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JP3760128B2 - スピンドルモータ及びこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置 - Google Patents

スピンドルモータ及びこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置 Download PDF

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JP3760128B2
JP3760128B2 JP2001352669A JP2001352669A JP3760128B2 JP 3760128 B2 JP3760128 B2 JP 3760128B2 JP 2001352669 A JP2001352669 A JP 2001352669A JP 2001352669 A JP2001352669 A JP 2001352669A JP 3760128 B2 JP3760128 B2 JP 3760128B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動圧軸受を備えたスピンドルモータ及びこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ハードディスク等の記録媒体を駆動するディスク駆動装置において使用されるスピンドルモータの軸受として、シャフトとスリーブとを相対回転自在に支持するために、両者の間に介在させたオイル等の潤滑流体の流体圧力を利用する動圧軸受が種々提案されている。
【0003】
このような動圧軸受を使用するスピンドルモータに関し、本願の出願人は特願平10−296156号(特開2000−113582号)等において、図1に示すとおり、ロータaの底面とスリーブbの上端面との間にロータaの浮上力を発生するためのスラスト軸受部cを構成し、またロータaに一体的に設けられたシャフトdの外周面とスリーブbの内周面との間に、ロータaの調芯や倒れの防止に作用するためのラジアル軸受部e,eを構成したスピンドルモータを提案した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のスピンドルモータは、従来の動圧軸受のようにスラスト軸受部を構成するスラストプレートを要しないことから、軸受剛性を著しく低下させることなくモータの構造を簡略化し低コスト化すると共に、薄型化することが可能になるといったメリットを有する。しかしながら、このようなスピンドルモータが使用されるディスク駆動装置は、携帯情報端末等の小型機器への適用が開始されており、更なる薄型化の要求が高まりつつある。加えて、ディスク駆動装置の低価格化の流れから、スピンドルモータ自体の更なる低コスト化も要求されるようになってきた。
【0005】
これに対し、上記図1に図示するスピンドルモータでは、貫通孔f1並びに溝f2,f3から構成される連通路fをスリーブbに設け、外気を軸受部内に取り込んで、すなわち、軸受部内外を空気が流通可能とすることで、ラジアル軸受部e,eの端部を空気中に露出させていた。これは、各軸受部に形成される動圧発生溝のポンピング作用によって、各軸受部間に保持されているオイルの内圧が大気圧以下の負圧状態となる部分が生じ、オイルの充填作業時や動圧発生溝の巻き込み等によってオイル内に溶け込んだ空気を軸受外部に排出するための構成である。
【0006】
オイル内に溶け込んだ空気が気泡化して現れると、温度上昇や外部環境の低圧化によって気泡が体積膨張し、オイルを軸受外部へと漏出させるといったスピンドルモータの耐久性や信頼性に影響する問題、あるいは動圧発生溝が気泡と接触することによる振動の発生やNRRO(非繰り返し性振れ成分)の悪化といったスピンドルモータの回転精度に影響する問題が発生する。
【0007】
このような気泡排出のための連通路fの形成にはドリル等の切削加工具が用いられるが、切削刃の強度を考慮すると、連通路fを構成する貫通孔f1や溝f2,f3はあまり小寸法化することができない。従って、上記連通路fを形成し、なおかつラジアル軸受部e,eの軸受剛性を維持するためには、シャフトd及びスリーブbの軸線方向の寸法は、所定寸法以上に設定せざるを得ず、スピンドルモータの薄型化には自ずと限界があった。
【0008】
また、連通路fを構成する貫通孔f1並びに溝f2,f3をスリーブbに形成することで、その分構造が複雑化すると共に、スリーブbの加工工数が増え、コスト増となってしまう。
