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JP4631947B2 - ブレーキ制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に設けられた車輪に付与する制動力を制御するブレーキ制御装置に関する。
近年、車両における制動装置として、車両の走行状況に応じて最適な制動力を車両に与えるよう各車輪の制動力を制御する電子制御ブレーキシステムが多く採用されている(たとえば特許文献1参照)。
このような電子制御ブレーキシステムは、ブレーキフルードの流路に増圧リニア制御弁および減圧リニア制御弁を備えている。これらの増圧リニア制御弁、減圧リニア制御弁はいずれも、その上流側と下流側との液圧差が供給電流に対してリニアに制御され、ホイールシリンダの液圧であるホイールシリンダ圧を任意の大きさに制御可能なリニア弁であり、供給電流を変化させることにより、ホイールシリンダ圧を連続的に変化させ得るものである。
増圧リニア制御弁は、動力液圧源とホイールシリンダとの間に設けられ、動力液圧源の液圧を制御してホイールシリンダに供給し、ホイールシリンダ圧を上昇させる。減圧リニア制御弁は、リザーバとホイールシリンダとの間に設けられ、ホイールシリンダからリザーバへのブレーキフルードの排出を制御し、ホイールシリンダ圧を低下させる。
電子制御ブレーキシステムでは、ブレーキペダルが踏み込まれると、その踏込みにより発生させられるマスタシリンダ圧に基づいてホイールシリンダの目標液圧が設定され、その目標液圧が得られるように増圧リニア制御弁または減圧リニア制御弁への供給電流が決定され、増圧リニア制御弁または減圧リニア制御弁が開弁されてホイールシリンダ圧が増圧または減圧させられる。そして、ブレーキペダルの踏み込みが解除されると、減圧リニア制御弁に電流が供給され、減圧リニア制御弁が所定時間開弁されてホイールシリンダ内のブレーキフルードがリザーバに排出され、残圧が0になるようにされる。
特開2006−27453号公報
ところで、電子制御ブレーキシステムにおいて、上述の増圧リニア制御弁および減圧リニア制御弁は通常、電子制御装置(ECU)によりPWM制御で供給電流が制御されるが、このPWM制御では高周波のスイッチングノイズが発生する。このノイズは、車両が走行している場合にはロードノイズが大きいため車両の乗員に聞こえにくいが、車両が停止または非常に低速で走行している場合にはロードノイズが小さいため、乗員に高周波のノイズが聞こえる可能性がある。特に、ブレーキの踏み込みが解除された後に行われる上述のような残圧を0にするための制御では、減圧リニア制御弁を開弁することによって発生したノイズを乗員が不快に感じてしまう可能性がある。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホイールシリンダの液圧を増減圧する際に発生するノイズを抑制することにより車内における快適性を向上することのできるブレーキ制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ制御装置は、液圧回路に配置された複数の弁を開閉制御することでホイールシリンダの液圧を増減圧するブレーキ制御装置であって、複数の弁は、第1弁と、第1弁より開閉制御によるノイズが小さい第2弁とを含み、車両状態を検出する車両状態検出手段と、車両状態検出手段の検出結果に基づいて、増減圧によるノイズの車両への影響の程度を推定する推定手段と、推定手段の推定結果に基づいて、増減圧を行う弁を選択する選択手段と、車速を検出する車速検出手段とを備える。推定手段は、車速検出手段により検出された車速が所定の基準速度より小さい場合に、車両へのノイズの影響が所定の基準値より大きいと推定し、選択手段は、推定手段により車両へのノイズの影響が所定の基準値より大きいと推定された場合に、第2弁を選択する。制動中におけるホイールシリンダの液圧の最大値を検出する最大液圧検出手段と、最大液圧検出手段の検出結果に基づいてホイールシリンダにおける残圧の可能性を推定する残圧推定手段とをさらに備え、選択手段は、残圧推定手段の推定結果に基づいて増減圧する弁を選択する。
この態様によると、ホイールシリンダの増減圧によるノイズの車両への影響を考慮し、適切な弁を選択して増減圧を行うことができる。これにより好適にノイズを抑制することができるので、車内における快適性を向上させることができる。
ノイズによる影響が大きい場合にはノイズが小さい第2弁を選択することで、ノイズが抑制され、車内における快適性を向上させることができる。
車速検出手段は、たとえば車輪の回転速度を検出する車輪速センサや、車速を直接検出する車速センサであってよい。車両停止時や微低速時は、車内が走行時に比べ静かな場合が多いため、増減圧によるノイズが目立つ。そこで、車速が所定の基準速度より小さい場合には、車両へのノイズの影響が所定の基準値より大きいと推定し、開閉制御によるノイズが小さい第2弁を選択して増減圧を行うことにより、車内の快適性を向上させることができる。
また、この場合、ブレーキを解除したときの液圧回路中の液圧を検出する必要がないため、弁選択の迅速化が可能となる。たとえば、ホイールシリンダの液圧が低い状態からの減圧であれば、ホイールシリンダに残圧が残る可能性は低いため、弁の開閉制御によるノイズ抑制を優先して第2弁を選択する。一方、ホイールシリンダの液圧が高い状態からの減圧であればホイールシリンダに残圧が残る可能性が高いため、迅速に残圧を低減するために第1弁を選択する。このように残圧推定手段の推定結果に基づいて減圧する弁を選択することで、迅速にホイールシリンダの残圧を低減できる。
第2弁は、同じ液圧に対するブレーキフルード通過量が第1弁より少ない弁であってもよい。一般に、同じ液圧に対するブレーキフルード通過量が少ない弁ほど、増減圧によるノイズが小さくなる。従って、第2弁を同じ液圧に対するブレーキフルード通過量が第1弁より少ない弁とすることにより、第2弁を選択して増減圧を行った際のノイズをより抑制できる。
ホイールシリンダの液圧を検出する液圧検出手段と、運転者によるブレーキ操作部材の操作を検出する操作検出手段とをさらに備え、選択手段は、液圧検出手段と操作検出手段の検出結果に基づいて、制動が停止されたときのホイールシリンダの液圧と所定の第1基準液圧とを比較し、比較結果に基づいて増減圧を行う弁を選択してもよい。たとえば、ホイールシリンダの残圧が所定の基準液圧より小さい場合は、引きずりによる発熱等の車両への影響も小さいため、増減圧応答特性よりもノイズの抑制を優先させることで、車内の快適性をより向上させることができる。
選択手段は、ホイールシリンダの液圧が第1基準液圧よりも大きい所定の第2基準液圧より大きい場合に、第1弁を選択してもよい。ホイールシリンダの残圧が第2基準液圧よりも大きい場合には、引きずりによる発熱の影響が大きい。このような場合には、同じ液圧に対するブレーキフルード通過量が第2弁より多い第1弁を選択することで、応答よく減圧し発熱を抑制することができる。
