JP3822549B2 - 配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体チップ実装基板、マザーボード、プローブカード用基板などに適用することのできる配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器に対する高性能化および小型化などの要求に伴い、電子機器に組み込まれる電子部品の高密度実装化が急速に進んでいる。そのような高密度実装化に対応すべく、半導体チップについては、ベアチップの状態で配線基板に面実装される即ちフリップチップ実装される場合が多い。半導体チップを搭載するための配線基板については、半導体チップの多ピン化に伴って、配線の高密度化を達成するうえで好適な多層配線基板が採用される傾向にある。このような半導体チップおよび多層配線基板による実装構造を有する半導体パッケージは、所定の電子回路の一部を構成すべく、更にマザーボードに実装される。マザーボードについても、配線の高密度化を達成するうえで好適な多層配線基板が採用される場合がある。一方、複数の半導体素子が造り込まれた半導体ウエハや単一の半導体チップを検査する際に当該ウエハやチップが搭載されるプローブカードの基板においても、素子やチップの多ピン化に応じて多層配線基板が採用されている。
【0003】
フリップチップ実装においては、一般に、配線基板とこれに搭載された半導体チップの間の隙間に対してアンダーフィル剤が充填される。アンダーフィル剤が充填されない状態では、配線基板および半導体チップにおける面内方向の熱膨張率の差に起因して、配線基板および半導体チップの間の電気的接続の信頼性は低い場合が多い。一般的な半導体材料による半導体チップにおける面内方向の熱膨張率は約3.5ppm/℃であって、コア基板としてガラスエポキシ基板を採用する一般的な配線基板における面内方向の熱膨張率は12〜20ppm/℃であり、両者の熱膨張率の差は比較的大きい。そのため、環境温度の変化により、或は、環境温度の変化を経ることにより、配線基板と半導体チップの間における電気的接続部には応力が発生しやすい。電気的接続部にて所定以上の応力が発生すると、当該接続部における半導体チップのバンプと配線基板の電極パッドとの界面などにて、クラックや剥がれが生じやすくなる。フリップチップ実装における半導体チップと配線基板の間に充填されるアンダーフィル剤は、電気的接続部に発生するこのような応力を緩和する機能を有する。この応力緩和機能により、電気的接続部におけるクラックや剥がれが抑制され、フリップチップ実装における接続信頼性の確保が図られる。
【0004】
しかしながら、大型の半導体チップを配線基板に実装する場合には、アンダーフィル剤の応力緩和機能のみでは、充分な接続信頼性を確保できない場合が多い。半導体チップおよび配線基板の熱膨張率の差に起因する両者の熱膨張差の絶対量は、チップが大型であるほど大きくなるためである。熱膨張差が大きいほど、電気的接続部にて発生する応力も大きくなる。このような不具合は、半導体ウエハや比較的大型の半導体チップの諸機能を検査する際に、これらをプローブカードに搭載した状態においても生じ得る。
【0005】
配線基板および半導体チップにおける面内方向の熱膨張率差に起因する上述の不具合を解消ないし軽減するための手法の一つとして、熱膨張率の小さな配線基板を採用することが考えられる。熱膨張率の小さな配線基板としては、従来より、低熱膨張率の金属材料をコア基板として採用する配線基板が知られている。金属コア基板を構成する金属材料としては、一般に、アルミニウム、銅、ケイ素鋼、ニッケル−鉄合金、CIC(銅/インバー/銅の積層構造を有するクラッド材)などが採用される。金属コア基板を有する配線基板については、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。しかしながら、金属材料は比重が相当程度に大きいので、得られる配線基板の重量が大きくなり、金属コア基板を採用するのは好ましくない場合がある。また、金属コア基板は、微細なプロセスによる加工性に乏しく、例えば、孔加工や薄板化が困難な場合が多い。
【0006】
一方、配線基板の熱膨張率を低減する手法として、炭素繊維材料を利用する技術が知られている。炭素繊維の熱膨張率は、一般に、−5〜3ppm/℃程度である。例えば、特許文献3には、基材である炭素繊維シートを含有する絶縁層と銅配線とが交互に積層された多層配線構造を有する配線基板が開示されている。特許文献4には、基材として炭素繊維シートを含有するコア基板の両面に、ガラス繊維を含有するプリプレグによる絶縁層と銅配線とが積層された多層配線構造を有する配線基板が開示されている。特許文献5には、炭素繊維シートを含有するコア基板の両面に、ガラス繊維を含有しないプリプレグによる絶縁層と銅配線の積層構造を有する配線基板が開示されている。炭素繊維の熱膨張率が相当程度に小さいので、基材として炭素繊維シートを含有する絶縁層や基板における面内方向の熱膨張率は相当程度に小さく、従って、これらを含んで構成される配線基板における面内方向の熱膨張率は、相当程度に小さくなり得る。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−112145号公報
【特許文献2】
特開2000−138453号公報
【特許文献3】
特開昭60−140898号公報
【特許文献4】
特開平11−40902号公報
【特許文献5】
特開2001−332828号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、基材として炭素繊維シートを採用する従来の技術においては、絶縁層やコア基板の厚み方向の熱膨張率は、絶縁層やコア基板が炭素繊維シートを含有しない場合よりも大きくなる傾向にある。特に、面内方向の熱膨張率を10ppm/℃以下に抑制すべく比較的高含有率で炭素繊維シートを含むコア基板においては、厚み方向の熱膨張率の増大は顕著である場合が多い。このような現象が生ずるのは、炭素繊維シートとこれを包容する樹脂との間の熱膨張率差が過大であるためと考えられる。炭素繊維シートを包容してこれに接合する樹脂は、本来は比較的大きな熱膨張率を有するが、熱膨張率の極めて小さな炭素繊維シートによって面内方向の熱膨張については厳しく抑制される。そのため、熱膨張時においては、当該樹脂と炭素繊維シートの間の過大な熱膨張率差に起因して、基板内には許容可能な上限を超える応力が発生し、その結果、この超過応力を解放するために基板厚み方向へと樹脂が一層膨張するものと、考えられる。