【0009】
更に、シャフトdのロータaとは反対側の端部には、ロータaの抜止めを構成するリング部材gが装着されている。つまり、スラスト軸受部cとラジアル軸受部e,eと連通路fを構成する貫通孔並びに溝と、リング部材gとが軸線方向に同一軸に重なって配置されることとなるため、スピンドルモータの薄型化を阻害する要因となる。
【0010】
これを防止するためにロータaの抜止めを軸受の外部に構成した場合、抜止めが空気中(以下、ドライエリアという)に存在することとなる。
【0011】
しかしながら、軸受内に抜止めが構成されている場合であれば、外的な振動や衝撃の印加によって回転時に抜止め部で接触が生じても発生する金属粉は軸受部に保持されるオイルによって捕捉されるため、スピンドルモータの外部に飛散することはできない。これに対し、抜止め部がドライエリアに構成されると、抜止め部で発生した金属粉は、容易にスピンドルモータの外部へ飛散してしまうこととなる。
【0012】
ハードディスク等の記録媒体を駆動するディスク駆動装置では、シークタイムを短縮するために、ディスクの記録面とヘッドとは僅か1μm以下の隙間しか離間しておらず、そのため微小な塵埃であっても、ヘッドと記録面との間に噛み込み、いわゆるヘッドクラッシュを引き起こす原因となる。そのような環境下において使用されるスピンドルモータの場合、このような金属粉の飛散は、品質上大きな問題となる。
【0013】
とりわけ、抜止め部を構成する回転側部材と静止側部材とが同種金属から形成されている場合、接触時の金属粉の発生がより顕著となる。
【0014】
本発明は、抜止め部の接触による金属粉の発生を防止することができ、また所望の回転精度を得ながらも薄型化並びに低コスト化が可能なスピンドルモータ及びこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、シャフトと、該シャフトが回転自在に遊挿される貫通孔が形成されたスリーブと、回転軸心に該シャフトが一体的に構成された円形の天板と該天板の外周縁から垂下される円筒壁とを有するロータとを備えたスピンドルモータであって、前記スリーブの上端面及び天板の底面の少なくともいずれか一方には、前記ロータの回転時に前記オイルに対して半径方向内方に向かう圧力を付与する動圧発生溝が設けられ、スラスト軸受部が構成され、前記スリーブの内周面とシャフトの外周面との間には、前記ロータの回転時に前記オイルに流体動圧を誘起するラジアル動圧軸受部が構成され、前記スリーブには、外周面が半径方向外方に突出する環状のフランジ部が設けられており、前記ロータの円筒壁の内周面には、該フランジ部の下部に対応する位置に半径方向内方に突出する環状部材が固着され、該フランジ部と該環状部材とが係合することで、前記ロータの抜止めが構成されており、前記環状部材は、少なくともその表面が前記スリーブよりも硬質であることで、所望の回転精度を得ながらモータの薄型化を実現すると共に、スリーブとともに抜止めを構成する環状部材の少なくとも表面の硬度を違えることで、両者の接触による金属粉の発生を可及的に防止することが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記環状部材は、セラミック材より形成されているので、製造工程を増加させることなく金属粉の発生を確実に防止することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記環状部材は、金属材から形成されており、その表面が硬化処理されているので、環状部材そのものを容易に形成することが可能となると同時に金属粉の発生を確実に防止することが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記スリーブに形成される貫通孔の一方の端部は、閉塞部材によって閉塞され、前記スリーブの上端面と前記ロータの天板の底面、前記スリーブの内周面と前記シャフトの外周面並びに前記閉塞部材の内面と前記シャフトの端面との間には、連続する微小間隙が形成されると共に、前記微小間隙内には、全体にわたってオイルが途切れることなく連続して保持されており、前記ラジアル動圧軸受部には、実質上同等の圧力を発生する一対のスパイラルグルーブを連接してなるヘリングボーングルーブが動圧発生溝として設けられており、また前記閉塞部材の内面及び前記シャフトの端面との間には、前記スラスト軸受部で発生する半径方向内方に向かう圧力と実質上均衡する圧力を有する軸受部が形成され、前記ロータは、前記スラスト軸受部と該軸受部との協働によって浮上されていると共に、前記ロータは、該浮上方向と軸線方向に対向する方向に磁気的に付勢されているので、軸受内部を外気に連通する連通孔等の構成を要せず、構造を簡略化しモータの低コスト化をはかることが可能となる。
