JP3892157B2 - 留置針組立体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば輸液の際に血管に穿刺し、留置する留置針組立体に関する。
【0002】
【従来の技術】
患者に対し輸液を行う際には、輸液ラインと接続される留置針を患者の血管に穿刺し、留置してこれを行う。このような留置針は、中空の外針と、外針の基端の固着された外針ハブと、前記外針内に挿入され、先端に鋭利な針先を有する内針と、内針の基端に固着される内針ハブとで構成されている。
【0003】
この留置針を患者の血管に穿刺する際には、内針を外針内に挿入し、内針の針先を外針の先端から突出させた状態で穿刺操作を行う。
【0004】
そして、内針の針先が血管内に到達すると、針先の開口より流入した血液は、内針の内腔を通り、透明な内針ハブの内部に流入する(フラッシュバック)。これにより、内針が血管を確保したことが確認できる。
【0005】
このフラッシュバックを確認したら、内針および外針をわずかに進め、外針の先端を血管内に挿入する。次いで、外針を手で把持しつつ、内針を外針から抜き取り、外針ハブに輸液ラインのコネクタを接続する。
【0006】
ここで、外針から内針を抜き取ってから外針ハブに輸液ラインのコネクタを接続するまでの動作は、素早く行わねばならない。この動作が遅れると、血圧により外針内を逆流してきた血液が外針ハブの基端開口から漏れ出し、周囲を汚染することになるからである。
【0007】
そこで、この問題を解決するために、外針ハブの内部に、内針が刺通可能な弾性栓(弾性プラグ)を設け、該弾性栓の液密性により血液の漏れ出しを防止した弾性プラグ組立体が開示されている(特開平8−229133号公報)。
【0008】
しかしながら、この弾性プラグ組立体には、次のような欠点がある。すなわち、使用するまでの間は内針が弾性栓に刺通された状態が維持されるが、弾性栓の内針表面に密着していた部分が経時的に劣化して弾性力を失い、内針を抜き取った後、内針が存在していた孔が十分に塞がらず、この孔から血液が漏れ出すおそれがある。
【0009】
そのため、弾性栓の材料としては、このような経時劣化のないものを選択、使用しなければならないが、材料の選定による経時劣化の防止にも限界があり、また、そのような材料は、非常に高価でもあり、コストの増大を招く。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、弁体の経時的な変形や劣化(特に針等の接触による弾性力の減少、消失。以下単に「経時劣化」と言う。)による液漏れがない留置針組立体を提供すること、また、さらに輸液等の注入を容易に行える留置針組立体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(7)の本発明により達成される。
【0012】
(1) 中空の外針と、
前記外針の基端部に設けられ、前記外針内と連通する内腔部を有する外針ハブと、
前記外針内に挿通される内針と、
前記内針の基端部に設けられた内針ハブと、
前記外針ハブの内腔部に該内腔部を封止するように設置され、反転可能な弾性膜で構成された弁体とを有する留置針組立体であって、
前記弁体は、円盤状の外周部と、前記外周部から先端方向に向かって突出した突出部とを有し、前記突出部の内部に前記内針を挿通可能な孔が形成されており、
前記弁体が反転すると、前記突出部は基端方向に向かって突出するとともに、反転前の前記突出部の外周面であった部分が内側となり、該部分が前記突出部の弾性により密着し閉塞して反転後の液密性を確保するよう構成されていることを特徴とする留置針組立体。
【0013】
(2) 反転前の前記突出部は、先端方向に向かって外径が漸減する漏斗形状をなしている上記(1)に記載の留置針組立体。
【0014】
(3) 前記内針に、前記弁体の反転を補助する反転補助手段が設けられている上記(1)または(2)に記載の留置針組立体。
【0015】
(4) 前記弁体は、前記内針を前記孔から抜き取る際の摩擦により反転する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の留置針組立体。
【0016】
(5) 前記弁体は、前記内針を前記孔から抜き取る際に前記反転補助手段の作用により反転する上記(3)に記載の留置針組立体。
【0017】
(6) 反転前の前記突出部は、前記外針ハブの内面に非接触である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の留置針組立体。
