JP3675945B2 - 常温硬化性塗膜防水材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温硬化性ポリウレタン塗膜防水材、塗り床材などの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリウレタン塗膜防水材、塗り床材は現在ビルディングの屋上、ベランダ、廊下などの防水、スポーツ施設の弾性舗装などの用途に大量に使用されている。
この方法は、ポリプロピレンエーテルポリオールなどのポリオールとトリレンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ジイソシアネートとの反応により製造されるイソシアネート末端プレポリマーを主剤とし、ポリオールおよび4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)(MOCA)をイソシアネート反応成分(硬化剤)とする2液型の手作業現場混合塗布方式による常温硬化性ポリウレタンウレア防水材、塗り床材が主流を占めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この方式で硬化剤の主成分として使用されるMOCAは常温では固体であり、硬化剤の組成に組み込むためにはこれの溶解工程が必要である。ところがMOCAは溶剤または可塑剤に対する溶解性が悪く、この分野の用途にはこれらの溶媒は一定限度以上の使用を避けねばならない。さらにこれらに一旦溶解しても経時するとMOCAの結晶が析出して来る場合が多く、硬化剤の貯蔵安定性に欠ける。 MOCAはポリアルキレンエーテルポリオールに対してある程度の溶解性があるので現在はほとんどこれに所要量を溶解した形で使用されている。
【0004】
しかしながら主剤のイソシアネート成分との反応性がMOCAとポリオールとでは異るのでこれらの反応を常温で円滑に進行させ完結させるために有機金属鉛などの触媒が必須とされている。
このように硬化剤の組成を組み立てても、冬場(低温時)にはみかけ上硬化が進行するが塗膜表面にタックがいつまでも残る場合が多く、この不具合を避けるために触媒の添加量を多くすると硬化塗膜の耐熱性が劣化する。夏場(高温時)には可使時間(主剤と硬化剤とを混合した後、これを支障なく塗布できる限度の時間、通常混合後粘度が10万センチポイズに達するまでの時間)と硬化性のバランスがとりにくく、高温多湿の条件下では湿分の影響のために発泡する場合が多く、表面の仕上りが悪くフクレの原因ともなる。
このように従来技術には改善を要する種々な困難があり年間を通じて安定した施工が出来るような処方が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来技術のかかえている上記のような困難を解決するために、検討を重ねた結果、本発明に到達した。即ち本発明の第一の発明は、
1.トリレンジイソシアネート(以下TDI)とポリオールとの反応によって得られるイソシアネート末端プレポリマーを主成分とする主剤と、芳香族ポリアミンを含有する硬化剤とからなる2液型常温硬化性塗膜防水材の製造方法において、
(1)前記イソシアネート末端プレポリマーのポリオール成分に分子量400〜8000のポリプロピレンエーテルポリオールまたはポリエチレン−プロピレンエーテルポリオールを使用し、イソシアネート含有率を1.5〜8重量%とし、
(2)前記硬化剤中の芳香族ポリアミンとして、ジエチルトルエンジアミンとポリアルキレンエーテルポリオール−p−アミノベンゾエートとの混合物を使用し、該芳香族ポリアミンの40〜90モル%がジエチルトルエンジアミンであり、10〜60モル%がポリアルキレンエーテルポリオール−p−アミノベンゾエートであり、
(3)前記硬化剤中に、イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対して、0〜130重量部の可塑剤を使用し、
(4)前記硬化剤中に、イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対して、0〜35重量部のポリオールを使用し、
(5)主剤と硬化剤とを施工現場で主剤のイソシアネート基と硬化剤の芳香族ポリアミンのアミノ基との当量比が0.8〜2.0となるように混合し、塗工し硬化せしめることを特徴とする常温硬化性塗膜防水材の製造方法である。
