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JP3927392B2 - 流体動圧軸受及びこれを用いたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置 - Google Patents

流体動圧軸受及びこれを用いたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置 Download PDF

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JP3927392B2 JP2001287098A JP2001287098A JP3927392B2 JP 3927392 B2 JP3927392 B2 JP 3927392B2 JP 2001287098 A JP2001287098 A JP 2001287098A JP 2001287098 A JP2001287098 A JP 2001287098A JP 3927392 B2 JP3927392 B2 JP 3927392B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体動圧軸受及びこれを用いたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ハードディスク等の記録媒体を駆動するディスク駆動装置において使用されるスピンドルモータの軸受として、シャフトとスリーブとを相対回転自在に支持するために、両者の間に介在させたオイル等の潤滑流体の流体圧力を利用する流体動圧軸受が種々提案されている。
【0003】
このような従来の流体動圧軸受を使用するスピンドルモータは、図1に示すとおり、ロータaと一体をなすシャフトbの外周面と、このシャフトbが回転自在に挿通されるスリーブcの内周面との間に、一対のラジアル軸受部d,dが構成され、またシャフトbの端部外周面から半径方向外方に突出するディスク状スラストプレートeの上面とスリーブcに形成された段部の平坦面との間並びにスラストプレートeの下面とスリーブcの開口を閉塞するスラストブッシュfとの間に、一対のスラスト軸受部g,gが構成されている。
【0004】
シャフトb並びにスラストプレートeとスリーブc並びにスラストブッシュとの間には、一連の微小間隙が形成され、これら微小間隙中には、潤滑流体としてオイルが途切れることなく、連続して保持されており(このようなオイル保持構造を、以下「フルフィル構造」と記す)、ラジアル軸受部d,d及びスラスト軸受部g,gには、ロータaの回転時にオイル中に動圧を誘起するためのヘリングボーングルーブd1,d1並びにg1,g1がそれぞれ形成されている。
【0005】
また、ラジアル軸受部d,d及びスラスト軸受部g,gには、一対のスパイラルグルーブを連結してなるヘリングボーングルーブd1,d1及びg1,g1が形成されており、ロータaの回転に応じて、スパイラルグルーブの連結部が位置する軸受部の中央部で最大動圧を発生させ、ロータaに作用する荷重を支持している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このようなスピンドルモータでは、スラスト軸受部g,gとは軸線方向で反対側に位置するスリーブcの上端部付近において、テーパシール部hが形成され、オイルの表面張力と大気圧とがバランスして界面を構成している。すなわち、このテーパシール部h内でのオイルの内圧は、大気圧と実質上同等の圧力に維持されている。
【0007】
いま、ロータaが回転を始めると、オイルは動圧発生溝d1,d1及びg1,g1によるポンピングで、各ラジアル軸受部d,d及びスラスト軸受部g,gの中心部側に引き込まれ、軸受の中心部で流体動圧が極大となる反面、軸受の端部側では、オイルの内圧が低下する。これに対し、ラジアル軸受部のうちテーパシール部hに隣接する側の端部では、テーパシール部h内をオイル内圧の変動に応じて界面が移動し、大気圧とオイルの内圧とを拮抗させることが可能であるが、各軸受部間、つまり、シャフトbの外周面とスリーブcの内周面との間の領域のうち、一対のラジアル軸受部d,d間に保持されるオイル及びスラストプレートeの周囲の領域のうち、スラスト軸受部g,g間に位置するスラストプレートの外周部付近に保持されるオイルは、動圧発生溝d1,d1及びg1,g1のポンピングに応じてオイルの内圧が低下し、やがて大気圧以下まで低下して負圧となる。
