパケット信号の前方の部分に含まれていれば、先頭のデータ信号の前段に、データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号を付加する手段と、特定部において特定した端末装置に送信すべきデータ信号が、生成部において生成したパケット信号の前方の部分に含まれていなければ、当該データ信号をパケット信号の後方の部分に移動させた後に、移動したデータ信号の前段に、データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号を付加しながら、先頭のデータ信号の前段に、データ信号の系列数に応じた系列数の既知信号を付加する手段とを含む付加部と、付加部において既知信号を付加したパケット信号を送信する送信部と、を備える。
この態様によると、パケット信号の先頭部分に、データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号を配置するので、パケット信号に対する既知信号と、データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号とを共用でき、伝送効率の低下を抑制できる。
生成部は、パケット信号の前方の部分に高いデータレートのデータ信号を配置し、パケット信号の後方の部分に近づくにしたがって、より低いデータレートのデータ信号を配置してもよい。この場合、低いデータレートが要求される端末装置をパケット信号の後方に配置するので受信特性の悪化を抑制できる。
生成部は、パケット信号を生成する際に、データ信号を送信すべき端末装置が示された制御信号を複数のデータ信号のそれぞれに付加してもよい。
データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号を送信してもらいたい旨の要求を端末装置から受けつける受付部をさらに備えてもよい。特定部は、受付部において受けつけた要求に対応した端末装置を特定してもよい。
特定部は、データレートに関する情報を一定期間にわたって受けつけていない端末装置を特定し、付加部は、特定部において特定した端末装置に送信すべきデータ信号に、データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号を付加する際に、データレートに関する情報を送信してもらいたい旨の要求も付加してもよい。
付加部は、データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号を付加する際に、データ信号が配置される主系列と、データ信号が配置されない副系列とのそれぞれに既知信号を付加しており、主系列でのデータ信号と既知信号が配置されるタイミング以外のタイミングに、副系列での既知信号を配置してもよい。この場合、データ信号が配置される系列において既知信号が配置されるタイミングと、データ信号が配置されない系列において既知信号が配置されるタイミングとをずらすことによって、両者の受信電力を近くでき、伝送路特定の推定の悪化を抑制できる。
付加部は、主系列のうちのひとつに配置された既知信号を基準として、他の系列に配置された既知信号に、既知信号内での循環的なタイミングシフトを行いながら、副系列に配置された付加的な既知信号に対してもタイミングシフトを行っており、かつタイミングシフト量には予め優先度を設けており、主系列に対して、優先度の高いタイミングシフト量から順にタイミングシフト量を使用し、副系列に対しても、優先度の高いタイミングシフト量から順にタイミングシフト量を使用してもよい。この場合、タイミングシフト量に優先度を規定し、データ信号が配置される系列とデータ信号が配置されない系列とのそれぞれに対して、高い優先度から順に使用することによって、同一のタイミングシフト量を多く使用できる。
付加部は、主系列のうちのひとつに配置された既知信号を基準として、他の系列に配置された既知信号に、既知信号内での循環的なタイミングシフトを行いながら、副系列に配置された付加的な既知信号に対してもタイミングシフトを行っており、かつ複数の系列に対してそれぞれ異なった値のタイミングシフト量が設定されていてもよい。この場合、複数の系列に配置された既知信号のそれぞれに対するタイミングシフト量は同一の値であるので、データ信号が配置される系列が変更されても、受信側において容易に対応できる。
付加部において既知信号および付加的な既知信号は、時間領域において所定の単位が繰り返されることによって形成されており、かつ所定の単位の符号の組合せは、系列間において直交関係が成立するように規定されておりながら、複数の系列のそれぞれに対し、所定の単位の符号の組合せが固定されるように規定されていてもよい。この場合、符号の組合せが固定されているので、処理を簡易にできる。
「所定の単位」は、時間領域において規定される場合だけでなく、周波数領域において規定される場合であってもよい。後者の場合、所定の単位を時間領域に変換したときに、複数の単位のそれぞれに対応した期間が異なっていてもよい。
付加部において既知信号および付加的な既知信号は、時間領域において所定の単位が繰り返されることによって形成されており、かつ所定の単位の符号の組合せは、系列間において直交関係が成立するように規定されておりながら、所定の単位の符号の組合せには予め優先度を設けており、主系列に対して、優先度の高い符号の組合せから順に符号の組合せを使用し、副系列に対しても、優先度の高い符号の組合せから順に符号の組合せを使用してもよい。この場合、優先度の高い符号の組合せから順に符号の組合せを使用するので、データ信号が配置されない系列と、データ信号が配置される系列に対する伝送路特性の計算に対して、共通の回路を使用できる。
付加部は、データ信号に対しても循環的なタイミングシフトを行っており、タイミングシフト量として、主系列に対するタイミングシフト量を使用してもよい。この場合、データ信号を復調できる。
付加部において既知信号を付加したパケット信号のうち、少なくとも既知信号が付加されたデータ信号を変形し、変形したデータ信号を送信部に出力する変形部をさらに備えてもよい。変形部は、主系列の数を複数の系列の数まで拡張した後に、拡張された系列に対して、拡張された系列のうちのひとつに配置された既知信号を基準として、他の系列に配置された既知信号に、既知信号内での循環的なタイミングシフトを行う第1処理部と、副系列の数を複数の系列の数まで拡張した後に、拡張された系列に対して、拡張された系列のうちのひとつに配置された付加的な既知信号を基準として、他の系列に配置された付加的な既知信号に、付加的な既知信号内での循環的なタイミングシフトを行う第2処理部とを備えてもよい。第1処理部において拡張された系列に対して使用されるタイミングシフト量のそれぞれと、第2処理部において拡張された系列のそれぞれに対して使用されるタイミングシフト量のそれぞれとが、同一の値になるように設定されていてもよい。
付加部におけるタイミングシフト量の絶対値は、変形部におけるタイミングシフト量の絶対値よりも大きな値になるように設定されていてもよい。
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、伝送路推定用の既知信号を伝送する際に、伝送効率の低下を抑制しながら、伝送路推定の精度を向上できる。
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、少なくともふたつの無線装置によって構成されるMIMOシステムに関する。無線装置のうちの一方は、送信装置に相当し、他方は、受信装置に相当する。送信装置は、複数の系列によって構成されるパケット信号を生成する。ここでは、特に、送信装置がトレーニング信号を送信する際の処理を説明する。そのため、前述のレート情報による適応変調処理や、ビームフォーミングについては、公知の技術を使用すればよく、ここでは説明を省略する。
また、送信装置は、基地局装置に相当する。基地局装置は、基本的に複数の端末装置に対して、CSMAを実行する。また、伝送効率を向上させるために、基地局装置は複数のデータをひとつのパケット信号にまとめてから送信する。前提として、端末装置に対するデータに対する速度は、可変に設定される。例えば、誤り訂正の符号化率と変調方式とが、可変に設定される。なお、データの速度は、MIMOにおける系列の数を増減することによっても可変に設定されるが、ここでは説明を明瞭にするために、ひとつのパケット信号の中での系列の数は変化しないものとする。また、複数の端末装置のそれぞれは、パケット信号を受信する際に、パケット信号の先頭部分に配置された既知信号からウエイトを導出し、当該ウエイトを使用しながらアダプティブアレイ信号処理を実行する。すなわち、パケット信号の途中においてウエイトの更新はなされない。このような状況下において、パケット信号の後方に配置されたデータを受信すべき端末装置に対して、受信特性の悪化を抑制させるための対策が必要になる。