【0006】
また第二の発明は、
2.トリレンジイソイアネートが2,4−異性体含有率80重量%以上のトリレンジイソシアネ−トである前記1記載の常温硬化性塗膜防水材の製造方法であり、第三の発明は、
3.トリレンジイソイアネートが2,4−異性体含有率85重量%以上のトリレンジイソシアネ−トである前記1記載の常温硬化性塗膜防水材の製造方法であり、第四の発明は、
4. 硬化剤中の芳香族ポリアミンの60〜90モル%がジエチルトルエンジアミンであり、10〜40モル%がポリアルキレンエーテルポリオール−p−アミノベンゾエートである前記1〜3のいずれか1項記載の常温硬化性塗膜防水材の製造方法である。
【0007】
本発明の製造方法において主剤の主成分として使用されるイソシアネート末端プレポリマーは、TDIとポリオールとの反応によって製造する。この場合得られたプレポリマー中に遊離の状態で残存するTDIの量をできるだけ少なくするために仕込TDIとポリオールとは、NCO/OHの当量比で2.1を超えないように仕込で反応させることが望ましい。本発明に係るプレポリマーを製造する際に用いるTDIとしては、市販の2,4−異性体含有率が65〜100重量%のものが使用できるが、2,4−異性体含有率の低いTDIを使用したプレポリマーは可使時間を短くする傾向があるため可使時間を得るためには2,4−異性体含有率80重量%以上のTDIを使用するのが好ましく、85重量%以上のものが最適である。本発明で得られる防水材は従来のよりも速硬化性となり、補修用あるいは小面積施工用としても適したものとなるため、可使時間は施工温度下で15分以上を保持できることが望ましい。イソシアネート末端プレポリマーの原料であるポリオールは、本発明の塗膜防水材用途には常温液状で低粘度である分子量400〜8000のポリプロピレンエーテルポリオールまたはポリエチレン−プロピレンエーテルポリオールが使用される。イソシアネート末端プレポリマーのイソシアネート含有率は1.5〜8重量%の範囲であることが好ましい。8重量%を超えると得られる塗膜は硬くなりすぎ伸びがでにくくなり、1.5重量%未満では塗膜の機械的強度が弱くなり本発明用途に必要とされる物性が保持できなくなる。
【008】
本発明の方法において硬化剤の必須成分として使用するDETDAは3,5−ジエチルトルエン−2,4および2,6−ジアミンの混合物で、常温液状であり、たとえばエタキュア#100(エチルコーポレーション社製)などが市販されている。 DETDAと共に使用する前記ポリアルキレンエーテルポリオール一p−アミノベンゾエートとしては、ポリポロピレンエーテルポリオールーpーアミノベンゾエート、ポリエチレンープロピレンエーテルポリオールーpーアミノベンゾエート、ポリテトラメチレンエーテルグリコールージーpーアミノベンゾエート等があげられ、これらの混合物も使用することができる。これらは、平均分子量500以上のポリアルキレンエーテルポリオールと相当量のpーニトロベンゾイルクロリドとを脱塩酸剤の存在下で反応させ、得られたニトロ化合物を通常の方法で還元して製造され、常温液状のものが主体である。例えばエラスマー1000(イハラケミカル社商品名、ポリテトラメチレンエーテルグリコールージーpーアミノベゾエート、平均分子量1238)が知られている。
【009】
このように硬化剤の必須成分である本発明に使用する芳香族ポリアミンは常温で液状であり、可塑剤などの稀釈剤とは自由に相溶するので従来技術のMOCAの溶解という工程が不要で、これに由来する種々の困難は解消される。
DETDAを硬化剤中の芳香族ポリアミンの90モル%以上使用すると主剤のイソシアネート成分との反応が速いため高温(夏場)には所望の可使時間がとりにくくなる。
【0010】
前記のポリアルキレンエーテルポリオールーpーアミノベンゾエートを硬化剤中の芳香族ポリアミンの60モル%以上使用すると主剤との反応が遅くなり過ぎ、低温時の硬化性が悪くなり、得られた硬化塗膜の機械的強度も弱いので本発明の用途には不適なものとなる。従って本発明の方法では、硬化剤中のDETDAとポリアルキレンエーテルポリオールーpーアミノベゾエート一とは上述の範囲で組合わせて使用される。このことにより低温時(冬場)はもちろん、高温時(夏場)においても可使時間と硬化性のバランスが良好な、すなわち年間を通して安定な施工の可能な処方を組み立てることができる。速硬化で防水材、塗り床材用途に好適な機械的物性を有する硬化塗膜とするため最も好ましいDETDAの使用量は硬化剤中の芳香族ポリアミン架橋剤の60〜90モル%である。
