JP3817128B2 - 水性インク用染料定着剤およびインクジェット記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性染料を含有する水性インクを用いて記録画像を形成する、インクジェット記録媒体において用いることができる、水溶性染料定着剤およびその水溶性染料定着剤を使用したインクジェット記録媒体に関する。特に、水性インクの定着性に優れ、媒体上に記録された画像の解像度、耐水性および耐光性に優れた、インクジェット記録媒体用染料定着剤およびそのインクジェット記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピューターやデジタルカメラ等の発展と共に、表示される画像を銀塩系写真と同じように、印画紙上に記録することが行われるようになっている。このような記録に用いられる記録方法としては、インクジェット記録方式と称される画像形成方式が知られており、そのインクジェット記録方式は、騒音が少ない、高速記録が可能、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像−定着が不要などの種々の特徴があるために、多くの分野で利用されている。
インクジェット記録方式の原理は、溶液状のインク液を、電界や熱、圧力等を駆動源としてノズルより吐出させ、印画紙の受容層に移行せしめるものである。ここでインク液は染料と水、多価アルコール等よりなり、前記染料としては水溶性の直接染料や酸性染料が主として用いられている。
【0003】
また、印画紙は、基材上に染料を受容する受容層が形成されて構成され、種々のニーズに応じて基材としてコート紙、光沢紙、光沢フィルム、OHPフィルム等がある。受容層は、染料との親和性に優れた水溶性高分子、有機もしくは無機フィラー、その他の補助的物質よりなり、これらの成分は染料浸透性や画像のニジミを制御する点から適当な配合組成が調整されている。
このようなインクジェット記録方式によって得られる画像においては、最近、画質の進歩が著しく、ドット密度の改善と受容層の光沢度の向上とが相まって高精細化し、視認距離では銀塩写真に匹敵する程度の品位が得られるようになっている。
特開昭61−135785号公報(特公平4−15747号公報)には、染料受容層中に、合成シリカおよびアニオンが2価アニオンである炭酸イオンのみで構成されているハイドロタルサイトを併用することによって、基材の耐光性を向上させることが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところでインクジェット記録方式に用いられているインク液中の直接染料や酸性染料は、染料の染色理論によって示されるように、受容層へ移行した後は受容層の構成成分とのファンデルワールス力や水素結合等の相互作用によって当該受容層中に保持される。このため受容層上に形成された画像は、染料に対してより親和力の高い溶媒や樹脂等に接した場合、あるいはこれらの相互作用を打ち消すだけの熱エネルギーが供給された場合に染料の溶出や移行が誘発され、画像のボケが発生する等の不都合が生じる。つまり、受容層へ移行した染料は、銀塩系写真のような完全に安定した定着性を示さない状況にある。このことは、直接染料や酸性染料を用いる文具、印刷等に用いられる一般的な画像形成材料についても同様である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、基材上に積層された水性インク受容層を有するインクジェット記録媒体において、該水性インク受容層中に染料が安定して定着することができる定着剤の開発を目的として研究を重ねた。すなわち、染料が受容層へ移行し定着しても、染料に対して親和力の高い溶媒や樹脂などを接したりあるいは熱が供給されても染料の溶出や移動が誘発されない定着剤を開発すべく研究を進めた。
本発明者らは、定着剤としてハイドロタルサイト化合物に着眼し、種々のハイドロタルサイト化合物を合成し、染料の定着安定性について調べた。
【0006】
その結果、ハイドロタルサイト化合物を構成している金属の種類とアニオンの種類が染料の定着安定性に密接に関係していることおよびアニオンとして、ケイ酸アニオンと硫酸イオン、またはケイ酸アニオンを有しているリチウム金属含有ハイドロタルサイト化合物は、染料に対して極めて安定した定着性を有していることが見出された。さらにこのハイドロタルサイト化合物を定着剤として使用すると高精細な画像の記録媒体が得られることも見出された。またアニオンとしてケイ酸アニオンと硫酸イオンまたはケイ酸アニオンを一定割合含有しかつ特定の細孔物性を有するハイドロタルサイト化合物は、さらに高度に安定した定着性を有していることが見出された。
