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JP3856015B2 - 非水電解液二次電池用正極副活物質、非水電解液二次電池用正極活物質および非水電解液二次電池 - Google Patents

非水電解液二次電池用正極副活物質、非水電解液二次電池用正極活物質および非水電解液二次電池 Download PDF

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JP3856015B2 JP2004171525A JP2004171525A JP3856015B2 JP 3856015 B2 JP3856015 B2 JP 3856015B2 JP 2004171525 A JP2004171525 A JP 2004171525A JP 2004171525 A JP2004171525 A JP 2004171525A JP 3856015 B2 JP3856015 B2 JP 3856015B2
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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池用正極副活物質(以下、単に「正極副活物質」ともいう。)、非水電解液二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」ともいう。)および非水電解液二次電池に関する。詳しくは、過放電特性等に優れ、電池単位体積あたりの高充放電容量を有するスピネル構造のリチウム遷移金属複合酸化物を有する正極副活物質、正極活物質および非水電解液二次電池に関する。
非水電解質二次電池は、従来のニッケルカドミウム二次電池などに比べて作動電圧が高く、かつエネルギー密度が高いという特徴を有し、電子機器の電源として広く利用されている。この非水電解質二次電池の正極活物質としてはLiCoO、LiNiO、LiMn等に代表されるリチウム遷移金属複合酸化物が用いられる。
なかでもLiMnは、構成元素であるマンガンが資源として多量に存在するため、原料が安価に入手しやすい。また環境に対する負荷も少ないという特徴がある。更にデインターカレーション反応によって、結晶中のLiイオンが全量脱離しても、結晶構造が安定に存在する。このためLiCoOおよびLiNiOに比べて、LiMnを用いた非水電解質二次電池は、熱安定性に優れる。
上述したような利点を有するLiMnを用いた非水電解質二次電池は、従来、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラ等に代表されるモバイル電子機器の用途に用いられてきており、これらの用途にとって十分な電池特性を発揮していた。
しかしながら、現在では、モバイル電子機器は、さまざまな機能が付与される等の高機能化や、高温や低温での使用等のため、要求特性がより一層厳しいものとなっている。また、電気自動車用バッテリー等の電源への応用が期待されている。
ところで、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池においては、従来、過放電を防止するため、電池内部に保護回路が組み込まれているが、この保護回路をなくすことができれば、そのスペースに活物質を入れることにより、高容量化することができる。また、保護回路を省略して、製造コストを下げることができる。したがって、保護回路をなくす手段が検討されている。
保護回路をなくすためには、過放電が起こった場合であっても、種々の問題が起こらないようにする必要がある。一般に、過放電が起こると、負極の電位が上昇し、負極の集電体として用いられているCuが溶出してしまい、電池特性が著しく劣化してしまう。Cuが溶出する理由を具体的に説明する。
図1は、リチウムイオン二次電池の充放電サイクル時の正極および負極の電位変化を模式的に示すグラフである。図1に示されるように、従来例において、電池を充電すると、正極の電位は矢印aの経路で上昇し、負極の電位は矢印bの経路で下降する。
充電後、放電すると、負極の電位は上昇するが、負極にはリテンション(リチウムイオンが放出されないで残存する現象)が生じるため、その経路は矢印cのようになる。一方、正極の電位は矢印dの経路で下降する。したがって、過放電が起こると点Aで正極と負極の電位が等しくなる。ここで、点Aの電位が、負極集電体として用いられるCuが溶出する電位より高いため、Cuが溶出してしまうのである。
これに対し、過放電した場合にもCuが溶出しない技術として、特許文献1には、負極集電体の電位よりも貴な電位を有する第1のリチウム化合物からなる主活物質と、負極集電体の電位よりも卑な電位を有する第2のリチウム化合物からなる副活物質とを含む正極活物質が記載されており、具体的には、LiCoOを主活物質とし、LiMoO(x=1〜2)を副活物質とする正極活物質が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載されている正極活物質では、過放電特性の改善はみられるものの、現在、モバイル電子機器に求められている高温特性の改善、極板密度の向上を実現することができなかった。
特開平2−265167号公報
本発明の目的は、より一層厳しい使用環境下においても優れた電池特性を有する非水電解液二次電池用正極副活物質、非水電解液二次電池用正極活物質および非水電解液二次電池を提供することにある。すなわち優れた電池特性、特に過放電特性等に優れ、かつ、電池の単位体積あたりの高充放電容量を有する非水電解液二次電池用正極副活物質、非水電解液二次電池用正極活物質および非水電解液二次電池を提供することにある。
