以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の各実施形態に係るブレーキ制御装置20を示す系統図である。同図に示されるブレーキ制御装置20は、車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)を構成しており、車両に設けられた4つの車輪に付与される制動力を制御する。本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、例えば、走行駆動源として電動モータと内燃機関とを備えるハイブリッド車両に搭載される。このようなハイブリッド車両においては、車両の運動エネルギを電気エネルギに回生することによって車両を制動する回生制動と、ブレーキ制御装置20による液圧制動とのそれぞれを車両の制動に用いることができる。本実施形態における車両は、これらの回生制動と液圧制動とを併用して所望の制動力を発生させるブレーキ回生協調制御を実行することができる。
ブレーキ制御装置20は、図1に示されるように、各車輪に対応して設けられたディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLと、マスタシリンダユニット27と、動力液圧源30と、液圧アクチュエータ40とを含む。
ディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪、左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。本実施形態におけるマニュアル液圧源としてのマスタシリンダユニット27は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24の運転者による操作量に応じて加圧されたブレーキフルードをディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出する。動力液圧源30は、動力の供給により加圧された作動流体としてのブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル24の操作から独立してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。液圧アクチュエータ40は、動力液圧源30またはマスタシリンダユニット27から供給されたブレーキフルードの液圧を適宜調整してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに送出する。これにより、液圧制動による各車輪に対する制動力が調整される。
ディスクブレーキユニット21FR〜21RL、マスタシリンダユニット27、動力液圧源30、および液圧アクチュエータ40のそれぞれについて以下で更に詳しく説明する。各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22とブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ23FR〜23RLを含む。そして、各ホイールシリンダ23FR〜23RLは、それぞれ異なる流体通路を介して液圧アクチュエータ40に接続されている。なお以下では適宜、ホイールシリンダ23FR〜23RLを総称して「ホイールシリンダ23」という。
ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ23に液圧アクチュエータ40からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク22に摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニット21FR〜21RLを用いているが、例えばドラムブレーキ等のホイールシリンダ23を含む他の制動力付与機構を用いてもよい。
マスタシリンダユニット27は、本実施形態では液圧ブースタ付きマスタシリンダであり、液圧ブースタ31、マスタシリンダ32、レギュレータ33、およびリザーバ34を含む。液圧ブースタ31は、ブレーキペダル24に連結されており、ブレーキペダル24に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ32に伝達する。動力液圧源30からレギュレータ33を介して液圧ブースタ31にブレーキフルードが供給されることにより、ペダル踏力は増幅される。そして、マスタシリンダ32は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
マスタシリンダ32とレギュレータ33との上部には、ブレーキフルードを貯留するリザーバ34が配置されている。マスタシリンダ32は、ブレーキペダル24の踏み込みが解除されているときにリザーバ34と連通する。一方、レギュレータ33は、リザーバ34と動力液圧源30のアキュムレータ35との双方と連通しており、リザーバ34を低圧源とすると共に、アキュムレータ35を高圧源とし、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。レギュレータ33における液圧を以下では適宜、「レギュレータ圧」という。なお、マスタシリンダ圧とレギュレータ圧とは厳密に同一圧にされる必要はなく、例えばレギュレータ圧のほうが若干高圧となるようにマスタシリンダユニット27を設計することも可能である。
