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JP4578777B2 - 半導体装置及びその製造方法 - Google Patents

半導体装置及びその製造方法 Download PDF

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JP4578777B2
JP4578777B2 JP2003030479A JP2003030479A JP4578777B2 JP 4578777 B2 JP4578777 B2 JP 4578777B2 JP 2003030479 A JP2003030479 A JP 2003030479A JP 2003030479 A JP2003030479 A JP 2003030479A JP 4578777 B2 JP4578777 B2 JP 4578777B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、より詳しくは、キャパシタを有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電源を切っても情報を記憶することができる不揮発性メモリとして、フラッシュメモリや強誘電体メモリ(FeRAM)が知られている。
【0003】
フラッシュメモリは、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(IGFET)のゲート絶縁膜中に埋め込んだフローティングゲートを有し、記憶情報となる電荷をフローティングゲートに蓄積することによって情報を記憶する。情報の書込、消去にはゲート絶縁膜にトンネル電流を流す必要があり、比較的高い電圧を必要とする。
【0004】
FeRAMは、強誘電体のヒステリシス特性を利用して情報を記憶する強誘電体キャパシタを有している。強誘電体キャパシタにおいて上部電極と下部電極の間に形成される強誘電体膜は、上部電極及び下部電極の間に印加する電圧値に応じて分極を生じ、印加電圧を取り去っても分極を保持する自発分極を有する。印加電圧の極性を反転すれば、自発分極の極性も反転する。この自発分極の極性、大きさを検出すれば情報を読み出すことができる。
【0005】
FeRAMは、フラッシュメモリに比べて低電圧で動作し、省電力で高速の書込ができるという利点がある。
【0006】
FeRAMの強誘電体キャパシタはPZT系材料、ビスマス層状構造化合物等の強誘電体膜を有している。強誘電体膜は、下部電極膜上にスパッタ法、MOCVD法、ゾルゲル法等によってアモルファス相に成膜された後に、熱処理によってペロブスカイト構造に結晶化される。
【0007】
強誘電体膜の結晶化のための熱処理の際には下部電極膜にも熱が加わるので、下部電極膜は熱膨張によりストレスが変化する。例えば、下部電極膜として低温で形成したプラチナ膜は圧縮応力(compressive stress)を有するが、その上に形成された強誘電体膜を結晶化するための熱処理によって引張応力(tensile stress)に変化し、その変化量が大きい場合には下部電極膜が下地膜から剥がれ易くなる。
【0008】
これに対して、下部電極膜を成膜時に引張応力とすることが下記の特許文献1に記載されている。特許文献1には、絶縁膜の上に金属酸化物よりなる密着層を形成し、その密着層の上に下部電極膜としてプラチナ膜を基板温度200〜600℃でスパッタリングすることにより、プラチナ膜を2×109 dyne/cm2以上の引張応力にすることが記載されている。
【0009】
また、下部電極膜としてプラチナ膜をTiO x 接着層上に300〜800℃で形成して強誘電体キャパシタスタックの全体の応力を減らし、かつその熱安定性を高めることが、下記の特許文献2に記載されている。
【0010】
さらに、応力の制御ではないが、下部電極膜としてイリジウム膜を450〜600℃の比較的高い温度で形成することにより、下部電極膜の上に形成される強誘電体膜の配向性をランダムにして強誘電体キャパシタの分極反転電荷量を大きくすることが、下記の特許文献3に記載されている。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−246082号公報(段落番号0014)
【特許文献2】
特開2001−313376号公報(段落番号0005)
【特許文献3】
特開2002−57298号公報(段落番号0037)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、下部電極を構成するプラチナ又はイリジウムの単層膜の成長温度を制御するだけでは、下部電極上の強誘電体膜を結晶化のために熱処理する際に、下部電極が剥がれやすくなる。例えば、低温で形成したプラチナ膜のストレスは圧縮応力であり、その下のTiO x 層は殆ど引張応力なので、プラチナ膜とTiO x 層とは応力方向が逆であり、密着性が悪くなり、下部電極の膜剥がれが生じやすくなる。また、プラチナ膜を高い基板温度で形成すると、キャパシタのリーク電流が大きくなり易い。さらに、プラチナ膜を高温で形成するとプラチナ膜と引出用配線との接続に不良が発生しやすくなる。
【0013】
従って、多層構造の下部電極を形成しようとする場合には、主の導体膜であるプラチナ又はイリジウムの単層膜の温度を制御するだけでは不十分であって、温度以外の条件を考慮する必要があり、新たな観点から多層構造の下部電極膜を最適化する必要がある。
【0014】
本発明の目的は、絶縁膜上に形成されるキャパシタの膜剥がれを防止しリーク電流を従来より低減することができる半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によれば、半導体基板の上方に絶縁膜を形成する工程と、(a)前記絶縁膜の上に基板温度450〜550℃でイリジウム膜を形成する工程と、(b)前記イリジウム膜の上に酸化イリジウム膜を形成する工程と、(c)前記酸化イリジウム膜の上に第1の白金膜を形成する工程と、(d)前記第1の白金膜の上に酸化白金膜を形成する工程と、(e)前記酸化白金膜の上に第2の白金膜を形成する工程を行い、前記(a)〜(e)の工程により、前記イリジウム膜、前記酸化イリジウム膜、前記第1の白金膜、前記酸化白金膜及び前記第2の白金膜からなる積層構造の第1の導電膜を形成する工程と、前記第1の導電膜の上に誘電体膜を形成する工程と、前記誘電体膜の上に第2の導電膜を形成する工程と、前記第2の導電膜をパターニングしてキャパシタ上部電極を形成する工程と、前記誘電体膜をパターニングして前記キャパシタ上部電極の下にキャパシタ誘電体膜を形成する工程と、前記第1の導電膜をパターニングすることにより前記キャパシタ誘電体膜の下にキャパシタ下部電極を形成する工程とを含み、前記第1の導電膜を形成する工程の直後に、前記第1の導電膜が−2×10 9 〜5×10 9 dyne/cm 2 の応力を有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0017】
本発明によれば、2層以上の積層構造からなる下部電極を形成する場合に、下部電極を全体で−2×109 〜5×109 dyne/cm2の応力となるように制御している。
【0018】
そのような応力で形成される下部電極によれば、下部電極、誘電体膜及び上部電極から構成されるキャパシタの膜剥がれが生じにくくなるし、キャパシタのリーク電流密度が低減することが実験によって明らかになった。
【0019】
そのような応力の第1導電膜を形成するためには、積層構造を構成するプラチナ膜を−3.3×109 dyne/cm2以上で2×109 dyne/cm2より低い応力で形成することが好ましい。また、積層構造を構成するイリジウム膜を1.1×109 〜12.3×109 dyne/cm2の応力で形成することが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
図1〜図5は、本発明の第1実施形態に係る半導体記憶装置の形成工程を示す第1の断面図である。図6、図7は、本発明の第1実施形態に係る半導体記憶装置の形成工程を示す第2の断面図である。
【0021】
まず、図1(a) に示す断面構造を形成するまでの工程を説明する。
【0022】
図1(a) において、シリコン(半導体)基板1の表面には、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法によって素子分離絶縁膜2が形成される。なお、素子分離絶縁膜2として、STI(Shallow Trentch Isolation) 構造を採用してもよい。なお、シリコン基板1は、本実施形態及び以下の実施形態では6インチウェハを用いている。
【0023】
続いて、シリコン基板1のメモリセル領域のうち素子分離絶縁膜2に囲まれた所定の活性領域(トランジスタ形成領域)にp型不純物を導入することにより、活性領域に複数のpウェル3aを形成する。
【0024】
その後、シリコン基板1の表面を熱酸化して、pウェル3aの上でゲート絶縁膜4として使用されるシリコン酸化膜を形成する。
【0025】