【0008】
オイル内に負圧が生じると、例えばオイルの充填作業時等にオイル内に溶け込んだ空気が気泡化して現れ、やがて温度上昇等によって気泡が体積膨張し、オイルを軸受外部へと漏出させるといったスピンドルモータの耐久性や信頼性に影響する問題、あるいは動圧発生溝が気泡と接触することによる振動の発生やNRRO(非繰り返し性振れ成分)の悪化といったスピンドルモータの回転精度に影響する問題が発生する。
【0009】
本発明は、構造を簡略化することで低コスト化することができ、またオイル内での負圧の発生を防止することで、気泡による悪影響を排除することが可能な流体動圧軸受及びこれを用いたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の流体動圧軸受は、
中空円筒状のスリーブと、
該スリーブの内周面と隙間を介して半径方向に対向するシャフトと、
該シャフトの端部において半径方向外方に延伸すると共に該スリーブと隙間を介して軸線方向に対向する円板状のスラストプレートと、
該スリーブの端部に装着され、該スリーブと対向する該シャフト部位及び該スラストプレートを該スリーブと共に覆い、且つ該スラストプレート並びに該シャフトと間隙を介して軸線方向に対向するブッシュと、
該シャフト並びに該スラストプレートと該スリーブ並びに該ブッシュとの間にそれぞれ形成される隙間内に途切れることなく連続して保持され、該スリーブの開放側の端部付近に界面が形成されるオイルと、を具備し、該シャフト並びに該スラストプレートと該スリーブ並びに該ブッシュとの相対回転を該オイルに誘起される流体動圧を用いて支持する流体動圧軸受であって、
前記スリーブの内周面とシャフトの外周面との間には、前記相対回転時に前記オイルに流体動圧を誘起するためのラジアル動圧軸受部が構成され、
前記スリーブの閉塞側の端面と前記スラストプレートの開放側の面との間には、前記相対回転時に前記オイルに半径方向内方に向かう流体動圧を誘起する開放側スラスト動圧軸受部が構成され、
前記開放側スラスト動圧軸受部は、前記スラストプレートの半径方向内方側の圧力が半径方向外方側の圧力より高くなるように構成され、
前記ブッシュと前記スラストプレートの閉塞側の面との間には、前記相対回転時に前記オイルに半径方向内方に向かう流体動圧を誘起する閉塞側スラスト動圧軸受部が構成されており、
また、前記ラジアル動圧軸受部には、前記相対回転時に前記オイルに対して軸線方向且つ前記スラストプレート側に向かう流体動圧を誘起するための動圧発生溝が形成されており、
前記ラジアル動圧軸受部が前記オイルに誘起する該軸線方向且つ前記スラストプレート側に向かう総合流体動圧をAとし、前記開放側スラスト動圧軸受部が前記オイルに誘起する半径方向内方に向かう流体動圧をBとするとき、A>Bの関係を満足することを特徴とする(請求項1)。
【0011】
この構成は、フルフィル構造の流体動圧軸受に関するものである。
【0012】
ラジアル動圧軸受部に形成される動圧発生溝を、軸線方向且つスラストプレート側に向かう流体動圧を発生する形状とし、このラジアル動圧軸受部の動圧発生溝が誘起する流体動圧が開放側スラスト動圧軸受部で誘起される半径方向内方に向かう流体動圧よりも大となるよう構成することで、ラジアル動圧軸受部で発生する流体動圧がスラスト動圧軸受部によって若干相殺されるが、依然として大気圧以上のオイル内圧を保ってスラストプレートの外周部部分に保持されるオイルに伝播される。
【0013】
すなわち、フルフィル構造の流体動圧軸受において、各軸受部に形成される動圧発生溝のポンピングによって負圧となりがちな、各軸受部間に位置する間隙中に保持されるオイルの内圧が常に大気圧以上に保たれるので、負圧による気泡の発生並びにオイル中に気泡が滞留することによって生じるオイルの漏れ出しやNRROの悪化といった問題が解消される。
【0014】
