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JP4000946B2 - 冬虫夏草の新規製造方法及び得られた冬虫夏草とその使用 - Google Patents

冬虫夏草の新規製造方法及び得られた冬虫夏草とその使用 Download PDF

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JP4000946B2 JP2002227555A JP2002227555A JP4000946B2 JP 4000946 B2 JP4000946 B2 JP 4000946B2 JP 2002227555 A JP2002227555 A JP 2002227555A JP 2002227555 A JP2002227555 A JP 2002227555A JP 4000946 B2 JP4000946 B2 JP 4000946B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は冬虫夏草の新規製造方法及びその方法により製造された冬虫夏草に関し、抗ストレス作用が向上し、又は改善された冬虫夏草、特にその菌糸体やその成分を供給することができる。更に、本発明はそれ等を有効成分として含有した飲食品、特に健康食品、健康飲料及び滋養強壮剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
冬虫夏草は、子嚢菌類、麦角菌科の菌類で、主に昆虫類に寄生し、子実体を形成するキノコの総称で、中国の四川、雲南、チベット等の標高3000〜4000mの高山地帯に産し、中国では紀元前から漢方薬として珍重されている。近年、その効果が世界的に注目され、血圧の異常の調節(例えば、血圧が高いときは血圧の上昇を抑える等)、肝臓等の内臓の機能改善、気管支の拡張(例えば、喘息等の咳を鎮める等)、抗ストレス、心肺機能の強化による運動能力の強化、疲労回復等の生体(人体等)に対して好ましい生理活性作用が報告されている。一方、天然に産する冬虫夏草の生産量は少なく、また、品質にもばらつきがあるため、この点を解決するため現在では、昆虫類のサナギ、幼虫等を用いる方法(特開昭54−80486号公報参照。)、培地を用いた人工培養(特開平10−042691号公報参照。)や培地成分にサナギ粉を加えた菌糸体の培養方法(特開平09−327232号公報参照。)等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来法では冬虫夏草及びその菌糸体を安価に多量に供給することに目的がおかれており、生体(人体等)に対して好ましい生理活性作用の向上又は改善については十分満足のいくものではなかった。従って、そのような生理活性作用が向上し、又は改善された冬虫夏草の提供が求められる。
【0004】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、報告されている冬虫夏草の生体(人体等)に対して好ましい生理活性作用の中から、抗ストレス作用に着目し、この生理活性作用がより高い冬虫夏草及びその製造方法を提供すること、更にはそのようにして得られた冬虫夏草を使用した飲食品等を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、冬虫夏草を人工培養する際の培地に食酢、食酢もろみ及び/又は食酢もろみ粕を添加することによって上記作用が高められた冬虫夏草を培養できることを見出した。更に、この冬虫夏草が、例えばその菌体内に、フザリン酸を含有するために、上記作用が高められることを見出し、これ等の知見に基づいて本発明を完成するに到った。
【0006】
尚、従来において、フザリン酸を含有する冬虫夏草については報告が見当たらない。
【0007】
即ち、本発明は、人工培養により冬虫夏草を製造する方法であって、当該培養に使用する培地が食酢、食酢もろみ及び食酢もろみ粕のうち少なくとも1種を含有することに特徴を有する冬虫夏草の製造方法(「本発明の冬虫夏草の製造方法」とも称する。)に存する。当該冬虫夏草として、好ましくは冬虫夏草の菌糸体を製造することができる。
【0008】