次に、素子分離絶縁膜2及びゲート絶縁膜4の上に非晶質シリコン膜とタングステンシリサイド膜を順に形成する。そして、非晶質シリコン膜及びタングステンシリサイド膜をフォトリソグラフィ法により所定の形状にパターニングしてpウェル3aの上方にゲート電極5a,5bを形成する。なお、ゲート電極5a,5bを構成するアモルファスシリコン膜の代わりにポリシリコン膜を形成してもよい。
【0026】
pウェル3aの上方には2つのゲート電極5a,5bがほぼ平行に間隔をおいて形成され、これらのゲート電極5a,5bは素子分離絶縁膜2の上に延在してワード線WLとなる。
【0027】
次に、メモリセル領域のpウェル3aのうち、ゲート電極5a,5bの両側にn型不純物をイオン注入して、nチャネルMOSトランジスタT1 ,T2 のソース/ドレインとなる第1〜第3のn型不純物拡散領域7a,7b,7cを形成する。
【0028】
その後に、シリコン基板1、素子分離絶縁膜2及びゲート電極5a,5bの上に絶縁膜を形成する。そして、絶縁膜をエッチバックすることにより、ゲート電極5a,5bの両側部分に側壁絶縁膜6として残す。その絶縁膜として、例えばCVD法により形成される酸化シリコン(SiO2)を使用する。
【0029】
さらに、pウェル3a上のゲート電極5a,5b及び側壁絶縁膜6をマスクにして、n型不純物拡散領域7a〜7cにn型不純物をイオン注入することによりn型不純物拡散領域7a〜7cをLDD構造にする。
【0030】
これにより、第1及び第2のn型不純物拡散領域7a,7bとゲート電極5aを有する第1のnMOSトランジスタT1 の形成と、第2及び第3のn型不純物拡散領域7b,7cとゲート電極5bを有する第2のnMOSトランジスタT2 の形成が終了する。
【0031】
この後に、nMOSトランジスタT1 ,T2 を覆う絶縁性のカバー膜10をシリコン基板1の上にプラズマCVD法により形成する。カバー膜10として例えば酸窒化シリコン(SiON)膜を約200nmの厚さに形成する。
【0032】
次に、TEOSガスを用いるプラズマCVD法により、酸化シリコン(SiO2)膜を約1.0μmの厚さに成長し、この酸化シリコン膜を第1層間絶縁膜11として使用する。
【0033】
続いて、第1層間絶縁膜11の緻密化処理として、常圧の窒素雰囲気中で第1層間絶縁膜11を700℃の温度で30分間熱処理する。その後に、第1層間絶縁膜11の上面を化学機械研磨(CMP;Chemical Mechanical Polishing )法により研磨して平坦化する。ここで、カバー膜10はCMPのストッパ膜として機能するので、カバー膜10の一部が例えば素子分離絶縁膜2上のワード線WLの上方で露出する。
【0034】
次に、第1層間絶縁膜11をフォトリソグラフィ法によりパターニングすることにより、第1〜第3のn型不純物拡散領域7a〜7cのそれぞれの上に第1〜第3のコンタクトホール11a〜11cを形成する。
【0035】
その後、第1層間絶縁膜11の上面と第1〜第3のコンタクトホール11a〜11cの内面にグルー膜として厚さ20nmのチタン(Ti)膜と厚さ50nmのTiN (窒化チタン)膜をスパッタ法により順に形成する。さらに、第1〜第3のコンタクトホール11a〜11cを完全に埋め込む厚さのタングステン(W)膜をCVD法によりグルー膜上に成長する。
【0036】
続いて、タングステン膜及びグルー膜をCMP法により研磨して第1層間絶縁膜11の上面上から除去する。これにより、第1〜第3のホール11a〜11c内に残されたタングステン膜及びグルー膜を、それぞれ第1〜第3の導電性プラグ12a〜12cとする。
【0037】
pウェル3aの上方において、2つのゲート電極5a,5bに挟まれる第2のn型不純物拡散領域7b上の第2の導電性プラグ12bは後述するビット線に電気的に接続され、さらに、その両側方の第1、第3の導電性プラグ12a,12cは後述するキャパシタの上部電極に電気的に接続される。
【0038】
次に、第1層間絶縁膜11上と導電性プラグ12a〜12c上に、下地絶縁膜13として、厚さ100nm程度のSiON膜と厚さ130nm程度のSiO2膜をCVD法により順に形成する。SiON膜は導電性プラグ12a〜12cの酸化を防止するために形成され、また、SiO2膜は後述するキャパシタの下部電極の結晶性の劣化を抑制するために形成される。なお、下地絶縁膜13を構成するSiO2膜はソースガスとしてTEOSを用いて形成される。
【0039】
続いて、窒素雰囲気中で650℃、30分間の条件で下地絶縁膜13及び第1層間絶縁膜11の脱ガスを行う。
【0040】
次に、図1(b) に示すように、第1層間絶縁膜11上に第1の導電膜14としてチタン(Ti)膜14xとプラチナ(Pt)膜14yを順に形成する。Ti膜14xとPt膜14yは、大気に曝されないで2つのチャンバーで連続してDCスパッタ法により形成される。Ti膜14xは、例えば成膜温度20℃、厚さ約20nmで形成される。また、Pt膜14yは、例えば成膜温度150〜250℃、厚さ175nmで形成される。そのような成膜条件によれば、Pt膜14yの単独の応力は−3.24×109 〜1.55×109 dyne/cm2であり、第1の導電膜14の全体としての応力は−3.19×109 〜1.26×109 dyne/cm2となる。
【0041】
なお、応力の値のマイナス(−)は圧縮応力であり、応力の値のプラスは引張応力である。
【0042】
その後に、図2(a) に示すように、強誘電体膜15として厚さ100〜300nmのPLZT((Pb,La)(Zr,Ti)O3)膜をRFスパッタ法により第1の導電膜14上に形成する。この場合のPLZT膜は圧縮方向のストレスを持つ。
【0043】
強誘電体層15の形成方法は、スパッタ法の他に、MOD法、MOCVD法、ゾル・ゲル法などがある。また、強誘電体層15の材料としては、PLZT以外に、PZT(Pb(Zr,Ti)O3 )、或いはPZTにCaなどをドープした材料のような他のPZT系材料や、SrBi2Ta2O9(SBT、Y1)、SrBi2(Ta,Nb)2O9 (SBTN、YZ)等のBi層状構造化合物、(Sr,Ti)O3 、(Ba,Sr)TiO3 、その他の金属酸化物強誘電体を採用してもよい。
【0044】
続いて、強誘電体膜15を構成するPLZT膜の結晶化処理として、アルゴン(Ar)と酸素(O2)を含む雰囲気中で温度600℃以上、例えば650〜850℃で30〜120秒間の条件で高速加熱処理(RTA(Rapid Thermal Annealing))を行う。この結晶化の際に、第1の導電膜14を構成するPt膜14bが緻密化され、第1の導電膜14とPLZT強誘電体膜14の間の境界面とその近傍におけるプラチナ原子と酸素原子の相互拡散が抑制される。また、そのRTA処理により、第1の導電膜14及び強誘電体15は、応力が全て引張応力に変化し、ウェハであるシリコン基板1の反り量の変化が少ないことが望ましい。
【0045】
さらに、図2(b) に示すように、強誘電体膜15の上に第2の導電膜16として酸化イリジウム(IrO2)膜をスパッタ法により100〜300nm、例えば200nmの厚さに形成する。なお、第2の導電膜16として、プラチナ、酸化ルテニウムストロンチウム等を用いてもよい。
【0046】
この状態におけるキャパシタ形成領域及びその周辺において図2(b) のI−I線から見た断面断面は図6(a) のようになる。なお、図6、図7は、同じ部分の断面図を示している。
【0047】
次に、図2(c) に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0048】
まず、第2の導電膜16をパターニングすることにより、メモリセル領域の素子分離絶縁膜2上方においてキャパシタ用の上部電極16aを間隔をおいて複数成形する。上部電極16aは、MOSトランジスタT1 2 のそれぞれの側方においてワード線WLの延在方向に間隔をおいて複数形成される。この後に、エッチングによりダメージを受けた強誘電体膜15の膜質を回復させるために、酸素雰囲気中で勤番温度650℃、60分間の条件でアニールを行う。
【0049】
続いて、強誘電体膜15をパターニングすることにより、複数の上部電極16aの下でワード線WL延在方向に沿ったストライプ形状のキャパシタ用の誘電体膜15aを形成する。
【0050】
その後に、上部電極16a、誘電体膜15a及び第1の導電膜14の上に第1のキャパシタ保護絶縁膜17としてアルミナ(Al2O3) 膜をスパッタにより約50nmの厚さに形成する。アルミナの代わりにPZTなどを用いてもよい。
【0051】
続いて、スパッタにより受けたダメージから誘電体膜15aの膜質を回復させるために、例えば酸素雰囲気中で基板温度700℃、1分の条件で誘電体膜15aをアニールする。
【0052】
次に、図3(a) 、図6(b) に示すように、レジストパターン(不図示)を用いて第1の導電膜14をエッチングすることにより、誘電体膜15aの下でストライプ状に延在するキャパシタ用の下部電極14aを形成する。これにより、メモリセル領域では、下部電極14a、誘電体膜15a及び上部電極16aを有するキャパシタQが形成される。キャパシタQは上部電極16aを1単位として複数個形成される。
【0053】
キャパシタ保護絶縁膜17は、下部電極14aと同じ平面形状にパターニングされる。
【0054】
