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JP4749792B2 - アルミニウム系iii族窒化物結晶の製造方法および結晶積層基板 - Google Patents

アルミニウム系iii族窒化物結晶の製造方法および結晶積層基板 Download PDF

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Description

本発明は、ハロゲン化アルミニウムを含むIII族ハロゲン化物のガス体を原料に用いたアルミニウム系III族窒化物結晶(以下、Al系III族窒化物結晶という)の気相成長法による製造方法に関する。ここでAl系III族窒化物結晶とは、III族元素のホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)の窒化物結晶の単体、もしくはこれらIII族元素の窒化物結晶からなる混晶のうち、III族元素のアルミニウムを少なくとも含む全てのIII族元素の窒化物を意味する。具体的には窒化アルミニウム単体の他、窒化アルミニウムとアルミニウム以外のIII族元素であるホウ素、ガリウム、インジウムの窒化物との混晶、例えば、窒化アルミニウムボロン、窒化アルミニウムインジウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化アルミニウムインジウムガリウム、窒化アルミニウムガリウムボロン等を含み、B、Al、Ga、InなどのIII族元素の成分比は任意である。
窒化アルミニウムや窒化ガリウムといったIII族窒化物結晶は大きなバンドギャップエネルギーを持つ。窒化アルミニウムのバンドギャップエネルギーは6.2eV程度であり、窒化ガリウムのバンドギャップエネルギーは3.4eV程度である。これらの混晶である窒化アルミニウムガリウムは、成分比に応じ窒化アルミニウムと窒化ガリウムのバンドギャップエネルギーの間のバンドギャップエネルギーをとる。
従って、これらのAl系III族窒化物結晶を用いることにより、他の半導体では不可能な紫外領域の短波長発光が可能となり、白色光源用の紫外発光ダイオード、殺菌用の紫外発光ダイオード、高密度光ディスクメモリの読み書きに利用できるレーザー、通信用レーザーなどの発光光源が製造可能になる。さらに、電子の飽和ドリフト速度が高いことを利用して超高速電子移動トランジスタといった電子デバイスの製造や、負の電子親和力を利用してフィールドエミッタへの応用が可能である。
上記のような発光光源や電子デバイス等の機能を発現する部分は、基板上に数ミクロン以下の薄膜を積層して形成することで一般的に試みられている。これらは公知の分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、有機金属気相エピタキシー(MOVPE:Metalorganic Vapor Phase Epitaxy)法、ハイドライド気相エピタキシー(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法などの結晶成長方法により形成される。
上記の発光機能を発現する積層構造を形成するための基板としては上記のAl系III族窒化物、特に窒化アルミニウムからなる単結晶基板が好ましいとされる。なぜならば、窒化アルミニウムや窒化ガリウムといったIII族窒化物の単体もしくは混晶を成長層として形成する際には、界面における格子不整合の影響や、成長時の温度履歴によって発生する応力の影響を最小限に抑えることができるためである。この結果、成長層内の転位密度や欠陥、クラックが低減し、発光効率が向上すると考えられている。また、紫外線発光層を成長する場合においては、基板としてAl系III族窒化物結晶を用いることにより、基板部分のバンドギャップエネルギーが発光層のバンドギャップエネルギーより大きくなるので、発光した紫外光が基板で吸収されず、光の取り出し効率が高くなる。
上記Al系III族窒化物結晶基板の製造に関して、本発明者らはHVPE法で製造する方法を既に提案した(特許文献1)。この方法によれば、非常に速い結晶成長速度が得られることから、厚膜のAl系III−V族化合物半導体結晶が実用レベルで量産することが可能となる。したがって、この方法によってサファイア等の基板上に得られる厚膜結晶をウェハ状に加工することによって、Al系III−V族化合物半導体結晶基板として用いることができる。さらに、このような基板上にMOVPE法やMBE法、HVPE法などの結晶成長法を用いて発光等を目的とした積層構造を形成することにより、高効率な発光光源が得られると期待される。なお、特開2003−303774号記載のAl系III−V族化合物半導体とは、本発明におけるAl系III族窒化物結晶を含むものである。