本発明に記載される非水電解液二次電池用正極活物質は、第1のリチウム遷移金属複合酸化物を有する主活物質と、第2のリチウム遷移金属複合酸化物を有する副活物質と、を有する非水電解液二次電池用正極活物質であって、前記第2のリチウム遷移金属複合酸化物は、一次粒子およびその凝集体である二次粒子の一方または両方からなる粒子の形態で存在し、前記粒子の粒度分布において、体積累積頻度が10%、50%および90%に達する粒径をそれぞれ、D10、D50およびD90としたとき、0<(D10/D50)<1、1<(D90/D50)≦5および5μm≦D50≦40μmのすべてを満足し、前記第2のリチウム遷移金属複合酸化物は、16cサイトにリチウムが存在し、かつスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物であることを特徴とする
過放電により電池電圧が0V付近まで低下すると、負極の電位が上昇し、負極集電体に使用されている銅が析出するため、電池特性が著しく劣化する。
本発明においては、16cサイトにリチウムが存在し、16cサイトに存在するリチウムが1回目の充電時に負極のリテンション分として負極に供給されることで、正極と負極のバランスを維持することができ、過放電時に負極の電位が上昇するのを抑制することができる。したがって、過放電特性が向上する。
図1において、充電後、放電すると、本発明例の負極の電位は従来例と同様に矢印cの経路で上昇するが、正極の電位は矢印eの経路で下降する。これは、従来例と比べて、正極の16cサイトにリチウムイオンが存在するためである。したがって、過放電が起こると点Bで正極と負極の電位が等しくなる。ここで、点Bの電位が、負極集電体として用いられるCuが溶出する電位より低いため、Cuの溶出が抑制されるのである。即ち、本発明の正極副活物質を用いた非水電解質二次電池は、過放電特性に優れる。
なお、図1を使用して集電体がCuの場合について説明しているが、集電体がCuの場合に限定されない。
しかしながら、16cサイトにリチウムが存在し、16cサイトに存在するリチウムが1回目の充電時に負極のリテンション分として負極に供給されるだけでは、過放電時に負極の電位が上昇するのを抑制できるものの、充放電容量を向上させることは難しい。
粒子ごとの大きさのばらつきを制御することにより、過放電特性の向上を損なうことなく、本発明の正極副活物質を正極板に塗布する場合の極板密度を向上させることができる。したがって、極板密度の向上により、電池の単位体積あたりの充放電容量を向上させることができる。
また粒度分布の体積累積頻度に関する特定の関係式を満足するように、粒子ごとの大きさのばらつきを制御することにより、過放電特性の向上と、極板密度の向上との両立を図ることができる。
前記粒子の粒度分布における粒子径の標準偏差は、0.6以下であることが好ましい。
副活物質の粒子径の標準偏差を0.6以下にすることによっても、過放電特性の向上と、極板密度の向上の両立を図ることができる。
前記第2のリチウム遷移金属複合酸化物は、前記主活物質と前記副活物質からなる正極活物質に対して、1〜30重量%であることが好ましい。
前記第1のリチウム遷移金属複合酸化物は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物の少なくとも一種であることが好ましい。
本発明に記載される非水電解液二次電池は、本発明に記載の非水電解液二次電池用正極活物質を正極活物質として用いた正極活物質層を帯状正極集電体の両面にそれぞれ形成することにより構成した帯状正極と、金属リチウム、リチウム合金またはリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物を負極活物質として用いた負極活物質層を帯状負極集電体の両面にそれぞれ形成することにより構成した帯状負極とを具備し、帯状正極と帯状負極とを帯状セパレータを介して積層した状態で多数回巻回することにより帯状正極と帯状負極との間に帯状セパレータが介在している渦巻型の巻回体を構成してなる。
このように構成することで、製造工程が簡単であるとともに、正極活物質層および負極活物質層の割れや、帯状セパレータからの剥離を生じ難くすることができる。また、電池容量を大きく、エネルギー密度を高くすることができる。特に本発明の非水電解液二次電池用正極活物質は、極板密度が高く充填性に優れ、かつ結合材となじみやすい。そのため高い充放電容量を有し、かつ結着性、表面の平滑性に優れた正極になるため、さらに正極活物質層の割れや剥がれを防ぐことができる。
以上説明したように、本発明の正極副活物質、正極活物質を用いることにより、非水電解液二次電池の過放電特性、極板密度を向上させることができる。これにより従来達成できなかった優れた電池特性の非水電解液二次電池を実用化することができ、種々の分野への応用が可能となる。
以下、本発明に係る非水電解液二次電池用正極副活物質、非水電解液二次電池用正極活物質および非水電解液二次電池を、実施の形態、実施例及び図1〜図5を用いて説明する。ただし、本発明は、この実施の形態、実施例及び図1〜図5に限定されない。
本発明の正極副活物質および正極活物質は、少なくともスピネル構造(スピネル型の結晶構造)のリチウム遷移金属複合酸化物を有する。「スピネル構造」とは、複酸化物でAB型の化合物(AとBは金属元素)にみられる代表的結晶構造型の一つである。
図2は、スピネル構造のリチウム遷移金属複合酸化物の結晶構造を示す模式図である。図2において、リチウム原子1は8aサイトの四面体サイトを占有し、酸素原子2は32eサイトを占有し、遷移金属原子3は16dサイトの八面体サイトを占有している。
スピネル構造のリチウム遷移金属複合酸化物としては、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムチタン複合酸化物、リチウム・マンガン・ニッケル複合酸化物、リチウム・マンガン・コバルト複合酸化物等が挙げられる。中でも、リチウムマンガン複合酸化物が好ましい。
本発明の正極副活物質においては、上記リチウム遷移金属複合酸化物が、一次粒子およびその凝集体である二次粒子の一方または両方からなる粒子の形態で存在する。即ち、リチウム遷移金属複合酸化物は、粒子の形態で存在し、その粒子は、一次粒子のみからなっていてもよく、一次粒子の凝集体である二次粒子のみからなっていてもよく、一次粒子と二次粒子の両者からなっていてもよい。
本発明においては、粒子の粒度分布において、体積累積頻度が10%、50%および90%の達する粒径をそれぞれ、D10、D50およびD90としたとき、
