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JP4030513B2 - オーミック電極構造、それを備えた化合物半導体発光素子及びledランプ - Google Patents

オーミック電極構造、それを備えた化合物半導体発光素子及びledランプ Download PDF

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Description

本発明は、p形の伝導を呈するリン化硼素系半導体層の表面に接触して設けるp形オーミック電極構造、及び、そのp形オーミック電極構造を利用して化合物半導体素子、特に、化合物半導体発光素子を構成するための技術に関する。
従来より、III −V族化合物半導体の一種であるリン化硼素(化学式:BP)及びその混晶を利用して発光ダイオード(英略称:LED)等のリン化硼素系半導体素子を構成する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、p形の導電性の単量体のリン化硼素(化学式:BP)層は、pn接合型ダブルヘテロ(DH)接合構造型の発光部を構成する障壁層として利用されている(例えば、特許文献2参照)。リン化硼素系半導体発光ダイオードは、例えば、リン化硼素層からなるp形のクラッド(clad)層の表面上にp形のオーミック電極を設けて構成されている。従来技術に於いて、例えば、p形リン化硼素層については、アルミニウム(Al)からp形オーミック電極を形成する例が知れている(例えば、非特許文献1)。
リン化硼素は、不純物を故意に添加せずとも低抵抗のn形またはp形の何れの伝導形の半導体層が得られるとされる(例えば、非特許文献1参照)。従って、導電性のリン化硼素層から構成された、例えば、クラッド(clad)層或いはコンタクト(contact)層等には、オーミック性電極が形成され得る。マグネシム(元素記号:Mg)を添加したp形リン化硼素層をコンタクト層として備えた従来の化合物半導体発光素子に於いて、金(元素記号:Au)・亜鉛(元素記号:Zn)から構成する例が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、上記の如くの金属からは、p形リン化硼素に対して良好なオーミック接触性を呈するオーミック電極を安定して形成するに至っていない。このため、発光素子を動作させるための電流(素子駆動電流)を通流させる際の入力抵抗は、徒に高まり、順方向電圧(Vf)の高いLEDが帰結されることなり問題となっている。また、低い閾値電圧(Vth)のレーザダイオード(LD)を得るに不都合となっている。
米国特許第6,069,021号公報明細書参照 特開平2−288388号公報参照 K.Shohno他、ジャーナル オブ クリスタル グロース(J.Crystal Growth)、第24/25巻、1974年(オランダ)、193頁
本発明では、硼素(B)とリン(P)とを構成元素として含むp形リン化硼素系半導体層の表面に接触させて設けるp形オーミック電極にあって、良好なオーミック接触性をもたらせる電極の構成を提示する。p形オーミック電極とは、p形半導体層に設ける正(陽)電極を指す。また、本発明に係わる構成からなるp形オーミック電極を備えた化合物半導体発光素子を提供する。
即ち、本発明は、下記にある。
(1)p形の伝導を呈する、硼素とリンとを構成元素として含む導電性のリン化硼素系半導体層の表面に接触させてオーミック電極を設けるオーミック電極構造であって、前記p形リン化硼素系半導体層の表面に接触する電極の少なくとも底面がランタニド元素またはランタニド元素を含む合金から構成されていることを特徴とするオーミック電極構造。
(2)前記p形リン化硼素系半導体層の表面に接触する底面を、ランタンと仕事関数が4.5eV以下の元素との合金から構成したことを特徴とする上記(1)に記載のオーミック電極構造。