以上のように、Al系III族窒化物単結晶基板の利用は、発光や電子移動等の機能性を持つ積層構造を製造する際、成長層の特性をより高性能・高品質に仕上げることを可能にする。
さらに、近年ではAl系III族窒化物単結晶基板をレーザーダイオードに応用する場合においては、基板が導電性を持つことが要求されるようになってきた。導電性基板を用いたレーザーダイオードの素子構造においては、基板の裏面および成長層の上側に電極がそれぞれ形成され、該電極から電流が注入されて活性層において発光し、劈開面を共振面としてレーザー発信する。一方、サファイア基板のような絶縁性基板上にレーザーダイオードを形成する場合、成長層上側にn型電極およびp型電極の両方が形成されるフリップチップ構造とする必要がある。
この構造では素子形成に際してリソグラフ及びエッチング等の素子加工工程が必須である。導電性基板を用いてレーザーダイオードを形成した場合には、上下導通の素子構造にすることができるので素子加工工程が不要となり、素子形成プロセスが簡便化されるメリットがある。したがって、導電性を有するAl系窒化物単結晶基板を提供することは、III族窒化物結晶の分野において最も望まれる技術の一つとして認識されている。
特開2003−303774号 特願2005−111934号 Physica Status Solidi (c), Vol.0, No.7 2498-2501 (2003)
本発明者らは、Al系III族窒化物結晶基板の製造を目的としてサファイア等の耐熱性基板上にHVPE法を用いてAl系III族窒化物結晶をエピタキシャル成長させることを試み提案した。しかし、該提案技術においては原料としてAl系III族ハロゲン化物ガスを用い、これと窒素源ガスを基板上において反応させてAl系III族窒化物結晶をエピタキシャル成長するが、原料であるAl系III族ハロゲン化物ガスには酸素ガスが不純物として含まれることがわかった。
原料ガス中に上記のような不純物が含まれると、成長したAl系III族窒化物結晶にも不純物として酸素元素が取り込まれる。基板を構成するAl系III族窒化物結晶に酸素不純物が存在すると、結晶内において欠陥が生成し結晶のバンド構造内に欠陥準位を生成する。当該基板上に発光素子を形成した場合には、発光した光が基板を透過するときに欠陥準位に相当する波長の光が吸収されるので好ましくない。
また、導電性を有する基板を製造する場合、Al系III族窒化物結晶にシリコンをIII族サイトにドープして結晶内に電子を発生させてn型半導体とすることが一般的におこなわれる。n型Al系III族窒化物結晶に上記の酸素不純物が存在すると、ドーピングにより発生した電子が捕獲されて導電性が低下するのでレーザーダイオード用の基板として使うことができなくなる。
以上の理由により、エピタキシャル成長するための原料ガスには酸素不純物の少ない高純度のものを供給して酸素濃度が低いAl系III族窒化物結晶とする必要がある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し、Al系III族窒化物結晶をエピタキシャル成長させるときの、Al系III族ハロゲン化物ガスの供給方法に注目した。
Al系III族ハロゲン化物ガスに含まれる酸素不純物の由来としては、キャリアガスに元々含まれるもの、配管接続部分からのコンタミネーションが考えられる。さらに、Al系III族ハロゲン化物ガスの供給手段としてハロゲン化物固体を加熱および気化する方法を用いる場合には、ハロゲン化物固体に含まれる吸着水、結晶水等の蒸発などが考えられる。以下、これら不純物を総称して酸素等不純物という。
そこで、Al系III族ハロゲン化物ガスをAl系III族窒化物結晶の反応域に供給する前工程に、加熱された金属アルミニウムに当該ガスを接触させる手段を採用することにより、原料ガス中に含まれる酸素等不純物を金属アルミニウムに吸着させることができ、反応域で得られるAl系III族窒化物結晶に含まれる酸素不純物を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ハロゲン化アルミニウムを含むAl系III族ハロゲン化物ガスと窒素源ガスとを反応域に保持された基板上で反応させることにより、基板上に気相成長させてAl系III族窒化物結晶を製造する方法において、該Al系III族ハロゲン化物ガスを金属アルミニウムと接触させた後に反応域に流出せしめることを特徴とするAl系III族窒化物の製造方法である。