(7) 前記外針ハブは、前記内腔部に連通する排気路を有する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の留置針組立体。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の留置針組立体を添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1、図2および図3は、それぞれ、本発明の留置針組立体の実施例を示す縦断面図であり、このうち、図1は、内針と外針とを組み立てた状態、図2は、外針から内針を抜き取った状態、図3は、外針ハブに輸液注入具を接続した状態を示している。また、図4および図5は、それぞれ、図1等に示す留置針組立体の内針と外針とを組み立てた状態における先端部付近の構成を示す斜視図および縦断面図、図6および図7は、本発明における弁体の構成を示す斜視図である。なお、以下の説明では、図1〜図7中の右側を「基端」、左側を「先端」と言う。
【0023】
図1〜図5に示すように、本発明の留置針組立体1は、留置針である外針2と、外針2の基端部に設けられた外針ハブ3と、外針2内に挿入して使用される内針4と、内針4の基端部に設けられた内針ハブ5と、外針ハブ3内に設置された弁体(封止部材)7とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0024】
外針2の基端部には、後に詳述する外針ハブ3が液密に固着されている。外針ハブ3は、好ましくは透明(無色透明)、着色透明または半透明の樹脂で構成され、内腔部34の視認性が確保されている。
【0025】
図5に示すように、外針2の先端部は、生体への穿刺を容易かつ低侵襲で行うために、外径が先端方向に向かって漸減するテーパ状をなしており、さらにその先端側には、内径が縮径した縮径部21が形成されている。この縮径部21の内径は、後述する内針4の外径とほぼ等しいかまたはそれより若干小さく設定されており、内針4を外針2の内腔に挿入し、その針先41を外針2の先端開口23から突出させた状態で、縮径部21の内周面が内針4の外周面に密着するように構成されている。なお、この状態は、図1に示すように、外針ハブ3に内針ハブ5を嵌合させた状態、すなわち外針2と内針4とを組み立てた状態(合体した状態)で得られるので、以下、この状態を「組み立て状態」と言う。
【0026】
また、外針2の縮径部21より基端側の部分においては、その内径が内針4の外径より大きく、組み立て状態において、外針2の内周面と内針4の外周面との間に、所定の間隙22が形成されるようになっている。この間隙22は、血液の流路となる。
【0027】
外針2の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリウレタン、ポリエーテルナイロン樹脂等の各種軟質樹脂が好ましい。
【0028】
このような外針2は、その全部または一部が内部の視認性を有しているのが好ましい。また、外針2の構成材料中に、例えば硫酸バリウム、炭酸バリウムのようなX線造影剤を配合し、造影機能を持たせることもできる。
【0029】
外針ハブ3は、ほぼ筒状の部材であり、その先端側には、外針2を液密に固着する外針固定部31、その基端側には、後述する内針ハブ5または輸液注入具9と嵌合する嵌合部33を有している。そして、外針固定部31と嵌合部33との間には、弁体7により封止された内腔部34を形成する中間部32が形成されている。
【0030】
外針固定部31における外針2の固定方法は、特に限定されず、例えば融着(熱融着、高周波融着等)、接着剤による接着、図示しないかしめ部材(挟持部材)によるかしめ固定、あるいはこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0031】
嵌合部33は、その内径および外径が基端方向に向かって漸増するテーパ状(テーパ管)をなしている。これにより、内針ハブ5および輸液注入具9を容易かつ確実に嵌合することができる。特に、輸液注入具9を液密に接続することができる。なお、嵌合部33は、段差形状とすることもできる。
【0032】
中間部32は、その内径がほぼ一定の円筒状をなしている。中間部32の内部には、外針2の内腔、すなわち組み立て状態における間隙22と連通する内腔部34が形成されている。
【0033】
