JP4876371B2 - 非水電解質二次電池用正極活物質、非水電解質二次電池用正極合剤および非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
なかでもLiMn2O4は、構成元素であるマンガンが資源として多量に存在するため、原料を安価に入手できる。また環境に対する負荷も少ない。更にデインターカレーション反応によって、結晶中のLiイオンが全量脱離しても、結晶構造が安定に存在する。このためLiCoO2およびLiNiO2に比べて、LiMn2O4を用いた非水電解質二次電池は、満充電状態での熱安定性に優れる。
しかしながら、現在では、モバイル電子機器は、さまざまな機能が付与される等の高機能化や、高温や低温での使用等のため、要求特性がより一層厳しいものとなっている。また電気自動車用バッテリー等の電源への応用が期待されている。
したがって、これまでの非水電解質二次電池では、十分な電池特性が得られず、更なる改良が求められている。
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、粒子であるとともに、
前記粒子の表面にイットリウム、ニオブ、スズ、ランタン、サマリウム、亜鉛、ガドリニウム、ネオジムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aを含有する化合物を有し、
前記Aの量は前記リチウム遷移金属複合酸化物と前記Aの量の合計に対して、0重量%より大きく、2重量%より小さい、非水電解質二次電池用正極活物質。
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、粒子であるとともに、前記粒子の表面にイットリウム、ニオブ、スズ、ランタン、サマリウム、亜鉛、ガドリニウム、ネオジムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aを含有する化合物を有し、
前記Aの量は前記リチウム遷移金属複合酸化物と前記Aの量の合計に対して、0重量%より大きく、2重量%より小さく、かつ
前記正極活物質と前記導電剤との間に元素Aを含有する化合物を有する、非水電解質二次電池用正極合剤。
金属リチウム、リチウム合金、リチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材料またはリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物を負極活物質として用いた負極活物質層を、帯状負極集電体の少なくとも片面に形成させることにより構成した帯状負極と、
帯状セパレータとを具備し、
前記帯状正極と前記帯状負極とを前記帯状セパレータを介して積層した状態で複数回巻回させて、前記帯状正極と前記帯状負極との間に前記帯状セパレータが介在している渦巻型の巻回体を構成してなる、非水電解質二次電池。
図1は、スピネル構造のリチウム遷移金属複合酸化物の結晶構造を示す模式図である。図1において、リチウム原子1は8aサイトの四面体サイトを占有し、酸素原子2は32eサイトを占有し、遷移金属原子3(および、場合により過剰のリチウム原子)は16dサイトの八面体サイトを占有している。
元素Aの量は、リチウム遷移金属複合酸化物と元素Aの量の合計に対して、0.1重量%以上であるのが好ましく、また、1.0重量%以下であるのが好ましい。
Aの量が多すぎると、充放電容量の低下を引き起こすため好ましくない。Aの量が少なすぎると、高温特性改良の効果が低くなるため好ましくない。
元素Aを含有する化合物は、リチウム遷移金属複合酸化物の表面にどのような形で存在していても本発明の効果を発揮する。例えば、元素Aを含有する化合物がリチウム遷移金属複合酸化物の表面の全体を被覆している場合であっても、元素Aを含有する化合物がリチウム遷移金属複合酸化物の表面の一部を被覆している場合であっても、高温特性を向上させることができる。好ましくは、元素Aを含有する化合物がリチウム遷移金属複合酸化物の表面の一部を被覆している場合である。この場合、さらに高温特性を向上させることができる。
また、元素Aを含有する化合物は、少なくともリチウム遷移金属複合酸化物の表面に存在していればよい。したがって、元素Aを含有する化合物の一部がリチウム遷移金属複合酸化物の内部に存在していてもよい。
元素Aを含有する化合物がリチウム遷移金属複合酸化物の表面に存在しているかどうかは、種々の方法によって解析することができる。例えば、オージェ電子分光法(AES:Auger Electron Spectroscopy)、X線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)で解析することができる。