制動の開始判定をするための液圧を検出する制動開始判定液圧検出手段と、制動開始判定液圧検出手段の検出液圧と所定の制動開始判定基準液圧とを比較して制動開始を判定する制動開始判定手段とをさらに備え、制動開始判定基準液圧は、第2基準液圧よりも大きい液圧に設定されてもよい。上述のように構成した場合、制御終了時に最大で第2基準液圧分の残圧が生ずることが想定される。制動開始を判定するための制動開始判定基準液圧が第2基準液圧以下であると、この残圧により制動開始の判定がなされてしまう可能性がある。そこで、制動開始判定基準液圧を第2基準液圧よりも大きい液圧とすることにより、このように残圧によって制動開始の判定がなされる事態を防止できる。
車両の加速要求を検出する加速要求検出手段をさらに備え、選択手段は、加速要求検出手段が加速要求を検出した場合には、第1弁を選択してもよい。加速要求がある場合には、たとえばエンジン音等が増大するので、弁の開閉制御によるノイズはマスクされる。したがって、このような場合には同じ液圧に対するブレーキフルード通過量が多い第1弁を選択することで、残圧を第2弁よりも素早く低減可能で、迅速な加速を行うことができる。
ブレーキ操作部材の操作速度を検出する操作速度検出手段をさらに備え、選択手段は、操作速度と所定の基準操作速度とを比較することにより、増減圧する弁を選択してもよい。この場合、ブレーキを解除したときの液圧回路中の液圧を検出する必要がないため、弁選択の迅速化が可能となる。
たとえば、ホイールシリンダの液圧を減圧する際に、ブレーキ操作部材の戻し速度が低いときは残圧が残る可能性が低いため、弁の開閉制御によるノイズ抑制を優先して第2弁を選択する。一方、ブレーキ操作部材の戻し速度が高いときは制動が停止されるまでの時間が短くなるため、残圧が残る可能性がある。したがって、このときは迅速に残圧を低減するために第1弁を選択する。このようにブレーキ操作部材の操作速度に基づいて減圧する弁を選択することで、迅速にホイールシリンダの残圧を低減できる。
本発明の別の態様もまた、ブレーキ制御装置である。この装置は、第1の車輪に制動力を付与するための第1ホイールシリンダと、第1の車輪とは異なる第2の車輪に制動力を付与するための第2ホイールシリンダと、動力の供給により高圧の液圧を発生させ得る動力液圧源と、ブレーキ操作部材の操作量に応じてマスタ流路を介して第1ホイールシリンダにブレーキフルードを供給するマスタシリンダと、ブレーキ操作部材の操作量に応じてレギュレータ流路を介して第2ホイールシリンダにブレーキフルードを供給するレギュレータと、マスタ流路に設けられた常開型電磁弁であるマスタカット弁と、レギュレータ流路に設けられた常開型電磁弁であるレギュレータカット弁と、第1および第2ホイールシリンダと動力液圧源とを連通する動力液圧源流路と、動力液圧源流路に設けられ、弁の開度を調整することにより第1および第2ホイールシリンダの液圧を増圧する常閉型電磁弁である増圧リニア制御弁と、動力液圧源流路に設けられ、弁の開度を調整することにより第1および第2ホイールシリンダの液圧を減圧する常閉型電磁弁である減圧リニア制御弁と、マスタカット弁、レギュレータカット弁、増圧リニア制御弁および減圧リニア制御弁に供給する電流を制御する電流制御部とを備える。電流制御部は、第1および第2ホイールシリンダの液圧を増減圧する際に、車速が所定の基準車速以下の場合には、増圧リニア制御弁または減圧リニア制御弁から増減圧せずに、レギュレータカット弁またはマスタカット弁から増減圧する。制動中における第1および第2ホイールシリンダの液圧の最大値を検出する最大液圧検出手段と、最大液圧検出手段の検出結果に基づいて第1および第2ホイールシリンダにおける残圧の可能性を推定する残圧推定手段とをさらに備え、電流制御部は、残圧推定手段の推定結果に基づいて増減圧する弁を選択する。
この態様によると、車速が所定の基準速度以下である車両停止時や微低速時に、開閉制御によるノイズが小さいレギュレータカット弁またはマスタカット弁から増減圧することにより、ノイズが抑制され、車内の快適性を向上させることができる。
本発明によれば、ホイールシリンダの液圧を増減圧する際に発生するノイズを抑制することのできるブレーキ制御装置を提供できる。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置20を示す系統図である。同図に示されるブレーキ制御装置20は、車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)を構成しており、車両に設けられた4つの車輪に付与される制動力を制御する。
ブレーキ制御装置20は、図1に示されるように、車輪(図示せず)ごとに設けられた制動力付与機構としてのディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLと、マスタシリンダユニット10と、動力液圧源30と、液圧アクチュエータ40とを含む。
ディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪、左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。マニュアル液圧源としてのマスタシリンダユニット10は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24の運転者による操作量に応じて加圧されたブレーキフルードをディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出する。動力液圧源30は、動力の供給により加圧された作動流体としてのブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル24の操作から独立してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。液圧アクチュエータ40は、動力液圧源30またはマスタシリンダユニット10から供給されたブレーキフルードの液圧を適宜調整してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに送出する。これにより、液圧制動による各車輪に対する制動力が調整される。本実施形態においては、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40を含んで、ホイールシリンダ圧制御系統が構成される。
ディスクブレーキユニット21FR〜21RL、マスタシリンダユニット10、動力液圧源30、および液圧アクチュエータ40のそれぞれについて以下でさらに詳しく説明する。各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22とブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ23FR〜23RLを含む。そして、各ホイールシリンダ23FR〜23RLは、それぞれ異なる流体通路を介して液圧アクチュエータ40に接続されている。なお以下では適宜、ホイールシリンダ23FR〜23RLを総称して「ホイールシリンダ23」という。
ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ23に液圧アクチュエータ40からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク22に摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニット21FR〜21RLを用いているが、たとえばドラムブレーキ等のホイールシリンダ23を含む他の制動力付与機構を用いてもよい。