その後、図3(b) 、図6(c) に示すように、キャパシタQ、キャパシタ保護絶縁膜17及び下地絶縁膜13の上に、TEOSを含むソースガスを用いてCVD法により酸化シリコン膜を約1μmの厚さに形成し、この膜を第2層間絶縁膜18とする。第2層間絶縁膜18は圧縮応力を有する。
【0055】
続いて、第2層間層間絶縁膜18の上面をCMP法により平坦化し、CMP後の第2層間絶縁膜18の残り膜厚は、キャパシタQの上で約300nm程度とする。
【0056】
その後に、図4(a) に示すように、レジストパターン(不図示)を用いて、第2層間絶縁膜18及び下地絶縁膜13をエッチングして第1〜第3の導電性プラグ12a〜12cの上にそれぞれ第4〜第6のコンタクトホール18a〜18cを形成する。
【0057】
次に、図4(b) に示すように、第4〜第6のコンタクトホール18a〜18c内と第2層間絶縁膜18上に約50nmのTiN 膜を形成し、さらに第4〜第6のコンタクトホール18a〜18c内を完全に埋め込む厚さのW膜をTiN 膜の上に形成した後に、第2層間絶縁膜18上からW膜とTiN 膜をCMP法により除去する。これにより第4〜第6のコンタクトホール18a〜18cの中に残されたW膜とTiN 膜を第4〜第6の導電性プラグ19a〜19cとする。
【0058】
その後に、図5(a) 、図7(a) に示すように、第4〜第6の導電性プラグ19a〜19c上と第2層間絶縁膜18の上に、酸化防止膜20としてSiON膜をCVD法により形成し、続いて、レジストパターン(不図示)を使用して、酸化防止膜20、第2層間絶縁膜18及びキャパシタ保護絶縁膜17の一部をエッチングすることにより各キャパシタQの上部電極16aの上に上部電極用のコンタクトホール18d,18eを形成する。これと同時に、図7(a) に示すように、下部電極14aのうちキャパシタQが形成されていない端部のコンタクト領域の上に下部電極用コンタクトホール18fを形成する。
【0059】
続いて、上部電極用のコンタクトホール18d,18eを通してキャパシタQを酸素雰囲気中でアニールし、これにより、エッチングにより受けたダメージからキャパシタ特性を回復させる。アニール条件として、例えば基板温度550℃、時間60分間とする。そのようなアニールの後に、酸化防止膜20をエッチバックして除去する。
【0060】
次に、図5(b) 、図7(b) に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0061】
まず、第4〜第6の導電性プラグ19a〜19c上と第2層間絶縁膜18上とコンタクトホール18d〜18f内に、厚さ20〜50nmのTiN 膜と厚さ約400nmのAl-Cu 膜を順に形成する。
【0062】
そして、TiN 膜とAl-Cu 膜をパターニングすることにより、メモリセル領域のpウェル領域3aの上方において第4の導電性プラグ19a上から一方のキャパシタQ上のコンタクトホール18d内に至る第1の配線21aと、第6の導電性プラグ19c上から他方のキャパシタQ上のコンタクトホール18e内に至る第2の配線21cと、第5の導電性プラグ19b上に島状の導電性パッド21bとを形成する。さらに、下部電極14aのコンタクト領域上のコンタクトホール18f内から外部に引き出される第3の配線21dを形成する。
【0063】
この後に、図示しないが、第1〜第3の配線21a,21c,21d、導電性パッド21b及び第2層間絶縁膜18の上に第3層間絶縁膜を形成し、さらに導電性パッド21bに接続される導電性プラグを第3層間絶縁膜内に形成し、導電性パッド21bに電気的に接続されるビット線を第3層間絶縁膜上に形成するなどの工程が行われるが、その詳細は省略する。
【0064】
上記した実施形態において、下部電極14aとなる第1の導電膜14を構成するTi膜14xとPt膜14yのリーク電流、配向性、スイッチング電荷量等について実験したところ、以下のような結果が得られた。
【0065】
まず、上記したように、基板温度20℃で形成された厚さ20nmのTi膜14xの上に、厚さ175nmのPt膜14yを20℃,50℃、100℃、150℃、200℃、250℃と成長温度を変えて成長した試料を複数作製し、それらの試料の各々のPt膜14yについて(222)面配向積分強度と成膜温度との依存関係を調べたところ、図8のような結果が得られた。なお、図においてBELは下部電極(bottom electrode)の略称であり、以下の実施形態でも同様である。また、配向積分強度は、本実施形態と以下の実施形態ではX線回折分析法で測定する。
【0066】
図8によれば、Ti膜14x上でのPt膜14yの(222)配向積分強度は、成膜温度の上昇に従って単調に増加することがわかる。
【0067】
また、図9の表に示すように、室温(例えば20℃)以上で200℃以下で成膜したPt膜14y、Ti膜14xは双方とも圧縮応力であるが、250℃以上で成膜したPt膜14yは引張応力になり、かつ、Ti膜14xとPt膜14yの積層構造からなる第1の導電膜14全体の応力は引張応力になり、さらに高いPt成膜温度によれば第1の導電膜14全体の引張応力の強度も強くなる。
【0068】
また、ウェハ(シリコン基板1)上に複数形成されたキャパシタQのスイッチング電荷量QswとPt膜14yの成膜温度の関係を調べたところ、図10に示すような結果が得られた。図10は、各キャパシタQの下部電極14aと上部電極16aの間に3Vの電圧を印加し、そして、Pt成膜温度の異なる複数のシリコン基板1上のそれぞれについて71ポイントにあるキャパシタQについてQswを調べ、それらの平均値と最大値と最小値を調べた結果である。
【0069】
図10と図8によれば、下部電極14aを構成する第1の導電膜14のうちPt膜14yの(222)配向積分強度はPt膜14yの成膜温度に依存されるが、キャパシタQのQswはPt膜14yの成長温度に依存性があまり見られなく、面内のQswは28.9〜31.6μC/cm2 である。
【0070】
さらに、それら71ポイントのキャパシタQの各々について、リーク電流密度とPt膜14yの成長温度との関係を調べたところ、図11(a) 、(b) に示すような結果が得られた。なお、図11(a) は、キャパシタQに印加する電圧を6Vにした場合であり、図11(b) はその印加電圧を反転して−6Vにした場合を示している。
【0071】
図11によれば、Pt膜14yの成膜温度が低い場合には、リーク電流密度が高くなる。これは、低温で成膜したPt膜14yの緻密性が低く、Pt膜14yの上や下の膜とのPb、Pt、Tiの相互拡散があるからと考えられる。Pt膜14yの成長温度を150℃以上にすると緻密性が高くなってリーク電流密度も抑えられる。
【0072】
以上の実験結果によれば、下部電極14aを構成する複数層構造の第1の導電膜14のうちPt膜14yの成長の際の基板温度を150〜250℃にすることによって、第1の導電膜14全体の応力を最も小さくし、Pt膜14yの(222)配向強度を高く、さらにキャパシタQのリーク電流密度を小さくすることができた。また、そのような成膜温度によれば、図9の表に示すように、Pt膜14yの単独の応力は−3.24×109 〜1.55×109 dyne/cm2であり、第1の導電膜14の全体としての応力は−3.19×109 〜1.26×109 dyne/cm2となる。
【0073】
ところで、上記したPt膜14yを350℃以上の温度で成膜すると、図7(b) に示した下部電極14aと配線21dの接続部分で、配線21dを構成するアルミニウム膜と下部電極14aを構成するPt膜14yとが図12(a) に示すように共晶反応して共晶物29を生じさせやすい。そのような共晶反応による共晶物29は、配線21dと下部電極14aとの接続不良を生じさせる。これに対して、Pt膜14yを350℃より低い温度で成膜すると、図12(b) に示すように、下部電極14aと配線21dの接続は良好になるので、Pt膜14yは少なくとも350℃よりも低い温度で形成する必要があり、この場合のTi膜14xとPt膜14yの積層構造のストレスは5×109 dyne/cm2以下である。
【0074】
なお、上記した第1の導電膜14のうち第1層間絶縁膜11上に形成されるTi膜14xの代わりに、少なくともTiを含む合金、例えばPtTi、IrTi又はRuTiの膜を形成してもよいし、または、Irを用いてもよいし、または、少なくともIrを含む合金、例えばPtIr、IrTi又はRuIrを用いてもよい。それらの膜は、第1の導電膜14と第1層間絶縁膜11との密着層や、第1の導電膜14のバリア層として機能する。
【0075】
さらに、第1の導電膜14のPt膜14yの代わりに、その他の貴金属又は貴金属酸化物や、貴金属の2以上の合金又は貴金属酸化物の2以上の合金を用いてもよい。貴金属としては例えばPtの他にIr、Ru、Pdがあり、貴金属酸化物としては、PtO x 、IrO x 、RuO x 、PdO x がある。また、第1の導電膜14を構成する膜としては、そのような貴金属、貴金属酸化物、貴金属合金、貴金属酸化物合金を2以上含む積層構造であってもよい。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、下部電極14aを構成するTi膜14xを形成した後に連続してTi膜14xの上にPt膜14yを形成したが、本実施形態では、Ti膜14xを酸化した後にPt膜14yを形成する構造について説明する。