0.1≦(D10/D50)≦1、
1<(D90/D50)≦3および
5μm≦D50≦40μm
のすべてを満足するのが好ましい。
D10、D50およびD90が上記関係式を満足することにより、過放電特性の向上を損なうことなく、更に、極板密度を向上させることができる。
また、D10、D50およびD90は、目的および用途に応じて更に好適な関係式で表される。例えば、更に、極板密度を向上させるためには、
0.2≦(D10/D50)≦0.9、
1.2<(D90/D50)≦2および
7μm≦D50≦30μm
のすべてを満足するのが好ましい。
また、本発明の正極副活物質、正極活物質を用いた非水電解液二次電池が住宅用、家庭用等の定置用に好適に用いられるためには、
0.7≦(D10/D50)≦1、
1<(D90/D50)≦1.3および
7μm≦D50≦15μm
のすべてを満足するのが好ましい。この場合、過放電特性、極板密度の向上だけでなく、サイクル特性、保存特性、負荷特性および出力特性にも優れる。
更に、本発明の正極副活物質、正極活物質を用いた非水電解液二次電池が携帯電話、電動工具、電気自動車等の用途に好適に用いられるためには、
0.2≦(D10/D50)≦0.7、
1.3<(D90/D50)≦2および
15μm≦D50≦36μm
のすべてを満足するのが好ましい。この場合、過放電特性、サイクル特性、保存特性、負荷特性および出力特性に優れ、かつ、極板密度もより優れる。
本発明において、粒子の粒度分布を測定する方法としては、例えば、ふるい分け法、画像解析法、沈降法、レーザー回折散乱法、電気的検知法が挙げられる。
本発明の副活物質のリチウム遷移金属複合酸化物は、16cサイトにリチウムが存在する。16cサイトにリチウムが存在し、16cサイトに存在するリチウムが1回目の充電時に負極のリテンション分として負極に供給されることで、過放電により負極の電位が上昇し、負極集電体の芯材である銅が溶出するのを防ぐことができる。
本発明において、リチウム遷移金属複合酸化物の16cサイトにリチウムが存在することを測定する方法としては、例えば、リートベルト解析法が挙げられる。
リチウムは、どのような状態で存在していてもよい。リチウム原子の状態で存在していても、リチウムイオンの状態で存在していてもよい。
本発明の正極副活物質は、粒子の粒度分布において、粒子径の標準偏差が0.6以下であるのが好ましく、0.36以下であるのがより好ましく、また、0.07以上であるのが好ましい。上記範囲であると、過放電特性を損なうことなく、極板密度をより高くすることができる。
本発明の正極副活物質においては、粒子の粒度分布において、体積基準の粒子径が50μm以上である粒子の割合が、全粒子の10体積%以下であるのが好ましく、7体積%以下であるのがより好ましい。
上記のように粒子の粒度分布を制御することによって、二次凝集体からなる粗大粒子が含まれないようにすることができるため、平滑性に優れた正極塗布面を得ることができる。
本発明の正極副活物質においては、リチウム遷移金属複合酸化物の(400)結晶性が600〜1200オングストロームであるのが好ましい。(400)結晶性は、700オングストローム以上であるのがより好ましく、また、1100オングストローム以下であるのがより好ましい。
結晶性が大きいほど、結晶性に優れ、結晶構造の歪みが少ないことになる。なお、本発明に用いられるような、スピネル構造のリチウム遷移金属複合酸化物においては、以下に示す(400)結晶性により、単位格子の配列の規則性の程度を示すことができる。
リチウム遷移金属複合酸化物の(400)結晶性は、例えば、X線回折法により求めることができる。X線回折法は、例えば、管電流100mA、管電圧40kVの条件で行うことができる。X線回折法で求められた(400)面に起因する回折ピークより、下記式(1)で表されるシェラーの式によって、結晶子径が算出される。
D=Kλ/(βcosθ) (1)
上記式中、Dは(400)結晶性(Å)を表し、Kはシェラー定数(Kは、光学系調整用焼結Si(理学電気社製)を使用し、(400)面に起因する回折ピークが1000Åとなる値を使用する。)を表し、λはX線源の波長(CuKα1の場合は、1.540562Å)を表し、βはβ=By(Bは観測プロフィルムの幅を意味し、yはy=0.9991−0.019505b−2.8205b+2.878b−1.0366bにより算出される。ここで、bは装置定数プロファイルの幅を意味する。)により算出され、θは回折角(degree)を表す。
本発明の正極副活物質においては、比表面積が0.2〜1.5m/gであるのが好ましい。比表面積は、0.25m/g以上であるのがより好ましく、また、1.2m/g以下であるのがより好ましく、0.9m/g以下であるのがさらに好ましい。比表面積が小さすぎると、放電容量が低下する。比表面積が大きすぎると、サイクル特性が優れたものにならない。
比表面積は、窒素ガス吸着法により測定することができる。
本発明の正極副活物質は、遷移金属がマンガンであるのが好ましい。遷移金属がマンガンであると、本発明の正極副活物質、正極活物質を用いた非水電解液二次電池が過放電特性および極板密度の向上に特に優れたものになるため、携帯電話、電動工具等の用途に特に好適に用いることができる。また、出力特性にも優れたものになるため、電気自動車の用途にも特に好適に用いることができる。
本発明の正極副活物質においては、リチウム遷移金属複合酸化物が、一般式LiMn(aは1.0<a<2.0を満たす数を表す。)で表されるリチウムマンガン複合酸化物が好適である。このリチウムマンガン複合酸化物は、その一部がマグネシウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ホウ素およびフッ素からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
本発明の正極副活物質においては、リチウム遷移金属複合酸化物は、鉄の含有量が25ppm以下であるのが好ましく、20ppm以下であるのがより好ましく、18ppm以下であるのがさらに好ましい。鉄の含有量が多すぎると、電池の内部短絡の原因になる場合がある。
