JP3811985B2 - 液晶配向剤および液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶配向剤に関する。さらに詳しくは、液晶配向性が良好で、液晶表示素子において電圧の印加を解除してから残像が消去されるまでの時間(以下、「残像消去時間」という。)が短く、液晶分子に所期の大きさのプレチルト角を安定的に発現させることができる液晶配向膜を形成し得る液晶配向剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、液晶表示素子としては、透明導電膜が設けられている基板の当該表面に液晶配向膜を形成して液晶表示素子用基板とし、その2枚を対向配置して、その間隙内に正の誘電異方性を有するネマチック型液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、当該液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにした、いわゆるTN(Twisted Nematic)型液晶セルを有するTN型液晶表示素子が知られている。また、最近においては、TN型液晶表示素子に比してコントラストが高くて、その視角依存性の少ないSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子が開発されている。このSTN型液晶表示素子は、ネマチック型液晶に光学活性物質であるカイラル剤をブレンドしたものを液晶として用い、当該液晶分子の長軸が基板間で180度以上にわたって連続的に捻れる状態となることにより生じる複屈折効果を利用するものである。
これらの液晶表示素子における液晶分子の配向性は、通常、重合体より構成される被膜の表面にラビング処理などの配向処理を施すことによって形成される液晶配向膜により発現されるものである。ここに、上記被膜を構成する重合体としては、ポリアミック酸およびポリイミドが知られており、これらの重合体を溶媒に溶解してなる液晶配向剤が一般的に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の液晶配向剤により形成された液晶配向膜を備えた液晶表示素子においては、画像表示時(電圧印加時)に発生するイオン性電荷が液晶配向膜に吸着され、画像消去後(電圧印加の解除後)においても液晶配向膜から脱着されにくいため、電圧解除後における液晶配向膜に電圧が残留蓄積され、この残留電圧に起因して、電圧印加の解除後における表示画面に残像が生じ、電圧の印加時と解除時における明暗の差が小さくなるために良好なコントラストが得られないという問題がある。また、液晶表示素子における液晶分子のプレチルト角が、液晶配向膜のラビング条件の変化に伴って大きく変化し、液晶分子のプレチルト角を所期の大きさに制御することが極めて困難であるという問題がある。
本発明の目的は、液晶配向性が良好で、残像消去時間が短く、液晶分子に所期の大きさのプレチルト角を安定的に発現させることができる液晶配向膜を形成し得る液晶配向剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の液晶配向剤は、下記一般式(I)
【0005】
【化3】
【0006】
〔式中、R1は4価の有機基を示す。〕
【0007】
で表されるテトラカルボン酸二無水物ならびに下記式(1)、(2)、(3)および(4)
【0008】
【化4】
【化9】
【0010】
で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物(以下、「特定ジアミン化合物」ともいう。)を含有するジアミン化合物とを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸A」ともいう。)および/または該ポリアミック酸を脱水閉環させて得られるイミド化重合体(以下、「イミド化重合体B」ともいう。)を含有することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
<テトラカルボン酸二無水物>
本発明に用いられる上記一般式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)などの芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0012】
これらのうち、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物などが好ましく、特に好ましいものとして、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3,−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物およびピロメリット酸二無水物を挙げることができる。
【0013】
<特定ジアミン化合物>
本発明に用いられる特定ジアミン化合物は、下記式(1)、(2)、(3)および(4)で表される化合物である。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0014】
【化5】
【0015】
【化6】
【0016】
<その他のジアミン化合物>
本発明に用いられるポリアミック酸の合成反応に供されるジアミン化合物としては、特定ジアミン化合物以外のジアミン化合物を、本発明の効果が損なわれない範囲において併用することが可能である。
併用することのできるジアミン化合物としては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどの芳香族ジアミン;
ジアミノテトラフェニルチオフェンなどの芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7 ]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族および脂環式ジアミンを挙げることができる。これらのジアミン化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0017】
これらのうち、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどが好ましく、特に好ましいものとして、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリンを挙げることができる。ここで、ポリアミック酸の合成反応に併用されるその他のジアミン化合物の使用割合は、全ジアミンの使用量に対して0〜99モル%、好ましくは70〜99モル%である。