中間部32の側部(図1、図2中上側)には、環状突出部6が形成されている。この環状突出部6は、内腔部34内の気体を排出する排気路を構成するものであり、その端部には、通気フィルタ61が装着されている。この通気フィルタ61は、リング状のキャップ62により固定されている。
【0034】
通気フィルタ61は、気体は透過するが液体は透過しない性質を有するものである。通気フィルタ61の具体例としては、例えば、各種焼結多孔体、疎水性不織布、その他の多孔質体が挙げられる。この場合、焼結多孔体としては、例えばポリエチレン等の高分子材料(粉末)と、親水性(水溶性、水膨潤性)ポリマーとを含む材料を焼結したものが好ましい。この焼結多孔体を用いると、液体(血液)との接触により通気も遮断されるので、外部からの空気の侵入を防止することができる。
【0035】
環状突出部6の根元側端部63(通気フィルタ61と反対側の端部)は、その内部が拡開した状態で内腔部34に連通している。これにより、外針ハブ3の姿勢にかかわらず(外針ハブ3が水平に対し傾斜していた場合でも)、内腔部34内の気泡を浮上させ、有効に排出させることができる。
【0036】
なお、排気路は、図示のような環状突出部6によって形成されるものに限らず、例えば、外針ハブ3の壁部を貫通して形成された側孔であってもよい。この場合、該側孔を塞ぐように、通気フィルタ61が設置されているのが好ましい。
【0037】
内針4は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような金属材料で構成され、その先端部には、鋭利な針先41が形成されている。この針先41の形状は特に限定されず、本実施例では、内針4の軸線に対し所定角度傾斜した刃面42を有する形状をなしている。
【0038】
内針4の長さは、図1に示すように、組み立て状態としたとき、少なくとも針先41が外針2の先端開口23から突出する程度の長さに設定されている。
【0039】
図4および図5に示すように、内針4の先端部の外周面には、内針4の長手方向に沿って延在する溝(凹部)46が形成されている。この溝46は、血液流路を構成するものであり、溝46の内針4の長手方向の形成部位(形成領域)は、組み立て状態において、少なくとも外針2と密着する部分である。すなわち、組み立て状態において、溝46は、外針2の縮径部21に対面する部分に位置し、縮径部21の軸方向の領域を包含する。具体的には、刃面42の基端(根元部)付近から内針4の長手方向に沿って、縮径部21の軸方向の領域を包含する長さ分形成されている。
【0040】
内針4にこのような溝46を設けたことにより、組み立て状態において、縮径部21の内側に血液流路が形成され、該溝46を介して外針2の先端開口23と前記間隙22とが連通し、連続した血液流路が形成される。
【0041】
溝46の両エッジ部47、すなわち溝46と内針4の外周面との境界部付近は、丸みを帯びている(いわゆるR付けされている)のが好ましい。エッジ部47が鋭利に尖っていると、内針4を外針2に挿通した際に、外針2の内面に傷付きを生じるおそれがあるが、このようにエッジ部47が丸みを帯びていると、このような不都合が生じない。
【0042】
このような溝46の形成方法は、特に限定されず、例えば、研削加工、レーザ加工、エッチング加工等により形成されたものが挙げられるが、本実施例では、内針4を塑性加工により塑性変形させること、特に内針4にプレス加工を施すことにより形成されたものであるのが好ましい。研磨加工やバリ取り加工等の二次加工処理を行うことなく、丸みを帯びたエッジ部47を有する溝46や、後述する複雑な形状の溝を容易に形成することができるからである。
【0043】
また、主にプレス加工により溝46を形成する場合、溝46の形成部分における内針4の内側面に、内針4の内腔に突出する突起部48が形成される。すなわち、内針4の壁厚は、溝46が存在する部分においても大きく減少することはなく、内針4の壁厚は、全周にわたってほぼ一定となる。これにより、溝46の形成部分の強度低下を防止することができる。
【0044】
溝46の形状、寸法は、内針4と外針2との密着部分をカバーし得るものであれば、特に限定されないが、図示の構成の場合、溝46の最大深さは、0.01〜0.7mm程度が好ましく、0.05〜0.45mm程度がより好ましく、長さは、1〜30mm程度が好ましく、1〜15mm程度がより好ましい。また、溝46の幅は、0.1〜1.5mm程度が好ましく、0.2〜0.7mm程度がより好ましい。