【0019】
請求項1に記載の発明は、前記フランジ部の外周面と前記ロータの円筒壁の内周面とは半径方向に隙間を介して対向しており、また前記フランジ部の外周面には、前記ロータの天板から離れるにしたがって外径が縮径するようテーパ面が設けられ、前記オイルは該テーパ面と前記円筒壁の内周面との間でメニスカスを形成して保持されていると共に、前記環状部材の上面と前記フランジ部の下面との間には、前記フランジ部外周面のテーパと前記ロータの円筒壁の内周面との間に形成される半径方向の間隙の最小の隙間寸法よりも小な微小間隙が形成されておりラビリンスシールとして機能するので、オイルの流出だけでなく、蒸発によって生じた油分を含むオイルミストのモータ外部への散出も防止することが可能となる。
【0020】
請求項5の発明は、情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク駆動装置において、ハウジングと、該ハウジングの内部に固定され該記録媒体を回転させるスピンドルモータと、該記録媒体の所要の位置に情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク駆動装置であって、前記スピンドルモータは、請求項1乃至請求項5に記載したスピンドルモータであるので、低コスト且つ薄型で信頼性に優れたものとすることが可能となる。また、本発明のスピンドルモータは、小型・薄型化が可能であるから、例えば外径が1インチのハードディスクを駆動するディスク駆動装置において好適に使用可能であるが、これに限定されず、ハードディスク等の固定式又はCD−ROM、DVD等の着脱式の記録媒体を駆動するディスク駆動装置においても同様に使用可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるスピンドルモータ及びこのスピンドルモータを用いたディスク駆動装置の実施形態について図2乃至図4を参照して説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0022】
(1)スピンドルモータの構成
図2において、このスピンドルモータは、略円板状の上壁部2a(天板)と、この上壁部2aの外周縁部から下方に垂下する円筒状周壁部2b(円筒壁)とから構成されるロータハブ2と、このロータハブ2の上壁部2aの中央部に一方の端部が外嵌固定されるシャフト4とから構成されるロータ6と、このシャフト4を回転自在に支持する中空円筒状のスリーブ8と、このスリーブ8の下部を閉塞しシャフト4の自由端部側端面と対向するシールキャップ10(閉塞部材)と、スリーブ8が内嵌される円筒部12aが一体的に形成されたブラケット12とを具備する。
【0023】
ブラケット12には円筒部12aを中心とした略椀状の形状を有しており、この椀状をなす周壁の内周面12bには、半径方向内方に突設される複数のティースを有するステータ14が配設され、また、ロータハブ2の周壁部2bの外周面には、このステータ14と半径方向内方から間隙を介して対向するよう、ロータマグネット16が固着される。
【0024】
スリーブ8の上端面とロータハブ2の上壁部2aの下面との間、ロータハブ2の上壁部2aに続くシャフト4の外周面とスリーブ8の内周面との間及びこれに連続するシャフト4の端面とシールキャップ10の内面との間には、一連の微小間隙が形成されており、この微小間隙中にはオイルが途切れることなく連続して保持されており、いわゆるフルフィル構造の動圧軸受を構成している。尚、この実施形態における軸受の構成並びに軸支持方法については後に詳述する。
【0025】
スリーブ8の外周面の上端部には、半径方向外方に突設され且つ外周面がスリーブ8の上端面から離間するにつれて縮径するよう傾斜面状に形成された環状フランジ部8aが設けられ、ロータハブ2の周壁部2aの内周面と非接触状態で半径方向に対向している。
【0026】
この周壁部2bの内周面とフランジ部8aの外周面との間に規定される間隙の半径方向の間隙寸法は、フランジ部8aの外周面が上記のとおり傾斜面状に形成されることで、軸線方向下方(周壁部2bの先端部方向)に向かってテーパ状に漸増する。すなわち、この周壁部2bの内周面とフランジ部8aの外周面とが協働してテーパシール部18を構成している。スリーブ8の上端面とロータハブ2の上壁部2aの下面との間、ロータハブ2の上壁部2aに続くシャフト4の外周面とスリーブ8の内周面との間及びこれに連続するシャフト4の端面とシールキャップ10の内面との間に形成される一連の微小間隙に保持されるオイルは、このテーパシール部18のみにおいて、オイルの表面張力と外気圧とがバランスされ、オイルと空気との界面がメニスカス状に形成される。