また、本発明の流体動圧軸受は、前記ラジアル動圧軸受部に形成される動圧発生溝は、一対のスパイラルグルーブを連接してなるヘリングボーングルーブからなり、該一対のスパイラルグルーブのうち、前記オイルの界面側に位置するスパイラルグルーブが前記総合流体動圧Aを誘起するよう他のスパイラルグルーブに対して非対称形状に形成されていることを特徴とする(請求項2)。
【0015】
軸線方向に非対称な形状を有する一対のスパイラルグルーブを連結することで、各スラストグルーブによるポンピング圧に差異が生じる。ラジアル動圧軸受部として、半径方向の荷重を支持するための圧力は、ラジアル動圧軸受部で発生する流体動圧が極大となるスパイラルグルーブの連結部において現れるが、オイルの界面側に位置するスパイラルグルーブによるポンピング圧が閉塞側のスパイラルグルーブのポンピング圧を上回る分、このアンバランス量によって、オイルの界面側からスラストプレート側に、すなわち、ラジアル動圧軸受部側からスラスト動圧軸受部側に向かう軸線方向の圧(このような圧を、以下「押し込み圧」と記載する)を発生させている。
【0016】
この場合、ラジアル動圧軸受部に形成されるヘリングボーングルーブによって発生する流体動圧の軸線方向の圧力勾配とスリーブの端面とスラストプレートの開放側の面との間に構成される開放側スラスト動圧軸受部に形成される動圧発生溝によって発生する流体動圧の半径方向の圧力勾配とを考慮した場合に、スラストプレート外周部において保持されるオイルの内圧を少なくとも大気圧以上の圧力とするために、ラジアル動圧軸受部に形成されるヘリングボーングルーブを構成する一対のスパイラルグルーブのうち、オイルの界面側に位置するスパイラルグルーブの軸線方向寸法をスラストプレート側に位置するスパイラルグルーブの軸線方向寸法よりも大とすることで、オイルに対して十分な押し込み圧を付与することが可能となる。
【0017】
更に、本発明の流体動圧軸受は、前記開放側及び閉塞側スラスト動圧軸受部には、それぞれ半径方向内方に向かう流体動圧を誘起するスパイラルグルーブが動圧発生溝として設けられていることを特徴とする(請求項3)。
【0018】
この構成によれば、フルフィル構造の流体動圧軸受を採用することで、軸受部の構造を簡略化することができると共に、スラスト動圧軸受部に形成する動圧発生溝をスパイラルグルーブとすることで、スラストプレートを小径化することができるため、スラストプレートの周速に起因するオイルの粘性抵抗が抑制され、高効率化することができる。
【0019】
加えて、本発明の流体動圧軸受は、前記スリーブの内周面とシャフトの外周面との間には、前記ラジアル動圧軸受部と前記スラストプレートとの間に、更に他のラジアル動圧軸受部が構成されており、該他のラジアル動圧軸受部には、軸線方向に対称形状を有する一対のスパイラルグルーブを連結してなるヘリングボーングルーブが動圧発生溝として設けられていることを特徴とする(請求項4)。
【0020】
ラジアル動圧軸受部を軸線方向に離間して一対構成することで、回転時に作用する半径方向の荷重をシャフトの両端部で支持することができ、外的な振動や衝撃等が印加された場合に発生するシャフトの倒れや触れ回りを短時間で正常な状態に復元することが可能となる。
【0021】
更に、ラジアル動圧軸受部のうち、オイルの界面側に位置するラジアル動圧軸受部に形成されるヘリングボーングルーブが、オイルに対して押し込み圧を付与するよう構成されることで、シール機能を高め、軸受外部へのオイルの漏れ出しが効果的に防止される。
【0022】
また、本発明のスピンドルモータは、ステータを保持するブラケットと、該ブラケットに対して相対回転するロータと、該ロータに固着され該ステータと協働して回転磁界を発生するロータマグネットと、該ロータの回転を支持する流体動圧軸受とを備えたスピンドルモータにおいて、前記流体動圧軸受は、請求項1乃至4に記載した流体動圧軸受であることを特徴とする(請求項5)。
【0023】
ロータの回転を支持するための流体動圧軸受が上述のとおりの構成を有することで、オイル内に滞留する気泡の問題が排除され、軸受外部へのオイルの漏れ出しやNRROの悪化を防止することができるので、信頼性並びに耐久性に優れ、また軸受の効率が改善されるので、回転時の損失を低減し低消費電力化することができる。またフルフィル構造の流体動圧軸受を採用することで低コスト化することができる。
【0024】