一方、端末装置にトレーニング信号を送信する場合、当該端末装置へのデータ信号の前段にトレーニング信号が配置される。また、端末装置において、トレーニング信号による伝送路推定は高い精度にて実施させたいという要求があるので、複数のデータ信号とは独立するようにトレーニング信号を送信したい。なお、トレーニング信号を付加する場合であっても、可能な限り伝送効率の低下を抑制したい。そのため、本実施例では、以下の処理を実行する。
基地局装置は、パケット信号の前方の部分にデータレートの高いデータを配置させ、パケット信号の後方の部分にデータレートの低いデータを配置させる。データの速度が変調方式のみによって規定される場合、基地局装置は、変調多値数の大きい変調方式、例えば、64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)のデータを前方の部分に配置させ、変調多値数の小さい変調方式、例えば、BPSK(Binary Phase Shift Keying)のデータを後方の部分に配置させる。端末装置は、パケット信号の中から自らが宛先となるデータを取得し、取得したデータを復調する。データレートの高いデータを復調すべき端末装置は、パケット信号の前方の部分に配置されたデータを取得する。
そのため、ウエイトを導出したタイミングと、データが配置されたタイミングとの時間差が小さくなる。その結果、無線伝送路の変動によるウエイトの誤差が小さくなり、受信特性の悪化も小さくなる。一方、データレートの低いデータを復調すべき端末装置は、パケット信号の後方の部分に配置されたデータを取得する。そのため、ウエイトを導出したタイミングと、データが配置されたタイミングとの時間差が大きくなり、無線伝送路の変動によるウエイトの誤差も大きくなる。しかしながら、データレートが低ければ、ウエイトの誤差による受信特性の悪化が抑制される。
また、基地局装置は、トレーニング信号を送信すべき端末装置を特定する。特定した端末装置に対するデータ信号がパケット信号の先頭部分に配置していれば、トレーニング信号をパケット信号の先頭部分に付加する。このような処理によって、パケット信号に対する既知信号とトレーニング信号とを共用できるので、伝送効率の低下を抑制できる。一方、特定した端末装置に対するデータ信号がパケット信号の先頭部分に配置していなければ、パケット信号の最後部に当該データを移動させ、移動させたデータの前段にトレーニング信号を付加する。このような処理によって、複数の他のデータ信号とは独立にトレーニング信号が送信されるので、端末装置における伝送路推定の精度を向上させられる。
本発明の別の課題は、以下のように示される。トレーニング信号が送信される場合、伝送路推定用の既知信号(以下、「伝送路推定用既知信号」という)が含まれる系列の数とデータが含まれる系列の数が異なる。また、伝送路推定用既知信号の前段には、受信側のAGC(Automatic Gain Control)を設定するための既知信号(以下、「AGC用既知信号」という)が配置される。データが配置される系列のみにAGC用既知信号が配置される場合、伝送路推定用既知信号のひとつは、その前段にAGC用既知信号が受信されていない状態において、受信される。特に、受信側において、AGC用既知信号の強度が大きくなければ、AGCにおける利得は、ある程度大きい値に設定される。
その際に、AGC用既知信号が配置されていない系列の伝送路推定用既知信号の強度が大きければ、当該伝送路推定用既知信号が、AGCによって歪みが生じるほど増幅されかねない。その結果、当該伝送路推定用既知信号にもとづく伝送路推定の誤差が大きくなる。一方、伝送路推定用既知信号が配置される系列にAGC用既知信号が配置される場合、AGC用既知信号が配置される系列の数と、データが配置される系列の数が異なるので、データの復調にとって、AGC用既知信号によって設定された利得では、適していない可能性がある。その結果、復調されたデータに誤りが生じやすくなる。
これに対応するため、基地局装置は、トレーニング信号を生成する際に、AGC用既知信号の後段に伝送路推定用既知信号を配置する(以下、この系列を「主系列」という)。その後段に、基地局装置は、別の系列(以下、「副系列」という)を設け、副系列にも伝送路推定用既知信号を配置する。さらにその後段にて、基地局装置は、主系列にデータ信号を配置する。
図1は、本発明の実施例に係るマルチキャリア信号のスペクトルを示す。特に、図1は、OFDM変調方式での信号のスペクトルを示す。OFDM変調方式における複数のキャリアのひとつをサブキャリアと一般的に呼ぶが、ここではひとつのサブキャリアを「サブキャリア番号」によって指定するものとする。MIMOシステムには、サブキャリア番号「−28」から「28」までの56サブキャリアが規定されている。なお、サブキャリア番号「0」は、ベースバンド信号における直流成分の影響を低減するため、ヌルに設定されている。一方、MIMOシステムに対応していないシステム(以下、「従来システム」という)には、サブキャリア番号「−26」から「26」までの52サブキャリアが規定されている。なお、従来システムの一例は、IEEE802.11a規格に準拠した無線LANである。また、複数のサブキャリアにて構成されたひとつの信号の単位であって、かつ時間領域のひとつの信号の単位は、「OFDMシンボル」と呼ばれるものとする。
また、それぞれのサブキャリアは、可変に設定された変調方式によって変調されている。変調方式には、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、64QAMのいずれかが使用される。
また、これらの信号には、誤り訂正方式として、畳み込み符号化が適用されている。畳み込み符号化の符号化率は、1/2、3/4等に設定される。さらに、並列に送信すべきデータの数は、可変に設定される。なお、データは、パケット信号として送信されており、並列に送信されるパケット信号のそれぞれは、前述のごとく「系列」と呼ばれる。その結果、変調方式、符号化率、系列の数の値が可変に設定されることによって、データレートも可変に設定される。なお、「データレート」は、これらの任意の組合せによって決定されてもよいし、これらのうちのひとつによって決定されてもよい。なお、従来システムにおいて、変調方式がBPSKであり、符号化率が1/2である場合、データレートは6Mbpsになる。一方、変調方式がBPSKであり、符号化率が3/4である場合、データレートは9Mbpsになる。
図2は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、無線装置10と総称される第1無線装置10a、第2無線装置10bを含む。また、第1無線装置10aは、アンテナ12と総称される第1アンテナ12a、第2アンテナ12b、第3アンテナ12c、第4アンテナ12dを含み、第2無線装置10bは、アンテナ14と総称される第1アンテナ14a、第2アンテナ14b、第3アンテナ14c、第4アンテナ14dを含む。ここで、第1無線装置10aが、送信装置および基地局装置に対応し、第2無線装置10bが、受信装置および端末装置に対応する。
通信システム100の構成として、MIMOシステムの概略を説明する。データは、第1無線装置10aから第2無線装置10bに送信されているものとする。第1無線装置10aは、第1アンテナ12aから第4アンテナ12dのそれぞれから、複数の系列のデータをそれぞれ送信する。その結果、データレートが高速になる。第2無線装置10bは、第1アンテナ14aから第4アンテナ14dによって、複数の系列のデータを受信する。さらに、第2無線装置10bは、アダプティブアレイ信号処理によって、受信したデータを分離して、複数の系列のデータを独立に復調する。
ここで、アンテナ12の本数は「4」であり、アンテナ14の本数も「4」であるので、アンテナ12とアンテナ14の間の伝送路の組合せは「16」になる。第iアンテナ12iから第jアンテナ14jとの間の伝送路特性をhijと示す。図中において、第1アンテナ12aと第1アンテナ14aとの間の伝送路特性がh11、第1アンテナ12aから第2アンテナ14bとの間の伝送路特性がh12、第2アンテナ12bと第1アンテナ14aとの間の伝送路特性がh21、第2アンテナ12bから第2アンテナ14bとの間の伝送路特性がh22、第4アンテナ12dから第4アンテナ14dとの間の伝送路特性がh44と示されている。なお、これら以外の伝送路は、図の明瞭化のために省略する。なお、第1無線装置10aと第2無線装置10bとが逆になってもよい。また、第1無線装置10aから第2無線装置10bに、トレーニング信号が送信されるものとする。