【0045】
また、溝46の断面形状、最大深さ、幅等は、内針4の長手方向に沿って同一でも、変化していてもよい。例えば、溝46は、その最大深さおよび/または幅が基端方向に向かって漸減(または漸増)する部分(特に基端部分)を有していてもよい。
【0046】
また、溝46は、図示のような直線的なものに限らず、例えば、適宜湾曲したもの、蛇行したもの、螺旋状に形成されたもの等であってもよい。
【0047】
また、複数本の溝46が形成されていてもよく、この場合、各溝46同士の位置関係は、互いに平行に配置されているもの、所定の角度をもって配置されているもの、交差しているもの等、いかなるものでもよい。また、1本の溝46が途中で複数本に分岐していてもよい。
【0048】
また、このような溝46は、組み立て状態において、血液流路を構成するものであるが、血液流路として機能するものであれば、溝46に代わるいかなる構成のものでもよく、例えば溝46と同様の位置に面取りのような凹部や粗面を設けてもよい。
【0049】
図1に示すように、内針4の基端部には、内針ハブ5が液密に固着されている。内針ハブ5の内部空間51は、内針4の内腔と連通している。この内針ハブ5は、好ましくは透明(無色透明)、着色透明または半透明の樹脂で構成され、内部空間51の視認性が確保されている。
【0050】
内針ハブ5の先端部は、前記外針ハブ3の嵌合部33に嵌合し得るよう、その外径が先端方向に向かって縮径した形状をなしている。
【0051】
内針ハブ5の基端部には、前記通気フィルタ61と同様の通気フィルタ52が装着されている。この通気フィルタ52は、リング状のキャップ53により固定されている。
【0052】
外針ハブ3および内針ハブ5の構成材料としては、それぞれ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、アクリル系樹脂、ABS樹脂、アイオノマー、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0053】
外針ハブ3の中間部32内の基端側には、内腔部34を封止し得る弁体7が設置されている。この弁体7は、弁体7の外周部71全周を例えば融着、接着等の方法により外針ハブ3の内面に固着することにより設置されている。
【0054】
図1、図2、図6および図7に示すように、弁体7は、弾性膜で構成されており、全体がほぼ漏斗形状をなしている。すなわち、弁体7は、円盤状の外周部71と、組み立て状態において外周部71から先端方向に向かって突出した突出部72とを有している。
【0055】
突出部72は、その先端に向かって先細りとなる形状(外径が漸減する形状)をなし、その中心には、内針4を挿通可能な孔73が形成されている。図1および図6に示すように、孔73に内針4を挿通した状態では、突出部72の弾性により、孔73の内面が内針4の外周面に密着し、液密性を保持する。
【0056】
また、この突出部72は、表裏が反転可能な部分(反転可能部分)である。内針4が孔73に挿通された状態(図6に示す状態)から、内針4を基端方向に引いて孔73から抜き取る操作を行うと、この操作に伴って、密着している孔73の内面と内針4の外周面との摩擦力により突出部72が同方向に引っ張られ、突出部72の先端74が孔73内にもぐり込み、基端方向へ順次移動し、突出部72が反転するに至る(図7に示す状態)。
【0057】
このように、弁体7は、内針4を抜き取る操作に伴って自動的に反転するので、弁体7を反転させるための特別の操作を必要とせず、その操作が容易である。
【0058】
図2および図7に示すように、反転した突出部75は、基端方向に向かって突出する。このとき、反転前の突出部72の外周面であった部分が内側(中心側)となり、かつ、突出部75の弾性により密着して中心の孔を閉塞する。これにより、反転後の突出部75においても、液密性が確保される。
【0059】
このように、弁体7は、組み立て状態のとき、すなわち、孔73に内針4を挿通した状態のときは、内腔部34を液密に封止し、血液の漏れ出しを防止するとともに、孔73から内針4を抜き取った後も、反転した突出部75が内腔部34を液密に封止し、血液の漏れ出しを防止することができる。また、輸液注入時等、必要時には、孔73を開いて内腔部34の封止を解除することができる。
【0060】