元素Aを含有する化合物は、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に固着していることが好ましい。本発明において、固着とは、本発明の正極活物質を水や有機溶媒で攪拌してもリチウム遷移金属複合酸化物と元素Aを含有する化合物が遊離しないことを意味する。元素Aを含有する化合物がリチウム遷移金属複合酸化物の表面に固着していなげれば、スラリー作製時に元素Aを含有する化合物がリチウム遷移金属複合酸化物の表面から遊離することがあり好ましくない。
aは、0より大きいのが好ましく、また、0.15以下であるのが好ましい。リチウムでマンガンの一部を置換することにより、サイクル特性がさらに向上すると考えられる。
aは、0より大きいのが好ましく、また、0.15以下であるのが好ましい。化学量論比よりも過剰量のリチウムと、アルミニウムおよび/またはマグネシウムとの相乗効果によって、さらに、結晶構造の安定化が図られ、さらに、サイクル特性が向上すると考えられる。
態様(iii)において、aは、0より大きいのが好ましい。リチウムでマンガンの一部を置換することにより、サイクル特性が向上すると考えられる。
態様(iii)において、bは、0より大きいのが好ましく、0.05以上であるのがより好ましい。アルミニウムおよび/またはマグネシウムを含有すると、結晶構造が安定化するため、保存特性、負荷特性および出力特性を損なわずに、サイクル特性が優れたものになり、かつ、電池の膨れを更に抑制することができる。bは0.15以下であるのが好ましい。bが大きすぎると、放電容量が低下する。
態様(iii)において、cは、0より大きいのが好ましく、0.001以上であるのがより好ましい。ホウ素はフラックスとして作用し、結晶成長を促進させ、さらに、サイクル特性および保存特性を向上させる。cは0.01以下であるのが好ましい。cが大きすぎると、サイクル特性が低下する。
態様(iv)において、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種以外の元素を有する理由は、態様(i)〜(iii)と同様である。
また、hは0.001以上であるのがより好ましく、0.005以上であるのがさらに好ましく、0.05以下であるのがより好ましく、0.03以下であるのがさらに好ましい。この範囲のとき、リチウムイオンの易動度が上昇することにより、インピーダンスが低減すると考えられる。hが大きすぎると、電池特性がほとんど変化せず好ましくない。
その他の点については、態様(iv)の場合と同様である。
態様(vii)において、aは、0.02以上であるのが好ましく、また、0.08以下であるのが好ましい。態様(iii)の場合と同様の理由による。
態様(vii)において、Xは、フッ素および/または塩素であるのが好ましい。dは、0.01以上であるのが好ましく、また、0.03以下であるのが好ましい。態様(vi)の場合と同様の理由による。
態様(vii)において、eは0.001以上であるのが好ましく、また、0.01以下であるのが好ましい。態様(iii)の場合と同様の理由による。
硫黄の含有量は、リチウム遷移金属複合酸化物と硫黄の合計に対して、0.03〜0.3重量%であるのが好ましい。0.03重量%より少ないと、電子の移動抵抗が低減しにくい場合がある。0.3重量%より多いと、水分吸着により電池の膨れが生じる場合がある。
硫酸根は、硫酸イオン、硫酸イオンからその電荷を除いた原子の集団およびスルホ基を含む。アルカリ金属の硫酸塩、アルカリ土類金属の硫酸塩、有機硫酸塩ならびに有機スルホン酸およびその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種に基づくのが好ましい。
中でも、アルカリ金属の硫酸塩およびアルカリ土類金属の硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種に基づくのが好ましく、アルカリ金属の硫酸塩に基づくのがより好ましい。これらは、強酸強塩基の結合からなるため、化学的に安定だからである。
態様(vii)においては、上記各元素を含有することで、各元素の相乗効果により、高い充放電容量を有し、かつ、結着性および表面の平滑性に優れる正極板を得ることができる。
硫酸根がリチウム遷移金属複合酸化物の粒子の表面に存在することにより、粒子の周りの電子の移動抵抗が極めて小さくなり、その結果、電子の通りやすさが向上し、サイクル特性および負荷特性が向上すると考えられる。
また、本発明の正極活物質を用いて高電圧電池(例えば、リチウム遷移金属複合酸化物としてLiMn1.5Ni0.5O4を用いた電池)とした場合、従来の高電圧電池において問題であった充電時における電解液の分解が抑制され、その結果、サイクル特性が向上する。電解液の分解反応は、リチウム遷移金属複合酸化物の粒子と電解液との界面において、リチウム遷移金属複合酸化物が触媒として起こると考えられているが、電解液を分解させる働きのない硫酸根でリチウム遷移金属複合酸化物の粒子の表面の全部または一部が被覆されることにより、電解液と触媒との接触面積が減り、上記反応が抑制されると考えられる。