(3)前記p形リン化硼素系半導体層の表面に接触する底面を、ランタンとアルミニウムとの合金から構成したことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のオーミック電極構造。
(4)前記p形リン化硼素系半導体層の表面に接触する底面を、ランタンと珪素との合金から構成したことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のオーミック電極構造。
(5)前記p形リン化硼素系半導体層が、不純物を故意に添加していないアンドープで且つ室温での禁止帯幅が2.8eV以上5.4eV以下であるp形の単量体リン化硼素であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のオーミック電極構造を含む化合物半導体装置。
(6)上記(5)に記載の化合物半導体装置からなる化合物半導体発光素子。
(7)絶縁性または導電性の結晶からなる基板と、該結晶基板上に形成された化合物半導体層からなる発光層と、該発光層上に設けられたp形の伝導を呈する硼素とリンとを構成元素として含む導電性のリン化硼素系半導体層と、該p形リン化硼素系半導体層に接触させてオーミック接触性のp形オーミック電極とが備えられている化合物半導体発光素子であって、前記形リン化硼素系半導体層の表面に接触する前記p形オーミック電極の少なくとも底面がランタニド元素又はランタニド元素を含む合金から構成されていることを特徴とする化合物半導体発光素子。
(8)前記p形オーミック電極の底面がランタンと仕事関数が4.5eV以下の元素との合金から構成されたことを特徴とする上記(7)に記載の化合物半導体発光素子。
(9)前記p形オーミック電極の底面がランタンとアルミニウムとの合金から構成されたことを特徴とする上記(7)又は(8)に記載の化合物半導体発光素子。
(10)前記p形オーミック電極の底面がランタンと珪素との合金から構成されたことを特徴とする上記(7)又は(8)に記載の化合物半導体発光素子。
(11)前記化合物半導体層がIII-V族化合物半導体からなることを特徴とする上記(7)〜(10)のいずれか1項に記載の化合物半導体発光素子。
(12)前記化合物半導体層が窒化ガリウム・インジウム(組成式GaxIn1-xN:0≦X≦1)、または窒化リン化ガリウム(組成式GaN1-YY:0≦Y≦1)からなることを特徴とする上記(7)〜(11)のいずれか1項に記載の化合物半導体発光素子。
(13)ランタニド元素又はランタニド元素を含む合金から構成されている前記p形オーミック電極の前記底部部分が、平面形状として、結線用台座電極の形状とそれに隣接して形成された網目状部分を有することを特徴とする上記(7)〜(12)のいずれか1項に記載の化合物半導体発光素子。
(14)前記p形リン化硼素系半導体層が、不純物を故意に添加していないアンドープで且つ室温での禁止帯幅が2.8eV以上5.4eV以下であるp形の単量体リン化硼素であることを特徴とする上記(7)〜(13)のいずれか1項に記載の化合物半導体発光素子。
(15)上記(7)〜(14)のいずれか1項に記載の化合物半導体素子を用いたLEDランプ。
本発明に依れば、p形のリン化硼素系半導体層の表面に接触させて設けるp形オーミック電極をランタノイド元素またはその合金膜から構成することとしたので、低接触抵抗の電極を形成できるため、供給される素子駆動電流を効率的に発光のために利用され、従って、高い発光強度の化合物半導体発光素子をもたらすに効果をあげられる。さらに、本発明の化合物半導体発光素子に導線を接続し、樹脂に封入することにより、高輝度のLEDランプを作製することができる。
本発明は、p形リン化硼素系半導体層に対して優れたオーミック接触性を提供する電極構造に関する。
