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JP3861806B2 - 共振器、フィルタ、デュプレクサ、および通信装置 - Google Patents

共振器、フィルタ、デュプレクサ、および通信装置 Download PDF

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JP3861806B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、無線通信や電磁波の送受信に利用される、たとえばマイクロ波帯やミリ波帯における共振器、フィルタ、デュプレクサ、および通信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マイクロ波帯やミリ波帯で用いられる共振器としては、特許文献1に記載のヘアピン共振器が知られている。このヘアピン共振器は、直線状の導体線路による共振器を用いる場合に比べて小型化できるという特徴を備えている。
【0003】
また、薄膜微細加工による平面回路型の多重Cリング共振器が、特許文献2に示されている。この多重Cリング共振器は、上記特許文献1のヘアピン共振器に比べて共振器の導体Qが高いという特徴を備えている。
【0004】
さらに、特許文献3には、薄膜微細加工による平面回路型の多重スパイラル共振器が示されている。この共振器は、各導体線路に流れる電流分布が同一となるため、ヘアピン共振器に比べて導体Qのさらに高い共振器が得られる、という特徴を備えている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−193302号公報
【特許文献2】
特開2000−49512公報
【特許文献3】
特開2000−244213公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特許文献3の多重スパイラル共振器は、導体Qが高いという特徴を備えているが、薄膜微細加工によるプロセスコストが高価になる、という問題があった。共振器をさらに小型化しようとすれば、ますます微細な加工が要求され、それに伴って製造コストが上昇してしまう。
【0007】
この発明の目的は、小型化が容易で、製造コストに見合った所望の導体Qを備えた共振器、フィルタ、デュプレクサ、および通信装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、この発明に係る共振器は、
単数の導体線路からなる環状の共振単位の、複数個から構成される共振器であって、前記共振単位は容量性領域と誘導性領域とを有し、前記導体線路は、その一方の端部が、自らの他方の端部と幅方向に近接することによって前記容量性領域を形成し、複数個の共振単位の前記容量性領域を幅方向に近接させるとともに、各共振単位を略同心状に配置したことを特徴とする。
また、単数の導体線路からなる環状の共振単位の、複数個から構成される共振器であって、前記共振単位は容量性領域と誘導性領域とを有し、前記導体線路は、その一方の端部が、自らの他方の端部と幅方向に近接することによって前記容量性領域を形成し、各共振単位の導体線路の一方の端部を、異なる共振単位の導体線路の端部に周方向に近接させるとともに、各共振単位を略同心状に配置したことを特徴とする。
【0009】
この構造により、容量性領域を容量素子として作用させ、各導体線路を両端開放の半波長線路として動作させる。また、基板を挟んで上記導体線路に対向する面には接地電極を不要として、構成要素の極めて少ない構造で、低コストで所望の導体Qを持つ共振器を得ることができる。
【0010】
また、この発明に係る共振器は、複数の導体線路からなる環状の共振単位の、複数個から構成される共振器であって、前記共振単位は容量性領域と誘導性領域とを有し、前記導体線路それぞれは、一方の端部が同じ共振単位を構成する異なる導体線路の端部の外側に位置し、他方の端部が同じ共振単位を構成する異なる導体線路の端部の内側に位置し、同じ共振単位を構成する異なる導体線路の端部同士が幅方向に近接することによって前記容量性領域を形成していることを特徴とする。
また、複数の共振単位の端部同士を周方向に近接させるとともに、各共振単位を略同心状に配置したことを特徴とする。
【0011】
また、この発明に係る共振器は、前記導体線路が平面状の基板上に形成されているものとする。これにより、基板を挟んで上記導体線路に対向する面に接地電極を不要として、構成要素の極めて少ない構造で、低コスト化を図る。また、各導体線路の端部を、導体線路の幅方向に近接させ、導体線路をその先端で近接させるよりも大きな容量を生じさせて、共振器の小型化を図る。
【0012】
また、この発明に係る共振器は、前記基材の形状を柱状または筒状とし、該基材の側面に導体線路が形成されたものとする。これにより、柱状または筒状を成す構造体へ適用する。
【0013】
前記導体線路は、その端部同士の、互いに近接する部分でインターディジタルトランスデューサを構成してもよい。これにより、各導体線路の端部の幅方向で近接する部分の長さを短縮化し、共振器全体の小型化を図る。
【0014】
また、この発明に係る共振器は、前記導体線路の幅を、部分的あるいは全体に、該導体線路の表皮深さ程度または該表皮深さより細くした構造とする。これにより、表皮効果および縁端効果による電流集中を緩和させ、共振器の導体Qを改善する。
【0015】
また、この発明に係る共振器は、互いに幅方向に隣接する前記導体線路同士の間を、該導体線路の表皮深さ程度または該表皮深さより狭くした構造とする。これにより、縁端効果による電流集中を緩和し、共振器の導体Qを高める。