【0027】
テーパシール部18は、オイルリザーバとして機能し、テーパシール部18内に保持されるオイル量に応じて界面の形成位置が適宜移動可能である。従って、テーパシール部18内に保持されるオイルが、オイル保持量の減少にともない軸受部に供給されると共に、熱膨張等によって体積が増大した分のオイルは、このテーパシール部18内に収容される。
【0028】
このように、スリーブ8のフランジ部8aの外周面とロータハブ2の周壁部2bの内周面間にテーパ状間隙を形成し、表面張力を利用したテーパシール部18を構成することで、テーパシール部18が軸受部よりも大径となると共に、テーパシール部18の軸線方向寸法も比較的に大とすることができる。従って、テーパシール部18内の容積が増大し、フルフィル構造の動圧軸受に多量に保持されるオイルの熱膨張に対しても十分に追随可能となる。
【0029】
周壁部2bのテーパシール部18よりも先端部には、接着等の手段によって環状の抜止めリング20(環状部材)が固着されている。この抜止めリング20は、スリーブ8の外周面の下端部において、フランジ部8aの下部に対して非接触状態で嵌り合うことで、スリーブ8に対するロータ6の抜止め構造が構成される。
【0030】
このとき、抜止めリング20を硬質なセラミック材から形成すると、スピンドルモータに対して外的な振動や衝撃が印加され、ロータ6の回転時に抜止めリング20とスリーブ8との接触が発生した場合でも、金属粉の発生が防止される。
【0031】
また、これに代えて、抜止めリング20を例えばSUS材等の金属材から形成し、その表面を硬質化する表面処理を施すことによっても、スリーブ8との接触による金属粉の発生を防止することが可能である。この場合の表面処理としては、ニッケルメッキ、DLC(ダイアモンド・ライク・カーボン)コーティングあるいは窒化処理等が好ましい。
【0032】
尚、上記いずれの場合も、SUS材や銅系材料によって形成されるスリーブ8と抜止めリング20とを異種材料から形成することが可能である。
【0033】
このように、抜止めリング20とスリーブ8との接触による金属粉の発生を防止することが可能となるので、スリーブ8の外周面側、すなわちドライエリア内にロータ6の抜止めとなる構成をに設けることが可能となる。従って、後に詳述する一対のラジアル軸受部と抜止め構造とが軸線方向における同一線上に整列配置されることはない。よって、シャフト4の全長を軸受として有効に活用することが可能になり、軸受剛性を維持しながら更なるモータの薄型化が実現される。
【0034】
抜止めリング20の上面は、フランジ部8aの下面とテーパシール部18に連続し且つテーパシール部18の半径方向の間隙の最小の隙間寸法よりも小な隙間寸法を有する軸線方向の間隙を介して対向している。
【0035】
抜止めリング20の上面とフランジ部8aの下面との間に規定される軸線方向の微小間隙の間隙寸法を可能な限り小さく設定することによって、スピンドルモータの回転時に、この軸線方向の微小間隙における空気の流速とテーパシール部18に規定される半径方向の間隙における空気の流速との差が大きくなり、オイルが気化することによって生じた蒸気の外部への流出抵抗を大きくしてオイルの境界面近傍における蒸気圧を高く保ち、更なるオイルの蒸散を防止するよう、ラビリンスシールとして機能する。
【0036】
このように、テーパシール部18に連続してラビリンスシールを配することで、液体としてのオイルの流出が阻止されるばかりでなく、モータの外部環境温度の上昇等によりオイルが気化することで発生するオイルミストのモータ外部への流出も阻止することが可能となる。従って、オイル保持量の低下を防止して、長期間にわたって安定した軸受性能を維持することができ、耐久性、信頼性の高い軸受とすることができる。
【0037】
(2)軸受部の構成
スリーブ8の内周面には、スリーブ8の上端面側に、ロータ6の回転時にオイルに流体動圧を誘起する、回転方向に対して相反する方向に傾斜する一対のスパイラル溝を連結して構成される略「く」の字状のヘリングボーングルーブ22aが形成されており、シャフト4の外周面との間で上部ラジアル動圧軸受部22が構成される。
【0038】
また、スリーブ8の内周面には、シャフト4の自由端部側に、ロータ6の回転時にオイルに流体動圧を誘起する、回転方向に対して相反する方向に傾斜する一対のスパイラル溝を連結して構成される略「く」の字状のヘリングボーングルーブ24aが形成されており、シャフト4の外周面との間で下部ラジアル動圧軸受部24が構成される。