図3は、本発明の実施例に係るパケット信号の構成の概略を示す。図3は、図2の第1無線装置10a、すなわち基地局装置から送信されるパケット信号を示す。ここでは、パケット信号に含まれた複数のデータ信号を説明し、既知信号等の構成については、後述する。図示のごとく、「第1データ信号」から「第(N+1)/2データ信号」までの複数のデータ信号が含まれる。また、ひとつのデータ信号は、ふたつの系列によって形成される。ここで、「データ信号」とは、何らかの関連性をもったひとつのデータの集合を意味する。なお、系列の数は、「2」以外の値であってもよいが、ひとつのパケット信号を通じて同一の値の系列によって、データ信号が形成されているものとする。一方、複数のデータ信号は、それぞれ異なった端末装置に送信されるものとする。端末装置は、図2の第2無線装置10bに相当するが、図2に示されていない無線装置10が存在してもよい。
さらに、基地局装置は、複数の端末装置にデータ信号を送信する際のデータレートを予め規定しているものとする。ここでは、データレートに関する情報を端末装置は基地局装置に送信し、基地局装置は、受信した情報をもとにデータレートを決定する。基地局装置では、高いデータレートが前方に配置され、遅いデータレートが後方に配置されるように、パケット信号内において複数のデータ信号を配置させる。すなわち、図3では、第1データ信号に近づくほどデータレートが高くなっている。
また、基地局装置は、トレーニング信号の送信を要求する旨の信号(以下、「要求信号」という)を端末装置から受信しているものとする。端末装置は、例えば、レート情報を生成するために、要求信号を送信する。また、基地局装置は、要求信号を受信しない場合であっても、自らトレーニング信号を送信すべき端末装置を決定してもよい。以上の処理の結果、基地局装置は、トレーニング信号を送信すべき端末装置を特定する。
基地局装置は、複数のデータ信号のうち、特定した端末装置に送信すべきデータ信号を選択する。選択したデータ信号が図3の第1データ信号である場合、基地局装置は、第1データ信号にトレーニング信号を付加する。トレーニング信号の付加は、第1データ信号の前段になされる。また、選択したデータ信号が図3の第(N+1)/2データ信号である場合、基地局装置は、第(N+1)/2データ信号にトレーニング信号を付加する。一方、選択したデータ信号が、これら以外のデータ信号、すなわち図3の第2データ信号から図示しない第((N+1)/2−1)データ信号のいずれかである場合、基地局装置は、選択したデータ信号を第(N+1)/2データ信号の後ろに移動させる。また、基地局装置は、移動したデータ信号にトレーニング信号を付加する。
このような処理によって、低いデータレートのデータ信号がパケット信号の後部に配置されるので、無線伝送路の変動による受信特性の悪化を抑制できる。トレーニング信号を送信すべき端末信号のデータ信号の前段に、トレーニング信号が付加される。また、トレーニング信号は、パケット信号の先頭部分あるいは最後部に配置されるので、前者の場合には、パケット信号に対して付加すべき既知信号とトレーニング信号とを共用できるので、伝送効率の低下を抑制できる。後者の場合には、トレーニング信号を付加したデータ信号が最後部に配置されるので、これ以外の複数のデータ信号は、通常どおり配置される。すなわち、複数のデータ信号の間に既知信号が配置されないので、伝送効率の低下は抑制される。また、低いデータレートのデータ信号がパケット信号の後部に配置されるので、受信特性の悪化は抑制される。また、トレーニング信号を付加したデータ信号は、独立したものとして扱われるので、パケット信号の長さが長くなる場合であっても、伝送路推定の精度の悪化は抑制される。
図4は、通信システム100におけるパケットフォーマットを示す。図4は、図3を詳細に示したパケットフォーマットに相当し、データの系列の数が「2」である場合に対応する。「データ1」と「データ2」は、ひとつ目のデータであり、その前段に配置された「HT−SIG」は、当該データに関する制御信号であり、当該データの送信先のアドレス等が含まれている。これらのデータは、図3の「第1データ信号」に相当する。「データ3」と「データ4」は、ふたつ目のデータであり、その直前に配置された「HT−SIG」は、当該データに関する制御信号である。これらのデータは、図3の「第2データ信号」に相当する。また、「データN」、「データN+1」は、(N+1)/2番目のデータであり、最後のデータである。これらのデータは、図3の「第(N+1)/2データ信号」に相当する。
図4に含まれたデータ以外の成分、例えば、「L−STF」等の説明は、後述する。ここで、第(N+1)/2データ信号にトレーニング信号が付加されている。すなわち、「データN」、「データN+1」が配置されている主系列に、「HT−LTF」が配置されているが、「データN」、「データN+1」が配置されていない副系列にも、図示しない「HT−LTF」が配置されている。「HT−LTF」は、前述の伝送路推定用既知信号に相当する。
図5(a)−(b)は、パケットフォーマットの細部を詳細にしたパケットフォーマットを示す。図5(a)−(b)は、トレーニング信号でなく、通常のパケット信号のフォーマットを示す。また、図5(a)−(b)は、図3または図4の先頭に配置されたデータ信号、すなわち「第1データ信号」およびそれに付加された既知信号等を示す。ここで、図5(a)は、系列の数が「4」である場合に対応し、図5(b)は、系列の数が「2」である場合に対応する。図5(a)では、4つの系列に含まれたデータが、送信の対象とされるものとし、第1から第4の系列に対応したパケットフォーマットが上段から下段に順に示される。
第1の系列に対応したパケット信号には、プリアンブル信号として「L−STF」、「HT−LTF」等が配置される。「L−STF」、「L−LTF」、「L−SIG」、「HT−SIG」は、従来システムに対応したAGC設定用の既知信号、伝送路推定用の既知信号、制御信号、MIMOシステムに対応した制御信号にそれぞれ相当する。MIMOシステムに対応した制御信号には、例えば、系列の数に関する情報やデータ信号の宛先が含まれている。「HT−STF」、「HT−LTF」は、MIMOシステムに対応したAGC設定用の既知信号、伝送路推定用の既知信号に相当する。一方、「データ1」は、前述のデータ信号である。なお、L−LTF、HT−LTFは、AGCの設定だけでなく、タイミングの推定にも使用される。
また、第2の系列に対応したパケット信号には、プリアンブル信号として「L−STF(−50ns)」と「HT−LTF(−400ns)」等が配置される。また、第3の系列に対応したパケット信号には、プリアンブル信号として「L−STF(−100ns)」と「HT−LTF(−200ns)」等が配置される。また、第4の系列に対応したパケット信号には、プリアンブル信号として「L−STF(−150ns)」と「HT−LTF(−600ns)」等が配置される。
ここで、「−400ns」等は、CDD(Cyclic Delay Diversity)におけるタイミングシフト量を示す。CDDとは、所定の区間において、時間領域の波形をシフト量だけ後方にシフトさせ、所定の区間の最後部から押し出された波形を所定の区間の先頭部分に循環的に配置させる処理である。すなわち、「L−STF(−50ns)」には、「L−STF」に対して、−50nsの遅延量にて循環的なタイミングシフトがなされている。なお、L−STFとHT−STFは、800nsの期間の繰り返しによって構成され、その他のHT−LTF等は、3.2μsの期間の繰り返しによって構成されているものとする。ここで「データ1」から「データ4」にもCDDがなされており、タイミングシフト量は、前段に配置されたHT−LTFでのタイミングシフト量と同一の値である。
また、第1の系列において、HT−LTFが、先頭から「HT−LTF」、「−HT−LTF」、「HT−LFT」、「−HT−LTF」の順に配置されている。ここで、これらを順に、すべての系列において「第1成分」、「第2成分」、「第3成分」、「第4成分」と呼ぶ。すべての系列の受信信号に対して、第1成分−第2成分+第3成分−第4成分の演算を行えば、受信装置において、第1の系列に対する所望信号が抽出される。また、すべての系列の受信信号に対して、第1成分+第2成分+第3成分+第4成分の演算を行えば、受信装置において、第2の系列に対する所望信号が抽出される。また、すべての系列の受信信号に対して、第1成分−第2成分−第3成分+第4成分の演算を行えば、受信装置において、第3の系列に対する所望信号が抽出される。また、すべての系列の受信信号に対して、第1成分+第2成分−第3成分−第4成分の演算を行えば、受信装置において、第4の系列に対する所望信号が抽出される。なお、加減処理は、ベクトル演算にて実行される。