本発明においてリン化硼素系半導体とは、硼素(B)とリン(P)とを構成元素として含む化合物半導体であり、例えば、BαAlβGaγIn1-α-β-γ1-δAsδ(0<α≦1、0≦β<1、0≦γ<1、0<α+β+γ≦1、0≦δ<1)である。また、例えば、BαAlβGaγIn1-α-β-γ1-δδ(0<α≦1、0≦β<1、0≦γ<1、0<α+β+γ≦1、0≦δ<1)である。例えば、単量体のリン化硼素(BP)、リン化硼素・ガリウム・インジウム(組成式BαGaγIn1-α-γP:0<α≦1、0≦γ<1)、また、窒化リン化硼素(組成式BP1-δδ:0≦δ<1)や砒化リン化硼素(組成式BP1-δAsδ)等の複数のV族元素を含む混晶である。例えば、BP1-δδやBP1-δAsδなどにあって、好ましいリン(P)の下限の組成比(1−δ)は、0.50以上であり、更に好ましくは0.75以上である。
p形のオーミック電極を設けるためのp形リン化硼素系半導体層は、ハロゲン(halogen)法、ハイドライド(hydride)法やMOCVD(有機金属化学的気相堆積)法に依り形成できる。また、分子線エピタキシャル法でも形成できる(J.Solid State Chem.,133(1997)、269〜272頁参照)。例えば、p形の単量体のリン化硼素層は、トリエチル硼素(分子式:(C253B)とホスフィン(分子式:PH3)を原料とするMOCVD法で形成できる。p形BP層の形成温度としては、1000℃〜1200℃の温度が適する。形成時の原料供給比率(=PH3/(C253B)は、10〜50とするのが適する。不純物を故意に添加しない、所謂、アンドープ(undope)のBP層は不純物の拡散に因る他層の変性を回避するに効果がある。形成温度、V/III 比率に加えて、形成速度を精密に制御すれば、禁止帯幅の大きなリン化硼素系半導体層を形成できる(特願2002−158282号参照)。
特に、室温での禁止帯幅を2.8エレクトロンボルト(単位:eV)以上で5.4eV以下とするp形リン化硼素系半導体層は好ましく利用できる。更に好ましくは2.8eV〜3.2eVとする広禁止帯幅(wide bandgap)のp形リン化硼素系半導体層は、化合物半導体発光素子にあって、例えば、p形クラッド(clad)層等のバリア(barrier)作用を有する障壁層として利用できる。また、ワイドバンドギャップのp形リン化硼素系半導体層は、窒化ガリウム・インジウム(組成式GaXIn1-XN:0≦X≦1)や窒化リン化ガリウム(組成式GaN1-YY:0≦Y≦1)からなる発光層からの青色光或いは緑色光等の可視光を発光素子の外部へ透過するための窓(window)層を構成するに適する。禁止帯幅が5.4eVを超えると、発光層との障壁差が大となり、順方向電圧或いは閾値電圧の低い化合物半導体発光素子を得るに不利となる。例えば、p形クラッド層は、室温でのキャリア濃度を1×1019cm-3以上とし、抵抗率を5×10-2Ω・cm以下とする低抵抗のリン化硼素層から好適に形成できる。p形クラッド層を構成するp形リン化硼素の層厚は、500ナノメータ(単位:nm)以上で5000nm以下とするのが適する。p形クラッド層に接触させてp形のオーミック電極を設ける構成にあって、p形クラッド層が不必要に薄層であると、オーミック電極を介して供給される素子駆動電流を発光層の全般に万遍なく平面的に拡散できなくなるため、不都合となる。
このようなp形リン化硼素系半導体層を利用する化合物半導体装置の代表例は、限定するわけでなないが、リン化硼素系化合物半導体LEDである。特に、上記の如く、窒化ガリウム・インジウム(組成式GaXIn1-XN:0≦X≦1)や窒化リン化ガリウム(組成式GaN1-YY:0≦Y≦1)からなる発光層と好適に組み合わされる。その他、レーザダイオード(LD)などの化合物半導体発光素子にも適用できる。
本発明において、クラッド層或いは電極形成用コンタクト(contact)層などをなすp形リン化硼素系半導体層の表面に接触させて設けるp形のオーミック電極の底面部は、ランタニド元素の膜或いはその元素を含む合金膜から構成する。
