JP3223858B2 - アルカリ蓄電池とその正極活物質およびその製造方法 - Google Patents
アルカリ蓄電池とその正極活物質およびその製造方法Info
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Description
連し、特に、水酸化ニッケルを主成分とする固溶体粒子
とコバルト酸化物導電剤とからなる、アルカリ蓄電池用
非焼結式正極の活物質とその製造方法に関するものであ
る。
及に伴い高容量化が強く要望されている。特に、ニッケ
ル−水素蓄電池は、水酸化ニッケルを主体とした活物質
からなる正極と、水素吸蔵合金を主材料とした負極から
なる二次電池であり、高容量で高信頼性の二次電池とし
て急速に普及してきている。
て説明する。アルカリ蓄電池用の正極としては、大別し
て焼結式と非焼結式の二つがある。前者はパンチングメ
タル等の芯材とニッケル粉末とを焼結させて得た多孔度
80%程度の多孔質ニッケル焼結基板に、硝酸ニッケル
水溶液等のニッケル塩溶液を含浸し、続いて、アルカリ
水溶液に含浸するなどして多孔質ニッケル焼結基板中に
水酸化ニッケルを生成させて製造するものである。この
正極は基板の多孔度をこれ以上大きくすることが困難で
あるため、充填される活物質量を増加することができ
ず、高容量化には限界がある。
ば、特開昭50−36935号公報に開示されたよう
に、ニッケル金属よりなる三次元的に連続した多孔度9
5%以上の発泡多孔体基板に、水酸化ニッケル粒子を充
填するものが提案され、現在高容量のアルカリ蓄電池の
正極として広く用いられている。この非焼結式正極では
高容量化の観点から、嵩密度が大きい球状の水酸化ニッ
ケル粒子を充填することがなされている。また、放電特
性や充電受け入れ性、寿命特性の向上のために、上記の
水酸化ニッケル粒子にコバルト、カドミウム、亜鉛等の
金属イオンを一部固溶させて用いるのが一般的である。
ここで発泡多孔体基板の孔部(ポア)サイズは200〜
500μm程度であり、この孔部に粒径が数μm〜数十
μmの球状水酸化ニッケルを充填するため、集電が保た
れた基板骨格近傍の水酸化ニッケル粒子では充放電反応
が円滑に進行するが、骨格から離れた水酸化ニッケル粒
子の反応は十分に進まない。従って非焼結式正極では充
填した水酸化ニッケル粒子の利用率を向上させるため
に、導電剤を用いて水酸化ニッケル粒子間を電気的に接
続させている。
等の金属単体を用いる場合もあるが、多くの場合、水酸
化コバルト、一酸化コバルトのような2価のコバルト酸
化物が使用される。これら2価のコバルト酸化物はそれ
自身は導電性を有しないものの、電池内での初期の充電
において導電性を有するβ−オキシ水酸化コバルトへと
電気化学的に酸化され、これが導電ネットワークとして
有効に機能すると考えられている。この導電ネットワー
クの存在によって、非焼結式正極では高密度に充填した
活物質の利用率を大幅に高めることが可能となり、焼結
式正極に比べて高容量化が図られる。
おいても、その導電ネットワークの導電性能は完全なも
のではなく、水酸化ニッケル粒子の利用率には上限があ
った。これは上記のような電池内の電気化学的な酸化反
応では、2価のコバルト酸化物を完全にβ−オキシ水酸
化コバルトへ変化させることができないためである。例
として、水酸化コバルトを導電剤に使用する場合につい
て述べると、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバル
ト等の2価コバルト塩水溶液にアルカリ水溶液を加えて
合成した水酸化コバルトは、その合成時のpHや温度に
も依存するが、総じて高い結晶性を有し、結晶子のサイ