本発明によれば、予め金属アルミニウムと接触させたAl系III族ハロゲン化物ガスを反応原料として用いるので、反応域には酸素等不純物の低減されたIII族ハロゲン化物ガスを供給することができ、基板上に成長するAl系III族窒化物結晶の酸素不純物濃度の低減に寄与する。さらに酸素不純物濃度が低減できるので、欠陥の少ない高品質なAl系III族窒化物結晶の製造が可能になり、シリコンドープによりn型半導体特性を付与する場合においても導電性の優れたAl系III族窒化物結晶を製造することが可能になる。
また、Al系III族ハロゲン化物ガスの供給手段として図2に示されるハロゲン化物固体の加熱および気化する方法を用いる場合、ハロゲン化物固体には吸着水、結晶水等が含まれるが、これらの吸着水や結晶水は該ハロゲン化物固体を加熱したときに気体H2Oとなり、同じく加熱により気化したハロゲン化物ガスと共に反応域に輸送される。本発明により、反応域に供給される直前に金属アルミニウムと接触し、気体H2Oは金属アルミニウムと反応して酸化アルミニウムとして捕獲、除去される。
また、Al系III族ハロゲン化物粉末は潮解性を有するため大気中の水分を吸着し易くハンドリングが困難であり、Al系III族窒化物結晶の原料としては適さなかったが、本発明により、Al系ハロゲン化物を該Al系III族窒化物結晶の原料として用いることが可能になる。
更に、アルミニウムを含むIII族金属とハロゲン化水素との反応によりAl系III族ハロゲン化物ガスを生成させて反応域に供給する場合において、該III族金属とハロゲン化水素との反応が不完全な場合に、未反応のハロゲン化水素が反応域に供給されて原料効率が下がることがある。しかし、本発明によって、未反応のハロゲン化水素と金属アルミニウムとの接触によりハロゲン化アルミニウムを生成できるので、原料効率を改善できるという利点も有する。
以下、本発明を発明の実施の形態に即して詳細に説明する。
図1は本発明によるAl系III族ハロゲン化物ガスと金属アルミニウムを接触させるための装置(以下、酸素捕獲器)の模式図である。反応器11にはガス導入口12および、ガス出口13が備え付けられ、反応器周囲には加熱ヒーター14が設置されている。反応器の材質には石英ガラスが好適に用いられる。反応器11内部には金属アルミニウム15が充填されている。
金属アルミニウムは純度が99.99%以上、より好ましくは99.999%以上の高純度のものを使用する。金属アルミニウムとAl系III族ハロゲン化物ガスとの接触面積を大きくするため、金属アルミニウムは粒状もしくはメッシュ状などの態様が好ましい。粒状の場合には直径1〜10mm程度のものが取り扱い易いがこの限りでない。金属アルミニウムは該反応器11内に直接充填しても良いが、アルミナなどの化学的耐久性、熱的耐久性の良好な高純度のボート等の内部に充填してもよい。また、例えばセラミックハニカムのような他材料の表面を高純度金属アルミニウムで被覆し、流通ガスとの接触面積を大きくしても良い。
反応器11外部の加熱ヒーターは100〜700℃、好ましくは180〜660℃の温度範囲で加熱される。100℃より低い場合には供給したAl系III族ハロゲン化物ガスが析出する場合がある。一方、660℃より高い場合は金属アルミニウムが熔融して金属アルミニウムの表面積が減少するために反応しにくくなるので好ましくない。
ガス導入口12からはAl系III族ハロゲン化物ガスがキャリアガスと共に供給される。ここで、酸素捕獲器内に導入するガス成分のうち水分や酸素などの不純物成分が反応器内に充填された金属アルミニウムと反応して酸化物となって捕獲、除去される。その後、ガス出口13から成長反応器16へ供給されてAl系III族窒化物結晶の製造に用いられる。
当該酸素等不純物は、キャリアガスに元々含まれる不純物、該酸素捕獲器に導入されるまでの配管接続部からのコンタミネーションによるものと考えられる。