「L−LTF」から「HT−SIG」等までの部分は、従来システムと同様に、「52」サブキャリアを使用する。なお、「52」サブキャリアのうちの「4」サブキャリアがパイロット信号に相当する。一方、「HT−LTF」等以降の部分は、「56」サブキャリアを使用する。
図5(b)は、図5(a)に示したパケットフォーマットのうちの第1系列と第2系列に類似している。ここで、図5(b)の「HT−LTF」の配置が、図5(a)の「HT−LTF」の配置と異なっている。すなわち、HT−LTFには、第1成分と第2成分だけが含まれている。第1の系列において、HT−LTFが、先頭から「HT−LTF」、「HT−LTF」の順に配置され、第2の系列において、HT−LTFが、先頭から「HT−LTF」、「−HT−LTF」の順に配置されている。すべての系列の受信信号に対して、第1成分+第2成分の演算を行えば、受信装置において、第1の系列に対する所望信号が抽出される。また、すべての系列の受信信号に対して、第1成分−第2成分の演算を行えば、受信装置において、第2の系列に対する所望信号が抽出される。
図6(a)−(d)は、パケットフォーマットの細部を詳細にしたパケットフォーマットを示す。図6(a)−(d)は、トレーニング信号である。そのため、図6(a)−(d)は、図3の第(N+1)/2データ信号に付加される。また、図6(a)−(d)は、図4のデータN、データN+1の前段に付加される。図6(a)は、データ信号が配置される主系列の数が「2」である場合であり、図6(b)−(c)は、主系列の数が「1」である場合であり、図6(d)は、主系列の数が「3」である場合である。すなわち、図6(a)では、第1の系列と第2の系列とにデータ信号が配置され、図6(b)−(c)では、第1の系列にデータ信号が配置され、図6(d)では、第1の系列から第3の系列にデータ信号が配置される。
図6(a)の第1の系列において、図5(b)と同様のふたつの「HT−LTF」等が配置されているが、1番目の「HT−LTF」と2番目の「HT−LTF」との間に、「HT−SIG」が配置されている。第2の系列に対しては、第1の系列に−400nsでのCDDがなされた信号がそれぞれ配置されている。その後段において、第1の系列と第2の系列には、空白の期間が設けられる。一方、第1の系列と第2の系列での空白の期間において、第3の系列と第4の系列には、HT−LTFが配置される。また、第3の系列と第4の系列に配置されたHT−LTFに続いて、第1の系列と第2の系列には、データが配置される。なお、第3の系列と第4の系列でのHT−LTFの配置は、図5(b)での配置と同一である。
このような配置によって、図5(b)の「HT−STF」が配置された系列の数が、データ信号が配置された系列の数に等しくなるので、受信装置において「HT−STF」によって設定された利得に含まれる誤差が小さくなり、データ信号の受信特性の悪化を防止できる。また、第3系列と第4系列に配置された「HT−LTF」は、ふたつの系列に配置されているだけなので、受信装置において「HT−STF」によって設定された利得に含まれる誤差が小さくなり、伝送路推定の精度の悪化を防止できる。
ここで、タイミングシフト量について、「0ns」、「−400ns」、「−200ns」、「−600ns」の順に優先度が低くなるように、優先度が規定されているものとする。すなわち、「0ns」の優先度が最も高く、「−600ns」の優先度が最も低くなるように規定されている。そのため、第1の系列と第2の系列では、タイミングシフト量として、「0ns」、「−400ns」の値が使用されている。一方、第3の系列と第4の系列でもタイミングシフト量として「0ns」、「−400ns」の値が使用されている。その結果、第1の系列での「HT−LTF」、「HT−LTF」の組合せが第3の系列でも使用され、第2の系列での「HT−LTF(−400ns)」、「−HT−LTF(−400ns)」の組合せが第4の系列でも使用されるので、処理が簡易になる。
図6(b)の第1の系列において、「HT−LTF」はひとつのみに配置される。その後段において、第1の系列には、空白の期間が設けられる。一方、第1の系列での空白の期間において、第2の系列から第4の系列には、HT−LTFが配置される。また、第2の系列から第4の系列に配置されたHT−LTFに続いて、第1の系列には、データが配置される。ここで、第2の系列から第3の系列に配置されるHT−LTFの配置は、図5(a)での配置に類似する。
図6(c)は、図6(b)と同様に構成されるが、図6(c)における「HT−LTF」の符号の組合せが、図6(b)のものと異なる。ここで、「HT−LTF」の符号の組合せは、系列間において直交関係が成立するように規定されている。また、図6(c)では、複数の系列のそれぞれに対し、「HT−LTF」の符号の組合せが固定されるように規定されている。ここで、図6(c)では、図6(b)と同様に、第2の系列から第4の系列であっても、優先度の高い「0ns」、「−400ns」、「−200ns」が使用される。
図6(d)の第1の系列から第3の系列のうち、HT−LTFに関する配置までは、図5(a)を変形させた配置に相当する。その後段において、第1の系列から第3の系列には、空白の期間が設けられる。一方、第1の系列から第3の系列での空白の期間において、第4の期間にはひとつの「HT−LTF」が配置される。また、また、第4の系列に配置されたHT−LTFに続いて、第1の系列から第3の系列には、データが配置される。なお、第4の系列に配置されたHT−LTFに対するタイミングシフト量は、前述の優先度にしたがって、「0ns」に設定される。
図6(a)での第3の系列および第4の系列、すなわち副系列には、ふたつの「HT−LTF」が配置される。また、図6(b)および図6(c)での第2の系列から第4の系列、すなわち副系列には、4つの「HT−LTF」が配置される。さらに、図6(d)での第4の系列、すなわち副系列には、ひとつの「HT−LTF」が配置される。これらを比較すると、図6(d)での副系列に配置された「HT−LTF」の長さが最も短くなる。すなわち、トレーニング信号を生成すべきパケット信号での主系列の数が大きくなると、副系列の長さが短くなる。
図7(a)−(d)は、図6(a)−(d)の別の形態のパケットフォーマットを示す。図7(a)−(b)は、図6(a)−(d)にそれぞれ対応する。図7(a)−(d)では、複数の系列のそれぞれにタイミングシフト量が対応づけられながら規定されている。ここで、第1の系列に対してタイミングシフト量「0ns」が規定され、第2の系列に対してタイミングシフト量「−400ns」が規定され、第3の系列に対してタイミングシフト量「−200ns」が規定され、第4の系列に対してタイミングシフト量「−600ns」が規定されている。そのため、図7(a)では、図6(a)における第3の系列と第4の系列でのタイミングシフト量「0ns」、「−400ns」の代わりに、「−200ns」、「−600ns」が使用される。一方、図7(b)−(c)では、図6(b)−(c)における第2の系列から第4の系列でのタイミングシフト量「0ns」、「−400ns」、「−200ns」の代わりに、「−400ns」、「−200ns」、「−600ns」が使用される。また、図7(d)では、図6(d)における第4の系列でのタイミングシフト量「0ns」の代わりに、「−600ns」が使用される。
図7(c)は、図7(b)と同様に構成されるが、図7(c)における「HT−LTF」の符号の組合せが、図7(b)のものと異なる。「HT−LTF」の符号の組合せには予め優先度が設けられている。すなわち、図5(a)の第1の系列における符号の組合せの優先度が最も高く、第4の系列における符号の組合せの優先度が最も低くなるような規定がなされている。また、データ信号が配置される系列に対して、優先度の高い符号の組合せから順に符号の組合せを使用し、データ信号が配置されない系列に対しても、優先度の高い符号の組合せから順に符号の組合せを使用する。このように、符号の組合せを同じにしておけば、受信装置が+−の演算を行って各成分を取り出す場合に、データが配置されない系列の「HT−LTF」の部分に対する伝送路特性の計算と、データが配置される系列の「HT−LTF」の部分に対する伝送路特性の計算に対して、共通の回路を使用できる。