【0011】
硬化剤中にDETDAを使用することによりMOCAを使用する場合よりも硬化剤中あるいは施工環境からもたらされる湿分による影響が小さくなるから、発泡によるフクレあるいは仕上り性の悪さなどの従来技術のかかえていた困難が防止できる。しかも本発明の方法による硬化塗膜は従来技術によるよりも塗膜表面にベタつきが残り難く、短時間のうちにタックのとれた良好な仕上りとなる。
【0012】
本発明の方法において硬化剤の主成分として使用する芳香族ポリアミンは、上述のように常温液状のものが主体であるから、特に可塑剤などの稀釈剤または溶剤に溶解する必要はないが硬化剤の組成を組み立てるときに主剤との量的なバランスを考慮して、あるいは主剤との反応性を勘案して可塑剤で稀釈するのが好ましい。 可塑剤としては、フタル酸ジオクチル(DOP),アジピン酸ジオクチル(DOA),リン酸トリクレジル(TCP),塩素化パラフィンなどの通常の可塑剤が使用できる。可塑剤は硬化剤中に主として加えられるが場合により主剤に一部添加することがある。可塑剤の使用量は主剤のプレポリマー100部に対し130部以下の量が好ましい。130部を越えると硬化塗膜表面から可塑剤がブリードしたり塗膜の機械的強度が弱くなって不適である。
【0013】
本発明の方法では、硬化剤中のDETDAというかなり高活性な芳香族アミンを必須成分として使用するので、この使用量により反応速度(可使時間と硬化性)を調整することができる。
従って、有機金属鉛などのような触媒の添加は必須ではないが場合により鉛オクトエート(鉛含有量20重量%)などのような触媒を硬化剤中に2重量%以下の量で添加することができる。この程度の使用量であれば塗膜の耐熱性は劣化することがない。
【0014】
従来技術で硬化剤中にMOCAの溶解用兼イソシアネート反応成分として使用されていたポリオールは本発明では不可欠成分ではないが、ポリオールはDETDAよりもイソシアネートとの反応性がかなり低く、可塑剤と同様の効果をもたらすため場合によりこれを可塑剤的に硬化剤中に配合することができる。可塑剤的に使用することができるポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどがあげられるが、常温液状で、低粘度である分子量400〜8000のポリプロピレンエーテルポリオールまたはポリエチレンープロピレンエーテルポリオールが好ましく、プレポリマーの使用量100部に対して35部以下の量で使用するのが好ましい。これ以上の量で配合すると硬化塗膜表面にポリオールがブリードし易くなり、かつ塗膜の機械的強度が低くなる。
【0015】
本発明の硬化剤には場合により炭酸カルシウム、タルク、カオリン、ゼオライト、硅ソウ土などの無機充填剤、酸化クロム、酸化チタン、ベンガラ、カーボンブラック、酸化鉄などの顔料、またはヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系などの安定剤を添加することができる。
【0016】
本発明を実施するには、TDIとポリオールとの反応によって得られるイソシアネート末端プレポリマーを主成分とする主剤と、DETDAおよびポリテトラメチレンエーテルグリコールージーpーアミノベンゾエートなどの芳香族アミンを特定の範囲で配合した硬化剤(場合により可塑剤、ポリオール、充填剤、触媒などを含む)とを施工現場において主剤のイソシアネート基と硬化剤の芳香族ポリアミンのアミノ基との当量比が0.8〜2.0となるように混合して被塗物上に塗工し、硬化せしめるのである。
主剤のイソシアネート基と硬化剤中のアミノ基との当量比が0.8未満では、未反応のアミンが塗膜表面にブリードしてきて変色の原因となり、2.0を越えると硬化性が遅くなりすぎ塗膜の機械的強度も低下するので、いずれも本発明の目的を達成することができない。
【0017】
本発明の方法により、年間を通して安定した常温施工ができ、短時間のうちにベタつきのない仕上り性の良好な、耐熱性および耐候性に優れた塗膜防水材、塗り床材などの用途に好適な硬化塗膜が得られる。