本発明は冬虫夏草を培養する培地に食酢、食酢もろみ及び食酢もろみ粕のうち少なくとも1種を含めることに特徴を有するものである。従って、前記製造方法において、本発明で特徴となる食酢、食酢もろみ及び食酢もろみ粕のうち少なくとも1種を培地に添加すること以外は人工培養の方法に特に制限は無く、従来から行われている固体培養又は液体培養或いは今後開発される培養方法が採用可能であるが、培養時間が短く、培養管理が容易である点から発酵タンクによる液体培養が好ましい。
【0009】
前記食酢、食酢もろみ及び食酢もろみ粕のうち少なくとも1種中の酢酸の、前記培養に使用する培地の全量に対する含有率は好ましくは3重量%を超えない程度、より好ましくは0.01〜2重量%程度、更に好ましくは0.1〜1重量%程度である。培地中の酢酸の含有率が3重量%を超えると冬虫夏草の生育が阻害されるので好ましくない。また、0.01重量%未満では抗ストレス作用の発現が不十分となるため好ましくない。
【0010】
本発明は、別の形態として、前記本発明において特定の培地を使用して製造されたことに特徴を有する冬虫夏草、特に抗ストレス作用が向上し、又は改善された冬虫夏草(「本発明の冬虫夏草」とも称する。)にも存する。
【0011】
従来の冬虫夏草にはフザリン酸は見出されていないが、本発明の冬虫夏草において、特にその菌体内にフザリン酸が含有されていることにより抗ストレス作用が向上し、又は改善されている。
【0012】
本発明の冬虫夏草については、乾燥粉末の形態、即ち固体培養した後の冬虫夏草の菌糸体を含む固形物(固体培地)や、液体培養した後の冬虫夏草の菌糸体を含む培養液(液体培地)をそのまま濃縮乾燥させ、粉末にした冬虫夏草培養粉末、或いは液体培養した後の培養液に含まれている冬虫夏草の菌糸体を濾別し、この菌糸体のみを乾燥、粉末化した冬虫夏草菌糸体粉末として各種の用途に使用することができる。
【0013】
更に、本発明は、別の形態として前記冬虫夏草又はその成分を含有することに特徴を有する飲食品、特に健康食品又は健康飲料に存する。この結果、抗ストレス作用を付与する飲食品として、ストレスに起因する疾患者やストレスを抑えることを期待する健常者、更にはその効果を期待するその他の動物(ペット等)等に極めて有用である。
【0014】
当該飲食品の形態については特に制限は無く、滋養強壮剤の形態でも提供することができる。
【0015】
本発明の冬虫夏草又はその成分を抗ストレス剤、特にストレス性潰瘍用剤の有効成分として使用することができる。
【0016】
本発明の飲食品や、上記抗ストレス剤に使用する場合の成分としては、冬虫夏草の菌糸体及び固体培養した後の固形物を熱水抽出又は有機溶媒による抽出により抽出された成分を使用することができ、抽出エキスとしての使用も可能であるが水溶性成分が好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明には幾つかの形態、即ち、冬虫夏草、特にその菌糸体の製造方法並びにその方法で得られた冬虫夏草が含まれる。更に、それ等を含有した飲食品、特に健康食品、健康飲料及び滋養強壮剤が含まれる。尚、本発明の冬虫夏草及びその製造方法を中心に説明するが、本発明はこれ等に限定されるものではない。
【0019】
(本発明の冬虫夏草の製造方法)
本発明の冬虫夏草の製造方法について説明する。
【0020】
本発明において使用する冬虫夏草菌については、冬虫夏草を生産する微生物を使用すれば良い。例えば、Cordyceps sinensis、Cordyceps militaris及びCordyceps sobolifera等のCordyceps属や、Isaria japonica及びIsaria farinosa等のIsaria属等の菌株が使用可能である。また、これ等の菌株は天然に産する冬虫夏草子実体より分離された菌株でも良く、(財)発酵研究所(大阪)等の菌株保存機関より分譲を受けた菌株でも良い。
【0021】
本発明において、食酢とは主成分として酢酸を含んだ食用酢であり、米酢、酒精酢、カス酢及び麦芽酢等の一般的な醸造酢、リンゴ酢及び梅酢等の果実酢又は黒酢等を挙げることができるが、アミノ酸等を豊富に含む点で黒酢を使用することが好ましい。また、本発明において、食酢もろみとは、米酢、黒酢等の醸造で用いられるコウジと蒸米等を混ぜ、発酵させたものであり、食酢もろみ粕とは、それ等の食酢もろみより食酢を絞った粕である。
【0022】