【0009】
配線基板が具備するコア基板の厚み方向の熱膨張率が大きいと、このコア基板を厚み方向に貫通するスルーホールビアが形成されている場合には、当該スルーホールビアに対してその延び方向に比較的大きな応力が作用する。その結果、当該スルーホールビアが断線してしまう場合がある。このように、絶縁層やコア基板の基材として炭素繊維材料を利用する従来の配線基板においては、スルーホールビアの断線を充分に抑制しつつ適切に低熱膨張率化を図るのには、困難性がある。
【0010】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、適切に低熱膨張率化を図ることのできる配線基板を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の側面によると配線基板が提供される。この配線基板は、カーボンファイバ材、および、無機フィラーを含有する樹脂組成物からなるコア層と、コア層上に形成された絶縁層および当該絶縁層上に設けられた配線パターンを含む積層配線部と、コア層内を厚み方向に延び、且つ、積層配線部における配線パターンと電気的に接続している導電部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
このような構成の配線基板においては、適切に低熱膨張率化を図ることができる。具体的には、コア層の厚み方向に延びるスルーホールビアなどの導電部の断線を抑制しつつ、配線基板における面内方向の熱膨張率を充分に小さく設定することができる。
【0013】
本発明の第1の側面に係る配線基板のコア層は、カーボンファイバ材を基材として含有する。カーボンファイバ材とは、例えば、カーボンファイバを束ねたカーボンファイバ糸から構成されるカーボンファイバメッシュ、カーボンファイバ糸から織られたカーボンファイバクロス、或は、カーボンファイバ糸から構成されるカーボンファイバ不織布である。カーボンファイバ材は、一般に、−5〜3ppm/℃(25℃)程度の低い熱膨張率を示す。本発明の第1の側面においては、これらのようなカーボンファイバ材が、コア層の内部において、当該コア層の面内方向に展延している。そのため、コア層の面内方向における熱膨張率は小さい。配線基板全体における面内方向の熱膨張率は、コア層の熱膨張率に強く依存するため、コア層におけるカーボンファイバ材の含有率を調節することによって、配線基板における面内方向の熱膨張率を半導体チップのそれに近似する値に設定することも可能である。
【0014】
一方、本発明の第1の側面に係る配線基板のコア層において、カーボンファイバ材を包容しているのは、無機フィラーを含有する樹脂組成物である。この無機フィラーは、樹脂組成物において分散しており、当該樹脂組成物の熱膨張率について、基板の面内方向においても厚み方向においても等方的に低減するという機能を呈する。樹脂組成物における面内方向の熱膨張率が低減されているので、樹脂組成物とカーボンファイバ材の面内方向の熱膨張率差は、樹脂のみがカーボンファイバ材を包容する上述の従来の構成における樹脂とカーボンファイバ材の面内方向の熱膨張率差よりも小さい。したがって、環境温度の変化により或は環境温度の変化を経ることにより生ずる、当該熱膨張率差に起因してコア層の厚み方向に樹脂組成物が膨張しようとする作用は、すなわち、樹脂組成物において厚み方向に生ずる熱応力は、小さい。加えて、当該熱膨張率差に起因してコア層の厚み方向に樹脂組成物が熱膨張しようとする作用の少なくとも一部は、樹脂組成物に含まれる無機フィラーにより抑制ないし阻止される。このように、樹脂組成物およびカーボンファイバ材の熱膨張率差に起因して厚み方向に樹脂組成物が熱膨張しようとする作用が低減されるとともに、この膨張作用の少なくとも一部が無機フィラーにより抑制されるため、コア層の厚み方向の熱膨張率は良好に低減されるのである。その結果、コア層の厚み方向に延びるスルーホールビアなどの導電部に作用する応力は低減され、その断線は抑制されることとなる。
【0015】
このように、本発明の第1の側面によると、コア層の厚み方向に延びるスルーホールビアなどの導電部の断線を抑制しつつ、配線基板における面内方向の熱膨張率を充分に小さく設定することができるのである。このような配線基板は、本来的に低熱膨張率の半導体チップを適切に実装するうえで好適である。
【0016】
本発明の第1の側面において、導電部は、コア層を厚み方向に貫通している。このような導電部すなわちスルーホールビアについても、本発明によると、コア層の厚み方向への膨張に起因する断線は抑制される。このような構成によると、積層配線部の配線パターンは、導電部を介して、コア層の反対側に引き回すことが可能である。
【0017】
本発明の第2の側面によると、他の配線基板が提供される。この配線基板は、カーボンファイバ材、および、無機フィラーを含有する樹脂組成物からなるコア層と、コア層の表面側に形成された絶縁層および当該絶縁層上に設けられた配線パターンを含む第1の積層配線部と、コア層の裏面側に形成された絶縁層および当該絶縁層上に設けられた配線パターンを含む第2の積層配線部と、コア層を貫通し、且つ、第1の積層配線部における配線パターンおよび第2の積層配線部における配線パターンを電気的に接続している導電部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
このような配線基板は、本発明の第1の側面に係る配線基板の構成を含んでいる。したがって、本発明の第2の側面によっても、第1の側面に関して上述したのと同様の効果が奏される。加えて、第2の側面に係る構成は、積層配線部がコア層の両側に対称的に配設されているため、配線基板の反り量を低減するうえで好適である。
【0019】
本発明の第1および第2の側面において、導電部は、コア層の内部において絶縁膜で被覆されている。このような構成によると、コア層内のカーボンファイバ材と導電部との絶縁状態を適切に確保することができる。
【0020】
好ましくは、積層配線部は、複数の絶縁層および複数の配線パターンが交互に積層してなる積層構造と、絶縁層に埋め込まれて複数の配線パターンから選択された隣接する配線パターン間を電気的に接続するビアとを有する。本発明の配線基板は、このような積層配線部を有するビルドアップ配線基板として構成してもよい。