【0018】
<ポリアミック酸A>
本発明に用いられるポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、有機溶媒中において、通常0〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度条件下で1〜48時間にわたって行われる。この合成反応に用いられる有機溶媒としては、反応生成物であるポリアミック酸を溶解し得るものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を挙げることができる。有機溶媒の使用量は、通常、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量が、反応溶液の全量に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
【0019】
なお、この有機溶媒には、ポリアミック酸の貧溶媒であるアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類などを、生成するポリアミック酸が析出しない程度の割合で併用することができる。かかる貧溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−エチル−3−メトキシブタノール、2−メチル−2−メトキシブタノール、2−エチル−2−メトキシブタノール、3−メチル−3−エトキシブタノール、3−エチル−3−エトキシブタノール、2−メチル−2−メトキシブタノール、2−エチル−2−エトキシブタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを挙げることができる。
【0020】
<イミド化重合体B>
本発明の液晶配向剤を構成するポリアミック酸のイミド化重合体は、下記方法(1)〜(2)により調製することができる。なお、イミド化重合体は主としてポリイミドであるが、下記方法(1)〜(2)によれば、ポリイミドと共にポリイソイミドが生成する場合があり、「イミド化重合体」には「ポリイミド」と「ポリイソイミド」とが含まれる。
【0021】
方法(1):
上記のポリアミック酸を加熱する方法。この方法における加熱温度は、通常60〜250℃とされ、好ましくは100〜170℃とされる。加熱温度が60℃未満では脱水閉環が十分に進行せず、加熱温度が250℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下することがある。
方法(2):
上記のポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤およびイミド化触媒を添加し必要に応じて加熱することにより、脱水閉環(イミド化)させる方法。この方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して1.5〜20モルとするのが好ましい。また、イミド化触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの第3級アミンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。イミド化触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.5〜10モルとするのが好ましい。なお、脱水閉環に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環の反応温度は、通常0〜180℃、好ましくは60〜150℃とされる。上記脱水閉環の反応条件をコントロールすることによって、イミド化率を任意に調整することができる。
また、本発明で用いられるポリアミック酸のイミド化重合体と同一の構造を持つ重合体を得る他の方法として、テトラカルボン酸二無水物とジイソシアネート化合物とを混合し、必要に応じて加熱することによって縮合させる方法が挙げられる。この方法に使用されるジイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート化合物;ジフェニルメタン−4,4' −ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4' −ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4' −ジイソシアネート、ジフェニルスルフィド−4,4' −ジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタン−p,p' −ジイソシアネート、2,2−ジフェニルプロパン−p,p' −ジイソシアネート、2,2−ジフェニル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−p,p' −ジイソシアネート、2,2−ジフェニルブタン−p,p' −ジイソシアネート、ジフェニルジクロロメタン−4,4' −ジイソシアネート、ジフェニルフルオロメタン−4,4' −ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4' ジイソシアネート、N−フェニル安息香酸アミド−4,4' −ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物を挙げることができ、これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なお、この方法には特に触媒は必要とされず、反応温度は、通常50〜200℃、好ましくは100〜160℃である。
【0022】
本発明の液晶配向剤を構成するポリアミック酸およびポリアミック酸のイミド化重合体は、末端修飾型のものであってもよい。この末端修飾型のポリアミック酸およびポリアミック酸のイミド化重合体は、その分子量が好適な範囲に調節され、液晶配向剤に含有させることにより、本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性などを改善することができる。このような末端修飾型のものは、ポリアミック酸またはポリアミック酸のイミド化重合体を合成する際に、酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを反応系に添加することにより合成することができる。
