JP3840717B2 - 液晶配向剤および液晶表示素子 - Google Patents
液晶配向剤および液晶表示素子 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子の液晶配向膜を形成するために用いられる液晶配向剤に関する。さらに詳しくは、液晶配向性が良好であり、かつ液晶表示素子の残像消去時間が短い液晶配向膜を与え、しかも液晶表示素子に優れた長期安定性をもたらす液晶配向膜を与える液晶配向剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、透明導電膜を介して液晶配向膜が表面に形成されている2枚の基板の間に、正の誘電異方性を有するネマチック型液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、当該液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにしたTN(Twisted Nematic)型液晶セルを有するTN型表示素子が知られている。このTN型表示素子などの液晶表示素子における液晶の配向は、通常、ラビング処理により液晶分子の配向能が付与された液晶配向膜により実現される。ここに、液晶表示素子を構成する液晶配向膜の材料としては、従来より、ポリイミド、ポリアミドおよびポリエステルなどの樹脂が知られている。特にポリイミドは、耐熱性、液晶との親和性、機械的強度などに優れているため多くの液晶表示素子に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来知られているポリアミック酸やそれを脱水閉環したイミド系重合体を含有する液晶配向剤を用いて液晶表示素子などを作製した場合、液晶表示素子の残留電圧が大きいため残像が生じてしまったり、液晶表示素子の信頼性試験中に白シミが発生したりするという問題を有している。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、本発明の第1の目的は、ラビング処理によって液晶分子の配向能が確実に付与され、優れた液晶配向性を有する液晶配向膜を備えた液晶表示素子を与えることができる液晶配向剤を提供することにある。
本発明の第2の目的は、残像消去時間の短い液晶表示素子のための液晶配向膜を与える液晶配向剤を提供することにある。
本発明の第3の目的は、長期安定性を備え、そして信頼性に優れた液晶表示素子を構成することができる液晶配向剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的および利点は、(A)ステロイド骨格を有するジアミン化合物とp−フェニレンジアミンとをジアミン成分とする、ステロイド骨格を含有する第1のポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体、並びに(B)ステロイド骨格を含有しない第2のポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体、を含有しそして(A)成分である第1のポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体(以下、「第1の重合体」ともいう)ならびに上記(B)成分である第2のポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体(以下、「第2の重合体」ともいう)の配合割合は、重合体全体100重量部当り、それぞれ、10〜80重量部および20〜90重量部であることを特徴とする液晶配向剤によって達成される。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、具体的に説明する。
第1の重合体において、ステロイド骨格の好ましいものとしては、コレステロール骨格およびコレスタノール骨格を有するものが挙げられる。
第1の重合体における該ステロイド骨格の含有量は、通常0.5〜70重量%、好ましくは0.5重量%〜30重量%、より好ましくは0.7重量%〜30重量%である。
第1の重合体と第2の重合体との配合割合は、重合体全体を100重量部としたとき、第1の重合体が10〜80重量部となる割合である。
さらに、本発明の液晶配向剤においては、第1の重合体のイミド化率が第2の重合体のイミド化率よりも高いほうが好ましい。第1の重合体のイミド化率は、好ましくは55〜100%、特に好ましくは70〜100%であり、第2の重合体のイミド化率は、好ましくは0〜54%、特に好ましくは0〜50%である。本発明の液晶配向剤を構成する重合体全体の平均イミド化率は、好ましくは5〜70%、特に好ましくは5〜60%である。
【0006】
[ステロイド骨格含有テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物]
本発明の液晶配向剤に用いられる重合体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを有機溶剤中で反応させてポリアミック酸を合成し、さらに必要に応じて該ポリアミック酸を脱水閉環して得ることができる。第1の重合体において、ステロイド骨格は、ジアミン化合物またはジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物における置換基として導入される。
ステロイド骨格を含有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、下記式(1)〜(4)で表される化合物を挙げることができる。
【0007】
【化1】
【0008】
また、ステロイド骨格を含有するジアミン化合物としては、例えば、下記式(5)〜(11)で表される化合物を挙げることができる。
【0009】
【化2】
【0010】
【化3】
【0011】
[その他のテトラカルボン酸二無水物]
第2の重合体の合成に用いられ、また、第1の重合体の合成において併用されてもよいステロイド骨格を含有しないテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、下記式(I)および(II)で表される化合物などの脂肪族および脂環式テトラカルボン酸二無水物;
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、R1およびR3は、芳香環を有する2価の有機基を示し、R2およびR4は、水素原子またはアルキル基を示し、複数存在するR2およびR4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0014】
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)などの芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0015】
これらのうち、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、上記式(I)で表される化合物のうち下記式(12)〜(14)で表される化合物および上記式(II)で表される化合物のうち下記式(15)で表される化合物が、良好な液晶配向性を発現させることができる観点から好ましい。