更に、本発明のディスク駆動装置は、情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク駆動装置において、ハウジングと、該ハウジングの内部に固定され該記録媒体を回転させるスピンドルモータと、該記録媒体の所要の位置に情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク駆動装置であって、前記スピンドルモータは、請求項5に記載したスピンドルモータであることを特徴とする(請求項)。
【0025】
本発明のスピンドルモータは、信頼性並びに耐久性に優れ且つ消費電力量を抑制し、また低コスト化したものとすることがが可能であることから、高い回転精度並びに耐久性及び低消費電力量並びに低コスト化が要求されるハードディスクを駆動するディスク駆動装置において好適に使用可能であるが、これに限定されず、ハードディスク等の固定式又はCD−ROM、DVD等の着脱式の記録媒体を駆動するディスク駆動装置においても同様に使用可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる流体動圧軸受及びこれを用いたスピンドルモータ並びにこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置の実施形態について図2乃至図4を参照して説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0027】
(1)スピンドルモータの構成
図2に図示されるスピンドルモータは、外周部にハードディスク(図4においてディスク板53として示す)が保持されるロータハブ2と、このロータハブ2に取付けられるシャフト4と、シャフト4の自由端部(ロータハブ2に取付けられる側とは反対側の端部)の外周面から半径方向外方に延伸する円板状のスラストプレート6とから構成されるロータと、ブラケット8に設けられた円筒状ボス部8aに固着されたスリーブ10とを有する。ロータハブ2の内面側には、ロータマグネット12が接着等の手段によって取付けられ、ブラケット8にはこのロータマグネット12と半径方向に対向してステータ14が配置される。
【0028】
スリーブ10には、スリーブ10を軸線方向に貫通する貫通孔10aが形成されており、シャフト4は、この貫通孔10aとの間に微小間隙を形成して挿通される。貫通孔10aの開口側(ブラケット8側)には、スラストプレート6に対応して第1の段部10a1が形成され、貫通孔10aより内径が拡大すると共に、第1の端部10a1に連続して内径が更に拡大する第2の段部10a2が形成される。第1の段部10a1の平坦面はスラストプレート6の上側面との間に微小間隙を形成すると共に、第1の段部10a1の内周面はスラストプレート6の外周面との間に隙間を形成している。第2の段部10a2には、貫通孔10aの開口を閉塞するスラストブッシュ16が取付けられており、このスラストブッシュ16は、スラストプレート6の下側面並びにシャフト4の自由端部側端面との間に隙間を形成している。
【0029】
これら貫通孔10aの内周面とシャフト4の外周面との間に形成される微小間隙、第1の段部10a1の平坦面とスラストプレート6の上側面との間の微小間隙並びに第1の段部10a1の内周面とスラストプレート6の外周面との間の隙間、更には、スラストブッシュ16とスラストプレート6の下側面との間の隙間は、全て連続しており、これら連続する各隙間内には、オイルが途切れることなく連続して保持されている。シャフト4のロータハブ2取付部側近傍の外周面には、貫通孔10aの内周面との間に形成される微小間隙の半径方向の隙間寸法が、ロータハブ2側に向かって漸次拡大するよう構成された環状溝4aが設けられており、この環状溝4aと貫通孔10aの内周面との間にオイルの界面が形成され、テーパシールとしての機能を奏する。
【0030】
(2)軸受部の構成
スリーブ10の貫通孔10aの内周面には、シャフト4の環状溝4aの軸線方向内方側に、回転方向に対して相反する方向に傾斜する一対のスパイラル溝を連結して構成される略「く」の字状のヘリングボーングルーブ18aによる周状の動圧発生溝列が形成されており、シャフト4の外周面との間に上部ラジアル動圧軸受部18が構成されている。