マスタシリンダ32とレギュレータ33には、いわゆるアイドルストロークがある。アイドルストロークとは、ブレーキ操作がなされていない状態からブレーキペダル24が踏み込まれてマスタシリンダ32及びレギュレータ33のそれぞれとリザーバ34との接続が遮断されるまでのストロークである。アイドルストロークの間はリザーバ34に連通されているためマスタシリンダ32及びレギュレータ33の液圧は上がらない。本実施形態のマスタシリンダユニット27は、ブレーキペダル踏込当初はストローク増加につれて初めにレギュレータ33のアイドルストロークが縮まり、次いでマスタシリンダ32のアイドルストロークが縮まるように構成されている。つまり、レギュレータ33、マスタシリンダ32の順にリザーバ34との接続が遮断される。
以下では便宜上、レギュレータ33とリザーバ34との接続が遮断されるときのペダルストロークを第1遮断ストロークと称し、マスタシリンダ32とリザーバ34との接続が遮断されるときのストロークを第2遮断ストロークと称する。本実施形態においては第2遮断ストロークのほうが第1遮断ストロークよりも大きい。ペダルストロークが第1遮断ストロークと第2遮断ストロークの間にある場合には、レギュレータ33のほうがマスタシリンダ32よりも高圧となり2つの作動液室間に差圧が生じる。これは、レギュレータ33はリザーバ34から遮断されてストロークに応じて作動液が加圧されるのに対し、マスタシリンダ32はリザーバ34に接続されて液圧が上がらないからである。
動力液圧源30は、アキュムレータ35およびポンプ36を含む。アキュムレータ35は、ポンプ36により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギ、例えば14〜22MPa程度に変換して蓄えるものである。ポンプ36は、駆動源としてモータ36aを有し、その吸込口がリザーバ34に接続される一方、その吐出口がアキュムレータ35に接続される。ポンプ36により、アキュムレータ圧は維持されるべき設定範囲(本明細書ではこれを許容範囲という場合もある)に保たれる。ブレーキECU70は、アキュムレータ圧センサ72の測定値に基づいて、アキュムレータ圧が許容範囲の下限を下回った場合にポンプ36をオンとしてアキュムレータ圧を加圧し、アキュムレータ圧が許容範囲の上限を超えた場合にポンプ36をオフとして加圧を終了する。
また、アキュムレータ35は、マスタシリンダユニット27に設けられたリリーフバルブ35aにも接続されている。アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ35aが開弁し、高圧のブレーキフルードはリザーバ34へと戻される。
上述のように、ブレーキ制御装置20は、ホイールシリンダ23に対するブレーキフルードの供給源として、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35を有している。そして、マスタシリンダ32にはマスタ配管37が、レギュレータ33にはレギュレータ配管38が、アキュムレータ35にはアキュムレータ配管39が接続されている。これらのマスタ配管37、レギュレータ配管38およびアキュムレータ配管39は、それぞれ液圧アクチュエータ40に接続される。
液圧アクチュエータ40は、複数の流路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流路には、個別流路41、42,43および44と、主流路45とが含まれる。個別流路41〜44は、それぞれ主流路45から分岐されて、対応するディスクブレーキユニット21FR、21FL,21RR,21RLのホイールシリンダ23FR、23FL,23RR,23RLに接続されている。これにより、各ホイールシリンダ23は主流路45と連通可能となる。
また、個別流路41,42,43および44の中途には、ABS保持弁51,52,53および54が設けられている。各ABS保持弁51〜54は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされた各ABS保持弁51〜54は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。つまり、主流路45からホイールシリンダ23へとブレーキフルードを流すことができるとともに、逆にホイールシリンダ23から主流路45へもブレーキフルードを流すことができる。ソレノイドに通電されて各ABS保持弁51〜54が閉弁されると、個別流路41〜44におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
更に、ホイールシリンダ23は、個別流路41〜44にそれぞれ接続された減圧用流路46,47,48および49を介してリザーバ流路55に接続されている。減圧用流路46,47,48および49の中途には、ABS減圧弁56,57,58および59が設けられている。各ABS減圧弁56〜59は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。各ABS減圧弁56〜59が閉状態であるときには、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて各ABS減圧弁56〜59が開弁されると、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードがホイールシリンダ23から減圧用流路46〜49およびリザーバ流路55を介してリザーバ34へと還流する。なお、リザーバ流路55は、リザーバ配管77を介してマスタシリンダユニット27のリザーバ34に接続されている。