本発明の正極活物質は、第1のリチウム遷移金属複合酸化物を有する主活物質と、第2のリチウム遷移金属複合酸化物を有する副活物質とを有する。
本発明の正極活物質において、第1のリチウム遷移金属複合酸化物は、特に限定されない。
第1のリチウム遷移金属複合酸化物としては、1種類のリチウム遷移金属複合酸化物に限定されない。
本発明の正極活物質において、第1のリチウム遷移金属複合酸化物は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウムおよびリチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
これにより、過放電特性、極板密度の向上だけでなく、さらに充放電容量が上昇し、負荷特性、出力特性にも優れた非水電解液二次電池を得ることができる。
第1のリチウム遷移金属複合酸化物は、コバルト酸リチウムとマンガン酸リチウム、コバルト酸リチウムとニッケルコバルトマンガン酸リチウム、コバルト酸リチウムとニッケルコバルトアルミン酸リチウム、マンガン酸リチウムとニッケルコバルトマンガン酸リチウム、マンガン酸リチウムとニッケルコバルトアルミン酸リチウムおよびニッケルコバルトマンガン酸リチウムとニッケルコバルトアルミン酸リチウムからなる群から選ばれる1種であるのが好ましい。
一般式Li1+xCoO(xは−0.5≦x≦0.5を満たす数を表す。)で表されるコバルト酸リチウムが好ましい。このコバルト酸リチウムは、その一部がマグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バナジウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンおよびスズからなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
一般式LiMn3−a4+f(aは0.8≦a≦1.2を満たす数を表し、fは−0.5≦f≦0.5を満たす数を表す。)で表されるマンガン酸リチウムが好ましい。このマンガン酸リチウムは、その一部がマグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バナジウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンおよびスズからなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
一般式Li1+xNiO(xは−0.5≦x≦0.5を満たす数を表す。)で表されるニッケル酸リチウムが好ましい。このニッケル酸リチウムは、その一部がマグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バナジウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンおよびスズからなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
一般式LiNiCo(1−y−z)(XはAlまたはMnを表し、xは0.95≦x≦1.10を満たす数を表し、yは0.1≦y≦0.9を満たす数を表し、zは0.1≦z≦0.9を満たす数を表し、wは1.8≦w≦2.2を満たす数を表す。)で表されるリチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物が好ましい。このリチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物は、その一部がマグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バナジウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンおよびスズからなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
本発明の正極活物質において、第1のリチウム遷移金属複合酸化物は、マンガン酸リチウムの量をAとし、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウムおよびリチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の量をBとした場合に0.2≦B/(A+B)≦0.8の範囲になるように混合するのが好ましい。
これにより、過放電特性、極板密度の向上だけでなく、さらに負荷特性、出力特性が向上した非水電解液二次電池を得ることができる。
第1のリチウム遷移金属複合酸化物は、0.4≦B/(A+B)≦0.6の範囲になるように混合するのがより好ましい。この範囲であれば、負荷特性、出力特性の向上が著しいからである。
本発明の正極活物質において、第1のリチウム遷移金属複合酸化物であるマンガン酸リチウムは、16dサイトにリチウムが存在するのが好ましい。
第1のリチウム遷移金属複合酸化物の16dサイトにリチウムが存在することで、過放電特性の向上および極板密度の向上を損なうことなく、サイクル特性が向上する。
リチウムは、どのような状態で存在していてもよい。リチウム原子の状態で存在していても、リチウムイオンの状態で存在していてもよい。
第2のリチウム遷移金属複合酸化物は、本発明に記載の正極副活物質におけるリチウム遷移金属複合酸化物と同様である。
第2のリチウム遷移金属複合酸化物を有する副活物質の量は、正極活物質の量に対して、1〜30重量%であるのが好ましい。副活物質の量は、3重量%以上であるのがより好ましく、また、15重量%以下であるのがより好ましい。副活物質の量が少なすぎると過放電時に負極集電体であるCuの溶出が起こる。副活物質の量が多すぎるとサイクル特性が劣化する。
本発明の正極副活物質は、製造方法を特に限定されないが、例えば、以下の(1)〜(3)のようにして製造することができる。
(1)原料混合物の作製
