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JP3919831B2 - 光学用合成石英ガラス - Google Patents

光学用合成石英ガラス Download PDF

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JP3919831B2 JP36033492A JP36033492A JP3919831B2 JP 3919831 B2 JP3919831 B2 JP 3919831B2 JP 36033492 A JP36033492 A JP 36033492A JP 36033492 A JP36033492 A JP 36033492A JP 3919831 B2 JP3919831 B2 JP 3919831B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、合成石英ガラス、特に、紫外領域、例えば、エキシマレーザーなどに使用される光学用部品、超LSI用フォトマスク基板、レチクル、及び超LSIステッパー用光学材料等に使用される合成石英ガラス、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年エキシマレーザーを用いた超LSI製造プロセスや、CVDプロセスなどが発展し、エキシマレーザー用光学材料に対する要求が特に高まっている。
【0003】
エキシマレーザーは、希ガスとハロゲン、あるいは、希ガス、ハロゲン単体を用いたガスレーザーで、ガスの種類によりXeFエキシマレーザー(350nm)、XeClエキシマレーザー(308nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、KrClエキシマレーザー(220nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)及びF2エキシマレーザー(157nm)などがある。
【0004】
このうち、発振効率とガス寿命の点からXeClエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーや、KrFエキシマレーザーが有利である。さらに、半導体素子の製造工程で用いられる光源としては、ArFエキシマレーザーおよび、KrFエキシマレーザーが注目されている。
【0005】
ArFエキシマレーザーや、KrFエキシマレーザーは、従来の水銀ランプなどの輝線を用いた光源と比較すると、波長が短く、エネルギー密度がはるかに高いため、ステッパーなどの石英ガラス製の光学部品に対して損傷を与える可能性が大きい。事実、合成石英ガラスにエキシマレーザーを照射したり、合成石英ガラスフォトマスク基板にプラズマエッチングや、スパッタリングを実施すると、吸収帯が形成され、その結果として発光が発生したりするようになるという欠点を有していた。
【0006】
このような合成石英ガラスフォトマスク基板がプラズマエッチングや、スパッタリングを受けて吸収帯を形成するような石英ガラスを予め判別する方法として特開平1−189654号公報(合成石英ガラスの検査方法)がある。これは、合成石英ガラスにエキシマレーザーを照射し、赤色の発光が生じるか否かによって、有害な吸収帯が形成されるか否かを判別する方法である。
【0007】
さらに、特開平1−201664号公報(合成石英ガラスの改質方法)には、四塩化珪素を化学量論的比率の酸水素火炎中で加水分解して得られた合成石英ガラスを水素ガス雰囲気中で熱処理することによって、赤色発光のない合成石英ガラスに改質できることが開示されている。
【0008】
また、特開平2−64645号公報(紫外域用有水合成石英ガラス及びその製法)には、四塩化珪素を酸水素火炎で加水分解する際、バーナーに供給する酸水素火炎の水素ガスと酸素ガスの比(H2/O2)を化学量論比より大きくする、すなわち、水素の量を化学量論的必要量より過剰の還元雰囲気にすることにより、260nmの吸収帯の生成およびそれに伴う合成石英ガラスの650nmの赤色発光を防止できることが開示されている。さらに、この製法によって得られた合成石英ガラスは、200nmでの透過率が低下するという欠点があり、四塩化珪素に同伴ガスとして、合成石英ガラスの生成反応に関与しない不活性ガスを使用することにより、前記の欠点の無い合成石英ガラスが得られることが開示されている。