【0021】
好ましくは、コア層の厚み方向の熱膨張率は、30〜120ppm/℃(25℃)である。好ましくは、コア層の面内方向の熱膨張率は、0〜17ppm/℃(25℃)である。
【0022】
好ましくは、カーボンファイバ材は、メッシュ、クロス、または、不織布の形態を有する。コア層におけるカーボンファイバ材の含有率は、好ましくは、30〜80vol%である。カーボンファイバ材に関するこれらの構成は、コア層ひいては配線基板全体における面内方向の低熱膨張率化を図るうえで好適である。
【0023】
好ましくは、無機フィラーの熱膨張率は、1〜20ppm/℃(25℃)である。好ましくは、樹脂組成物における無機フィラーの含有率は、5〜50wt%である。無機フィラーは、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、および、水酸化アルミニウムよりなる群から選択される材料よりなるのが好ましい。また、無機フィラーは、好ましくは平均粒径10μm以下の無機粉末よりなる。無機フィラーに関するこれらの構成は、コア層の厚み方向の熱膨張率を低減するうえで好適である。
【0024】
好ましくは、樹脂組成物は、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニルサルホン、ポリフタルアミド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、テトラフルオロエチレン、エポキシ、シアネートエステル、および、ビスマレイミドよりなる群から選択される樹脂材料を含んで構成されている。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る多層配線基板Xの部分断面図である。多層配線基板Xは、コア層10と、一対のビルドアップ部20と、コア層10を厚み方向に貫通するスルーホールビア30とを備える。
【0026】
コア層10は、カーボンファイバ強化樹脂(CFRP)の板材から加工されたものであり、CFRP部11と、絶縁樹脂部12とを有する。CFRP部11は、カーボンファイバ材11a、および、これを包容して硬化している樹脂組成物11bよりなる。コア層10においては、CFRP部11が略全ての体積を占める。
【0027】
カーボンファイバ材11aは、カーボンファイバを束ねたカーボンファイバ糸により織られたカーボンファイバクロスであり、コア層10の面内方向に展延するように配向している。本実施形態では、5枚のカーボンファイバ材11aが厚み方向に積層して樹脂組成物11bに埋設されている。カーボンファイバ材11aとしては、カーボンファイバクロスに代えて、カーボンファイバメッシュまたはカーボンファイバ不織布を採用してもよい。本実施形態では、コア層10ないしCFRP部11におけるカーボンファイバ材11aの含有率は、30〜80vol%である。含有率を調節することによって、コア層10ないしCFRP部11の熱膨張率を小さな値において適宜設定することができる。当該含有率が30vol%未満であると、カーボンファイバ材11aによる面内方向の低熱膨張率化の効果を充分に享受できない場合があり、80vol%を超えると、カーボンファイバ材11aと樹脂組成物11bとの間で剥離が生じ易くなる。
【0028】
カーボンファイバ材11aを包容する樹脂組成物11bは、樹脂分と、これに分散する無機フィラーとを含んでいる。樹脂分としては、例えば、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニルサルホン、ポリフタルアミド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、テトラフルオロエチレン、エポキシ、シアネートエステル、ビスマレイミドなどが挙げられる。無機フィラーとしては、シリカ粉末、アルミナ粉末、水酸化マグネシウム粉末、窒化アルミニウム粉末、水酸化アルミニウム粉末などが挙げられる。本実施形態では、無機フィラーの重量平均粒径は、10μm以下であり、樹脂組成物11bにおける無機フィラーの含有率は5〜50wt%とする。当該含有率が5wt%未満であると、無機フィラーによるコア層10の厚み方向の低熱膨張率化の効果を充分に享受できない場合があり、50wt%を超えると、後述するように、コア層10の穴明けの際のドリル加工性が低下する傾向にある。また、無機フィラーの熱膨張率については、1〜20ppm/℃(25℃)であるのが好ましい。
【0029】
本実施形態においては、これらの構成によって、加工前のコア層10ないしCFRP部11における面内方向の熱膨張率は0〜17ppm/℃(25℃)とされている。本発明の多層配線基板Xを、LGAパッケージにおけるチップ実装基板、および、マザーボードなどに適用する場合には、当該コア層10の熱膨張率は0〜6ppm/℃(25℃)に設定するのが好ましい。また、多層配線基板Xを、BGAパッケージにおけるチップ実装基板などに適用する場合には、当該コア層10の熱膨張率は3〜17ppm/℃(25℃)に設定するのが好ましい。
【0030】
絶縁樹脂部12は、CFRP部11のカーボンファイバ材11aとスルーホールビア30との間の電気的絶縁を確保するためのものである。絶縁樹脂部12を構成するための材料としては、樹脂組成物11bの樹脂分に関して上掲した樹脂を採用することができる。
【0031】
ビルドアップ部20は、いわゆるビルドアップ法により配線が多層化された部位であり、絶縁層21および配線パターン22による積層構造を有する。絶縁層21は、例えば、樹脂組成物11bの樹脂分に関して上掲した樹脂により構成することができる。配線パターン22は、例えば銅により構成されており、各々、単一の絶縁層21上において、所望のパターン形状を有している。隣接する層に形成されている配線パターン22は、ビア23により相互に電気的に接続している。最上位の配線パターン22には、外部接続用の電極パッド22aが形成されている。ビルドアップ部20の最上表面には、電極パッド22aに対応して開口しているオーバーコート層24が設けられている。
【0032】
