JP3794178B2 - 打撃工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気ハンマのように打撃子の往復打撃運動を先端工具に伝達させる中間子を有する打撃工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
空気バネを利用した打撃子の往復打撃運動を先端工具に伝達させる中間子を有する各種の打撃工具には、さまざまな空打ち防止対策が施されているにもかかわらず、該先端工具を被削材から離した瞬間によっては、空打ちが数回発生してしまう場合がある。上記の場合において、前記中間子は、空気バネを利用した前記打撃子の往復打撃運動により打撃エネルギーを得て工具軸方向前方へ移動した際、直接工具保持部を連続打撃したり、また前記先端工具を被削材から離した瞬間、最低1回は直接工具保持部を打撃する構造となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記で述べたような従来の構造では、とりわけ1打撃当たりの打撃エネルギーが大きい大型の打撃工具において、先端工具を被削材から離した瞬間に空打ちが発生した場合のみ、中間子が直接工具保持部を連続打撃するために打撃子の打撃エネルギーが該中間子を介して打撃工具本体に作用し、過大な両振りの引張・圧縮応力が該打撃工具本体各部に発生して、該打撃工具本体の寿命低下や本体各部の破損等を招くという問題があった。具体的には、ハンドル部と工具本体との接続部での許容応力は9.8kg/mm2程度であるにも拘らず、14.7kg/mm2ほどの応力がこの空打ち時に発生し、ハンドル部と工具本体との接続部が破壊してしまうという問題を有していた。
【0004】
上記問題を解決するため、中間子により打撃される工具保持部と工具本体との間(応力伝達経路中)に弾性体からなる緩衝部材を設け、この緩衝部材により工具本体に大きな応力が伝達されないようにする考えが提案されていたが、単に緩衝部材を設けたのみでは、繰り返しかかる上記応力により緩衝部材には繰り返し疲労が生じ、緩衝部材が早期に寿命に達してしまい緩衝部材としての役割を果たさなくなってしまうという欠点がある。
【0005】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を無くし、打撃工具の寿命向上を図ることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、モータの回転が変換された往復運動によりシリンダ内を往復駆動する打撃子と、該打撃子の往復運動により打撃される中間子と、該中間子により打撃される先端工具と、該先端工具を軸方向摺動可能に保持するリテーナスリーブとを有する打撃工具において、前記中間子を摺動可能に保持し且つ前記リテーナスリーブと前記シリンダの間に前記リテーナスリーブと所定の間隙を介してハンマホルダを配し、該ハンマホルダは前記中間子のフランジ部と当接する凹部を設け、更に該凹部に該フランジ部が当接した時に発生する打撃力を緩衝する緩衝部材を設け、該緩衝部材が所定寿命を維持でき得る該緩衝部材の圧縮量と前記間隙とをほぼ同じとすることにより達成される。
【0007】
また、モータの回転運動をピストンの往復運動に変換させて、先端工具を被削材に押し付けて初めて空気バネを利用して打撃子を追従させ、中間子を介して該先端工具に連続打撃を伝達し、更に該先端工具の取付角度を多段階に可変できる工具保持装置を有する打撃工具において、該先端工具を収納するリテーナスリーブを軸支し該打撃工具本体に固定されたフロントカバと、該フロントカバに案内されて前記中間子のはね返り荷重を受ける第二のハンマホルダと係合し、該中間子の工具軸方向前方への移動量を規制する凸部を内周に設けた第一のハンマホルダとの間に、該リテーナスリーブと該第一のハンマホルダ内で工具軸方向に摺動可能な前記中間子の空打ち発生時の打撃力を緩衝する緩衝部材を設け、更に前記工具保持装置を有するために該第一のハンマホルダの先端部と前記リテーナスリーブの後端部の間に設けた隙間で、前記緩衝部材の変形量を規制することを特徴とすることにより達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施例を図1乃至図3により説明する。図において、1は先端工具、2はリテーナスリーブ、3はフロントカバ、4は中間子、5は第一のハンマホルダ、6は第一の緩衝部材、7は第二のハンマホルダ、8は打撃子、9は打撃工具本体、10は隙間、11は凹部、12はフランジ部、13は第二の緩衝部材、14はシリンダ、15はボルト、16はボール、17はハンドル部、18はモータ部、19はサイドハンドル部である。