硫酸根がリチウム遷移金属複合酸化物の粒子の表面に存在しているかどうかは、種々の方法によって解析することができる。例えば、X線回折、XPS(X線光電子分光法)で解析することができる。
また、硫酸根の定量としては、種々の方法を用いることができる。例えば、ICP発光分光分析法、滴定法で定量することができる。
また、eは0.0017以上であるのがより好ましく、また、0.02以下であるのが好ましい。eが小さすぎると、電子の移動抵抗が低くなる場合がある。eが大きすぎると、水分吸着により電池の膨れが生じる場合がある。
その他の点については、態様(viii)の場合と同様である。
態様(x)において、ナトリウムおよび/またはカルシウム以外の元素を含有する理由は、態様(i)〜(ix)と同様である。
態様(xi)において、eは、0.0017以上であるのが好ましく、また、0.02以下であるのが好ましい。eが小さすぎると、電子の移動抵抗が低くなる場合がある。eが大きすぎると、水分吸着により電池の膨れが生じる場合がある。
その他の点については、態様(x)の場合と同様である。
粒子の表面に存在するマグネシウムの濃度が、粒子の内部に存在するマグネシウムの濃度より大きいことで、充放電容量の低下を実用レベルの範囲に抑え、遷移金属のイオンの電解液中への溶出を抑制させることができると考えられる。これにより、高温サイクル特性が向上する。
粒子の内部に存在するチタンの濃度が、粒子の内部に存在するホウ素の濃度より大きいことで、一次粒子径の成長を損なうことなく、リチウム遷移金属複合酸化物の格子定数を大きくさせることができる。これにより、負荷特性、サイクル特性が向上する。
粒子の内部に存在するマグネシウムの濃度は、粒子の内部に存在するホウ素の濃度より大きいことで、一次粒子径の成長を損なうことなく、遷移金属のイオンの電解液中への溶出を抑制させることができる。これにより極板密度の向上と高温サイクル特性の向上の両立を図ることができる。
また、マグネシウムと、チタンとを有することにより、一次粒子径の成長を損なうことなく、遷移金属のイオンの電解液中への溶出を抑制させ、リチウム遷移金属複合酸化物の格子定数を大きくさせることができる。
これにより、極板密度を向上させ、高温サイクル特性、負荷特性およびサイクル特性を向上させることができる。
また、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に存在するマグネシウムの濃度が、リチウム遷移金属複合酸化物の内部に存在するマグネシウムの濃度より大きいことで、充放電容量の低下を実用レベルの範囲に抑え、遷移金属のイオンの電解質中への溶出を抑制させることができると考えられる。これにより、サイクル特性および負荷特性の向上を損なうことなく、高温サイクル特性が向上する。
リチウム遷移金属複合酸化物の内部に存在するジルコニウムおよび/またはセリウムの濃度が、リチウム遷移金属複合酸化物の内部に存在するマグネシウムの濃度より小さいことで、リチウム遷移金属複合酸化物の結晶性の低下を効果的に抑制することができると考えられる。これにより、サイクル特性および負荷特性の向上を損なうことなく、高温特性が向上する。
後述する化合物を各構成元素が所定の組成比となるように混合して、原料混合物を得る。原料混合物に用いられる化合物は、目的とする組成を構成する元素に応じて選択される。
混合の方法は、特に限定されず、例えば、粉末状の化合物をそのまま混合して原料混合物とする方法;水および/または有機溶媒を用いてスラリー状として混合した後、乾燥させて原料混合物とする方法;上述した化合物の水溶液を混合して沈降させ、得られた沈殿物を乾燥させて原料混合物とする方法;これらを併用する方法が挙げられる。
リチウム化合物は、特に限定されないが、例えば、Li2CO3、LiOH、LiOH・H2O、Li2O、LiCl、LiNO3、Li2SO4、LiHCO3、Li(CH3COO)、フッ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、過酸化リチウムが挙げられる。中でも、Li2CO3、LiOH、LiOH・H2O、Li2O、LiCl、LiNO3、Li2SO4、LiHCO3、Li(CH3COO)が好ましい。
また、上述した各元素の2種以上を含有する化合物を用いてもよい。
上述したマンガン化合物およびマグネシウム化合物から調製した、所定の組成比のマンガンイオンおよびマグネシウムイオンを含有する水溶液を、攪拌している純水中に滴下する。