後述する化合物を各構成元素が所定の組成比となるように混合して、原料混合物を得る。原料混合物に用いられる化合物は、目的とする組成を構成する元素に応じて選択される。
混合の方法は、特に限定されず、例えば、粉末状の化合物をそのまま混合して原料混合物とする方法;水および/または有機溶媒を用いてスラリー状として混合した後、乾燥させて原料混合物とする方法;上述した化合物の水溶液を混合して沈降させ、得られた沈殿物を乾燥させて原料混合物とする方法;これらを併用する方法が挙げられる。
以下に、原料混合物に用いられる化合物を例示する。
リチウム化合物は、特に限定されないが、例えば、LiCO、LiOH、LiOH・HO、LiO、LiCl、LiNO、LiSO、LiHCO、Li(CHCOO)、フッ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、過酸化リチウムが挙げられる。中でも、LiCO、LiOH、LiOH・HO、LiO、LiCl、LiNO、LiSO、LiHCO、Li(CHCOO)が好ましい。
マンガン化合物は、特に限定されないが、例えば、マンガンメタル、酸化物(例えば、MnO、Mn、Mn)、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩(MnCO)、塩化物塩、ヨウ化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガンが挙げられる。中でも、マンガンメタル、MnCO、MnSO、MnClが好ましい。
マンガン化合物は、粒子の粒度分布において、体積累積頻度が10%、50%および90%に達する粒径をそれぞれ、d10、d50およびd90としたとき、d10が5〜25μm、d50が7〜40μm、d90が10〜60μmのものを用いるのが好ましい。このような粒度分布を有するマンガン化合物を得るために、らいかい乳鉢、ボールミル、振動ミル、ジェットミル等を使用することができる。また、種々の分級装置を使用することもできる。
マグネシウム化合物は、特に限定されないが、例えば、MgO、MgCO、Mg(OH)、MgCl、MgSO、Mg(NO、Mg(CHCOO)、ヨウ化マグネシウム、過塩素酸マグネシウムが挙げられる。中でも、MgSO、Mg(NOが好ましい。
ホウ素化合物は、特に限定されないが、例えば、B(融点460℃)、HBO(分解温度173℃)、リチウムホウ素複合酸化物、オルトホウ酸、酸化ホウ素、リン酸ホウ素等が挙げられる。中でも、HBO、Bが好ましい。
フッ素化合物は、特に限定されないが、例えば、NHF、LiF、LiCl、LiBr、MnF、フッ化水素、フッ化酸素、フッ化水素酸、フッ化酸化塩素、フルオロ硫酸臭素が挙げられる。中でも、NHF、LiF、MnFが好ましい。
チタン化合物は、特に限定されないが、例えばフッ化チタン、塩化チタン、臭化チタン、ヨウ化チタン、酸化チタン、硫化チタン、硫酸チタン等が挙げられる。中でもTiO、TiO、Ti、TiCl、Ti(SOが好ましい。
ジルコニウム化合物は、特に限定されないが、例えば、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム、ヨウ化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、硫化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム等が挙げられる。中でもZrF、ZrCl、ZrCl、ZrBr、ZrI、ZrO、ZrO、ZrS、Zr(OH)等が好ましい。
ハフニウム化合物は、特に限定されないが、例えば、フッ化ハフニウム、塩化ハフニウム、臭化ハフニウム、ヨウ化ハフニウム、酸化ハフニウム、炭酸ハフニウム等が挙げられる。中でもHfF、HfCl、HfBr、HfO、Hf(OH)、HfS等が好ましい。
硫黄化合物は、特に限定されないが、例えば、LiSO、MnSO、(NHSO、Al(SO、MgSO、硫化物、ヨウ化硫黄、硫化水素、硫酸とその塩、硫化窒素が挙げられる。中でも、LiSO、MnSO、(NHSO、Al(SO、MgSOが好ましい。
ナトリウム化合物は、特に限定されないが、例えば、NaCO、NaOH、NaO、NaCl、NaNO、NaSO、NaHCO、CHCONaが挙げられる。
カルシウム化合物は、特に限定されないが、例えば、CaO、CaCO、Ca(OH)、CaCl、CaSO、Ca(NO、Ca(CHCOO)が挙げられる。
また、上述した各元素の2種以上を含有する化合物を用いてもよい。
以下に、原料混合物を得る好適な方法を、マグネシウムとホウ素とを有するリチウムマンガン複合酸化物である正極副活物質を例に挙げて、具体的に説明する。
上述したマンガン化合物およびマグネシウム化合物から調製した、所定の組成比のマンガンイオンおよびマグネシウムイオンを含有する水溶液を、かくはんしている純水中に滴下する。
ついで、炭酸水素アンモニウム水溶液を滴下し、マンガンおよびマグネシウムを沈殿させ、マンガンおよびマグネシウムの塩を得る。なお、炭酸水素アンモニウム水溶液の代わりに、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液等のアルカリ溶液を用いることもできる。
つぎに、水溶液をろ過して沈殿物を採取し、採取した沈殿物を水洗し、熱処理した後、上述したリチウム化合物、ホウ素化合物と混合して、原料混合物を得る。
(2)原料混合物の焼成および粉砕
ついで、原料混合物を焼成する。焼成の温度、時間、雰囲気等は、特に限定されず、目的に応じて適宜決定することができる。
焼成温度は、650℃以上であるのが好ましく、700℃以上であるのがより好ましい。焼成温度が低すぎると、未反応の原料が正極活物質に残留し、正極活物質の本来の特徴を生かせない場合がある。また、焼成温度は、1100℃以下であるのが好ましく、950℃以下であるのがより好ましい。焼成温度が高すぎると、正極活物質の粒径が大きくなり過ぎて電池特性が低下する場合がある。また、LiMnO、LiMnO等の副生成物が生成しやすくなり、単位重量あたりの放電容量の低下、サイクル特性の低下、動作電圧の低下を招く場合がある。