【0031】
このヘリングボーングルーブ18は、環状溝4a側のスパイラル溝部が閉塞側のスパイラル溝部よりも軸線方向寸法が大に形成されており、閉塞側(スラストプレート6側)のスパイラル溝部によるポンピング圧を上回るポンピング圧を発生する。このヘリングボーングルーブ18aによって、シャフト4の回転に応じて、スパイラル溝の連結部において発生する流体動圧が極大となり、必要な荷重支持圧を発生すると同時に、環状溝4a側のスパイラル溝部と閉塞側のスパイラル溝部とのポンピング力のアンバランス量分、オイルに対して界面側からスラストプレート6側に向かって押し込む押し込み圧(総合流体動圧A)が生じる。この押し込み圧によって、上部ラジアル動圧軸受部18で高められたオイル内圧がスラストプレート6側に伝播される。
【0032】
また、スリーブ10の貫通孔10aの内周面には、第1の段部10a1に隣接して、ロータ6の回転時にオイルに流体動圧を誘起する、相反する方向に傾斜する一対のスパイラル溝を連結して構成される略「く」の字状のヘリングボーングルーブ20aによる周状の動圧発生溝列が形成されており、シャフト4の外周面との間で下部ラジアル動圧軸受部20が構成される。
【0033】
下部ラジアル動圧軸受部20に形成されるヘリングボーングルーブ20aは、各スパイラル溝部が実質的に同等のポンピング力を発生するよう、回転軸心に対する傾斜角度、溝深さ、全長及び幅寸法が略同一となる、つまり、各スパイラル溝が連結部に対して線対称になるよう設定されている。従って、下部ラジアル動圧軸受部20では、軸受部の軸線方向中央部(スパイラル溝の連結部)において発生する流体動圧が極大となり、オイルに対して軸線方向いずれかの方向に向かう押し込み圧を発生することはない。
【0034】
スリーブ10に形成された閉塞側の端面である第1の段部10a1の平坦面には、スパイラルグルーブ22aによる動圧発生溝列がスラストプレート6と同心円状に形成されており、開放側の面であるスラストプレート6の上側面との間に開放側スラスト動圧軸受部である上部スラスト動圧軸受部22が構成されている。このスパイラルグルーブ22aは、スラストプレート6の回転に応じてオイルを半径方向内方、つまりシャフト4側に作用する動圧(流体動圧B)が発生するようポンプイン形状を有しており、スパイラルグルーブ22aによって発生した流体動圧によって、スラストプレート6が第1の段部10a1から離間する方向に作用する軸支持力が得られる。
【0035】
更に、閉塞側の面であるスラストプレート6の下側面と軸線方向に対向する、スラストブッシュ16の内面には、スパイラルグルーブ24aによる動圧発生溝列がスラストプレート6と同心円状に形成されており、スラストプレート6の下側面との間に閉塞側スラスト動圧軸受部である下部スラスト動圧軸受部24が構成されている。このスパイラルグルーブ24aは、上部スラスト動圧軸受部22に形成されるスパイラルグルーブ22aと同様に、スラストプレート6の回転に応じてオイルを半径方向内方、つまりスラストプレート6の回転中心部側に作用する動圧が発生するよう、ポンプイン形状を有しており、スパイラルグルーブ22aによって発生した流体動圧によって、スラストプレート6がスラストブッシュ16に対して浮上する。
【0036】
(3)軸支持方法
上記のとおり構成された各動圧軸受部による軸支持方法について以下に詳述する。尚、図3は、スリーブ10の貫通孔10aの内周面とシャフト4の外周面との間に形成される微小間隙、第1の段部10a1の平坦面とスラストプレート6の上側面との間の微小間隙並びに第1の段部10a1の内周面とスラストプレート4の外周面との間の隙間、更には、スラストブッシュ16とスラストプレート6の下側面との間の隙間に保持されるオイルの圧力分布の相対的な関係を展開し、概念として模式的に示した圧力分布図であるが、スピンドルモータの圧力分布は軸対称となるため、図3において一点鎖線で示す回転軸心に対して、スピンドルモータの縦断面で反対側となる領域の圧力分布は省略している。また、図3において示す番号は、図2において各軸受部に対して付す番号と同一である。
【0037】