【0007】
本発明によれば、基材上に積層された水性インク受容層を有するインクジェット記録媒体に使用するための、水性インク受容層中の染料定着剤であって、該染料定着剤は下記式(I)
LiAl2(OH)6(A1 n-)c(A2 m-)d・zH2O (I)
〔但し、式中A1 n-は、n価のケイ酸アニオンおよび硫酸イオン(SO4 2-)、またはn価のケイ酸アニオンを示し、n価のケイ酸アニオンとしてはSiO3 2-、HSiO3 -、Si2O5 2-およびHSi2O5 -からなる群から選ばれるアニオンを示し、A2 m-は、CO3 2-、NO3 -、Cl-およびOH-からなる群から選ばれるアニオンを示し、zは、式0<z<4を満足し、cおよびdは、式0.5<nc+md<1.1を満足し、そして
全アニオン(A 1 n- +A 2 m - )中のケイ酸アニオンおよび硫酸イオン、またはケイ酸アニオンの割合が10〜98モル%である]
で表されるハイドロタルサイト化合物である水性インク用染料定着剤が提供される。さらに本発明によれば、前記特定のアニオンを含有するハイドロタルサイト化合物を染料定着剤として使用したインクジェット記録媒体が提供される。
【0008】
以下、本発明の水性インク用染料定着剤およびそれを使用したインクジェット記録媒体についてさらに詳細に説明する。
本発明の水性インク用染料定着剤として使用されるハイドロタルサイト化合物は、リチウム金属を含有するハイドロタルサイト化合物であってかつそれを形成するアニオンとして、ケイ酸アニオンおよび硫酸イオン、またはケイ酸アニオンを含有している点に特徴を有している。具体的には、全アニオン中、ケイ酸アニオンおよび硫酸イオン、またはケイ酸アニオンの割合が10〜98モル%、好ましくは20〜98モル%であるハイドロタルサイト化合物が一層有利である。
ここでケイ酸アニオンとしてはSiO3 2-、HSiO3 -、Si2O5 2-またはHSi2O5 -を意味し、硫酸イオンはSO4 2-を意味する。
【0009】
本発明において使用するハイドロタルサイト化合物は、アニオンとして、ケイ酸アニオンおよび硫酸イオンを含む場合、ケイ酸アニオンと硫酸イオンの合計に対してケイ酸アニオンの割合が5〜100モル%、好ましくは10〜100モル%、特に好ましくは20〜100モル%であることが望ましい。
また使用するハイドロタルサイト化合物は、レーザー回折散乱法で測定された平均粒径が0.1〜10μm、好ましくは0.5〜10μmであるのが有利である。
【0010】
本発明において使用するハイドロタルサイト化合物は下記式(I)で表される。
LiAl2(OH)6(A1 n-)c(A2 m-)d・zH2O (I)
〔但し、式中A1 n-は、n価のケイ酸アニオンおよび硫酸イオン(SO4 2-)、またはn価のケイ酸アニオンを示し、n価のケイ酸アニオンとしてはSiO3 2-、HSiO3 -、Si2O5 2-およびHSi2O5 -からなる群から選ばれるアニオンを示し、A2 m-は、CO3 2-、NO3 -、Cl-およびOH-からなる群から選ばれるアニオンを示し、zは、式0<z<4を満足し、cおよびdは、式0.5<nc+md<1.1を満足し、そして全アニオン(A 1 n- +A 2 m - )中のケイ酸アニオンおよび硫酸イオン、またはケイ酸アニオンの割合が10〜98モル%である。〕前述したように本発明において使用するハイドロタルサイト化合物は、構成金属としてリチウム金属を含有しかつ全アニオン中、特定のアニオンを一定割合含有している点に特徴を有している。
【0011】
ここで前記式(I)は、構成する金属はリチウム(Li)およびアルミニウム(Al)であり、両者の原子比は、Li/Al2で表して1として示されている。しかし前記式(I)のハイドロタルサイト化合物を合成した場合、分析すると構成金属のリチウム金属の含有量は、合成条件などによってLi/Al2=1と正確な値とならない場合があり、Liの割合は、多少増減が起こる。Li/Al2の割合が多少増減しても、本発明のハイドロタルサイト化合物は、そのアニオンの特性を保持しかつ染料定着性能を保持する限り、本発明のハイドロタルサイト化合物の範疇に包含される。例えばリチウム金属の含有割合が式0.8<Li/Al2<1.1の範囲、好ましくは0.85<Li/Al2<1.05の範囲を満足する限り、前記式(I)のハイドロタルサイト化合物の範疇に含まれる。
【0012】