【0039】
尚、上部及び下部ラジアル動圧軸受部22,24に形成されるヘリングボーングルーブ22a,24aは、各スパイラルグルーブが実質的に同等のポンピング力を発生するよう、軸線方向の寸法、回転方向に対する傾斜角あるいは溝幅や深さといった溝諸元が同一となるよう設定される、つまり、各スパイラルグルーブが連結部に対して線対称になるよう設定されている。従って、上部及び下部ラジアル動圧軸受部22,24では、軸受部の軸線方向中央部(各スパイラルグルーブの連結部)において最大動圧が現れ、各スパイラルグルーブによるポンピングが軸線方向いずれかの方向に対してアンバランスとなり、オイルに軸線方向の流動が発生することはない。
【0040】
更に、スリーブ8の上端面には、ロータ6の回転時にオイルに対して半径方向内方(シャフト4側)に向かう圧力を誘起するポンプインのスパイラルグルーブ26aが形成されており、ロータハブ2の上壁部2aの下面との間でスラスト軸受部26が構成される。
【0041】
また、シャフト4の自由端部側端面とシールキャップ10の内面との間には、後に詳述するとおり、スラスト軸受部26のスパイラルグルーブ26aによって高められたオイルの内圧を利用する、静圧軸受部28が構成される。
【0042】
(3)軸支持方法
上記のとおり構成された各軸受部による軸支持方法について図3を参照して詳述する。尚、図3は、スリーブ8の上端面とロータハブ2の上壁部2aの下面との間、ロータハブ2の上壁部2aに続くシャフト4の外周面とスリーブ8の内周面との間及びこれに連続するシャフト4の端面とシールキャップ10の内面との間に形成された微小間隙中に保持されるオイルの圧力分布の相対的な関係を、各軸受部毎に展開して模式的に示した圧力分布図であるが、スピンドルモータの圧力分布は軸対称となるため、図3において一点鎖線で示す回転軸心に対して、スピンドルモータの縦断面で反対側となる領域の圧力分布は省略している。また、図3において示す番号は、図2において各軸受部に対して付す番号と同一である。
【0043】
上部及び下部ラジアル動圧軸受22,24では、ロータ6の回転にともない、ヘリングボーングルーブ22a,24aによるポンピング力が高まり、流体動圧が生じる。上部及び下部ラジアル動圧軸受部22,24における圧力分布は、図3に示すように、ヘリングボーングルーブ22a,24aの両端側から急激に高まり、各スパイラルグルーブの連結部において極大となる。この上部及び下部ラジアル動圧軸受部22,24で発生する流体動圧を用いて、シャフト4が軸線方向上下部から軸支持され、シャフト4の調芯作用及び倒れに対する復元作用を担っている。
【0044】
スラスト軸受部26では、ロータ6の回転にともない、ポンプインのスパイラルグルーブ26aによって、オイルに半径方向内方に向かう圧力が誘起される。この半径方向内方に向かう圧力によって、オイルの流動が促され、オイルの内圧が高められ、ロータ6の浮上方向に作用する流体動圧が発生する。尚、スラスト軸受部26で誘起される流体動圧は、図3に示すように、上部及び下部ラジアル動圧軸受部22,24のように急激に高まることはなく、最大でも大気圧を幾分上回る程度である。
【0045】
スラスト軸受部26で発生する圧力によって、ロータハブ2の上壁部2aに続くシャフト4の外周面とスリーブ8の内周面との間及びこれに連続するシャフト4の端面とシールキャップ10の内面との間に保持されているオイルは、圧力的に実質上密封された状態となり、また、上部及び下部ラジアル動圧軸受部22,24に形成されるヘリングボーングルーブ22a,24aを軸線方向に対称な形状とし、発生する動圧を軸線方向にバランスした状態とすることで、上述のとおりオイルに軸線方向の流動が誘起されることがない。これにより、シャフト4の外周面とスリーブ8の内周面との間及びこれに連続するシャフト4の端面とシールキャップ10の内面との間に保持されるオイルの内圧は、上部及び下部ラジアル動圧軸受部22,24で発生する流体動圧の干渉を受けることなく、このスラスト軸受部に保持されるオイルの内圧とバランスする。従って、図3において示すとおり、いずれの領域においてもスラスト軸受部26に保持されるオイルの内圧と同等となり、これら微小間隙中に保持されるオイルにおいて内圧が大気圧以下となる負圧が発生することはない。よって、負圧に起因する気泡の問題が解消される。
【0046】
