本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1の画像形成装置)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
この画像形成装置1は、発光素子(例えば、LED)を用いた光プリントヘッド(例えば、LEDプリントヘッド)が搭載された電子写真カラープリンタであり、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色の画像を各々に形成する4個のプロセスユニット10−1〜10−4を有し、これらが記録媒体(例えば、用紙)20の搬送経路の上流側から順に配置されている。各プロセスユニット10−1〜10−4の内部構成は共通しているため、例えば、マゼンタのプロセスユニット10−3を例にとり、これらの内部構成を説明する。
プロセスユニット10−3には、像担持体としての感光体ドラム11が図2中の矢印方向に回転可能に配置されている。感光体ドラム11の周囲には、この回転方向上流側から順に、感光体ドラム11の表面に電荷を供給して帯電させる帯電装置12と、帯電された感光体ドラム11の表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置(例えば、LEDプリントヘッド)13が配設されている。更に、静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面に、マゼンタ(所定色)のトナーを付着させて顕像を発生させる現像装置14と、感光体ドラム11上のトナーの顕像を転写した際に残留したトナーを除去するクリーニング装置15が配設されている。なお、これら各装置に用いられているドラム又はローラは、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
画像形成装置1の下部には、用紙20を堆積した状態で収納する用紙カセット21が装着され、その上方に、用紙20を1枚ずつ分離させて搬送するためのホッピングローラ22が配設されている。用紙20の搬送方向におけるホッピングローラ22の下流側には、ピンチローラ23,24と共に用紙20を挟持することによってこの用紙20を搬送する搬送ローラ25と、用紙20の斜行を修正し、プロセスユニット10−1に搬送するレジストローラ26とが配設されている。これらのホッピングローラ22、搬送ローラ25及びレジストローラ26は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
プロセスユニット10−1〜10−4の各感光体ドラム11に対向する位置には、それぞれ半導電性のゴム等によって形成された転写ローラ27が配設されている。各転写ローラ27には、感光体ドラム11上に付着されたトナーによる顕像を用紙20に転写する転写時に、各感光体ドラム11の表面電位とこれら各転写ローラ27の表面電位に電位差を持たせるための電位が印加されている。
プロセスユニット10−4の下流には、定着装置28が配設されている。定着装置28は、加熱ローラとバックアップローラとを有し、用紙20上に転写されたトナーを加圧・加熱することによって定着する装置であり、この下流に、排出ローラ29,30、排出部のピンチローラ31,32、及び用紙スタッカ部33が設けられている。排出ローラ29,30は、定着装置28から排出された用紙20を、排出部のピンチローラ31,32と共に挟持し、用紙スタッカ部33に搬送する。これら定着装置28及び排出口ーラ29等は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達されて回転する。
このように構成される画像記録装置1は、次のように動作する。
先ず、用紙カセット21に堆積した状態で収納されている用紙20が、ホッピングローラ22によって、上から1枚ずつ分離されて搬送される。続いて、この用紙20は、搬送ローラ25、レジストローラ26及びピンチローラ23,24に挟持されて、プロセスユニット10−1の感光体ドラム11と転写ローラ27の間に搬送される。その後、用紙20は、感光体ドラム61及び転写ローラ27に挟持され、その記録面にトナー像が転写されると同時に感光体ドラム10−1の回転によって搬送される。同様にして、用紙20は、順次プロセスユニット10−2〜10−4を通過し、その通過過程で、各光プリントヘッド13により形成された静電潜像を各現像装置14によって現像した各色のトナー像が、その記録面に順次転写されて重ね合わされる。
このようにして記録面上に各色のトナー像が重ね合わされた後、定着装置28によってトナー像が定着された用紙20は、排出ローラ29,30及びピンチローラ31,32に扶持されて、画像形成装置1の外部の用紙スタッカ部33に排出される。以上の過程を経て、カラー画像が用紙20上に形成される。
(LEDプリントヘッド)
図3は、図2中のLEDプリントヘッドの構成を示す概略の断面図である。
このLEDプリントヘッド13は、ベース部材13aを有し、このベース部材13a上にプリント基板13bが固定されている。プリント基板13b上には、駆動回路等が集積された複数個のチップ状のドライバIC100と複数個のチップ状のLEDアレイ200とが熱硬化性樹脂により固着され、それらの複数個のドライバIC100と複数個のLEDアレイ200とが、図示しないボンディングワイヤ等により相互に接続されている。複数個のLEDアレイ100上には、柱状の光学素子を多数配列してなるロッドレインズアレイ13cが配置され、このロッドレインズアレイ13cがホルダ13dにより固定されている。ベース部材13a、プリント基板13b及びホルダ13dは、クランプ部材13e,13fにより固定されている。
(プリンタ制御回路)
図4は、図2の電子写真プリンタにおけるプリンタ制御回路の構成を示すブロック図である。
このプリンタ制御回路は、電子写真プリンタにおける印字部の内部に配設された印刷制御部40を有している。印刷制御部40は、マイクロプロセッサ、読み出し専用メモリ(ROM)、随時読み書き可能なメモリ(RAM)、信号の入出力を行う入出力ポート、タイマ等によって構成され、図示しない上位コントローラからの制御信号SGl、及びビデオ信号(ドットマップデータを一次元的に配列したもの)SG2等によってプリンタ全体をシーケンス制御して印刷動作を行う機能を有している。印刷制御部40には、プロセスユニット10−1〜10−4の4個のLEDプリントヘッド13、定着装置28の加熱ローラ28a、ドライバ41,43、用紙吸入口センサ45、用紙排出口センサ46、用紙残量センサ47、用紙サイズセンサ48、定着装置用温度センサ49、帯電用高圧電源50、及び転写用高圧電源51等が接続されている。ドライバ41には現像・転写プロセス用モータ(PM)42が、ドライバ43には用紙送りモータ(PM)44、帯電用高圧電源50には現像装置14が、転写用高圧電源51には転写ローラ27が、それぞれ接続されている。
このような構成のプリンタ制御回路では、次のような動作を行う。
印刷制御部40は、上位コントローラからの制御信号SGlによって印刷指示を受信すると、先ず、温度センサ49によって定着装置28内の加熱ローラ28aが使用可能な温度範囲にあるか否かを検出し、温度範囲になければ加熱ローラ28aに通電し、使用可能な温度まで定着装置28を加熱する。次に、ドライバ41を介して現像・転写プロセス用モータ42を回転させ、同時にチャージ信号SGCによって帯電用高圧電源50をオンにし、現像装置14の帯電を行う。
そして、セットされている図2中の用紙20の有無及び種類が用紙残量センサ47、用紙サイズセンサ48によって検出され、その用紙20に合った用紙送りが開始される。ここで、用紙送りモータ44はドライバ43を介して双方向に回転させることが可能であり、最初に逆転させて、用紙吸入口センサ45が検知するまで、セットされた用紙20を予め設定された量だけ送る。続いて、正回転させて用紙20をプリンタ内部の印刷機構内に搬送する。
印刷制御部40は、用紙20が印刷可能な位置まで到達した時点において、上位コントローラに対してタイミング信号SG3(主走査同期信号、副走査同期信号を含む)を送信し、ビデオ信号SG2を受信する。上位コントローラにおいてページ毎に編集され、印刷制御部40に受信されたビデオ信号SG2は、印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATAOとして各LEDプリントヘッド13に転送される。各LEDプリントヘッド13は、それぞれ1ドット(ピクセル)の印字のために設けられたLEDを複数個線上に配列したものである。