スピンドルモータの回転に応じて、上部及び下部ラジアル動圧軸受18,20では、ヘリングボーングルーブ18a,20aによるポンピング力が高まり、ラジアル方向の荷重を支持するために必要な支持圧を発生すると同時に、上部ラジアル動圧軸受部では、軸線方向にアンバランスな形状を有するヘリングボーングルーブ18aのポンピングによって、オイルに対して界面側からスラストプレート6側に作用する押し込み圧が生じる。
【0038】
このとき。上部ラジアル動圧軸受部18で発生したオイルに対する押し込み圧によって、上部ラジアル動圧軸受部18よりもスラストプレート6側に位置する間隙中に保持されるオイルの内圧が大気圧以上となり、負圧の発生が防止される。
【0039】
下部ラジアル動圧軸受部20では、軸線方向にバランスした形状のヘリングボーングルーブ20aによって、軸受の軸線方向両端部側から軸受の中央部に向かって実質上均等な圧力でオイルをポンピングするので、発生する流体動圧の圧力勾配が軸線方向に対称となり、オイルに対して軸線方向いずれかの方向に作用する押し込み圧を誘起しない。また、下部スラスト動圧軸受部24では、スパイラルグルーブ24aによって軸受の周方向外端部からスラストプレート6の回転軸心側に向かって実質上均等な圧力でオイルをポンピングするので、発生する流体動圧の圧力勾配が回転軸対称となり、オイルに対して周方向の流動を誘起しない。従って、上部ラジアル動圧軸受部18のヘリングボーングルーブ18aによるオイルに対する押し込み圧は、下部ラジアル動圧軸受部20及び下部スラスト動圧軸受部24による干渉を受けることはない。
【0040】
しかしながら、上部スラスト動圧軸受部22においては、スパイラルグルーブ22aによって半径方向内方に向かうオイルの流動を促し、動圧(流動圧)を発生させている。このため、上部ラジアル動圧軸受部18で発生するオイルに対する押し込み圧と、上部スラスト動圧軸受部22で発生するオイルの流動とが相互に干渉することとなるが、上部及び下部ラジアル動圧軸受部18,20が構成されるスリーブ10の貫通孔10aとシャフト4の外周面との間に形成される微小間隙の方が、上部スラスト動圧軸受部22が構成される第1の段部10a1の平坦面とスラストプレート6の上側面との間の微小間隙よりも隙間寸法が圧倒的に小さく、またヘリングボーングルーブの方がスパイラルグルーブよりもポンピング力が高い。従って、上部ラジアル動圧軸受部18に形成されるヘリングボーングルーブ18aによって発生する流体動圧の軸線方向の圧力勾配と上部スラスト動圧軸受部22に形成されるスパイラルグルーブ22aによって発生する流体動圧の半径方向の圧力勾配とを考慮した場合に、上部ラジアル動圧軸受部18に形成されるヘリングボーングルーブ18aを構成する一対のスパイラル溝部のうち、環状溝4a側に位置するスパイラル溝部の軸線方向寸法をスラストプレート6側に位置するスパイラル溝部の軸線方向寸法よりも大とすることで、オイルに対して十分な押し込み圧を付与することが可能となり、上部スラスト動圧軸受部22におけるオイルの流動圧よりも常に高くなる。
【0041】
よって、第1の段部10a1の内周面とスラストプレート6の外周面との間の隙間に保持されるオイルに対して、上部スラスト動圧軸受部22に形成されたスパイラルグルーブ22aの影響をさほど受けることなく、上部ラジアル動圧軸受部18の発生すオイルに対する押し込み圧がスラストプレート6の外周部部分に保持されるオイルへと伝播され、そのオイル内圧が高められる。その結果、オイルの内圧が大気圧以上に維持され、負圧の発生による気泡の発生が防止されるので、この気泡に起因する種々の問題が解消される。
【0042】
尚、スピンドルモータの定常回転時、上部スラスト動圧軸受部22よりも軸受として作用する有効面積が大な下部スラスト動圧軸受部24で発生する流体動圧によって、上部スラスト動圧軸受部22で発生するオイルの流動圧よりも大な浮上力がスラストプレート6に対して付与され、上部スラスト動圧軸受部22が構成される微小間隙の間隙寸法が狭まり、スパイラルグルーブ22aによるポンピング力が強化される。このため、上部ラジアル軸受部18,20による押し込み圧が抑制され、スラストプレート6の外周部側へ向かう圧力は減少する。従って、シャフト4が必要以上に浮上する過浮上の発生が抑制される。
【0043】