上記のとおり、スラスト軸受部26で発生する圧力は、大気圧を幾分上回る程度であり、これのみでロータ6を十分に浮上させるのは困難である。しかしながら、上述のとおりシャフト4の自由端部側端面とシールキャップ10の内面との間に構成される静圧軸受部28に保持されたオイルの内圧も、スラスト軸受部26で誘起される流体動圧によって高められたオイルの内圧と同等の圧力となるので、スラスト軸受部26と静圧軸受部28との協働によって、ロータ6を十分に浮上させることが可能となる。
【0047】
尚、図2において図示されるように、ブラケット12のロータマグネット16との対向位置に強磁性材からなる環状のスラストヨーク30を配置し、ロータマグネット16とスラストヨーク30との間で軸線方向の磁気吸引力を発生させることで、スラスト軸受部26及び静圧軸受部28で発生するロータ6の浮上圧とバランスさせて、ロータ6のスラスト方向の支持を安定させ、ロータ6が必要以上に浮上する過浮上の発生を抑制している。このようなロータ6に対する磁気的な付勢は、例えば、ステータ14とロータマグネット16との磁気的中心を軸線方向に相違させることによっても作用させることが可能である。
【0048】
(4)ディスク駆動装置の構成
図4に、一般的なディスク駆動装置50の内部構成を模式図として示す。ハウジング51の内部は塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部に情報を記憶する円板状のディスク板53が装着されたスピンドルモータ52が設置されている。加えてハウジング51の内部には、ディスク板53に対して情報を読み書きするヘッド移動機構57が配置され、このヘッド移動機構57は、ディスク板53上の情報を読み書きするヘッド56、このヘッドを支えるアーム55及びヘッド56及びアーム55をディスク板53上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部54により構成される。
【0049】
このようなディスク駆動装置50のスピンドルモータ52として図2において図示されるスピンドルモータを使用することで、スピンドルモータ52からの金属粉の発生を防止することが可能となり、ヘッドクラッシュ等の問題を回避して信頼性の高いディスク駆動装置とすることが可能になる。
【0050】
また、スピンドルモータ52が、ドライエリア内にロータの抜止めを構成することが可能であるため、所望の回転精度を得つつもディスク駆動装置50の薄型化並びに低コスト化が可能になる。
【0051】
以上、本発明に従うスピンドルモータ並びにディスク駆動装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0052】
例えば、スラスト軸受部に設けられる、オイルに対して半径方向内方に作用する圧力を発生する手段としては、上記実施形態において説明したポンプインタイプのスパイラルグルーブ26aに換えて、半径方向にアンバランスな形状を有するヘリングボーングルーブとすることも可能である。この場合、半径方向外方側に位置するスパイラルグルーブによるポンピング力が、半径方向内方側に位置するスパイラルグルーブによるポンピング力を上回るよう設定することで、これらスパイラルグルーブ間のポンピング力のアンバランス量が、オイルに対して半径方向内方に作用する圧力となる。
【0053】
尚、スラスト軸受部に上記ヘリングボーングルーブを設けた場合、ロータに対して付与する浮上力がスパイラルグルーブで発生する浮上力よりも高くなるので、スラスト軸受部による荷重支持力が向上する反面、静圧軸受部で発生する浮上力と相俟って、ロータの過浮上が発生する懸念がある。従って、ロータに対して付与する磁気的な付勢力によって、これを制御する必要がある。
【0054】
【発明の効果】
本発明の請求項1のスピンドルモータでは、接触による金属紛の発生が防止されるので、ロータの抜止めとなる構成をドライエリア内に設けることが可能となり、ラジアル動圧軸受部と抜止めとが軸線方向の同一線上に重なり合うことがない。従って、所望の回転制度を得ながらモータの薄型化を実現することが可能となる。また、オイルそのものやオイルミストの軸受外部への流出をより効果的に防止することが可能となる。
【0055】
本発明の請求項2のスピンドルモータでは、製造工程を増加することなく抜止め部の接触による金属粉の発生を確実に防止することが可能となる。
【0056】
オイル内での気泡の発生を防止することが可能になる。
【0057】
本発明の請求項3のスピンドルモータでは、容易に抜止め部を作製することが可能であると共に、抜止め部の接触による金属粉の発生を確実に防止することが可能となる。
【0058】
本発明の請求項4のスピンドルモータでは、構造の簡略化とロータ支持の安定化を同時に実現することが可能となる。
【0060】