ランタニド元素とは、原子番号57のランタン(La)から原子番号71のルテシウム(元素記号:Lu)迄の元素である(ジェー・エー・ダフィー著、「無機化学」、(株)廣川書店、昭和46年4月15日発行、5版、262頁参照)。セリウム(Ce;原子番号58)、プラセオジウム(Pr;原子番号59)、ネオジム(Nd;原子番号60)、ホロミウム(Ho;原子番号67)等がランタノイド類(lanthanoids)である(上記の「無機化学」、263頁参照)。特に、本発明では、p形オーミック電極の底面部をランタン(La)及びその合金から構成することが好適である。ランタノイドの中でも、ランタン及びその合金は、p形リン化硼素系半導体層と良好なオーミック接触性をもたらすからである。また、リン化硼素系半導体層との密着性がランタノイドの中でも富に優れているため、強固に被着した底面部を構成できるからである。
また、ランタンと仕事関数(work function)を4.5eV以下とする物質との合金は、p形リン化硼素系半導体層の表面と接触するp形オーミック電極の底面部を構成するのに好都合である。仕事関数が4.5eVを超えると、p形リン化硼素系半導体層との障壁が急激に大となり、p形オーミック電極を形成するに不利である。小さな仕事関数に加えて、融点の高い物質との合金は、耐熱性に優れるp形オーミック電極を構成するに好適となる。従って、仕事関数は小さいが融点の低いガリウム(仕事関数=4.0eV、融点=29.8℃)やインジウム(仕事関数=3.8eV、融点=156℃)との合金よりも、より融点の高い合金が適する。例えば、ランタンとアルミニウム(仕事関数=4.3eV、融点=660℃)或いはランタンと珪素(仕事関数=4.0eV、融点=1414℃)との合金からは、良好なオーミック接触性を呈する底面部を好都合に構成できる。アルミニウム(Al)或いは珪素(Si)の含有量は質量百分率(質量%)にして、1%以上で50%未満であるのが適する。ランタン合金膜は、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法や高周波スパッタリング法等の手段に依り形成できる。周知のフォトリソグラフィー技術を利用して合金膜をパターニング加工すれば、平面形状を円形、方形等とする所望の形状の底面部を形成できる。その他には、例えば、ランタンとテルル(元素記号:Te、仕事関数=4.3eV、融点=450℃)との合金であるテルル化ランタン(組成式:La2Te3)や、ニッケル(元素記号:Ni、仕事関数=4.5eV、融点=1453℃)とのランタンニッケル(組成式LaNi5)合金を例示できる。
本発明に係わるランタンまたはその合金からなる底面部を含むp形オーミック電極の特性は、例えば、一般的な電流−電圧(I−V)特性から調査できる。一例として、ランタン・アルミニウム合金(組成式:LaAl2)から構成したp形オーミック電極のI−V特性を、従来の電極の特性と比較して図1に例示する。I−V特性は、350μmの間隔で隣接するp形オーミック電極間のものである。また、同一の抵抗を有するp形リン化硼素層を利用して測定した特性であり、従って、抵抗の小ささは接触抵抗の低さを反映するものとなっている。図1に例示する如く、本発明に係わるLaAl2電極では、従来のアルミニウム(Al)単体或いは金(Au)・亜鉛(Zn)や金(Au)・ベリリウム(Be)合金電極に比較して、同一の印可電圧に於いて多くの電流が流通でき、接触抵抗のより小さなpオーミック電極がもたらされる。
p形オーミック電極、特に、その底面部は、p形リン化硼素系半導体層との接触を良好とするため、細孔の無い連続膜から構成するのが適する。このため、底面部は膜厚を10nm以上とするランタンを含む膜から構成するのが適する。より好適なのは100nm以上で300nm以下である。
底面部の表面上には、更に、他の金属膜を重層させれば、重層構造からなるオーミック電極を構成できる。例えば、120nmの膜厚のランタン(95質量%)・アルミニウム(5質量%)合金から構成した円形の平面形状の底面部に、チタン(Ti)膜と金(Au)膜とを順次、重層させて3層構造のp形オーミック電極を好ましく構成できる。重層構造のp形オーミック電極を構成するにあたって、最上層は、結線(bonding)を容易となすため、金(Au)またはアルミニウム(Al)から構成するのが好適である。また、3層の重層構造のp形オーミック電極にあって、底面部と最上層との中間に設ける中間層は、例えば、チタン、モリブデン(Mo)等の遷移金属或いは白金(Pt)から構成され得る。