【0016】
また、この発明に係る共振器は、互いに幅方向に隣接する前記導体線路同士の間を、略一定にした構造とする。これにより、導体線路の製造プロセス上、最も細かなパターンが形成できる状態ですべての導体線路を形成できるようにし、共振器の導体Qを効率よく高める。
【0017】
また、この発明に係る共振器は、前記導体線路を薄膜誘電体層と薄膜導体層とを積層してなる薄膜多層電極とする。この構造により、導体線路の幅方向の縁端効果による電流集中の緩和とともに、厚み方向についての表皮効果による電流集中を緩和し、共振器の導体Qをさらに改善する。
【0018】
また、この発明に係る共振器は、前記複数の導体線路の互いに隣接する導体線路間の間隙に誘電体を充填した構造とする。これにより、隣接する導体線路間の間隙に生じる共振器の容量を増大させ、導体線路の幅方向で近接する部分の線路長を短縮化し、それにより共振器の小型化を図る。
【0019】
また、この発明に係るフィルタは、上記のいずれかに記載の構成からなる共振器と、その基板上に形成した、共振器に結合する信号入出力手段とを備える。この構造により、小型化および低挿入損失化を図る。
【0020】
また、この発明に係るデュプレクサは、上記フィルタを送信フィルタもしくは受信フィルタとして、またはその両方のフィルタとして用いて構成する。これにより、低挿入損失化を図る。
【0021】
また、この発明に係る通信装置は、上記フィルタ、デュプレクサの少なくともいずれか1つを備えて構成する。これにより、RF送受信部の挿入損失を低減し、雑音特性、伝送速度などの通信品質を向上させる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る共振器、フィルタ、デュプレクサ、および通信装置の例を各図を参照して説明する。
【0023】
まず、本発明の理解のためにこの種の共振器の基本的な構成を説明する。なお、次に説明する第1の実施形態は本発明の理解のためのものであり、本発明は第2の実施形態以降を請求の対象とする。図1は第1の実施形態に係る共振器の構成を示す図であり、(A)は上面図、(B)は断面図である。図1に示すように、この共振器は、誘電体基板1(以下、単に「基板」と言う。)と、この上面に形成した導体線路2で構成している。基板1の導体線路2の形成面に対向する面(下面)には特に接地電極を形成していない。導体線路2は、その幅が一定であり、一周以上周回した形状にして、その両方の端部を互いに導体線路の幅方向に近接させている。すなわち、図中、円で囲んで示すように、導体線路の一方の端部x1と他方の端部x2を互いに幅方向に近接させている。
【0024】
図2は上記共振器の動作について示す図である。図2の(A)は導体線路の両方の端部同士が近接している部分の4つの位置A,B,D,Eと、導体線路の長手方向の中央位置Cを示している。図2の(B)は、導体線路の両方の端部同士の近接部分での電界分布を示している。(C)は導体線路上の電流分布を示している。
【0025】
図2の(B)に示すように、導体線路の両端x1,x2の幅方向に近接する部分に電界が集中する。また、導体線路の一方の先端部と、それに近接する他方の端部付近x11との間に、および他方の先端部と、それに近接する他方の端部付近x21との間にも電界が分布し、これらの部分に容量が生じる。
【0026】
電流分布について見ると、(C)に示すように、電流強度は、導体線路のAからBにかけて急峻に増大し、B〜Dの領域において略一定値を保ち、DからEにかけて急激に減少する。両端部は0である。導体線路の両端部同士が幅方向に近接する領域A〜B,D〜Eは容量性領域、その他の領域B〜Dを誘導性領域と呼ぶことができる。この容量性領域と誘導性領域とにより共振動作する。すなわち、この共振器を集中定数回路のように見なせばLC共振回路を構成している。
【0027】
以下、このように、導体線路からなり、容量性領域と誘導性領域を有する環状の単位を共振単位という。
【0028】
図3は、第2の実施形態に係る共振器の構成を示す図である。(A)は上面図、(B)は断面図である。図1に示した共振器では、基板1上に単一の導体線路2を形成することによって共振器を構成したが、この図3に示す例では、基板1の上面に3つの導体線路2a,2b,2cによる導体線路集合体12を形成している。基板1の下面には、特に接地電極を形成していない。
【0029】
このように、本願発明では基板などに形成した導体線路だけで共振器を構成することができるので、導体線路を形成した基板などの面の反対面側には接地電極を設ける必要がない。もちろん導体線路を形成した基板などの面の反対面側に接地電極を設けてもよい。その場合には、接地電極が電磁界の遮蔽作用を果たすことになる。そのため、簡単な構造で共振器に遮蔽構造を設けることができる。
【0030】
この基板の下面に特に接地電極を形成していないことは、以降に示す各実施形態に共通である。各導体線路は、それらの両端同士が互いに幅方向に近接して、その部分に容量性領域を構成している。すなわち3つ導体線路2a,2b,2cはそれぞれ共振単位を構成している。3つの導体線路2a,2b,2cは互いに交差しないように、基板1の所定点Oを中心とする略同心円状に配置している。このように、3つの導体線路2a,2b,2cによる3つの共振単位で1つの共振器を構成している。
【0031】
上記容量性領域以外の誘導性領域においては、ある導体線路とそれに隣接する他の導体線路とが近接しているにもかかわらず容量はほとんど生じない。すなわち、図2の(B)に示したように、正電荷と負電荷は導体線路の端部(容量性領域)に集中し、誘導性領域では電荷は0になっている。電荷が0であれば、隣接する導体線路間で変位電流が流れないので容量は生じない。したがって、このように複数の共振単位を多重化しても容量性領域と誘導性領域としての機能をそれぞれ保つことができる。