ズが大きい。この水酸化コバルトは電池内で強アルカリ
の電解液に溶解してコバルト錯イオン(HCoO2-)を
形成し、これは初期の充電でβ−オキシ水酸化コバルト
へと酸化される。しかし、この錯イオンの電解液中での
生成濃度は数百ppmと極めて小さいため、正極中に添
加した大部分の水酸化コバルトは同錯イオンを経由した
反応ではなく、固相反応によって酸化を受ける。このと
き、上記のように大きな結晶子からなる水酸化コバルト
では、酸化(水酸化コバルトから電子およびプロトンを
引き抜く反応)時の反応点が少ないため、酸化が結晶内
部まで十分に進行しない。従って初充電の条件等によっ
ても異なるが、一般に結晶内部に導電性を有さない未反
応の水酸化コバルトを多く残し、導電ネットワークの導
電性能が不完全となって、正極利用率に限界が生じる。
あるいは短絡状態で放置したり、長期保存、あるいは高
温下で保存すると、正極容量が低下するという欠点があ
った。このような条件下では、正極電位が通常の放電終
了状態よりも低く保たれるため、水酸化ニッケル粒子の
より深い放電(還元)と同時に、導電ネットワークを形
成するβ−オキシ水酸化コバルトを含んだコバルト酸化
物の還元反応も進行する。この際、上記のような導電ネ
ットワークの導電性能の不完全さのため、基板骨格から
離れた位置にある活物質は放電できずに取り残され、集
電性のある基板骨格近傍部のみで集中的に還元反応が進
行し、骨格近傍のコバルト酸化物は完全に2価まで還元
されてコバルト錯イオンとして電解液中に溶出し、ニッ
ケル基板骨格から離れた位置の活物質部へと拡散する。
負極に水素吸蔵合金を用いたニッケル−水素蓄電池で
は、電池内が強い水素還元雰囲気に保たれるために上述
のコバルトの還元・溶解反応は加速的に進行し、さらに
溶出したコバルト錯イオンが負極側に金属コバルトとし
て析出する(すなわち二度と正極には戻ってこない)現
象も併発する。このため、上記正極では導電ネットワー
クが破壊されて容量が低下する。
トワークの不完全さを改善する手段が幾つか報告されて
いる。まず、2価のコバルト酸化物の酸化度合いを高め
ることにより前記の不完全さを改善するアプローチとし
て、正極活物質中の水酸化コバルトをアルカリ水溶液と
酸素(空気)との共存下で加熱し、結晶構造の乱れた2
価よりも価数の大きいコバルト酸化物に酸化する手法
が、特開平8−148145号公報(あるいはUSP
5,629,111号明細書)等で開示されている。同
公報中では、2.9価程度のコバルト酸化物への酸化
と、それを用いた電池特性が示されている。これに類似
する内容として、2.5〜2.93価までのコバルト酸
化物の改良が、特開平9−147905号において述べ
られている。
報等では、上記の加熱処理を水酸化コバルトの被覆層を
有する水酸化ニッケル固溶体粒子(以下、Co(OH)
2被覆Ni粒子という)に対して施す点も述べられてい
る。ここでCo(OH)2被覆Ni粒子は、水酸化ニッ
ケル固溶体粒子を2価のコバルト塩の水溶液中で攪拌
し、アルカリを滴下しながらpHを調整して粒子表面に
水酸化コバルトを析出させる方法(液相法)、あるいは
水酸化ニッケル固溶体粒子に水酸化コバルト粉末を添加
し、機械混合によるせん断力や衝撃力の作用を利用して
粒子表面を水酸化コバルトで被覆させる方法(機械混合
法)等で作製されるもので、正極中でのコバルト分散性
を高める手段として古くから広く知られていた。このよ
うなCo(OH)2被覆Ni粒子に対し、上記の加熱処
理を施した場合、コバルトの分散性が高いことと、処理
時に水酸化ニッケル固溶体粒子と被覆層との界面が接合
されることとの効果が相まって、使用するコバルト量の
少ない状態でかなり良好な導電ネットワークをもたらす
正極活物質を得ることができる。