ここで、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物、n−オクタデシルサクシニック酸無水物などを挙げることができる。
また、モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができ、モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを挙げることができる。
【0023】
本発明の液晶配向剤を構成するポリアミック酸およびポリアミック酸のイミド化重合体は、その対数粘度(ηln)の値が通常0.05〜10dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜5dl/gとされる。なお、この明細書における対数粘度(ηln)の値は、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として用い、濃度が0.5g/100ミリリットルである溶液について30℃で粘度の測定を行い、下記数式(i)によって求められるものである。
【0024】
【数1】
【0025】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、ポリアミック酸および/またはポリアミック酸のイミド化重合体が有機溶媒中に溶解含有されて構成される。
本発明の液晶配向剤におけるポリアミック酸および/またはポリアミック酸のイミド化重合体の含有割合(重合体濃度)は、粘性、揮発性などを考慮して選択されるが、溶液全体に対して好ましくは1〜10重量%の範囲とされる。この濃度が1重量%未満である場合には、塗膜(被膜)の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができず、一方、この濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得難く、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる場合がある。
なお、ポリアミック酸および/またはポリアミック酸のイミド化重合体を溶解させる有機溶媒としては、これらを溶解できるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した溶媒を挙げることができる。また、ポリアミック酸の合成反応の際に併用することができるものとして例示した貧溶媒も適宜選択して併用することができる。
【0026】
本発明の液晶配向剤には、基板に対する密着性をさらに向上させることを目的として官能性シラン含有化合物が含有されていてもよい。かかる官能性シラン含有化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシイシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0027】
<液晶表示素子>
本発明の液晶配向剤を用いて得られる液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法などの方法によって塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより被膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。また、基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2 )からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In2 O3 −SnO2 )からなるITO膜などを用いることができ、これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や予めマスクを用いる方法が用いられる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜と液晶配向剤の被膜との接着性をさらに良好にするために、基板の該表面に、官能性シラン含有化合物、官能性チタン含有化合物などを予め塗布することもできる。また加熱温度は80〜250℃とされ、好ましくは120〜250℃とされる。形成される被膜の膜厚は、通常0.001〜1μmであり、好ましくは0.005〜0.5μmである。なお、ポリアミック酸を含有する本発明の液晶配向剤は、塗布後に有機溶媒を除去することによって液晶配向膜となる被膜を形成するが、さらに加熱することによって脱水閉環を進行させ、イミド化された被膜とすることもできる。
【0028】
(2)液晶配向剤によって形成された被膜表面を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を行う。これにより、液晶分子の配向能が被膜に付与されて液晶配向膜となる。また、ラビング処理による方法以外に、被膜表面に偏光紫外線を照射して配向能を付与する方法や、一軸延伸法、ラングミュア・ブロジェット法などで被膜を得る方法などにより、液晶配向膜を形成することもできる。なお、ラビング処理時に発生する微粉体(異物)を除去して表面を清浄な状態とするために、形成された液晶配向膜をイソプロピルアルコールなどによって洗浄することが好ましい。また、形成された液晶配向膜の表面に紫外線を部分的に照射することにより、プレチルト角を変化させる処理(例えば特開平6−222366号公報、特開平6−281937号公報参照)、形成された液晶配向膜の表面にレジスト膜を部分的に形成し、先行のラビング処理とは異なる方向にラビング処理を行った後、前記レジスト膜を除去して、液晶配向膜の配向能を変化させるような処理(例えば特開平5−107544号公報参照)を行うことによって、作製される液晶表示素子の視野角特性を改善することもできる。
【0029】
(3)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの液晶配向膜における配向処理方向、すなわちラビング方向が直交または逆平行となるように、2枚の基板を、間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面側に、偏光板を、その偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致または直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子が得られる。