本発明の請求項5のディスク装置では、低コスト且つ薄型で信頼性に優れたものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のスピンドルモータの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明にかかるスピンドルモータの概略構成を示す断面図である。
【図3】オイルの圧力分布を模式的に示した圧力分布図である。
【図4】ディスク駆動装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
2a 上壁部(天板)
2b 周壁部(円筒壁)
4 シャフト
6 ロータ
8 スリーブ
8a フランジ部
20 抜止めリング(環状部材)
22,24 ラジアル動圧軸受部
26 スラスト軸受部
26a スパイラルグルーブ

Claims (5)

  1. シャフトと、該シャフトが回転自在に遊挿される貫通孔が形成されたスリーブと、回転軸心に該シャフトが一体的に構成された円形の天板と該天板の外周縁から垂下された円筒壁とを有するロータとを備えたスピンドルモータであって、
    前記スリーブの上端面及び天板の底面の少なくともいずれか一方には、前記ロータの回転時に前記スリーブの上端面と前記天板の底面との間に充填されたオイルに対して半径方向内方に向かう圧力を付与する動圧発生溝が設けられ、スラスト軸受部が構成され、
    前記スリーブの内周面とシャフトの外周面との間には、前記ロータの回転時に前記スリーブの内周面と前記シャフトの外周面との間に充填されたオイルに流体動圧を誘起するラジアル動圧軸受部が構成され、
    前記スリーブには、外周面が半径方向外方に突出する環状のフランジ部が設けられており、前記ロータの円筒壁の内周面には、該フランジ部の下部に対応する位置に半径方向内方に突出する環状部材が固着され、該フランジ部と該環状部材とが係合することで、前記ロータの抜止めが構成されており、
    前記フランジ部の外周面と前記ロータの円筒壁の内周面とは半径方向に隙間を介して対向しており、また前記フランジ部の外周面には、前記ロータの天板から離れるにしたがって外径が縮小するようテーパ面が設けられ、前記スラスト軸受部のオイルは該テーパ面と前記円筒壁の内周面との間でメニスカスを形成して保持されていると共に、前記環状部材の上面と前記フランジ面の下面との間には、前記フランジ部の外周面のテーパ面と前記ロータの内周壁の内周面との間に形成される半径方向の間隙の最小の隙間寸法よりも小な微小間隙が形成されてラビリンスシールとして機能し、
    かつ、前記環状部材は、少なくともその表面が前記スリーブよりも硬質であることを特徴とするスピンドルモータ。
  2. 前記環状部材は、セラミック材より形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスピンドルモータ。
  3. 前記環状部材は、金属材から形成されており、その表面が硬化処理されていることを特徴とする請求項1に記載のスピンドルモータ。
  4. 前記スリーブに形成される貫通孔の一方の端部は、閉塞部材によって閉塞され、前記スリーブの上端面と前記ロータの天板の底面、前記スリーブの内周面と前記シャフトの外周面並びに、前記閉塞部材の内面と前記シャフトの端面との間には、連続する微小間隙が形成されると共に、前記微小間隙内には、全体にわたってオイルが途切れることなく連続して保持されており、
    前記ラジアル動圧軸受には、実質上同等の圧力を発生する一対のスパイラルグループを連接してなるヘリングボーングループが動圧発生溝として設けられており、また前記閉塞部材の内面及び前記シャフトの端面との間には、前記スラスト軸受部で発生する半径方向内方に向かう圧力と実質上均衡する圧力を有する軸受部が形成され、前記ロータは、前記スラスト軸受部と該軸受部との協働によって浮上されていると共に、前記ロータは、該浮上方向に抗する方向に磁気的に付勢されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスピンドルモータ。
  5. 情報を記録できる円板状記録媒体が装着されるディスク駆動装置において、ハウジングと、該ハウジングの内部に固定され該記録媒体を回転させるスピンドルモータと、該記録媒体の所要の位置に情報を書き込み又は読み出すための情報アクセス手段とを有するディスク装置であって、
    前記スピンドルモータは、請求項1乃至4に記載したスピンドルモータであることを特徴とするディスク装置。
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