法として、アルカリ水溶液を含んだCo(OH)2被覆
Ni粒子を流動造粒装置等の中で流動させるか、あるい
は分散させながら加熱する方法が特開平9−73900
号公報において示されている。この方法によると、処理
時の粒子塊の発生を少なくできる等の利点がある。
コバルトの酸化の進行は、周囲に存在するアルカリ成分
の濃度、粒子の微妙な湿り具合いや処理時の粒子自身の
温度(品温)、周囲の湿度や酸素濃度等によって大きく
変化し、複雑な反応パスが存在する。従って、意図した
状態まで水酸化コバルトが十分に酸化されなかったり、
副生成物が生成したりするなどの現象を完全に抑えるの
は極めて難しい。このため、上記した公報中におけるコ
バルト酸化物のコバルト平均価数は、実質上、2.9程
度までに留まっていた。実際の電池内では、電池初充電
時の酸化等により、コバルト価数がこれよりやや高い状
態になる可能性も考えられるが、それでもこのような酸
化物は、電池構成以前で価数が3.0を越えるコバルト
酸化物に比べて電子伝導性が劣る。従ってこれを用いた
正極の導電ネットワークは十分なものとは言い難く、改
良の余地が残されていた。
で、平均価数が3.0よりも十分に高いγ−オキシ水酸
化コバルトを主成分とした高次コバルト酸化物を導電剤
に使用することによって、さらなる正極活物質の利用率
向上、電池としての耐過放電特性向上等を図ろうとする
ものである。
めに、本発明は、六方晶、斜方晶、単斜晶のいずれかの
結晶系に属し、層状構造を有していてその(003)面
の面間隔が5.5〜7.0Åであり、且つコバルトの平
均価数が3.0よりも大であることによって定義される
γ−オキシ水酸化コバルトを主成分とした高次コバルト
酸化物と、水酸化ニッケルを主成分とした固溶体粒子と
で構成されるアルカリ蓄電池用非焼結式正極の活物質
と、これを用いたアルカリ蓄電池に関するものである。
さらに、本発明は、上記した正極活物質の効率的な製造
方法も同時に示したものである。
トの高導電性に基づく導電ネットワークを有したアルカ
リ蓄電池用焼結式正極を作製することができ、極めて高
い利用率を達成しつつ、過放電や短絡状態での放置、長
期の保存や高温下での保存後も高容量を維持することが
可能なアルカリ蓄電池を提供することができる。
晶、斜方晶、単斜晶のいずれかの結晶系に属し、層状構
造を有していて、その(003)面の面間隔が5.5〜
7.0Åであり、且つコバルトの平均価数が3.0より
も大であることによって定義されるγ−オキシ水酸化コ
バルトを主成分とした高次コバルト酸化物と、水酸化ニ
ッケルを主成分とした固溶体粒子とで構成されるアルカ
リ蓄電池用非焼結式正極の活物質である。
の水酸化コバルトをKOHあるいはNaOHと水および
空気(酸素)の共存雰囲気下で激しく酸化することで得
られる高次の酸化物である。γ−オキシ水酸化コバルト
は、従来の電池内の電気化学的酸化反応で得られるコバ
ルト酸化物(β−オキシ水酸化コバルトと2価のコバル
ト酸化物との混合状態)や、公知のアルカリ共存空気酸
化で得られた2.9価程度のコバルト酸化物(結晶構造
的には、ほとんどβ−オキシ水酸化コバルトに等しい)
よりも導電性能が優れるため、水酸化ニッケルの放電利
用率を向上させる。また、γ−オキシ水酸化コバルトは
この高導電性のため、過放電や短絡保存時等でも多くの
水酸化ニッケルから集電を保つことができ、前記した基
板骨格近傍部での集中的な還元反応の進行を遅延させ
る。加えて、γ−オキシ水酸化コバルトはそれ自身が極
めて高次な状態まで酸化されているとともに、アルカリ
電解液中での還元電位がβ−オキシ水酸化コバルト等に
比べて卑であるため、2.0価の状態(電解液中にコバ
ルトが溶解しうる状態)までは容易に還元されない。以