図8は、通信システム100において最終的に送信されるパケット信号のパケットフォーマットを示す。図8は、図6(d)あるいは図7(d)のパケット信号を変形させた場合に相当する。図6(d)あるいは図7(d)の第1の系列から第3の系列に配置された「HT−LTF」までに、後述の直交行列による演算がなされる。その結果、「HT−LTF1」から「HT−LTF4」が生成される。他の「HT−LTF」についても同様である。さらに、第1の系列から第4の系列のそれぞれに対して、タイミングシフト量「0ns」、「−50ns」、「−100ns」、「−150ns」によるCDDが実行される。なお、2度目のCDDでのタイミングシフト量の絶対値は、HT−LTFに対して1度目になされたCDDでのタイミングシフト量の絶対値よりも小さくなるように設定される。第4の系列に配置された「HT−LTF」と、第1の系列から第3の系列「データ1」等に対しても同様の処理が実行される。
図9は、第1無線装置10aの構成を示す。第1無線装置10aは、無線部20と総称される第1無線部20a、第2無線部20b、第4無線部20d、ベースバンド処理部22、変復調部24、IF部26、制御部30を含む。また信号として、時間領域信号200と総称される第1時間領域信号200a、第2時間領域信号200b、第4時間領域信号200d、周波数領域信号202と総称される第1周波数領域信号202a、第2周波数領域信号202b、第4周波数領域信号202dを含む。なお、第2無線装置10bは、第1無線装置10aと同様に構成される。そのため、以下の説明において、受信動作に関する説明は、第2無線装置10bでの処理に対応し、送信動作に関する説明は、第1無線装置10aでの処理に対応する。
無線部20は、受信動作として、アンテナ12によって受信した無線周波数の信号を周波数変換し、ベースバンドの信号を導出する。無線部20は、ベースバンドの信号を時間領域信号200としてベースバンド処理部22に出力する。一般的に、ベースバンドの信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線によって伝送されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。また、AGCやA/D変換部も含まれる。AGCは、「L−STF」、「HT−STF」においてゲインを設定する。
無線部20は、送信動作として、ベースバンド処理部22からのベースバンドの信号を周波数変換し、無線周波数の信号を導出する。ここで、ベースバンド処理部22からのベースバンドの信号も時間領域信号200として示す。無線部20は、無線周波数の信号をアンテナ12に出力する。すなわち、無線部20は、無線周波数のパケット信号をアンテナ12から送信する。また、PA(Power Amplifier)、D/A変換部も含まれる。時間領域信号200は、時間領域に変換されたマルチキャリア信号であり、デジタル信号であるものとする。
ベースバンド処理部22は、受信動作として、複数の時間領域信号200をそれぞれ周波数領域に変換し、周波数領域の信号に対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。ベースバンド処理部22は、アダプティブアレイ信号処理の結果を周波数領域信号202として出力する。ひとつの周波数領域信号202が、送信された複数の系列のそれぞれに相当する。また、ベースバンド処理部22は、送信動作として、変復調部24から、周波数領域の信号としての周波数領域信号202を入力し、周波数領域の信号を時間領域に変換し、複数のアンテナ12のそれぞれに対応づけながら時間領域信号200として出力する。
送信処理において使用すべきアンテナ12の数は、制御部30によって指定されるものとする。ここで、周波数領域の信号である周波数領域信号202は、図1のごとく、複数のサブキャリアの成分を含むものとする。図を明瞭にするために、周波数領域の信号は、サブキャリア番号の順番に並べられて、シリアル信号を形成しているものとする。
図10は、周波数領域の信号の構成を示す。ここで、図1に示したサブキャリア番号「−28」から「28」のひとつの組合せを「OFDMシンボル」というものとする。「i」番目のOFDMシンボルは、サブキャリア番号「1」から「28」、サブキャリア番号「−28」から「−1」の順番にサブキャリア成分を並べているものとする。また、「i」番目のOFDMシンボルの前に、「i−1」番目のOFDMシンボルが配置され、「i」番目のOFDMシンボルの後ろに、「i+1」番目のOFDMシンボルが配置されているものとする。なお、図5(a)等の「L−SIG」等の部分では、ひとつの「OFDMシンボル」に対して、サブキャリア番号「−26」から「26」の組合せが使用される。
図9に戻る。また、ベースバンド処理部22は、図4、図5(a)−(b)、図6(a)−(d)、図7(a)−(d)のパケットフォーマットに対応したパケット信号を生成するために、CDDを実行する。さらに、ベースバンド処理部22は、図8のパケットフォーマットに示したパケット信号への変形を実行するために、ステアリング行列の乗算を実行する。これらの処理の詳細は、後述する。
変復調部24は、受信処理として、ベースバンド処理部22からの周波数領域信号202に対して、復調とデインタリーブを実行する。なお、復調は、サブキャリア単位でなされる。変復調部24は、復調した信号をIF部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、インタリーブと変調を実行する。変復調部24は、変調した信号を周波数領域信号202としてベースバンド処理部22に出力する。送信処理の際に、変調方式は、制御部30によって指定されるものとする。
IF部26は、受信処理として、複数の変復調部24からの信号を合成し、ひとつのデータストリームを形成する。さらに、ひとつのデータストリームを復号する。IF部26は、復号したデータストリームを出力する。また、IF部26は、送信処理として、ひとつのデータストリームを入力し、符号化した後に、これを分離する。さらに、IF部26は、分離したデータを複数の変復調部24に出力する。送信処理の際に、符号化率は、制御部30によって指定されるものとする。ここで、符号化の一例は、たたみ込み符号化であり、復号の一例は、ビタビ復号であるとする。
制御部30は、第1無線装置10aのタイミング等を制御する。制御部30は、IF部26、変復調部24、ベースバンド処理部22に対して、図3から図8に示したパケット信号を送信するための処理を実行する。IF部26は、少なくともひとつの系列によって形成されるデータ信号を複数入力する。ここで、説明を容易にするために、複数のデータの送信先は、異なった端末装置であるものとする。なお、制御部30は、無線部20、ベースバンド処理部22、変復調部24を介して、端末装置から要求信号を予め受けつけているものとする。また、制御部30は、受けつけた要求信号に対応した端末装置を特定する。以上の処理により、制御部30は、入力した複数のデータの送信先となる端末装置のうち、トレーニング信号を送信すべき端末装置を特定する。
制御部30は、入力した複数のデータ信号のうち、高いデータレートのデータ信号を前方にするように複数のデータ信号を配置することによって、パケット信号を生成する。その際、パケット信号の前方の部分に高いデータレートのデータ信号が配置され、パケット信号の後方の部分に近づくにしたがって、より低いデータレートのデータ信号が配置される。
制御部30は、特定した端末装置に送信すべきデータ信号が、パケット信号の前方の部分に含まれていれば、例えば、図3の第1データ信号であれば、第1データ信号の前段に、トレーニング信号を付加する。このときのトレーニング信号では、図5(b)の第1の系列と第2の系列における「HT−LTF」と「データ1」との間に、空白の期間が設けられる。さらに、当該空白の期間において第3の系列と第4の系列に、図6(a)や図7(a)での第3の系列と第4の系列における「HT−LTF」等が配置される。なお、制御部30は、パケット信号を生成する際に、データ信号を送信すべき端末装置が示されたHT−SIGを複数のデータ信号のそれぞれに付加する。
一方、特定した端末装置に送信すべきデータ信号が、パケット信号の前方の部分に含まれていなければ、当該データ信号をパケット信号の後方の部分に移動させる。これは、図3の第(N+1)/2データ信号の後段に、特定したデータ信号を移動させることに相当する。さらに、制御部30は、移動したデータ信号の前段に、トレーニング信号を付加する。ここでのトレーニング信号は、図6(a)−(d)、図7(a)−(d)に示されたとおりである。また、制御部30は、第1データ信号の前段に、データ信号の系列数に応じた系列数の既知信号を付加する。これは、図5(a)−(b)に相当する。