また、オイルの界面側に位置する上部ラジアル動圧軸受部18の動圧発生溝を上述のとおり、オイルに対して界面側からスラストプレート6側に押し込み圧を付与するよう軸線方向にアンバランスな形状のヘリングボーングルーブ18aとすることで、モータの回転時にはオイルの界面が常に上部ラジアル動圧軸受部18側に引き込まれるようになり、環状溝4aによるシール機能を高め、軸受外部へのオイルの漏れ出しを効果的に防止することができるようになる。
【0044】
(4)ディスク駆動装置の構成
図4に、一般的なディスク駆動装置50の内部構成を模式図として示す。ハウジング51の内部は塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部に情報を記憶する円板状のディスク板53が装着されたスピンドルモータ52が設置されている。加えてハウジング51の内部には、ディスク板53に対して情報を読み書きするヘッド移動機構57が配置され、このヘッド移動機構57は、ディスク板53上の情報を読み書きするヘッド56、このヘッドを支えるアーム55及びヘッド56及びアーム55をディスク板53上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部54により構成される。
【0045】
このようなディスク駆動装置50のスピンドルモータ52として図2において図示されるスピンドルモータを使用することで、所望の回転精度を得つつもディスク駆動装置50の薄型化並びに低コスト化が可能になる。
【0046】
以上、本発明に従う流体動圧軸受及びこれを用いたスピンドルモータ並びにディスク駆動装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0047】
例えば、シャフト4やスリーブ10といった軸受の構成部材は、アルミニウム系の材料、銅系材料、ステンレス綱といった無垢の金属材あるいは銅粉末や鉄粉末等を焼結した焼結材等から適宜選択して使用可能である。
【0048】
また、ブラケット8は、ディスク駆動装置のハウジング(図4において、ハウジング51として示す)にネジ等の手段で固定されるが、ハウジングとブラケットとを一体化することで、このハウジングをブラケット8として用いることも可能である。
【0049】
【発明の効果】
本発明の請求項1の流体動圧軸受では、オイル内に発生する気泡による悪影響を排除し、構造の簡略化並びに低コスト化が可能となる。
【0050】
本発明の請求項2の流体動圧軸受では、オイル内での気泡の発生を確実に防止することが可能となる。
【0051】
本発明の請求項3の流体動圧軸受では、スラストプレートの周速に起因するオイルの粘性抵抗が抑制され、高効率化することが可能となる。
【0052】
本発明の請求項4の流体動圧軸受では、高い安定性を有することが可能と共に、軸受外部へのオイルの漏れ出しを効果的に防止することが可能となる。
【0053】
本発明の請求項5のスピンドルモータでは、信頼性並びに耐久性に優れ且つ低消費電力化並びに低コスト化することが可能となる。
【0054】
本発明の請求項6のディスク駆動装置では、内蔵されるスピンドルモータが信頼性並びに耐久性に優れ且つ低消費電力であることから、高い回転精度並びに耐久性を有することが可能となると共に、低消費電力量化並びに低コスト化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の流体動圧軸受を用いたスピンドルモータの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる流体動圧軸受及びこれを用いたスピンドルモータの概略構成を示す断面図である。
【図3】オイルの圧力分布を概念的に示した圧力分布図である。
【図4】ディスク駆動装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
4 シャフト
6 スラストプレート
10 スリーブ
16 スラストブッシュ(ブッシュ)
18,20 ラジアル動圧軸受部
22,24 スラスト動圧軸受部

Claims (6)

  1. 中空円筒状のスリーブと、
    該スリーブの内周面と隙間を介して半径方向に対向するシャフトと、
    該シャフトの端部において半径方向外方に延伸すると共に該スリーブと隙間を介して軸線方向に対向する円板状のスラストプレートと、