本発明に係わる構成のp形のオーミック電極を利用すれば、電気的特性特性に優れる化合物半導体発光素子を提供できる。例えば、順方向電圧(Vf)の低いLEDを提供できる。Vfの低い可視光LEDは、例えば、サファイア基板/n形窒化ガリウム(GaN)クラッド層/n形窒化ガリウム・インジウム(GaInN)発光層/p形リン化硼素(BP)クラッド層を備えた積層構造体にあって、p形BPクラッド層の表面にランタン・アルミニウム合金膜からなるp形オーミック電極を設けて構成できる。チップサイズを例えば、300μm〜350μmとするLEDにあって、p形オーミック電極の底面部は、例えば、直径90μm〜150μmとするのが適する。インジウム組成(=1−X)を相違する複数の相(phase)を含む多相構造のGaXIn1-XN(0<X<1)層から構成すれば、発光強度のより高い化合物半導体素子を形成するに有効となる(日本国特許第3090057号参照)。
また、例えば一辺の長さを500μm以上とする平面積の大きなLEDを構成する際には、p形リン化硼素系半導体層の表面に広範囲に亘り配置する手段が有効となる。素子駆動電流を平面的に広範囲に拡散できため、発光強度の高い、或いは発光面積の大きなLEDを得るに好都合となるからである。オーミック電極は、均一に拡散できる様な形状をもって配置するのが望ましい。例えば、発光層上のp形リン化硼素ガリウム混晶層の表面に接触させて、互いに電気的に導通する格子状に或いは網目状にのランタン・アルミニウム合金からなるp形オーミック電極を配置する。また、p形リン化硼素系半導体層の表面に接触させて設けたランタン・珪素合金からなる底面部を、当該底面部と電気的に導通を保持させつつ、チップの周縁に枝状或いは放射状に延在させて、p形オーミック電極を形成する。また、p形リン化硼素系半導体層の中央に設けた台座電極に導通させた、複数の同心円状のランタン・アルミニウム合金膜からp形オーミック電極を構成する。これらの形状のオーミック電極を付帯する結線用の台座電極にあって、その底面をp形リン化硼素系半導体層に対してオーミック接触抵抗の高い材料から構成すると、台座電極の直下に素子駆動電流が短絡的に流通するのを防止でき、逆に、外部へ発光を取り出すに好都合な外部に開放された発光領域へ広範囲に素子駆動電流を拡散できて好都合となる。
所望の平面形状のp形オーミック電極を形成するには、例えば、先ず、p形リン化硼素系半導体層の表面の全面に、例えば、ランタン・アルミニウム合金膜を通常の真空蒸着法、電子ビーム蒸着法等の手段に依り被着させておく。次に、公知のフォトリソグラフィー技術を利用して所望の形状にパターニングを施す。p形リン化硼素系半導体層に等電位的な分布を形成できる形状にパターンニングするのが好適である。次に、不要な合金膜を湿式エッチング法、或いは塩素ガス(分子式:Cl2)等のハロゲン(halogen)ガスを用いるプラズマドライエッチング法等の手段に依り除去する。ランタノイド系合金の湿式エッチングには、氷酢酸−過酸化水素混合液等の氷酢酸を含む酸混合液を利用できる(ギュンター・ペッツォー著、松村 源太郎訳、「金属エッチング技術」、((株)アグネ、1977年9月10日発行、第1版第1刷)、91頁参照)。
p形リン化硼素系半導体層の表面に接触する底面をランタニド元素またはその元素を含む合金から構成した電極は、p形リン化硼素系半導体層について良好なオーミック特性を示すp形オーミック電極をもたらす作用を有する。
p形リン化硼素系半導体層の表面に接触する底面を、ランタニド元素またはその元素を含む合金から構成したp形オーミック電極は、素子駆動電流を発光領域の広範囲に拡散させる作用を有する。
(第1実施例)
p形リン化硼素半導体層の表面にランタン・アルミニウム合金(LaAl2)からなるp形オーミック電極を設けて化合物半導体LEDを構成する場合を例にして本発明を具体的に説明する。