スルーホールビア30は、コア層10の両側に設けられている2つのビルドアップ部20に形成されている配線構造を、相互に電気的に接続するためのものである。スルーホールビア30は、コア層10を貫通するスルーホール31内に、例えば銅めっきにより形成されている。
【0033】
図2〜図5は、多層配線基板Xの製造方法を表す。多層配線基板Xの製造においては、まず、図2(a)に示すようなCFRP板11’を用意する。CFRP板11’は、5枚のカーボンファイバ材11aと、これを包容して硬化している樹脂組成物11bよりなる。樹脂組成物11bは、上述のように無機フィラーを含んで構成されている。CFRP板11’の作製においては、例えば、まず、1枚のカーボンファイバ材11aに対して液状の樹脂組成物11bを含浸させる。次に、未硬化状態を維持しつつ樹脂組成物11bを乾燥させることによって、カーボンファイバ強化プリプレグを作製する。次に、このようにして作製したプリプレグを5枚積層し、加熱下で積層方向に加圧することによって、5枚のプリプレグを一体化させる。このようにして、CFRP板11’を作製することができる。
【0034】
次に、図2(b)に示すように、CFRP板11’における所定の箇所に貫通孔11cを形成する。貫通孔11cは、上述のスルーホールビア30の横断面の直径よりも大きな開口径で形成される。具体的には、貫通孔11cの開口径は、スルーホールビア30の直径よりも0.2〜1.0mmの範囲で大きい。貫通孔11cを形成する手法としては、ドリルによる切削加工、パンチング金型による打ち抜き加工、或は、レーザによるアブレーション加工を採用することができる。
【0035】
次に、このようにして加工されたCFRP板11’の両面に対して樹脂材料を貼り合わせて熱硬化させることによって、図2(c)に示すように、CFRP板11’の両面にビルドアップ部20の最下絶縁層である絶縁層21を形成するとともに、当該樹脂材料により貫通孔11cを填塞する。樹脂材料としては、樹脂組成物11bの樹脂分に関して上述したのと同様のものを採用することができる。
【0036】
次に、図3(a)に示すように、CFRP板11’および絶縁層21による積層構造を貫通するスルーホール31を形成する。スルーホール31は、その軸心が貫通孔11cのそれと一致するように形成される。スルーホール31の形成手法としては、UV−YAGレーザ、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、または、プラズマを利用するドライエッチング法などを採用することができる。本工程を経ることにより、貫通孔11cの壁面に絶縁樹脂部12が形成されることとなる。
【0037】
次に、図3(b)に示すように、セミアディティブ法により、絶縁層21の上にビルドアップ部20の最下配線層である配線パターン22を形成するとともに、スルーホール31の壁面にスルーホールビア30を形成する。具体的には、まず、必要に応じてデスミア処理を行って絶縁層21およびスルーホール31の表面を粗化した後、無電解めっき法により、絶縁層21およびスルーホール31の表面に無電解銅めっき膜を形成する。次に、無電解銅めっき膜上にフォトレジストを成膜した後、これを露光および現像することによって、レジストパターンを形成する。当該レジストパターンは、形成を目的とする配線パターン22に対応する非マスク領域を有する。スルーホール31は、当該非マスク領域にて開口している。次に、電気めっき法により、当該非マスク領域に対して、無電解銅めっき膜をシード層として利用して電気銅めっきを堆積させる。このとき、スルーホール31にはスルーホールビア30が形成される。次に、レジストパターンをエッチング除去した後、それまでレジストパターンで被覆されていた無電解銅めっき膜をエッチング除去する。このようにして、配線パターン22およびスルーホールビア30を形成することができる。
【0038】
次に、図3(c)に示すように、上述のようにして形成された配線パターン22を覆うように所定の樹脂材料を成膜することによって、更なる絶縁層21を積層形成する。このとき、例えば、スルーホールビア30が形成されたスルーホール31内を減圧することによって、当該樹脂材料をスルーホール31内に引込み、当該樹脂材料によりスルーホール31を填塞する。
【0039】
次に、図4(a)に示すように、絶縁層21に対してビアホール23aを形成する。ビアホール23aは、UV−YAGレーザ、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、または、プラズマを利用するドライエッチング法などにより形成することができる。或は、ビアホール23aは、絶縁層21が感光性樹脂により形成されている場合にはフォトリソグラフィにより形成することができる。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、セミアディティブ法により、絶縁層21の上に更なる配線パターン22を形成するとともに、ビアホール23aにてビア23を形成する。具体的には、まず、必要に応じてデスミア処理を行って絶縁層21およびビアホール23aの表面を粗化した後、無電解めっき法により、絶縁層21およびビアホール23aの表面に無電解銅めっき膜を形成する。次に、無電解銅めっき膜上にフォトレジストを成膜した後、これを露光および現像することによって、レジストパターンを形成する。当該レジストパターンは、形成を目的とする配線パターン22に対応する非マスク領域を有する。ビアホール23aは、当該非マスク領域にて開口している。次に、電気めっき法により、当該非マスク領域に対して、無電解銅めっき膜をシード層として利用して電気銅めっきを堆積させる。次に、レジストパターンをエッチング除去した後、それまでレジストパターンで被覆されていた無電解銅めっき膜をエッチング除去する。このようにして、配線パターン22およびビア23を形成することができる。
【0041】
多層配線基板Xの製造においては、このようなビルドアップ法による、絶縁層21の形成、並びに、配線パターン22およびビア23の形成を、コア層10の両面にて所定の回数繰り返すことにより、図5(a)に示すようなビルドアップ多層配線構造を形成する。本実施形態では、配線パターン22の積層数は5であり、最上位の配線パターン22には、外部接続用の電極パッド22aが形成されている。電極パッド22aの表面には、ハンダ、Pd、Ag、Ag−Sn合金、または、Ni下地を介してのAuなどの金属層(図示略)が、めっき法および印刷法などにより形成されている。