【0032】
なお、この例では、導体線路2a,2b,2cの容量性領域(図中、円で囲んだ範囲内に存在する領域)を、導体線路が形成する環の略中心Oを通る直線Lに交差するように互いに近接配置している。
【0033】
この共振器の作用・効果は次のとおりである。
【0034】
(1) 各導体線路は、両端開放の半波長線路として作用する。しかもこの例では、1つの導体線路が1つの共振単位を構成している。
(2) 各導体線路の先端部に正と負の電荷が発生し、この導体線路両端の近接部が容量素子として作用する。
【0035】
(3) 基板の同一面上で容量が形成されるため、裏面(下面)に接地電極が無くても共振動作する。
【0036】
(4) 各導体線路の持つ容量に応じて、各導体線路に流れる電流強度が定まる。
【0037】
(5) 各導体線路の電流は、円形TE01δモードに類似した磁界分布を誘導する。すなわちrz面で一周回り、軸対称状に磁界が分布する。
【0038】
(6) 隣接する導体線路に略同位相の電流が流れるため、導体線路の多重化によって電流が分配され、その分配される電流分布により縁端効果による電流集中が緩和される。この縁端効果による電流集中の緩和により、導体Qが改善される。
【0039】
(7) 各共振単位の容量性領域が互いに近接しているため、複数の導体線路上の局所的な領域に共振器の容量が集中する。このため、容量性部分と誘導性部分の機能分担がより明確となる。したがって、この共振器を利用する他の回路との結合の設計が容易となる。
【0040】
図4は、第3の実施形態に係る共振器の構成を示す図である。(A)は上面図、(B)は断面図である。
【0041】
この例では、導体線路2a,2b,2cの両方の端部同士が幅方向に近接しているとともに、導体線路2a,2b,2cの一方の先端と、それに隣接する他の導体線路の一方の先端とが、Gで示す位置で所定間隙を隔てて向き合うように配置している。このパターンは、一本のスパイラル状の導体線路を、途中の所定箇所(図中Gで示す部分)で部分的に切断して得られるものに等しい。すなわち、或る2つの隣接する共振単位同士で比較すると、共振単位の容量性領域(図中楕円で囲んだ範囲内に存在する領域)は周回方向に少しずれた位置に形成されることになる。したがって、半径方向の変化に対する容量性領域の位置変化を見ると、容量性領域は半径方向の変化に伴って周回方向に次第にずれた位置に形成されていることになる。
【0042】
この構造によれば、限られた占有面積内に線数の多い導体線路集合体12を配置でき、共振器を全体に小型化できる。
【0043】
また、各導体線路の全長に亘って、隣接する導体線路同士の間隙が大きくならないため、導体線路の全体にわたって縁端効果による電流集中を緩和することができ、その分、導体Qが高められる。
【0044】
次に、第3の実施形態で示した複数の共振単位からなる共振器と、比較例である多重スパイラル共振器の解析結果を示す。なお、第3の実施形態では、共振単位が、インピーダンスの高い誘導性領域と、インピーダンスの低い容量性領域とから構成されており、インピーダンスがステップ状に変化するので、共振単位をステップリングと呼び、共振器が複数の共振単位からなるので、その共振器を多重ステップリング共振器と呼ぶことにする。
【0045】
図5の(A)は、図4の共振器のrz面の片側断面を示している。基板1の上面には導体線路集合体12を形成している。この基板1および導体線路集合体12の周囲を遮蔽キャビティ3で囲んでいる。導体線路2の構造寸法は次のとおりである。
【0046】
内半径ra=250μm
外半径rb=1000μm
導体線路幅Lo=1.5μm
導体線路間隔So=1.5μm
導体線路の膜厚t=5μm
導体線路数n=250本
図5の(B)は、導体線路の半径方向の位置における各部の電流分布を示している。ここで(1) は多重ステップリング共振器の電流分布、(2) は多重スパイラル共振器の電流分布である。この多重スパイラル共振器は、特開2000−244213に開示した、複数のスパイラル状導体線路の集合体から成る共振器である。
【0047】
ここで、各導体線路に流す強制電流は次のとおりである。
【0048】
(1) 多重ステップリング共振器
電流数列ik=4[mA]
合計電流I=1[A]
(2) 多重スパイラル共振器
電流数列(図5の(B)に示すとおり)
最大値=約8[mA]
最小値=0[A]
平均値=4[mA]
合計電流I=1[A]
上記(1),(2) および図5の(B)に示したように多重ステップリング共振器の各導体線路に流れる電流はすべて同一であるのに対し、多重スパイラル共振器における導体線路には、半径方向の位置に応じて両端が0で、中央部から外側寄りの位置でピークとなる山形の電流分布となる。このように、多重ステップリング共振器では、各導体線路に流れる電流が一定であるので、導体線路集合体全体としての導体損失が低く抑えられ、導体Qの高い共振器が得られる。
【0049】
次に、上記共振器の導体Q、磁界エネルギー、インダクタンスについての計算結果を示す。
【0050】
まず磁界蓄積エネルギーWmは、
Wm=LI2 /2
合計電流(実効値)Iは、
I=Σik (k=1〜n)
上記2つの式より、共振器のインダクタンスLは
L=2Wm/I2
と表される。導体QをQcで表すと、各共振器の解析結果は次のとおりである。
【0051】
(1) 多重ステップリング共振器
Qc=250
Wm=1.96nJ
L=0.98nH
(2) 多重スパイラル共振器
Qc=219
Wm=3.17nJ
L=1.58nH
その結果、多重ステップリング共振器の容量性領域の寸法設計は次のようになる。
【0052】