図2にダブルヘテロ(DH)接合構造のLED100を作製するために使用した積層構造体の断面構造を模式的に示す。積層構造体は、リン(P)ドープn形(111)−珪素(Si)単結晶基板101上に、アンドープでn形のリン化硼素(BP)からなる下部クラッド層102、n形窒化ガリウム・インジウム(Ga0.90In0.10N)井戸層103aと窒化ガリウム(GaN)障壁層103bとを5周期に重層させた多層量子井戸構造の発光層103、アンドープでp形のリン化硼素からなる上部クラッド層104を、順次、堆積して形成した。
アンドープのn形及びp形リン化硼素層102,104は、トリエチル硼素(分子式:(C253B)を硼素(B)源とし、ホスフィン(分子式:PH3)をリン源とする常圧(略大気圧)有機金属気相エピタキシー(MOVPE)手段を利用して形成した。n形リン化硼素層102は925℃で、p形リン化硼素層104は1025℃で形成した。発光層103は、トリメチルガリウム(分子式:(CH33Ga)/NH3/H2反応系常圧MOCVD手段により、800℃で形成した。井戸層103aを構成する上記の窒化ガリウム・インジウム層は、インジウム組成を相違する複数の相(phase)から構成される多相構造から構成し、その平均的なインジウム組成は0.10(=10%)であった。井戸層103a及び障壁層103bの層厚は、各々、5nm及び10nmとした。
上部クラッド層104をなすアンドープのp形リン化硼素層104のキャリア(正孔))濃度は2×1019cm-3とし、層厚は720nmとした。同層104の室温での抵抗率は5×10-2Ω・cmであった。また、p形リン化硼素層104の室温での禁止帯幅は3.2eVであったため、発光層103からの発光を外部へ透過するための窓層を兼用するp形クラッド層として利用した。
p形上部クラッド層をなすp形リン化硼素層104の表面の全面に、通常の真空蒸着法及び電子ビーム蒸着法に依りランタン・アルミニウム(LaAl2)合金膜105、チタン(Ti)膜106、及び金(Au)膜107を被着させた。次に、結線用の台座電極108を設ける領域に限り、底面部をLaAl2合金膜105とする上記の3層重層電極を残置させるために、公知のフォトリソグラフィー技術を利用して選択的にパターニングを施した。次に、氷酢酸−硫酸系等の酸混合液を使用して台座電極108とする以外の領域に在るLaAl2合金膜等をエッチングして除去し、p形リン化硼素層104の表面を露出させた。フォトレジスト材を剥離した後、再び、チップに裁断するための格子状の溝孔を設けるために選択的パターニングを施した。然る後、塩素を含むハロゲン系混合ガスを利用したプラズマドライエッチング手法に依り、上記のパターニングを施した領域に限定して、p形リン化硼素層104を選択的にエッチングで除去した。
一方、珪素単結晶基板101の裏面の全面には、一般の真空蒸着法に依り金(Au)膜を被着させてn形オーミック電極(負電極)109を形成した。Si単結晶基板101の(111)−結晶表面に直交する<110>結晶方位に平行に設けた、線幅を50μmとする上記の帯状の溝孔に沿って劈開し、一辺を350μmとする正方形のLEDチップとした。
本発明では、底面部を上部クラッド層104をなすp形リン化硼素層との密着性に優れるランタン・アルミニウム(LaAl2)合金膜105から構成したため、結線時に於いても、p形リン化硼素層104から剥離しない台座電極を兼ねるp形オーミック電極108を形成できた。
p形及びn形オーミック電極108、109の間に、順方向に20mAの素子駆動電流を流通してLEDチップ100の発光特性を確認した。LED100からは中心の波長を440nmとする青色帯光が放射された。発光スペクトルの半値幅は210ミリエレクトロンボルト(単位:meV)であった。一般的な積分球を利用して測定される樹脂モールド以前のチップ(chip)状態での輝度は11ミリカンデラ(mcd)であった。また、p形オーミック電極105の底面部を、p形リン化硼素層に対して接触抵抗の小さなLaAl2合金膜から構成したため、順方向電流を20mAとした際の順方向電圧(Vf)は3.1Vと低値となった。一方、逆方向電流を10μAとした際の逆方向電圧は9.5Vと高値となった。また、高いキャリア濃度で低抵抗のアンドープp形リン化硼素層から上部クラッド層を構成することとし、且つ、p形リン化硼素の表面に接触させて低接触抵抗のランタン・アルミニウム合金膜を含むp形オーミック電極を設けることとしたので、素子駆動電流を台座電極の射影領域以外の発光領域の略全面から発光がもたらされた。