前記式(I)において、全アニオンは(A1 n-+A2 m-)であり、その全アニオンに対して、A1 n-のケイ酸アニオンおよび硫酸イオン、またはケイ酸アニオンの割合(A1 n/(A1 n-+A2 m-))が10〜98モル%、好ましくは20〜98モル%含有するハイドロタルサイト化合物が使用される。全アニオンをA1 nに置換したものを得ることは困難であり、そのため、全アニオン中のA1 nの上限は98モル%となる。一方A1 nの割合が10モル%より少なくなると、染料の定着安定性が低い定着剤が得られるので望ましくない。
【0013】
本発明において染料吸着剤としてのケイ酸アニオンおよび硫酸イオン、またはケイ酸アニオンを含有する、前記式(I)のハイドロタルサイト化合物は、染料分子を層間内に保持することが可能となり、染料分子は安定化し、インク吸収性、解像度、耐水性および耐光性に優れた画像が得られるようになる。
本発明のインクジェット記録媒体において、水性インク用染料定着剤以外の塗布液構成物質について説明する。基材上に染料受容層を形成するために、本発明の染料定着剤を含む塗布液が用いられる。塗布液は主要成分として、該染料定着剤以外に、それ自体知られている高分子接着剤、各種添加剤、溶媒等を含有している。さらに、必要に応じて無機または有機顔料を含有させてもよい。また、本発明のインクジェット記録媒体は、1層であっても多層であってもよく、密着性を上げる目的で基材へのコロナ処理や、各種アンカーコート処理を行うことができる。受容層は単層または必要により多層に形成できる。
【0014】
その際、受容層には、必要に応じて助剤的に無機または有機の顔料を併用することができる。例えば、合成シリカ、コロイダルシリカ、カチオン性コロイダルシリカ、アルミナゾル、擬ベーマイトゲル、タルク、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化錫、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、サチンホワイト、硫酸バリウム、二酸化チタン、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、スメクタイト、リトポン、雲母、ゼオライト、珪藻土等の無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、マイクロカプセル系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックピグメント、メラミン樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアミン系プラスチックピグメント、アクリルニトリル系プラスチックピグメント等の有機顔料などの一般塗工紙分野でそれ自体公知の各種顔料を適宜選択して使用することができる。
【0015】
高分子接着剤としては、例えば、(a)澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン化澱粉等の各種澱粉類;(b)メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;(c)ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等のタンパク質類;(d)アガロース、グアーガム、キトサン、アルギン酸ソーダ等の天然または半合成系接着剤;(e)ポリビニルアルコールおよびカチオン性ポリビニルアルコール、珪素含有ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール誘導体;(f)ポリエチレンイミン系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸またはその共重合体、無水マレイン酸系樹脂、アクリルアミド系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の合成系、水溶性または溶媒可溶性接着剤;(g)スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系ラテックス、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス類、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス類、あるいはこれらの各種重合体のアニオン性基または/およびカチオン性基等の官能基含有変性重合体ラテックス類、および(h)ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩等に代表される、いわゆる導電性樹脂類等、当該技術分野で公知の高分子接着剤が単独、あるいは併用して用いられる。