【0009】
このように、還元雰囲気下で合成した合成石英ガラスは、KrFエキシマレーザーに対しては、耐久性を有するが、より短波長のエキシマレーザーであるArFエキシマレーザーを照射すると220nm付近にピークを有する吸収帯が生じ、エキシマレーザービームの透過率の低下をもたらすという欠点があった。
【0010】
そこで、特開平4−21540号公報及び特開平4−130031号公報に開示されるように、水素過剰の酸水素炎で合成した石英ガラスをさらに非酸化性の雰囲気で熱処理することにより吸収帯の生成を防止することが開発された。
【0011】
合成石英ガラスの発光、吸収の理論的説明は、未だ充分にはなされていないが、合成石英ガラスの構造欠陥に起因し、荷電粒子線、電子線、X線、γ線、そして、高い光子エネルギーを有する紫外線などによる一光子吸収あるいは多光子吸収によって、色中心が生成されるためと考えられている。
【0012】
石英ガラスの吸収、発光という分光学的性質は、現在のところ、次のように説明される。
a)酸素過剰
合成石英ガラスの製造において、酸水素火炎の酸素が過剰な場合、すなわち、H2/O2<2となるような時は、エキシマレーザーなどの照射によって、260nmの吸収帯が生じ、それに伴って650nmの赤色発光帯が生成する。
b)水素過剰
逆に、酸水素火炎が水素過剰の場合(H2/O2>2)、合成石英ガラス中に過剰の水素が残存し、ArFエキシマレーザーの照射によって220nmの吸収帯が生じ、それに伴う280nmの発光帯が見られる。
【0013】
260nmの吸収帯の生成およびそれに伴う650nmの赤色発光の原因として考えられることは、酸素過剰の条件下で石英ガラスを合成したことによるパーオキシリンケージの存在と石英ガラス中に溶存する酸素分子の存在である。
【0014】
パーオキシリンケージの存在の場合は、石英ガラスに照射したX線や紫外線などの高い光子エネルギーを有する電磁波によってパーオキシリンケージが発光中心の前駆体となり、
【化1】
Figure 0003919831
の反応によりパーオキシラジカルが発光中心となる。
【0015】
一方、酸素分子が前駆体の場合は、酸素分子がオゾンに変換され、発光中心(カラーセンター)になると考えられている。すなわち、以下の反応がおこなわれている。
【化2】
Figure 0003919831
【0016】
この合成石英ガラスに水素熱処理を施すと、
≡Si−O−O−Si≡+H2→≡Si−OH+H−O−Si≡
となり、あるいは、石英ガラス中の過剰の溶存酸素は水素と結合して水となり発光中心が減少して発光は抑制される。
この反応を(2)式で示す。
2+2H2→2H2O (2)
【0017】
しかし、この方法は、改質効果が継続的に発揮できず、種々の影響因子によって改質効果が消滅することがある。例えば、前記の方法で改質した合成石英ガラスを大気中で熱処理すると、改質効果が消滅し、エキシマレーザーの照射や、スパッタリング、プラズマエッチングなどを行うと、再び650nmの発光が発生するようになってしまう。
【0018】
また、特開平2−64645号公報に開示された方法によって製造された合成石英ガラスでは、再熱処理をおこなっても、エキシマレーザー照射時の260nmの吸収帯の生成および650nmの赤色発光帯は観測されない。しかし、さらに詳細に検討すると、この方法によって製造した合成石英ガラスにArFエキシマレーザーを照射すると、280nmに強い発光帯が生じ、220nmに吸収帯が生成されることが判明した。また、ArFエキシマレーザーを照射し220nm吸収帯が生成するに伴ってArFエキシマレーザー自身の透過率も低下する。
【0019】
また、KrFエキシマレーザー照射した場合は、短時間の照射(略103ショット)では280nmの発光帯、および220nmの吸収帯は生ぜず、KrFエキシマレーザー自身の透過率低下もみられない。
しかしながら、長時間の照射(106ショット以上)を行うとArFレーザー照射時と同様280nmの発光帯及び220nmの吸収帯が生じるようになる。
【0020】
従って、化学量論的必要量より水素過剰で製造することが260nmの吸収帯の生成、およびそれに伴う650nmの赤色発光防止のためには有効であるが、ArFレーザーの照射およびKrFレーザーの長時間の照射には適さない。