【0076】
図13〜図15は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。なお、図13〜図15において、図1〜図5と同じ符号は同じ要素を示している。
【0077】
まず、図13(a) に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0078】
図13(a) において、第1実施形態に示したと同様な工程により、シリコン基板1にMOSトランジスタT1 ,T2 を形成し、MOSトランジスタT1 ,T2 を覆うカバー膜10、第1層間絶縁膜11を順に形成し、さらに第1層間絶縁膜11をCMP法により平坦化する。さらに、第1層間絶縁膜11上に、第1実施形態と同様に、下地絶縁膜13を形成する。第1層間絶縁膜11の上にTi膜14xを室温(約20℃)で20nmの厚さにDCスパッタにより形成する。
【0079】
この後に、図13(b) に示すように、酸素とアルゴンを含む雰囲気中で、Ti膜14xを基板温度700℃のRTAにより酸化することにより、TiO x 膜14z形成する。
【0080】
続いて、図14(a) に示すように、TiO x 膜14zの上に厚さ150nmのPt膜14yをDCスパッタ法により200〜300℃の成膜温度で形成する。
【0081】
次に、図14(b) に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0082】
まず、第1実施形態に示したと同じ条件によって、Pt膜14y上に強誘電体膜15、例えばPLZT膜を形成し、強誘電体膜15をArとO2を有する雰囲気中で600℃の加熱処理をRTA法で施す。なお、強誘電体膜15を結晶化することにより、Pt膜14yが緻密化して、Pt膜14yとPLZT強誘電体膜15との間の境界面近傍におけるPtとO の相互拡散が抑制される。その熱処理により、TiO x 膜14z、Pt膜14y及び強誘電体膜15はストレスが全部引張応力に変化し、この時のウェハの反り量の変化が少ないことが望ましい。
【0083】
続いて、強誘電体膜15上に第2の導電膜16(例えば酸化イリジウム膜)を形成した後に、第1実施形態と同じ条件の酸素含有雰囲気でアニールする。
【0084】
次に、図15(a) に示すように、第1実施形態に示した工程によって、第2導電膜16をパターニングして上部電極16aを形成し、強誘電体膜15をパターニングして誘電体膜15aを形成した後に、キャパシタ保護絶縁膜17を形成し、さらに、キャパシタ保護膜17、Pt膜14y及びTiO x 膜14zをパターニングして下部電極14bを形成する。なお、下部電極14bは、Pt膜14y及びTiO x 膜14zから構成される。
【0085】
これにより、上部電極16a、誘電体膜15a及び下部電極14bよりなるキャパシタQが形成される。
【0086】
この後に、図15(b) に示すように、第1実施形態と同じ工程により、第2層間絶縁膜18を形成し、導電性プラグ19a〜19cを形成し、さらに配線21a,21c,21dと導電性パッド21bを形成する。その後には、第1実施形態と同様に、第3層間絶縁膜等が形成されるが詳細は省略する。
【0087】
上記した工程において、下部電極14bを構成するPt膜14yの成膜温度の違いによって、ウェハの反り量、ストレスがどのように変化するかについて実験した。
【0088】
図16は、下部電極14bを構成するPt膜14yの成膜温度の違いによってウェハの反り量の変化を示し、図17は、下部電極14bを構成するPt膜14yの成膜温度の違いによる膜のストレスの違いを示している。
【0089】
図16において、「SiO2」に示すように第2層間絶縁膜11であるSiO2膜に基づいてシリコン基板1の反り量を測定した後に、「TiO x 」に示すように上記した方法によりTiO x 膜14zを形成してその反り量を測定し、「BELーPT」に示すようにPt膜14yをTiO x 膜14z上に形成してその反り量を測定し、「FER−PZT」に示すように強誘電体膜15であるPLZT膜をPt膜14y上に形成してその反り量を測定し、さらに、「FER−ANI」に示すように強誘電体膜15を結晶化アニールしてその反り量を測定した。なお、Pt膜14yを形成する温度は、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃と変えた複数の試料について測定を行っている。なお、図17のストレスの大きさは、反り量とともに測定される。
【0090】
図16、図17によれば、Pt膜14yを形成する前のウェハの反り量、ストレスについてはほぼ同じ値となっている。また、圧縮応力のTi膜14xを酸化して形成されたTiO x 膜14zのストレスは、全て引張応力の方向に変化し、その強度が大きい。さらに、Pt膜14yの成長温度が100℃、150℃では、Pt膜14yのストレスは圧縮応力の方向になり、その成長温度を200℃以上にすると引張応力の方向になる。しかも、強誘電体膜15であるPLZT膜をPt膜14y上に形成すると、全体的に圧縮応力の方向に変化し、その後に、PLZT膜をArとO2の雰囲気で600℃で加熱すると引張応力の方向に変化する。
【0091】
ところで、成膜の毎に激しく応力(ストレス)が変化すると、膜が剥がれやすくなる。従って、図16、図17において、ウェハの反り量や膜ストレスの変化量が小さいことが望ましいので、Pt膜14yの成膜温度は200〜300℃が好ましいことになる。
【0092】
なお、Pt膜14yをスパッタで形成する場合にチャンバ内に導入されるArの流量を増やすことによりストレスを0の方向に近づけることができる。例えば、スパッタにおけるArの流量を116sccmとし、圧力を3mTorr とすることが好ましい。
【0093】
次に、キャパシタQのスイッチング電荷量QswとPt膜14yの成膜温度の関係を調べたところ、図18のような結果が得られた。
【0094】
図18によれば、QswにはPt成膜温度の依存性があまり見られないが、200〜300℃でPt膜14yを成膜する場合にはQswの面内分布が若干良くなっていて、Qswの範囲は、29.2〜32.0μC/cm2 である。なお、図18に示したデータを得るために、Pt成膜温度の異なる複数のウェハ上の各々の複数のキャパシタQについてQswを調べている。そして、図18の四角はそのQswの最も多い領域を示し、その四角の中の横線はピークを示している。
【0095】
また、ウェハ上に形成した複数のキャパシタQを構成するPLZT強誘電体膜15の疲労特性(ファティーグ)について、Pt膜14yの成膜温度の違いによってどのような違いが現れるかを調べたところ、図19に示すような結果が得られた。
【0096】
図19は、強誘電体膜15を7Vで分極反転させ、2.88×107 サイクル後のファティーグロス(fatigue loss)を示している。分極反転後の書き込み、読み出しは3Vで行った。
【0097】
図19によれば、Pt膜14yの成膜温度を200〜300℃の範囲内に設定した場合にキャパシタの疲労損失は全くなかった。
【0098】
次に、Pt膜14yの成膜温度がキャパシタリーク電流密度にどのような影響を及ぼすかについての実験結果を説明する。
【0099】
まず、Pt膜14yの成膜温度を異ならせて上記した工程に従って複数枚のシリコンウェハ上に複数のキャパシタQを形成した。そして、各々のウェハ上のキャパシタQのうち71ポイントのものについてリーク電流密度を調べた。そして、Pt膜14yの成膜温度の違い毎にキャパシタQのリーク電流密度の累積確率を調べたところ、図20(a) 、(b) に示すような結果が得られた。なお、図20(a) と図20(b) は、キャパシタQに6Vを印加した場合と−6Vを印加する場合の違いを示している。
【0100】
図20(a),(b) によれば、Pt膜14yの成膜温度100〜300℃では、キャパシタQのリーク電流密度は殆ど変わらないが、350℃とした場合にはリーク電流密度に面内分布が生じて若干悪くなる。
【0101】
次に、リーク電流密度が調査された試料上のキャパシタQについて接着テープを用いて膜剥がれが生じるか否かの試験を行ったところ、図21の表に示すように、Pt膜14yが100℃で成膜された場合にPt膜14yとTiO x 膜14zの界面で膜が剥がれるものがあった。従って、キャパシタQの膜剥がれを防止するためにはPt膜14yの成膜温度を150℃以上にすればよい。
【0102】
図21は、膜剥がれ以外に、Pt膜14yの成膜温度の違いによる各工程でのウェハの反り量、反り変化量、リーク電流密度、膜ストレス、膜剥がれ状況、キャパシタリーク電流を示している。なお、反り変化量は、膜の形成前後の反り量の差を示している。
【0103】