印刷制御部40は1ライン分のビデオ信号SG2を受信すると、各LEDプリントヘッド13にラッチ信号HD−LOADを送信し、印刷データ信号HDDATAを各LEDプリントヘッド13内に保持させる。又、印刷制御部40は、上位コントローラから次のビデオ信号SG2を受信している最中においても、各LEDプリントヘッド13に保持した印刷データ信号HD−DATA3〜HDDATAOについて印刷することができる。
なお、印刷制御部40から各LEDプリントヘッド13に送信されるクロック信号HD−CLK、主走査同期信号HD−HSYNC−N、及びストローブ信号HD−STB−Nの内、クロック信号HD−CLKは、印刷データ信号HDDATA3〜HD−DATAOをLEDプリントヘッド13へ送信するための信号である。
ビデオ信号SG2の送受信は、印刷ライン毎に行われる。各LEDプリントヘッド13によって印刷される情報は、マイナス電位に帯電された図示しない各感光体ドラム11上において電位の上昇したドットとして潜像化される。そして、現像装置14において、マイナス電位に帯電された画像形成用のトナーが、電気的な吸引力によって各ドットに吸引され、トナー像が形成される。
その後、トナー像は転写ローラ27へ送られ、一方、転写信号SG4によってプラス電位に転写用高圧電源51がオン状態になり、転写ローラ2728は感光体ドラム11と転写ローラ27との間隔を通過する用紙20上にトナー像を転写する。転写されたトナー像を有する用紙20は、加熱ローラ28aを内蔵する定着装置28に当接して搬送され、この定着装置28の熱によって用紙20に定着される。この定着された画像を有する用紙20は、更に搬送されてプリンタの印刷機構から用紙排出口センサ46を通過してプリンタ外部へ排出される。
印刷制御部40は、用紙サイズセンサ48、及び用紙吸入口45の検知に対応して、用紙20が転写装置28を通過している間だけ転写用高圧電源51からの電圧を転写装置28に印加する。印刷が終了し、用紙20が用紙排出口センサ46を通過すると、帯電用高圧電源50による現像装置14への電圧の印加を終了し、同時に現像・転写プロセス用モータ42の回転を停止させる。以後、上記の動作を繰り返す。
(LEDプリントヘッド)
図5は、図4中の各プロセスユニット10−1〜10−4における各LEDプリントヘッド13を示す構成図である。
このLEDプリントヘッド13は、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能な構成になっている。LED素子201,202,・・・の総数は4992ドットであり、これを構成するために26個のLEDアレイ200−1,200−2,・・・が配列されている。各LEDアレイ200−1,200−2,・・・は、各々192個のLED201,202,・・・を有し、各LEDアレイ200−1,200−2,・・・内の各LED201,202,・・・において、奇数(ODD)番目のLED201,・・・のカソード同士、偶数(EVEN)番目のLED202,・・・のカソード同士が接続され、隣接して配置される2個のLED201,202,・・・のアノード端子同士が接続されており、奇数番目のLED201,・・・と偶数番目のLED202,・・・とは時分割に駆動される。
26個のLEDアレイ200−1,200−2,・・・に対応して、26個のドライバIC(IC)100−1,100−2,・・・が配列されている。これらの26個のドライバIC100−1,100−2,・・・は、同一の回路により構成され、隣接するドライバIC100−1,100−2,・・・がカスケード接続(縦続接続)されている。
LEDアレイ200−1,200−2,・・・の近傍には、奇数(ODD)側と偶数(EVEN)側の2個のパワーMOSトランジスタ(例えば、NチャネルMOSトランジスタ、以下「NMOS」という。)211,212が設けられている。奇数(ODD)側のNMOS211のドレインは、奇数側のLED201,・・・のカソードと共通に接続され、偶数(EVEN)側のNMOS212のドレインは、偶数側のLED202,・・・のカソードと共通に接続されている。各NMOS211,212のソースは、グランドに接続されている。NMOS211のゲートは、ドライバIC100−1のKDRV端子と接続され、NMOS212のゲートは、ドライバIC100−2のKDRV端子と接続されている。
次に、図5のLEDプリントヘッド13における動作を説明する。
図5に示す構成においては、印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0は4本であり、隣接するLED8個のうち、奇数番目同士あるいは偶数番目同士の4画素分のデータをクロック信号HD−CLK毎に同時に送出する構成になっている。このため、図4の印刷制御部40から出力される印刷データ信号HD−DATA3〜HD−DATA0は、クロック信号HD−CLKと共に全ドライバIC100−1,・・・に入力され、前記の4992ドット分のビットデータDATAI0〜DATAI3,・・・が後述する各ドライバIC100−1,・・・内のフリッププロップ回路(以下「FF」という。)から成るシフトレジスタ中を順次転送される。
次に、ラッチ信号HD−LOADが全ドライバIC100−1,・・・に入力され、前記の4992ドット分のビットデータDATAI0〜DATAI3,・・・が後述する各ドライバIC100−1,・・・内の各FFに対応して設けられたラッチ回路にラッチされる。続いて、ビットデータDATAI0〜DATAI3,・・・と印刷駆動信号HD−STB−Nとによって、LED201,02,・・・の内、高レベル(以下「Hレベル」という。)であるドットデータDO1,DO2,・・・に対応するものが点灯される。
なお、全ドライバIC100−1,100−2,・・・には、電源電圧VDD、グランド電圧GND、時分割駆動において奇数番目のLED駆動であるか偶数番目のLED駆動であるかの初期状態を設定するための同期信号HD−HSYNC−N、及び、LED駆動のための駆動電流値を指令するための基準電圧VREFがそれぞれ供給される。基準電圧VREFは、LEDプリントヘッド13内に設けられた図示しない基準電圧発生回路により発生される。
(ドライバIC)
図6は、図5中のチップ状のドライバIC100(=100−1,100−2,・・・)における構成を示す平面図である。この図6には、1チップ分のドライバIC100における端子パッド部と内部回路の配置状況が示されている。
ドライバIC100には、端子パッド列101、シフトレジスタ及びラッチ回路等の論理回路列102、駆動回路の前段回路103、電源配線104、駆動回路列105、及び、駆動回路のドットデータDO1〜DO96用のパッド列である駆動出力端子(例えば、駆動電流出力端子)PD1〜PD96が設けられている。端子パッド列101は、電源電圧VDD、ビットデータDATAIO〜DATAI3、同期信号HSYNC、ラッチ信号LOAD、クロック信号CLK、電源電圧VDD、グランド電圧GND、基準電圧VREF、印刷駆動信号STB、ゲート信号KDRV、ビットデータDATAO3〜DATAO0、電源電圧VDDの各端子パッドを有し、これらが順に配列されている。電源配線104は、駆動回路列105の上層に配置され、端子パッド列101の内の3箇所に設けられたVDD端子と接続されている。
(ドライバICの全体構成)
図7は、図5中のドライバIC100の詳細な構成を示すブロック図である。
このドライバIC100は、カスケード接続された複数のFFから成るシフトレジスタ101を有している。シフトレジスタ101は、クロック信号CLKに同期してビットデータDATAI3〜DATAI0を取り込んでシフトする回路であり、この出力側に、セレクタ102、ラッチ回路103及びメモリ回路104が接続されている。セレクタ102は、シフトレジスタ101の出力を選択してビットデータDATAO3〜DATAO0を出力する回路である。ラッチ回路103は、ラッチ信号LOADによりシフトレジスタ101の出力をラッチする回路である。
メモリ回路104は、各LEDの光量ばらつき補正のための補正データ(ドット補正データ)やLEDアレイチップ毎の光量補正データ(チップ補正データ)あるいはドライバIC毎の固有データをそれぞれ格納する回路であり、この出力側に、マルチプレクサ105が接続されている。マルチプレクサ105は、メモリ回路104から出力されているドット補正データにおいて、隣接したLEDドットのうち、奇数番目ドットの補正データと偶数番目ドット補正データとを切り替える回路であり、この出力側に、LEDを駆動するための複数個(例えば、96個)の駆動回路110−1〜110−96が接続されている。各駆動回路110−1〜110−96は、制御電圧Vが印加され、オン/オフ制御信号Sによりオン状態になると、ラッチ回路103の出力ビットデータE及びマルチプレクサ105の出力補正データQ3〜Q0を入力し、LEDを点灯するための出力信号DOを各駆動電流出力端子PD(=PD1〜PD96)へ出力する回路である。