マスタシリンダユニット10は、本実施形態では液圧ブースタ付きマスタシリンダであり、液圧ブースタ31、マスタシリンダ32、レギュレータ33、およびリザーバ34を含む。液圧ブースタ31は、ブレーキペダル24に連結されており、ブレーキペダル24に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ32に伝達する。動力液圧源30からレギュレータ33を介して液圧ブースタ31にブレーキフルードが供給されることにより、ペダル踏力は増幅される。そして、マスタシリンダ32は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
マスタシリンダ32とレギュレータ33との上部には、ブレーキフルードを貯留するリザーバ34が配置されている。マスタシリンダ32は、ブレーキペダル24の踏み込みが解除されているときにリザーバ34と連通する。一方、レギュレータ33は、リザーバ34と動力液圧源30のアキュムレータ35との双方と連通しており、リザーバ34を低圧源とすると共に、アキュムレータ35を高圧源とし、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。レギュレータ33における液圧を以下では適宜、「レギュレータ圧」という。
動力液圧源30は、アキュムレータ35およびポンプ36を含む。アキュムレータ35は、ポンプ36により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギ、たとえば14〜22MPa程度に変換して蓄えるものである。ポンプ36は、駆動源としてモータ36aを有し、その吸込口がリザーバ34に接続される一方、その吐出口がアキュムレータ35に接続される。また、アキュムレータ35は、マスタシリンダユニット10に設けられたリリーフバルブ35aにも接続されている。アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まってたとえば25MPa程度になると、リリーフバルブ35aが開弁し、高圧のブレーキフルードはリザーバ34へと戻される。
上述のように、ブレーキ制御装置20は、ホイールシリンダ23に対するブレーキフルードの供給源として、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35を有している。そして、マスタシリンダ32にはマスタ配管37が、レギュレータ33にはレギュレータ配管38が、アキュムレータ35にはアキュムレータ配管39が接続されている。これらのマスタ配管37、レギュレータ配管38およびアキュムレータ配管39は、それぞれ液圧アクチュエータ40に接続される。
液圧アクチュエータ40は、複数の流路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流路には、個別流路41、42、43および44と、主流路45とが含まれる。個別流路41〜44は、それぞれ主流路45から分岐されて、対応するディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RR、21RLのホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLに接続されている。これにより、各ホイールシリンダ23は主流路45と連通可能となる。
また、個別流路41、42、43および44の中途には、ABS保持弁51、52、53および54が設けられている。各ABS保持弁51〜54は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁弁である。開状態とされた各ABS保持弁51〜54は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。つまり、主流路45からホイールシリンダ23へとブレーキフルードを流すことができるとともに、逆にホイールシリンダ23から主流路45へもブレーキフルードを流すことができる。ソレノイドに通電されて各ABS保持弁51〜54が閉弁されると、個別流路41〜44におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
さらに、ホイールシリンダ23は、個別流路41〜44にそれぞれ接続された減圧用流路46、47、48および49を介してリザーバ流路55に接続されている。減圧用流路46、47、48および49の中途には、ABS減圧弁56、57、58および59が設けられている。各ABS減圧弁56〜59は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁弁である。各ABS減圧弁56〜59が閉状態であるときには、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて各ABS減圧弁56〜59が開弁されると、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードがホイールシリンダ23から減圧用流路46〜49およびリザーバ流路55を介してリザーバ34へと還流する。なお、リザーバ流路55は、リザーバ配管77を介してマスタシリンダユニット10のリザーバ34に接続されている。
主流路45は、中途に分離弁60を有する。この分離弁60により、主流路45は、個別流路41および42と接続される第1流路45aと、個別流路43および44と接続される第2流路45bとに区分けされている。第1流路45aは、個別流路41および42を介して前輪側のホイールシリンダ23FRおよび23FLに接続され、第2流路45bは、個別流路43および44を介して後輪側のホイールシリンダ23RRおよび23RLに接続される。
分離弁60は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁弁である。分離弁60が閉状態であるときには、主流路45におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて分離弁60が開弁されると、第1流路45aと第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
また、液圧アクチュエータ40においては、主流路45に連通するマスタ流路61およびレギュレータ流路62が形成されている。より詳細には、マスタ流路61は、主流路45の第1流路45aに接続されており、レギュレータ流路62は、主流路45の第2流路45bに接続されている。また、マスタ流路61は、マスタシリンダ32と連通するマスタ配管37に接続される。レギュレータ流路62は、レギュレータ33と連通するレギュレータ配管38に接続される。
マスタ流路61は、中途にマスタカット弁64を有する。マスタカット弁64は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁弁である。開状態とされたマスタカット弁64は、マスタシリンダ32と主流路45の第1流路45aとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてマスタカット弁64が閉弁されると、マスタ流路61におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