共振周波数2GHzの共振器を設計する場合、インダクタンス0.98nHより、必要容量は6.45pFとなる。導体線路間隙1.5μmにおける実効比誘電率を40とすると、6.45pFに対応する容量性領域の合計長さは5.47mmとなる。これを250本の各ステップリングで均等分配する場合、1つあたりの容量性領域の長さは、Wg=5.47mm/250=21.9μmとなる。
【0053】
図6は、第4の実施形態に係る共振器の構成を示す図である。この例では、図4に示したものと同様に、3つの導体線路2a,2b,2cがそれぞれ共振単位を構成しているが、導体線路2bについては、図中の円で示すように、その端部d1,d2,d3,d4をA−Bで示す範囲で幅方向に近接させている。すなわち、櫛形パターンを相互に噛み合わせた形状のインターディジタルトランスデューサ(IDT)を構成している。
【0054】
このような構造により、限られた面積のIDT部分で大容量が得られる。そのため、所定共振周波数を得るための導体線路長が短縮化でき、導体線路集合体12の占有面積を縮小化して、共振器の小型化が図れる。また、隣接する共振単位との間隙が大きくならないため、導体線路の全体にわたって縁端効果による電流集中を緩和することができ、その分、導体Qが高められる。
【0055】
また、導体線路集合体の幅方向の中央(3つの導体線路の場合、その中央の導体線路)の導体線路2bに対して両端の導体線路2a,2cの幅を相対的に細くしたことにより、縁端効果による電流集中が著しい部分についての電流集中を効率的に抑制できる。
【0056】
次に、第5の実施形態に係る共振器の構成を図7〜図9を参照して説明する。
【0057】
第1〜第4の実施形態では、単数の導体線路で環状の共振単位を構成したが、共振単位を構成する導体線路は単数である必要はなく、複数であってもよい。これにより、一つの共振単位が複数の容量性領域と複数の誘導性領域を持つようになる。例えば図7に示すように、2つの導体線路で環状の共振単位を構成してもよい。図7の(A)に示す例では、誘電体基板1の表面に2a,2bで示す2つの導体線路をそれぞれ半周以上周回した形状としている。同様にして一周する間に3つの容量性領域を持つように各導体線路を1/3周を越える程度の角度範囲を周回した形状としてもよい。
【0058】
図7の(A)では、導体線路2aの一方の端部xa1と導体線路2bの一方の端部xb1とを幅方向に近接させている。同時に、導体線路2aの他方の端部xa2と導体線路2bの他方の端部xb2とを幅方向に近接させている。この2組の端部同士の近接する領域で2つの容量性領域を形成している。したがって、導体線路2a,2bがそれぞれ両端開放の半波長線路として作用する。
【0059】
図7の(B)は、図7の(A)に示した共振単位を2つ設けて共振器を構成した例である。導体線路2aの両方の端部と導体線路2bの両方の端部がそれぞれ幅方向に近接して2つの容量性領域を形成し、導体線路2cの両方の端部と導体線路2dの両方の端部がそれぞれ幅方向に近接して2つの容量性領域を形成している。このようにして図7(B)で4つの楕円で囲んだ範囲内に容量性領域を形成している。また、各共振単位の導体線路の一方の先端と、それに隣接する他の共振単位の導体線路の一方の先端とが、Gで示す位置で所定間隙を隔てて向き合うように各導体線路2a,2b,2c,2dを配置している。この配置によって2つの共振単位の隣接位置で導体線路同士の間隔を一定にしている。この場合にも、図4に示した実施形態の場合と同様に、導体線路全体にわたって縁端効果による電流集中を緩和することができ、その分導体Qが高められる。
【0060】
図8は、図7の(B)に示した共振器の動作について示す図である。図8の (A)は隣接する導体線路間の電界分布および導体線路上の電流の方向の例について示している。図8の(B)は(A)におけるA−A部分の断面において導体線路周囲の磁界分布を示している。ここで、Eは電界、Hは磁界、Iは電流を表している。この図に示すように、各導体線路の端部付近で、隣接する導体線路に対して導体線路の幅方向に近接する箇所に電界が集中する。すなわち、隣接する導体線路の端部同士が導体線路の幅方向に近接する領域が容量性領域、電流が流れるそれ以外の導体線路の領域が誘導性領域として作用する。
【0061】
また、図9は、4つの導体線路からなる共振単位を3組配置した例である。図9において、4つの導体線路2a,2b,2c,2dが第1の共振単位を成し、4つの導体線路2e,2f,2g,2hが第2の共振単位を成し、4つの導体線路2i,2j,2k,2lが第3の共振単位を成す。
【0062】
このような共振器における容量性領域の特徴は、各導体線路が一周以上に亘って周回したものと同様に、容量性領域が導体線路の周回方向に対して占める割合が小さい程、集中定数的容量として機能し、それ以外の誘導性領域の導体線路部分には節・腹のない電流が分布する。また、導体線路に流れる電流は、各導体線路周回方向で見た時、同じ方向に流れる。各電流によって誘導される磁界ベクトルは相互誘導することにより、磁界エネルギを効率よく蓄積する。
【0063】
このように、各導体線路に分散して電流が流れるため、マイクロストリップ線路に見られるような縁端効果による電流集中が緩和され、導体損失が低減される。
【0064】
また、導体線路の周回方向に複数の容量性領域が分割配置されることになるため、次にような効果を奏する。
【0065】