ドライバIC100には、制御回路130及び制御電圧発生回路131が設けられている。制御回路130は、電源電圧VDD、印刷駆動STB、同期信号HSYNC、及びラッチ信号LOADを入力し、印刷駆動信号STB及びラッチ信号LOADに基づきオン/オフ制御信号Sを生成して駆動回路110−1〜110−96へ供給する機能と、補正データをメモリ回路104に対して書き込みする時の書き込み指令信号を発生する機能と、マルチプレクサ105に対し奇数ドットデータと偶数ドットデータとのデータ切り替え指令信号を発生する機能等とを有している。制御電圧発生回路131は、基準電圧VREFに基づき、LED駆動のための制御電圧Vを発生する回路である。
このドライバIC100では、クロック信号CLKにより、前記の4992ドット分のビットデータDATAI0〜DATAI3,・・・がシフトレジスタ101中を順次転送される。次に、ラッチ信号LOADにより、前記の4992ドット分のビットデータDATAI0〜DATAI3,・・・がラッチ回路103にラッチされる。続いて、ビットデータDATAI0〜DATAI3,・・・及び補正データQ3〜Q0と印刷駆動信号STBとによって、駆動回路110−1〜110−96から駆動電流出力端子PD1〜PD96へ、ドットデータDO1〜DO96に対応する駆動電流が出力され、HレベルのドットデータDO1,・・・に対応するLEDが点灯される。
(LED駆動回路)
図8は、図7中のLEDの駆動回路110(=110−1〜110−96)を示す回路図である。
LEDの駆動回路110は、ラッチ回路103からのビットデータEと制御回路130からのオン/オフ制御信号Sとの否定論理和(以下「NOR」という。)を求めるNOR回路111を有している。NOR回路111の出力側には、4個の否定論理積回路(以下「NAND回路」という。)112〜115の入力側と、インバータを構成するPチャネルMOSトランジスタ(以下「PMOS」という。)116及びNMOS117の各ゲートとが接続されている。各NAND回路112〜115は、NOR回路111の出力データと、マルチプレクサ105からの補正データとの否定論理積を求める回路である。NOR回路111及びNAND回路112〜115において、各電源端子は図示しない電源電圧VDDの端子と接続され、各グランド端子は制御電圧Vの端子と接続されて制御電圧Vcontに保持されている。インバータを構成するPMOS116及びNMOS117は、電源電圧VDDの端子と制御電圧Vの端子との間に直列に接続され、NOR回路111の出力信号を反転して出力するトランジスタである。
各NAND回路112〜115の出力側には、各PMOS118〜121のゲートが接続され、更に、PMOS116及びNMOS117のドレインにも、PMOS122のゲートが接続されている。各PMOS118〜112のソースは、電源電圧VDDの端子に共通に接続され、ドレインは、ドットデータDO用の駆動電流出力端子PDに共通に接続されている。この駆動電流出力端子PDは、後述するボンディングワイヤ等によりLEDのアノードと接続されている。
後述するように電源電圧VDDと電圧Vcontとの電位差は、PMOS118〜122がオンする時のゲート・ソース間電圧に略等しく、この電圧を変化させることでPMOS118〜122のドレイン電流を調整することが可能となる。図7の制御電圧発生回路131は、基準電圧Vrefを受けて、PMOS118〜122等のドレイン電流が所定値となるように制御電圧Vcontを制御するために設けられている。
次に、この駆動回路110の機能を説明する。
印刷データであるラッチ回路103からのビットデータEがオン(即ち、低レベル、以下「Lレベル」という。)であり、制御回路130からのオン/オフ制御信号SがLレベルとなって駆動オンを指令している時、NOR回路111の出力はHレベルとなる。この時、マルチプレクサ105からの補正データQ3〜Q0に従い、NAND回路112〜115の出力信号と、PMOS116及びNMOS117により構成されるインバータの出力とは、電源電圧VDDレベルあるいは制御電圧Vcontレベルとなる。
PMOS122は、LEDに主たる駆動電流を供給する主駆動トランジスタであり、PMOS118〜121は、LEDの駆動電流をドット毎に調整して光量補正するための補助駆動トランジスタである。主駆動トランジスタのPMOS122は、印刷データに従って駆動される。補助駆動トランジスタのPMOS118〜121は、NOR回路111の出力がHレベルである時に、マルチプレクサ105からの補助データQ3〜Q0に従って選択的に駆動される。補助データQ3〜Q0は、LEDの各ドットの発光ばらつきを補正するためのデータであり、図7中のメモリ回路104に格納されていて、マルチプレクサ105により選択されて供給される。
つまり、主駆動トランジスタであるPMOS122と共に、補正データに従って補助駆動トランジスタであるPMOS118〜121が選択的に駆動され、主駆動トランジスタであるPMOS122のドレイン電流に、選択された補助駆動トランジスタであるPMOS118〜121の各ドレイン電流が加算された駆動電流が、ドットデータDO用の駆動電流出力端子PDから出力されてLEDに供給される。
PMOS118〜121が駆動されている時、NAND回路112〜115の出力はLレベル(即ち、略制御電圧Vcontに等しいレベル)にあるので、PMOS118〜121のゲート電位は、略制御電圧Vcontに等しくなる。この時、PMOS205はオフ状態にあり、NMOS117はオン状態にあって、PMOS122のゲート電位も又略制御電圧Vcontに等しくなる。そのため、PMOS118〜122のドレイン電流値を、制御電圧Vcontにより一括して調整することができる。この時、NAND回路112〜115は電源電圧VDDと制御電圧Vcontを、それぞれ電源、グランド電位として動作しているので、その入力信号の電位も電源電圧VDDと制御電圧Vcontに即したものであって良く、Lレベルは必ずしも0Vであることを必要としない。
(駆動トランジスタの構成)
図1は、本発明の実施例1における図8中の駆動トランジスタであるPMOS118〜122を示す平面図である。
図1中のX軸は、図6におけるドライバIC100の長辺方向を示し、これは図5における各ドライバIC100−1,100−2,・・・の配列方向に等しい。Y軸は、X軸と直交する方向であるドライバIC100の短辺方向を示している。又、図1では、駆動トランジスタである2組のPMOS118〜122(=118−1〜122−1,118−2〜122−2)と、2個のドットデータDO1,DO2用の駆動電流出力端子PD1,PD2とが示されている。
一点鎖線で囲んで示すA,B,C,D,E,F点を通る略L字状の閉曲線の領域は、駆動電流出力端子PD2を駆動する駆動部123−2であり、駆動トランジスタのPMOS118−2〜122−2が形成されている。この駆動部123−2と点対称に形成された同様の図示しない略L字状の閉曲線の領域は、駆動電流出力端子PD1を駆動する駆動部123−1であり、駆動トランジスタのPMOS118−1〜122−1が形成されている。各駆動電流出力端子PD1,PD2,・・・は、所定の配列ピッチP1をおいてX軸方向に配置されている。配列ピッチ2個分(2*P1)の占有領域内に、2回路分の駆動部123−1,123−2が配置されている。
ハッチングにて示された帯状部分は、例えば、ポリシリコンを用いて形成されたPMOS118−1〜122−1,118−2〜122−2のゲート電極(以下単に「ゲート」という。)である。鎖線で囲んで示された領域124は、P型不純物の拡散領域である。拡散領域124は、点A,B,C,D,E,Fからなる閉曲線で囲まれ、且つ、この拡散領域124内に設けられた3箇所の破線で囲まれる矩形の中島領域125を除いた領域である。例えば、ゲート配線の形成後に、このゲート配線をマスクとして拡散領域124を外苑とし、中島領域125を除く領域内に、P型不純物を注入してPMOS118−1〜122−1,118−2〜122−2のソース領域S及びドレイン領域D1,D2が形成されている。ドレイン領域D1は、図示しないが、駆動電流出力端子PD1と接続され、更に、ドレイン領域D2も、図示しないが、駆動電流出力端子PD2と接続されている。