焼成時間は、一般に、1〜24時間であるのが好ましく、6〜12時間であるのがより好ましい。焼成時間が短すぎると、原料粒子間の拡散反応が進行しない。焼成時間が長すぎると、拡散反応がほぼ完了した後の焼成が無駄となり、また、焼結による粗大粒子が形成されてしまう場合がある。
焼成は、複数の焼成工程に分けてもよい。例えば第一の焼成工程を350〜550℃で、1〜24時間行い、第二の焼成工程を650〜1000℃で、1〜24時間行うことができる。
焼成の雰囲気は、例えば、大気、酸素ガス、これらと窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスとの混合ガス、酸素濃度(酸素分圧)を制御した雰囲気、弱酸化雰囲気が挙げられる。中でも、酸素濃度を制御した雰囲気が好ましい。
焼成後、所望により、らいかい乳鉢、ボールミル、振動ミル、ピンミル、ジェットミル等を用いて粉砕し、目的とする粒度の粉体とすることもできる。このように、焼成後粉砕することによって、比表面積を上述した好適範囲とすることができる。
(3)有機処理
得られたリチウム遷移金属複合酸化物をリチウム含有の有機溶液と反応させる。反応させて得られた溶液をろ過し、乾燥させる。
乾燥は、空気中でも、窒素ガス雰囲気でも、アルゴンガス雰囲気でも、真空状態で行ってもよい。
上述した製造方法により、本発明の正極副活物質を得ることができる。
本発明の正極活物質は、製造方法を特に限定されないが、例えば、以下の(1)〜(3)のようにして製造することができる。
(1)主活物質の作製
化合物を各構成元素が所定の組成比となるように混合して、原料混合物を得る。原料混合物に用いられる化合物は、目的とする組成を構成する元素に応じて選択される。
混合の方法は、特に限定されず、例えば、粉末状の化合物をそのまま混合して原料混合物とする方法;水および/または有機溶媒を用いてスラリー状として混合した後、乾燥させて原料混合物とする方法;上述した化合物の水溶液を混合して沈降させ、得られた沈殿物を乾燥させて原料混合物とする方法;これらを併用する方法が挙げられる。
ついで、原料混合物を焼成する。焼成の温度、時間、雰囲気等は、特に限定されず、目的に応じて適宜決定することができる。
焼成後、所望により、らいかい乳鉢、ボールミル、振動ミル、ピンミル、ジェットミル等を用いて粉砕し、目的とする粒度の粉体とすることもできる。
(2)副活物質の作製
上述した正極副活物質の作製と同様の製造方法により、副活物質を得ることができる。
(3)主活物質と副活物質の混合
得られた主活物質と副活物質とを所定の重量比で混合し、本発明の正極活物質を得ることができる。
主活物質と副活物質の混合方法は特に限定されない。例えば、高速攪拌機で混合することができる。
本発明の正極活物質は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池等の非水電解液二次電池に好適に用いられる。
非水電解液二次電池は、従来公知の非水電解液二次電池において、正極活物質の少なくとも一部として本発明の正極活物質とすればよく、他の構成は特に限定されない。以下、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。
負極活物質としては、金属リチウム、リチウム合金、またはリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物が使用することができる。リチウム合金としては、例えば、LiAl合金,LiSn合金,LiPb合金が挙げられる。リチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物としては、例えば、グラファイト,黒鉛等の炭素材料;酸化スズ、酸化チタン等の酸化物が挙げられる。
電解液としては、作動電圧で変質したり、分解したりしない化合物であれば特に限定されない。
溶媒としては、例えば、ジメトキシエタン,ジエトキシエタン,エチレンカーボネート,プロピレンカーボネート,ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネート,エチルメチルカーボネート,メチルホルメート,γ−ブチロラクトン,2−メチルテトラヒドロフラン,ジメチルスルホキシド,スルホラン等の有機溶媒が挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム,四フッ化ホウ酸リチウム,四フッ化リン酸リチウム,トリフルオロメタン酸リチウム等のリチウム塩が挙げられる。
上述した溶媒と電解質とを混合して電解液とする。ここで、ゲル化剤等を添加し、ゲル状として使用してもよい。また、吸湿性ポリマーに吸収させて使用してもよい。更に、無機系または有機系のリチウムイオンの導電性を有する固体電解質を使用してもよい。
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン製、ポリプロピレン製等の多孔性膜等が挙げられる。
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミドアクリル樹脂等が挙げられる。
本発明の正極活物質と、上述した負極活物質、電解液、セパレーターおよび結
着剤を用いて、定法に従い、リチウムイオン二次電池とすることができる。
これにより従来達成できなかった優れた電池特性が実現できる。
本発明の正極活物質を用いて正極を製造する好ましい方法を以下に説明する。
本発明の正極活物質の粉末に、アセチレンブラック、黒鉛等のカーボン系導電剤、結着剤および結着剤の溶媒または分散媒とを混合することにより正極合剤を調製する。得られた正極合剤をスラリーまたは混練物とし、アルミニウム箔等の集電体に塗布し、または担持させ、プレス圧延して正極活物質層を集電体に形成させる。
図3は、正極の模式的な断面図である。図3に示されているように、正極13は、正極活物質5を結着剤4により集電体12上に保持させてなる。
本発明の正極活物質は、導電剤粉末との混合性に優れ、電池の内部抵抗が小さいと考えられる。したがって、充放電特性、特に放電容量に優れる。