【0021】
220nmの吸収帯は ≡Si・構造を持ったE'センターと呼ばれている欠陥構造が原因であることが知られている(D.L.Griscom,セラミック協会学術論文誌、99巻923ページ参照。)。
【0022】
E’センターの前駆体として ≡Si−H が考えられる。
還元雰囲気下で合成した石英ガラス中では、次のような機構でE'センターが生成され(式(3)参照)、さらに熱処理によるE'センターの生成防止のメカニズムとして次のようなメカニズム(式(4)参照)が提示されている。
(N.Kuzuu, Y.Komatsu and M.Murahara, Physical Review B, Vol.44 pp.9265−9270参照)
【化3】
Figure 0003919831
【化4】
Figure 0003919831
【0023】
以上の機構により、≡Si−HH−O−Si≡ の構造が合成石英ガラスから除去され、E'センターの生成が抑止されるのである。
このことは、合成石英ガラスのArFエキシマレーザーの照射による650nm、および280nmにおける発光帯の生成および260nmと220nmの吸収帯の生成を抑止した光学特性を示す合成石英ガラスとして、特開平4−21540号公報及び特開平4−130031号でその技術的効果が示された。
【0024】
これは、石英ガラスの合成方法において、溶存する酸素分子(O2)濃度が1×1017個/cm3以下となるように酸水素火炎の酸素と水素の比が化学量論的必要量より過剰の水素の存在下で合成し、さらに、≡Si−H H−O−Si≡で示される構造が、1×1018個/cm3以下となるようにこの合成石英ガラスを非還元性の雰囲気中、または、真空中において、200〜1200℃で熱処理するものである。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
以上の述べた方法により、ArFレーザー照射したときであっても吸収帯の生成しない材料が得られるが、その後、改質効果には、ロット間でのバラツキがあり、改質効果が不完全な場合もあることが明らかになった。すなわち、このようにして製造した石英ガラスにおいても、製造条件下のバラツキにより程度の違いはあるが、エキシマレーザーの長時間照射により、吸収帯が生成する場合があり、従来法では、全ての使用条件下において安定してエキシマレーザー用光学材料を得ることができなかった。
【0026】
本発明は、エキシマレーザーを照射しても、吸収帯の生成のない、安定した光学用合成石英ガラスを提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、四塩化珪素を酸水素火炎中で加水分解することにより直接堆積ガラス化した合成石英ガラスの合成方法において、火炎中の水素の量を化学量論的必要量よりも過剰にし、合成石英ガラス中のOH基濃度を1000ppm以上含有する石英ガラスを用いることにより、前記の問題点を解決することができるとの知見を得て本発明を完成したものである。
【0028】
【作用】
四塩化珪素を酸水素火炎中で加水分解する石英ガラスの合成方法において、酸水素火炎の酸素の量を化学量論的必要量よりも過剰にすると、赤色発光が生ずることは前述したとうりである。石英ガラス中には、Si−O−Siの結合角が構造の乱れのために平衡値(約143度)から大きくずれた結合が多く存在している。このため、合成時の酸水素火炎の水素の量を化学量論的必要量よりも過剰にすると、水素分子が石英ガラス網目中を拡散しうるため、これらの歪んだ結合と水素が式(5)で示す反応が進行し、 ≡Si−H H−O−Si≡ 構造が生成される。
≡Si−O−Si≡ + H2――→ ≡Si−HH−O−Si≡ (5)
【0029】
この構造を有する合成石英ガラスにエキシマレーザーを照射すると前記の式(3)の反応で、E'センター(≡Si・)が生成される。この前駆体である
≡Si−HH−O−Si≡ 構造を除去するためには、特開平4−21540号、特開平4−130031号に示すごとく、適当な雰囲気中で熱処理することにより前駆体の除去が可能となる。
【0030】
ところが、もともとの石英ガラスの結合構造が歪んでいるため、熱処理による前駆体の除去は不完全であり、また、歪んだSi−O−Si結合も式(6)に示すように、E'センターの前駆体と成りえるものである。