【0009】
打撃工具の外観は図3に示す通りであり、先端に先端工具1を有し、この先端工具1に打撃力を与えるための内部機構を有する工具本体9の下方にはモータ部18が配されている。また、打撃工具を作業者が操作するために、スイッチ等を有するハンドル部17とサイドハンドル19が設けられており、ハンドル部17は工具本体9及びモータ部18の後方に、サイドハンドル19はフロントカバ3の前方に設けられている。
【0010】
次に、先端工具1を受容する先端工具受容部乃至フロントカバ3内の構造について詳述する。なお、先端工具1を受容する先端工具受容部はフロントカバ3に対して回転角度調節可能に設けられているが、これは本件出願人が既に特願平19−261987号として出願しており、ここでの詳述は省略する。
【0011】
先端工具1を図示しない被削材に突き当てて打撃工具を作動させた状態を図2に示す。図2の状態で、図示しないモータの回転運動はピストンの往復運動に変換され、このピストンの往復運動により空気室を介してシリンダ14内で打撃子8が往復運動する。打撃子8の往復運動により中間子4を介して先端工具1が連続的に打撃され、被削材に打撃力を印可する。図2の状態では、先端工具1及び中間子4は軸両方向(図中左右方向)に移動可能に設けられているため、打撃力は打撃子8→中間子4→先端工具1へと伝達し、これらの周囲に位置するリテーナスリーブ2やハンマホルダ7等には直接の打撃力は伝達されない。
【0012】
先端工具1を受容するリテーナスリーブ2の後方(図中右方)には、間隙10をもって、第一のハンマホルダ7(以下ハンマホルダAと称す)が配されている。ハンマホルダA7の内周は、その先端工具1側では、ほぼ中間子4の外径と同じとされていて中間子4を摺動可能に保持しており、その反先端工具1側では凹部11を設けることで、中間子4の外径よりも大きく構成されている。中間子4の外周の一部には外径の大きなフランジ部12が設けられており、このフランジ部12の外径とハンマホルダA7の凹部の内径がほぼ同じに構成されていて、中間子4が前方(図中左方)に移動したときに、フランジ部12が凹部11に当接する構成となっている。また、ハンマホルダA7の後端はつば状に拡成しており、この拡成部とフロントカバ3との間に緩衝部材6が挟持されている。この緩衝部材6には、ウレタンゴムが使用されており、そのゴム硬度は凡そHS90程度である。ハンマホルダA7の後方(図中右方)には第二のハンマホルダ5(以下ハンマホルダBと称す)を配しており、更にハンマホルダB5の後方には第二の緩衝部材13が配されている。この第二の緩衝部材13は、先端工具1が被削材から受ける反力により中間子4が後方に発生する打撃力を緩衝する役割を持っている。ハンマホルダA7の反先端工具側端に設けられたつば部とハンマホルダB5は当接しているが、当該つば部の図中右側面が傾斜されて構成されているため、ハンマホルダB5と当接するのは当該つば部の一部となっている。これにより、つば部が衝撃により折損しないように配慮されている。
【0013】
図2の状態から、作業者が打撃工具全体を後方(図中右方)に引いて、被削材と先端工具1との当接を解除する(以下「作業終了動作」という)と、先端工具1が前方に移動可能となるため、打撃子4の往復運動により、先端工具1、中間子4、打撃子8がすべて前方へ移動する。この状態を図1に示す。
【0014】
先端工具1は、作業終了動作で先端工具1の軸方向移動を規制しているコロにより前方への移動距離が制限されており、最も前方へ移動したときに中間子4との間に間隙が構成される位置になるよう構成されてある。中間子4はフランジ部12がハンマホルダA7の凹部11に当接する位置まで前方へ移動し、フランジ部と凹部11とが当接したときに生じる打撃力を第一の緩衝部材6で緩衝している。第一の緩衝部材6はゴム硬度HS90程度のウレタンゴムで構成されており、この第一の緩衝部材6の寿命を打撃工具本体の寿命と略同等にするために、下述する構成をもって衝撃を107回受けても良いように設計されている。