図16〜図21によれば、Pt膜14yの成膜温度を150℃〜300℃に設定することにより、キャパシタQのストレス変化量を小さくし、全体の膜の密着性が良くなることがわかった。また、この場合、TiO x 膜14xとPt膜14yの積層構造からなる下部電極14b全体のストレスは、−7.2×109 〜4.6×109 dyne/cm2となった。また、リーク電流密度を小さくし、膜剥がれを防止するためには、下部電極14bを構成するPt膜14yのストレスを−3.3×109 以上で2×109 dyne/cm2より低くすることが好ましい。このPt応力の範囲は、第1実施形態の下部電極14aでもリーク電流の低減の効果を生じさせる。
【0104】
なお、Pt膜14yの成膜温度が150℃以上で350℃未満の場合に、5.0×109 dyne/cm2となる下部電極14bには膜剥がれが生じなかった。
【0105】
なお、上記した第1の導電膜14のうち第1層間絶縁膜11上に形成されるTiO x 膜14zの代わりに、Tiの窒化物を用いてもよいし、少なくともTiを含む合金の酸化物又は窒化物を用いてもよいし、或いはIrの酸化物を用いてもよい。Tiを含む合金の酸化物又は窒化物として、例えばPtTi、IrTi又はRuTiの酸化物膜又は窒化物がある。
【0106】
また、TiO x 膜14zの代わりに、Irの酸化物、又は少なくともIrを含む合金の酸化物を形成してもよいし、または、Irを用いてもよいし、または、少なくともIrを含む合金の酸化物、例えばPtIr、IrTi又はRuIrの酸化物を用いてもよい。それらの膜は、第1の導電膜14と第1層間絶縁膜11との密着層や、第1の導電膜14のバリア層として機能する。
【0107】
さらに、第1の導電膜14のPt膜14yの代わりに、その他の貴金属又は貴金属酸化物や、貴金属の2以上の合金又は貴金属酸化物の2以上の合金を用いてもよい。貴金属としては例えばPtの他にIr、Ru、Pdがあり、貴金属酸化物としては、PtO x 、IrO x 、RuO x 、PdO x がある。また、第1の導電膜14を構成する膜としては、そのような貴金属、貴金属酸化物、貴金属合金、貴金属酸化物合金を2以上含む積層構造であってもよい。
(第3の実施の形態)
上記した第1、第2の実施形態では、下部電極の上面から電気的に引き出す構造のプレーナー型キャパシタについて説明した。本実施形態では、下部電極の下面から電気的に導電性プラグを介して電気的に引き出す構造のスタック型キャパシタについて説明する。
【0108】
図22〜図26は、本発明の実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図である。
【0109】
まず、図22(a) に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0110】
図22(a) に示すように、シリコン(半導体)基板40のトランジスタ形成領域の周囲にフォトリソグラフィー法により素子分離用溝を形成した後に、素子分離用溝の中に酸化シリコン(SiO2)を埋め込んで素子分離膜41を形成する。そのような構造の素子分離膜41はSTIと呼ばれる。なお、第1実施形態のようにLOCOS法により形成した絶縁膜を素子分離膜として採用してもよい。
【0111】
続いて、シリコン基板40のトランジスタ形成領域にp型不純物を導入してpウェル42を形成する。さらに、シリコン基板40のトランジスタ形成領域表面を熱酸化して、ゲート絶縁膜43となるシリコン酸化膜を形成する。
【0112】
次に、シリコン基板40の上側全面に非晶質又は多結晶のファスシリコン膜とシリコン窒化膜を順次形成し、これらのシリコン膜及びシリコン窒化膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングして、シリコン窒化膜44が積層されたゲート電極45a,45bを形成する。
【0113】
なお、1つのpウェル42上には2つのゲート電極45a,45bが並列に形成され、それらのゲート電極45a,45bはワード線の一部を構成する。
【0114】
次に、pウェル42のうちゲート電極45a,45bの両側にn型不純物をイオン注入してソース/ドレインとなる第1〜第3のn型不純物拡散領域46a〜46cを形成する。
【0115】
さらに、CVD法により絶縁膜、例えば酸化シリコン(SiO2)膜をシリコン基板40の全面に形成した後に、その絶縁膜をエッチバックしてゲート電極45a,45bの両側部分に絶縁性のサイドウォールスペーサ48として残す。
【0116】
続いて、ゲート電極45a,45bとサイドウォールスペーサ48をマスクに使用して、第1〜第3のn型不純物拡散領域46a〜46cに再びn型不純物をイオン注入することにより、高濃度不純物領域47a〜47cを形成して、第1〜第3のn型不純物拡散領域46a〜46cをLDD構造にする。
【0117】
なお、1つのトランジスタ形成領域における2つのゲート電極45a,45bの間の第1のn型不純物拡散領域46aはビット線に電気的に接続され、トランジスタ形成領域の両端側の第2、第3のn型不純物拡散領域46b,46cは、後述する容量素子の下部電極に電気的に接続される。
【0118】
以上の工程により、pウェル42にはゲート電極45a,45bとLDD構造のn型不純物拡散層46a〜46cを有する2つのMOSトランジスタT1 ,T2 が形成される。
【0119】
次に、MOSトランジスタT1 ,T2 を覆うカバー絶縁膜49として約200nmの厚さの酸窒化シリコン(SiON)膜をプラズマCVD法によりシリコン基板40の全面に形成する。その後、TEOSガスを用いるプラズマCVD法により、第1層間絶縁膜50として膜厚1.0μm程度の酸化シリコン(SiO2)膜をカバー膜49の上に形成する。
【0120】
続いて、第1層間絶縁膜50の緻密化処理として、例えば常圧の窒素雰囲気中で層間絶縁膜50を700℃の温度で30分間熱処理する。その後に、第1層間絶縁膜50の上面を化学機械研磨(CMP)法により平坦化する。
【0121】
次に、図22(b) に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0122】
まず、フォトリソグラフィ法により第1層間絶縁膜50をパターニングして、第1の不純物拡散領域46aに到達する深さの第1のコンタクトホール50aを形成する。その後、第1層間絶縁膜50上面と第1のコンタクトホール50a内面に、グルー膜として厚さ30nmのTi膜と厚さ50nmの窒化チタン(TiN )膜をスパッタ法により順に形成する。さらに、WF6 を用いるCVD法によってタングステン(W)膜をTiN 膜上に成長して第1のコンタクトホール50a内を完全に埋め込む。
【0123】
続いて、W膜及びTiN 膜をCMP法により研磨して第1層間絶縁膜50の上面上から除去する。第1のコンタクトホール50a内に残されたタングステン膜、TiN 膜は第1導電性プラグ51aとして使用される。
【0124】
その後に、第1層間絶縁膜50上と第1導電性プラグ51a上に、膜厚100nmの窒化シリコン(Si3N4)よりなる酸化防止絶縁膜52aと膜厚100nmのSiO2よりなる下地絶縁膜52bをプラズマCVD法により順に形成する。そのSiO2膜はTEOSを用いてプラズマCVDにより成長される。酸化防止絶縁膜52aは、後のアニール等による熱処理の際に第1の導電性プラグ51aが異常酸化してコンタクト不良を起こさないようにするために形成され、その膜厚を例えば70nm以上にすることが望ましい。
【0125】
次に、図23(a) に示すような状態になるまでの工程を説明する。
【0126】
まず、レジストパターン(不図示)を用いて、酸化防止絶縁膜52a、下地絶縁膜52b及び第1層間絶縁膜50をエッチングすることによって、第2及び第3のコンタクトホール50b,50cを第2及び第3の不純物拡散領域46b,46cの上に形成する。
【0127】
さらに、下地絶縁膜52b上面と第2、第3のコンタクトホール50b,50c内面に、グルー膜として厚さ30nmのTi膜と厚さ50nmのTiN 膜をスパッタ法により形成する。さらに、CVD法によりW膜をTiN 膜上に成長して第2、第3のコンタクトホール50b,50c内を完全に埋め込む。
【0128】
続いて、W膜、TiN 膜及びTi膜をCMP法により研磨して下地絶縁膜52bの上面上から除去する。これにより第2、第3のコンタクトホール50b,50c内に残されたタングステン膜、TiN 膜及びTi膜をそれぞれ第2、第3導電性プラグ51b,51cとする。
【0129】
次に、図23(b) に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0130】
まず、第2、第3導電性プラグ51b,51c上と下地絶縁膜52b上にイリジウム(Ir)膜53を形成する。
【0131】
Ir膜53は、例えば、基板温度を450〜550℃、パワーを1kWに設定するとともに成長雰囲気内にアルゴン(Ar)ガスを100sccmの流量で導入し、成長時間を140秒とし、成膜圧力を0.35Paとする条件で、スパッタ法により200nmの厚さに形成される。
【0132】
次に、図24(a) に示すように、Ir膜53上に、酸化イリジウム(IrO x )膜54、第1のプラチナ(Pt)膜55、酸化プラチナ(PtO x )膜56及び第2のプラチナ(Pt)膜57を順に形成する。
【0133】
IrO x 膜54は、例えば、基板温度を50℃、パワーを1kWに設定するとともに成長雰囲気内にArガスを60sccm、酸素(O2)ガスを60sccmの流量で導入し、成長時間を11秒、成膜圧力を0.37Paとする条件下で、スパッタ法により30nmの厚さに形成される。