酸素捕獲器の前に図2で示されるようなAl系III族ハロゲン化物固体の加熱および気化によりAl系III族ハロゲン化物ガスを得る方法も、本発明に好適に用いることが可能である。当該固体気化装置は容器21にキャリアガス導入口22と出口配管23が接続され、容器外部から加熱ヒーター24を用いて容器を21加熱する。容器内部にAl系III族ハロゲン化物固体25が充填されており、加熱によって昇華したAl系III族ハロゲン化物ガスは出口配管23から別の反応器に供給される。Al系III族ハロゲン化物固体には無水結晶、かつ不純物の少ないものを用いることが好ましいが、この場合は、当該酸素不純物に加えて残留した結晶水等や、気化装置内にAl系III族ハロゲン化物固体充填する時に吸着した吸着水等がAl系III族ハロゲン化物ガスの酸素等不純物になる。
特許文献1においてはアルミニウムを含むIII族金属とハロゲン化水素の反応によりAl系III族ハロゲン化物ガスを発生させる。図3は特許文献1におけるAl系III族ハロゲン化物ガスの発生部分のみを拡大した模式図である。石英ガラス製容器31内に石英ガラスもしくはアルミナ等からなるボート36上にアルミニウムを含むIII族金属35が設置され、ガス導入口32よりキャリアガスおよびハロゲン化水素が導入される。ハロゲン化水素はIII族金属と反応してAl系III族ハロゲン化物ガスを生成し、出口配管33より次に設置された反応域に供給される。この供給方法における本発明を適用した機器構成としては、図4のようにAl系III族ハロゲン化物ガス発生器41と成長反応器43を分離する態様が好適に使用できる。
この場合、Al系III族ハロゲン化物発生器41においては、アルミニウムを含むIII族金属とハロゲン化水素との反応によりAl系III族ハロゲン化物ガスを得ているが、該反応で反応しきれずに残った未反応ハロゲン化水素ガスも酸素捕獲器42に導入される。この酸素捕獲器42内において、供給したAl系III族ハロゲン化物ガスおよびそのキャリアガス中に含まれる酸素等不純物が金属アルミニウムに捕獲、除去されるのはもちろんのこと、さらに、未反応のハロゲン化水素ガスは酸素捕獲器内に充填された金属アルミニウムと速やかに反応し、Al系III族ハロゲン化物ガスとして成長反応器43内のAl系III族窒化物結晶の反応域に供給される。すなわち、酸素不純物捕獲以外に原料効率を改善する効果をもたらす。
また、Al系III族ハロゲン化物ガス発生器を縦型にしてもよい。縦型の発生器においては、上部よりハロゲン化水素ガスを供給することにより本発明の実施態様が好適に実現できる。図5は縦型の石英ガラス管51内部に金属アルミニウム52を充填した例であるが、上側配管53からハロゲン化水素を供給し、ガス出口54は反応管の底部に設ける。発生器に供給されたハロゲン化水素は先ず発生器の上部に充填された金属アルミニウムに接触し、Al系III族ハロゲン化物ガスが発生する。そして発生器上部で発生したAl系III族ハロゲン化物ガスは、下方へ輸送され、発生器底部に充填された金属アルミニウムに順次接触、通過する。当該通過中には発生器上部で未反応であったハロゲン化水素がさらに金属アルミニウムと反応してハロゲン化アルミニウムが発生する他、酸素等不純物も除去される。したがって、Al系III族ハロゲン化物ガスの発生量に必要な金属アルミニウム以上に、過剰に金属アルミニウムを発生器内に充填しておけば、Al系III族ハロゲン化物ガス発生器の機能と酸素捕獲器の機能を同一器内で順次発現して本発明が実施できる。
また、図2に示されるAl系III族ハロゲン化物固体の気化装置を用いる場合のAl系III族ハロゲン化物ガス供給の機器構成を図6に示した。固体気化装置61の後に配管接続されて酸素捕獲器62が設置され、酸素捕獲器62で酸素等不純物を除去されたAl系III族ハロゲン化物ガスは成長反応器63へ供給する態様が好適に用いられる。もしくは、成長反応器63の内部に金属アルミニウムを設置したフローチャネルを用意し、該気化装置61から得られたAl系III族ハロゲン化物ガスを成長反応器内部の当該フローチャネル71に直接供給する方法も好適に採用される。
なお、Al系III族ハロゲン化物ガスとは三塩化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウムの他、三塩化ガリウムもしくは一塩化ガリウム等のハロゲン化ガリウムや三塩化インジウム等のハロゲン化インジウムなどのハロゲン化物ガスを含むものであり、目的とするAl系III族窒化物結晶の混晶を製造する場合には組成に応じて、該ハロゲン化物ガスを適宜混合して使用する。