また、マスタ流路61には、マスタカット弁64よりも上流側において、シミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69が接続されている。すなわち、シミュレータカット弁68は、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69とを接続する流路に設けられている。シミュレータカット弁68は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁弁である。シミュレータカット弁68が閉状態であるときには、マスタ流路61とストロークシミュレータ69との間のブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁68が開弁されると、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
ストロークシミュレータ69は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁68の開放時に運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ69としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、多段のバネ特性を有するものが採用されると好ましく、本実施形態のストロークシミュレータ69は多段のバネ特性を有する。
レギュレータ流路62は、中途にレギュレータカット弁65を有する。レギュレータカット弁65も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁弁である。開状態とされたレギュレータカット弁65は、レギュレータ33と主流路45の第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてレギュレータカット弁65が閉弁されると、レギュレータ流路62におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
本実施形態においては上述のように、マスタシリンダユニット10のマスタシリンダ32は、次の各要素を含んで構成される第1の系統により前輪側のホイールシリンダ23FRおよび23FLに連通される。第1の系統は、マスタ配管37、マスタ流路61、マスタカット弁64、主流路45の第1流路45a、個別流路41および42、ABS保持弁51および52を含んで構成される。また、マスタシリンダユニット10の液圧ブースタ31およびレギュレータ33は、次の各要素を含んで構成される第2の系統により後輪側のホイールシリンダ23RRおよび23RLに連通される。第2の系統は、レギュレータ配管38、レギュレータ流路62、レギュレータカット弁65、主流路45の第2流路45b、個別流路43および44、ABS保持弁53および54を含んで構成される。
よって、運転者によるブレーキ操作量に応じて加圧されたマスタシリンダユニット10における液圧は、第1の系統を介して前輪側のホイールシリンダ23FRおよび23FLに伝達される。また、後輪側のホイールシリンダ23RRおよび23RLへは、第2の系統を介してマスタシリンダユニット10における液圧が伝達される。これにより、運転者のブレーキ操作量に応じた制動力を各ホイールシリンダ23に発生させることができる。
液圧アクチュエータには、マスタ流路61およびレギュレータ流路62に加えて、アキュムレータ流路63も形成されている。アキュムレータ流路63の一端は、主流路45の第2流路45bに接続され、他端は、アキュムレータ35と連通するアキュムレータ配管39に接続される。
アキュムレータ流路63は、中途に増圧リニア制御弁66を有する。また、アキュムレータ流路63および主流路45の第2流路45bは、減圧リニア制御弁67を介してリザーバ流路55に接続されている。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁弁である。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、それぞれのソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される。
増圧リニア制御弁66は、各車輪に対応して複数設けられた各ホイールシリンダ23に対して共通の増圧用制御弁として設けられている。また、減圧リニア制御弁67も同様に、各ホイールシリンダ23に対して共通の減圧用制御弁として設けられている。つまり、本実施形態においては、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、動力液圧源30から送出される作動流体を各ホイールシリンダ23へ給排制御する1対の共通の制御弁として設けられている。
なお、ここで、増圧リニア制御弁66の出入口間の差圧は、アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力と主流路45におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応し、減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧は、主流路45におけるブレーキフルードの圧力とリザーバ34におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応する。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。従って、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧を連続的に制御することができる。
本実施形態においては、動力液圧源30、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67を含んで圧力制御機構が構成される。圧力制御機構を動作させることによりホイールシリンダ23の液圧が制御される。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67との間に主流路45の第2流路45bが連通されているので、圧力制御機構は、分離弁60の開閉に関わらず後輪側のホイールシリンダ23RRおよび23RLの液圧を制御することができる。分離弁60が開状態であれば、圧力制御機構を動作させることによりすべてのホイールシリンダ23の液圧を制御することができる。
ブレーキ制御装置20において、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40は、本実施形態における制御手段としてのブレーキECU70により制御される。ブレーキECU70は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート等を備える。そして、ブレーキECU70は、上位のハイブリッドECU(図示せず)などと通信可能であり、ハイブリッドECUからの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて動力液圧源30のポンプ36や、液圧アクチュエータ40を構成する電磁弁51〜54、56〜59、60、64〜68を制御して、ブレーキ制御を実行可能である。