【0016】
さらに定着性を阻害しない範囲で、各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、分散剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、耐水化剤、界面活性剤、流動性改良剤、熱安定剤、抑泡剤、発泡剤、離難剤、pH調製剤、浸透剤、湿潤剤、熱ゲル化剤、滑剤、着色剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、架橋剤等、一般的に用いられている従来公知の添加剤などがある。
塗布液の溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコールおよびプロピルアルコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジオキサン等のグリコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等の低級アルキルエステル類、アセトニトリル、ジメチルアセトアミドのような水溶性有機溶媒および水が好ましい。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
【0017】
基材は、光透過性を要しない記録媒体では、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、板紙、合成樹脂ラミネート紙、金属蒸着紙、合成紙、白色フィルム等を用い、光透過性記録媒体としては、ガラス、OHPシート等のポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムを用いる。染料定着剤の量としては、受容層を構成する固形分(染料定着剤、高分子接着剤、固形添加剤、顔料等)の10〜90重量%、好ましくは15〜90重量%である。染料定着剤の添加量は、多すぎると柔軟性に欠けた受容層になり、少なすぎると染料定着性能が劣る。
【0018】
水性インク受容層を形成する方法および手段については、特に限定はされないが、基材の材質に応じて適当な方法を採ればよく、例えば最も一般的な方法である基材への塗布方法は、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、ブラッシュコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、キャストコーター、ダイコーター、リップコーター、サイズプレス、スプレー装置等を用いて行う方法である。
【0019】
また、上記のように基材上に染料受容層を形成することにより記録媒体を得る方法の他には、染料受容層と基材が一体となった記録媒体、例えば紙のようなパルプの場合、互いに交絡した繊維とその繊維間に染料定着剤を担持させる方法もある。表面を含む基材自体の中に本発明による染料定着剤を含有させることによっても優れた記録画像形成材料を得ることができる。
上記染料定着剤、高分子接着剤、各種添加剤、顔料、溶媒を用いて塗布液の調整が行われる。
【0020】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
参照例中、物性の測定および評価は下記記載に基いて行った。
(1)ハイドロタルサイト化合物(粒子)のBET比表面積(m2/g)、全細孔容積(ml/g)、平均細孔半径(nm)は、測定試料を前処理として110℃、2.7×10-1Pa以下の圧力で3時間保持した後、日本ベル社製ガス吸着装置BELSORP 28SAでN2ガスの吸・脱着曲線より求めた。全細孔容積は、細孔半径1〜100nmの細孔容積の和である。
(2)ハイドロタルサイト化合物(粒子)の平均粒径(μm)は、HORIBA製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910により求めた。
(3)ハイドロタルサイト化合物(粒子)の単位層間隔(dオングストローム)は、Rigaku製X線回折装置RINT 2200Vにより求めた。
【0021】
参照例1