ついで、炭酸水素アンモニウム水溶液を滴下し、マンガンおよびマグネシウムを沈殿させ、マンガンおよびマグネシウムの塩を得る。なお、炭酸水素アンモニウム水溶液の代わりに、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液等のアルカリ溶液を用いることもできる。
ついで、原料混合物を焼成する。焼成の温度、時間、雰囲気等は、特に限定されず、目的に応じて適宜決定することができる。
焼成温度は、650℃以上であるのが好ましく、700℃以上であるのがより好ましい。焼成温度が低すぎると、未反応の原料が正極活物質に残留し、正極活物質の本来の特徴を生かせない場合がある。また、焼成温度は、1100℃以下であるのが好ましく、950℃以下であるのがより好ましい。焼成温度が高すぎると、正極活物質の粒径が大きくなり過ぎて電池特性が低下する場合がある。また、Li2MnO3、LiMnO2等の副生成物が生成しやすくなり、単位重量あたりの放電容量の低下、サイクル特性の低下、動作電圧の低下を招く場合がある。
焼成時間は、一般に、1〜24時間であるのが好ましく、6〜12時間であるのがより好ましい。焼成時間が短すぎると、原料粒子間の拡散反応が進行しない。焼成時間が長すぎると、拡散反応がほぼ完了した後の焼成が無駄となり、また、焼結による粗大粒子が形成されてしまう場合がある。
得られたリチウム遷移金属複合酸化物および原料Aを混合する。
混合の方法は、特に限定されない。例えば、粉末状のリチウム遷移金属複合酸化物および原料Aを含有する化合物をそのまま混合する方法;水および/または有機溶媒を用いてスラリー状として混合した後、乾燥させて原料混合物とする方法;化合物の水溶液を混合して沈降させ、得られた沈殿物を乾燥させて混合物とする方法;これらを併用する方法が挙げられる。
好ましくは、次の方法である。
得られたリチウム遷移金属複合酸化物および原料Aを含有する化合物から調製した水溶液を、攪拌している純水中に滴下する。
ついで、アルカリ性水溶液を滴下し、原料Aを沈殿させる。その後、このスラリーをろ過し、乾燥させる。
混合後、再度焼成させてもよい。焼成は、150〜950℃、好ましくは300〜500℃で、行うのが好ましい。
焼成の時間は、1〜24時間であるのが好ましく、2〜15時間であるのがより好ましい。
焼成の雰囲気は、例えば、大気、酸素ガス、これらと窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスとの混合ガス、酸素濃度(酸素分圧)を制御した雰囲気、弱酸化雰囲気が挙げられる。中でも、酸素濃度を制御した雰囲気が好ましい。特に、酸素濃度が18体積%以上の雰囲気が好ましい。
本発明の正極合剤は、少なくともスピネル構造のリチウム遷移金属複合酸化物を有する正極活物質と導電剤を有する。
本発明の正極合剤に用いられる正極活物質は、上述した本発明の正極活物質である。
好ましくは、アセチレンブラックおよび/または人造黒鉛である。これらは伝導性に優れるため、さらにサイクル特性および負荷特性が向上する。
本発明において、正極合剤は、正極活物質、導電剤、結着剤および結着剤の溶媒からなるペースト状のものだけでなく、正極集電体に塗布した後、乾燥させて結着剤の溶媒をとばした後の状態も含む。
本発明の正極合剤において、元素Aとしては、ニオブ、亜鉛が好ましい。これらは、高温特性の原因となるマンガン溶出を引き起こすフッ化水素と反応し、マンガン溶出を防ぐことができるからである。
上述した本発明の正極活物質の製造方法により、正極活物質を得ることができる。
得られた正極活物質の粉末に、アセチレンブラック、黒鉛等のカーボン系導電剤、結着剤および結着剤の溶媒または分散媒とを混合することにより正極合剤を調製する。
即ち、本発明の非水電解質二次電池は、本発明の正極活物質を用いた非水電解質二次電池である。本発明の非水電解質二次電池は、その正極活物質の少なくとも一部として本発明の正極活物質を用いていればよい。
以下、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。
電解液の溶媒としては、例えば、ジメトキシエタン,ジエトキシエタン,エチレンカーボネート,プロピレンカーボネート,ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネート,エチルメチルカーボネート,メチルホルメート,γ−ブチロラクトン,2−メチルテトラヒドロフラン,ジメチルスルホキシド,スルホラン等の有機溶媒が挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
上述した溶媒とリチウム塩とを混合して電解液とする。ここで、ゲル化剤等を添加し、ゲル状として使用してもよい。また、吸液性を有するポリマーに吸収させて使用してもよい。
更に、無機系または有機系のリチウムイオンの導電性を有する固体電解質を使用してもよい。