なお、弁体7の構成材料としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、またはイソプレンゴム、シリコ−ンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の各種合成ゴム、ポリアミド系、ポリエステル系等の各種熱可塑性エラストマー等の弾性材料(または軟質材料)が挙げられる。また、弁体7は、2層以上の積層体であってもよい。例えば、構成材料の異なる2層を積層し、弁体7の表裏の摩擦力、弾性力(伸縮性)、密着力(液密性)等の条件をそれぞれ所望に設定することもできる。
【0061】
本発明では、弁体7の突出部75が反転して、内針4を抜き取った後の内腔部34の液密性を保持するので、従来と比べ、弁体7の経時劣化を考慮する必要がないかまたはその必要性が少なくなり、よって、弁体7の構成材料の選択の幅が広がる。そのため、成形性に優れた材料、量産されている材料、安価な材料でも使用することができ、弁体7の製造が容易となるとともに、製造コストの低減に寄与する。
【0062】
なお、孔73の形状は、図示の実施例のような円形に限らず、その他例えば、だ円形、四角形、三角形や、一文字状、十文字状等のスリットであってもよい。
【0063】
図1に示すように、内針4の、組み立て状態における弁体7の先端74より先端側近傍位置には、弁体7の反転を補助する反転補助手段として、リング状の突部8が設けられている。この突部8は、内針4の外周面に例えば接着剤による接着、かしめ等による挟持等の方法により固定されている。
【0064】
内針4を基端方向に引き抜いた際には、突部8が突出部72の先端74に当接し、先端74を基端方向へ押圧するので、突出部72の反転が生じ易くなる。
【0065】
なお、反転補助手段の構成は、図示のごとき突部8に限らず、例えば内針4の外周面を粗面化して摩擦を増大させる構成であってもよい。
【0066】
また、このような反転補助手段は、必要に応じて設けられるものであり、省略されていてもよい。
【0067】
図3に示すように、外針ハブ3の嵌合部33には、輸液注入具9を液密に嵌合することができる。本実施例における輸液注入具9は、輸液ライン(輸液供給ライン)の先端に設置されたコネクタである。
【0068】
輸液注入具9の先端部91は、縮径しており、弁体7の孔73を押し広げて突出部72内に挿入可能な程度の外径を有している。また、輸液注入具9の基端部93は、輸液ラインを構成する可撓性を有するチューブ94と接続されている。
【0069】
この輸液注入具9を外針ハブ3に対し先端方向へ移動して、嵌合部33に嵌合、接続すると、輸液注入具9の先端が弁体7の反転している突出部75を先端方向へ押圧し、再度反転させる(元の状態に戻す)とともに、輸液注入具9の先端部91が孔73を押し広げ、孔73内に挿入される。これにより、弁体7による内腔部34の封止が解除され、輸液注入具9の内部と内腔部34とが連通し、輸液注入具9から内腔部34およびそれに続く外針2の内腔へ輸液等を供給することができる。
【0070】
なお、輸液注入具9の形状、構造は、図示のものに限定されず、特に、先端部91は、管状のものに限らず、弁体7に対し液体が通過し得る流路を形成することができるものであればいかなる構成のものでもよい。また、外針ハブ3に接続される輸液注入具は、例えば、輸液や薬液を注入し得るシリンジであってもよい。
【0071】
次に、留置針組立体1の使用方法(作用)の一例について説明する。
【0072】
[1] 図1に示すように、予め外針2と内針4とを組み立てておく。
このような留置針組立体1の組み立て状態では、弁体7は、その突出部71の内面が内針4の外周面に密着し、内腔部34を液密に封止している。また、内針4の針先41が外針2の先端開口23から突出し、溝46が縮径部21に対面している。
【0073】
なお、本工程は、留置針組立体1の使用時(留置針組立体1を包む包材の開封時)に、既に完了しているのが好ましい。
【0074】
[2] 組み立て状態の内針4および外針2を患者の血管(静脈または動脈)に穿刺する。特に、この操作は、後述する内腔部34の排気を効率的に行うために、環状突出部6が鉛直上方に向くような姿勢で行うのが好ましい。
【0075】
内針4の針先41が血管に穿刺されると、血管の内圧(血圧)により血液が内針4内を基端方向へ逆流し、内針ハブ5の内部空間51に導入され、視認性を有する内針ハブ5において、このフラッシュバックを視認することができる。これにより内針4の針先41が血管を確保したことを知ることができる。
【0076】