本発明において使用する培地は、食酢、食酢もろみ及び食酢もろみ粕のうち少なくとも1種を含有していれば良く、食酢等を添加する培地としては冬虫夏草を生産するものとして公知の又は将来開発される様々な培地を使用することができる。また、培地成分として炭素源、窒素源及び無機塩類を添加し、更に、必要に応じてビタミン類及びミネラル類等の他の成分を添加しても良い。
【0023】
本発明において使用する炭素源としては、グルコース、ショ糖、麦芽糖及びデンプン等の糖類が挙げられ、同様に窒素源としては、硝酸ナトリウム及び硝酸アンモニウム等の無機窒素(窒素含有無機化合物等)並びにペプトン及び酵母エキス等が挙げられる。また、上記これ等の炭素源及び窒素源の全部又は一部の代替として、廃糖蜜、コーンスチープリカー及び大豆粕等の糖分と窒素分の両方を含む発酵原料を使用することもできる。
【0024】
本発明において使用する無機塩類としては、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム及び塩化カリウム等が挙げられる。
【0025】
本発明で使用する菌株に合わせて上記これ等の培地成分を調製すれば良く、食酢、食酢もろみ及び食酢もろみ粕の少なくとも1種を含むものの培地中での含有率については好ましくは0.1〜30重量%程度、より好ましくは0.5〜20重量%程度、更に好ましくは1〜5重量%程度であり、炭素源の含有率については好ましくは1〜10重量%程度であり、窒素源については好ましくは0.4〜2重量%程度である。また、前記糖分と窒素分の両方を含む発酵原料を使用する場合には、これ等の炭素源と窒素源の含有率を考慮して適宜選択すれば良い。無機塩類については好ましくは0.01〜1重量%程度である。但し、前記説明の通り、食酢、食酢もろみ及び食酢もろみ粕のうち少なくとも1種中の酢酸の、前記培養に使用する培地の全量に対する含有率は好ましくは3重量%を超えない程度、より好ましくは0.01〜2重量%程度、更に好ましくは0.1〜1重量%程度である。
【0026】
本発明において使用する培地のpH値については水酸化ナトリウム等のアルカリを用い、pH6.0前後に調整するのが好ましい。
【0027】
本発明において使用する培地に対して冬虫夏草菌を植菌する方法については特に制限は無く、例えば、オートクレーブ等の方法で滅菌し、保存しておいた菌株を無菌的に植菌し培養を行うことができるが、フラスコ又は試験管等で予め種培養した菌を植菌することが好ましい。
【0028】
本発明における培養方法は前記説明の通りである。培養条件については、冬虫夏草の培養に適した条件を採用すれば良く、例えば固体培養の場合は温度20〜37℃、相対湿度70%以上で、好ましくは温度23〜28℃、相対湿度85%以上で培養し、液体培養の場合は温度20〜35℃、容量50リットルの培養タンクの場合通気攪拌条件回転数100〜300rpm、通気量10〜30リットル毎分又はこれに相当する条件で培養することができる。
【0029】
前記培養方法により得られた冬虫夏草については、菌体又は培養物の形態でも良いが、その有効成分を失わない範囲内で公知の又は将来開発される様々な精製方法を用いて精製された形態で使用することもできる。例えば、前記説明の如く、固体培養した後の冬虫夏草の菌糸体を含む固形物又は液体培養した後の冬虫夏草の菌糸体を含む培養液をそのまま濃縮乾燥させる等して乾燥粉末として使用しても良いし、或いは冬虫夏草の菌糸体及び固体培養した後の固形物を熱水抽出又は有機溶媒による抽出により抽出された、抽出エキスとしての使用も可能である。
【0030】
(本発明の冬虫夏草)
次に、本発明の冬虫夏草について説明する。
【0031】
本発明の冬虫夏草については、上記本発明の冬虫夏草の製造方法で得られたものであれば何れの形態でも良く、下記に説明するように様々な製品(飲食品や医薬品)の材料、添加剤や有効成分として極めて有効である。
【0032】
尚、本発明の冬虫夏草は、後述の如く従来の冬虫夏草には見出されていなかったフザリン酸を顕著に含有していることが判明している(実施例5参照。)。
【0033】
また、フザリン酸は、ドーパミンβ−ヒドロキシラーゼの阻害剤として作用することが生化学辞典(東京化学同人、第3版、p.1183、1998年)、J Med Chem (vol.29, no.6, page.887-889, 1986)、及びPharmacol Biochem Behav (vol.16, no.1, page.73-79, 1982)に記載されている。従って、本発明における抗ストレス作用が天然の冬虫夏草、及び従来から行われている人工培養により製造された冬虫夏草に比べて高い理由は、含有するフザリン酸によるドーパミンβ−ヒドロキシラーゼの阻害による、アドレナリン作動性のストレス反応を抑制するためであると推定される。