【0015】
第一の緩衝部材6に衝撃を107回受けても衝撃吸収能力が低下しないようにするためには、衝撃を受けた際に圧縮される量を制限すれば良い。本件出願人は幅5.0mmのウレタンゴムからなる衝撃緩衝部材6の圧縮量が0.5mm程度であれば衝撃を107回受けても衝撃吸収能力を維持できることに鑑み、緩衝部材6が0.5mm圧縮されるとハンマホルダA7がリテーナスリーブ2に当接するよう、緩衝部材6を圧縮しない状態でハンマホルダA7を、リテーナスリーブ2に対して0.5mmの間隙をもって配設している。なお、図1の状態で、中間子4の先端側傾斜部とリテーナスリーブ2の内径傾斜部の間には僅かながらの隙間があるため、中間子4とリテーナスリーブ2は軸方向において何れの場所においても接触しない(即ち打撃力が伝達されない)構成となっている。
【0016】
上記の通り構成することにより、中間子4が前方に移動した際に発生する打撃力は第一の緩衝部材6により減衰され、フロントカバ3と打撃工具本体9を接続しているボルト15に多大な応力はかからず、結果的に打撃工具本体9とハンドル部17の接合部にも大きな応力はかからない。上記構成によると、従来の構成では打撃工具本体9とハンドル部17の接合部に14.7kg/mm2程度かかっていた応力を4.9kg/mm2程度にまで軽減することができ、当該接合部の許容応力値である9.8kg/mm2程度に比較して十分応力を低減することができた。加えて、第一の緩衝部材6の圧縮量を間隙10により所定量に規制しているので、第一の緩衝部材6に打撃工具本体9の寿命回数である所定回数(107回)の繰返し応力を受けるまで緩衝部材6自体の寿命を維持することができるため、結果として、寿命の長い、安定した製品とすることができる。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、緩衝部材を配設することにより中間子が先端工具側に移動した際の所謂空打ち時の反動を低減すると共に、緩衝部材の圧縮量を規制することにより緩衝部材自体の寿命の向上を図ることができるため、結果として打撃工具全体の寿命向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す空打ち時の断面図。
【図2】本発明の一実施例を示す打撃時の断面図。
【図3】本発明の一実施例を示す打撃工具の外観斜視図。
【符号の説明】
1は先端工具、2はリテーナスリーブ、3はフロントカバ、4は中間子、5は第一のハンマホルダ、6は第一の緩衝部材、7は第二のハンマホルダ、8は打撃子、9は打撃工具本体、10は隙間、11は凹部、12はフランジ部、13は第二の緩衝部材、14はシリンダ、15はボルト、16はボール、17はハンドル部、18はモータ部、19はサイドハンドル部である。
Claims (1)
- モータと、該モータの回転運動により前後動する打撃子とを収容する本体と、
該本体の後方に設けられるハンドル部と、
該本体の前方にボルトを介して固定されるフロントカバと、
該打撃子によって打撃される中間子と、該中間子によって打撃される先端工具とをそれぞれ前後動可能に支持し、該フロントカバに対して取り付け角度を調整可能に支持されるリテーナスリーブと、
を有する打撃工具において、
該中間子の外周にフランジ部を設け、
該中間子を前後動可能に支持し、該中間子が前方に位置する場合に該フランジ部と当接する凹部と、後部に設けられたつば状部とを有するハンマホルダを、該リテーナスリーブの後方に隙間を隔てて設け、
該つば状部と該フロントカバとの間に緩衝部材を設け、
該中間子が前方に位置する場合に、該中間子は該フランジ部を介して該ハンマホルダと軸方向で当接し、且つ該中間子と該リテーナスリーブとは軸方向で当接しないよう構成した
ことを特徴とする打撃工具。
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