主流路45は、中途に分離弁60を有する。この分離弁60により、主流路45は、個別流路41および42と接続される第1流路45aと、個別流路43および44と接続される第2流路45bとに区分けされている。第1流路45aは、個別流路41および42を介して前輪用のホイールシリンダ23FRおよび23FLに接続され、第2流路45bは、個別流路43および44を介して後輪用のホイールシリンダ23RRおよび23RLに接続される。
分離弁60は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。分離弁60が閉状態であるときには、主流路45におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて分離弁60が開弁されると、第1流路45aと第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
また、液圧アクチュエータ40においては、主流路45に連通するマスタ流路61およびレギュレータ流路62が形成されている。より詳細には、マスタ流路61は、主流路45の第1流路45aに接続されており、レギュレータ流路62は、主流路45の第2流路45bに接続されている。また、マスタ流路61は、マスタシリンダ32と連通するマスタ配管37に接続される。レギュレータ流路62は、レギュレータ33と連通するレギュレータ配管38に接続される。
マスタ流路61は、中途にマスタカット弁64を有する。マスタカット弁64は、マスタシリンダ32から各ホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。マスタカット弁64は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされたマスタカット弁64は、マスタシリンダ32と主流路45の第1流路45aとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに規定の制御電流が通電されてマスタカット弁64が閉弁されると、マスタ流路61におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
また、マスタ流路61には、マスタカット弁64よりも上流側において、シミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69が接続されている。すなわち、シミュレータカット弁68は、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69とを接続する流路に設けられている。シミュレータカット弁68は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により開弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。シミュレータカット弁68が閉状態であるときには、マスタ流路61とストロークシミュレータ69との間のブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁68が開弁されると、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
ストロークシミュレータ69は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁68の開放時に運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ69としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、多段のバネ特性を有するものが採用されると好ましい。
レギュレータ流路62は、中途にレギュレータカット弁65を有する。レギュレータカット弁65は、レギュレータ33から各ホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。レギュレータカット弁65も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされたレギュレータカット弁65は、レギュレータ33と主流路45の第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてレギュレータカット弁65が閉弁されると、レギュレータ流路62におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
液圧アクチュエータ40には、マスタ流路61およびレギュレータ流路62に加えて、アキュムレータ流路63も形成されている。アキュムレータ流路63の一端は、主流路45の第2流路45bに接続され、他端は、アキュムレータ35と連通するアキュムレータ配管39に接続される。
アキュムレータ流路63は、中途に増圧リニア制御弁66を有する。また、アキュムレータ流路63および主流路45の第2流路45bは、減圧リニア制御弁67を介してリザーバ流路55に接続されている。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、それぞれのソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される。