上の理由で、過放電や短絡保存時等における正極容量の
劣化をより一層抑制することができる。
ずれかの結晶系に属し、層状構造を有していてその(0
03)面の面間隔が5.5〜7.0Åであり、且つコバ
ルト平均価数が3.0よりも大であることによって定義
され、さらにK+あるいはNa+を結晶内に含有したγ−
オキシ水酸化コバルトを主成分とした高次コバルト酸化
物と、水酸化ニッケルを主成分とした固溶体粒子とで構
成されるアルカリ蓄電池用非焼結式正極の活物質であ
る。
が、コバルト原子に対して20〜33mol%のK+を
結晶内部に含有することを特徴とし、請求項4は、γ−
オキシ水酸化コバルトが、コバルト原子に対して20〜
33mol%のNa+を結晶内部に含有することを特徴
とする。γ−オキシ水酸化コバルトにはK+を含有する
タイプと、Na+を含有するタイプの2種(いずれも骨
格となる結晶構造は等しい)があり、理想構造式からは
M/Co(ここで、MはKまたはNaのいずれか)のモ
ル比率は33%と推測される。ただし、理想構造に相当
する酸化物はめったに得られないことから、実質上、上
記程度の範囲を持つ。
主成分とした高次コバルト酸化物の量が、水酸化ニッケ
ルを主成分とした固溶体粒子の量に対して2〜10重量
%であることを特徴とする。高次酸化物の量がこれより
過小であると固溶体粒子からの集電をうまく保てない
し、過大であると相対的に水酸化ニッケル量が減ること
となって高エネルギー密度の正極を作製することができ
ない。ゆえに、高次コバルト酸化物の量は前記の範囲に
あるのが好ましい。
層を有する水酸化ニッケル固溶体粒子であって、その被
覆層のコバルト酸化物は、六方晶、斜方晶、単斜晶のい
ずれかの結晶系に属し、層状構造を有していてその(0
03)面の面間隔が5.5〜7.0Åであり、且つコバ
ルト平均価数が3.0よりも大であることによって定義
されるγ−オキシ水酸化コバルトを主成分とした高次コ
バルト酸化物であることを特徴とする。
する水酸化ニッケル固溶体粒子は平均粒径が5〜20μ
mであり、被覆層はその厚みが0.2μm以下で粒子全
面を被覆していることを特徴とする請求項6記載のアル
カリ蓄電池用非焼結式正極の活物質である。固溶体粒子
の平均粒径が上記の範囲内になければ、嵩密度の低下等
の理由により高エネルギー密度の正極を与えることがで
きない。また、被覆層の厚みが0.2μmを越えると活
物質全体に占めるコバルト酸化物の量が多すぎて相対的
に水酸化ニッケル量が減ることとなり、やはり高エネル
ギー密度の正極を与えることができない。平均粒径およ
び被覆層の厚みが前記の範囲内にあって、なおかつ水酸
化ニッケルからの集電能力を最大とするため、被覆層が
粒子全面を完全に被覆したものが、活物質粒子として最
も好ましい。
する水酸化ニッケル固溶体粒子であって、その被覆層の
コバルト酸化物は、六方晶、斜方晶、単斜晶のいずれか
の結晶系に属し、層状構造を有していてその(003)
面の面間隔が5.5〜7.0であり、且つコバルト平均
価数が3.0よりも大であることによって定義され、さ
らにK+あるいはNa+を結晶内に含有したγ−オキシ水
酸化コバルトを主成分とした高次コバルト酸化物である
ことを特徴とする。
層を有する水酸化ニッケル固溶体粒子は、その平均粒径
が5〜20μmであり、被覆層は厚み0.2μm以下で
粒子全面を被覆していることを特徴とする請求項8記載
のアルカリ蓄電池用非焼結式正極の活物質である。請求
項10は、コバルト酸化物が、コバルト原子に対して2
0〜33mol%のK+を結晶内部に含有することを特
徴とする請求項8記載のアルカリ蓄電池用非焼結式正極
の活物質であり、請求項11は、コバルト酸化物が、コ