すなわち、ミリ波帯へ適用するために高周波化設計を行う場合、基板上における共振器の大きさ(これは略円形を成す共振器形成領域の直径や共振器の占有面積で表される。)が一定の条件下で、容量性領域を形成する導体線路端部の近接する長さが短く設計されるが、その際、高周波化に伴って微細加工による寸法公差に対する要求精度が高くなる。しかし、この実施形態では、導体線路の周回方向に一周する間に複数の容量性領域を持つように複数の導体線路を構成することによって容量性領域を分割配置している。その結果、その分割した容量は直列接続の関係となり、容量性領域1つ当たりの容量は大きくなるように設計できる。
【0066】
例えば、容量性領域を2分割した場合(導体線路の周回方向に一周する間に2つの容量性領域を持つように2つの導体線路で共振単位を構成した場合)、各容量性領域の容量をC1,C2とすれば、合成容量値Cは、
C=1/(1/C1+1/C2)となる。
【0067】
また、容量性領域が3分割し、それぞれの容量をC1,C2,C3とすれば、合成容量値Cは、
C=1/(1/C1+1/C2+1/C3)となる。
【0068】
次に、第6の実施形態に係る共振器の構成を図10,図11に示す。図10の(A)は上面図、(B)は断面図、(C)は(A)における円部分の拡大図、 (D)は(A)におけるA−A′部分の断面図である。但し、図10の(C),(D)では、図面の視認が可能なように、導体線路数を少なく描いている。図11は、共振器の拡大図である。
【0069】
図11において、円IEは複数の導体線路のうち最内周側の端部、円OEは最外周側の端部をそれぞれ表している。円Gは、導体線路の先端同士が所定間隙を隔てて向き合っている部分を表している。
【0070】
図10において、基板1の上面に導体線路集合体12を構成している。その基本構造は図4に示したものと同様である。但し、この図10に示す例では、複数の導体線路の配置による導体線路集合体12の幅方向(A−A′方向)の略中央から両端にかけて、導体線路幅を次第に細くしている。導体線路集合体12の内周部と外周部(上記導体線路集合体12の幅方向の両端付近)の導体線路幅は導体の表皮深さ程度またはそれより細く微細加工している。また、すべての導体線路の間隔は導体の表皮深さ程度またはそれより狭く微細加工している。たとえば銅(導電率約53MS/m)は、周波数2GHzで約1.5μmの表皮深さをもつので、上記内周部および外周部の導体線路幅と各導体線路の間隔を1.5μm以下としている。
【0071】
このように、導体線路集合体12の幅方向の両端付近および各導体線路の間隔を表皮深さ以下の寸法にしたことにより、導体線路集合体12の縁端部における表皮効果による電流集中を効率良く緩和できる。また、導体線路集合体12の幅方向の略中央部の導体線路幅を太くしたことにより、縁端効果の少ない部分の電流量を増大させることができる。その結果、導体Qが改善できる。
【0072】
また、この例では、導体線路集合体12の各導体線路を略四角形のパターンとしたことにより、それを円形パターンとした場合に比較して、共振磁界エネルギーを保持するための開口面積が大きくなる。したがって、その分、占有面積の縮小化が図れる。しかも、略四角形の角部にR(ラウンド)を付けたため、導体線路に急峻に曲がった部分がなく、導体線路の曲がった部分での電流集中が緩和され、導体Qの低下が生じない。
【0073】
次に、第7の実施形態に係る共振器の構成を図12に示す。この共振器も複数の共振単位から構成していて、その基本構造は図7の(B)に示したものと同様である。但し、この図12に示す例では、複数の導体線路による導体線路集合体の幅方向の略中央から両端にかけて導体線路幅をしだいに細くしている。この共振器は図10に示した例と異なり、2つの導体線路で1つの共振単位を構成している。この図12に示す例では、導体線路2a,2bが第1の共振単位を成し、導体線路2c,2dが第2の共振単位を成し、導体線路2e,2fが第3の共振単位を成し、導体線路2g,2hが第4の共振単位を成す。このようにして4つの共振単位で1つの共振器を構成している。
【0074】
ここで、内周部と外周部の導体線路の幅は導体線路の表皮深さ程度またはそれより細く微細加工している。また、すべての導体線路の間隔は導体線路の表皮深さ程度またはそれより狭く微細加工している。この構成により、図10に示した共振器の場合と同様に、導体線路集合体の縁端部における表皮効果による電流集中を効率よく緩和でき、また、共振器全体の導体Qが改善できる。
【0075】
なお、以上に示した、複数の導体線路の配置による導体線路集合体を構成して導体Qを向上させるためには、導体線路上に流れる電流を上手く分配する必要がある。この発明では、各導体線路の容量性領域の容量によって、各導体線路に流れる電流を制御する。その設計要件として次のものが挙げられる。
【0076】
(1) 表皮効果、縁端効果による導体損失の本質は電流が偏って表面や縁端部に電流が集中することにあるので、その集中する電流を平坦な振幅に分散させて、同時に磁界エネルギの疎密分布を平坦化させる。
【0077】
(2) 最適設計の問題は、電流振幅の分布および磁界エネルギの疎密分布に応じて分割する各導体線路の幅を設定し、且つ適切な電流振幅の配列を与える問題である。
【0078】
(3) 言い換えると、単に均等な線幅で導体線路を微細線幅に分割しただけでは導体Qが改善されるとは限らない。電流の配列によっては分割する前の単線よりも損失が増大する場合もある。また、電流を最適な配列に分布させるための制御機能を導体線路が備えていなければならない。
【0079】
しかし、その最適解を1つの関数で表すことはできず、反復計算によって「よりよい」設計を求めることになる。そのための主要な設計要件は次のとおりである。
【0080】
(1) 電流経路に垂直な断面で見た時に多線構造となり、その縁端部で導体線路の幅を単調減少させて配置し、FEMシミュレータによる反復計算で最適な電流配列を求める。
【0081】