【0030】
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶としては、ネマティック型液晶およびスメクティック型液晶を挙げることができ、その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶や商品名「C−15」「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶も使用することができる。
また、液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において調製された液晶配向剤の評価項目および評価方法を下記に示す。
〔液晶の配向性〕
液晶表示素子に電圧を印加し解除したときの液晶セル中における配向不良(異常ドメイン)の有無を偏光顕微鏡で観察し、異常ドメインのない場合を「良好」と判定した。
〔残像消去時間〕
液晶表示素子に10Vの直流電圧を1時間印加した後、当該電圧の印加を解除し、表示画面を目視により観察して、電圧の印加を解除してから画面上の残像が消去されるまでの時間を測定した。
〔液晶分子のプレチルト角〕
「T.J.Schffer,et al.,J.Appl.Phys.,vol.19,2013(1983)」に記載の方法に準拠し、He−Neレーザー光を用いる結晶回転法により行った。
【0032】
合成例1
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.4g、ジアミン化合物として上記式(1)で表される特定ジアミン化合物5.23gおよび4,4’−ジアミノジフェニルメタン17.8gとを、N−メチル−2−ピロリドン450gに溶解させ、この溶液を60℃で6時間反応させた。次いで、得られた反応溶液を大過剰のメチルアルコールに注いで反応生成物を沈澱させた。その後、固形物を分離してメチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、対数粘度(ηln)が0.95dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(A1)」とする。〕40.8gを得た。
【0033】
合成例2
合成例1で得られたポリアミック酸(A1)25.0gをN−メチルピロリドン450gに溶解させ、ピリジン4.5gと無水酢酸5.8gとを添加して115℃で4時間脱水閉環させた。次いで、合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)が0.96dl/gであるイミド化重合体〔これを「ポリイミド(B1)」とする。〕19.1gを得た。
【0034】
合成例3
テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物21.8gを用いたこと以外は、合成例1と同様にして対数粘度(ηln)が1.50dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(A2)」とする。〕37.8gを得た。
【0035】
合成例4
上記式(1)で表される特定ジアミン化合物に代えて、上記式(2)で表される特定ジアミン化合物4.94gを用いたこと以外は、合成例1と同様にして対数粘度(ηln)0.90dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(A3)」とする。〕40.2gを得た。その後、ポリアミック酸(A1)に代えてポリアミック酸(A3)25.0gを用いたこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)が0.83dl/gであるイミド化重合体〔これを「ポリイミド(B3)」とする。〕20.0gを得た。
【0036】
合成例5
上記式(1)で表される特定ジアミン化合物に代えて、上記式(3)で表される特定ジアミン化合物5.21gを用いたこと以外は、合成例1と同様にして対数粘度(ηln)1.01dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(A4)」とする。〕41.0gを得た。その後、ポリアミック酸(A1)に代えてポリアミック酸(A4)25.0gを用いたこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)が0.98dl/gであるイミド化重合体〔これを「ポリイミド(B4)」とする。〕21.0gを得た。
【0037】
合成例6
上記式(1)で表される特定ジアミン化合物に代えて、上記式(4)で表される特定ジアミン化合物4.97gを用いたこと以外は、合成例1と同様にして対数粘度(ηln)0.80dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(A5)」とする。〕39.0gを得た。その後、ポリアミック酸(A1)に代えてポリアミック酸(A5)25.0gを用いたこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)が0.65dl/gであるイミド化重合体〔これを「ポリイミド(B5)」とする。〕19.5gを得た。
【0038】
比較合成例1
ジアミン化合物として4,4’−ジアミノジフェニルメタン19.8gを用いたこと以外は、合成例1と同様にして対数粘度(ηln)が1.20dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(a1)」とする。〕40.2gを得た。その後、ポリアミック酸(A1)に代えてポリアミック酸(a1)25.0gを用いたこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)が1.20dl/gであるイミド化重合体〔これを「ポリイミド(b1)」とする。〕30.1gを得た。
【0039】
比較合成例2
上記式(1)で表される特定ジアミン化合物に代えて、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン5.18gを用いたこと以外は、合成例1と同様にして対数粘度(ηln)が1.26dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(a2)」とする。〕41.0gを得た。その後、ポリアミック酸(A1)に代えてポリアミック酸(a2)25.0gを用いたこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)が1.50dl/gであるイミド化重合体〔これを「ポリイミド(b2)」とする。〕31.9gを得た。