【0134】
第1のPt膜55は、例えば、基板温度を350℃、パワーを1kWに設定するとともに成長雰囲気内にArガスを100sccmの流量で導入し、成長時間を8秒、成膜圧力を0.38Paとする条件で、スパッタ法により15nmの厚さに形成される。
【0135】
この後に、シリコン基板40を一旦、第1のPt膜55を形成したスパッタ層のチャンバ外(例えば大気中)に出し、ダミーウェハを用いてチャンバーを十分にクリーニングし、さらに、そのチャンバー内に再びシリコン基板40を入れてPtO x 膜56を第1のPt膜55上に形成する。
【0136】
PtO x 膜56は、例えば、基板温度を350℃、パワーを1kWに設定するとともに成長雰囲気内にArガスを36sccm、酸素(O2)ガスを144sccmの流量で導入し、成長時間を22秒、成膜圧力を6.2Paとする条件で、スパッタ法により25nmの厚さに形成される。
【0137】
続いて、PtO x 膜56を形成したスパッタ装置のチャンバーからシリコン基板40を外に出し、ダミーウェハを用いてチャンバ内を十分にクリーニングした後に、チャンバー内にシリコン基板40を入れて第2のPt膜57をPtO x 膜56上に形成する。
【0138】
第2のPt膜57は、例えば、基板温度を100℃、パワーを1kWに設定するとともに成長雰囲気内にArガスを100sccmの流量で導入し、成長時間を32秒、成膜圧力を0.4Paとする条件で、スパッタ法により50nmの厚さに形成される。
【0139】
この後に、アルゴン導入雰囲気中において750℃、60秒間で急速加熱処理により、第2のPt膜24を結晶化する。
【0140】
以上のようなIr膜53、IrO x 膜54、第1のPt膜55、PtO x 膜56及び第2のPt膜57からなるPt/PtO x /Pt/IrO x /Ir構造を第1の導電膜58とする。
【0141】
なお、下部電極58として、その他の貴金属、貴金属酸化物を含む積層構造、又は、第1実施形態、第2実施形態で示した構造を用いてもよい。
【0142】
次に、図24(b) に示すように、第1の導電膜58上に、強誘電体膜59として例えば膜厚100nmのPLZT膜をスパッタ法により形成する。強誘電体膜59の材料としては、PLZTの他に、第1実施形態に示したPZT系材料、Bi層状構造化合物材料、その他の金属酸化物強誘電体であってもよいし、強誘電体膜59の形成方法として第1実施形態に示した方法を採用してもよい。
【0143】
続いて、酸素雰囲気中で強誘電体膜26をアニールにより結晶化する。アニールとして、例えばアルゴンと酸素の混合ガス雰囲気中で基板温度600℃、時間90秒の条件を第1ステップ、酸素雰囲気中で基板温度750℃、時間60秒の条件を第2ステップとする2ステップのRTA処理を採用する。
【0144】
さらに、強誘電体膜59の上に、第2の導電膜60として例えば膜厚50nmの酸化イリジウム(IrO2)をスパッタ法により形成する。なお、第2の導電膜60としてIrO x 膜の代わりにPt膜を形成してもよい。
【0145】
この後に、アルゴン導入雰囲気中において第2の導電膜60を通して強誘電体膜59を急速加熱処理する。
【0146】
この後に、第2の導電膜60上に、ハードマスク(不図示)としてTiN 膜とSiO2膜を順に形成する。そのハードマスクは、フォトリソグラフィー法により第2及び第3導電性プラグ51b,51cの上方にキャパシタ平面形状となるようにパターンされる。
【0147】
次に、図25に示すように、ハードマスク(不図示)に覆われない領域の第2の導電膜60、強誘電体膜59、第1の導電膜58を順次エッチングする。
【0148】
これにより、下地絶縁膜52bの上には、第1の導電膜58よりなる下部電極58aと、強誘電体膜59よりなる誘電体膜59aと、第2の導電膜60よりなる上部電極60aが形成される。そして、上部電極60aと誘電体膜59aと下部電極58aによりキャパシタQ1 が形成される。
【0149】
そして、トランジスタ形成領域において、1つのキャパシタQ1 の下部電極58aは第2導電性プラグ51bを介して第2不純物拡散領域46bに電気的に接続され、また、別のキャパシタQ1 の下部電極58aは第3導電性プラグ51cを介して第3不純物拡散領域46cに電気的に接続される。
【0150】
その後に、ハードマスク(不図示)を除去する。
【0151】
続いて、エッチングによる強誘電体膜26のダメージを回復するために、回復アニールを行う。この場合の回復アニールは、例えば、基板温度650℃、60分間の条件で酸素雰囲気中で行われる。
【0152】
次に、図26に示すように、キャパシタQ1 を覆う絶縁性の保護膜61として膜厚50nmのアルミナをスパッタにより基板上方に形成した後に、酸素雰囲気中で650℃で60分間の条件でキャパシタQ1 をアニールする。この保護膜61は、プロセスダメージからキャパシタQ1 を保護するものであり、PZTから構成してもよい。
【0153】
その後、TEOSガスを用いるプラズマCVD法により、第2層間絶縁膜62として膜厚1.0μm程度の酸化シリコン(SiO2)を保護膜61上に形成する。さらに、第2層間絶縁膜62の上面をCMP法により平坦化する。
【0154】
次に、図27に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0155】
まず、レジストマスク(不図示)を用いて第2層間絶縁膜62、保護膜61、下地絶縁膜52b及び酸化防止絶縁膜52aを選択的にエッチングすることにより、第1導電プラグ51aの上にホール62aを形成する。そのエッチング後には、キャパシタQ1 の誘電体膜59aを構成する強誘電体膜59をダメージから回復させるために、例えば酸素雰囲気にて基板温度を550℃として60分間のアニールを施す。
【0156】
さらに、ホール62a内と第2層間絶縁膜62上に、グルー膜として膜厚50nmのTiN 膜をスパッタ法により順に形成する。さらに、CVD法によりW膜をグルー層上に成長するとともにホール62a内を完全に埋め込む。
【0157】
続いて、W膜、TiN 膜をCMP法により研磨して第2層間絶縁膜62の上面上から除去する。そして、ホール62a内に残されたタングステン膜及びグルー層を、第4導電性プラグ63とする。この第4導電性プラグ63は、第1導電性プラグ51aを介して第1不純物拡散領域46aに電気的に接続される。
【0158】
次に、図28に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0159】
まず、第4導電性プラグ63上と第2層間絶縁膜62上に、第2の酸化防止膜64としてSiON膜をCVD法により形成する。さらに、第2の酸化防止膜64と第2層間絶縁膜62をフォトリソグラフィー法によりパターニングしてキャパシタQ1 の上部電極34a上にコンタクトホール65を形成する。
【0160】
コンタクトホール65を形成することによりダメージを受けたキャパシタQ1 はアニールによって回復される。そのアニールは、例えば酸素雰囲気中で基板温度550℃として60分間行われる。
【0161】
その後に、第2層間絶縁膜62上に形成された第2の酸化防止膜64をエッチバックによって除去するとともに第4導電性プラグ63の上面を露出させる。
【0162】
次に、図29に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0163】
まず、キャパシタQ1 の上部電極60a上のコンタクトホール65内と第2層間絶縁膜62の上に多層金属膜を形成する。その後に、多層金属膜をパターニングすることにより、コンタクトホール65を通して上部電極60aに接続される多層金属膜からなる配線層66aと、第4導電性プラグ63に接続される多層金属膜からなる導電性パッド66bを形成する。その多層金属膜として、例えば、膜厚60nmのTi、膜厚30nmのTiN 、膜厚400nmのAl-Cu 、膜厚5nmのTi、及び膜70nmのTiN を順に形成する。
【0164】
さらに、第2層間絶縁膜62、配線層66a及び導電性パッド66bの上に第3層間絶縁膜67を形成する。続いて、第3層間絶縁膜67をパターニングして導電性パッド66bの上にホール67aを形成し、そのホール67a内に下から順にTiN 膜、W膜からなる第5導電性プラグ68を形成する。
【0165】
その後に、特に図示しないが、ビット線を含む二層目配線を第3層間絶縁膜97上に形成する。そのビット線は、第5導電性プラグ68、導電性パッド66b、第4導電性プラグ63及び第1導電性プラグ51aを介して第1不純物拡散領域46aに電気的に接続される。それに続いて、二層目配線層を覆う絶縁膜等が形成されるが、その詳細は省略する。
【0166】
上記した工程において、Ir膜53のストレス、第1の導電膜58全体のストレス、ウェハ全体の反り量などが、第1の導電膜58を構成するIr膜53の成膜温度によってどのように影響を及ぼすかを調べたところ、図30に示す表のような結果が得られた。
【0167】