上記の通り、酸素等不純物を除去されたAl系III族ハロゲン化物ガスおよびそのキャリアガスは図7に示される成長反応器のノズル71から供給される。72は成長反応管である。成長反応管の材質は石英ガラスが好適に用いられる。成長反応器内にはガスを一方向に流すためにキャリアガスが常時流れている。キャリアガスの種類としては水素、窒素、ヘリウム、またはアルゴンの単体ガス、もしくはそれらの混合ガスが使用可能である。
成長反応管72外周には外部加熱装置73が配置される。外部加熱装置には公知の抵抗加熱装置や輻射加熱装置を用いればよい。この外部加熱装置は、主として反応域の反応ガスおよび基板の温度を所定温度に保持する目的で使用される。
成長反応管内部には、三塩化アルミニウムを含むIII族ハロゲン化物ガスと窒素源ガスが混合され反応する反応域に、基板保持並びに加熱のために加熱支持台74を設置し、アルミニウム系III族窒化物結晶を気相成長させるべく基板75を加熱支持台上に設置する。該支持台内部には発熱抵抗体が内蔵され、加熱支持台を発熱させることにより支持台上に設置された基板を直接所定温度に加熱するものである。当該支持台は図7に示す成長反応器において基板のみを局所的に加熱することが目的である。
外部加熱装置は必ずしも必須の装置ではなく、加熱支持台による加熱を単独で使用してもよい。もちろん両者を併用することも可能である。加熱支持台による加熱を適切に使用することにより、耐熱温度が1150℃程度の石英ガラス製反応管内部において1600℃程度の基板加熱を行うことが可能である。
加熱支持台としては、窒化アルミニウム製の内部に発熱抵抗体を有するものが好適に用いられるが、同様の抵抗加熱方式による加熱であれば、タングステン、カーボン、タングステンカーバイド等を発熱抵抗体として用い、これらをPBN(Pyrolytic Boron Nitride)、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等の耐熱絶縁素材で覆った加熱支持台も好適に使用できる。上記発熱抵抗体そのものを加熱支持台として用いることもできる。加熱支持台の詳細については特許文献2に記載されている。その他、外部加熱装置73を取り外して高周波加熱や光加熱方式によって支持台を加熱する方法も好適に使用可能である。
該加熱支持台上に基板を設置し、成長反応器内に設置する。基板としては、サファイア、シリコン、シリコンカーバイド、酸化亜鉛、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、ガリウム砒素、ホウ化ジルコニウム、ホウ化チタニウムなどが用いられる。
本発明においては、供給したAl系III族ハロゲン化物ガスを窒化してAl系III族窒化物結晶を得るために、窒素源ガスを必要とする。この窒素源ガスは通常キャリアガスに希釈して供給する。当該窒素源ガスとしては、窒素を含有する反応性ガスが採用されるが、コストと取扱易さの点で、アンモニアガスが好ましい。
反応管内に基板を導入後、反応管内に水素を含むキャリアガスを流通して加熱し、基板に付着した有機物を除去するため、通常サーマルクリーニングを行うと良い。サファイア基板の場合、一般的には1100℃で10分間程度保持する。その後、三塩化アルミニウムを含むAl系III族ハロゲン化物ガスと窒素源ガスの供給を開始して基板上にAl系III族窒化物結晶を成長させる。Al系III族ハロゲン化物ガスの供給量は、標準状態における体積流量により管理しても良いが、分圧により決定すると理解し易い。すなわち、基板上に供給される全ガス(キャリアガス、Al系III族ハロゲン化物ガス、窒素源ガス)の標準状態における体積の合計に対するAl系III族ハロゲン化物ガスの標準状態における体積の割合をAl系III族ハロゲン化物ガスの供給分圧としている。
Al系III族ハロゲン化物ガスの供給分圧は1×10−6atm〜1×10−1atmの濃度範囲が選択される。窒素源ガスの供給量は、一般的に供給する上記Al系III族ハロゲン化物ガスの1〜200倍の供給量が好適に選択されるがこの限りでない。成長時間は意図する膜厚になるように適宜調節される。一定時間成長した後、III族ハロゲン化物ガスの供給を停止して成長を終了する。基板を室温まで降温する。
以上、本発明により得たAl系III族ハロゲン化物ガスを原料としてAl系III族窒化物結晶の製造について説明したが、さらに高品質なAl系III族窒化物結晶を得るために、成長初期に基板上に100nm以下の膜厚のバッファー層を成長してその上にHVPE法で厚膜を形成する方法、基板上にHVPE法以外の方法によって結晶品質の良好なテンプレート膜を形成してその上にHVPE法で厚膜を形成する方法、基板をストライプ状もしくはドット状に加工してその上にHVPE法で横方向成長させながら厚膜を形成する方法等、様々な成長手法が適用可能である。