【0040】
比較合成例3
ジアミン化合物として下記式(5)で表されるジアミン5.20gを用いたこと以外は、合成例1と同様にして対数粘度(ηln)が0.95dl/gであるポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(a3)」とする。〕40.6gを得た。その後、ポリアミック酸(A1)に代えてポリアミック酸(a3)25.0gを用いたこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)が0.96dl/gであるイミド化重合体〔これを「ポリイミド(b3)」とする。〕19.0gを得た。
【0041】
【化7】
【0042】
実施例1
(1)液晶配向剤の調製:
合成例2で得られたポリイミド(B1)をγ−ブチロラクトンに溶解させて固形分濃度が4.0重量%の溶液を得、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、本発明の液晶配向剤を調製した。
【0043】
(2)液晶表示素子の作製〔ラビング条件(I)〕:
▲1▼ 厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、上記のようにして調製された液晶配向剤を塗布用印刷機を用いて塗布し、180℃で1時間乾燥することにより乾燥膜厚0.08μmの被膜を形成した。
▲2▼ 形成された被膜の表面を、ナイロン製の布を巻き付けたロールを備えたラビングマシーンを用いてラビング処理を施すことにより液晶配向膜を形成した。ここに、ラビング処理条件は、毛足押し込み長0.2mm、ロールの回転数500rpm、ステージの移動速度1cm/秒とした(この条件を、「ラビング条件(I)」とする)。ラビング処理後、形成された液晶配向膜をイソプロピルアルコールによって洗浄した。
▲3▼ 上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの基板の外縁部に、直径17μmの酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂系接着剤をスクリーン印刷法により塗布した後、それぞれの液晶配向膜におけるラビング方向が直交するように2枚の基板を間隙を介して対向配置し、外縁部同士を圧着して接着剤を硬化させた。その後、当該2枚の基板の表面および外縁部の接着剤により区画されたセルギャップ内に、ネマティック型液晶「MLC−2001」(メルク社製)を注入充填し、次いで、注入孔をエポキシ系接着剤で封止して液晶セルを構成した。その後、液晶セルの外表面に、偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致するように偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子を作製した。
【0044】
(3)液晶表示素子の作製〔ラビング条件(II)〕:
毛足押し込み長を0.6mmに変更した(この条件を、「ラビング条件(II)」とする)以外は、上記(2)と同様にして液晶表示素子を作製した。
(4)液晶表示素子の評価:
ラビング条件(I)の下で得られた液晶配向膜を用いて作製された液晶表示素子は、異常ドメインは認められず、液晶の配向性は良好であった。また、この液晶表示素子の残像消去時間は0.20秒間と極めて小さいものであった。さらに、ラビング条件(I)およびラビング条件(II)の下で得られた液晶配向膜をそれぞれ用いて作製された2種類の液晶表示素子において液晶分子のプレチルト角を測定し、下記数式(ii)によって定義されたプレチルト角変動率を求めたところ、15%と低い値であった。結果を下記表1に併せて示す。
【0045】
【数2】
【0046】
実施例2〜5
下記表1に示す処方に従って、合成例3〜6で得られたポリアミック酸AおよびポリイミドBの各々を用い、実施例1と同様にして本発明の液晶配向剤を調製した。次いで、このようにして調製された液晶配向剤の各々を用い、実施例1と同様にして液晶表示素子を作製した。作製された液晶表示素子の各々について、実施例1と同様にして、液晶の配向性、残留消去時間およびプレチルト角変動率の評価を行った。結果を下記表1に併せて示す。
【0047】
実施例6
合成例3で得られたポリアミック酸(A2)を用い、実施例1と同様にして本発明の液晶配向剤を調製した。次いで、このようにして調製された液晶配向剤を用い、液晶配向剤塗布後の乾燥温度を250℃にしたこと以外は実施例1と同様にして、液晶表示素子を作製した。乾燥温度を250℃にしたことにより、溶媒の除去と同時に被膜の脱水閉環が進行し、イミド化率の高い液晶配向膜が形成された。作製された液晶表示素子の各々について、実施例1と同様にして、液晶の配向性、残留消去時間およびプレチルト角変動率の評価を行った。結果を下記表1に併せて示す。
【0048】
比較例1〜4
下記表1に示す処方に従って、比較合成例1〜3で得られたポリアミック酸aおよびポリイミドbの各々を用い、実施例1と同様にして液晶配向剤を調製した。次いで、このようにして調製された液晶配向剤の各々を用い、実施例1と同様にして液晶表示素子を作製した。作製された液晶表示素子の各々について、実施例1と同様にして、液晶の配向性、残留消去時間およびプレチルト角変動率の評価を行った。結果を下記表1に併せて示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】
本発明の液晶配向剤によれば、液晶配向性が良好で、残像消去時間が短く、液晶分子に所期の大きさのプレチルト角を安定的に発現させることができる液晶配向膜を形成することができる。
本発明の液晶配向剤により形成される液晶配向膜は、TN型液晶表示素子およびSTN型液晶表示素子のみならずSH(Super Homeotropic)型液晶表示素子や強誘電性液晶表示素子など種々の液晶表示素子を構成するために好適に使用することができる。また、当該液晶配向膜を備えた液晶表示素子は、液晶の配向性および信頼性にも優れ、種々の装置に有効に使用することができ、例えば卓上計算機、腕時計、置時計、計数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、液晶テレビなどの表示装置として好適に用いることができる。
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