それらの測定は、図30の「BEL−IR」に示すように、下地絶縁膜52bが形成された状態のシリコン基板(ウェハ)1全体のストレスを測定した後に、複数のシリコン基板1の下地絶縁膜52bの各々の上に、成膜温度を400℃、450℃、500℃、550℃と異ならせてIr膜53を形成し、それらのIr膜53についてストレスを調べさらにウェハの反り量を測定した。さらに、「BEL−PT」に示すように、それらのIr膜53の上にそれぞれ上記した条件でIrO x 膜54、第1のPt膜55、PtO x 膜56及び第2のPt膜57を形成し、第1の導電膜58全体のストレスと第2のPt膜57の(111)配向の積分強度とウェハ全体の反り量とを測定した。さらに、「BEL−AN」に示すように、Ir膜53、IrO x 膜54、第1のPt膜55、PtO x 膜56及び第2のPt膜57からなる第1の導電膜58を上記した条件のRTAによりアニールした後に、第1の導電膜58のストレスとウェハ全体の反り量を測定した。ついで、「Co−ANL」に示すように、各第1の導電膜58の上にPLZTよりなる強誘電体膜59を形成し、強誘電体膜59を上記した条件で熱処理し、さらに第2の導電膜60を形成し、ついで上記した条件で熱処理した後に、膜のストレスとウェハ全体の反り量と膜剥がれ状態を測定した。この場合、図30では、キャパシタQ1 を構成する複数の膜の形成開始前から形成後の反り量の変化をキャパシタの最大の変化量として示した。
【0168】
図30の表によれば、Irの成膜温度が低い場合には結晶粒が小さくなるので、Ir膜53、IrO x 膜54、第1のPt膜55、PtO x 膜56の各々の表面は若干平坦になって、下部電極58aとなる第1の導電膜58の最上層のPt膜57の(111)配向の積分強度が高くなる。一般的に、第1の導電膜58の配向が良くなるとその上に形成される強誘電体膜59の配向も(111)強度が高くなり、しかもキャパシタQ1 のスイッチング電荷量も良くなる。
【0169】
しかし、実験によれば、400℃でIr膜53を成膜すると、第2の導電膜60をRTAにより加熱した後にキャパシタを構成する膜に剥がれが生じた。これは、400℃成膜したIr膜53のストレス方向は強い圧縮応力であり、これにより第1の導電膜58のストレスも強い圧縮応力になり、その後のアニールによってストレスが逆転し、劇的なストレス変化により膜剥がれが発生したからと考えられる。
【0170】
従って、図30の表によれば、Ir膜53の最適成膜温度は450℃以上で550℃以下となり、「BEL−PT」に示すように積層構造である第1の導電膜58全体のストレスを−2×109 〜5×109 dyne/cm2に抑えることが重要である。そのストレスは、第1実施形態において示した下部電極を構成する積層構造全体のストレスの好ましい範囲とほぼ同じになる。
【0171】
また、第2の導電膜60を形成した後のアニール後の膜剥がれは、キャパシタを構成する第1の導電膜58、強誘電体膜59及び第2の導電膜60の全体の反り量の変化量にも依存し、図30によれば、その反り量の変化は100μm以下が好ましい。また、Ir膜53を1.1×109 〜12.3×109 dyne/cm2の応力で形成することが好ましい。
【0172】
以上の第1〜第3の実施形態によれば、プラチナ膜を含む積層構造からなる下部電極及びキャパシタを構成する膜の剥がれを防止し、且つリーク電流を低減するためには、ストレスが−2×109 〜5×109 dyne/cm2の範囲となる条件で下部電極を構成する積層構造膜を形成する必要がある。
【0173】
また、積層構造の下部電極の膜剥がれを防止するためには、下部電極を構成する一層目の膜から最終層目の膜までに生じるウェハの反り量の変化を小さくし、さらにキャパシタを形成するまでのキャパシタ構成膜のストレスの変化を小さくする必要がある。そのためには、図16、図17、図30から、下部電極を構成する一層目の膜から最終層目の膜までに生じるウェハの反り量の変化量を−13〜13μmの範囲に設定することが好ましい。
(付記1)半導体基板の上に形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の上に形成された異なる材料の積層構造からなり且つ−2×109 〜5×109 dyne/cm2の応力を有するキャパシタ下部電極と、
前記キャパシタ下部電極の上に形成された誘電体膜と、
前記誘電体膜の上に形成されたキャパシタ上部電極と、
前記キャパシタ下部電極、前記誘電体膜及び前記キャパシタ上部電極からなるキャパシタを覆う第2絶縁膜と
を有することを特徴とする半導体装置。
(付記2)前記キャパシタ下部電極の前記応力は、前記第1絶縁膜上に形成される金属酸化物膜又は金属窒化物膜を含めた値であることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3)前記キャパシタ下部電極は、貴金属膜、貴金属酸化物膜の少なくとも一方を有していることを特徴とする付記1又は付記2に記載の半導体装置。
(付記4)半導体基板の上に絶縁膜を形成する工程と、
材料の異なる積層構造を有し且つ−2×109 〜5×109 dyne/cm2の応力を有する第1の導電膜を前記絶縁膜の上に形成する工程と、
前記第1の導電膜の上に誘電体膜を形成する工程と、
前記誘電体膜の上に第2の導電膜を形成する工程と、
前記第2の導電膜をパターニングしてキャパシタ上部電極を形成する工程と、前記誘電体膜をパターニングして前記キャパシタ上部電極の下にキャパシタ誘電体膜を形成する工程と、
前記第1の導電膜をパターニングすることにより前記下部電極の下にキャパシタ下部電極を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記5)前記第1の導電膜はプラチナ膜を有し、該プラチナ膜を−3.3×109 以上で2×109 dyne/cm2より低い応力で形成する工程を有することを特徴とする付記4に記載の半導体装置の製造方法。
(付記6)前記第1の導電膜の前記積層構造にはイリジウム膜を有し、該イリジウム膜を1.1×109 〜12.3×109 dyne/cm2の応力で形成する工程を有することを特徴とする付記4又は付記5に記載の半導体装置の製造方法。
(付記7)前記半導体基板はウェハ状であって、前記積層構造を有する前記第1の導電膜の一層目の膜を形成した後から最終層目の形成終了までの前記半導体基板の反り量の変化を−13μm〜13μmとすることを特徴とする付記4乃至付記6のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(付記8)前記半導体基板はウェハ状であって、前記第1の導電膜、前記誘電体膜及び前記代2の導電膜の形成までの前記半導体基板の反り量の変化量は100μm以下にすることを特徴とする付記4乃至付記7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(付記9)前記第2の導電膜を形成した後に、前記第2の導電膜の上にキャパシタ形成領域にマスクを形成する工程を有し、
前記キャパシタ上部電極、前記キャパシタ誘電体膜及び前記キャパシタ下部電極は、前記第2の導電膜、前記誘電体膜及び前記第1の導電膜のうち前記マスクに覆われない領域を連続的にエッチングすることにより形成されることを特徴とする付記4乃至付記8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0174】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、2層以上の積層構造からなる下部電極を形成する場合に、下部電極を−2×109 〜5×109 dyne/cm2の応力となるように制御したので、下部電極、誘電体膜及び上部電極から構成されるキャパシタの膜剥がれを生じ難くできるし、キャパシタのリーク電流密度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a),(b) は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す第1の断面図(その1)である。
【図2】図2(a) 〜(c) は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す第1の断面図(その2)である。
【図3】図3(a),(b) は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す第1の断面図(その3)である。
【図4】図4(a),(b) は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す第1の断面図(その4)である。
【図5】図5(a),(b) は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す第1の断面図(その5)である。
【図6】図6(a) 〜(c) は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す第2の断面図(その1)である。
【図7】図7(a),(b) は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す第2の断面図(その2)である。