【0034】
(本発明の飲食品)
本発明の飲食品は、前記冬虫夏草又はその成分を含有する飲食品である。前記の如く得られた冬虫夏草は、前記各種の形態や抽出成分の形で飲食品、特に健康食品、健康飲料の材料、添加剤や抗ストレス作用を示すための成分として採用することができる。また、滋養強壮剤の成分としての使用が期待できる。
【0035】
本発明の飲食品は前記の通り、様々な製品の形態、例えば菓子(冷菓、ゼリー、ケーキ、キャンディー)、パン及びチューインガム等の形態としての各種製品に対して使用することができる。このようにして抗ストレス作用が付与された飲食品については当然本発明に含まれる。
【0036】
従って、本発明で得られた冬虫夏草(抽出成分を含む。)は使用される製品に混合、使用することが簡便であるので、冬虫夏草が使用される飲食品の形態が参考になるが、抗ストレス作用を奏するに有効な量の冬虫夏草及びその成分を含有すべきことは当然のことである。例えば、粉末状の冬虫夏草の含量で0.1〜90重量%程度使用することができる。
【0037】
一方、前記の如く本発明で得られた冬虫夏草又はその成分を抗ストレス剤、特にストレス性潰瘍用剤の有効成分として使用することもできる。
【0038】
上記抗ストレス剤をヒト(患者)等に投与する場合の投与形態については特に制限は無い。従って、経口投与、非経口投与等、各種の投与形態が採用可能であるが、簡便さの点から経口投与が好ましい。
【0039】
上記抗ストレス剤を投与する場合の対象については、制限は無いが、ストレスに起因する疾患者やストレスを予防したり、抑えることを期待する健常者、更にはその効果を期待するその他の動物(ペット等)を挙げることができる。これ等の薬剤を必要とする生体、特に哺乳動物、通常はヒト(患者等)に対してその有効量が適用される。
【0040】
上記抗ストレス剤の投与量については、使用する有効成分の前記作用の程度、症状の程度、製剤の形態等に応じて適当に選択される。
【0041】
上記抗ストレス剤は、前述の如く公知の又は将来開発される様々な医薬製剤の形態、例えば、経口投与、腹腔内投与、経皮的投与、吸入投与等各種の投与形態に調製することができる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、この実施例により本発明は何等制限されるものではない。また、以下の%表記は、特に記述のない限り重量%である。
【0043】
[実施例1]
(種菌の培養)
グルコース2%、硝酸ナトリウム0.2%、イーストエキス0.2%、ポリペプトン0.2%、リン酸二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.05%、硫酸第一鉄0.01%及び塩化カリウム0.01%を含み、pH6.0に調整した液体培地100mlをフラスコに入れ、121℃、20分の条件でオートクレーブ滅菌後、天然の冬虫夏草より分離した菌株(Cordyceps militaris)を保存しておいたスラントより白金鈎等を用いて菌糸をかき取り植菌した。25℃にて4日間振とう培養し、菌糸が十分生育したものを種菌として使用した。
【0044】
[実施例2]
(本培養)
50Lスケールの培養タンクに黒酢もろみ1.5%、グルコース1.5%、コーンスターチ1.5%、硝酸ナトリウム0.2%、リン酸二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.05%、硫酸第一鉄0.01%及び塩化カリウム0.01%を含み、2Nの水酸化ナトリウムでpH6.0に調整した液体培地30L入れ、121℃、20分の条件でオートクレーブ滅菌し冷却した後、実施例1で製造された種菌を300ml無菌的に培養タンクに移し入れ、温度25±1℃、回転数250rpm、通気量25L/分にて培養を行った。5日間培養し、十分菌糸が増殖(生育)したところで培養タンクから排出し(取り出し)、培養液約28Lを得た。得られた培養液を凍結乾燥により粉末化して本発明品である生理活性作用(抗ストレス作用)の高い冬虫夏草菌糸体粉末1120gを得た。
【0045】