又、駆動トランジスタが形成されるシリコン基材は、例えば、N型不純物を含むものであって、ハッチングにて示されるゲート配線を形成した後、このゲート配線をマスクとして鎖線の拡散領域124内にP型不純物を注入して不純物拡散することで、ソース領域S及びドレイン領域Dl,D2にて示すように、島状にP型領域が形成され、PMOS118−1〜122−1,118−2〜122−2が形成される。
なお、図1では、図示を簡略化するために、ゲート酸化膜、メタル配線、ソース領域Sとのコンタクト部、ドレイン領域D1,D2とのコンタクト部、及び、パッシベーション保護膜等が省略されているが、図1におけるソース領域S、及びドレイン領域D1,D2のそれぞれは、図示しないメタル配線を用いて、ソース領域SはVDD端子に、ドレイン領域D1,D2は駆動電流出力端子PD1,PD2にそれぞれ接続されている。
又、各ゲートのゲート幅W0,Wl,W2,W3は、次のように設定されている。
Wl=2*W0
W2=4*W0
W3=8*W0
ポリシリコンで形成された各ゲート配線の幅Lは、それぞれ等しく設定され、各PMOS118−1〜122−1,118−2〜122−2のゲート長と略等しく設定されている。
(LEDプリントヘッド基板ユニット)
図9(a)〜(c)は、図3中のLEDプリントヘッド基板ユニットを示す構成図であり、同図(a)は平面図、同図(b)はその平面図の一部の拡大図、及び、同図(c)は同図(b)に対比するように描かれた断面図である。
図9(a)において、プリント基板13bの平面(即ち、上面)上には、複数個(例えば、26個)のドライバIC(IC)100(=100−1〜100−26)がそのプリント基板13bの長辺方向であるX軸に沿って配列されると共に、これらのドライIC100に隣接して、複数個(例えば、26個)のLEDアレイ(CHP)200(=200−1〜200−26)がX軸に沿って配列されている。更に、プリント基板13bの上面上に、LEDプリントヘッド基板ユニットを制御する制御信号端子や電源端子、及びグランド端子等を含んだコネクタ220が搭載されている。
図9(b)において、プリント基板13bの上面上には、ドライバIC100−1,100−2,100−3,・・・に隣接して、端子パッド列101が形成され、この端子パッド列101における所要所間が配線221により接続されている。
図9(c)において、プリント基板13bの端子パッド列101と各ドライバIC100−1,・・・の制御端子パッドとが、ボンディングワイヤ222により接続され、各ドライバIC100−1,・・・の駆動端子パッドと各LEDアレイ200−1,・・・の図示しないアノードパッドとが、ボンディングワイヤ223により接続され、各LEDアレイ200−1,・・・の図示しないカソードパッドとプリント基板13b上の電極パッドとが、ボンディングワイヤ224により接続されている。
(駆動トランジスタに応力が加わった場合の特性変化)
図10(a)、(b)は、図1、図8及び図9における駆動トランジスタであるPMOS118〜122に応力が加わった場合の特性変化(ドレイン電流の変動)を説明するための図であり、同図(a)は、シリコンウェハ上にドライバIC100を形成する時のドライバIC100の配列方向を示す図、及び同図(b)は、その関係式及びその数値を示す図である。
図10(a)においては、シリコンウェハ230上に多数配列されたドライバIC100の内の1個のみ示す。ドライバIC100がシリコンウェハ230の表面で長方形形状を持つものとすると、図中のX軸はドライバIC100の長辺方向に、Y軸はドライバIC100の短辺方向にそれぞれとっている。下記の式(1)、式(2)、及び図10(b)は、参考文献1に記載されている関係式及びその数値である。
参考文献1;池田他“チップスタック形マルチチップ実装におけるMOSFETの移動度の変動について”電子情報通信学会論文誌C、Vol.J88−C、No.11、ppl−8(11−2005)
ここで、式(1)、式(2)における
等は、図10(b)に記載されるピェゾ抵抗係数、σ11,σ22は図10(a)におけるY軸方向、X軸方向への応力であって、圧縮力の場合には応力σは負の値をとる。又、IDはPMOSのドレイン電流、式(1)に示される[ΔID/ID]0はチャネルに流れるドレイン電流がY軸方向と平行な場合の電流変化率、式(2)に示される[△ID/ID]90はチャネルに流れる電流がX軸方向と平行な場合の電流変化率である。
そこで、[△ID/ID]90,[ΔID/ID]0をあらためて[ΔID/ID]X,[ΔID/ID]Yと記号し、σ11,σ22をσY,σXと記号して図10(b)の数値を代入して整理すると、次式(3)、(4)を得る。
一般に、物体が引張力又は圧縮力を受けると、力の方向には伸び又は縮むが、それと直交する方向には逆に縮み又は伸びる。ここで、例えば、直径d、長さLの丸棒を考え、その軸方向に力Pで引張ったとしよう。この時、丸棒は力の方向に△Lだけ伸びるが、その断面方向には最初の直径dよりも縮んで直径d’となる。力の方向へのひずみεは、
ε=△L/L
であるが、力と直交する方向のひずみε’は、
ε’=(d−d’)/d
である。力の方向のひずみεと、力と直交する方向のひずみε’との比は、物質により定まる定数であって、ポアソソン比νと呼ばれ、
で表される。εとε’とは、いずれか一方が伸びると他方は縮むことになるので、εとε’の比はマイナスの値となり、材料力学的な考察から、ポアソン比νの数値は絶対値で0.5以下となることが知られている。ここで、σとεの間には、
σ=Eε
の関係があり、Eはヤング率とよばれ、図10(a)のX軸方向、Y軸方向について、
E≒170[GPa]
であることが知られている。
今、シリコンのポアソン比を0.28として応力の符号も考慮すると、次式(5)が得られる。
これを式(3)、(4)に代入して整理することで、次式(6)、(7)を得る。
式(6)、(7)として記された[△ID/ID]X,[ΔID/ID]Yの両式に現れる符号の違い、圧縮時には応力σが負の値となることに注意すると、X軸方向へ圧縮力を加えた場合に、PMOSのチャネルをX軸方向となるように配置する場合には、[△ID/ID]Xの値はプラスとなってドレイン電流が増加するのに対して、PMOSのチャネルをY軸方向となるように配置する場合には、[ΔID/ID]Yの値はマイナスとなってドレイン電流が減少することが判る。又、式(6)、(7)の比を計算すると、次式(8)が得られ、PMOSのチャネルをX軸方向とする場合と比べY軸方向に配置することで、ドレイン電流の変化率は約0.96倍、即ち4%小さくできることが判る。
(駆動トランジスタの動作)
図11(a)、(b)は、図1において説明した駆動トランジスタを図解してその動作を説明するための平面図であって、同図(a)は、図1に対応する図、及び、同図(b)は、同図(a)のうち駆動トランジスタを取り出して描きなおした図である。
図11(a)、(b)では、図を見易くする目的で、ポリシリコンを用いて形成されたゲートを黒く塗って示している。図11(a)中のソース領域Sは、図11(b)ではドット状にハッチングされた領域として示されている。図11(a)中のドレイン領域D、D1,D2は、図11(b)では格子状にハッチングされた領域として示されている。
図11(b)において、PMOS122−2に着目すると、このPMOS122−2は、LEDに対して主たる駆動電流を供給する主駆動トランジスタであり、このゲート122−2Gは、略L字状の形状に設定され、この両側にはソース領域Sとドレイン領域D2とが配置されている。
そのため、図11(a)の略L字状のPMOS122−2がオンしてドレイン電流が流れる時、図11(b)に太矢印A,Bで示すように、ソース領域Sからドレイン領域D2の方向にドレイン電流が流れる。このドレイン電流は、図9のドライバIC100のX軸方向にチャネル電流をもつ太矢印Aで示す電流と、ドライバIC100のY軸方向にチャネル電流をもつ太矢印Bで示す電流からなる。
図10を用いて定量的に説明したように、MOSトランジスタのチャネル方向に圧縮力が印加される場合、その応力値に応じてドレイン電流が増加し、その圧縮力と直交するチャネルにおいてはドレイン電流が減少する。この結果を図11(b)の構成に当てはめて、低温時における動作を考えてみる。
略L字状のPMOS122−2がオンしてドレイン電流が流れる時、太矢印Aで示す電流は、図9に示すドライバIC100のX軸方向にチャネル電流を持つものであって、圧縮力方向に並行しており、ドレイン電流が増加する。一方、ドライバIC100のY軸方向にチャネル電流をもつ太矢印Bで示す電流は、ドライバIC100のY軸方向に働く引張力の影響でドレイン電流が減少することになる。この結果,矢印A,Bで示される電流の合計値は、前記増減が打ち消しあってその変化は小さくなる。