バルト原子に対して20〜33mol%のNa+を結晶
内部に含有することを特徴とする請求項8記載のアルカ
リ蓄電池用非焼結式正極の活物質である。
覆層を有する水酸化ニッケル固溶体粒子であって、拡散
反射法を用いた測色における可視全域(波長400〜7
00nm)の分光反射率が3.5%以上で、さらに波長
450nm近傍(藍色)に分光反射率4.0%以上の極
大値を持ち、且つ被覆層のコバルト平均価数が3.0よ
りも大であることを特徴とする。ここで活物質粒子の色
は、被覆層を形成するコバルト酸化物の電子状態と密接
に関連しており、上記のような色を呈するコバルト酸化
物は極めて電子伝導性が高い。これは上記の色が、γ−
オキシ水酸化コバルトに特有な3.0価よりも高次な電
子状態(4価のコバルト種の存在)を反映しているため
である。
有する水酸化ニッケル固溶体粒子は平均粒径が5〜20
μmであり、被覆層はその厚みが0.2μm以下で粒子
全面を被覆していることを特徴とする請求項12記載の
アルカリ蓄電池用非焼結式正極の活物質である。請求項
14は、コバルト酸化物が、コバルト原子に対して20
〜33mol%のK+を結晶内部に含有することを特徴
とする請求項12記載のアルカリ蓄電池用非焼結式正極
の活物質であり、請求項15は、コバルト酸化物が、コ
バルト原子に対して20〜33mol%のNa+を結晶
内部に含有することを特徴とする請求項12記載のアル
カリ蓄電池用非焼結式正極の活物質である。
いずれかの結晶系に属し、層状構造を有していてその
(003)面の面間隔が5.5〜7.0Åであり、且つ
コバルトの平均価数が3.0よりも大であることによっ
て定義されるγ−オキシ水酸化コバルトを主成分とした
高次コバルト酸化物と、水酸化ニッケルを主成分とした
固溶体粒子とで構成された活物質を備える非焼結式正極
と、負極と、セパレータと、アルカリ電解液よりなるア
ルカリ蓄電池である。
いずれかの結晶系に属し、層状構造を有していてその
(003)面の面間隔が5.5〜7.0Åであり、且つ
コバルトの平均価数が3.0よりも大であることによっ
て定義され、さらにK+あるいはNa+を結晶内に含有し
たγ−オキシ水酸化コバルトを主成分とした高次コバル
ト酸化物と、水酸化ニッケルを主成分とした固溶体粒子
とで構成された活物質を備える非焼結式正極と、負極
と、セパレータと、アルカリ電解液よりなるアルカリ蓄
電池である。
が、コバルト原子に対して20〜33mol%のK+を
結晶内部に含有することを特徴とする請求項17記載の
アルカリ蓄電池であり、請求項19は、γ−オキシ水酸
化コバルトが、コバルト原子に対して20〜33mol
%のNa+を結晶内部に含有することを特徴とする請求
項17記載のアルカリ蓄電池である。
バルトを主成分とした高次コバルト酸化物の量が、水酸
化ニッケルを主成分とした固溶体粒子の量に対して2〜
10重量%であることを特徴とする請求項17記載のア
ルカリ蓄電池である。請求項21は、アルカリ蓄電池で
あって、六方晶、斜方晶、単斜晶のいずれかの結晶系に
属し、層状構造を有していてその(003)面の面間隔
が5.5〜7.0Åであり、且つコバルト平均価数が
3.0よりも大であることによって定義されるγ−オキ
シ水酸化コバルトを主成分とした高次コバルト酸化物で
被覆された水酸化ニッケル固溶体粒子を主体とした非焼
結式正極と、負極と、セパレータと、アルカリ電解液よ
りなる。
有する水酸化ニッケル固溶体粒子は平均粒径が5〜20
μmであり、前記被覆層はその厚みが0.2μm以下で
粒子全面を被覆していることを特徴とする請求項21記
載のアルカリ蓄電池である。請求項23は、アルカリ蓄
電池であって、六方晶、斜方晶、単斜晶のいずれかの結
晶系に属し、層状構造を有していてその(003)面の