(2) 最適な電流配列を求めるために、各導体線路に結合する容量の配列を求める。この容量配列を求める問題は、各導体線路の自己インダクタンスと導体線路間の相互インダクタンスによってできるインダクタンス行列と、所望の容量配列を対角成分とする容量行列を組み合わせて計算される特性行列が所望の電流配列を固有ベクトルとして持つようにする、という固有値問題の形式となる。定性的には容量に応じて対応する導体線路の電流が増減するという特性によって容量配列が設定される。
【0082】
次に、第8の実施形態に係る共振器の構成を図13に示す。(A)〜(D)は、それぞれ基板と導体線路集合体12部分の拡大断面図である。(A)は比較例として示している。すなわち、(A)に示す共振器は、基板1の上面に、図10,図11に示したような導体線路集合体12を構成している。(B)は、導体線路集合体12の各導体線路を、薄膜誘電体層と薄膜導体層とを交互に積層してなる薄膜多層電極で構成したものである。このように薄膜多層電極により導体線路を構成したことにより、導体線路の上下からの磁界侵入による表皮効果を緩和し、基板と導体線路との界面および空気と導体線路との界面の導体Qを改善することができる。
【0083】
図13の(C)に示す例は、導体線路集合体12の各導体線路の互いに隣接する導体線路間の間隙に誘電体4を充填したものである。この構造により、共振単位の容量性領域の容量が増大し、容量性領域の長さを短縮化でき、共振器全体の小型化が図れる。
【0084】
図13の(D)は、導体線路集合体12の各導体線路を薄膜多層電極にするとともに、各導体線路間を誘電体4で充填したものである。このような構造により、上記薄膜多層化による効果と誘電体充填による効果の双方を奏する。
【0085】
次に、第9の実施形態に係る共振器について図14,図15を参照して説明する。
【0086】
図14の(A)は共振器の正面図、(B)はその左側面図、(C)はこの共振器に設けた複数の導体線路のうち1つの導体線路の形状を示す斜視図である。この図14に示すように、円柱形状の誘電体基材11の側面に導体線路2による複数の共振単位を形成している。これらの複数の共振単位を構成する各導体線路2は(C)に示すように基材11の側面に沿って一周以上周回させ、その両端を互いに幅方向に近接させている。この例では、すべての導体線路2が同一パターンであり、隣接する導体線路同士が重ならないように共振単位の容量性領域を導体線路の周回方向に少しずつずらせて複数の導体線路2を配置している。
【0087】
この共振器は、平面上の基板に導体線路を形成した言わば平面座標系の共振器を、円柱側面(円筒面)に導体線路を形成した言わば円柱座標系の共振器にしたものである。したがって、その作用効果は図4に示した共振器の場合と同様である。但し、図4に示したように、平面上の基板に複数の導体線路を配置した場合には、一定の容量を得るための容量性領域の長さ(導体線路の端部同士が幅方向に近接する部分の長さ(角度範囲))は半径方向の位置に応じて変化する。また、一定のインダクタンスを得るための誘導性領域の角度範囲も半径方向に位置に応じて変化する。これに対し、図14に示す例では、半径が一定であるので、容量性領域と誘導性領域の形成範囲を角度範囲で表すと、その範囲は一定となる。そのため、複数の導体線路を配置して生じる電磁界および電流の分布の対称性が良いと特徴を備えている。
【0088】
図15において(A)は共振器の正面図、(B)はその左側面図、(C)はこの共振器に設けた複数の導体線路のうち1つの共振単位の形状を示す斜視図である。この例では、2つの導体線路2で1つの共振単位を構成している。この共振器は、図7の(B)に示したものを、平面座標系から円柱座標系に変形したものに相当する。
【0089】
なお、図14、図15に示した例では円柱形状の基材を用いたが、絶縁性または誘電性を有する円筒状の基材に導体線路を形成してもよい。
【0090】
次に、第11の実施形態としてフィルタの構成例を図16に示す。図16の (A)はキャビティ3を取り除いた状態での上面図、(B)はフィルタの断面図である。図16において、基板1の上面に3つの共振器7a,7b,7cを配列形成している。これらの共振器7a,7b,7cは図10および図11に示したものと同様である。また、基板1の上面には、両端の共振器7a,7cに磁界結合する結合ループ5a,5bを形成している。さらに、基板1の上面には、この基板1の上部に被せる遮蔽キャビティ3が導通する接地電極6を形成している。上記結合ループ5a,5bは、その一端を接地電極6に接続し、他端をキャビティ外に引き出すように形成している。
【0091】
3つの共振器7a,7b,7cは、隣接する共振器間で、電流の相互誘導により磁界結合する。また、共振器7a,7cと結合ループ5a,5bとの間も電流の相互誘導によりそれぞれ磁界結合する。したがって、このフィルタは、順に結合した3段の共振器による帯域通過特性を備える。その際、各段の共振器のQは高いため、低挿入損失特性が得られる。
【0092】
図17は、第12の実施形態に係るフィルタの構成を示す図である。この例では、基板1の上面に共振器7bを形成し、基板1の下面に2つの共振器7a,7cを形成している。この3つの共振器7a,7b,7cは、図10および図11に示したものと同様である。この3つの共振器7a,7b,7cは、隣接する共振器の平面位置が部分的に重なるように配置している。また、共振器7a,7cと2つの結合ループ5a,5bの平面位置も部分的に重なるように配置している。
【0093】
このような構造により、図16に示した場合より基板1の寸法を小型化でき、フィルタ全体の小型軽量化が図れる。
【0094】
次に、第13の実施形態に係るフィルタの構成を図18および図19を参照して説明する。
【0095】