【図8】図8は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置を構成するキャパシタの下部電極のPt(222)配向積分強度とPt成膜温度の依存関係を示す図である。
【図9】図9は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置を構成するキャパシタの下部電極のPtの成膜温度により下部電極Pt/Ti のストレス及びキャパシタのリーク電流を示す図である。
【図10】図10は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置を構成するキャパシタのウェハ上の面内QswとPt成膜温度の依存関係を示す図である。
【図11】図11は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置を構成するキャパシタのリーク電流密度と下部電極Pt成膜温度の依存関係を示す図である。
【図12】図12(a),(b) は、従来のキャパシタ下部電極と配線の接続部分と、本発明の第1実施形態に係る半導体装置のキャパシタ下部電極との接続部分を示す断面図である。
【図13】図13(a),(b) は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その1)である。
【図14】図14(a),(b) は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その2)である。
【図15】図15(a),(b) は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その3)である。
【図16】図16は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置のキャパシタ形成の各工程の反り量と下部電極Pt成膜温度の依存関係を示す図である。
【図17】図17は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置のキャパシタ形成の各工程のストレスと下部電極Pt成膜温度の依存関係を示す図である。
【図18】図18は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置のキャパシタ形成の各工程のストレスと下部電極Pt成膜温度の依存関係を示す図である。
【図19】図19は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置のキャパシタの疲労損失と下部電極Pt成膜温度の依存関係を示す図である。
【図20】図20(a),(b) は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置のキャパシタのリーク電流密度と下部電極Pt成膜温度の依存関係を示す図である。
【図21】図21は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置のキャパシタの形成工程において、Ptの成膜温度により各工程のウェハ反り量、膜剥がれ状況、リーク電流を示す図である。
【図22】図22(a),(b) は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その1)である。
【図23】図23(a),(b) は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その2)である。
【図24】図24(a),(b) は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その3)である。
【図25】図25は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その4)である。
【図26】図26は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その5)である。
【図27】図27は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その6)である。
【図28】図28は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その7)である。
【図29】図29は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その8)である。
【図30】図30は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の形成工程において、Ir膜の成膜温度により各工程のウェハ反り量、ストレス及び膜剥がれ状況を示す図である。
【符号の説明】
1…シリコン(半導体)基板、2…素子分離絶縁膜、3a…ウェル、4…ゲート絶縁膜、5a,5b…ゲート電極、6…側壁絶縁膜、7a〜7c…n型不純物拡散領域、10…カバー膜、11…第1層間絶縁膜、12a〜12c…導電性プラグ、13…下地絶縁膜、14x…Ti膜、14y…Pt膜、14z…TiO x 膜、14…第1の導電膜。14a,14b…下部電極、15…強誘電体膜、15a…誘電体膜、16…第2の導電膜、16a…上部電極、17…キャパシタ保護絶縁膜、18…第2層間絶縁膜、19a〜19c…導電性プラグ、21a,21c,21d…配線、21b…導電性パッド、40…シリコン(半導体)基板、41…素子分離膜、42…ウェル、43…ゲート絶縁膜、44…シリコン窒化膜、45a,45b…ゲート電極、46a〜46c…n型不純物拡散領域、48…サイドウォールスペーサ、49…カバー膜、50…第1層間絶縁膜、51a〜51c…導電性プラグ、52a…酸化防止膜、52b…下地絶縁膜、53…Ir膜、54…IrO x 膜、55…Pt膜、56…PtO x 膜、57…Pt膜、58…第1の導電膜、58a…下部電極、59…強誘電体膜、59a…誘電体膜、60…第2の導電膜、60a…上部電極、61…保護膜、62…第2層間絶縁膜、63…導電性プラグ、66a…配線、66b…導電性パッド、T1 ,T2 …MOSトランジスタ、Q,Q1 …キャパシタ。

Claims (2)

  1. 半導体基板の上方に絶縁膜を形成する工程と、
    (a)前記絶縁膜の上に基板温度450〜550℃でイリジウム膜を形成する工程と、
    (b)前記イリジウム膜の上に酸化イリジウム膜を形成する工程と、
    (c)前記酸化イリジウム膜の上に第1の白金膜を形成する工程と、
    (d)前記第1の白金膜の上に酸化白金膜を形成する工程と、
    (e)前記酸化白金膜の上に第2の白金膜を形成する工程を行い、前記(a)〜(e)の工程により、
    前記イリジウム膜、前記酸化イリジウム膜、前記第1の白金膜、前記酸化白金膜及び前記第2の白金膜からなる積層構造の第1の導電膜を形成する工程と、
    前記第1の導電膜の上に誘電体膜を形成する工程と、
    前記誘電体膜の上に第2の導電膜を形成する工程と、
    前記第2の導電膜をパターニングしてキャパシタ上部電極を形成する工程と、
    前記誘電体膜をパターニングして前記キャパシタ上部電極の下にキャパシタ誘電体膜を形成する工程と、
    前記第1の導電膜をパターニングすることにより前記キャパシタ誘電体膜の下にキャパシタ下部電極を形成する工程とを含み、
    前記第1の導電膜を形成する工程の直後に、前記第1の導電膜が−2×10 9 〜5×10 9 dyne/cm 2 の応力を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
  2. 半導体基板の上方に絶縁膜を形成する工程と、
    (a)前記絶縁膜の上に基板温度450〜550℃でイリジウム膜を形成する工程と、
    (b)前記イリジウム膜の上に酸化イリジウム膜を形成する工程と、
    (c)前記酸化イリジウム膜の上に第1の白金膜を形成する工程と、
    (d)前記第1の白金膜の上に酸化白金膜を形成する工程と、
    (e)前記酸化白金膜の上に第2の白金膜を形成する工程を行い、前記(a)〜(e)の工程により、
    前記イリジウム膜、前記酸化イリジウム膜、前記第1の白金膜、前記酸化白金膜及び前記第2の白金膜からなる積層構造の第1の導電膜を形成する工程と、
    前記第1の導電膜の上に誘電体膜を形成する工程と、
    前記誘電体膜の上に第2の導電膜を形成する工程と、
    前記第2の導電膜をパターニングしてキャパシタ上部電極を形成する工程と、
    前記誘電体膜をパターニングして前記キャパシタ上部電極の下にキャパシタ誘電体膜を形成する工程と、
    前記第1の導電膜をパターニングすることにより前記キャパシタ誘電体膜の下にキャパシタ下部電極を形成する工程とを含み、
    前記第1の導電膜を形成する工程の直後に、前記第1の導電膜が−2×10 9 〜5×10 9 dyne/cm 2 の応力を有することを特徴とする半導体装置の製造方法により製造された半導体装置。
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