【0042】
次に、図5(b)に示すように、ビルドアップ多層配線構造の表面にオーバーコート層24を形成する。オーバーコート層24は、電極パッド22aに対応して開口している。オーバーコート層24の形成においては、まず、印刷技術により、オーバーコート層用の樹脂材料を、ビルドアップ多層配線構造を被覆するように成膜する。当該樹脂材料としては、エポキシ系、ポリイミド系、アクリル系、BT系などの絶縁性および耐熱性に優れた樹脂を採用するのが好ましい。次に、フォトリソグラフィにより、所定の開口部を形成する。このようにして、ビルドアップ多層配線構造を有して表面がオーバーコート層24により被覆されたビルドアップ部20が形成される。
【0043】
このような一連の工程を経ることによって、コア層10と、当該コア層10の両面に積層形成されたビルドアップ部20と、コア層10を貫通するスルーホールビア30とを備える多層配線基板Xを製造することができる。
【0044】
多層配線基板Xのコア層10は、その内部で面内方向に展延しているカーボンファイバ材11aを基材として含有するため、コア層10における面内方向の熱膨張率は小さい。一方、多層配線基板Xの全体における面内方向の熱膨張率は、コア層10のそれに強く依存する。したがって、多層配線基板Xの全体における面内方向の熱膨張率については、カーボンファイバ材11aの含有率などを適宜変更することによって、小さな値を容易に設定することができる。例えば、0〜17ppm/℃(25℃)に設定することができる。また、半導体チップにおける面内方向の熱膨張率に近似する値にも設定することもできる。
【0045】
多層配線基板Xのコア層10において、カーボンファイバ材11aを包容しているのは、無機フィラーを含有する樹脂組成物11bである。樹脂組成物11bは無機フィラーを含有しているので、樹脂組成物11bの熱膨張率は等方的に低減されている。そのため、コア層10の面内方向においては、樹脂組成物11bおよびカーボンファイバ材11aの面内方向の熱膨張率差は比較的小さい。したがって、環境温度の変化により或は環境温度の変化を経ることにより生ずる、当該熱膨張率差に起因してコア層10の厚み方向に樹脂組成物11bが膨張しようとする作用は、すなわち、樹脂組成物11bにおいてコア層10の厚み方向に生ずる熱応力は、小さい。加えて、当該熱膨張率差に起因してコア層10の厚み方向に樹脂組成物11bが熱膨張しようとする作用の少なくとも一部は、樹脂組成物11b中の無機フィラーにより抑制ないし阻止される。このように、樹脂組成物11bおよびカーボンファイバ材11aの熱膨張率差に起因して厚み方向に樹脂組成物11bが熱膨張しようとする作用が低減されるとともに、この膨張作用の少なくとも一部が無機フィラーにより抑制されるため、コア層10の厚み方向の熱膨張率は良好に低減されるのである。その結果、コア層10の厚み方向に延びるスルーホールビア30に作用する応力は低減され、その断線は抑制される。
【0046】
このように、多層配線基板Xにおいては、面内方向の熱膨張率が充分に低減されるとともに、コア層10の厚み方向に延びるスルーホールビア30の断線が適切に抑制されている。すなわち、多層配線基板Xは、適切に低熱膨張率化が図られている。このような低熱膨張率の多層配線基板Xは、半導体チップとの間で熱膨張率の差が小さいので、半導体チップを搭載した状態において、熱膨張率差に起因する両者間の接続信頼性の低下を抑制することができる。
【0047】
加えて、多層配線基板Xは、いわゆるビルドアップ法により形成されるビルドアップ部20において微細かつ高密度な配線構造を有しており、ビルドアップ部20の最上位の配線パターン22においては、外部接続用の電極パッド22aを微細なピッチで設けることが可能である。したがって、多層配線基板Xに対しては、外部接続用の電極が微細なピッチで形成された半導体チップを実装ないし搭載することが可能である。
【0048】
【実施例】
次に、本発明の実施例について比較例とともに説明する。
【0049】
【実施例1】
<多層配線基板の作製>
本実施例では、CFRP板として、カーボンファイバクロスとポリイミド樹脂組成物とを複合化したものを用いた。本実施例のCFRP板の作製においては、まず、カーボンファイバクロス(商品名:TORAYCA、東レ製)に熱硬化型のポリイミド樹脂組成物を含浸させた後にこれを乾燥し、厚さ0.2mmのプリプレグを作製した。このカーボンファイバクロスは、断面直径10μm以下のカーボンファイバを平均本数200以上で束ねたカーボンファイバ糸を平織りしたものである。硬化前のポリイミド樹脂組成物は、ポリイミド樹脂へと高分子化するためのモノマなどや硬化剤とともに、無機フィラーとしてアルミナ粉末(平均粒径7μm以下)およびシリカ粉末(平均粒径3μm以下)を含む。CFRP材を構成するポリイミド樹脂組成物におけるアルミナ粉末およびシリカ粉末の含有率は、各々、10wt%である。また、本実施例で使用したアルミナ粉末の熱膨張率は7ppm/℃(25℃)であり、シリカ粉末の熱膨張率は3ppm/℃(25℃)である。
【0050】
CFRP板の作製においては、次に、このようにして用意したプリプレグを5枚積層し、真空プレスにより、200℃で1時間、積層方向に加圧した。このようにして、厚さ1.0mmの未加工のCFRP板を作製した。このCFRP板における温度範囲25〜200℃での平均熱膨張率については、面内方向にて2ppm/℃であり、厚み方向にて80ppm/℃であった。
【0051】
次に、このCFRP板の所定の箇所に対して、ドリルにより、開口径0.5mmの所定数の貫通孔を形成した。次に、CFRP板に対して脱脂処理およびその後の洗浄処理を行った後、CFRP板の両面に対して熱可塑性ポリイミドシート(商品名:エスパネックス、新日鉄化学製)をラミネートすることによって、CFRP板表面を覆う絶縁層を形成した。具体的には、真空プレスにより、200℃および30分の条件で、厚さ0.05mmとなるように熱可塑性ポリイミドシートをラミネートした。このとき、当該ポリイミド樹脂の一部により貫通孔を填塞した。
【0052】