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
特に好ましいものとして、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ピロメリット酸二無水物および上記式(12)で表される化合物を挙げることができる。
【0019】
[その他のジアミン化合物]
第1の重合体の合成において併用されるステロイド骨格を含有しないジアミン化合物はp−フェニレンジアミンである。また、第2の重合体の合成に用いられるステロイド骨格を含有しないジアミン化合物としては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどの芳香族ジアミン;
【0020】
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族および脂環式ジアミン;
【0021】
2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、5,6−ジアミノ−2,3−ジシアノピラジン、5,6−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ジアミノ−2−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、2,6−ジアミノプリン、5,6−ジアミノ−1,3−ジメチルウラシル、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、6,9−ジアミノ−2−エトキシアクリジンラクテート、3,8−ジアミノ−6−フェニルフェナントリジン、1,4−ジアミノピペラジン、3,6−ジアミノアクリジン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミンおよび下記式(III) 〜(IV)で表される化合物などの、分子内に2つの1級アミノ基および該1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン;
【0022】
【化7】
【0023】
(式中、R5は、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジンおよびピペラジンから選ばれる窒素原子を含む環構造を有する1価の有機基を示し、Xは2価の有機基を示す。)
【0024】
【化8】
【0025】
(式中、R6は、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジンおよびピペラジンから選ばれる窒素原子を含む環構造を有する2価の有機基を示し、Xは2価の有機基を示し、複数存在するXは、同一でも異なっていてもよい。)
【0026】
下記式(V)で表されるモノ置換フェニレンジアミン類;下記式(VI)で表されるジアミノオルガノシロキサン;
【0027】
【化9】
【0028】
(式中、R7は 、−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−および−CO−から選ばれる2価の有機基を示し、R8は、トリフルオロメチル基もしくはフルオロ基を有する1価の有機基または炭素数6〜30のアルキル基を示す。)
【0029】
【化10】
【0030】
(式中、R9は炭素数1〜12の炭化水素基を示し、複数存在するR9は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、pは1〜3の整数であり、qは1〜20の整数である。)
【0031】
下記式(16)〜(17)で表される化合物などを挙げることができる。これらのジアミン化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
【化11】
【0033】
(式中、yは2〜12の整数であり、zは1〜5の整数である。)
【0034】
これらのうち、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン 、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、上記式(9)〜(10)で表される化合物、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、上記式(III) で表される化合物のうち下記式(18)で表される化合物、上記式(IV)で表される化合物のうち下記式(19)で表される化合物および上記式(V)で表される化合物のうち下記式(20)〜(21)で表される化合物が好ましい。
【0035】
【化12】
【0036】
[ポリアミック酸]
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、より好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、有機溶媒中で、通常0〜150℃、好ましくは0〜100℃の反応温度で1〜48時間にわたって行われる。上記有機溶媒としては、反応で生成する反応物を溶解しうるものであれば特に制限はない。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を挙げることができる。有機溶媒の使用量は、通常、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量が、反応溶液の全量に対して0.1〜30重量%になるようにするのが好ましい。
【0037】
なお、上記有機溶媒には、ポリアミック酸の貧溶媒であるアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類などを、生成するポリアミック酸が析出しない範囲で併用することができる。かかる貧溶媒の具体例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル、エチレングリコールエチルフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2,4−ペンタンジオン、2,5−ヘキサンジオン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸ヒドロキシメチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、メチルメトキシブタノール、エチルメトキシブタノール、メチルエトキシブタノール、エチルエトキシブタノール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロ−3−フランメタノール、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキセパン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0038】
以上の合成反応によって、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。そして、この反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥することによりポリアミック酸を得ることができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解させ、次いで貧溶媒で析出する工程を1回または数回行うことにより、ポリアミック酸の精製を行うことができる。