PMOS122−2は、図8のPMOS122に相当するものであり、LEDに対して主たる駆動電流を供給する主駆動トランジスタであって、この主駆動トランジスタの駆動電流に対し、応力による影響が軽減されたことで、PMOS118−2〜122−2からなる駆動部123−2の出力する駆動電流値への応力影響は、著しく軽減されることになる。
前述した議論は、図10で示したポアソン比(例えば、シリコン材料においては約0.28であるとされる。)による効果を反映したものであって、駆動部123−2の出力する駆動電流値への応力影響を軽減する目的から、図11(a)に示す略L字状のPMOS122−2のうち、ゲート122−2GのX軸方向の長さLxとY軸方向の長さLyの比も前記ポアソン比の数値に応じたものとするのが望ましい。
シリコン材料のポアソン比は約0.28であるとされており、後述するLEDプリントヘッドを用いた実測結果では、長さLxとLyに対して、
Lx:Ly=0.7:0.3
とすると、低温環境下においても略平坦のままの電流分布特性が得られている。そのため、略L字状のPMOS122−2の全長(Lx+Ly)に対する長さLyの比を、
0.15≦Ly/(Lx+Ly)≦0.6
とすることで、前述した応力による電流変化を実質的に無視することができる程度に軽減することができる。
(LEDプリントヘッドの測定結果)
図12−1(a)、(b)は、従来のLEDプリントヘッドを構成する駆動トランジスタの比較例を示す図であり、同図(a)は平面図、及び、同図(b)は同図(a)中のZ1−Z2線断面図である。この図12−1(a)、(b)において、説明の便宜上、本実施例1を示す図8中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
シリコン基材127には、図8の主駆動トランジスタである1個のPMOS122と、補助駆動トランジスタである4個のPMOS118〜121と、これらのPMOS118〜122に接続された駆動電流出力端子PDとが形成されている。PMOS122は、各ゲート長がLである4個のゲート122G1〜122G4と、これらの両側に形成されたソース領域S及びドレイン領域Dとにより構成されている。各PMOS118〜121は、1個のゲートと、この両側に形成されたソース領域S及びドレイン領域Dとにより構成されている。最小サイズのPMOS118のゲート幅はWO、PMOS119のゲート幅はWl、PMOS120の図示しないゲート幅はW2、及び、PMOS121の図示しないゲート幅はW3に設定され、これらの各ゲート幅のサイズ比は、次のように設定されている。
Wl=2*WO
W2=4*WO
W3=8*WO
図12−2(a)〜(d)は、図12−1の従来の駆動トランジスタにより構成される比較例のLEDプリントヘッドにおいてドット毎の駆動電流を周囲温度を変えて測定した結果を模式的に示す図である。
その内、図12−2(a)は、本実施例1の図9(a)に対応する比較例のLEDプリントヘッド13のブロック図である。この比較例では、例えば、図12−1において、駆動トランジスタであるPMOS118〜122のゲートが、LEDアレイ200(=200−1〜200−26)の配列方向(X軸方向)に対して直交するY軸方向に配置されている。
図12−2(b)は、LEDプリントヘッドの雰囲気温度を100℃とする高温状態での各駆動電流値を示すグラフである。同様に、図12−2(c)は、LEDプリントヘッドの雰囲気温度を25℃とする室温状態での各駆動電流値を示すグラフ、図12−2(d)は、LEDプリントヘッドの雰囲気温度を−20℃とする低温状態での各駆動電流値を示すグラフである。
なお、図12−2(b)〜(d)は、図12−2(a)のブロック図と対比するように描かれており、チップ状の各ドライバIC100の境目を破線を付して示されている。
図12−2(b)においては、僅かな電流ばらつきを生じているものの、各駆動トランジスタの駆動出力が一様で、略平坦な駆動出力特性を示している。これに対し、図12−2(c)においては、やや波打った特性グラフが現れ出している。図12−2(d)においては、各ドライバIC100の中心部付近での駆動電流が大きく、ドライバIC両端部での駆動電流が低下した凸形状の特性を示している。
このようなドライバIC100に対して応力が印加された場合に駆動電流が変動する現象は、ピエゾ抵抗効果等として公知である。例えば、特許文献1においては、MOSトランジスタのキャリア移動度を向上させて駆動能力をアップさせるために、シリコンウエハの素子面に膜応力を発生させることの効果が論じられている。又、特許文献1においては、MOSトランジスタのゲート長とドレイン電流に対する応力影響についても論じられている。
同様に、PMOSの駆動能力を増加させるために、このチャネル方向に圧縮歪を加えると、キャリア移動度が増加し、逆に引張歪を加えると、移動度が減少することも公知である。又、前記現象は短チャネルMOSトランジスタの場合にいっそう顕著であることが知られている。
前記現象を用い、PMOSの駆動能力アップのために、シリコンウエハを用いたエピタキシヤル膜生成過程でゲルマニウム層を設けることで、ウエハ面内に収縮応力を発生させたり、シヤロートレンチ部の構造を工夫することで、トランジスタのチャネルに応力を与える構造も公知である。
前述した物理特性や応力発生構造を活用することで、半導体製造においてコストがかさむ微細加工技術を用いることなく、PMOSの駆動能力をアップさせる研究が精力的に行われてきた。ところが、LEDプリントヘッドのようにドライバIC100に熱応力が作用して特性変動してしまうという現象に対して、公知技術からその物理現象の理解は容易であるものの、それを回避する技術についての着眼はなされておらず、研究されることも無かった。
このように、比較例において、例えば、図3のLEDプリントヘッド13に用いられる基板ユニットは、これを構成するドライバIC100とプリント基板13bとを熱硬化樹脂を用いて高温雰囲気中で固着して製造されているため、前記キュア条件に近い温度においては固着時の自然状態となって応力ゼロとなるものの、室温環境に戻した後にはプリント基板13b側がより大きく収縮する結果、ドライバIC100にはその配列方向に平行に収縮応力が働くことになる。この収縮応力は各ドライバIC100毎に作用する結果、ドライバIC中心付近と両端部のドットとで位置による差異を生じて駆動電流のばらつきとなって現れることになる。
このような駆動電流のばらつきが生じると、これにより駆動されるLEDの光量むらを生じ、これを用いるプリンタの印刷結果に濃度むらとなって現れ、印刷品位を著しく低下させることとなって好ましくない。その上、LEDプリントヘッド13においては、各LEDの製造ばらつきに起因して発光効率がばらつくため、これをLEDプリントヘッド13の製造段階で補正するための光量補正機能を備えるのが通例である。
ところが、前述したような温度による収縮応力は温度によって変動し、LEDプリントヘッド13が比較的高温の環境にある場合には軽減されるものの、温度が低下すると著しく増大してしまう。この結果、,光量補正を行ったのと等しい温度においては、光量むらを生じないものの、それとは異なる温度においてはドライバIC中心部と端部とで駆動電流の変動に起因する光量変動を生じてしまい、前述した光量補正機能を備えるLEDプリントヘッド13をもってしても印刷濃度むらをなくすことが困難で、その解決が切望されていた。
図12−3(a)〜(d)は、本発明の実施例1における図1の駆動トランジスタを備えるLEDプリントヘッド13において、低温雰囲気中(約−20℃)におけるドット毎の駆動電流を測定した結果を模式的に示す図である。
その内、図12−3(a)は、本実施例1の図9(a)に対応するLEDプリントヘッド13のブロック図である。図12−3(b)は、LEDプリントヘッド13の低温雰囲気中における各駆動電流値を示すグラフであって、図11(b)におけるPMOS122−2の内、ゲート122−2Gの太矢印Bで示すドレイン電流成分を表している。なお、図12−3(b)〜(d)は、図12−3(a)と対比するように描かれており、各ドライバ100の境目を破線を付して示している。
図12−3(b)においては、各ドライバIC100の中心部付近での駆動電流が僅かに低下して、ドライバIC両端部での駆動電流が僅かに大きく、僅かながら凹形状をなす特性を示している.