得られたAl系III族窒化物結晶は二次イオン質量分析計(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy、アルバック・ファイ株式会社製 ADEPT1010)により結晶中の酸素不純物濃度を測定し相対比較した。具体的には、一次イオン種としてセシウムイオン(Cs+)を照射して、発生した二次イオンを四重極型質量分析器を用いて分析した。一次加速電圧は5.0kVとし、基板中央付近に検出領域120×192μmの範囲で照射した。Al系III族窒化物結晶表面の酸化の影響を避けるため、表面から0.5μmの深さ位置までスパッタリングにより掘り進み、そのときの酸素元素の検出強度を測定して、各々のAl系III族窒化物結晶について相対比較した。
比較例
金属アルミニウムの充填されたAl系III族ハロゲン化物ガス発生器(以下、ガス発生器という)の後段に酸素捕獲器を設置せずにAl系III族ハロゲン化物ガスを成長反応器に導入して、Al系III族窒化物を成長した比較例である。装置構成としては図3に示すようなガス発生器により生成したAl系III族ハロゲン化物ガスを直接成長反応器に供給してAl系III族窒化物結晶を成長した。
ガス発生器は、図3に示される横型の石英ガラス製反応管を用意し、反応管内部に純度99.9999%の金属アルミニウムをアルミナ製ボートに設置した。金属アルミニウムは直径5mm程度の粒状のものを使用した。次いでガス発生器を外部より抵抗加熱器を用いて500℃に加熱し、水素キャリアガス297sccmと塩化水素ガス3sccmとの混合ガスを反応管に供給した。該発生器内部においては化1に従って塩化水素ガスと金属アルミニウムが反応し、三塩化アルミニウムが発生し、発生器出口配管よりガス発生器から成長反応器へ輸送された。
成長反応器は図7に示される構造であり、反応管ならびにノズルは石英ガラス製からなる。加熱装置としてはホットウォールタイプの抵抗加熱装置と、金属発熱線を内蔵した窒化アルミニウム製加熱支持台を併用した。該基板支持台上に1×1cmのサファイア(001)基板を設置した。加熱支持台の端面には電極導入のために2ヶ所金属線が現れており、そこに電流導入用の電線を接続した。電流導入用の電線は反応器端部まで設置し、電流導入端子を用いて内部と外部の雰囲気を隔離した状態で電線を反応器外部に取り出した。反応器外部に取り出した電線に、別途用意した電線を用いて定電圧交流電源の一種であるボルトスライダーに接続した。
本例においては、外部加熱装置により800℃に加熱する他、当該加熱支持台に前記定電圧交流電源を用いて450Wの電力を供給して加熱支持台を発熱させた。このときの加熱支持台温度を放射温度計により測定したところ、支持台温度は1350℃であることを確認した。
成長反応器ノズルより三塩化アルミニウムガスが供給された状態で、さらにノズル周囲よりキャリアガスにより希釈された窒素源ガスを供給し、該サファイア基板上に窒化アルミニウムの成長を開始した。窒素源ガスにはアンモニアガスを用い、アンモニアガスは8sccm、キャリアガスとしての水素ガスを1192sccm供給した。
60分間窒化アルミニウムの成長を行った後、三塩化アルミニウムの供給を停止し、窒化アルミニウムの成長を停止した。次いで、加熱支持台に投入した電力ならびに外部加熱装置の出力を下げて、基板温度を降温した。この際、基板上に成長した窒化アルミニウムの再分解を防ぐため、加熱装置が550℃に温度が下がるまでアンモニアガスを反応管に流通した。加熱装置が室温付近まで下がったことを確認して、反応器から基板を取り出した。
基板重量を秤量し、成長前後の重量変化と、基板面積、ならびに窒化アルミニウムの密度(3.26g/cm3)から、基板上に成長した窒化アルミニウム結晶の平均膜厚を計算した結果、10.5μmであった。前出の条件でSIMSを測定した結果、酸素元素の検出強度は2.1×10(任意単位)であった。
本実施例においては、図3のような金属アルミニウムの充填されたガス発生器の後段に本発明の図1に示される酸素捕獲器を設置した後、Al系III族ハロゲン化物ガスを成長反応器に導入して、Al系III族窒化物を成長した例について説明する。反応器構成は図4に示されるものである。