増圧リニア制御弁66は、各車輪に対応して複数設けられた各ホイールシリンダ23に対して共通の増圧制御弁として設けられている。また、減圧リニア制御弁67も同様に、各ホイールシリンダ23に対して共通の減圧制御弁として設けられている。つまり、本実施形態においては、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、動力液圧源30から送出される作動流体を各ホイールシリンダ23へ給排制御する1対の共通の制御弁として設けられている。このように増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67を各ホイールシリンダ23に対して共通化すれば、ホイールシリンダ23ごとにリニア制御弁を設けるのと比べて、コストの観点からは好ましい。
なお、ここで、増圧リニア制御弁66の出入口間の差圧は、アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力と主流路45におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応し、減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧は、主流路45におけるブレーキフルードの圧力とリザーバ34におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応する。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。従って、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧を制御することができる。
ブレーキ制御装置20において、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40は、本実施形態における制御部としてのブレーキECU70により制御される。ブレーキECU70は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート等を備える。そして、ブレーキECU70は、上位のハイブリッドECU(図示せず)などと通信可能であり、ハイブリッドECUからの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて動力液圧源30のポンプ36や、液圧アクチュエータ40を構成する電磁制御弁51〜54,56〜59,60,64〜68を制御する。
また、ブレーキECU70には、レギュレータ圧センサ71、アキュムレータ圧センサ72、および制御圧センサ73が接続される。レギュレータ圧センサ71は、レギュレータカット弁65の上流側でレギュレータ流路62内のブレーキフルードの圧力、すなわちレギュレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。アキュムレータ圧センサ72は、増圧リニア制御弁66の上流側でアキュムレータ流路63内のブレーキフルードの圧力、すなわちアキュムレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。制御圧センサ73は、主流路45の第1流路45a内のブレーキフルードの圧力を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。各圧力センサ71〜73の検出値は、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に格納保持される。
分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合、制御圧センサ73の出力値は、増圧リニア制御弁66の低圧側の液圧を示すと共に減圧リニア制御弁67の高圧側の液圧を示すので、この出力値を増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の制御に利用することができる。また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67が閉鎖されていると共に、マスタカット弁64が開状態とされている場合、制御圧センサ73の出力値は、マスタシリンダ圧を示す。更に、分離弁60が開放されて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通しており、各ABS保持弁51〜54が開放される一方、各ABS減圧弁56〜59が閉鎖されている場合、制御圧センサの73の出力値は、各ホイールシリンダ23に作用する作動流体圧、すなわちホイールシリンダ圧を示す。
さらに、ブレーキECU70に接続されるセンサには、ブレーキペダル24に設けられたストロークセンサ25も含まれる。ストロークセンサ25は、ブレーキペダル24の操作量としてのペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU70に与える。ストロークセンサ25の出力値も、所定時間おきにブレーキECU70に順次与えられ、ブレーキECU70の所定の記憶領域に格納保持される。本実施形態においてはストロークセンサ25は2つの接点を有しており、見かけ上2つのセンサであるかのように2つの測定値をブレーキECU70に出力することができる。