図18の(A)はキャビティを取り除いた状態での上面図、(B)はその下面図、(C)は(A)におけるA−A部分の断面図である。図18において基板1の上面に共振器7bを形成している。基板1の下面には2つの共振器7a,7cを形成している。これらの共振器7a,7b,7cは図4に示したものと同様である。すなわち各導体線路の両端付近同士が幅方向に近接して共振単位を構成している。各共振単位の容量性領域は、図4に示した場合と同様にして少しずつずらせて配置している。
【0096】
また、図18において、基板1の上面に形成した共振器7bは共振器の全体形状を長円形としている。例えば、図19に示すように、各導体線路を略長円形をなすように配置する。図19に示した例では、導体線路2a,2b,2cによる3つの共振単位を配置している。
【0097】
さて、図18に示した共振器7a,7b,7cは、隣接する共振器間で、電流の相互誘導によって磁界結合する。ここで、共振器7aを1段目の共振器、共振器7bを2段目の共振器、共振器7cを3段目の共振器とすると、2段目の共振器7bを長円形としたことにより、1段目と2段目の共振器間の段間結合、および2段目と3段目の共振器間の段間結合をそれぞれ強くしている。また、この例では、1段目と3段目の共振器7a−7c間も結合(とび結合)するため、1段目と3段目がとび結合した3段の共振器からなるフィルタとして作用する。このとび結合の大きさを制御することによって、通過帯域の近傍に現れる減衰極の周波数を調整することができる。
【0098】
次に、第14の実施形態としてデュプレクサの構成を図20に示す。図20はデュプレクサのブロック図である。ここで、送信フィルタと受信フィルタは、それぞれ図16、図17、図18などに示した構成からなる。送信フィルタTxFILと受信フィルタRxFILの通過帯域は、それぞれの帯域に合わせて設計する。また、送受共用端子としてのアンテナ端子ANTportへの接続は、送信信号の受信フィルタへの回り込みおよび受信信号の送信フィルタへの回り込みを防止するように位相調整する。
【0099】
図21は、第15の実施形態に係る通信装置の構成を示すブロック図である。ここで、デュプレクサDUPとしては図20に示した構成のものを用いる。回路基板上には、送信回路Tx−CIRと受信回路Rx−CIRを構成し、デュプレクサDUPの送信信号入力端子に送信回路Tx−CIRが接続され、デュプレクサDUPの受信信号出力端子に受信回路Rx−CIRが接続され、且つアンテナ端子にアンテナANTが接続されるように、上記回路基板上にデュプレクサDUPを実装する。
【0100】
【発明の効果】
この発明によれば、単数の導体線路からなる環状の共振単位の、複数個で共振器を構成し、共振単位が容量性領域と誘導性領域とを有し、導体線路の一方の端部が、自らの他方の端部幅方向に近接することによって前記容量性領域を形成し、複数個の共振単位の前記容量性領域を幅方向に近接させ、また、各共振単位の導体線路の一方の端部を、異なる共振単位の導体線路の端部に周方向に近接させるため、導体線路の端部同士の近接部分の容量が増し、共振器の小型化が図れる。また、基板を挟んで上記導体線路に対向する面に接地電極が不要であるため、極めて構成要素の少ない構造で、低コスト化が図れる。
【0101】
また、この発明によれば、複数の導体線路からなる環状の共振単位の、複数個から構成される共振器であって、前記共振単位は容量性領域と誘導性領域とを有し、前記導体線路それぞれは、一方の端部が同じ共振単位を構成する異なる導体線路の端部の外側に配置し、他方の端部が同じ共振単位を構成する異なる導体線路の端部の内側に配置し、同じ共振単位を構成する異なる導体線路の端部が幅方向に近接することによって前記容量性領域を形成し、また、複数の共振単位の端部同士を周方向に近接させたことにより、例えば高周波化にともない、誘導性領域の長さを短くする場合でも、環状をなす共振単位全体の導体線路の全長が長くできるので、各導体線路の曲率が極端に大きくならず、その分、電流集中を緩和することができ、導体Qを高めることができる。
【0102】
また、この発明によれば、前記導体線路が平面状の基板上に形成されているものとしたことにより、基板に対する導体線路の形成が容易となり、低コスト化が図れる。
【0103】
また、この発明によれば、前記基材の形状を柱状または筒状とし、該基材の側面に導体線路を形成したことにより、柱状または筒状を成す構造体への適用が可能となる。
【0104】
また、この発明によれば、導体線路両端の互いに近接する部分でインターディジタルトランスデューサを構成したことにより、容量性領域の長さが短縮化され、共振器全体の小型化が図れる。
【0105】
また、この発明によれば、複数の導体線路の幅および、隣接する導体線路間を、部分的に、または全体に、導体の表皮深さ程度または表皮深さより細くしたため、表皮効果および縁端効果による電流集中が緩和し、共振器の導体Qがいっそう改善できる。
【0106】
また、この発明によれば、互いに幅方向に隣接する前記導体線路同士の間を、略一定にしたことにより、導体線路の製造プロセス上、最も細かなパターンが形成できる状態ですべての導体線路を形成できるようになり、共振器の導体Qを効率よく高めることができる。
【0107】
また、この発明によれば、導体線路を、薄膜誘電体層と薄膜導体層とを積層してなる薄膜多層電極としたことにより、導体線路の幅方向の縁端効果による電流集中の緩和とともに、厚み方向についての表皮効果による電流集中の緩和により、共振器の導体Qをさらに改善できる。
【0108】
また、この発明によれば、複数の導体線路の互いに隣接する導体線路間の間隙に誘電体を充填したことにより、隣接する導体線路間の間隙に生じる共振器の容量が増大し、容量性領域の長さが短縮化でき、それにより共振器の小型化が図れる。