なお、内部空間51に血液が導入されるのに伴い、内部空間51内に存在していた空気は、通気フィルタ52を透過して、内針ハブ5の外部に排出される。従って、内部空間51への血液流入によるフラッシュバックの確認を迅速かつ確実に行うことができる。
【0077】
[3] さらに内針4および外針2を微小距離先端方向へ進めると、外針2の先端が血管内に挿入される。これにより、血液が先端開口23より流入し、溝46内を通過し、次いで、間隙22を基端方向へ向けて流れ、外針ハブ3の内腔部34に導入される。そして、視認性を有する外針2および/または外針ハブ3において、このフラッシュバックを視認することができる。これにより外針2の先端部が血管を確保したことを知ることができる。
【0078】
なお、血液が内腔部34に導入されるのに伴い、内腔部34内に存在していた空気は、環状突出部6内(排気路)を通り、通気フィルタ61を透過して、外針ハブ3の外部に排出される。これにより、内腔部34は、空気がほとんど残存することなく、また迅速に血液と置換される。よって、外針2の血管確保を迅速かつ適正に確認することができるとともに、内腔部34に残存した空気が後述する輸液の注入の際に外針2を経て血管内に注入されることもなく、安全性が高い。
【0079】
内腔部34が血液で満たされたときでも、内腔部34は、前述したように、弁体7で液密に封止されているため、血液が弁体7を超えて漏れ出すことはない。
【0080】
[4] その後、必要に応じ、外針2のみをさらに血管内を前進させ、所定の留置位置まで導入する。
【0081】
外針2を一方の手で押え、他方の手で内針ハブ5を把持して基端方向へ引っ張り、内針4を外針2から抜き取る。これにより、図2に示す状態となる。この内針4の抜き取り操作に伴い、前述したように、弁体7の突出部72も基端方向へ引っ張られ、突出部72が反転する。
【0082】
突出部72が反転すると表裏が逆となるが、反転後の突出部75は、その自らの弾性により密着(収縮)して中心の孔を閉塞する。これにより、突出部75が反転後の弁体7も、内腔部34を液密に封止し、血液が弁体7を超えて漏れ出すことを防止する。特に、長時間組み立て状態とされた結果、経時劣化等により、内針4に密着していた突出部72の内面付近の弾性が低下したとしても、反転後は、それとは逆の面、すなわち突出部72の外面であった面が内側となって収縮し閉塞するので、内腔部34を液密性を確実に確保することができる。
【0083】
また、突部8等の反転補助手段を設けた場合には、この反転補助手段の前述した作用により、弁体7の突出部72をより確実に反転させることができる。
【0084】
[5] 図3に示すように、外針ハブ3の嵌合部33に輸液注入具(コネクタ)9を嵌合し、接続する。これにより、外針ハブ3に輸液ラインが接続される。
【0085】
この輸液注入具9の接続に伴い、輸液注入具9の先端が反転している突出部75を先端方向へ押圧し、再度反転させるとともに、輸液注入具9の先端部91が孔73を押し広げ、孔73内に挿入される。これにより、弁体7による内腔部34の封止が解除され、輸液注入具9の内部と内腔部34とが連通する。
【0086】
[6] 輸液ラインより輸液を供給する。図3中の矢印で示すように、チューブ94を経て先端方向へ送られた輸液は、輸液注入具9の内部を流れ、その先端部91の開口92を通過して内腔部34内に流入し、さらに外針2の内腔を通り、その先端開口23より患者の血管内に注入される。
【0087】
なお、万一、輸液内に気泡が混入していた場合でも、内腔部34を通過する際にこの気泡が浮上し、環状突出部6内(排気路)を通り、通気フィルタ61を透過して外部に排出される。すなわち、環状突出部6は、脱気機能を有している。従って、気泡が混入した輸液を血管内へ注入することが有効に防止され、安全性が高い。
【0088】
[7] 患者への輸液の注入が完了したら、外針2を患者の血管から抜去する。
【0089】
以上、本発明の留置針組立体を図示の各実施例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、留置針組立体や弁体を構成する各部材は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0090】
例えば、内針4は、図示のごとき両端が開放した中空のものに限らず、内腔の一部(例えば基端部)が閉塞されているものや、中実のものでもよい。
【0091】
また、弁体に挿通されるものは、内針4のような針管に限らず、その他例えばコネクタ、シース、カテーテル等の各種管体や、ワイヤーのような棒状体等、いかなるものでもよい。