ガス発生器41は比較例と同様のものを用い、発生器の外部加熱温度、供給したキャリアガスならびに塩化水素ガス流量も比較例と同様の条件とした。該発生器内部においては化1に従って塩化水素ガスと金属アルミニウムが反応し、三塩化アルミニウムが発生し、発生器出口配管よりガス発生器41から酸素捕獲器42へ輸送された。
酸素捕獲器42は図1に示す形状を有し、石英ガラス製の容器内部には純度99.9999%の金属アルミニウムを充填した。該金属アルミニウムは直径5mmの粒状のものを使用した。該金属アルミニウムは外周部に設置された抵抗加熱器により500℃に加熱されており、ガス発生器より輸送された三塩化アルミニウムは、当該酸素捕獲器に導入され、容器内部の金属アルミニウムに接触しつつ、該酸素捕獲器を通過し、成長反応器43へ輸送された。当該酸素捕集器を通過している間、ガス発生器内で未反応のまま通過した塩化水素ガスもここで下記反応式に従って三塩化アルミニウムになる。さらに、酸素等不純物が金属アルミニウムと反応して捕獲される。
Al + 3HCl → AlCl + 1.5H・・・・・(1)
成長反応器の構造は比較例と同様のものを用いた。用いた基板の種類、成長時に供給したキャリアガス流量、窒素源ガス流量、支持台温度、成長時間、成長の手順も比較例と同様とした。
成長した窒化アルミニウム結晶の平均膜厚を計算した結果、9.8μmであった。前出の条件でSIMSを測定した結果、酸素元素の検出強度は5.3×10(任意単位)であった。比較例の検出強度と比較すると0.25倍であり、成長した窒化アルミニウム結晶に含まれる酸素濃度が低減していた。
Al系III族ハロゲン化物ガス発生器に図5に示す縦型カラム形状のものを使用し、Al系III族ハロゲン化物ガスの発生と酸素不純物の捕獲を同一装置内で行った実施例である。装置構成としては図4に示すものと事実上同じである。
石英ガラスからなる発生器の容器51内部に純度が99.9999%の金属アルミニウム52を充填した。金属アルミニウムは直径5mm程度の粒状のものを使用した。次いで当該発生器を外部より抵抗加熱器55を用いて500℃に加熱し、水素キャリアガス297sccmと塩化水素ガス3sccmとの混合ガスを配管53より反応管に供給した。該発生器内部においては上記反応式(1)に従って塩化水素ガスと金属アルミニウムが反応して三塩化アルミニウムガスが発生する。発生した三塩化アルミニウムガスは出口経路54より成長反応器へ輸送されるが、本実施例における縦型カラム状の発生器においては、容器上方で発生したAl系III族ハロゲン化物ガスが必ず当該容器下方に充填された金属アルミニウム領域を通過することになる。すなわち、上方において未反応であった塩化水素ガスが存在しても、当該容器下方において反応することができる。また、発生器に流入した酸素等不純物についても当該容器下方を通過するまでに十分な滞在時間を確保することができるので、図1に示す酸素捕集器としても好ましい態様であると言える。
その他、成長反応器における窒素源ガス流量、成長温度、手順等は実施例1と同様にして窒化アルミニウム結晶を成長した。その結果、成長した窒化アルミニウム結晶の膜厚は9.7μmであった。前出の条件でSIMSを測定した結果、酸素元素の検出強度は3.6×10(任意単位)であった。比較例の検出強度と比較すると0.17倍であり、成長した窒化アルミニウム結晶に含まれる酸素濃度が低減していた。
本実施例においては、Al系III族ハロゲン化物固体として三塩化アルミニウム粉末の充填されたAl系III族ハロゲン化物固体気化装置(以下、固体気化装置という)の後段に本発明の図1に示される酸素捕獲器を設置した後、Al系III族ハロゲン化物ガスを成長反応器に導入して、Al系III族窒化物結晶を成長した例について説明する。反応器構成は図7に示される通りである。
固体気化装置は、図2に模式的に示される形状を有しており、石英ガラス製の容器21を用意し、固体気化装置内部に純度99.99%の三塩化アルミニウム分粉末を設置した。次いで固体気化装置を外部より抵抗加熱器を用いて101℃に加熱し、水素キャリアガス300sccmを反応管に供給した。該固体気化装置内部において、固体気化装置を加熱する温度における飽和蒸気圧の分だけ、反応管内部において三塩化アルミニウムはキャリアガス中に昇華し、気化装置出口配管より固体気化装置41から酸素捕獲器42へ輸送された。101℃においては実質的には三塩化アルミニウム二量体が昇華し、そのときの飽和蒸気圧は1.68×10‐3atmであるので、三塩化アルミニウムの単量体としては300sccmのキャリアガス中に三塩化アルミニウムガスは約1sccm含まれていた。