[実施例3]
(抗ストレス作用の確認(ストレス負荷飼育試験))
本発明品(実施例2で製造された冬虫夏草菌糸体粉末)の抗ストレス作用の高さを確認するため、マウスによるストレス負荷飼育試験を行った。
【0046】
比較品として、天然の冬虫夏草(中国産、Cordyceps sinensis;比較品1)、サナギ粉を加えた菌糸体の培養方法(特開平09−327232号公報、実施例1参照。)に基づきサナギ粉0.5%加えた液体培地を使用した人工培養方法により製造された冬虫夏草菌糸体粉末(比較品2)、及び前記実施例2において黒酢もろみ1.5%を含まない培地を使用して、同様に実施例2を繰り返して製造された冬虫夏草菌糸体粉末(比較品3)を用いた。
【0047】
飼育試験は、ddy系マウス雄性、4週齢(日本エルエスシー(株)製)を使用し、1群10匹として、5群に分け、更に対照群1群と冬虫夏草(菌糸体)投与群4群に分けた。マウスは予備飼育の後、7週目より高温ストレス環境下で飼育し、冬虫夏草投与群にはそれぞれ本発明品、天然の冬虫夏草(比較品1)、従来法により製造された冬虫夏草菌糸体粉末(比較品2)及び前記実施例2において黒酢もろみ1.5%を含まない培地により製造された冬虫夏草菌糸体粉末(比較品3)をそれぞれ2%添加した餌を与え、各々の冬虫夏草の抗ストレス作用を比較した。同様に、マウス10匹についてストレス無負荷環境での飼育試験も行った。
【0048】
飼育はプラスチック製個別ケージに入れて行い、高温ストレス環境下での飼育条件については、温度30±3℃、1日12時間日照、餌及び水(水道水)は自由に摂取できるようにした。一方、ストレス無負荷環境下での飼育条件については、温度22±1℃で、1日12時間日照、餌及び水(水道水)は自由に摂取できるようにした。飼育は全ての条件に対して12週間行い、10匹のマウスの体重の増加を測定し、それ等の平均体重の増減について評価した。飼育後、解剖により腹腔内所見を検討した。これ等の結果を図1に示した。
【0049】
(試験結果)
以上の結果から明らかな如く、冬虫夏草(菌糸体)を投与した4群の中では本発明品(実施例2で製造された冬虫夏草菌糸体粉末)の投与群が最も体重の増加が順調で、ストレスに強いことから、本発明品の抗ストレス作用が従来品と比較して高くなっていることが理解される(図1参照。)。一方、解剖による腹腔内所見では、冬虫夏草(菌糸体)を投与した4群何れについても変化は認められなかった。
【0050】
[実施例4]
(抗ストレス作用の確認(ストレス性潰瘍試験))
本発明品(実施例2で製造された冬虫夏草菌糸体粉末)の抗ストレス作用の高さを確認するため、ラットによるストレス性潰瘍試験を行った。
【0051】
試験はウィスター系ラット雄性(日本エルエスシー(株)製)を使用し、1群5匹として、対照群と本発明品を餌に5%添加した群に分け、10日間飼育した。飼育後、12時間絶食させ、ストレスケージで拘束、28℃の水に首まで浸漬して固定し、12時間放置後、解剖し、胃を切開して胃潰瘍の形成を調べ、スポットの数を数えた。
【0052】
(試験結果)
この結果、対照群の胃潰瘍のスポット一匹当たり平均6.0個に対し、本発明品を餌に添加した群は一匹当たり平均2.7個と55%抑制されていた。また、胃潰瘍の状態も、対照群では出血や鬱血が激しかったのに対し、本発明品の投与群では、出血も少なく、胃潰瘍の形成が明らかに抑制されていた。これ等のことから、本発明品はストレス性潰瘍に対しても効果があることが理解される。
【0053】
従って、本発明の食酢、食酢もろみ及び食酢もろみ粕の少なくとも1種を含む培地を使用して培養する冬虫夏草の新規製造方法により、天然の冬虫夏草及び従来法で行われている人工培養により製造された冬虫夏草に比べ、抗ストレス作用が高い冬虫夏草を提供することが可能である。
【0054】
[実施例5]
(フザリン酸の確認)
本発明品(実施例2で製造された冬虫夏草菌糸体粉末)にフザリン酸が含まれていることを確認するため、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて確認試験を行った。
【0055】
本発明品50gとアセトン(和光純薬工業(株)製 試薬一級)300mlを三角フラスコに入れ、温度20〜25℃にて時々振り混ぜながら24時間抽出を行った。次に、この抽出処理液を吸引ろ過し、ろ液を240ml得た。更に、このろ液を減圧濃縮し、濃縮液5mlを得た。この濃縮液について、TLCを用いてフザリン酸の確認を行った。