また、ブレーキECU70には、レギュレータ圧センサ71、アキュムレータ圧センサ72、および制御圧センサ73が接続される。レギュレータ圧センサ71は、レギュレータカット弁65の上流側でレギュレータ流路62内のブレーキフルードの圧力、すなわちレギュレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。アキュムレータ圧センサ72は、増圧リニア制御弁66の上流側でアキュムレータ流路63内のブレーキフルードの圧力、すなわちアキュムレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。制御圧センサ73は、主流路45の第1流路45a内のブレーキフルードの圧力を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。各圧力センサ71〜73の検出値は、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合、制御圧センサ73の出力値は、増圧リニア制御弁66の低圧側の液圧を示すと共に減圧リニア制御弁67の高圧側の液圧を示すので、この出力値を増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の制御に利用することができる。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67が閉鎖されていると共に、マスタカット弁64が開状態とされている場合、制御圧センサ73の出力値は、マスタシリンダ圧を示す。さらに、分離弁60が開放されて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通しており、各ABS保持弁51〜54が開放される一方、各ABS減圧弁56〜59が閉鎖されている場合、制御圧センサの73の出力値は、各ホイールシリンダ23に作用する作動流体圧、すなわちホイールシリンダ圧を示す。
また、ブレーキECU70に接続されるセンサには、ブレーキペダル24に設けられたストロークセンサ25も含まれる。ストロークセンサ25は、ブレーキペダル24の操作量としてのペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。ストロークセンサ25の出力値も、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。なお、ストロークセンサ25以外のブレーキ操作状態検出手段をストロークセンサ25に加えて、あるいはストロークセンサ25に代えて設け、ブレーキECU70に接続してもよい。ブレーキ操作状態検出手段としては、たとえばブレーキペダル24の操作力を検出するペダル踏力センサや、ブレーキペダル24が踏み込まれたことを検出するブレーキスイッチなどがある。
また、ブレーキECU70には、右前輪、左前輪、右後輪および左後輪の車輪の車輪速をそれぞれ検出する車輪速センサ18FR、18FL、18RRおよび18RLが接続されている。以下、適宜、車輪速センサ18FR、18FL、18RRおよび18RLを総称して「車輪速センサ18」と呼ぶ。本実施形態において、車輪速センサ18は、車速を検出する車速検出手段として機能する。また、車輪速センサ18に加えて、または代えて、車速検出手段として車速センサを用いてもよい。
このようの構成されたブレーキ制御装置20において、運転者によってブレーキペダル24が踏み込まれると、ブレーキECU70は、ペダルストロークとマスタシリンダ圧とから車両の目標減速度を算出する。そして、ブレーキECU70は、算出した目標減速度に基づいてホイールシリンダ23の目標液圧を算出し、ホイールシリンダ圧が目標液圧になるように増圧リニア制御弁66や減圧リニア制御弁67に対する供給電流の値を決定する。その結果、動力液圧源30から増圧リニア制御弁66を介してブレーキフルードが各ホイールシリンダ23に供給されて各車輪に制動力が付与される。なお、このとき、ブレーキECU70は、分離弁60を開状態として動力液圧源30からのブレーキフルードが前輪側に供給されるようにする一方、マスタカット弁64およびレギュレータカット弁65を閉状態とし、マスタシリンダ32およびレギュレータ33から送出されるブレーキフルードが主流路45へ供給されないようにする。
図2は、ブレーキ制御装置20における終了特定制御を説明するための図である。図2において、横軸は時間を表しており、縦軸は、上から、制動判定のオンオフ、減圧リニア制御弁67の開閉、レギュレータカット弁65の開閉、マスタカット弁64の開閉をそれぞれ表している。
「終了特定制御」とは、ホイールシリンダ23に残圧が残るのを防止するために、ブレーキペダル24の踏み込みが解除された後に行われる制御である。ブレーキペダル24の踏み込みが解除される際にゆっくりブレーキペダル24を戻した場合は、制動停止時におけるホイールシリンダ圧Pfrは略0となるため、ホイールシリンダ23に残圧は殆ど残らない。しかしながら、ブレーキペダル24を急に戻した場合は、液圧制御でホイールシリンダ圧を0にする前に制動停止になってしまい、ブレーキペダル24に残圧が残ってしまう。また、ホイールシリンダ圧を検出する制御圧センサ73のばらつきによって、制御圧センサ73の示すホイールシリンダ圧は略0となっているものの、実際には残圧が残っているケースがあるため、終了特定制御が必要となる。終了特定制御を行ってホイールシリンダ23の残圧をなくすことにより、ブレーキの引きずりを防止することができる。
ブレーキECU70は、レギュレータ圧センサ71からのレギュレータ圧に基づいて、制動が行われるべきか否かを判定する制動判定を行う。本実施形態において、レギュレータ圧センサ71は、制動の開始判定をするための液圧を検出する制動開始判定液圧検出手段としての機能を有する。具体的には、ブレーキECU70は、レギュレータ圧と所定の制動開始判定基準液圧とを比較する。そして、レギュレータ圧が制動開始判定基準液圧よりも大きい場合には、制動開始(制動オン)と判定する。一方、レギュレータ圧が制動開始判定基準液圧以下の場合には、制動停止(制動オフ)と判定する。制動判定は、制御圧センサ73によって検出されたマスタシリンダ圧に基づいて行ってもよい。また、制動判定は、ストロークセンサ25からのペダルストロークに基づいて行ってもよい。この場合、たとえばペダルストロークが所定値より大きいときは制動オンと判定し、所定値以下のときは制動オフと判定すればよい。図2では、時刻t0において制動オフと判定されている。
図2では、通常の終了特定制御を示している。この通常の終了特定制御では、時刻t0に制動オフと判定されたときに、ブレーキECU70は、時刻t1までの所定期間、減圧リニア制御弁67を開状態とする(この段階をステージ1と呼ぶ)。このステージ1の間に、ホイールシリンダ23に残っていたブレーキフルードは殆どがリザーバ流路55、リザーバ配管77を介してリザーバ34に排出される。