当該三塩化アルミニウムガスは、内部に99.9999%の純度を有する金属アルミニウムが充填され、かつ外部加熱器により500℃に加熱された酸素捕集器に導入された。該三塩化アルミニウムガスもしくはキャリアガス中に含まれている酸素等不純物を酸素捕集器において除去した後、酸素捕集器の出口配管より成長反応器に輸送した。
以下、成長反応器は実施例1と同様のものを使用し、成長反応器における窒素源ガス流量、成長温度、手順などは実施例1と同様にして窒化アルミニウム結晶を成長した。その結果、成長した窒化アルミニウム結晶の膜厚は10.1μmであった。前出の条件でSIMSを測定した結果、酸素元素の検出強度は4.4×10(任意単位)であった。比較例の検出強度と比較すると0.21倍であり、成長した窒化アルミニウム結晶に含まれる酸素濃度が低減していた。
以下の表に、各実施例で得られた窒化アルミニウム結晶中の酸素濃度を比較例のそれと比較(相対比)してまとめた。本発明により、得られる窒化アルミニウム中の酸素濃度が顕著に低減していることがわかる。
Figure 0004749792
本発明における酸素捕獲器を概念的に示す平面図 本発明におけるAl系III族ハロゲン化物固体気化装置の構造を概念的に示す平面図 本発明におけるAl系III族ハロゲン化物ガス発生器の構造を概念的に示す平面図 本発明におけるAl系ハロゲン化物ガス発生器および酸素捕獲器、成長反応器を使用した場合の実施態様 本発明における縦型カラム構造の酸素捕獲器の構造を概念的に示す平面図 本発明におけるAl系ハロゲン化物固体気化装置および酸素捕獲器、成長反応器を使用した場合の実施態様 本発明で用いた成長反応器の構造を概念的に示す平面図
符号の説明
11 容器
12 ガス導入口
13 ガス出口
14 加熱ヒーター
15 金属アルミニウム
16 酸素捕獲器または成長反応器
21 容器
22 キャリアガス導入口
23 出口配管
24 加熱ヒーター
25 Al系III族ハロゲン化物固体
26 酸素捕獲器または成長反応器
31 容器
32 ガス導入口
33 ガス出口
34 加熱ヒーター
35 金属アルミニウム
36 ボート
41 Al系III族ハロゲン化物ガス発生器
42 酸素捕獲器
43 成長反応器
51 反応管
52 金属アルミニウム
53 配管
54 ガス出口
55 加熱ヒーター
61 Al系III族ハロゲン化物固体気化装置
62 酸素捕獲器
63 成長反応器
71 Al系III族ハロゲン化物ガス供給ノズル
72 成長反応管
73 外部加熱装置
74 加熱支持台
75 基板

Claims (6)

  1. ハロゲン化アルミニウムを含むアルミニウム系III族ハロゲン化物ガスと窒素源ガスとを反応域に保持された基板上で反応させることにより、基板上に気相成長させてアルミニウム系III族窒化物結晶を製造する方法において、該アルミニウム系III族ハロゲン化物ガスを金属アルミニウムと接触させた後に反応域に流出せしめることを特徴とするアルミニウム系III族窒化物結晶の製造方法。
  2. アルミニウム系III族ハロゲン化物ガスと金属アルミニウムとを100〜700℃で接触させることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム系III族窒化物結晶の製造方法。
  3. 金属アルミニウムの純度が99.99%以上であることを特徴とする請求項1または2記載のアルミニウム系III族窒化物結晶の製造方法。
  4. アルミニウム系III族窒化物結晶が、窒化アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルミニウム系III族窒化物結晶の製造方法。
  5. アルミニウム系III族窒化物結晶が、窒化アルミニウム、並びに窒化ガリウムおよび/または窒化インジウムからなる混晶であって、窒化アルミニウムの組成比が20モル%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルミニウム系III族窒化物結晶の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法によって得られることを特徴とするアルミニウム系III族窒化物結晶積層基板。
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