(第2実施例)
p形リン化硼素・ガリウム混晶層上にランタン・珪素合金を含むp形オーミック電極を設けて化合物半導体LEDを構成する場合を例にして本発明を具体的に説明する。化合物半導体発光素子の基本構造は第1の実施例と同様であるので、同様の部分については同じ参照数字を用いて、その断面構造を図3に、平面構造を図4に示す。
アンドープでp形のリン化・硼素ガリウム混晶(B0.98Ga0.02P)層204は、上記の第1実施例に記載の発光層103上に堆積した。B0.98Ga0.02P層204は、(C253B/(CH33Ga/PH3系減圧MOCVD法により850℃で形成した。層厚は340nmとした。B0.98Ga0.02P層204の室温でのキャリア濃度は8×1018cm-3で、抵抗率は8×10-2Ω・cmとなった。
次に、p形B0.98Ga0.02P層204の表面の全面に、ランタン・珪素(La・Si)合金膜205を通常の真空蒸着法に依り形成した。La・Si合金膜205の膜厚は540nmとした。次に、公知のフォトリソグラフィー技術及びプラズマエッチング技法を利用してパターニングした。その後、プラズマドライエッチング法に依り、不要な合金膜を除去し、図3に示す様に、LEDチップ200の中央部に直径150μmの円形205に、また、その周囲のp形B0.98Ga0.02P層の表面に接触させて網目状210にLa・Si合金膜を残置させた。円形に残置させた部分は中間層206及び金膜207を形成して台座電極208を完成した。
一方、珪素単結晶基板101の裏面の全面には、金(Au)99質量%・アンチモン(Sb)1質量%合金膜209を一般の真空蒸着法で被着させた。
その後、上記のパターニング加工を施したLa・Si合金膜及び金蒸着膜を被着させた状態で、水素気流中で450℃で10分間、熱処理(sinter)して、オーミック接触性を向上させた。これより、p形B0.98Ga0.02P層204の表面にLa・Siからなるp形オーミック電極205、及び珪素単結晶基板101の裏面にAuオーミック電極209を形成した。n形オーミック電極209をなすAu膜の膜厚は2μmとした。
次に、上記のLa・Si合金膜をエッチング加工するに併せて形成した裁断線に沿って、個別のLEDチップに分離、裁断した。裁断用途の溝は、基板101をなすSi単結晶の[1.−1.0]及び[−1.−1.0]結晶方位に平行に設けた。これより、一辺を500μmとし、他辺を600μmとする長方形のLEDチップ200となした。大型のLEDチップ200のp形及びn形オーミック電極205,209間に、20mAの順方向電流を通流した際の発光中心波長は440nmであった。また、近視野発光像に依れば、チップ200の中央部の台座電極以外の発光領域からの均一な強度の発光がもたらされているのが確認された。これは、素子動作電流をp形B0.98Ga0.02P層に広範囲に均一に拡散できる様な形状でp形オーミック電極を配置したためである。順方向電流を20mAとした際の順方向電圧は3.4Vであり、逆方向電流を10μAとした際の逆方向電圧は8.3Vであった。
本発明と従来の材料についての電流・電圧特性を示す図である。 第1実施例に記載のLEDの断面構造を示す模式図である。 第2実施例に記載のLEDの断面構造を示す模式図である。 第2実施例に記載のLEDの平面構造を示す模式図である。
符号の説明
100、200…LED
101…珪素単結晶基板
102…n形クラッド層
103…n形発光層
104、204…p形クラッド層
105、205…p形オーミック性電極
106、206…中間層
107、207…結線用台座金属
108、208…台座電極
109、209…n形オーミック電極