本発明の方法は手作業による混合、塗工に主として用いられるが、可使時間およびレベリング可能時間が長くとれるため、スタチックミキサー、あるいは、ダイナミックミキサー等の自動混合装置を使用した機械施工にも使用することができる。
【0018】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。実施例において使用される各記号はそれぞれ下記の意味を有する。
表中の”←”は左欄の数値と同じ値であることを示す。
[主剤]
D−2000:ポリプロピレンエーテルジオール 分子量 2000(武田薬品工業社製)
D−3000:ポリプロピレンエーテルジオール 分子量 3000(武田薬品工業社製)
D−400:ポリプロピレンエーテルジオール 分子量 400(武田薬品工業社製)
T−3000:ポリプロピレンエーテルトリオール 分子量 3000(武田薬品工業社製)
T−5000:ポリプロピレンエーテルトリオール 分子量 5000(武田薬品工業社製)
【0019】
[硬化剤]
DETDA:ジエチルトルエンジアミン(エタキュア100、エチルコーポレーション社製)
エラスマー1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコールージーpーアミノベンゾエート(イハラケミカル社製品、黄褐色液状)
MOCA:4,4´−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)(イハラケミカル社製)
DOP:フタル酸ジオクチル(可塑剤、大八化学工業所製)
ポリオール:ポリプロピレンエーテルジオール D−2000
炭酸カルシウム:無機充填材(丸尾カルシウム社製)
鉛オクトエート:触媒、鉛含有率20重量%、(日本化学産業社製)
NCO/NH2当量比:プレポリマー(主剤)のNCO基と硬化剤の芳 香族ポリアミン架橋剤のアミノ基との当量比( 但し比較例8のみNCO基/(NH2+OH)基 の当量比)
【0020】
[可使時間と硬化性]
可使時間:主剤と硬化剤とを混合した後、支障なく塗工できる限度の時間(分)(混合後の粘度が10万センチポイズに達するまでの時間)
タックフリータイム:塗膜表面にベトつきがなくなるまでの時間(時間)(塗工後塗膜上に人が乗れるようになるまでの時間)
【0021】
[硬化塗膜の物性]
基礎物性:塗工後塗膜を20℃、7日硬化させた後JISA−6021に準じて行う塗膜物性試験結果(JIS規格では破断伸びは450%以上、引張強度は25kgf/cm2以上)
耐熱性:20℃、7日間硬化後、80℃のオーブンで7日間加熱した後の塗膜物性試験結果
引張強度保持率:耐熱性試験後の引張強度と基礎物性のそれとの強度比(百分率)(JIS規格では80以上150以下)
【0022】
主剤(イソシアネート末端プレポリマー)の調製
2リットルのガラスコルベンに表1,表2,表3の配合表に従ってそれぞれ2,4−異性体対2,6−異性体含有率(重量比)が65対35、80対20、85/15または100対0のTDIを仕込み、窒素気流下にD−2000、D−3000、D−400、T−3000またはT−5000のポリプロピレンエーテルポリオールをそれぞれの仕込NCO基対OH基の当量比に従って徐々に加え、80〜105℃で4〜8時間加熱攪拌し反応を完結させ、イソシアネート末端プレポリマー(主剤)を調製した。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
硬化剤の調製
2リツトルの円筒型開放容器に表1,表2,表3の配合表に従ってDETDA、エラスマー1000、DOP、場合によりポリオール、炭酸カルシウム、場合により鉛オクトエートを仕込み、室温でデイゾルバーを用いて15分間攪拌し、それぞれの硬化剤を調製した。但し比較例8の硬化剤のみはあらかじめMOCAをポリオール(D−2000)に加熱溶解したものを使用した。
【0027】
実施例1