図12−3(c)も同様に、LEDプリントヘッド13の低温雰囲気中における各駆動電流値を示すグラフであって、図11(b)におけるPMOS122−2の内、ゲート122−2Gの太矢印Aで示すドレイン電流成分を表している。
図12−3(c)においては、各ドライバIC100の中心部付近での駆動電流が大きく、ドライバIC両端部での駆動電流が小さくなって、僅かながら凸形状をなす特性を示している。これは以下のように解釈することができる。
即ち、図11において説明したように、PMOS122−2のドレイン電流のうち、太矢印Bで示すドレイン電流の流れる方向は、Y軸方向にあって、LEDプリントヘッド13が低温雰囲気中に置かれた時に、プリント基板13bから受ける熱応力の方向(X軸方向)と直交する方向にある。このため、図10において説明したように、その電流変化率は式(7)で記述されるようにプラス係数を持ち、応力σXは圧縮力時にマイナスの値であることに注意すると、低温雰囲気中でのドライバIC100のドット電流の分布は、ドライバIC中心部のそれがやや低下した凹形状のものとなる。これは図12−3(b)のグラフと略等しい。
又、図11におけるPMOS122−2のうち、太矢印Aで示すドレイン電流の流れる方向は、X軸方向にあって、LEDプリントヘッド13が低温雰囲気中に置かれた時にプリント基板13bから受ける熱応力の方向(X軸方向)と平行な方向にある。このため、図10において説明したように、その電流変化率は式(6)で記述されるようにマイナスの係数を持ち、応力σXは圧縮力時にマイナスの値であることに注意すると、応力σXによる電流の変化率はプラスの値となって低温雰囲気中でのドライバIC100のドット電流の分布はドライバIC中心部のそれがやや高い凸形状のものとなる。これは図12−3(c)のグラフと略等しい。
図12−3(d)は、前記PMOS122−2の内、ゲート122−2G全体で制御される駆動電流の総計を示しており、図12−3(b)、(c)で示される各ドット電流を合算したしたものに対応している。
図12−3(c)においては、各ドライバIC100の中心部付近での駆動電流が僅かに低下して、ドライバIC両端部での駆動電流が僅かに大きく、僅かながら凹形状をなす特性を示している。図12−3(d)においては、各ドライバIC100の中心部付近での駆動電流が僅かに大きく、ドライバIC両端部での駆動電流が僅かに小さく、僅かながら凸形状をなす特性を示しているため。そのため、前記両者を合算した図12−3(d)の特性においては、ドライバIC中心部と端部付近での電流値が略等しく、平坦な特性が得られる。
このように、本実施例1における図12−3の測定結果と比較例における図12−2の測定結果とを比較して明らかなように、本実施例1の構成とすることで、ドライバIC100内での駆動電流のばらつきが改善された特性となって、本実施例1のLEDを備えた画像形成装置1においては、良好な印刷品位を得ることができる。その上、比較例の図12−1と本実施例1の図1とを比較して明らかなように、本実施例1の構成においては、駆動トランジスタのX軸方向への配列幅は、駆動電流出力端子PDの配列ピッチP1の略2倍に設定されると共に、主駆動トランジスタであるPMOS122−1,122−2の形状が略L字状になっており、2個の駆動電流出力端子PD1,PD2の駆動に係わる2個の駆動部123−1,123−2が回転対称に配置され、全体として矩形形状をなすように構成されている。この結果、ドライバIC100に占める駆動トランジスタのY軸方向への占有サイズを減少させることができ、チップ面積の削減とそれによる製造コストの低減が図れる。
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、LEDプリントヘッド13において、低温雰囲気中であってもドライバIC100端部とドライバIC100中心部との駆動電流の差が従来の構成のものより大幅に減少させることが可能となり、ドライバIC100内での駆動電流のばらつきが改善された特性を得ることができる。これにより、印刷濃度のむらを解消でき、印刷品位に優れた画像形成装置1を実現できる。
つまり、本実施例1の画像形成装置1では、前記LEDプリントヘッド13を採用するため、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品位の画像形成装置(プリンタ、コピー機等)を提供することができる。即ち、前記LEDプリントヘッド13を用いることにより、上記説明したフルカラーの画像形成装置1に限らず、モノクロ、マルチカラーの画像形成装置においても効果が得られるが、特に露光装置を数多く必要とするフルカラーの画像形成装置1において一層大きな効果が得られる。
その上、図12−1の比較例と本実施例1の図1とを比較して明らかなように、本実施例1の構成においては、駆動トランジスタであるPMOS118−1〜122−1,118−2〜122−2のX軸方向への配列幅が、2個の駆動電流出力端子PD1,PD2の配列ピッチP1の略2倍に設定されると共に、主駆動トランジスタであるPMOS122−1,122−2の形状が略L字状に形成され、2個の駆動電流出力端子PD1,PD2の駆動に係わる2個のPMOS122−1,122−2が回転対称に配置され、全体として矩形形状をなすように構成することができ、無駄なチップエリアの発生がない。この結果、ドライバIC100に占める駆動トランジスタであるPMOS118−1〜122−1,118−2〜122−2のY軸方向への占有サイズを減少させることができ、チップ面積の削減とそれによる製造コストの低減をも実現することができる。
本発明の実施例2は、実施例1を示す図1の駆動トランジスタに代えて、これとは構成の異なる図13の駆動トランジスタを設けている。その他の構成は実施例1と同様であるので、以下、実施例1とは構成の異なる駆動トランジスタのみを説明する。
(駆動トランジスタの構成)
図13は、図8中の駆動トランジスタであるPMOS118〜122の平面図を示す本発明の実施例2の構成図であり、実施例1の駆動トランジスタの平面図を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
本実施例2では、図8に示す主駆動トランジスタであるPMOS122(122−1,122−2)と、補助駆動トランジスタであるPMOS118〜121(118−1〜121−1,118−2〜121−2)において、ポリシリコンで形成された各ゲート配線の幅(即ち、各MOSトランジスタのゲート長)が、実施例1とは異なっている。
本実施例2の各PMOS118〜121(118−1〜121−1,118−2〜121−2)におけるゲート配線の幅(即ち、各PMOSトランジスタのゲート長)L1は、実施例1のゲート長Lと同様に、それぞれ等しく設定されている。しかし、本実施例2のPMOS122(122−1,122−2)では、X軸方向に沿う向きのゲート配線の幅(即ち、各PMOS122−1,122−2におけるゲート122−1G1,122−2G1のゲート長)がL1に設定され、Y軸方向に沿う向きのゲート配線の幅(即ち、各PMOS122−1,122−2におけるゲート122−1G2,122−2G2のゲート長)がL2に設定されている。両ゲート長L1,L2には、次の関係がある。
L2<Ll
その他の構成は、実施例1と同様である。
(駆動トランジスタの動作)
図13の駆動トランジスタを有する図8の駆動回路110を備えた図5のLEDプリントヘッド13は、実施例1と略同様の動作を行う。しかし、図13に示す本実施例2の駆動トランジスタは、図1に示す実施例1の駆動トランジスタと構成が異なるので、この異なる点についての動作を以下説明する。
前述したように、MOSトランジスタにおいては、このチャネル方向に圧縮歪を加えるとキャリア移動度が増加し、逆に引張歪を加えると移動度が減少するが知られている。この現象は短チャネル化した場合(即ち、ゲート長を小さくした場合)のMOSトランジスタにおいていっそう顕著である。
そのため、図13の主駆動トランジスタであるPMOS122−1,122−2において、X軸方向に沿う向きのゲート122−1G1,122−2G1におけるゲート配線の幅Llと、Y軸方向に沿う向きのゲート122−1G2,122−2G2におけるゲート配線の幅L2とが、
L2<Ll
の関係に設定される場合、応力によるドレイン電流の変化率は、X軸方向に沿う向きのゲート長L1のゲート122−1G1,122−2G1を有するトランジスタ部分に対して、Y軸方向に沿う向きのゲート長L2のゲート122−1G2,122−2G2を有するトランジスタ部分の側を大きくすることができる。
この結果、図1に示す実施例1の駆動トランジスタの構成と比べて、Y軸方向に沿う向きのゲート長L2のゲート配線の長さ、即ち、ゲート122−1G2,122−2G2を有するトランジスタ部分の長さを短縮することができる。そのため、図8の駆動回路110におけるY軸方向のサイズを小さくできることで、図5のドライバIC100(=100−1,100−2,・・・)のチップ面積を削減することが可能となる。
(LEDプリントヘッドの測定結果)
図14(a)〜(d)は、本発明の実施例2のLEDプリントヘッドにおいて低温雰囲気中(約−20℃)におけるドット毎の駆動電流の測定結果を模式的に示す図であり、実施例1を示す図12−3(a)〜(d)中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
図14(a)は、図9(a)に対応するLEDプリントヘッド13のブロック図であり、複数個のドライバIC(IC)100(=100−1〜100−26)と複数個のLEDアレイ(CHP)200(=200−1〜200−26)とが対向して配置されている。