次に、ポリイミド樹脂により填塞された貫通孔の略中央を通るように、UV−YAGレーザにより、開口径0.2mmのスルーホールを形成した。次に、セミアディティブ法により、絶縁層上に銅配線パターンを形成するとともに、スルーホール壁面にスルーホールビアを形成した。具体的には、まず、必要に応じてデスミア処理を行った後、無電解めっき法により、絶縁層およびスルーホールの表面に無電解銅めっき膜を形成した。次に、無電解銅めっき膜上にフォトレジストを成膜した後、これを露光および現像することによって、レジストパターンを形成した。当該レジストパターンは、形成を目的とする配線パターンに対応する非マスク領域を有する。次に、電気めっき法により、当該非マスク領域に対して、無電解銅めっき膜をシード層として利用して電気銅めっきを堆積させた。次に、レジストパターンをエッチング除去した後、それまでレジストパターンで被覆されていた無電解銅めっき膜をエッチング除去した。エッチング液としては、過酸化水素水および硫酸の混合液を使用した。このようなセミアディティブ法により、ビルドアップ部における最下層の配線パターンと、コア層を貫通して当該最下層配線パターン間を電気的に接続するスルーホールビアとを形成した。
【0053】
次に、最下層配線パターンの上方から更にビルドアップ絶縁層を積層形成した。具体的には、真空プレスにより、200℃および30分の条件で、厚さ0.05mmとなるように、熱可塑性ポリイミドシート(商品名:エスパネックス、新日鉄化学製)を基板両面にラミネートした。次に、このようにして積層形成された絶縁層の所定箇所に対して、UV−YAGレーザにより所定数のビアホールを形成した。次に、セミアディティブ法により、絶縁層上に銅配線パターンを形成した。このとき、ビアホール表面にも銅を堆積させることにより、銅配線パターンとともにビアも形成した。具体的には、最下層配線パターンおよびスルーホールビアの形成におけるセミアディティブ法に関して上述したのと同様である。この後、ビルドアップ絶縁層の積層形成から配線パターンおよびビアの形成までの一連の工程を、コア層の両面にて更に3回繰り返すことにより、コア層の両面において5層配線構造のビルドアップ部を形成した。
【0054】
次に、スクリーン印刷およびフォトリソグラフィにより、ビルドアップ部の表面にオーバーコート層を形成した。オーバーコート層の所定箇所には、ビルドアップ部における最上位の配線パターンの一部が電極パッドとして臨むように開口部を設けた。このようにして、本実施例の多層配線基板を製造した。
【0055】
<温度サイクル試験>
本実施例の多層配線基板に対して、外部接続用の複数のバンプ電極を有する所定の半導体チップを搭載し、温度サイクル試験により、半導体チップ−多層配線基板間の接続信頼性を調べた。具体的には、まず、半導体チップと多層配線基板の間の各電気的接続部について初期導通抵抗を測定した。次に、−65℃〜125℃の範囲で温度サイクル試験を行った後、各電気的接続部の導通抵抗を再び測定した。温度サイクル試験は、−65℃での30分間冷却、および、125℃での30分間加熱を1サイクルとし、このサイクルを1000回繰り返した。その結果、各電気的接続部における抵抗変化率は10%未満であり、良好な接続部が維持されていることが確認された。また、半導体チップのバンプ電極と多層配線基板の電極パッドとの間には、クラックや剥がれは生じなかった。
【0056】
また、本実施例の多層配線基板単体について、上述と同様の温度サイクル試験により、所定の電極間の抵抗変化率を調べた。この試験によると、スルーホールビアの導通信頼性を間接的に評価することが可能である。その結果、各電極間における抵抗変化率は5%未満であり、良好な配線構造が維持されていることが確認された。また、本試験を経た多層配線基板のスルーホールビアを観察したところ、スルーホールビアにおいて断線は確認されなかった。
【0057】
【実施例2】
<多層配線基板の作製>
本実施例では、CFRP板として、カーボンファイバクロスとエポキシ樹脂組成物とを複合化したものを用いた。本実施例のCFRP板の作製においては、まず、カーボンファイバクロス(商品名:TORAYCA、東レ製)に熱硬化型のエポキシ樹脂組成物を含浸させた後にこれを乾燥し、厚さ0.2mmのプリプレグを作製した。カーボンファイバクロスについては、実施例1と同様のものを使用した。硬化前のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂へと高分子化するためのモノマなどや硬化剤とともに、無機フィラーとして窒化アルミニウム粉末(平均粒径8μm以下)およびシリカ粉末(平均粒径3μm以下)を含む。CFRP材を構成するエポキシ樹脂組成物における窒化アルミニウム粉末の含有率は5wt%であり、シリカ粉末の含有率は25wt%である。また、本実施例で使用した窒化アルミニウム粉末の熱膨張率は5ppm/℃(25℃)であり、シリカ粉末の熱膨張率は3ppm/℃(25℃)である。
【0058】
CFRP板の作製においては、次に、このようにして用意したプリプレグを5枚積層し、真空プレスにより、200℃で1時間、積層方向に加圧した。このようにして、厚さ1.0mmの未加工のCFRP板を作製した。このCFRP板における温度範囲25〜150℃での平均熱膨張率については、面内方向にて3ppm/℃であり、厚み方向にて70ppm/℃であった。
【0059】
次に、このCFRP板の所定の箇所に対して、ドリルにより、開口径0.5mmの所定数の貫通孔を形成した。次に、CFRP板の両面に対してエポキシシート(商品名:SH−9、味の素製)をラミネートすることによって、CFRP板表面を覆う絶縁層を形成した。具体的には、真空プレスにより、170℃および30分の条件で、厚さ0.05mmとなるようにエポキシシートをラミネートした。このとき、当該エポキシ樹脂の一部により貫通孔を填塞した。
【0060】
次に、エポキシ樹脂により填塞された貫通孔の略中央を通るように、UV−YAGレーザにより、開口径0.2mmのスルーホールを形成した。次に、セミアディティブ法により、絶縁層上に銅配線パターンを形成するとともに、スルーホール壁面にスルーホールビアを形成した。具体的には、実施例1において銅配線パターンとともにスルーホールビアを形成する工程に関して上述したのと同様である。
【0061】