なお、制御部30は、以上において説明した方法と別の方法によって端末装置を特定してもよい。例えば、制御部30は、レート情報を一定期間にわたって受けつけていない端末装置を特定する。すなわち、制御部30の内部に記憶しているレート情報が古くなっている端末装置を特定する。これを実行するために、制御部30は、内部にタイマーを備える。さらに、制御部30は、特定した端末装置に送信すべきデータの前段にトレーニング信号を付加する際、当該データの前段のHT−SIGに、レート情報を送信してもらいたい旨の要求を含ませる。
また、制御部30は、IF部26、変復調部24、ベースバンド処理部22と協同しながら、図3、図4、図5(a)−(b)、図6(a)−(d)、図7(a)−(d)、図8のように、複数の系列によって形成されるパケット信号を生成する。ここでは、図6(a)−(d)と図7(a)−(d)を生成するための処理を中心に説明するが、図5(a)−(b)の生成には、説明のうちの対応する処理が使用されればよい。
制御部30は、ベースバンド処理部22に対して、特定したデータ信号での主系列にHT−LTFを配置するように指示する。これは、図6(a)−(d)、図7(a)−(d)での主系列での配置に相当する。主系列は、例えば、図6(d)の第1の系列から第3の系列に相当する。また、制御部30は、副系列を設定しながら、副系列にHT−LTFを配置する。ここで、制御部30は、主系列でのHT−LTFおよびデータが配置されるタイミング以外のタイミングにHT−LTFを配置させる。これは、図6(a)−(d)、図7(a)−(d)での副系列での配置に相当する。副系列は、例えば、図6(d)の第4の系列に相当する。
制御部30は、特定していないデータ信号のうちの先頭のデータ信号に対して、少なくともひとつの系列にHT−LTFを配置する。これは、図5(a)−(b)での配置に相当する。制御部30は、ベースバンド処理部22に対して、主系列に配置されたHT−LTF等にCDDを実行させる。なお、CDDは、ひとつに配置されたHT−LTFを基準として、他の系列に配置されたHT−LTFに、HT−LTF内での循環的なタイミングシフトを実行させることに相当する。また、制御部30は、副系列に配置されたHT−LTFに対してもCDDを行う。制御部30は、タイミングシフト量に予め優先度を設けている。ここでは、前述のごとく、タイミングシフト量「0ns」の優先度を最も高く設定し、それに続いて「−400ns」、「−200ns」、「−600ns」の順に低くなっていくような優先度を設定する。
さらに、制御部30は、ベースバンド処理部22に、主系列に対して、優先度の高いタイミングシフト量から順にタイミングシフト量を使用させる。例えば、図6(d)の場合、第1の系列に対して「0ns」を使用させ、第2の系列に対して「−400ns」を使用させ、第3の系列に対して「−200ns」を使用させる。また、制御部30は、副系列に対しても、優先度の高いタイミングシフト量から順にタイミングシフト量を使用させる。例えば、例えば、図6(d)の場合、第4の系列に対して「0ns」を使用させる。なお、制御部30は、ベースバンド処理部22に、データに対してもCDDを実行させ、タイミングシフト量として、主系列に対するタイミングシフト量を使用させる。以上の処理によって、図6(a)−(d)に示したパケットフォーマットが含まれたパケット信号が生成される。
一方、これとは別に、複数の系列に対してそれぞれ異なった値のタイミングシフト量が設定されていてもよい。例えば、第1の系列のタイミングシフト量として、「0ns」が設定され、第2の系列のタイミングシフト量として、「−400ns」が設定され、第3の系列のタイミングシフト量として、「−200ns」が設定され、第4の系列のタイミングシフト量として、「−600ns」が設定される。以上の処理によって、図7(a)−(d)に示したパケットフォーマットが含まれたパケット信号が生成される。
以上の処理によって、図6(a)−(d)、図7(a)−(d)のようなパケットフォーマットが含まれたパケット信号が生成された後、制御部30は、ベースバンド処理部22に、これらのようなパケット信号を変形させ、変形したパケット信号を無線部20に送信させる。すなわち、制御部30は、図6(a)−(d)あるいは図7(a)−(d)に示したパケットフォーマットを図8に示したパケットフォーマットに変形させる。ベースバンド処理部22は、主系列の数を複数の系列の数まで拡張した後に、拡張された系列に対して、CDDを実行する。また、ベースバンド処理部22は、副系列の数を複数の系列の数まで拡張した後に、拡張された系列に対して、CDDを実行する。ここで、制御部30は、主系列に対するタイミングシフト量と、主系列に対するタイミングシフト量とを同一の値になるように設定する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた通信機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図11は、ベースバンド処理部22の構成を示す。ベースバンド処理部22は、受信用処理部50、送信用処理部52を含む。受信用処理部50は、ベースバンド処理部22における動作のうち、受信動作に対応する部分を実行する。すなわち、受信用処理部50は、時間領域信号200に対してアダプティブアレイ信号処理を実行しており、そのために時間領域信号200のウエイトベクトルの導出を実行する。また、受信用処理部50は、アレイ合成した結果を周波数領域信号202として出力する。なお、受信用処理部50は、周波数領域信号202をもとにレート情報を生成してもよい。レート情報の生成については、前述のごとく公知の技術でよいので、説明を省略する。
送信用処理部52は、ベースバンド処理部22における動作のうち、送信動作に対応する部分を実行する。すなわち、送信用処理部52は、周波数領域信号202を変換することによって、時間領域信号200を生成する。また、送信用処理部52は、複数の系列を複数のアンテナ12にそれぞれ対応づける。さらに、送信用処理部52は、図6(a)−(d)、図7(a)−(d)に示されたようなCDDを実行し、図8に示されたようなステアリング行列の演算を実行する。なお、送信用処理部52は、最終的に時間領域信号200を出力する。一方、送信用処理部52は、図6(a)−(d)、図7(a)−(d)に示されたパケット信号を送信する際に、ビームフォーミングを実行してもよい。ビームフォーミングについては、前述のごとく公知の技術でよいので、説明を省略する。
図12は、受信用処理部50の構成を示す。受信用処理部50は、FFT部74、ウエイトベクトル導出部76、合成部80と総称される第1合成部80a、第2合成部80b、第3合成部80c、第4合成部80dを含む。
FFT部74は、時間領域信号200に対してFFTを実行することによって、時間領域信号200を周波数領域の値に変換する。ここで、周波数領域の値は、図10のように構成されているものとする。すなわち、ひとつの時間領域信号200に対する周波数領域の値は、ひとつの信号線にて出力される。
ウエイトベクトル導出部76は、周波数領域の値から、サブキャリア単位にウエイトベクトルを導出する。なお、ウエイトベクトルは、複数の系列のそれぞれに対応するように導出され、ひとつの系列に対するウエイトベクトルは、アンテナ12の数に対応した要素をサブキャリア単位に有する。また、複数の系列のそれぞれに対応したウエイトベクトルの導出には、HT−LTF等が使用される。また、ウエイトベクトルを導出するために、適応アルゴリズムが使用されてもよく、あるいは伝送路特性が使用されてもよいが、これらの処理には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。なお、ウエイトベクトル導出部76は、ウエイトを導出する際に、前述のごとく、第1成分−第2成分+第3成分−第4成分等の演算を実行する。最終的に、前述のごとく、サブキャリア、アンテナ12、系列のそれぞれを単位にして、ウエイトが導出される。
合成部80は、FFT部74にて変換された周波数領域の値と、ウエイトベクトル導出部76からのウエイトベクトルとによって、合成を実行する。例えば、ひとつの乗算対象として、ウエイトベクトル導出部76からのウエイトベクトルのうち、ひとつのサブキャリアに対応したウエイトであって、かつ第1の系列に対応したウエイトが選択される。選択されたウエイトは、アンテナ12のそれぞれに対応した値を有する。