【化5】
Figure 0003919831
【0031】
このように、酸水素炎を水素過剰としても石英ガラス中に
≡Si−H H−O−Si≡
構造を生成させないためには、歪んだ結合を少なくすることが有効である。
【0032】
これは、石英ガラス中の Si−OH の濃度を高くすることによって達成できる。Si−OHの濃度が高いと、石英ガラスをある温度に保ったとき準平衡に近づく時間を短縮でき、このため石英ガラス中の Si−O−Si 結合角の緩和が促進され、結果として歪んだ結合の分布割合を少なくすることができ、ガラス作成時における前駆体の生成が防止される。また、たとえ合成時に前駆体が生成したとしても歪んだ結合を少なくすることにより、熱処理においても周辺の構造の緩和も容易になり前駆体が容易に除去される。
【0033】
すなわち、石英ガラス中のOH基を濃度を上げ、Si−OHの濃度を高くすることによって石英ガラス中のこの歪んだ結合の濃度が減少し、歪んだ構造に基づくE'センターの生成が防止されるので、エキシマレーザーを石英ガラスに照射しても、吸収帯の生成が無く、エキシマレーザーに対する透過率の低下が生じない安定した光学用合成石英ガラスを得ることができるのである。
【0034】
【実施例】
四塩化珪素(SiCl4)を酸素と水素の割合を化学量論的必要量より過剰の水素の酸水素火炎中で加水分解して石英ガラスを合成した。このとき、石英ガラスの合成時に不活性ガスを含むバーナーの反応条件および排ガスの排気条件を調整することによって表1に示す各種のOH基濃度の合成石英ガラスを作成した。得られた合成石英ガラスの試料から略10×10×30 の試験片を切り出し、厚さが10 となるように、2面を鏡面研磨した。
この試料にKrFエキシマレーザー200mJ/cm2のエネルギー密度で106ショットおよびArFエキシマレーザー100mJ/cm2のエネルギー密度で104ショットを照射し、その前後の吸収スペクトルを測定し、220nmにおける誘起吸収係数を求めた。表1にこの結果をまとめたものを示す。
【0035】
【表1】
Figure 0003919831
【0036】
表1から判るように、KrFエキシマレーザーおよびArFエキシマレーザー、を照射しても、OH基が1000ppm以上の合成石英ガラスは吸収帯の生成が生じていない。
【0037】
【効果】
以上のように、四塩化珪素を酸水素火炎中で加水分解することにより直接堆積ガラス化する石英ガラスの合成方法において、火炎中の水素の量を化学量論的必要量よりも過剰にし、かつ、ガラス中のOH基濃度を重量濃度で1000ppm以上含有する石英ガラスを用いることによってKrFエキシマレーザーおよびArFエキシマレーザーを長時間照射しても石英ガラスに吸収帯の生成が無く、エキシマレーザーに対する透過率の低下が生じない安定した光学用合成石英ガラスを得ることができた。

Claims (4)

  1. 四塩化珪素を酸水素火炎中で加水分解して直接堆積させた合成石英ガラスであって、酸水素火炎の酸素と水素の比が化学量論的必要量より過剰の水素の存在下で合成したものであり、かつ、OH基を1000ppm以上含有し、非還元性雰囲気で熱処理することによってKrFエキシマレーザー200mJ/cm2のエネルギー密度で106ショットおよびArFエキシマレーザー100mJ/cm2のエネルギー密度で104ショットの照射に対して220nmにおける吸収帯の生成を防止した光学用合成石英ガラス。
  2. 請求項1において、熱処理温度が200〜1200℃である光学用合成石英ガラス。
  3. 四塩化珪素を酸水素火炎中で加水分解して直接堆積させた合成石英ガラスの製造法であって、酸水素火炎の酸素と水素の比が化学量論的必要量より過剰の水素の存在下で合成石英ガラス中のOH基の濃度を1000ppm以上に調整して合成し、かつ、非還元性雰囲気で熱処理することによってKrFエキシマレーザー200mJ/cm2のエネルギー密度で106ショットおよびArFエキシマレーザー100mJ/cm2のエネルギー密度で104ショットの照射に対して220nmにおける吸収帯の生成を防止した光学用合成石英ガラスの製造方法。
  4. 請求項3において、熱処理温度が200〜1200℃である光学用合成石英ガラスの製造方法。
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