次に、最下層配線パターンの上方から更にビルドアップ絶縁層を積層形成した。具体的には、真空プレスにより、170℃および30分の条件で、厚さ0.05mmとなるように、エポキシシート(商品名:SH−9、味の素製)を基板両面にラミネートした。次に、このようにして積層形成された絶縁層の所定箇所に対して、UV−YAGレーザにより所定数のビアホールを形成した。次に、セミアディティブ法により、絶縁層上に銅配線パターンを形成した。このとき、ビアホール表面にも銅を堆積させることにより、銅配線パターンとともにビアも形成した。具体的には、実施例1において、最下層配線パターンおよびスルーホールビアの形成におけるセミアディティブ法に関して上述したのと同様である。この後、ビルドアップ絶縁層の積層形成から配線パターンおよびビアの形成までの一連の工程を、コア層の両面にて更に3回繰り返すことにより、コア層の両面において5層配線構造のビルドアップ部を形成した。
【0062】
次に、スクリーン印刷およびフォトリソグラフィにより、ビルドアップ部の表面にオーバーコート層を形成した。オーバーコート層の所定箇所には、ビルドアップ部における最上位の配線パターンの一部が電極パッドとして臨むように開口部を設けた。このようにして、本実施例の多層配線基板を製造した。
【0063】
<温度サイクル試験>
本実施例の多層配線基板に対して、外部接続用の複数のバンプ電極を有する所定の半導体チップを搭載し、温度サイクル試験により、実施例1と同様にして半導体チップ−多層配線基板間の接続信頼性を調べた。その結果、各電気的接続部における抵抗変化率は10%未満であり、良好な接続部が形成されていることが確認された。また、半導体チップのバンプ電極と多層配線基板の電極パッドとの間には、クラックや剥がれは生じなかった。
【0064】
また、本実施例の多層配線基板単体について、実施例1と同様にして、所定の電極間の抵抗変化率を調べた。その結果、各電極間における抵抗変化率は5%未満であり、良好な配線構造が維持されていることが確認された。また、本試験を経た多層配線基板のスルーホールビアを観察したところ、スルーホールビアにおいて断線は確認されなかった。
【0065】
【比較例1】
実施例1のCFRP板に代えて、同サイズの有機コア基板を用意し、当該有機コア基板に対して実施例1と同様にしてビルドアップ部を形成することによって、本比較例の多層配線基板を作製した。有機コア基板としては、基材としてガラスクロスを含むBTレジン基板を使用した。本比較例の有機コア多層配線基板に対して、外部接続用の複数のバンプ電極を有する所定の半導体チップを搭載し、温度サイクル試験により、実施例1と同様にして半導体チップ−多層配線基板間の接続信頼性を調べた。その結果、1000サイクルにて、半導体チップのバンプ電極と多層配線基板の電極パッドとの界面にクラックが観察される接合部が存在した。
【0066】
【比較例2】
無機フィラーを含む樹脂組成物に代えて、無機フィラーを含まずに同一の樹脂分を含むエポキシ樹脂組成物を用いた以外は、実施例2と同様にして、本比較例のCFRP板を作製した。このCFRP板における温度範囲25〜150℃での平均熱膨張率については、面内方向にて2ppm/℃であり、厚み方向にて150ppm/℃であった。また、実施例2のCFRP板に代えて、本比較例のCFRP板を用いた以外は、実施例2と同様にして、多層配線基板を作製した。本比較例の多層配線基板単体について、実施例1と同様にして、所定の電極間の抵抗変化率を調べたところ、本試験を経た多層配線基板の一部のスルーホールビアの中央付近において断線が確認された。
【0067】
【評価】
半導体チップ搭載状態の温度サイクル試験によると、カーボンファイバクロスを含有することにより面内方向の熱膨張率が良好に小さくされているコア層を備える実施例1および実施例2の多層配線基板は、比較例1に係る従来の有機コア多層配線基板よりも、半導体チップとの間における接続信頼性が高いことが判る。実施例1および実施例2の多層配線基板において高い接続信頼性が得られたのは、コア層内部にカーボンファイバ材が存在することに起因して、これら多層配線基板における面内方向の熱膨張率が充分に小さいためである。
【0068】
また、多層配線基板単体の温度サイクル試験によると、無機フィラーを含有する樹脂組成物によりカーボンファイバ材を包容してなるコア層を備える実施例1および実施例2の多層配線基板は、無機フィラーを含有しない樹脂組成物によりカーボンファイバ材を包容してなるコア層を備える比較例2の多層配線基板よりも、スルーホールビアの導通信頼性に優れていることが判る。実施例1および実施例2の多層配線基板のスルーホールにおいて優れた導通信頼性が得られたのは、カーボンファイバ材を包容する樹脂組成物が無機フィラーを含有することに起因して、これら多層配線基板のコア層における厚み方向の熱膨張率が充分に小さいためである。
【0069】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0070】
(付記1)カーボンファイバ材、および、無機フィラーを含有する樹脂組成物からなるコア層と、
前記コア層上に形成された絶縁層および当該絶縁層上に設けられた配線パターンを含む積層配線部と、
前記コア層内を厚み方向に延び、且つ、前記積層配線部における配線パターンと電気的に接続している導電部と、を備えることを特徴とする、配線基板。
(付記2)前記導電部は、前記コア層を厚み方向に貫通している、付記1に記載の配線基板。
(付記3)カーボンファイバ材、および、無機フィラーを含有する樹脂組成物からなるコア層と、
前記コア層の表面側に形成された絶縁層および当該絶縁層上に設けられた配線パターンを含む第1の積層配線部と、
前記コア層の裏面側に形成された絶縁層および当該絶縁層上に設けられた配線パターンを含む第2の積層配線部と、
前記コア層を貫通し、且つ、前記第1の積層配線部における配線パターンおよび前記第2の積層配線部における配線パターンを電気的に接続している導電部と、を備えることを特徴とする、配線基板。
(付記4)前記導電部は、前記コア層の内部において絶縁膜で被覆されている、付記1から3のいずれか1つに記載の配線基板。
(付記5)前記積層配線部は、複数の絶縁層および複数の配線パターンが交互に積層してなる積層構造と、絶縁層に埋め込まれて前記複数の配線パターンから選択された隣接する配線パターン間を電気的に接続するビアと、を有するビルドアップ多層配線構造を含む、付記1から4のいずれか1つに記載の配線基板。
(付記6)前記コア層の厚み方向の熱膨張率は、20〜120ppm/℃(25℃)である、付記1から5のいずれか1つに記載の配線基板。