【0109】
また、この発明によれば、小型・低挿入損失なフィルタおよびデュプレクサが得られる。
【0110】
また、この発明によれば、RF送受信部の挿入損失が低減され、雑音特性、伝送速度などの通信品質が高い通信装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る共振器の構成を示す図
【図2】同共振器の導体線路両端部付近の電界分布および導体線路上の電流分布を示す図
【図3】第2の実施形態に係る共振器の構成を示す図
【図4】第3の実施形態に係る共振器の構成を示す図
【図5】同共振器の電流分布を示す図
【図6】第4の実施形態に係る共振器の構成を示す図
【図7】第5の実施形態に係る共振器の構成を示す図
【図8】同共振器の電界分布および電流の方向の例を示す図
【図9】第5の実施形態に係る他の共振器の導体線路パターンの例を示す図
【図10】第6の実施形態に係る共振器の構成を示す図
【図11】同共振器各部の拡大図
【図12】第7の実施形態に係る共振器の導体線路パターンの例を示す図
【図13】第8の実施形態に係る共振器における導体線路の断面構造を示す図
【図14】第9の実施形態に係る共振器の構成を示す図
【図15】第10の実施形態に係る共振器の構成を示す図
【図16】第11の実施形態に係るフィルタの構成を示す図
【図17】第12の実施形態に係るフィルタの構成を示す図
【図18】第13の実施形態に係るフィルタの構成を示す図
【図19】同フィルタの形成する導体線路パターンの例を示す図
【図20】第14の実施形態に係るデュプレクサの構成を示すブロック図
【図21】第15の実施形態に係る通信装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
1−基板
2−導体線路
3−遮蔽キャビティ
4−誘電体
5−結合ループ
6−接地電極
7−共振器
11−基材
12−導体線路集合体
x1,x2−導体線路の端部

Claims (14)

  1. 単数の導体線路からなる環状の共振単位の、複数個から構成される共振器であって、前記共振単位は容量性領域と誘導性領域とを有し、前記導体線路は、その一方の端部が、自らの他方の端部と幅方向に近接することによって前記容量性領域を形成し、共振単位の前記容量性領域を幅方向に近接させるとともに、各共振単位を略同心状に配置したことを特徴とする共振器。
  2. 単数の導体線路からなる環状の共振単位の、複数個から構成される共振器であって、前記共振単位は容量性領域と誘導性領域とを有し、前記導体線路は、その一方の端部が、自らの他方の端部と幅方向に近接することによって前記容量性領域を形成し、各共振単位の導体線路の一方の端部を、異なる共振単位の導体線路の端部に周方向に近接させるとともに、各共振単位を略同心状に配置したことを特徴とする共振器。
  3. 複数の導体線路からなる環状の共振単位の、複数個から構成される共振器であって、前記共振単位は容量性領域と誘導性領域とを有し、前記導体線路それぞれは、一方の端部が同じ共振単位を構成する異なる導体線路の端部の外側に位置し、他方の端部が同じ共振単位を構成する異なる導体線路の端部の内側に位置し、同じ共振単位を構成する異なる導体線路の端部同士が幅方向に近接することによって前記容量性領域を形成するとともに、各共振単位を略同心状に配置したことを特徴とする共振器。
  4. 前記導体線路は、平面状の基板上に形成されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の共振器。
  5. 前記導体線路は、柱状または筒状の基体の側面に形成されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の共振器。
  6. 前記導体線路の互いに近接する端部同士が、インターディジタルトランスデューサを構成していることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の共振器。
  7. 前記導体線路の線路幅を、部分的あるいは全体に、該導体線路の表皮深さ程度または該表皮深さより細くしたことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の共振器。
  8. 互いに幅方向に近接する前記導体線路同士の線路間を、該導体線路の表皮深さ程度または該表皮深さより狭くしたことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の共振器。
  9. 互いに幅方向に近接する前記導体線路同士の間を、略一定にしたことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の共振器。
  10. 前記導体線路を、薄膜誘電体層と薄膜導体層とを積層してなる薄膜多層電極としたことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の共振器。
  11. 互いに幅方向に近接する前記導体線路同士の間の隙間に誘電体を充填したことを特徴とする請求項1〜10のうちいずれかに記載の共振器。
  12. 請求項1〜11のうちいずれかに記載の共振器と、該共振器に結合する信号入出力手段と、を備えたフィルタ。
  13. 請求項12に記載のフィルタを送信フィルタもしくは受信フィルタとして、またはその両方のフィルタとして用いたデュプレクサ。
  14. 請求項12に記載のフィルタまたは請求項13に記載のデュプレクサの少なくともいずれか一つを備えた通信装置。
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