2リットルのガラスコルベンに2,4−異性体/2,6−異性体重量比が65/35のTDIを148.2g仕込み、681.4gのD−2000と170.4gのT−3000(D−2000/T−3000=80/20重量比)を徐々に加え、窒素気流下に80℃に加熱し攪拌しながら90〜100℃に昇温しこの温度で5時間保ち反応を完結させ、NCO含有率3.5重量%のプレポリマー1000gを調製した。これとは別に、2リットルの円筒型開放容器に49gのDETDA、86gのエラスマー1000(硬化剤中の芳香族ポリアミン中に、DETDAが80モル%およびえらすまー1000が20モル%含有)、765gのDOPおよび900gの炭酸カルシウムを仕込み、室温でデイゾルバーにて15分間攪拌し1800gの硬化剤を調整した。
上記で調整した主剤と硬化剤とを3分割し、10℃(冬場を想定)、20℃および35℃(夏場を想定)の雰囲気に2時間以上静置した後、それぞれの雰囲気で主剤と硬化剤を重量比1/1.8(主剤のNCO基/硬化剤のNH2 基当量比=1.2)の割合に混合し、可使時間をチェックしながらプライマー処理したスレート板にコテまたはヘラを用いて厚さ1.5〜2mmになるように塗布した。20℃で混合したものの1部をガラス板上に厚さ1.5〜2mmになるように流延し、このまま20℃で硬化させ塗膜物性(基礎物性および耐熱性)測定用の試験片とした。
【0028】
【表4】
【0029】
その結果表4のように10℃、20℃および35℃の可使時間はそれぞれ50分、38分および20分であり高温時(夏場)においても所望の可使時間が保持でき、タックフリータイムはそれぞれ5時間、3時間および2時間と低温においても硬化性が良好であり、発泡もなく良好な仕上り性を示した。20℃、7日後の塗膜の基礎物性および耐熱性は表の通りであり塗膜防水材のJIS規格を充分に満足する性能を示した。
【0030】
実施例2〜5
実施例2〜4は、主剤の原料TDIとして2,4−異性体/2,6−異性体の重量比が80/20、85/15または100/0のものを用いて調製したプレポリマーを使用し、硬化剤は可塑剤DOPを実施例1より減じ(それに伴って炭酸カルシウム量も減じ)た硬化剤を使用し、主剤と硬化剤の重量比1/1(主剤のNCO基/硬化剤のNH2 基の当量比=1.2)の割合に混合し実施例2および3は20℃で、実施例4は10℃および35℃のテストも実施した。結果は表4の通りである。すなわち2,4−異性体含有率の多いものほど可使時間が長くなり所望の可使時間を保持し易くなるが、硬化性はやや遅くなる傾向を示す。しかしながら実施例4にみられるように、硬化が遅いものであっても低温(10℃)においてさえ7〜8時間でタックフリーとなり速硬化性であり(比較例8の従来法ではこれが30〜40時間)、また高温(35℃)においても30分の可使時間が保持でき、発泡もなく仕上り性良好な塗膜となった。これらの硬化塗膜はいづれも防水材として好適な物性を示した。すなわち年間を通して支障なく施工が可能であることが示された。
実施例5は実施例4の組成で硬化剤に触媒を小量添加した例であるが、実施例4より速硬化性となり、この程度の触媒の添加量であれば所望の可使時間を保持しながら耐熱性が劣化しないことを示している。
【0031】
実施例6〜7
主剤のプレポリマーは実施例4と同一のものを使用し、硬化剤の芳香族ポリアミン架橋剤中のDETDAとエラスマー1000のの使用割合を実施例1〜5の場合と異り実施例6および7ではDETDA/エラスマー1000=65/35または50/50モル%として実施例4と同様にテストした。 結果は表4からわかるように実施例4に比較してエラスマー1000の使用割合が増加する(実施例6および7)に従って可使時間が長くなり、それに伴って硬化性が遅くなりかつ塗膜がやや軟く強度が低下する傾向を示すが実施例7のように20℃におけるタックフリータイムが8〜9時間とやや遅くなってもなお比較例8の従来法に比べて速硬化性であり、硬化塗膜の物性も防水材として好適な性能を保持することが示された。
【0032】
実施例8
主剤のプレポリマーとして実施例4〜7と同一のものを使用し、硬化剤中のDETDAとエラスマー1000の混合割合が85/15モル比のものを使用し、これにポリオールD−2000を可塑剤的に配合した場合の例である。
結果は表5のように可使時間と硬化性は所望の範囲内であり、硬化塗膜も防水材として好適な物性をもつことを示し、硬化剤中にポリオールを可塑剤的にこの程度配合しても本発明の目的を保持できることが示された。
【0033】
【表5】
【0034】
実施例9