図14(b)は、LEDプリントヘッド13の低温雰囲気中における各駆動電流値を示すグラフであって、図13におけるPMOS118−1〜122−1,118−2〜122−2の内、ゲート122−2G1を有するトランジスタ部分に生じるドレイン電流成分を表している。なお、図14(b)〜(d)は、図14(a)のブロック図と対比するように描かれており、各ドライバIC100の境目を破線を付して示している。
図14(b)においては、各ドライバIC100(100−1〜100−26)の中心部付近での駆動電流が僅かに低下して、各ドライバIC両端部での駆動電流が僅かに大きく、僅かながら凹形状を成した特性を示している。
図14(c)も同様に、LEDプリントヘッド13の低温雰囲気中における各駆動電流値を示すグラフであって、図13におけるPMOS118−1〜122−1,118−2〜122−2の内、ゲート122−2G2を有するトランジスタ部分に生じるドレイン電流成分を表している。
図14(c)においては、各ドライバIC100の中心部付近での駆動電流が大きく、各ドライバIC両端部での駆動電流が小さくなって、僅かながら凸形状を成した特性を示している。これは以下のように解釈することができる。
即ち、図13におけるPMOS122−2のドレイン電流の内、ゲート122−2G1により生じるドレイン電流の流れる方向は、Y軸方向にあって、LEDプリントヘッド13が低温雰囲気中に置かれた時にプリント基板13bから受ける熱応力の方向(X)と直交する方向にある。このため、図10を用いて説明したように、その電流変化率は、式(7)で記述されるようにプラス係数を持ち、応力σXは圧縮力時にマイナスの値であることに注意すると、低温雰囲気中でのドライバIC100のドット電流の分布はドライバIC中心部のそれがやや低下した凹形状のものとなる。これは図14(b)のグラフと略等しい。
又、図13におけるPMOS122−2のドレイン電流の内、ゲート122−2G2により生じるドレイン電流の流れる方向は、X軸方向にあって、LEDプリントヘッド13が低温雰囲気中に置かれた時にプリント基板13bから受ける熱応力の方向(X)と平行な方向にある。このため、図10を用いて説明したように、その電流変化率は式(6)で記述されるようにマイナスの係数を持ち、応力σXは圧縮力時にマイナスの値であることに注意すると、応力σXによる電流の変化率はプラスの値となって低温雰囲気中でのドライバIC100のドット電流の分布はドライバIC中心部のそれがやや高い凸形状のものとなる。これは図14(c)のグラフと略等しい。
図14(d)は、前述したPMOS122−2におけるゲート122−2G1,122−2G2全体で制御される駆動電流の総計を示しており、図14(b)、(c)で示される各ドット電流を合算したしたものに対応している。
図14(c)においては、各ドライバIC100の中心部付近での駆動電流が僅かに低下して、各ドライバIC両端部での駆動電流が僅かに大きく、僅かながら凹形状を成した特性を示している。図14(d)においては、各ドライバIC100の中心部付近での駆動電流が僅かに大きく、各ドライバIC両端部での駆動電流が僅かに小さく、僅かながら凸形状を成した特性を示している。そのため、前記両者を合算した図14(d)の特性においては、各ドライバIC中心部と端部付近での電流値が略等しく、平坦な特性が得られる。
このように、本実施例2の図14と比較例の図12−2とを比較して明らかなように、本実施例2の構成とすることで、ドライバIC100内での駆動電流のばらつきが改善された特性となって、本構成のLEDを備えた画像形成装置1においては良好な印刷品位を得ることができる。
それに加えて、比較例の図12−1と本実施例2の図13とを比較して明らかなように、本実施例2の構成においては、駆動トランジスタであるPMOS118−1〜122−1,118−2〜122−2のX軸方向への配列幅が、駆動電流端子出力PD1,PD2のピッチP1の略2倍とされると共に、主駆動トランジスタであるPMOS122−1,122−2の形状が略L字状とされ、2個の駆動電流出力端子PD1,PD2の駆動に係わる2個のPMOS122−1,122−2が回転対称に配置され、全体として矩形形状を成すように構成されている。この結果、ドライバIC100に占める駆動トランジスタであるPMOS118−1〜122−1,118−2〜122−2のY軸方向への占有サイズを減少させることができて、チップ面積の削減とそれによる製造コストの低減を実現することができる。
更に、本実施例2の構成においては、ドライバIC100のY軸方向に沿う向きのゲート122−1G2,122−2G2の長L2を短くすることで、このトランジスタ部分のゲート幅を小さくすることが可能となる。そのため、ドライバIC100に占める駆動トランジスタのY軸方向への占有サイズを更に減少させ、いっそうのチップ面積の削減が可能となる。
(実施例2の効果)
本実施例2における図7中の駆動回路110及びこれを用いた図4中のLEDプリントヘッド13によれば、低温雰囲気中であっても各ドライバIC端部と各ドライバIC中心部との駆動電流の差が比較例のものより小さくなり、ドライバIC内での駆動電流のばらつきを改善することができる。従って、実施例1と略同様に、印刷濃度のむらを解消できて、印刷品位に優れた画像形成装置1を実現できる。
本発明の実施例3は、実施例1を示す図1の駆動トランジスタに代えて、これとは構成の異なる図15の駆動トランジスタを設けている。その他の構成は実施例1と同様であるので、以下、実施例1とは構成の異なる駆動トランジスタのみを説明する。
(駆動トランジスタの構成)
図15は、図8中の駆動トランジスタであるPMOS118〜122の平面図を示す本発明の実施例3の構成図であり、実施例1の駆動トランジスタの平面図を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
本実施例3の図15中のX軸は、実施例1の図1と同様に、図6におけるドライバIC100の長辺方向を示し、これは図5における各ドライバIC100−1,100−2,・・・の配列方向に等しい。Y軸はX軸と直交する方向であるドライバIC100の短辺方向を示している。図15では、実施例1の図1とは異なり、駆動トランジスタである5個のPMOS118〜122と、1個のドットデータDO1用の駆動電流出力端子PD1とが示されている。
一点鎖線により囲まれた駆動部123内には、破線で示される2つのP型不純物の拡散領域124−1,124−2が形成されている。一方のP型不純物の拡散領域124−1には、補助駆動トランジスタである4個のPMOS118〜121が形成され、他方のP型不純物の拡散領域124−2には、主駆動トランジスタである1個のPMOS122が形成されている。PMOS122は、6個のトランジスタ部122−1〜122−6により構成されている。
各PMOS118〜122において、ハッチングにて示されるゲートGは、例えば、ポリシリコンにより形成されている。なお、ゲートGは、ポリシリコンに限定されず、メタル等の他の形成材料を用いて形成しても良い。各ゲートGの両側には、この各ゲートGをマスクにして、拡散領域124−1,124−2内に注入されたP型不純物イオンを含むソース領域S及びドレイン領域Dが形成されている。
なお、図15では、実施例1の図1と同様に、図示を簡略化するために、ゲート酸化膜、メタル配線、ソース領域S、ドレイン領域Dとのコンタクト部、及びパッシベーション保護膜等が省略されているが、実施例1と同様に、ソース領域S、及びドレイン領域Dのそれぞれは、図示しないメタル配線を用いて、ソース領域SはVDD端子に、ドレイン領域DはドットデータDO1用の駆動電流出力端子PD1にそれぞれ接続されている。
又、実施例1と同様に、各PMOS118〜121のゲート配線幅は同一であるが、PMOS118のゲート幅W0、PMOS119のゲート幅W1、PMOS120のゲート幅W2、及びPMOS121のゲート幅W3は、次のように設定されている。
Wl=2*WO
W2=4*WO
W3=8*WO
1個のPMOS122を構成する6個のトランジスタ部122−1〜122−6における各ゲート配線幅は同一であり、更に、各ゲート幅も同一である。
(駆動トランジスタの動作)
図15の駆動トランジスタを有する図8の駆動回路110を備えた図5のLEDプリントヘッド13は、実施例1と略同様の動作を行う。しかし、図15に示す本実施例3の駆動トランジスタは、図1に示す実施例1の駆動トランジスタと構成が異なるので、この異なる点についての動作を説明する。特に、補助駆動トランジスタであるPMOS118〜121の動作は、実施例1と同様であり、主駆動トランジスタであるPMOS122の動作が、実施例1と異なるので、このPMOS122を構成する6個のトランジスタ部122−1〜122−6の内の1個(例えば、122−1)の動作を説明する。
図16(a)〜(c)は、図15の主駆動トランジスタである1個のPMOS122を構成する6個のトランジスタ部122−1〜122−6の内の1個(例えば、122−1)を抜き出して示した図である。
図16(a)は、トランジスタ部122−1においてポリシリコンからなる1個のゲート122−1Gとこれに付随するソース領域122−1S1,122−1S2及びドレイン領域122−1D1,122−1D2とを示している。ゲート122−1Gにおいて、X軸方向の辺の長さはLx、Y軸方向の辺の長さはLyであり、これらの長さLx,Lyは略等しい。
Ly/Lx≒1
図16(b)、(c)も図16(a)と同様の図であるが、図16(b)では、長さLx,Lyが、
Ly/Lx<1
図(c)では、長さLx,Lyが、
Ly/Lx>1
に設定されている。