【0039】
[イミド化重合体]
本発明の液晶配向剤を構成するイミド化重合体は、上記ポリアミック酸を脱水閉環することにより調製することができる。ポリアミック酸の脱水閉環は、(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、または(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、通常50〜200℃とされ、好ましくは60〜170℃とされる。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるイミド化重合体の分子量が低下することがある。
一方、上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01〜20モルとするのが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとするのが好ましい。なお、脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。そして、脱水閉環反応の反応温度は、通常0〜180℃、好ましくは10〜150℃とされる。また、このようにして得られる反応溶液に対し、ポリアミック酸の精製方法と同様の操作を行うことにより、イミド化重合体を精製することができる。
【0040】
[末端修飾型の重合体]
本発明に用いられる液晶配向剤を構成する重合体は、分子量が調節された末端修飾型のものであってもよい。この末端修飾型の重合体を用いることにより、本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性などを改善することができる。このような末端修飾型のものは、ポリアミック酸を合成する際に、酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを反応系に添加することにより合成することができる。ここで、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを挙げることができる。また、モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。また、モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを挙げることができる。
【0041】
[重合体の対数粘度]
本発明に用いる液晶配向剤を構成する重合体は、その対数粘度(ηln)の値が、好ましくは0.05〜10dl/g、さらに好ましくは0.05〜5dl/gのものである。ここに、対数粘度(ηln)の値は、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として用い、重合体の濃度が0.5g/100ミリリットルである溶液について30℃で粘度の測定を行い、下記式(1)で示される式によって求められるものである。
【0042】
【数1】
【0043】
[液晶配向剤]
本発明に用いられる液晶配向剤における重合体の含有割合は、粘性、揮発性などを考慮して選択されるが、好ましくは液晶配向剤全体に対して0.1〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%の範囲とされる。すなわち、重合体溶液からなる液晶配向剤は、印刷法、スピンコート法などにより基板表面に塗布され、次いでこれを乾燥することにより、配向膜材料である被膜が形成されるのであるが、重合体の含有割合が0.1重量%未満である場合には、この被膜の膜厚が過少となって良好な液晶配向膜を得ることができない場合があり、20重量%を越える場合には、被膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得難く、また、液晶配向剤の粘度が増大して塗布特性に劣るものとなる場合がある。
重合体を溶解させる有機溶媒としては、重合体を溶解できるものであれば特に制限されるものではなく、例えばポリアミック酸の合成反応や脱水閉環反応に用いられるものとして例示した溶媒を挙げることができる。また、ポリアミック酸の合成反応の際に併用することができるものとして例示した貧溶媒も適宜選択して併用することができる。
【0044】
本発明の液晶配向剤は、重合体と塗布される基板表面との接着性を向上させる観点から、官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物が配合されていてもよい。このような官能性シラン含有化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。また、エポキシ基含有化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどを好ましいものとして挙げることができる。これら官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物の配合割合は、重合体100重量部に対して、通常、40重量部以下、好ましくは0.1〜30重量部である。
【0045】
[液晶表示素子]
本発明の液晶配向剤を用いて得られる液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられた基板の透明導電膜側に、本発明の液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法などの方法によって塗布し、次いで塗布面を加熱することにより被膜を形成する。ここに基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどのプラスチックフィルムなどからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられた透明導電膜としては、SnO2からなるNESA膜、In2O3−SnO2からなるITO膜などを用いることができ、これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法、予めマスクを用いる方法などが用いられる。
液晶配向剤の塗布に際しては、基板および透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板および透明導電膜上に、予め官能性シラン含有化合物、チタネートなどを塗布することもできる。また加熱温度は、好ましくは80〜250℃とされ、より好ましくは120〜200℃とされる。形成される被膜の膜厚は、通常0.001〜1μm、好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0046】