面間隔が5.5〜7.0Åであり、且つコバルト平均価
数が3.0よりも大であることによって定義され、さら
にK+あるいはNa+を結晶内に含有したγ−オキシ水酸
化コバルトを主成分とした高次コバルト酸化物で被覆さ
れた水酸化ニッケル固溶体粒子を主体とした非焼結式正
極と、負極と、セパレータと、アルカリ電解液よりなる
ものである。
有する水酸化ニッケル固溶体粒子は平均粒径が5〜20
μmであり、その被覆層の厚みは0.2μm以下で粒子
全面を被覆していることを特徴とする請求項23記載の
アルカリ蓄電池である。請求項25は、コバルト酸化物
が、コバルト原子に対して20〜33mol%のK+を
結晶内部に含有することを特徴とする請求項23記載の
アルカリ蓄電池であり、請求項26は、コバルト酸化物
が、コバルト原子に対して20〜33mol%のNa+
を結晶内部に含有することを特徴とする請求項23記載
のアルカリ蓄電池である。
おける可視全域(波長400〜700nm)の分光反射
率が3.5%以上で、波長450nm近傍(藍色)に分
光反射率4.0%以上の極大値を持ち、且つコバルト平
均価数が3.0よりも大であるコバルト酸化物で被覆さ
れた水酸化ニッケル固溶体粒子を主体とした非焼結式正
極と、負極と、セパレータと、アルカリ電解液よりなる
アルカリ蓄電池である。
有する水酸化ニッケル固溶体粒子は平均粒径が5〜20
μmであり、前記被覆層はその厚さが0.2μm以下で
粒子全面を被覆していることを特徴とする請求項27記
載のアルカリ蓄電池である。請求項29は、コバルト酸
化物が、コバルト原子に対して20〜33mol%のK
+を結晶内部に含有することを特徴とする請求項27記
載のアルカリ蓄電池であり、請求項30は、コバルト酸
化物が、コバルト原子に対して20〜33mol%のN
a+を結晶内部に含有することを特徴とする請求項27
記載のアルカリ蓄電池である。
正極活物質の製造方法であって、マイクロ波加熱手段お
よび混合攪拌手段を備えた容器内で、水酸化コバルトの
被覆層を有した水酸化ニッケル固溶体粒子(Co(O
H)2被覆Ni粒子)を混合しながら、これにアルカリ
水溶液を滴下して粒子表面がアルカリ水溶液で濡れた湿
潤粒子にする第1工程と、この容器内を気密にしてマイ
クロ波照射を主として加熱を行いながら混合を続け、前
記湿潤粒子を所定温度まで昇温する第2工程と、所定温
度に達した後に気密を解いて容器内に空気を流入させ、
粒子温度が一定となるよう前記マイクロ波出力を制御し
ながら混合を続けて、前記湿潤粒子を完全乾燥まで導く
第3工程とよりなる。
ルカリ水溶液の共存雰囲気で酸化する場合、被覆層を形
成する水酸化コバルトの反応機構として、次の2つのプ
ロセスが考えられる。1つ目のプロセスは、粒子被覆層
表面に存在するアルカリ水溶液中に水酸化コバルトが
(式1)の反応によりコバルト錯イオン(HCoO2-)
として溶解し、これが酸素に触れることで(式2)の反
応により酸化され、高次のコバルト酸化物として粒子上
に析出する。
が共存する雰囲気で水を生成しながら(式3)のように
固相反応的に(つまり溶解を伴わずに)酸化して高次の
コバルト酸化物になる。(式4)はこの雰囲気での酸素
の消費を示す。
(形式上は3.0価)として表記したが、反応をうまく
制御することによって、3.0価より高次なγ−オキシ
水酸化コバルトにまで酸化することができる。この場
合、反応の概要は変わらないが、反応式は上記よりもや
や複雑となる。
すると、まず1つ目のプロセスの進行は、水酸化コバル
トのアルカリ水溶液への溶解性(式1)に依存する。し
かし、例えば濃度30重量%のKOH水溶液で60℃程
度においてもこの溶解度は数百ppmにすぎず、溶解速