さて、図16(a)において、X軸方向に見ると、ソース領域122−1S2からドレイン領域122−1D1に向かって、横方向の実線矢印で示す向きにドレイン電流が流れており、図10にて説明したX軸方向に向かうチャネル電流を生じている。一方、Y軸方向に見ると、ソース領域122−1S1からドレイン領域122−1D2に向かって、縦方向の実線矢印で示す向きにドレイン電流が流れており、図10にて説明したY軸方向に向かうチャネル電流を生じている。
これと同時に、ソース領域122−1S2からドレイン領域122−1D2に向かって、略斜め方向の破線矢印で示す向きにドレイン電流が流れており、図10にて説明したX軸方向に向かうチャネル電流とY軸方向のチャネル電流の合成電流を生じている。更に、ソース領域122−1S1からドレイン領域122−1D1に向かって、略斜め方向の破線矢印で示す向きにドレイン電流が流れており、図10にて説明したX軸方向に向かうチャネル電流とY軸方向のチャネル電流の合成電流を生じている。
このように、図16(a)においては、X軸方向とY軸方向に向かう電流成分が略等しくなるように構成されていることが判る。
図16(b)の場合、X軸方向に見ると、ソース領域122−1S2からドレイン領域122−1D1に向かって、横方向の実線矢印で示す向きにドレイン電流が流れており、図10にて説明したX軸方向に向かうチャネル電流を生じている。一方、Y軸方向に見ると、ソース領域122−1S1からドレイン領域122−1D2に向かって、縦方向の実線矢印で示す向きにドレイン電流が流れており、図10にて説明したY軸方向に向かうチャネル電流を生じている。
前述したように、図16(b)の場合、ゲート122−1Gの長さLx,Lyを、
Ly/Lx<1
と設定しているので、チャネル長の短くなるルートの電流成分が大きくなるため、X軸方向に流れる電流成分に対してY軸方向に沿う電流成分の方が大きくなる。
これと同時に、ソース領域122−1S2からドレイン領域122−1D2に向かって、略斜め方向の破線矢印で示す向きにドレイン電流が流れており、図10にて説明したX軸方向に向かうチャネル電流とY軸方向のチャネル電流の合成電流を生じている。更に、ソース領域122−1S1からドレイン領域122−1D1に向かって、略斜め方向の破線矢印で示す向きにドレイン電流が流れており、図10にて説明したX軸方向に向かうチャネル電流とY軸方向のチャネル電流の合成電流を生じており、両者の比率は略等しいとみなせる。そのため、実線電流と破線電流との合算電流は、X軸方向に流れる電流成分に対してY軸方向に沿う電流成分の方が大きくなる。
図16(c)の場合、X軸方向に見ると、ソース領域122−1S2からドレイン領域122−1D1に向かって、横方向の実線矢印で示す向きにドレイン電流が流れており、図10にて説明したX軸方向に向かうチャネル電流を生じている。一方、Y軸方向に見ると、ソース領域122−1S1からドレイン領域122−1D2に向かって、縦方向の実線矢印で示す向きにドレイン電流が流れており、図10にて説明したY軸方向に向かうチャネル電流を生じている。
前述したように、図16(c)の場合、ゲート122−1Gの長さLx,Lyを、
Ly/Lx>1
と設定しているので、チャネル長の短くなるルートの電流成分が大きくなるため、Y軸方向に流れる電流成分に対してX軸方向に沿う電流成分の方が大きくなる。
これと同時に、ソース領域122−1S2からドレイン領域122−1D2に向かって、略斜め方向の破線矢印で示す向きにドレイン電流が流れており、図10にて説明したX軸方向に向かうチャネル電流とY軸方向のチャネル電流の合成電流を生じている。更に、ソース領域122−1S1からドレイン領域122−1D1に向かって、略斜め方向の破線矢印で示す向きにドレイン電流が流れており、図10にて説明したX軸方向に向かうチャネル電流とY軸方向のチャネル電流の合成電流を生じており、両者の比率は略等しいとみなせる。そのため、実線電流と破線電流との合算電流はY軸方向に流れる電流成分に対してX軸方向に沿う電流成分の方が大きくなる。
このように、図16(a)〜(c)を比較して明らかなように、ポリシリコンからなるゲート122−1Gの形状を変えることで、X軸方向に向かう電流成分とY軸方向に向かう電流成分の比率を任意に調整することが可能であると判る。
(LEDプリントヘッドの測定結果)
図17(a)〜(d)は、本発明の実施例3のLEDプリントヘッドにおいて低温雰囲気中(約−20℃)におけるドット毎の駆動電流の測定結果を模式的に示す図であり、実施例1を示す図12−3(a)〜(d)中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
図17(a)は、図9(a)に対応するLEDプリントヘッド13のブロック図であり、複数個のドライバIC(IC)100(=100−1〜100−26)と複数個のLEDアレイ(CHP)200(=200−1〜200−26)とが対向して配置されている。
図17(b)は、LEDプリントヘッド13の低温雰囲気中における各駆動電流値を示すグラフであって、図15におけるPMOS118〜122の内、ドレイン電流が主としてY軸方向に向かう電流成分について示している。
なお、図17(b)〜(d)は、図17(a)のブロック図と対比するように描かれており、各ドライバIC100の境目を破線を付して示している。
図17(b)においては、各ドライバIC100(100−1〜100−26)の中心部付近での駆動電流が僅かに低下して、各ドライバIC両端部での駆動電流が僅かに大きく、僅かながら凹形状を成した特性を示している。
図17(c)も同様に、LEDプリントヘッド13の低温雰囲気中における各駆動電流値を示すグラフであって、図15におけるPMOS118〜122の内、ドレイン電流が主としてX軸方向に向かう電流成分について示している。
図17(c)においては、各ドライバIC100の中心部付近での駆動電流が大きく、各ドライバIC両端部での駆動電流が小さくなって、僅かながら凸形状を成した特性を示している。これは以下のように解釈することができる。
即ち、図17(b)の電流成分は、LEDプリントヘッド13が低温雰囲気中に置かれた時にプリント基板13bから受ける熱応力の方向(X)と直交する方向の電流成分である。このため、図10を用いて説明したように、その電流変化率は、式(7)で記述されるようにプラス係数を持ち、応力σXは圧縮力時にマイナスの値であることに注意すると、低温雰囲気中でのドライバIC100のドット電流の分布はドライバIC中心部のそれがやや低下した凹形状のものとなる。これは図17(b)のグラフと略等しい。
又、図17(c)の電流成分は、LEDプリントヘッド13が低温雰囲気中に置かれた時にプリント基板13bから受ける熱応力の方向(X)と平行な方向の電流成分である。このため、図10を用いて説明したように、その電流変化率は式(6)で記述されるようにマイナスの係数を持ち、応力σXは圧縮力時にマイナスの値であることに注意すると、応力σXによる電流の変化率はプラスの値となって低温雰囲気中でのドライバIC100のドット電流の分布はドライバIC中心部のそれがやや高い凸形状のものとなる。これは図17(c)のグラフと略等しい。
図17(d)は、前述したPMOS118〜122の内、図17(b)、(c)で示される各電流を合算したしたものに対応している。
図17(c)においては、各ドライバIC100の中心部付近での駆動電流が僅かに低下して、各ドライバIC両端部での駆動電流が僅かに大きく、僅かながら凹形状を成した特性を示している。図17(d)においては、各ドライバIC100の中心部付近での駆動電流が僅かに大きく、各ドライバIC両端部での駆動電流が僅かに小さく、僅かながら凸形状を成した特性を示している。そのため、前記両者を合算した図17(d)の特性においては、各ドライバIC中心部と端部付近での電流値が略等しく、平坦な特性が得られる。
このように、本実施例3の図17と比較例の図12−2とを比較して明らかなように、本実施例3の構成とすることで、ドライバIC100内での駆動電流のばらつきが改善された特性となって、本構成のLEDを備えた画像形成装置1においては良好な印刷品位を得ることができる。
(実施例3の効果)
本実施例3における図7中の駆動回路110及びこれを用いた図4中のLEDプリントヘッド13によれば、低温雰囲気中であっても各ドライバIC端部と各ドライバIC中心部との駆動電流の差が比較例のものより小さくなり、ドライバIC内での駆動電流のばらつきを改善することができる。従って、実施例1と略同様に、印刷濃度のむらを解消できて、印刷品位に優れた画像形成装置1を実現できる。
(変形例)
本発明は、上記実施例1〜3に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
(a) LEDが光源として用いられる発光素子に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、他の被駆動素子(例えば、有機EL素子や発熱抵抗体等)への電圧印加制御を行う場合にも適用可能である。例えば、有機EL素子のアレイで構成される有機ELヘッドを供えたプリンタや、発熱抵抗体の列で構成されるサーマルプリンタにおいて利用することができる。更に、表示素子(例えば、列状あるいはマトリクス状に配列された表示素子等)の駆動にも適用可能である。
(b) 本発明は、2端子構造を備えたLED等の被駆動素子に限らず、3端子構造を備えた発光サイリスタの他、第1と第2の2個のゲート端子を備えた4端子サイリスタSCS(Silicon Semiconductor Controlled Switch)を駆動する場合にも適用可能である。
(c) 本発明の趣旨及び技術思想を考察して明らかなように、本発明は同一構成要素の連続的配置から成る被駆動素子列の駆動回路に限定されるものではなく、複数の駆動端子出力を備えたICチップ等に広く応用することが可能なことは勿論である。