(2)形成された被膜は、ナイロンなどの合成繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を行うことにより、液晶分子の配向能が被膜に付与されて液晶配向膜となる。また、ラビング処理による方法以外に、被膜表面に偏光紫外線を照射して配向能を付与する方法や、一軸延伸法、ラングミュア・ブロジェット法などで被膜を得る方法などにより、液晶配向膜を形成することもできる。なお、ラビング処理時に発生する微粉末(異物)を除去して表面を清浄な状態とするために、形成された液晶配向膜をイソプロピルアルコールなどによって洗浄することが好ましい。また、本発明の液晶配向剤により形成された液晶配向膜に、例えば特開平6−222366号公報や特開平6−281937号公報に示されているような、紫外線を部分的に照射することによってプレチルト角を変化させるような処理、あるいは特開平5−107544号公報に示されているような、ラビング処理された液晶配向膜上にレジスト膜を部分的に形成し、先行のラビング処理とは異なる方向にラビング処理を行った後、前記レジスト膜を除去して、液晶配向膜の配向能を変化させるような処理を行うことによって、液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0047】
(3)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作成し、それぞれの液晶配向膜におけるラビング方向が直交または逆平行となるように、2枚の基板を間隙(セルギャップ)を介して対向させ、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板の表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を充填し、充填孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面側に、偏光板を、その偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致または直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子が得られる。
上記シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有したエポキシ樹脂などを用いることができる。
上記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶を挙げることができる。その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などが用いられる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶や商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶も使用することができる。
また、液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板などを挙げることができる。
【0048】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
以下の実施例および比較例により作製された各液晶表示素子における評価方法を以下に示す。
[液晶の配向性]
液晶表示素子に電圧をオン・オフさせた時の液晶セル中の異常ドメインの有無を偏光顕微鏡で観察し、異常ドメインのない場合を「良好」と判断した。
[残像消去時間]
液晶セルに7V直流電圧を5時間印加した後電圧をOFFとし、目視で残像が消去するまでの時間を測定した。
[液晶表示素子の信頼性試験(表示欠陥の有無)]
高温高湿環境(温度70℃、相対湿度80%)下において、液晶表示素子を、5V、60Hzの矩形波で駆動させ、1500時間経過後における白いシミ状の表示欠陥の有無を偏光顕微鏡で観察した。
【0049】
合成例1
1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン314.30g(1.00モル)、p−フェニレンジアミン91.92g(0.85モル)および上記式(8)で表される化合物78.12g(0.15モル)をN−メチル−2−ピロリドン1400gに溶解させ、この溶液を40℃で6時間反応させた。次いで、得られた反応溶液を大過剰の純水に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、固形物を分離して純水で洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、対数粘度(ηln)1.03dl/gの重合体(A−1)450.3gを得た。
合成例2
合成例1で得られた重合体(A−1)30.0gをγ−ブチロラクトン570gに溶解させ、ピリジン33.3gおよび無水酢酸25.8gを添加して50℃で3時間脱水閉環させた。次いで、合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)1.04dl/gの重合体(B−2)28.3gを得た。
【0050】
合成例3
合成例1において用いるジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン64.88g(0.60モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン59.48g(0.30モル)および上記式(8)で表される化合物52.08g(0.10モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)0.89dl/gの重合体(A−3)456.6gを得た。その後、重合体(A−1)に代えて重合体(A−3)30.0gを用いた以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)0.91dl/gの重合体(B−4)27.9gを得た。
合成例4
合成例3において用いるテトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224.17g(1.00モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)1.12/gの重合体(A−5)373.1gを得た。その後、重合体(A−1)に代えて重合体(A−5)30.0gを用いた以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)1.18dl/gの重合体(B−6)28.5gを得た。
【0051】
合成例5
合成例4において用いるジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン102.73g(0.95モル)および上記式(8)で表される化合物26.04g(0.05モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)1.31dl/gの重合体(A−7)335.3gを得た。その後、重合体(A−1)に代えて重合体(A−7)30.0gを用いた以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)1.33dl/gの重合体(B−8)28.0gを得た。
【0052】
合成例6