また、別の乗算対象として、FFT部74にて変換された周波数領域の値のうち、ひとつのサブキャリアに対応した値が選択される。選択された値は、アンテナ12のそれぞれに対応した値を有する。なお、選択されたウエイトと選択された値は、同一のサブキャリアに対応する。アンテナ12のそれぞれに対応づけられながら、選択されたウエイトと選択された値が、それぞれ乗算され、乗算結果が加算されることによって、第1の系列のうちのひとつのサブキャリアに対応した値が導出される。第1合成部80aでは、以上の処理が他のサブキャリアに対しても実行され、第1の系列に対応したデータが導出される。また、第2合成部80bから第4合成部80dでは、同様の処理によって、第2の系列から第4の系列に対応したデータがそれぞれ導出される。導出された第1の系列から第4の系列は、第1周波数領域信号202aから第4周波数領域信号202dとしてそれぞれ出力される。
図13は、送信用処理部52の構成を示す。送信用処理部52は、分散部66、IFFT部68を含む。IFFT部68は、周波数領域信号202に対してIFFTを実行し、時間領域の信号を出力する。その結果、IFFT部68は、系列のそれぞれに対応した時間領域の信号を出力する。
分散部66は、IFFT部68からの系列とアンテナ12とを対応づける。分散部66は、図4、図5(a)−(b)、図6(a)−(d)、図7(a)−(d)のパケットフォーマットに対応したパケット信号を生成するために、CDDを実行する。CDDは、行列Cとして、以下のように実行される。
Figure 0004799293
ここで、δは、シフト量を示し、lは、サブキャリア番号を示している。さらに、行列Cと系列との乗算は、サブキャリアを単位にして実行される。すなわち、分散部66は、L−STF等内での循環的なタイミングシフトを系列単位に実行する。また、タイミングシフト量は、図4、図5(a)−(b)、図6(a)−(d)、図7(a)−(d)のごとく設定される。
分散部66は、図6(a)−(d)、図7(a)−(d)のごとく生成されたトレーニング信号に対して、ステアリング行列をそれぞれ乗算する。ここで、分散部66は、乗算を実行する前に、入力した信号の次数を複数の系列の数まで拡張する。図6(d)、図7(d)の場合、第1の系列から第3の系列に配置された「HT−STF」等が入力されるので、入力した信号の数は、「3」であり、ここでは、「Nin」によって代表させる。そのため、入力したデータは、「Nin×1」のベクトルによって示される。また、複数の系列の数は、「4」であり、ここでは、「Nout」によって代表させる。分散部66は、入力したデータの次数をNinからNoutに拡張させる。すなわち、「Nin×1」のベクトルを「Nout×1」のベクトルに拡張させる。その際、Nin+1行目からNout行目までの成分に「0」を挿入する。一方、図6(d)、図7(d)の第4の系列に配置された「HT−LTF」に対して、Ninまでの成分が「0」であり、Nin+1行目からNout行目までの成分にHT−LTF等が挿入されている。
また、ステアリング行列Sは、次のように示される。
Figure 0004799293
ステアリング行列は、「Nout×Nout」の行列である。また、Wは、直交行列であり、「Nout×Nout」の行列である。直交行列の一例は、ウォルシュ行列である。ここで、lは、サブキャリア番号を示しており、ステアリング行列による乗算は、サブキャリアを単位にして実行される。さらに、Cは、前述のごとく、CDDを示す。ここで、CDDにおけるタイミングシフト量は、複数の系列のそれぞれに対して異なるように規定されている。すなわち、第1の系列に対して「0ns」、第2の系列に対して「−50ns」、第3の系列に対して「−100ns」、第4の系列に対して「−150ns」のようにタイミングシフト量が規定される。
以上の構成による第1無線装置10aの動作を説明する。図14は、第1無線装置10aにおける送信処理の手順を示すフローチャートである。制御部30は、トレーニング信号を送信すべき端末装置を特定する(S10)。IF部26は、複数のデータを入力する(S12)。制御部30は、高いデータレートのデータをパケット信号の前方に配置し、低いデータレートのデータをパケット信号の後方に配置する(S14)。特定した端末装置に対するデータが先頭に配置されていれば(S16のY)、制御部30は、ベースバンド処理部22に対して、先頭部分にトレーニング信号を付加させる(S18)。一方、特定した端末装置に対するデータが先頭に配置されていなければ(S16のN)、制御部30は、データをパケット信号の最後部に移動する(S20)。さらに、制御部30は、データの前段にトレーニング信号を付加する(S22)。
本発明の実施例によれば、低いデータレートが要求される端末装置をパケット信号の後方に配置するので、受信特性の悪化を抑制できる。また、端末装置がパケット信号の先頭部分においてのみウエイトを導出し、後方の部分においてウエイトに含まれる誤差が増大する場合であっても、低いデータレートが要求される端末装置を後方に配置するので、ウエイトに含まれる誤差の影響を低減できる。また、ウエイトに含まれる誤差の影響を低減できるので、受信特性の悪化を抑制できる。また、端末装置は、パケット信号の先頭部分においてのみウエイトを導出するので、端末装置における処理量を低減できる。また、端末装置における処理量を低減できるので、端末装置における消費電力を低減できる。また、複数の端末装置に対するデータをひとつのパケット信号に含めるので、伝送効率を向上できる。
また、トレーニング信号を送信すべき端末装置へのデータが、パケット信号の先頭部分に配置されていれば、パケット信号の先頭部分にトレーニング信号を配置するので、パケット信号に対する既知信号とトレーニング信号とを共用できる。また、パケット信号に対する既知信号とトレーニング信号とを共用できるので、利用効率を向上できる。また、トレーニング信号を送信すべき端末装置へのデータが、パケット信号の先頭部分に配置されていなければ、当該データをパケット信号の最後部に移動させるので、トレーニング信号を付加せずにデータを連続的に配置できる。また、データを連続的に配置できるので、利用効率を向上できる。また、移動したデータにトレーニング信号を付加するので、独立した処理を実行できる。また、独立した処理を実行できるので、伝送路特性の推定精度を向上できる。また、パケット信号の最後部にトレーニング信号を配置するので、無線伝送路が変動する場合でも、最新の伝送路特性を推定させることができる。また、最新の伝送路特性を推定できるので、伝送路推定の推定精度を向上できる。
また、トレーニング信号を生成する際に、HT−STFが配置される系列の数と、データが配置される系列の数とを同一の数にするので、HT−STFによって設定された利得がデータに対応し、データの受信特性の悪化を抑制できる。また、トレーニング信号を生成する際に、データが配置される系列においてHT−LTFが配置されるタイミングと、データが配置されない系列においてHT−LTFが配置されるタイミングとをずらすことによって、両者の受信電力を近くできる。また、両者の受信電力を近くすることによって、データが配置されない系列にHT−STFが配置されなくても、当該系列による伝送路特定の推定の悪化を抑制できる。
また、タイミングシフト量に優先度を規定し、データが配置される系列とデータが配置されない系列とのそれぞれに対して、高い優先度から順に使用することによって、同一のタイミングシフト量を多く使用できる。また、同一のタイミングシフト量を多く使用することによって、処理を簡易にできる。また、複数の系列の数を「2」とし、データが配置される系列の数を「1」とする場合、受信装置は、HT−LTFの受信状況に応じて、複数の系列のいずれかにデータが配置されるべきかを送信装置に指示できる。すなわち、送信ダイバーシチを実行できる。
また、複数の系列に配置されたHT−LTFのそれぞれに対するタイミングシフト量は同一の値であるので、データが配置される系列が変更されても、受信装置において容易に対応できる。また、複数の系列のそれぞれに対して異なったタイミングシフト量を設定するので、均一的に処理を実行できる。また、均一的に処理を実行できるので、処理を簡易にできる。また、次に続くパケット信号において、データが配置される系列の数が増加する場合であっても、増加される系列に対するHT−LTFは、同一のタイミングシフト量にて既に送信されているので、受信装置は、既に導出したタイミング等を使用できる。また、既に導出したタイミング等を使用できるので、受信装置は、データが配置された系列の数の増加に容易に対応できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、複数の系列の数が「4」である場合を説明した。しかしながらこれに限らず例えば、複数の系列の数は、「4」より小さくても構わないし、「4」より大きくても構わない。これにあわせて、前者の場合、アンテナ12の数が「4」より少なくても構わないし、アンテナ12の数が「4」より大きくても構わない。本変形例によれば、さまざまな系列の数に本発明を適用できる。