また、ブレーキECU70にはストップランプスイッチが接続されている。ストップランプスイッチはブレーキペダル24が踏み込まれるとオン状態となる。これによりストップランプが点灯される。また、ブレーキペダル24の踏込が解除されるとストップランプスイッチはオフ状態となり、ストップランプは消灯される。ストップランプスイッチの点灯状態を示す信号がストップランプスイッチからブレーキECU70へと所定時間おきに入力され、ブレーキECU70の所定の記憶領域に格納保持される。
上述のように構成されたブレーキ制御装置20は、ブレーキ回生協調制御を実行することができる。ブレーキ制御装置20は制動要求を受けて制動を開始する。制動要求は、例えば運転者がブレーキペダル24を操作した場合など、車両に制動力を付与すべきときに生起される。制動要求を受けてブレーキECU70は要求制動力を演算し、要求制動力から回生による制動力を減じることによりブレーキ制御装置20により発生させるべき制動力である要求液圧制動力を算出する。ここで、回生による制動力の実効値は、ハイブリッドECUからブレーキ制御装置20に供給される。そして、ブレーキECU70は、算出した要求液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ23FR〜23RLの目標液圧を算出する。ブレーキECU70は、ホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、フィードバック制御則により増圧リニア制御弁66や減圧リニア制御弁67に供給する制御電流の値を決定する。
その結果、ブレーキ制御装置20においては、ブレーキフルードが動力液圧源30から増圧リニア制御弁66を介して各ホイールシリンダ23に供給され、車輪に制動力が付与される。また、各ホイールシリンダ23からブレーキフルードが減圧リニア制御弁67を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が調整される。本実施形態においては、動力液圧源30、増圧リニア制御弁66及び減圧リニア制御弁67等を含んでホイールシリンダ圧制御系統が構成されている。ホイールシリンダ圧制御系統によりいわゆるブレーキバイワイヤ方式の制動力制御が行われる。ホイールシリンダ圧制御系統は、マスタシリンダユニット27からホイールシリンダ23へのブレーキフルードの供給経路に並列に設けられている。なお、本実施形態に係るブレーキ制御装置20は、回生制動力を利用せずに液圧制動力だけで要求制動力をまかなう場合にも、当然ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御することができる。
ブレーキバイワイヤ方式の制動力制御を行う場合には、ブレーキECU70は、レギュレータカット弁65を閉状態とし、レギュレータ33から送出されるブレーキフルードがホイールシリンダ23へ供給されないようにする。更にブレーキECU70は、マスタカット弁64を閉状態とするとともにシミュレータカット弁68を開状態とする。これは、運転者によるブレーキペダル24の操作に伴ってマスタシリンダ32から送出されるブレーキフルードがホイールシリンダ23ではなくストロークシミュレータ69へと供給されるようにするためである。ブレーキ回生協調制御中は、レギュレータカット弁65及びマスタカット弁64の上下流間には、回生制動力の大きさに対応する差圧が作用する。またブレーキECU70は、分離弁60を開状態とする。これにより各ホイールシリンダ圧が共通の液圧に制御される。
ブレーキECU70は、分離弁60を制動時にのみ開弁するのではなく、システムが正常である限り常に開弁するようにしてもよい。これを以下では適宜「分離弁常時開制御」と称する。分離弁常時開制御により、運転者の制動要求検出に先行して予め分離弁60が開弁されていることになる。このため、増圧リニア制御弁66から前輪側のホイールシリンダ23FR、23FLへの作動液供給を速やかに行うことができる。分離弁60を制動時にのみ開弁する方式に比べて、分離弁60への開弁指令に対する開弁応答遅れによる前輪側での液圧立ち上がり遅れを防ぐことができるという利点がある。これにより、特に急制動時の制動力応答性が良好となる。また、分離弁60の開閉頻度が低減されるから、開閉による作動音の発生頻度も低減される。よって、分離弁常時開制御は静粛な車内環境実現に寄与する。
分離弁常時開制御においては、ブレーキ操作開始直後の微小ストローク範囲においてレギュレータ33からマスタシリンダ32への作動液還流経路が形成される場合がある。図2は、この作動液還流経路を説明するための図である。図2に示されるように、レギュレータ33からマスタシリンダ32への作動液還流経路は、レギュレータ33を、レギュレータ配管38、レギュレータ流路62、レギュレータカット弁65、第2流路45b、分離弁60、第1流路45a、マスタカット弁64、マスタ流路61、マスタ配管37を通じてマスタシリンダ32に連通するよう形成される。分離弁常時開制御により分離弁60が開弁されているとともに、制動要求とはみなされない程度にペダルストロークが微小であればマスタカット弁64及びレギュレータカット弁65も開弁されているからである。
既に述べたように、ブレーキペダル踏込当初はストローク増加につれて初めにレギュレータ33のアイドルストロークが縮まり、次いでマスタシリンダ32のアイドルストロークが縮まる。第1遮断ストロークにおいてレギュレータ33とリザーバ34との連通が遮断されてから、第2遮断ストロークにおいてマスタシリンダ32とリザーバとの連通が遮断される。ペダルストロークが第1遮断ストロークと第2遮断ストロークの間にある場合には、レギュレータ圧は立ち上がってくるが、マスタシリンダ圧は上がらない。なお、本発明は、2つの作動液室のアイドルストロークが異なることにより差圧が生じる場合だけではなく、ブレーキペダルの踏込当初における2室の液圧立ち上がり特性に何らかの違いがあることにより差圧が生じる場合にも適用可能である。