着剤を用いて、定法に従い、リチウムイオン二次電池とすることができる。
これにより従来達成できなかった優れた電池特性が実現できる。
本発明において、「リチウム遷移金属複合酸化物の粒子の表面におけるジルコニウムの存在割合」は、以下のようにして求められる。
まず、波長分散型X線分光装置(WDX)を装備した電子線マイクロアナライザ(EPMA)によって、リチウム遷移金属複合酸化物の粒子群について、粒子の表面のジルコニウムの存在状態を観察する。ついで、観察視野中、単位面積あたりのジルコニウム量が最も多い部分(ジルコニウムのピークが大きい部分)を選択し、この部分を通過する線分(例えば、長さ300μmの線分)に沿ってライン分析を行う。ライン分析において、上記単位面積あたりのジルコニウム量が最も多い部分におけるピークの値を100%としたときのピークが4%以上の部分の長さの合計を、上記線分の長さで除した商を、「リチウム遷移金属複合酸化物の粒子の表面におけるジルコニウムの存在割合」とする。なお、ライン分析を複数回(例えば、10回)行うことによって、「リチウム遷移金属複合酸化物の粒子の表面におけるジルコニウムの存在割合」の平均値を用いるのが好ましい。
上記方法においては、ジルコニウムのピークが4%未満の部分は、ジルコニウム量が最も多い部分との差が大きいため、ジルコニウムが存在しない部分とみなす。
本発明の正極合剤をスラリーまたは混練物とし、アルミニウム箔等の集電体に塗布し、または担持させ、プレス圧延して正極活物質層を集電体に形成させる。
図2は、正極の模式的な断面図である。図2に示されているように、正極13は、正極活物質5を結着剤4により集電体12上に保持させてなる。
また、本発明の正極合剤は、結着剤と混練するとき、流動性に優れ、また、結着剤の高分子と絡まりやすく、優れた結着性を有する。
さらに、本発明の正極活物質は、粗大粒子を含まず、球状であるため、作製した正極の塗膜面の表面が平滑性に優れたものになる。このため、正極板の塗膜面は結着性に優れ、剥がれにくくなる。また、表面が平滑で充放電に伴う塗膜面表面のリチウムイオンの出入りが均一に行われるため、サイクル特性において顕著な改善がみられる。
図3は、円筒型電池の模式的な断面図である。図3に示されるように、円筒型電池20においては、集電体12上に正極活物質層を形成させた正極13と、集電体12上に負極活物質層を形成させた負極11とがセパレーター14を介して、繰り返し積層されている。
図4は、コイン型電池の模式的な部分断面図である。図4に示されるように、コイン型電池30においては、集電体12上に正極活物質層を形成させた正極13と、負極11とが、セパレーター14を介して、積層されている。
図5は、角型電池の模式的な斜視図である。図5に示されるように、角型電池40においては、集電体12上に正極活物質層を形成させた正極13と、集電体12上に負極活物質層を形成させた負極11とが、セパレーター14を介して、繰り返し積層されている。
I:本発明に記載の非水電解質二次電池用正極活物質に用いられるリチウム遷移金属複合酸化物と、一般式がLi1+xCoO2(xは−0.5≦x≦0.5を満たす数を表す。)で表されるコバルト酸リチウム及び/又は一般式がLi1+xNiO2(xは−0.5≦x≦0.5を満たす数を表す。)で表されるニッケル酸リチウムを、前記リチウム遷移金属複合酸化物の重量をAとし、前記コバルト酸リチウム及び/又は前記ニッケル酸リチウムの重量をBとした場合に0.2≦B/(A+B)≦0.8の範囲になるように混合する非水電解質二次電池用正極活物質。
II:金属リチウム、リチウム合金およびリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる非水電解質二次電池用負極活物質。
正極活物質は、0.4≦B/(A+B)≦0.6の範囲になるように混合することが好ましい。0.4≦B/(A+B)≦0.6の範囲であれば、極板密度、ドライアウトの防止および過充電特性の向上だけでなく、サイクル充放電特性、負荷特性および出力特性の向上が著しいからである。
リチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物としては、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含むスピネル構造からなる一般式がLiaTibO4+c(aは0.8≦a≦1.5を満たす数を表し、bは1.5≦b≦2.2を満たす数を表し、cは−0.5≦c≦0.5を満たす数を表す。)で表される非水電解質二次電池用負極活物質を用いることができる。このときサイクル特性が非常に向上した非水電解質二次電池を得ることができる。