試薬特級の硫酸リチウム(Li2SO4・H2O)10.24gと1.0モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液0.16リットルとを脱イオン水に溶解して全量を0.4リットルに調整する。これを1リットルの容器に入れて攪拌機で攪拌しながら、室温下で3規定の水酸化ナトリウム水溶液0.32リットルを注加して約30分間攪拌した。次に懸濁液を加熱して90℃で12時間反応させた。冷却後[懸濁液のpHは11.39(29.3℃)であった]、濾過し洗浄を行った。2リットルの容器に脱イオン水1リットルと洗浄物とを入れてホモミキサーで十分に分散懸濁後90℃に加熱する。3号水ガラス液(SiO2として0.08モル)を加えて90℃で1時間イオン交換反応させた。冷却後濾過、洗浄、乾燥(95℃で20時間)、粉砕(100メッシュでし過)を行って下記式で示されるハイドロタルサイト化合物を得た。下記式は、分析結果に基づいて導き出した組成式である。このハイドロタルサイト化合物の物性を下記表1に示す。
Li0.94Al2(OH)6(HSi2O5)0.26(SO4)0.27(CO3)0.03・1.3H2O
【0022】
参照例2
試薬特級の硫酸リチウム(Li2SO4・H2O)10.24gと1.0モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液0.16リットルとを脱イオン水に溶解して全量を0.4リットルに調整する。これを1リットルの容器に入れて攪拌機で攪拌しながら、室温下で3規定の水酸化ナトリウム水溶液0.32リットルを注加し約30分間攪拌した。次に懸濁液を加熱して90℃で12時間反応させた。冷却後[懸濁液のpHは11.44(29.5℃)であった]濾過し洗浄を行った。2リットルの容器に脱イオン水1リットルと洗浄物とを入れてホモミキサーで十分に分散懸濁後90℃に加熱する。3号水ガラス液(SiO2として0.16モル)を加えて90℃で1時間イオン交換反応させた。冷却後濾過、洗浄、乾燥(95℃で20時間)、粉砕(100メッシュでし過)を行って下記式で示されるハイドロタルサイト化合物を得た。下記式は、分析結果に基づいて導き出した組成式である。このハイドロタルサイト化合物の物性を下記表1に示す。
Li0.92Al2(OH)6(HSi2O5)0.51(SO4)0.15(CO3)0.03・1.1H2O
【0023】
参照例3
試薬特級の硫酸リチウム(Li2SO4・H2O)10.24gと1.0モル/リットル濃度の硫酸アルミニウム水溶液0.16リットルとを脱イオン水に溶解して全量を0.4リットルに調整する。これを1リットルの容器に入れて攪拌機で攪拌しながら、室温下で3規定の水酸化ナトリウム水溶液0.32リットルを注加して約30分間攪拌した。次に懸濁液を加熱して90℃で12時間反応させた。冷却後[懸濁液のpHは12.05(26.3℃)であった]、濾過し洗浄を行った。2リットルの容器に脱イオン水1リットルと洗浄物とを入れてホモミキサーで十分に分散懸濁後90℃に加熱する。3号水ガラス液(SiO2として0.26モル)を加えて90℃で1時間イオン交換反応させた。冷却後濾過、洗浄、乾燥(95℃で20時間)、粉砕(100メッシュでし過)を行って下記式で示されるハイドロタルサイト化合物を得た。下記式は、分析結果に基づいて導き出した組成式である。このハイドロタルサイト化合物の物性を下記表1に示す。
Li0.94Al2(OH)6(HSi2O5)0.61(SO4)0.17(CO3)0.02・1.7H2O
【0024】
参照例4
層間アニオンが実質的にCO3 2-からなるハイドロタルサイト化合物(協和化学工業社製、商品名DHT4)は化学式で示される。
Mg4.28Al2(OH)12.56(CO3)0.99(SO4)0.009・3.5H2O
【0025】
参照例5
市販の合成シリカ(商品名;ファインシ−ル、トクヤマ(株)製)の物性を下記表1に示す。
【0026】
実施例1〜3および比較例1〜3
(インクジェット記録媒体の評価)
インクジェット記録媒体の調製:
前記参照例1〜3および参照例4で得られたハイドロタルサイト化合物および合成シリカ(参照例5)を使用して下記の方法に従ってインクジェット記録媒体を調製した。
各種ハイドロタルサイト化合物または合成シリカ100重量部に対して、高分子接着剤としてポリビニルアルコール40重量部、添加剤としてカチオン性樹脂のポリエチレンイミン5重量部、中和剤としてリン酸0.02重量部を添加混合し、固形分濃度として18重量%の塗布液を得た。この塗布液をNo.20のバーコーターを用いて紙に塗布、乾燥してインクジェット記録媒体を得た。
インクジェット印刷
インクジェット記録装置(商品名;BJ F200/キャノン(株)製)を用いて、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)およびブラック(B)のそれぞれの印刷を行った。
【0027】
印刷特性の評価