【0092】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、弁体の経時劣化による液漏れがなく、よって、血液等の漏れ出しによる周囲の汚染等を有効に防止することができる。特に、外針と内針の組み立て状態、外針から内針を抜き取った状態のいずれの場合にも、外針ハブの内腔部の液密性を確保し、血液等の漏れ出しを防止することができる。
【0093】
また、必要時には、弁体による封止を解除し、輸液等の注入を容易、円滑、確実に行うことができる。
【0094】
また、弁体の構成材料の選択の幅が広くなり、弁体の製造を容易に、また低コストで行うことができる。
【0095】
また、反転補助手段を設けた場合には、弁体をより確実に反転させることができる。
【0096】
また、外針ハブが排気路を有する場合には、外針ハブ内腔部の血液への置換を迅速に行い、外針の血管確保をフラッシュバックにより視認することができるとともに、液体中からの脱気作用により、血管への気泡の注入を防止することができ、安全性が高い。
【0097】
また、本発明の留置針組立体では、内針や外針の血管確保を確認することができること等から、留置針の血管への穿刺操作を容易かつ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の留置針組立体の実施例(内針と外針の組み立て状態)を示す縦断面図である。
【図2】 本発明の留置針組立体の実施例(外針から内針を抜き取った状態)を示す縦断面図である。
【図3】 本発明の留置針組立体の実施例(外針ハブに輸液注入具を接続した状態)を示す縦断面図である。
【図4】 留置針組立体の内針と外針とを組み立てた状態における先端部付近の構成を示す斜視図である。
【図5】 留置針組立体の内針と外針とを組み立てた状態における先端部付近の構成を示す縦断面図である。
【図6】 本発明における弁体の実施例(反転前の状態)を示す斜視図である。
【図7】 本発明における弁体の実施例(反転後の状態)を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 留置針組立体
2 外針(留置針)
21 縮径部
22 間隙
23 先端開口
3 外針ハブ
31 外針固定部
32 中間部
33 嵌合部
34 内腔部
4 内針
41 針先
42 刃面
46 溝
47 エッジ部
48 突起部
5 内針ハブ
51 内部空間
52 通気フィルタ
53 キャップ
6 環状突出部
61 通気フィルタ
62 キャップ
63 根元側端部
7 弁体
71 外周部
72 突出部
73 孔
74 先端
75 突出部
8 突部
9 輸液注入具
91 先端部
92 開口
93 基端部
94 チューブ
Claims (7)
- 中空の外針と、
前記外針の基端部に設けられ、前記外針内と連通する内腔部を有する外針ハブと、
前記外針内に挿通される内針と、
前記内針の基端部に設けられた内針ハブと、
前記外針ハブの内腔部に該内腔部を封止するように設置され、反転可能な弾性膜で構成された弁体とを有する留置針組立体であって、
前記弁体は、円盤状の外周部と、前記外周部から先端方向に向かって突出した突出部とを有し、前記突出部の内部に前記内針を挿通可能な孔が形成されており、
前記弁体が反転すると、前記突出部は基端方向に向かって突出するとともに、反転前の前記突出部の外周面であった部分が内側となり、該部分が前記突出部の弾性により密着し閉塞して反転後の液密性を確保するよう構成されていることを特徴とする留置針組立体。 - 反転前の前記突出部は、先端方向に向かって外径が漸減する漏斗形状をなしている請求項1に記載の留置針組立体。
- 前記内針に、前記弁体の反転を補助する反転補助手段が設けられている請求項1または2に記載の留置針組立体。
- 前記弁体は、前記内針を前記孔から抜き取る際の摩擦により反転する請求項1ないし3のいずれかに記載の留置針組立体。
- 前記弁体は、前記内針を前記孔から抜き取る際に前記反転補助手段の作用により反転する請求項3に記載の留置針組立体。
- 反転前の前記突出部は、前記外針ハブの内面に非接触である請求項1ないし5のいずれかに記載の留置針組立体。
- 前記外針ハブは、前記内腔部に連通する排気路を有する請求項1ないし6のいずれかに記載の留置針組立体。
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