また、照明機器、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、冷蔵庫、オーブン電子レンジ、食器洗浄器、洗濯機、乾燥器、ゲーム機器、玩具、ロードコンディショナ、医療機器、自動車、電気自動車、ゴルフカート、電動カート、電力貯蔵システム等の電源として用いることができる。
さらに、用途は、民生用に限定されず、軍需用または宇宙用とすることもできる。
〔実施例1〕
マンガンおよびマグネシウムの炭酸塩を水洗し、乾燥させた後、オルトホウ酸、フッ化リチウムおよび炭酸リチウムと混合させた。得られた混合物を約800℃で約10時間焼成し、その後粉砕した。
得られた粉砕物の組成比は、Liが1.052、Mnが1.94、Mgが0.05、Bが0.005、Fが0.015であった。
得られた粉砕物を純水中に攪拌しながら懸濁させ、硫酸亜鉛水溶液を加えた。ついで、アンモニア水を亜鉛と等モル分加え、粉砕物表面に亜鉛化合物を沈殿させた。硫酸亜鉛の量は粉砕物に対して亜鉛換算で1.0重量%であった。得られたスラリーをろ過し、固形分を乾燥させ、更に、大気中、約450℃で約5時間熱処理を行い、正極活物質を得た。
硫酸亜鉛の量を、それぞれ粉砕物に対して0.3重量%、0.1重量%とした以外、実施例1と同様の方法により、各正極活物質を得た。
粉砕後の処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、正極活物質を得た。
(1)正極活物質のMn溶出量
得られた正極活物質を110℃で15時間乾燥させた後、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=3/7の混合溶媒にLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解した電解液と混合させて85℃で48時間保存した。これをフィルターろ過により正極活物質を取り除いた後、ICP分光分析法によりMnの溶出量(電解液の重量に対するMn元素の重量)を測定した。Mnの溶出量が少ないほど高温保存特性に優れると言える。
第1表から明らかなように、本発明の正極活物質は、高温特性が向上していることが分かる。
本発明の非水電解質二次電池は、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラ等のモバイル機器および電気自動車用バッテリー等の電源等に利用することができる。
2 32eサイト
3 16dサイト
4 結着剤
5 正極活物質
11 負極
12 集電体
13 正極
14 セパレーター
20 円筒型電池
30 コイン型電池
40 角型電池
Claims (4)
- 少なくともスピネル構造のリチウム遷移金属複合酸化物を有する非水電解質二次電池用正極活物質であって、
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、粒子であるとともに、
前記粒子の表面に、亜鉛を含有する化合物を有し、
前記亜鉛の量は前記リチウム遷移金属複合酸化物と前記亜鉛の量の合計に対して、0重量%より大きく、2重量%より小さく、
アルミニウム及び/またはマグネシウムを有し、
さらにフッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選ばれる少なくとも1種と、
硫黄と、を有するリチウムマンガン複合酸化物であって、
前記硫黄は、前記亜鉛を含有する化合物と共に前記粒子の表面に硫酸根として存在している、非水電解質二次電池用正極活物質。 - 前記リチウム遷移金属複合酸化物は、さらにホウ素を有するリチウムマンガン複合酸化物である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
- 請求項1又は2のいずれかに記載の正極活物質と導電剤を有する非水電解質二次電池用正極合剤。
- 請求項1又は2のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極活物質を用いた正極活物質層を、帯状正極集電体の少なくとも片面に形成させることにより構成した帯状正極と、
金属リチウム、リチウム合金、リチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材料またはリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物を負極活物質として用いた負極活物質層を、帯状負極集電体の少なくとも片面に形成させることにより構成した帯状負極と、
帯状セパレータとを具備し、
前記帯状正極と前記帯状負極とを前記帯状セパレータを介して積層した状態で複数回巻回させて、前記帯状正極と前記帯状負極との間に前記帯状セパレータが介在している渦巻型の巻回体を構成してなる、非水電解質二次電池。
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