度もさほど大きくない。従って反応速度を高めるために
雰囲気を高温にする必要がある。しかしながらここで高
温にした際、周囲の湿度が低すぎる等の理由で液が蒸発
して乾燥枯渇すると、(式1)の錯イオンの生成が不能
となり、反応が停止する。一方、(式2)の酸化反応で
は、生じたコバルト錯イオンが十分に酸素(空気)に触
れることが重要で、周囲酸素が欠乏するような環境で高
温になると、次の(式5)の副反応により、導電性の乏
しいCo3O4(Co価数:2.67)が生成してしま
う。
バルトを加熱すると(式3)の機構により高次のコバル
ト酸化物が生成する。このとき酸素共存下では(式4)
の反応が同時に起こり、(式3)の反応は連続的に進行
するわけである。この反応を円滑に進めるためには、反
応系を高温にすること、OH-濃度を高くすること(式
3)、O2濃度を高くすること(式4)、および生成し
た水を反応系より適度に除去することがポイントにな
る。ここで水の除去が過剰になる(つまり乾燥させすぎ
る)と、アルカリ種からのOH-イオンの生成が不能と
なるため(式3)の反応が停止する。また逆に、水の除
去が不十分になると、水酸化コバルト近傍のO2濃度が
相対的に下がるために(式4)が十分に進まず、結果と
して(式3)の代わりに(式6)の副反応が起こる。
における水と酸素(空気)の状態が重要な働きをするこ
とは明らかである。この観点からして、Co(OH)2
被覆Ni粒子のアルカリ共存雰囲気での酸化を最も効率
的に進行させるには、適量のアルカリ水溶液を表面に持
つことでファニキュラ(化学工学上の分類で、粒子表面
に液が十分に存在しており且つ通気性を有した湿潤状
態)となった粒子に対して、高温下で水と酸素の量をう
まく制御しながら処理を施さなければならない。
は、まず第1工程で、Co(OH)2被覆Ni粒子を混
合しながらアルカリ水溶液を滴下することによって、均
一なファニキュラ状態の湿潤粒子にすることができる。
続く第2・第3工程におけるマイクロ波加熱は、湿潤粒
子へのマイクロ波照射によって誘電体(この場合はアル
カリ水溶液)に分子レベルで振動を与え、分子の衝突・
摩擦熱によって加熱する手法である。第2工程において
は、気密雰囲気下で混合しながらマイクロ波加熱を行う
ことにより、加熱むらをほとんど生ずることなく湿潤粒
子を迅速に所定温度まで昇温することができる。続く第
3工程における気密を解いた空気の送り込みは、水酸化
コバルトの酸化反応で生成した過剰の水を効率よく系外
に排出するとともに、必要十分な量の酸素を反応系に供
給することを目的としている。この際、過剰の水の蒸発
により蒸発潜熱が奪われることとなるが、粒子温度をモ
ニターしながらマイクロ波加熱によって熱を補い、系内
の温度を所定範囲内に保つ。酸化の進行の際の加熱手段
としてマイクロ波照射を使用すると、粒子の加熱はアル
カリ水溶液で濡れている粒子表面のコバルト被覆層部分
より起こるため、他の加熱手段に比べて被覆層部分の酸
化効率が高くなり、被覆層のコバルトは3.0価を超え
る状態まで完全に酸化される。また、湿潤粒子を完全乾
燥まで導くのは、同酸化反応の終点が容易には識別でき
ず、粒子表面に水が存在している間は酸化がさらに進む
可能性があるためである。粒子を完全乾燥まで導くと、
処理は完結していると言える。
加熱手段が備えられており、第1工程から第3工程の
間、前記加熱手段により補助的に容器内壁面を加熱する
ことを特徴としている。このような加熱は、蒸発した水
もしくはアルカリミストが容器内壁面で結露して粒子が
付着したり、あるいは粒子が凝集、固化したりするのを
防ぐ上で、極めて有効である。
i粒子を規定したもので、その平均粒径が5〜20μm
であり、且つ被覆層はその厚みが0.2μm以下で粒子