主剤のプレポリマーのNCO含有率が7重量%と実施例1〜8(NCO含有率3.5重量%)よりも大きいものを使用し、硬化剤中のDETDAとエラスマー1000の混合割合が実施例6と同様に65/35モル比のものを使用した場合の例である。結果は表5のように可使時間が40分(10℃)、25分(20℃)または15分(35℃)と実施例4または6と比較して短くなるがいづれも所望の範囲内であり、それに伴ってタックフリータイムは速くなり実施例4または6よりはさらに速硬化性となり、硬化塗膜は防水材として好適な物性であることが示された。
【0035】
実施例10および11
主剤としてNCO含有率3.5重量%と実施例4〜8と同一のものを使用し、硬化剤中の芳香族ポリアミン架橋剤の使用量を増減し、主剤のNCO基/硬化剤のNH2基の当量比を0.9または1.6と実施例6(NCO/NH2=1.2)に比較して増減させた。硬化剤中のDETDAとエラスマー1000の混合割合は65/35モル比と実施例6と同じ混合比で実施した。
結果は表5からわかるようにNCO基/NH2基当量比が0.9( 実施例10)と実施例6より小さくすると可使時間は50分と短くなり、一方タックフリータイムは5時間と硬化性は速くなる。NCO基/NH2 当量比が1.6(実施例11)と大きくすると可使時間は60分と長くなり、一方タックフリータイムは7時間とやや硬化性は遅くなるがいづれも所望の可使時間と硬化性の範囲内にある。塗膜物性はいづれも防水材のJIS規格に合格する良好な性能を示した。
実施例1〜11に使用した芳香族ポリアミンは、いずれも日本において、既存化学物質に登録されてあり、従来技術で述べたMOCAとは異なり、製造または使用に際しての制約がない。
【0036】
比較例1
主剤のプレポリマーの原料TDIとして2,4−異性体/2,6−異性体の重量比が80/20のもの(実施例2と同じ)を使用し、硬化剤中のDETDAとエラスマー1000のモル比が30/70と実施例の諸例(実施例2、4、6および7)と比較してDETDAの使用割合を少くし、エラスマー1000の使用割合を多くした場合をテストし結果を表6に示した。
【0037】
【表6】
【0038】
結果は表6のように可使時間は80分と長くなる一方タックフリータイムは20時間と遅くなり施工当日にトップコート塗布などの次工程に移れない程度にまで硬化性は遅くなる。さらに硬化塗膜は機械的強度が弱く、耐熱性にも劣り、総じて防水材のJIS規格を満足しないものとなることが示された。
すなわち実施例1から7の結果を勘案すると、本発明の目的を達成するためには硬化剤中の芳香族ポリアミン架橋剤であるDETDAとエラスマー1000で代表されるポリアルキレンエーテルポリオールーpーアミノベンゾエートの使用混合割合には限界的な所定の範囲が存在し、比較例1はその限界外であることを示している。
【0039】
比較例2および3
主剤として実施例4〜8、10、11と同じプレポリマーを使用し、比較例2は硬化剤中の可塑剤量が多い場合、比較例3は硬化剤中に可塑剤的に使用するポリオールの配合量が多い場合をそれぞれテストした。いづれも硬化剤中のDETDAとエラスマー1000の混合割合として80/20モル比のものを使用した。比較例2は可塑剤量が多いので主剤と硬化剤との重量混合比を1/2.5とし、比較例2、3は両方とも主剤のNCO基/硬化剤のNH2基の当量比が1.2となるように調整した。結果は表6のように比較例2では可塑剤が、比較例3では未反応ポリオールが硬化塗膜表面にブリードしてしまい、いづれも本発明の目的とする防水材とすることができないことが示された。
【0040】
比較例4および5
比較例4および5は、主剤のNCO基/硬化剤中のNH2基の当量 比が小さい場合と大きい場合の例である。結果は表6に示すようにNCO基/NH2 基の当量比を0.7(比較例4)と小さくすると塗膜表面に未反応アミンがブリードして変色が大となり、当量比を2.4(比較例5)と大きくすると可使時間が90分と長くなり硬化性が遅くなる上、塗膜が発泡してしまい、いづれも本発明の目的の防水材を得ることができなくなる。すなわち実施例4〜7、10および11の結果を勘案すると、本発明の目的を達成するためには、主剤のNCO基/硬化剤のNH2基の当量比は限界的な所定の範囲が存在することを示している。
【0041】
比較例6および7