210…p形オーミック性電極の網状部分

Claims (15)

  1. p形の伝導を呈する、硼素とリンとを構成元素として含む導電性のリン化硼素系半導体層の表面に接触させてオーミック電極を設けるオーミック電極構造であって、前記p形リン化硼素系半導体層の表面に接触する電極の少なくとも底面がランタニド元素またはランタニド元素を含む合金から構成されていることを特徴とするオーミック電極構造。
  2. 前記p形リン化硼素系半導体層の表面に接触する底面を、ランタンと仕事関数が4.5eV以下の元素との合金から構成したことを特徴とする請求項1に記載のオーミック電極構造。
  3. 前記p形リン化硼素系半導体層の表面に接触する底面を、ランタンとアルミニウムとの合金から構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のオーミック電極構造。
  4. 前記p形リン化硼素系半導体層の表面に接触する底面を、ランタンと珪素との合金から構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のオーミック電極構造。
  5. 前記p形リン化硼素系半導体層が、不純物を故意に添加していないアンドープで且つ室温での禁止帯幅が2.8eV以上5.4eV以下であるp形の単量体リン化硼素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のオーミック電極構造を含む化合物半導体装置。
  6. 請求項5に記載の化合物半導体装置からなる化合物半導体発光素子。
  7. 絶縁性または導電性の結晶からなる基板と、該結晶基板上に形成された化合物半導体層からなる発光層と、該発光層上に設けられたp形の伝導を呈する硼素とリンとを構成元素として含む導電性のリン化硼素系半導体層と、該p形リン化硼素系半導体層に接触させてオーミック接触性のp形オーミック電極とが備えられている化合物半導体発光素子であって前記形リン化硼素系半導体層の表面に接触する前記p形オーミック電極の少なくとも底面がランタニド元素又はランタニド元素を含む合金から構成されていることを特徴とする化合物半導体発光素子。
  8. 前記p形オーミック電極の底面がランタンと仕事関数が4.5eV以下の元素との合金から構成されたことを特徴とする請求項7に記載の化合物半導体発光素子。
  9. 前記p形オーミック電極の底面がランタンとアルミニウムとの合金から構成されたことを特徴とする請求項7又は8に記載の化合物半導体発光素子。
  10. 前記p形オーミック電極の底面がランタンと珪素との合金から構成されたことを特徴とする請求項7又は8に記載の化合物半導体発光素子。
  11. 前記化合物半導体層がIII-V族化合物半導体からなることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の化合物半導体発光素子。
  12. 前記化合物半導体層が窒化ガリウム・インジウム(組成式GaxIn1-xN:0≦X≦1)または窒化リン化ガリウム(組成式GaN1-YY:0≦Y≦1)からなることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の化合物半導体発光素子。
  13. ランタニド元素又はランタニド元素を含む合金から構成されている前記p形オーミック電極の前記底部部分が、平面形状として、結線用台座電極の形状とそれに隣接して形成された網目状部分を有することを特徴とする請求項7〜12のいずれか1項に記載の化合物半導体発光素子。
  14. 前記p形リン化硼素系半導体層が、不純物を故意に添加していないアンドープで且つ室温での禁止帯幅が2.8eV以上5.4eV以下であるp形の単量体リン化硼素層であることを特徴とする請求項7〜13のいずれか1項に記載の化合物半導体発光素子。
  15. 請求項7〜14のいずれか1項に記載の化合物半導体素子を用いたLEDランプ。
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