    該スリーブの端部に装着され、該スリーブと対向する該シャフト部位及び該スラストプレートを該スリーブと共に覆い、且つ該スラストプレート並びに該シャフトと間隙を介して軸線方向に対向するブッシュと、
    該シャフト並びに該スラストプレートと該スリーブ並びに該ブッシュとの間にそれぞれ形成される隙間内に途切れることなく連続して保持され、該スリーブの開放側の端部付近に界面が形成されるオイルと、を具備し、該シャフト並びに該スラストプレートと該スリーブ並びに該ブッシュとの相対回転を該オイルに誘起される流体動圧を用いて支持する流体動圧軸受であって、
    前記スリーブの内周面とシャフトの外周面との間には、前記相対回転時に前記オイルに流体動圧を誘起するためのラジアル動圧軸受部が構成され、
    前記スリーブの閉塞側の端面と前記スラストプレートの開放側の面との間には、前記相対回転時に前記オイルに半径方向内方に向かう流体動圧を誘起する開放側スラスト動圧軸受部が構成され、
    前記開放側スラスト動圧軸受部は、前記スラストプレートの半径方向内方側の圧力が半径方向外方側の圧力より高くなるように構成され、
    前記ブッシュと前記スラストプレートの閉塞側の面との間には、前記相対回転時に前記オイルに半径方向内方に向かう流体動圧を誘起する閉塞側スラスト動圧軸受部が構成されており、
    また、前記ラジアル動圧軸受部には、前記相対回転時に前記オイルに対して軸線方向且つ前記スラストプレート側に向かう流体動圧を誘起するための動圧発生溝が形成されており、
    前記ラジアル動圧軸受部が前記オイルに誘起する該軸線方向且つ前記スラストプレート側に向かう総合流体動圧をAとし、前記開放側スラスト動圧軸受部が前記オイルに誘起する半径方向内方に向かう流体動圧をBとするとき、A>Bの関係を満足することを特徴とする流体動圧軸受。
  2. 前記ラジアル動圧軸受部に形成される動圧発生溝は、一対のスパイラルグルーブを連接してなるヘリングボーングルーブからなり、該一対のスパイラルグルーブのうち、前記オイルの界面側に位置するスパイラルグルーブが前記総合流体動圧Aを誘起するよう他のスパイラルグルーブに対して非対称形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体動圧軸受。
  3. 前記開放側及び前記閉塞側スラスト動圧軸受部には、それぞれ半径方向内方に向かう流体動圧を誘起するスパイラルグルーブが動圧発生溝として設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体動圧軸受。
  4. 前記スリーブの内周面とシャフトの外周面との間には、前記ラジアル動圧軸受部と前記スラストプレートとの間に、更に他のラジアル動圧軸受部が構成されており、該他のラジアル動圧軸受部には、軸線方向に対称形状を有する一対のスパイラルグルーブを連結してなるヘリングボーングルーブが動圧発生溝として設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の流体動圧軸受。
  5. ステータを保持するブラケットと、該ブラケットに対して相対回転するロータと、該ロータに固着され該ステータと協働して回転磁界を発生するロータマグネットと、該ロータの回転を支持する流体動圧軸受とを備えたスピンドルモータにおいて、
    前記流体動圧軸受は、請求項1乃至4のいずれかに記載した流体動圧軸受であることを特徴とするスピンドルモータ。
  6. 情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク駆動装置において、
    ハウジングと、
    該ハウジングの内部に固定され該記録媒体を回転させるスピンドルモータと、
    該記録媒体の所要の位置に情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク駆動装置であって、
    前記スピンドルモータは、請求項5に記載したスピンドルモータであることを特徴とするディスク駆動装置。
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