この差圧により、レギュレータ33からマスタシリンダ32へと作動液が流出する。最終的にはマスタシリンダ32から更にリザーバ34へと流出する。レギュレータ33の調圧用の高圧源はアキュムレータ35であるから、レギュレータ圧を維持するためにアキュムレータ圧が消費される。微小ストロークが継続された場合には、アキュムレータ圧が不必要に消耗されてしまう。
ペダルストロークがこの微小ストローク範囲を超え、制動要求がオンであると判定されるレベルに達すれば、レギュレータ33からの作動液流出及びアキュムレータ圧の不必要な消費は止められる。制動要求オンによりブレーキバイワイヤによる制動力制御が開始され、レギュレータカット弁65及びマスタカット弁64が閉弁され作動液還流経路が遮断されるからである。
ブレーキECU70は、制動オン条件が成立した場合に、運転者によるブレーキ操作が開始され制動要求が発生したものと判定する。また、ブレーキECU70は、制動オフ条件が成立した場合に、運転者によるブレーキ操作が解除され制動要求も解除されたものと判定する。なお、以下では便宜上、制動要求の発生を「制動オン」、制動要求の解除を「制動オフ」と適宜称する。
本実施形態において制動オン条件は、ストロークとレギュレータ圧とホイールシリンダ圧とを利用するように設定されている。ブレーキECU70は運転者のブレーキ操作入力として例えばストロークセンサ25からの2つの測定値を利用して制動オンか否かを判定する。ブレーキECU70は、ストロークセンサ25からの2つの測定値がともに予め設定されたしきい値を超えたことを条件として制動オンであるとする。また、ブレーキECU70はブレーキ操作入力として例えばレギュレータ圧センサ71及び制御圧センサ73のそれぞれの測定値を利用して制動オンか否かを判定する。ブレーキECU70は、レギュレータ圧センサ71及び制御圧センサ73のそれぞれの測定値がともに予め設定されたしきい値を超えたことを条件として制動オンであるとしてもよい。
また、ブレーキECU70は、ホイールシリンダ圧を示す入力信号とストップランプスイッチからの入力信号とを併用してもよい。ブレーキECU70は、制動オンの判定に際してホイールシリンダ圧を示す入力信号とストップランプスイッチからの入力信号とを選択的に用いてもよい。ブレーキECU70は、制御圧センサ73及びストップランプスイッチの少なくとも一方からの入力信号が制動オンを示し、かつレギュレータ圧センサ71からの入力信号が制動オンを示す場合に、制動オンであるとしてもよい。
ところで、レギュレータ33とリザーバ34との連通が遮断される第1遮断ストロークよりも制動オンのストローク判定閾値を小さく設定すれば、レギュレータ33の先行加圧の前に作動液還流経路を遮断することができる。しかし、この判定閾値を小さく設定した場合には、走行中の振動等によるペダル変位などのノイズを制動オンと判定してしまうことが想定される。このため、ストローク判定閾値は第1遮断ストロークよりも大きな値にしばしば設定される。なお以下では便宜上、この制動オン判定のためのストローク判定閾値を第1のストローク判定閾値と呼ぶ。
そこで、本実施形態においては、新たな制動オン条件を追加することにより、微小ストロークにおけるアキュムレータ圧消費の低減を実現する。上述の第1のストローク判定閾値よりも小さい第2のストローク判定閾値にペダルストロークが達しかつ動力液圧源30の液圧の消費を検出したことが新たな制動オン条件として設定される。よって、ブレーキECU70は、この新たな制動オン条件または上述のペダルストロークが第1のストローク判定閾値に達したことのいずれかの条件が成立した場合に制動オンと判定する。ブレーキECU70は例えば、アキュムレータ35の液圧低下が基準を超えた場合に動力液圧源30の液圧の消費を検出するようにしてもよい。また、ブレーキECU70は、ポンプ36の動作が開始された場合に動力液圧源30の液圧の消費を検出するようにしてもよい。
図3は、本実施形態に係る制動オン判定処理の一例を説明するためのフローチャートである。図3に示される処理は、ブレーキECU70により例えば非制動時に周期的に実行される。処理が開始されると、ブレーキECU70はまず、ペダルストロークが第2のストローク判定閾値に達しているか否かを判定する(S10)。この判定はストロークセンサ25の測定値に基づいて行われる。本実施形態のようにストロークセンサ25が複数の測定系統を有する場合には例えば、すべての系統の検出値が判定閾値を超えているか否かを判定してもよい。あるいは、これら複数系統の平均値をストロークセンサ25の測定値として用いてもよいし、いずれかの検出値が判定閾値を超えているか否かを判定してもよい。
第2のストローク判定閾値は例えば、レギュレータ33とリザーバ34との連通が遮断される第1遮断ストロークよりも小さい値に設定される。例えば、第2のストローク判定閾値は第1遮断ストロークの半分程度の値としてもよい。このようにすれば、レギュレータ33の先行加圧の前に作動液還流経路を遮断することが可能となる。