また、本発明の正極活物質は、結着剤と混練するときも、流動性に優れ、また、結着剤の高分子と絡まりやすく、優れた結着性を有する。
さらに、本発明の正極活物質は、粗大粒子を含まず、球状であるため、作製した正極の塗膜面の表面が平滑性に優れたものになる。このため、正極板の塗膜面は結着性に優れ、剥がれにくくなる。また、表面が平滑で充放電に伴う塗膜面表面のリチウムイオンの出入りが均一に行われるため、サイクル特性において顕著な改善がみられる。
リチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、円筒型、コイン型、角型、ラミネート型等とすることができる。
図4は、円筒型電池の模式的な断面図である。図4に示されるように、円筒型電池20においては、集電体12上に正極活物質層を形成させた正極13と、集電体12上に負極活物質層を形成させた負極11とがセパレーター14を介して、繰り返し積層されている。
図5は、コイン型電池の模式的な部分断面図である。図5に示されるように、コイン型電池30においては、集電体12上に正極活物質層を形成させた正極13と、負極11とが、セパレーター14を介して、積層されている。
図6は、角型電池の模式的な斜視図である。図6に示されるように、角型電池40においては、集電体12上に正極活物質層を形成させた正極13と、集電体12上に負極活物質層を形成させた負極11とが、セパレーター14を介して、繰り返し積層されている。
正極、負極、セパレーターおよび非水電解液を有する非水電解液二次電池であって、下記Iを正極の正極活物質として、下記IIを負極の負極活物質として用いる非水電解液二次電池を得ることができる。
I:本発明に記載の非水電解液二次電池用正極活物質。
II:金属リチウム、リチウム合金およびリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる非水電解液二次電池用負極活物質。
この非水電解液二次電池は、高い極板密度を有し、過放電特性に非常に優れる。
本発明の正極活物質を用いた非水電解液二次電池の用途は特に限定されない。例えばノートパソコン、ペン入力パソコン、ポケットパソコン、ノート型ワープロ、ポケットワープロ、電子ブックプレーヤ、携帯電話、コードレスフォン子機、電子手帳、電卓、液晶テレビ、電気シェーバ、電動工具、電子翻訳機、自動車電話、携帯プリンタ、トランシーバ、ページャ、ハンディターミナル、携帯コピー、音声入力機器、メモリカード、バックアップ電源、テープレコーダ、ラジオ、ヘッドホンステレオ、ハンディクリーナ、ポータブルコンパクトディスク(CD)プレーヤ、ビデオムービ、ナビゲーションシステム等の機器の電源として用いることができる。
また、照明機器、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、冷蔵庫、オーブン電子レンジ、食器洗浄器、洗濯機、乾燥器、ゲーム機器、玩具、ロードコンディショナ、医療機器、自動車、電気自動車、ゴルフカート、電動カート、電力貯蔵システム等の電源として用いることができる。
さらに、用途は、民生用に限定されず、軍需用または宇宙用とすることもできる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
1.正極副活物質の作製
〔実施例1〕
粒子の粒度分布における体積累積頻度が10%、50%および90%に達する粒径(d10、d50およびd90)が、それぞれ10μm、13μmおよび17μmである、マンガンの炭酸塩を水洗し、乾燥させた後、この乾燥物2500gと、炭酸リチウム393gとを混合させた。得られた混合物を約800℃で約10時間焼成した。得られた焼成物を粉砕した。
粉砕後の焼成物100gを100mlのヘキサン溶液中で69.1mlのn−ブチルリチウム(1.6mol/L)と反応させた。得られた反応溶液をろ過し、窒素ガス雰囲気中で乾燥して、正極副活物質を得た。
〔実施例2〕
粒子の粒度分布における体積累積頻度が10%、50%および90%に達する粒径(d10、d50およびd90)が、それぞれ9μm、12μmおよび16μmである、マンガンの炭酸塩を水洗し、乾燥させた後、この乾燥物2500gと、炭酸リチウム393gとを混合させた。得られた混合物を約800℃で約10時間焼成した。得られた焼成物を粉砕した。
粉砕後の焼成物100gを100mlのヘキサン溶液中で69.1mlのn−ブチルリチウム(1.6mol/L)と反応させた。得られた反応溶液をろ過し、窒素ガス雰囲気中で乾燥して、正極副活物質を得た。
〔比較例1〕
d10、d50およびd90が、それぞれ0.3μm、2.1μmおよび6.1μmである二酸化マンガン500.0gと、炭酸リチウム101.5gとを5分間乾式混合して原料混合物の粉末を得た。得られた原料混合物を大気雰囲気中で約800℃で約10時間焼成した。得られた焼成物を粉砕した。
粉砕後の焼成物100gを100mlのヘキサン溶液中で69.1mlのn−ブチルリチウム(1.6mol/L)と反応させた。得られた反応溶液をろ過し、窒素ガス雰囲気中で乾燥して、正極副活物質を得た。
〔比較例2〕
d10、d50およびd90が、それぞれ1.4μm、3.9μmおよび8.0μmである二酸化マンガン500.0gと、炭酸リチウム101.5gとを5分間乾式混合して原料混合物の粉末を得た。得られた原料混合物を大気雰囲気中で約800℃で約10時間焼成した。得られた焼成物を粉砕した。
粉砕後の焼成物100gを100mlのヘキサン溶液中で69.1mlのn−ブチルリチウム(1.6mol/L)と反応させた。得られた反応溶液をろ過し、窒素ガス雰囲気中で乾燥して、正極副活物質を得た。
2.正極副活物質の性状
(1)正極副活物質の粒度分布
得られた正極副活物質の粒度分布を、レーザー回折散乱法により測定し、D10、D50、D90を求めた。
(2)正極副活物質の極板密度
正極副活物質粉末90重量部、導電剤となる炭素粉末5重量部およびポリフッ化ビニリデンのノルマルメチルピロリドン溶液(ポリフッ化ビニリデン量として5重量部)を混練してペーストを調製し、これをドクターブレード法にてアルミニウム集電体に塗布し、乾燥して正極板とした。正極板を所定の大きさ(5cm)に裁断した後、一軸プレス機にて極板を圧縮した。圧縮後の極板の厚さと重量から極板密度を算出した。