その後、時刻t1において、減圧リニア制御弁67を閉弁するとともに、それまで閉状態であったレギュレータカット弁65を開状態とする(この段階をステージ2と呼ぶ)。その後、時刻t3において、それまで閉状態であったマスタカット弁64を開状態とする(この段階をステージ3と呼ぶ)。このステージ2とステージ3により、ホイールシリンダ23に僅かに残っていたブレーキフルードは、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64を通って完全に排出され、ホイールシリンダ23の残圧は略0となる。
ステージ2はステージ3よりも先に行うことが好ましい。これは、仮にレギュレータカット弁65を開弁した際にホイールシリンダ23に残圧が残っていて、レギュレータ33にブレーキフルードが流入したとしても、レギュレータ33はブレーキペダル24からマスタシリンダ32よりも離間しているため、運転者がペダルフィーリングに違和感を感じにくいからである。しかしながら、ステージ3をステージ2より先に行ってもよい。
ところで、減圧リニア制御弁67は、ブレーキECU70によりPWM制御で供給電流が制御されることにより、開度が調整されているが、このPWM制御では高周波のスイッチングノイズが発生する。このノイズは、車両が走行している場合にはロードノイズが大きいため車両の乗員に聞こえにくいが、車両が停止または非常に低速で走行している場合にはロードノイズが小さいため、乗員に高周波のノイズが聞こえる可能性がある。特に、上述のような終了特定制御のステージ1において減圧リニア制御弁67を開弁している間には、減圧リニア制御弁67を開弁することによって発生したノイズを乗員が不快に感じてしまう可能性がある。
一方、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64については、供給電流がON/OFF制御される常開型の電磁弁である。従って、ステージ2、3においては供給電流はOFF状態となるため、スイッチングノイズは殆ど発生しない。また、本実施形態において、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64は、同じ液圧に対するブレーキフルード通過量が減圧リニア制御弁67より少ない電磁弁である。一般に、同じ液圧に対するブレーキフルード通過量が少ない弁ほど、減圧によるノイズが小さくなる。従って、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64を用いてホイールシリンダ圧の減圧を行った場合には、発生するノイズは減圧リニア制御弁67の場合よりも小さくなる。
そこで本実施の形態では、ブレーキECU70は、車両の状態を検出し、検出した車両の状態に基づいて、ホイールシリンダ圧の減圧によるノイズの車両への影響の程度を推定し、該推定結果に基づいて、減圧リニア制御弁67、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64のいずれの電磁弁を用いてホイールシリンダ圧の減圧を行うか選択する。
たとえば、ブレーキECU70は、車両の状態として車輪速センサ18から制動オフ判定時(t0)における4輪の車輪速を検出し、4輪の車輪速のうち最大の車輪速(以下、4輪車輪速MAXと呼ぶ)が所定の基準車輪速より小さいか否かを判定する。そして、ブレーキECU70は、4輪車輪速MAXが所定の基準車輪速より小さい場合には、制御圧センサ73とストロークセンサ25の検出結果に基づいて、制動オフ判定時におけるホイールシリンダ圧Pfrと所定の第1基準液圧Pb1とを比較する。第1基準液圧Pb1は、0.1〜0.2MPa程度の低い液圧である。ホイールシリンダ圧Pfrが第1基準液圧Pb1よりも小さい場合、車両へのノイズの影響が所定の基準値より大きいと推定し、減圧リニア制御弁67によりホイールシリンダ圧を減圧するステージ1を行わずに、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64を開弁させる(ステージ2、3)。これにより、ホイールシリンダ23に残っていたブレーキフルードは、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64を通ってレギュレータ33、マスタシリンダ32に戻され、ホイールシリンダ23に残圧が残る事態が回避される。
4輪車輪速MAXが所定の基準車輪速より小さい車両停止時や微低速時は、車内が走行時に比べ静かな場合が多いため、減圧リニア制御弁67を開弁した場合にはノイズが目立つ。また、ホイールシリンダ23の液圧が第1基準液圧Pb1よりも小さい場合には、減圧リニア制御弁67よりも減圧応答特性の劣るレギュレータカット弁65やマスタカット弁64を用いて減圧したとしても、ホイールシリンダ23の残圧による引きずり等の影響も小さい。そこで、4輪車輪速MAXが所定の基準車輪速より小さく、且つホイールシリンダ圧Pfrが第1基準液圧Pb1よりも小さい場合には、車両へのノイズの影響が所定の基準値より大きいと推定し、開閉制御によるノイズが小さいレギュレータカット弁65、マスタカット弁64を選択して減圧を行うことにより、車内の快適性を向上させることができる。
また、制動オフ判定時の4輪車輪速MAXが所定の基準車輪速より小さく、さらにホイールシリンダ圧Pfrが第1基準液圧Pb1以上且つ所定の第2基準液圧Pb2より小さい場合、ブレーキECU70は、同じようにステージ1をスキップして、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64を選択して減圧を行うが、この場合は、減圧リニア制御弁終了特定延期フラグ=ONとする。第1基準液圧Pb1≦ホイールシリンダ圧Pfr<第2基準液圧Pb2という一段高い残圧が残っている場合、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64からゆっくり残圧を抜いている(特に低温)際に、アクセルが操作された場合、発進、加速遅れに繋がる可能性がある。よって、必要な機会にステージ1から終了特定を実施できるように、減圧リニア制御弁終了特定延期フラグ=ONとしておく。
そして、実際にアクセルが操作されたことが加速要求検出部(図示せず)によって検出された場合、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67を選択してステージ1から終了特定制御を行う。加速要求がある場合には、たとえばエンジン音等が増大するので、減圧リニア制御弁67の開閉制御によるノイズはマスクされる。したがって、このような場合には同じ液圧に対するブレーキフルード通過量が多い減圧リニア制御弁67を選択することで、残圧をレギュレータカット弁65、マスタカット弁64よりも素早く低減可能となり、迅速な加速を行うことができる。
一方、制動オフ判定時の4輪車輪速MAXが所定の基準車輪速より小さく、且つホイールシリンダ圧Pfrが第2基準液圧Pb2以上である場合、または制動オフ判定時の4輪車輪速MAXが所定の基準車輪速以上である場合には、ブレーキECU70は、図2に示すようにステージ1、ステージ2、ステージ3の順で通常の終了特定制御を行う。このように、まだ車両が走行中、または制動オフ判定時の残圧が高い場合には、同じ液圧に対するブレーキフルード通過量がレギュレータカット弁65、マスタカット弁64より多い減圧リニア制御弁67から減圧を行うことにより、応答よくホイールシリンダ圧を減圧し、残圧発生によるブレーキの発熱を抑制することができる。