比較例6および7は主剤のNCO含有率が実施例より低い場合と高い場合であり、硬化剤中の芳香族ポリアミン架橋剤であるDETDAとエラスマー1000の混合割合を80/20モル比と一定にしてその使用量を増減し、主剤のNCO基/硬化剤のNH2 基の当量比がいづれも1.2となるように調整して実施した。結果は表6からわかるように主剤のNCO含有率が1.2重量%(比較例6)まで低くなると、可使時間は80分と充分長くなるがタックフリータイムが12時間と実施例4に比較して遅くなる上、硬化塗膜は機械的強度が弱く、耐熱性も劣るものとなる。主剤のNCO含有率が9重量%(比較例7)と高くなると、タックフリータイムは1時間と速硬化性ではあるが可使時間は7分と短く手塗り塗工が困難となり、硬化塗膜も堅く脆くなり弾性に欠け防水材としては不向きな性能となることが示された。
【0042】
比較例8
比較例8は従来技術のMOCA−ポリオール併用硬化剤を使用した例である。主剤の原料TDIとして2,4−異性体/2,6−異性体の重量比が80/20のものを使用し、MOCA−ポリオール併用系の硬化剤と触媒を使用した。
結果は表6からわかるように可使時間は充分長いが、タックフリータイムは20℃でも20時間と遅く、10℃の低温においては30〜40時間となり、施工翌日になっても次工程(トップコート塗布など)に移れない場合がある程に硬化が遅いことを示した。
【0043】
【発明の効果】
以上の説明からわかるように本発明によれば、TDIとポリオールとの反応によって得られるイソシアネート末端プレポリマーを主成分とする主剤と、DETDAとエラスマー1000で代表されるポリアルキレンエーテルポリオールーpーアミノベンゾエートとの所定混合割合の芳香族ポリアミンを硬化剤とし、主剤のイソシアネート基と硬化剤中のアミノ基との当量比が所定範囲内となるように施工現場で混合し、手塗り塗工して硬化させることによって、年間を通して安定した常温施工ができ、短時間のうちに発泡せず、表面タックを残さず、仕上り性よくかつ耐熱性にすぐれたポリウレタン硬化塗膜を得ることができる。したがって本発明の方法は、常温施工の塗膜防水材や塗り床材などに効果的に適用できるものである。
Claims (4)
- トリレンジイソシアネートとポリオールとの反応によって得られるイソシアネート末端プレポリマーを主成分とする主剤と、芳香族ポリアミンを含有する硬化剤とからなる2液型常温硬化性塗膜防水材の製造方法において、
(1)前記イソシアネート末端プレポリマーのポリオール成分に分子量400〜8000のポリプロピレンエーテルポリオールまたはポリエチレン−プロピレンエーテルポリオールを使用し、イソシアネート含有率を1.5〜8重量%とし、
(2)前記硬化剤中の芳香族ポリアミンとして、ジエチルトルエンジアミンとポリアルキレンエーテルポリオール−p−アミノベンゾエートとの混合物を使用し、該芳香族ポリアミンの40〜90モル%がジエチルトルエンジアミンであり、10〜60モル%がポリアルキレンエーテルポリオール−p−アミノベンゾエートであり、
(3)前記硬化剤中に、イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対して、0〜130重量部の可塑剤を使用し、
(4)前記硬化剤中に、イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対して、0〜35重量部のポリオールを使用し、
(5)主剤と硬化剤とを施工現場で主剤のイソシアネート基と硬化剤の芳香族ポリアミンのアミノ基との当量比が0.8〜2.0となるように混合し、塗工し硬化せしめることを特徴とする常温硬化性塗膜防水材の製造方法。 -
トリレンジイソイアネートが2,4−異性体含有率80重量%以上のトリレンジイソシアネ−トである請求項1記載の常温硬化性塗膜防水材の製造方法。 -
トリレンジイソイアネートが2,4−異性体含有率85重量%以上のトリレンジイソシアネ−トである請求項1記載の常温硬化性塗膜防水材の製造方法。 - 硬化剤中の芳香族ポリアミンの60〜90モル%がジエチルトルエンジアミンであり、10〜40モル%がポリアルキレンエーテルポリオール−p−アミノベンゾエートである請求項1〜3のいずれか1項記載の常温硬化性塗膜防水材の製造方法。
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