合成例4において用いるジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン64.88g(0.60モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン59.48g(0.30モル)および上記式(5)で表される化合物64.29g(0.10モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)0.99dl/gの重合体(A−9)384.1gを得た。その後、重合体(A−1)に代えて重合体(A−9)30.0gを用いた以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)0.99dl/gの重合体(B−10)28.3gを得た。
【0053】
合成例8
合成例1において、テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224.17g(1.00モル)、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン108.16g(1.00モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)1.68dl/gの重合体(C−13)434.3gを得た。その後、重合体(A−1)に代えて重合体(C−13)30.0gを用いた以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)1.73dl/gの重合体(D−14)28.1gを得た。
合成例9
合成例7において用いるテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物218.12g(1.00モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)1.88dl/gの重合体(C−15)309.0gを得た。
【0054】
実施例1
合成例1で得られた重合体(A−1)2gと合成例8で得られた重合体(C−13)8gをγ−ブチロラクトンに溶解させて、固形分濃度4重量%の溶液とし、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過し、液晶配向剤を調製した。
上記液晶配向剤を、液晶配向膜塗布用印刷機を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の上に透明電極面に塗布し、180℃のホットプレート上で20分間乾燥し、乾燥膜厚0.05μmの塗膜を形成した。
この塗膜にレーヨン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロールの回転数500rpm、ステージの移動速度1cm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmでラビング処理を行った。
次に、一対のラビング処理された液晶挟持基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径17μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷塗布した後、一対の液晶挟持基板を液晶配向膜面が相対するように、しかもラビング方向が逆平行になるように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。
次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマティック型液晶(メルク社製、MLC−2019)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、基板の外側の両面に偏光板を、偏光板の偏光方向がそれぞれの基板の液晶配向膜のラビング方向と一致するように張り合わせ、液晶表示素子を作製した。
得られた液晶表示素子の、液晶の配向性および残像消去時間について評価を行ったところ、液晶の配向性は良好で、残像消去時間は1.2秒と小さい値であった。信頼性試験後も液晶表示素子に白シミは認められなかった。結果を表1に示す。
【0055】
実施例2〜11、比較例1〜2
表1および表2に示す処方に従い、合成例2〜8で得られた重合体を用い、実施例1と同様にして液晶配向剤を調製した。次いで、このようにして得られた液晶配向剤の各々を用い、実施例1と同様にして液晶表示素子を作製した。
得られた液晶配向剤の各々について、液晶表示素子の配向性、残像消去時間および信頼性試験について評価した。結果を表1および表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
本発明の液晶配向剤によれば、液晶表示素子とした場合、液晶配向性が良好で、残像消去時間が短く、長期安定性を備え、高信頼性の液晶配向膜が得られる。
本発明の液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を有する液晶表示素子は、TN型およびSTN型液晶表示素子に好適に使用できる以外に、使用する液晶を選択することにより、SH(Super Homeotropic)型、IPS(In-Plane Switching)型、強誘電性および反強誘電性の液晶表示素子などにも好適に使用することができる。
さらに、本発明の液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を有する液晶表示素子は、種々の装置に有効に使用でき、例えば卓上計算機、腕時計、置時計、係数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピューター、液晶テレビなどの表示装置に用いられる。
Claims (3)
- (A)ステロイド骨格を有するジアミン化合物とp−フェニレンジアミンとをジアミン成分とする、ステロイド骨格を含有する第1のポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体、並びに(B)ステロイド骨格を含有しない第2のポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体、を含有しそして(A)成分である第1のポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体ならびに上記(B)成分である第2のポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体の配合割合は、重合体全体100重量部当り、それぞれ、10〜80重量部および20〜90重量部であることを特徴とする液晶配向剤。
- (A)第1のポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体のイミド化率が55〜100%、(B)第2のポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体のイミド化率が0〜54%である請求項1記載の液晶配向剤。
- 請求項1記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜を具備してなることを特徴とする液晶表示素子。
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