本実施形態において、上述の制動開始判定基準液圧は、第2基準液圧Pb2よりも大きい液圧に設定される。上述のように構成した場合、終了特定制御終了時に最大で第2基準液圧分Pb2の残圧が生ずることが想定される。この残圧は、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64から抜けるが、その際にレギュレータ圧センサ71、制御圧センサ73により残圧が検出され、制動オンの判定がなされてしまう可能性がある。この状況で制動オンしてしまうと、増圧リニア制御弁66の作動音が発生してしまうため好ましくない。そこで、制動開始判定基準液圧を第2基準液圧Pb2よりも大きい液圧とすることにより、ホイールシリンダ23の残圧によって制動オンの判定がなされる事態を防止できる。
図3は、本実施形態に係る終了特定制御処理の流れを示すフローチャートである。図3に示される処理は、制動判定がオンの間、ブレーキECU70により所定の時間間隔で周期的に実行される。
まず、ブレーキECU70は、レギュレータ圧センサ71からのレギュレータ圧と所定の制動開始判定基準液圧とを比較することにより、制動判定がオンからオフとなったか否かを判定する(S10)。制動判定がオンのままの場合(S10のN)、処理を終了する。
制動判定がオンからオフとなった場合(S10のY)、ブレーキECU70は、制動中に検出してメモリに格納しておいたホイールシリンダ圧Pfrの最大液圧に基づいて、ホイールシリンダ23における残圧の可能性を推定し、その残圧の可能性に基づいて減圧リニア制御弁67から減圧するか否か判定する。具体的には、制動中におけるホイールシリンダ圧Pfrの最大液圧が、所定の基準最大液圧より小さいか否かを判定(S12)し、制動中最大液圧が基準最大液圧以上であれば(S12のN)、減圧リニア制御弁67を開弁し(S24)、続いてレギュレータカット弁65、マスタカット弁64の順で開弁して(S26、28)終了特定制御を行う。
ホイールシリンダ23の液圧が低い状態からの減圧であれば、ホイールシリンダ23に残圧が残る可能性は低いため、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64の開弁によるノイズ抑制を優先する。一方、ホイールシリンダ23の液圧が高い状態からの減圧であればホイールシリンダ23に残圧が残る可能性が高いため、迅速に残圧を低減するために減圧リニア制御弁67を選択する。このように残圧可能性の推定結果に基づいて減圧を行う電磁弁を選択することで、迅速にホイールシリンダ23の残圧を低減できる。
制動中最大液圧が基準最大液圧よりも小さい場合(S12のY)、ブレーキECU70は、ストロークセンサ25からの情報に基づいてブレーキペダル24の操作速度を検出し、ブレーキペダル24の操作速度と所定の基準操作速度とを比較する(S14)。ブレーキペダル24の操作速度が基準操作速度以上の場合(S14のN)、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67を開弁し(S24)、続いてレギュレータカット弁65、マスタカット弁64の順で開弁して(S26、28)終了特定制御を行う。
ホイールシリンダ圧を減圧する際に、ブレーキペダル24の戻し速度が低いときは残圧が残る可能性が低いため、ノイズ抑制を優先してレギュレータカット弁65、マスタカット弁64を選択する。一方、ブレーキペダル24の戻し速度が高いときは制動が停止されるまでの時間が短くなるため、残圧が残る可能性がある。したがって、このときは迅速に残圧を低減するために減圧リニア制御弁67を選択する。このようにブレーキペダル24の操作速度に基づいて減圧を行う電磁弁を選択することで、迅速にホイールシリンダ23の残圧を低減できる。
ブレーキペダル24の操作速度が基準操作速度より小さい場合(S14のY)、ブレーキECU70は、4輪車速MAXと所定の基準車輪速とを比較する(S16)。4輪車輪速MAXが基準車輪速以上である場合には(S16のN)、減圧リニア制御弁67を開弁し(S24)、続いてレギュレータカット弁65、マスタカット弁64の順で開弁して(S26、28)終了特定制御を行う。
一方、4輪車輪速MAXが所定の基準車輪速より小さい場合(S16のY)、ブレーキECU70は、制御圧センサ73とストロークセンサ25の検出結果に基づいて、制動オフ判定時におけるホイールシリンダ圧Pfrと所定の第1基準液圧Pb1とを比較する(S18)。
ホイールシリンダ圧Pfrが第1基準液圧Pb1よりも小さい場合(S18のY)、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67によりホイールシリンダ圧を減圧するステージ1を行わずに、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64を開弁して(S26、28)終了特定制御を行う。
これにより、ホイールシリンダ23に残っていたブレーキフルードは、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64を通ってレギュレータ33、マスタシリンダ32に戻され、ホイールシリンダ23に残圧が残る事態が回避される。終了特定制御におけるノイズが抑制されるので、車内の快適性を向上させることができる。
ホイールシリンダ圧Pfrが第1基準液圧Pb1以上である場合(S18のN)、ブレーキECU70は、ホイールシリンダ圧Pfrと所定の第2基準液圧Pb2とを比較する(S20)。
ホイールシリンダ圧Pfrが第2基準液圧Pb2以上の場合(S20のN)、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67を開弁し(S24)、続いてレギュレータカット弁65、マスタカット弁64の順で開弁して(S26、28)終了特定制御を行う。
ホイールシリンダ圧Pfrが第2基準液圧Pb2より小さい場合(S20のY)、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁終了特定延期フラグ=ONとする(S22)。この減圧リニア制御弁終了特定延期フラグは、図4に示す処理において用いられる。その後、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64の順で開弁して(S26、28)終了特定制御を行う。
これにより、ブレーキフルードは、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64を通ってレギュレータ33、マスタシリンダ32に戻されるため、ホイールシリンダ23に残圧が残る事態が回避されるとともに、終了特定制御におけるノイズが抑制されるので、車内の快適性を向上させることができる。
図4は、図3に示した処理と並列に実行される処理を説明するためのフローチャートである。この図4に示される処理も、ブレーキECU70により所定の時間間隔で周期的に実行される。
まず、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁終了特定延期フラグ=ONであるか否か判定する(S30)。減圧リニア制御弁終了特定延期フラグ=ONではない場合(S30のN)、処理を終了する。