本発明の実施例に係るマルチキャリア信号のスペクトルを示す図である。 本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。 本発明の実施例に係るパケット信号の構成の概略を示す図である。 図2の通信システムにおけるパケットフォーマットを示す図である。 図5(a)−(b)は、図4におけるパケットフォーマットの細部を詳細にしたパケットフォーマットを示す図である。 図6(a)−(d)は、図4におけるパケットフォーマットの細部を詳細にしたパケットフォーマットを示す図である。 図7(a)−(d)は、図6(a)−(d)の別の形態のパケットフォーマットを示す図である。 図2の通信システムにおいて最終的に送信されるパケット信号のパケットフォーマットを示す図である。 図2の第1無線装置の構成を示す図である。 図9における周波数領域の信号の構成を示す図である。 図9のベースバンド処理部の構成を示す図である。 図11の受信用処理部の構成を示す図である。 図11の送信用処理部の構成を示す図である。 図9の第1無線装置における送信処理の手順を示すフローチャートである。
符号の説明
10 無線装置、 12 アンテナ、 14 アンテナ、 20 無線部、 22 ベースバンド処理部、 24 変復調部、 26 IF部、 30 制御部、 50 受信用処理部、 52 送信用処理部、 100 通信システム。

Claims (13)

  1. 少なくともひとつの系列によって形成されるデータ信号を複数入力する入力部と、
    前記入力部において入力した複数のデータ信号のうち、高いデータレートのデータ信号を前方にするように複数のデータ信号を配置することによって、パケット信号を生成する生成部と、
    前記生成部において生成したパケット信号に含まれた複数のデータ信号のそれぞれの送信先となる端末装置のうち、データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号を送信すべき端末装置を特定する特定部と、
    前記特定部において特定した端末装置に送信すべきデータ信号が、前記生成部において生成したパケット信号の前方の部分に含まれていれば、先頭のデータ信号の前段に、データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号を付加する手段と、前記特定部において特定した端末装置に送信すべきデータ信号が、前記生成部において生成したパケット信号の前方の部分に含まれていなければ、当該データ信号をパケット信号の後方の部分に移動させた後に、移動したデータ信号の前段に、データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号を付加しながら、先頭のデータ信号の前段に、データ信号の系列数に応じた系列数の既知信号を付加する手段とを含む付加部と、
    前記付加部において既知信号を付加したパケット信号を送信する送信部と、
    を備えることを特徴とする無線装置。
  2. 前記生成部は、パケット信号の前方の部分に高いデータレートのデータ信号を配置し、パケット信号の後方の部分に近づくにしたがって、より低いデータレートのデータ信号を配置することを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
  3. 前記生成部は、パケット信号を生成する際に、データ信号を送信すべき端末装置が示された制御信号を複数のデータ信号のそれぞれに付加することを特徴とする請求項1または2に記載の無線装置。
  4. データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号を送信してもらいたい旨の要求を端末装置から受けつける受付部をさらに備え、
    前記特定部は、前記受付部において受けつけた要求に対応した端末装置を特定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の無線装置。
  5. 前記特定部は、データレートに関する情報を一定期間にわたって受けつけていない端末装置を特定し、
    前記付加部は、前記特定部において特定した端末装置に送信すべきデータ信号に、データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号を付加する際に、データレートに関する情報を送信してもらいたい旨の要求も付加することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の無線装置。
  6. 前記付加部は、データ信号の系列数よりも大きい系列数の既知信号を付加する際に、データ信号が配置される主系列と、データ信号が配置されない副系列とのそれぞれに既知信号を付加しており、主系列でのデータ信号と既知信号が配置されるタイミング以外のタイミングに、副系列での既知信号を配置することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の無線装置。
  7. 前記付加部は、主系列のうちのひとつに配置された既知信号を基準として、他の系列に配置された既知信号に、既知信号内での循環的なタイミングシフトを行いながら、副系列に配置された付加的な既知信号に対してもタイミングシフトを行っており、かつタイミングシフト量には予め優先度を設けており、主系列に対して、優先度の高いタイミングシフト量から順にタイミングシフト量を使用し、副系列に対しても、優先度の高いタイミングシフト量から順にタイミングシフト量を使用することを特徴とする請求項6に記載の無線装置。
  8. 前記付加部は、主系列のうちのひとつに配置された既知信号を基準として、他の系列に配置された既知信号に、既知信号内での循環的なタイミングシフトを行いながら、副系列に配置された付加的な既知信号に対してもタイミングシフトを行っており、かつ複数の系列に対してそれぞれ異なった値のタイミングシフト量が設定されていることを特徴とする請求項6に記載の無線装置。
  9. 前記付加部において既知信号および付加的な既知信号は、時間領域において所定の単位が繰り返されることによって形成されており、かつ所定の単位の符号の組合せは、系列間において直交関係が成立するように規定されておりながら、複数の系列のそれぞれに対し、所定の単位の符号の組合せが固定されるように規定されていることを特徴とする請求項7または8に記載の無線装置。
  10. 前記付加部において既知信号および付加的な既知信号は、時間領域において所定の単位が繰り返されることによって形成されており、かつ所定の単位の符号の組合せは、系列間において直交関係が成立するように規定されておりながら、所定の単位の符号の組合せには予め優先度を設けており、主系列に対して、優先度の高い符号の組合せから順に符号の組合せを使用し、副系列に対しても、優先度の高い符号の組合せから順に符号の組合せを使用することを特徴とする請求項7または8に記載の無線装置。
  11. 前記付加部は、データ信号に対しても循環的なタイミングシフトを行っており、タイミングシフト量として、主系列に対するタイミングシフト量を使用することを特徴とする請求項7または8に記載の無線装置。
  12. 前記付加部において既知信号を付加したパケット信号のうち、少なくとも既知信号が付加されたデータ信号を変形し、変形したデータ信号を送信部に出力する変形部をさらに備え、
    前記変形部は、主系列の数を複数の系列の数まで拡張した後に、拡張された系列に対して、拡張された系列のうちのひとつに配置された既知信号を基準として、他の系列に配置された既知信号に、既知信号内での循環的なタイミングシフトを行うとともに、副系列の数を複数の系列の数まで拡張した後に、拡張された系列に対して、拡張された系列のうちのひとつに配置された付加的な既知信号を基準として、他の系列に配置された付加的な既知信号に、付加的な既知信号内での循環的なタイミングシフトを行い、
    主系列を拡張した系列に対して使用されるタイミングシフト量のそれぞれと、副系列を拡張した系列のそれぞれに対して使用されるタイミングシフト量のそれぞれとが、同一の値になるように設定されていることを特徴とする請求項7から11のいずれかに記載の無線装置。
  13. 前記付加部におけるタイミングシフト量の絶対値は、前記変形部におけるタイミングシフト量の絶対値よりも大きな値になるように設定されていることを特徴とする請求項12に記載の無線装置。
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