【0056】
濃縮液及びフザリン酸標準物質(シグマアルドリッチジャパン(株)製)を下記条件でTLCを行い、紫外線の吸光、及びドラゲンドルフ試薬による発色により、フザリン酸標準物質、及び濃縮液中の成分それぞれのスポットを確認した。
【0057】
(TLCの条件)
Figure 0004000946
【0058】
(ドラゲンドルフ試薬組成)
a液:塩基性硝酸ビスマス1.7gを20%酢酸100mlに溶解
b液:ヨウ化カリウム40gを水100mlに溶解
TLCによる分析においてa液20mlと、b液5mlを混合して使用した。
【0059】
(試験結果)
この結果、フザリン酸標準物質のスポット(条件1の場合のRf値0.471〜0.464、条件2の場合のRf値0.692〜0.727)と同様のRf値において濃縮液のスポットが確認された。従って、本発明品にはフザリン酸が含まれていることが明らかとなった。また、フザリン酸標準物質のスポットの大きさ、及びドラゲンドルフ試薬による発色の濃さ等と、濃縮液の該スポット(スポットの大きさ、及びドラゲンドルフ試薬による発色の濃さ等)とを比較し、半定量的に類推すると、本実施例において、本発明品(実施例2で製造された冬虫夏草菌糸体粉末)にはフザリン酸が少なくとも0.01〜0.07%(重量)含まれていることが推定された。
【0060】
同様に、実施例3において使用した比較品1、2及び3についても、フザリン酸の確認を行ったが、条件1及び2の何れの条件でも、TLCにおけるフザリン酸標準物質と同様のRf値のスポットは確認できなかった。
【0061】
【発明の効果】
本発明により、抗ストレス作用が向上し、又は改善された冬虫夏草、特にその菌糸体やその成分を製造すると共にそのように優れた冬虫夏草を提供することができる。特に、本発明で得られる冬虫夏草が有する抗ストレス作用により、生体(人体等)のストレスを改善(解消)することができるので、それ等を含有した健康食品、健康飲料及び滋養強壮剤等の飲食品への利用が拡大することが期待される。更には、冬虫夏草を含有した抗ストレス剤、特にストレス性潰瘍用剤等の医薬品としての用途面において拡大することへの期待も大きい。
従って、本発明は特に食品分野において工業的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例3におけるストレス負荷飼育試験結果を示す。
ストレス負荷は飼育7週目より行った。
◆:ストレス無負荷群;
■:対照群;
×:天然の冬虫夏草(比較品1)投与群;
*:従来法により製造された冬虫夏草菌糸体粉末(比較品2)投与群;
▲:本発明品(実施例2)投与群;
●:実施例2において黒酢もろみ1.5%を含まない培地により製造された
冬虫夏草菌糸体粉末(比較品3)投与群。
縦軸はマウスの平均体重(g)を表す。
横軸はマウスの飼育期間(週)を表す。

Claims (13)

  1. 人工培養により冬虫夏草を製造する方法であって、当該培養に使用する培地が食酢、食酢もろみ及び食酢もろみ粕のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする冬虫夏草の製造方法。
  2. 前記冬虫夏草が冬虫夏草の菌糸体である請求項1に記載の方法。
  3. 前記培養が液体培養である請求項1に記載の方法。
  4. 前記食酢、食酢もろみ及び食酢もろみ粕のうち少なくとも1種中の酢酸の、前記培養に使用する培地の全量に対する含有率が3重量%を超えない請求項1に記載の方法。
  5. フザリン酸を含有する冬虫夏草の製造方法である請求項1に記載の方法。
  6. 請求項1に記載の方法により製造されたことを特徴とする冬虫夏草。
  7. 抗ストレス作用が改善された請求項6に記載の冬虫夏草。
  8. フザリン酸を含有する請求項6に記載の冬虫夏草。
  9. 乾燥粉末の形態にある請求項6に記載の冬虫夏草。
  10. 請求項6に記載の冬虫夏草又はその成分を含有することを特徴とする飲食品。
  11. 前記成分が水溶性である請求項10に記載の飲食品。
  12. 健康食品又は健康飲料である請求項10に記載の飲食品。
  13. 滋養強壮剤の形態にある請求項10に記載の飲食品。
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