ペダルストロークが第2のストローク判定閾値に達していると判定された場合には(S10のYes)、ブレーキECU70はさらにポンプ36の動作が開始されたか否かを判定する(S12)。すなわち、ブレーキECU70は、ポンプ36がオフ状態からオン状態へと切り替えられたか否かを判定する。このようにポンプ36の動作状態の切替を利用することにより、アキュムレータ圧の消費を抑制すべき状態であることを明確に検出することができる。
ポンプ36の動作が開始されたと判定された場合には(S12のYes)、ブレーキECU70は、制動オンであると判定する(S14)。この場合、ブレーキECU70はシステムが正常であることを前提としてブレーキバイワイヤによる制動力制御を開始する。これに伴い、マスタシリンダユニット27からホイールシリンダ23への作動液の流れを遮断すべく、ブレーキECU70はマスタカット弁64及びレギュレータカット弁65を閉弁する(S16)。これにより、レギュレータ33からマスタシリンダ32への作動液還流経路が遮断される。
一方、ペダルストロークが第2のストローク判定閾値に達していないと判定された場合には(S10のNo)、ブレーキECU70は処理を終了する。また、ポンプ36の動作が開始されていないと判定された場合にも(S12のNo)、ブレーキECU70は処理を終了する。これらの場合には条件が満たされていないので、制動オンとは判定されない。
本実施形態によれば、ペダルストロークが第2のストローク判定閾値に達しかつ動力液圧源30の液圧の消費を検出したことが新たな制動オン条件として設定される。第2のストローク判定閾値は、走行中の振動等のノイズを考慮して相対的に大きめに設定される第1のストローク判定閾値とは別に相対的に小さい値に設定することができる。これにより、微小なブレーキ操作を制動要求として検出することが可能となる。そして、動力液圧源30の液圧消費の検出を付加することにより、単なるノイズを制動要求として拾うことが抑制される。よって、微小なブレーキ操作における制動要求検出の精度向上を実現することができる。
また、制動要求の検出によりマスタカット弁64及びレギュレータカット弁65が閉弁される。これにより、レギュレータ33からマスタシリンダ32への作動液還流経路が遮断される。上述の微小なブレーキ操作における高精度の制動要求検出と相俟って、微小ストロークでのアキュムレータ圧の不必要な消費を軽減することができる。
なお上述のように、ブレーキECU70は、アキュムレータ35の液圧低下が基準を超えた場合に動力液圧源30の液圧の消費を検出するようにしてもよい。この場合、ブレーキECU70は、アキュムレータ圧の単位時間当たりの低下率が基準値を超えるか否かを判定してもよいし、アキュムレータ圧の低下量が基準値を超えるか否かを判定するようにしてもよい。この基準値は、作動液の還流発生時の液圧低下に相当する値を例えば実験等により定めればよい。
ところで、アキュムレータ圧の不必要な消費を作動液還流経路の遮断により軽減するという本発明の作用に注目すれば、作動液還流経路の遮断に制動オン判定を関連づけることは必須ではない。また、第1のストローク判定閾値による制動オン判定が充分な検出精度を既に実現していて、上述のような新たな制動オン条件を導入する必要がない場合もある。このような場合には、制動オン判定とは独立に作動液の還流を検出して還流経路を遮断するようにすればよい。
この場合、ブレーキECU70は、非制動時において動力液圧源30の液圧の消費を検出した場合に作動液還流経路を遮断するようにしてもよい。言い換えれば、ブレーキECU70は、ブレーキ操作入力が制動オン判定のための所定閾値に達していない場合において動力液圧源30の液圧の消費を検出したときに作動液還流経路を遮断するようにしてもよい。
図4は、本実施形態に係る作動液還流経路遮断処理の一例を説明するためのフローチャートである。図4に示される処理は、ブレーキECU70により例えば非制動時に周期的に実行される。処理が開始されると、ブレーキECU70はアキュムレータ圧が基準よりも低下したか否かを判定する(S20)。この判定は、上述の実施例と同様にポンプ36のオンオフ切替を利用してもよいし、アキュムレータ圧の低下の度合いを利用してもよい。
アキュムレータ圧が低下していると判定された場合には(S20のYes)、ブレーキECU70はレギュレータカット弁65を閉弁する(S22)。これによりレギュレータ33からマスタシリンダ32への作動液還流経路が遮断される。このとき、分離弁常時開制御を実行している場合には、ブレーキECU70は分離弁60の開弁状態を継続する。このようにすれば分離弁常時開制御の継続が保証される。一方、アキュムレータ圧が低下していないと判定された場合には(S20のNo)、ブレーキECU70は処理を終了する。
なお、レギュレータカット弁65を閉弁する代わりに、作動液還流経路における他の制御弁例えばマスタカット弁64を閉弁してもよい。ただし、レギュレータカット弁65が作動液還流経路において最もレギュレータ33に近いので、レギュレータカット弁65からの作動液流出をより低減するためにはレギュレータカット弁65を閉弁することが好ましい。また、以降の制動制御への移行を円滑にするために、レギュレータカット弁65とともにマスタカット弁64を閉弁するようにしてもよい。
20 ブレーキ制御装置、 23 ホイールシリンダ、 27 マスタシリンダユニット、 31 液圧ブースタ、 32 マスタシリンダ、 33 レギュレータ、 34 リザーバ、 60 分離弁、 64 マスタカット弁、 65 レギュレータカット弁、 66 増圧リニア制御弁、 67 減圧リニア制御弁、 70 ブレーキECU、 71 レギュレータ圧センサ、 72 アキュムレータ圧センサ、 73 制御圧センサ。