結果を第1表に示す。
本発明の正極副活物質は、実施例の正極副活物質に比べて、極板密度が向上していることがわかる。
3.正極副活物質の評価
実施例1および比較例1で得られた各正極副活物質を用いて、負極がリチウム金属である試験用二次電池を作製して、以下のようにして評価した。
負極がリチウム金属である試験用二次電池は以下のように作製した。
正極副活物質の粉末90重量部と、導電剤となる炭素粉末5重量部と、ポリフッ化ビニリデンのノルマルメチルピロリドン溶液(ポリフッ化ビニリデン量として5重量部)とを混練してペーストを調製し、これを正極集電体のAl箔上に塗布し乾燥させて正極板とした。得られた正極板を用い、負極がリチウム金属である試験用二次電池を得た。
(1)初期放電容量
充電電位4.3V、放電電位2.75V、放電電流0.2mA/cmの条件で、負極がリチウム金属である試験用二次電池を放電させた。このときの放電容量を初期放電容量とした。
(2)初期充電容量
電流値0.2mA/cmの条件で、4.3V定電圧充電した。このときの充電容量を初期充電容量とした。
次に実施例2および比較例2で得られた各正極副活物質を用いて、ラミネート電池を作製して、以下のようにして評価した。
主活物質としてコバルト酸リチウム90重量部、副活物質として実施例2および比較例2で得られた各正極副活物質10重量部を混合して得られた正極活物質を用い、試験用二次電池の場合と同様の方法により、正極板を得た。また、負極活物質として黒鉛を用い、正極板の場合と同様にして負極集電体のCu箔上に塗布し乾燥させて負極板とした。セパレータには多孔性ポリエチレンフィルムを用いた。電解液には、エチレンカーボネート/メチルエチルカーボネート=3/7(体積比)の混合溶媒にLiPFを1mol/Lの濃度になるように溶解させた溶液を用いた。正極板、負極板およびセパレータを薄いシート状に成形し、これを積層させてラミネートフィルムの電池ケースに収納し、さらに、参照極としてLi金属を貼り付けたNiリードをラミネート電池の中央部に挿入した後、電池ケース内に電解液を注入して、熱シールを行いラミネートフィルムを密着させ、ラミネート電池を得た。
(3)0V過放電時の負極電位
ラミネート電池を0.1Cの電流値で、4.2V定電圧充電し、0.2Cの電流値で、終止電圧2.75Vの定電流放電を行った。次に、電池電圧が0Vとなるように過放電を行い、このときの負極電位を参照極として挿入したLi金属を基準電圧として測定した。負極電位が小さいほど、過放電特性に優れる。
結果を第1表に示す。
第1表から、本発明の正極副活物質は、比較例に比べて初期放電容量、初期充電容量が向上していることがわかる。また、本発明の正極副活物質は、0V過放電時の負極電位が、比較例に比べて小さいので過放電特性に優れていることがわかる。さらに、本発明の正極副活物質は、比較例の正極副活物質に比べて、過放電時のガス発生が抑制されていた。
Figure 0003856015
図1は、リチウムイオン二次電池の充放電サイクル時の正極および負極の電位の変化を模式的に示すグラフである。 図2は、スピネル構造のリチウム遷移金属複合酸化物の結晶構造を示す模式図である。 図3は、正極の模式的な断面図である。 図4は、円筒型電池の模式的な断面図である。 図5は、コイン型電池の模式的な部分断面図である。 図6は、角型電池の模式的な斜視図である。
符号の説明
1 8aサイト
2 32eサイト
3 16dサイト
4 結着剤
5 正極活物質
11 負極
12 集電体
13 正極
14 セパレーター
20 円筒型電池
30 コイン型電池
40 角型電池

Claims (5)

  1. 第1のリチウム遷移金属複合酸化物を有する主活物質と、第2のリチウム遷移金属複合酸化物を有する副活物質と、を有する非水電解液二次電池用正極活物質であって、
    前記第2のリチウム遷移金属複合酸化物は、一次粒子およびその凝集体である二次粒子の一方または両方からなる粒子の形態で存在し、
    前記粒子の粒度分布において、体積累積頻度が10%、50%および90%に達する粒径をそれぞれ、D10、D50およびD90としたとき、
    0<(D10/D50)<1、
    1<(D90/D50)≦5および
    5μm≦D50≦40μmのすべてを満足し、
    前記第2のリチウム遷移金属複合酸化物は、16cサイトにリチウムが存在し、かつスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物であることを特徴とする非水電解液二次電池用正極活物質。
  2. 前記粒子の粒度分布における粒子径の標準偏差は、0.6以下である請求項に記載の非水電解液二次電池用正極活物質。
  3. 前記第2のリチウム遷移金属複合酸化物は、前記主活物質と前記副活物質からなる正極活物質に対して、1〜30重量%であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の非水電解液二次電池用正極活物質
  4. 前記第1のリチウム遷移金属複合酸化物は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の非水電解液二次電池用正極活物質
  5. 請求項1乃至4に記載の非水電解液二次電池用正極活物質を正極活物質として用いた正極活物質層を帯状正極集電体の両面にそれぞれ形成することにより構成した帯状正極と、
    金属リチウム、リチウム合金またはリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物を負極活物質として用いた負極活物質層を帯状負極集電体の両面にそれぞれ形成することにより構成した帯状負極とを具備し、
    帯状正極と帯状負極とを帯状セパレータを介して積層した状態で多数回巻回することにより帯状正極と帯状負極との間に帯状セパレータが介在している渦巻型の巻回体を構成してなる非水電解液二次電池。
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