一方、減圧リニア制御弁終了特定延期フラグ=ONである場合(S30のY)、ブレーキECU70は、アクセル操作がオンであるか否かを判定する(S32)。アクセル操作がオフである場合(S32のN)、処理を終了する。
一方、アクセル操作がオンである場合(S32のY)、ブレーキECU70は、減圧リニア制御弁67を開弁し(S34)、続いてレギュレータカット弁65、マスタカット弁64の順で開弁して(S36、38)終了特定制御を行う。
図3に示すフローチャートのS26、28において、レギュレータカット弁65、マスタカット弁64からゆっくり残圧を抜いている際に、アクセルが操作された場合、発進、加速遅れに繋がる可能性がある。そこで、このように、減圧リニア制御弁終了特定延期フラグ=ON且つアクセル操作=ONである場合には、減圧リニア制御弁67から減圧する終了特定制御を行うことにより、残圧を素早く低減可能となり、発進、加速遅れを防止して迅速な加速を行うことができる。加速要求がある場合には、エンジン音等が増大するので、減圧リニア制御弁67の開閉制御によるノイズはそれほど気にならない。
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
上述の実施の形態では、ホイールシリンダ圧を減圧する際の減圧リニア制御弁の制御について説明したが、本発明は、増圧リニア制御弁やその他の切替弁についても適用可能である。
本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置を示す系統図である。 ブレーキ制御装置における終了特定制御を説明するための図である。 本実施形態に係る終了特定制御処理の流れを示すフローチャートである。 図3に示した処理と並列に実行される処理を説明するためのフローチャートである。
符号の説明
20 ブレーキ制御装置、 23 ホイールシリンダ、 24 ブレーキペダル、 30 動力液圧源、 32 マスタシリンダ、 45 主流路、 60 分離弁、 61 マスタ流路、 64 マスタカット弁、 65 レギュレータカット弁、 66 増圧リニア制御弁、 67 減圧リニア制御弁、 70 ブレーキECU。

Claims (8)

  1. 液圧回路に配置された複数の弁を開閉制御することでホイールシリンダの液圧を増減圧するブレーキ制御装置であって、
    前記複数の弁は、第1弁と、前記第1弁より開閉制御によるノイズが小さい第2弁とを含み、
    車両状態を検出する車両状態検出手段と、
    前記車両状態検出手段の検出結果に基づいて、増減圧によるノイズの車両への影響の程度を推定する推定手段と、
    前記推定手段の推定結果に基づいて、増減圧を行う弁を選択する選択手段と、
    車速を検出する車速検出手段と、
    を備え
    前記推定手段は、前記車速検出手段により検出された車速が所定の基準速度より小さい場合に、車両へのノイズの影響が所定の基準値より大きいと推定し、
    前記選択手段は、前記推定手段により車両へのノイズの影響が所定の基準値より大きいと推定された場合に、前記第2弁を選択し、
    制動中におけるホイールシリンダの液圧の最大値を検出する最大液圧検出手段と、前記最大液圧検出手段の検出結果に基づいて前記ホイールシリンダにおける残圧の可能性を推定する残圧推定手段と、をさらに備え、
    前記選択手段は、前記残圧推定手段の推定結果に基づいて増減圧する弁を選択することを特徴とするブレーキ制御装置。
  2. 前記第2弁は、同じ液圧に対するブレーキフルード通過量が前記第1弁より少ない弁であることを特徴とする請求項に記載のブレーキ制御装置。
  3. 前記ホイールシリンダの液圧を検出する液圧検出手段と、運転者によるブレーキ操作部材の操作を検出する操作検出手段とをさらに備え、
    前記選択手段は、前記液圧検出手段と前記操作検出手段の検出結果に基づいて制動が停止されたときの前記ホイールシリンダの液圧と所定の第1基準液圧とを比較し、比較結果に基づいて増減圧を行う弁を選択することを特徴とする請求項に記載のブレーキ制御装置。
  4. 前記選択手段は、前記ホイールシリンダの液圧が前記第1基準液圧よりも大きい所定の第2基準液圧より大きい場合に、前記第1弁を選択することを特徴とする請求項に記載のブレーキ制御装置。
  5. 制動の開始判定をするための液圧を検出する制動開始判定液圧検出手段と、前記制動開始判定液圧検出手段の検出液圧と所定の制動開始判定基準液圧とを比較して制動開始を判定する制動開始判定手段とをさらに備え、
    前記制動開始判定基準液圧は、前記第2基準液圧よりも大きい液圧に設定されることを特徴とする請求項に記載のブレーキ制御装置。
  6. 車両の加速要求を検出する加速要求検出手段をさらに備え、
    前記選択手段は、前記加速要求検出手段が加速要求を検出した場合には、前記第1弁を選択することを特徴とする請求項に記載のブレーキ制御装置。
  7. ブレーキ操作部材の操作速度を検出する操作速度検出手段をさらに備え、
    前記選択手段は、前記操作速度と所定の基準操作速度とを比較することにより、増減圧する弁を選択することを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ制御装置。
  8. 第1の車輪に制動力を付与するための第1ホイールシリンダと、
    前記第1の車輪とは異なる第2の車輪に制動力を付与するための第2ホイールシリンダと、
    動力の供給により高圧の液圧を発生させ得る動力液圧源と、
    ブレーキ操作部材の操作量に応じてマスタ流路を介して前記第1ホイールシリンダにブレーキフルードを供給するマスタシリンダと、
    ブレーキ操作部材の操作量に応じてレギュレータ流路を介して前記第2ホイールシリンダにブレーキフルードを供給するレギュレータと、
    前記マスタ流路に設けられた常開型電磁弁であるマスタカット弁と、
    前記レギュレータ流路に設けられた常開型電磁弁であるレギュレータカット弁と、
    前記第1および前記第2ホイールシリンダと、前記動力液圧源とを連通する動力液圧源流路と、
    前記動力液圧源流路に設けられ、弁の開度を調整することにより前記第1および第2ホイールシリンダの液圧を増圧する常閉型電磁弁である増圧リニア制御弁と、
    前記動力液圧源流路に設けられ、弁の開度を調整することにより前記第1および第2ホイールシリンダの液圧を減圧する常閉型電磁弁である減圧リニア制御弁と、
    前記マスタカット弁、前記レギュレータカット弁、前記増圧リニア制御弁および前記減圧リニア制御弁に供給する電流を制御する電流制御部と、を備え、
    前記電流制御部は、前記第1および第2ホイールシリンダの液圧を増減圧する際に、車速が所定の基準速度以下の場合には、前記増圧リニア制御弁または前記減圧リニア制御弁から増減圧せずに、前記レギュレータカット弁または前記マスタカット弁から増減圧し、
    制動中における前記第1および前記第2ホイールシリンダの液圧の最大値を検出する最大液圧検出手段と、前記最大液圧検出手段の検出結果に基づいて前記第1および前記第2ホイールシリンダにおける残圧の可能性を推定する残圧推定手段と、をさらに備え、
    前記電流制御部は、前記残圧推定手段の推定結果に基づいて増減圧する弁を選択することを特徴とするブレーキ制御装置。
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