(付記7)前記コア層の面内方向の熱膨張率は、0〜17ppm/℃(25℃)である、付記1から6のいずれか1つに記載の配線基板。
(付記8)前記カーボンファイバ材は、メッシュ、クロス、または、不織布の形態を有する、付記1から7のいずれか1つに記載の配線基板。
(付記9)前記コア層における前記カーボンファイバ材の含有率は、30〜80vol%である、付記1から8のいずれか1つに記載の配線基板。
(付記10)前記無機フィラーの熱膨張率は、1〜20ppm/℃(25℃)である、付記1から9のいずれか1つに記載の配線基板。
(付記11)前記無機フィラーは、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、および、水酸化アルミニウムよりなる群から選択される材料よりなる、付記1から9のいずれか1つに記載の配線基板。
(付記12)前記樹脂組成物における前記無機フィラーの含有率は、5〜50wt%である、付記1から11のいずれか1つに記載の配線基板。
(付記13)前記無機フィラーは、平均粒径10μm以下の無機粉末よりなる、付記1から12のいずれか1つに記載の配線基板。
(付記14)前記樹脂組成物は、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニルサルホン、ポリフタルアミド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、テトラフルオロエチレン、エポキシ、シアネートエステル、および、ビスマレイミドよりなる群から選択される樹脂材料を含んで構成されている、付記1から13のいずれか1つに記載の配線基板。
【0071】
【発明の効果】
本発明によると、配線基板において、そのコア層ないしコア基板の内部を厚み方向に延びるスルーホールビアなどの導電部の断線を抑制しつつ、低熱膨張率化を適切に達成することができる。このような配線基板は、本来的に低熱膨張率の半導体チップを搭載するうえで好適であり、半導体チップ実装基板、マザーボード、プローブカード用基板などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多層配線基板の部分断面図である。
【図2】図1に示す多層配線基板の製造工程の一部を表す。
【図3】図2に続く工程を表す。
【図4】図3に続く工程を表す。
【図5】図4に続く工程を表す。
【符号の説明】
X 多層配線基板
10 コア基板
11 CFRP部
11’ CFRP板
11a カーボンファイバ材
11b 樹脂組成物
12 絶縁樹脂部
20 ビルドアップ部
21 絶縁層
22 配線パターン
23 ビア
30 スルーホールビア
31 スルーホール
Claims (9)
- カーボンファイバ材、および、無機フィラーを含有する樹脂組成物からなるコア層と、
前記コア層上に形成された絶縁層および当該絶縁層上に設けられた配線層を含む積層配線部と、
前記コア層内を厚み方向に延び、且つ、前記積層配線部における配線層と電気的に接続している導電部と、を備え、
前記カーボンファイバ材は、前記コア層の面内方向に広がるように設けられており、
前記コア層内には、配線層は設けられておらず、
前記積層配線部は、複数の絶縁層および複数の配線層が交互に積層してなる積層構造と、絶縁層に埋め込まれて前記複数の配線層から選択された隣接する配線層間を電気的に接続するビアとを含む、多層配線構造を有し、
前記積層配線部の前記絶縁層内には、織布補強材は設けられておらず、
無機フィラー添加による前記樹脂組成物における等方的熱膨張率低減効果に基づいて、前記コア層の面内方向における当該樹脂組成物と前記カーボンファイバ材との熱膨張率差が低減されることにより、当該コア層の厚み方向に前記樹脂組成物が熱膨張しようとする作用は抑制され、且つ、無機フィラー添加による前記等方的熱膨張率低減効果の直接的作用により、当該コア層の厚み方向に前記樹脂組成物が熱膨張しようとする作用は抑制されている、配線基板。 - 前記導電部は、前記コア層を厚み方向に貫通している、請求項1に記載の配線基板。
- カーボンファイバ材、および、無機フィラーを含有する樹脂組成物からなるコア層と、
前記コア層の表面側に形成された絶縁層および当該絶縁層上に設けられた配線層を含む第1の積層配線部と、
前記コア層の裏面側に形成された絶縁層および当該絶縁層上に設けられた配線層を含む第2の積層配線部と、
前記コア層を貫通し、且つ、前記第1の積層配線部における配線層および前記第2の積層配線部における配線層を電気的に接続している導電部と、を備え、
前記カーボンファイバ材は、前記コア層の面内方向に広がるように設けられており、
前記コア層内には、配線層は設けられておらず、
前記積層配線部は、複数の絶縁層および複数の配線層が交互に積層してなる積層構造と、絶縁層に埋め込まれて前記複数の配線層から選択された隣接する配線層間を電気的に接続するビアとを含む、多層配線構造を有し、
前記積層配線部の前記絶縁層内には、織布補強材は設けられておらず、
無機フィラー添加による前記樹脂組成物における等方的熱膨張率低減効果に基づいて、前記コア層の面内方向における当該樹脂組成物と前記カーボンファイバ材との熱膨張率差が低減されることにより、当該コア層の厚み方向に前記樹脂組成物が熱膨張しようとする作用は抑制され、且つ、無機フィラー添加による前記等方的熱膨張率低減効果の直接的作用により、当該コア層の厚み方向に前記樹脂組成物が熱膨張しようとする作用は抑制されている、配線基板。 - 前記導電部は、前記コア層の内部において絶縁膜で被覆されている、請求項1から3のいずれか1つに記載の配線基板。
- 前記コア層の厚み方向の熱膨張率は、20〜120ppm/℃(25℃)である、請求項1から4のいずれか1つに記載の配線基板。
- 前記コア層の面内方向の熱膨張率は、0〜17ppm/℃(25℃)である、請求項1から5のいずれか1つに記載の配線基板。
- 前記コア層における前記カーボンファイバ材の含有率は、30〜80vol%である、請求項1から6のいずれか1つに記載の配線基板。
- 前記無機フィラーの熱膨張率は、1〜20ppm/℃(25℃)である、請求項1から7のいずれか1つに記載の配線基板。
- 前記樹脂組成物における前記無機フィラーの含有率は、5〜50wt%である、請求項1から8のいずれか1つに記載の配線基板。
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