(1)インク吸収性(発色性)、(2)解像度、(3)耐水性および(4)耐光性の評価はそれぞれ下記に従って行った。
(1)インク吸収性(発色性)
印画シート上に形成されたフルカラー画像を、目視で観察した。評価は、以下の5段階で行った。
5;全ての色について濃度が濃く、かつ鮮明である。
4;全ての色について濃度が濃い。
3;少し濃度の薄い色もあるが、事実上問題ない。
2;少し濃度の薄い色がある。
1;全ての色について濃度が薄く、画像が鮮明でない。
(2)解像度
光学顕微鏡(BHSM−313MU/オリンパス(株)製)でドットの観察をした。評価は、以下の5段階で行った。
5;ドットの形状が非常にシャープである。
4;ドットの形状がシャープである。
3;ドットの形状が一部壊れているが、事実上問題ない。
2;ドットの形状を一部保持している。
1;ドットの形状を保持していない。
(3)耐水性
印字面を1分間水に浸し、乾燥した後のニジミの評価を行った。評価は、以下の5段階で行った。
5;印字部分の染料が流れ出さず、全くにじんでいない。
4;印字部分の染料が少し流れ出したが、ほどんどにじんでいない。
3;印字部分の染料が少し流れ出し、わずかににじんでいるが事実上問題ない。
2;印字部分の染料が流れ出し、にじんで印字が確認しにくい。
1;印字部分の染料が流れ出し、にじみもひどく印字が確認できない。
(4)耐光性
シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(B)のベタ印刷を行い、サンシャインウェザーメーター(WEL−SUN−HC−B型/スガ試験機(株)製)を用いて、5級ブルースケールが標準退色するまで露光し、測色色差計(ZE−2000/日本電色工業製)を用いて測定を行い、耐光性の評価を行った。評価は、ΔEの値に応じて行った。
◎;0≦ΔE≦5
○;5<ΔE≦10
△;10<ΔE≦20
×;ΔE>20
【0028】
印刷特性の評価結果
評価結果を下記表2に示す。ただし比較例3は市販のインクジェット専用紙(スーパーハイグレードKJ−1210:コクヨ製)を用いた。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
Claims (5)
- 基材上に積層された水性インク受容層を有するインクジェット記録媒体に使用するための、水性インク受容層中の染料定着剤であって、該染料定着剤は下記式(I)
LiAl2(OH)6(A1 n-)c(A2 m-)d・zH2O (I)
〔但し、式中A1 n-は、n価のケイ酸アニオンおよび硫酸イオン(SO4 2-)、またはn価のケイ酸アニオンを示し、n価のケイ酸アニオンとしてはSiO3 2-、HSiO3 -、Si2O5 2-およびHSi2O5 -からなる群から選ばれるアニオンを示し、A2 m-は、CO3 2-、NO3 -、Cl-およびOH-からなる群から選ばれるアニオンを示し、zは、式0<z<4を満足し、cおよびdは、式0.5<nc+md<1.1を満足し、そして
全アニオン(A 1 n- +A 2 m - )中のケイ酸アニオンおよび硫酸イオン、またはケイ酸アニオンの割合が10〜98モル%である]
で表されるハイドロタルサイト化合物である水性インク用染料定着剤。 - 該ハイドロタルサイト化合物は、全アニオン中のケイ酸アニオンおよび硫酸イオン、またはケイ酸アニオンの割合が20〜98モル%である請求項1記載の水性インク用染料定着剤。
- 該ハイドロタルサイト化合物は、全アニオン中のケイ酸アニオンおよび硫酸イオンの割合が10〜98モル%であり、かつケイ酸アニオンと硫酸イオンの合計に対してケイ酸イオンの割合が5〜100モル%である請求項1記載の水性インク用染料定着剤。
- 該ハイドロタルサイト化合物は、平均粒径が0.1〜10μmである請求項1記載の水性インク用染料定着剤。
- 基材上に積層された水性インク受容層を有するインクジェット記録媒体であって、該水性インク受容層中の染料定着剤は、請求項1記載の染料定着剤であるインクジェット記録媒体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000335368A JP3817128B2 (ja) | 1999-11-16 | 2000-11-02 | 水性インク用染料定着剤およびインクジェット記録媒体 |
Applications Claiming Priority (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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