全面を被覆しており、且つ前記粒子はBET比表面積が
5〜12m2/gであることを特徴とする。平均粒径が
上記範囲内にないと粒子嵩密度の低下等の理由により、
高エネルギー密度の正極を与えることができない。被覆
層の厚みについてもこれが過大となると、正極容量を決
定する水酸化ニッケルの量が相対的に減ることとなり、
やはり高エネルギー密度の正極を与えることができなく
なる。また水酸化ニッケル母粒子からの集電を行いやす
くするため、被覆層は粒子全面を被覆した状態が最も好
ましい。さらに、BET比表面積についてはこれが過大
あるいは過小となると粒子の濡れ性が大きく変化するた
め、処理に際して所定のアルカリ水溶液によって粒子を
ファニキュラ状態に到らすことが困難となる。この観点
からCo(OH)2被覆Ni粒子のBET比表面積は上
記した範囲内のものが最も好ましい。
程における加熱温度が、90〜130℃であることを特
徴とする。酸化反応の速度は温度によって大きく影響を
受けるが、設定温度が90℃未満であると酸化の進行が
遅く、1バッチあたりに数時間もの時間を要することと
なる。また同時に、容器内壁での粒子の付着等も生じや
すいことから、好ましくない。一方、130℃を超える
温度では反応が激しく起こりすぎて、被覆層内部の水酸
化ニッケルに損傷を与える。以上の観点より、加熱設定
温度は90〜130℃とするのが好ましい。
HあるいはNaOHの水溶液であって、その濃度は40
重量%より大であり、且つその滴下量は、Co(OH)
2被覆Ni粒子の乾燥重量に対するアルカリ溶質の重量
比率が4〜6%となる範囲であることを特徴とする。本
発明で用いる酸化反応はアルカリ水溶液の沸点近くで起
こるため、アルカリ水溶液中の水の蒸発速度は大きい。
しかしながら本発明の酸化反応の1つ目のプロセスとし
ては、水酸化コバルトがアルカリ水溶液に溶解してコバ
ルト錯イオンが生成し、さらにこの錯イオンが酸素と反
応して高次コバルト酸化物になるものである。従って、
処理に際しては、ある程度の量のアルカリ水溶液が高温
下で粒子表面に存在していなければならない。換言する
と、高温(請求項34に記した処理温度の範囲)であっ
ても、アルカリ水溶液の蒸発が早いと反応を十分に進め
ることができない。この観点より、アルカリ水溶液の濃
度が高いほど沸点が上昇して蒸発速度が遅くなるため、
処理に適すると言える。また、2つ目の酸化プロセスを
考えた場合にも、(式3)よりOH-濃度が高い方が酸
化はよく進むため、やはりアルカリ水溶液の濃度は高い
方が良い。以上より、使用するアルカリ水溶液の濃度は
40重量%より大のものが適する。
にするのは、上記の量が湿潤粒子を適度なファニキュラ
状態に到らせるのに最も適しており、なおかつ粒子の凝
集(これは、アルカリ溶質が処理中に空気中の二酸化炭
素と反応して炭酸塩となり、これが粒子の乾燥過程でバ
インダーとして働くために起こる。)を最小限に抑える
ことができるためである。アルカリ水溶液の滴下量がこ
れよりも過小となると酸化反応が不完全で未反応分を残
すこととなり、一方過大であると粒子の凝集が激しくな
って円滑に処理を行うことができない。
基づいて詳しく説明する。 (実施例1) 1.高次コバルト酸化物の作製 水酸化ナトリウム水溶液中に、1mol/lの硫酸コバ
ルト水溶液を徐々に加え、35℃で水溶液のpHが12
を維持するように調整しながら攪拌して水酸化コバルト
を析出させた。これを水洗した後、真空乾燥させて水酸
化コバルト標準試料とした。この水酸化コバルト標準試
料がβ−型の結晶構造(JCPDS無機物質ファイルの
番号:30−443)を有することをX線回折測定で、
同試料が約0.2μm程度の大きさの六角板状粒子であ
ることを走査電子顕微鏡(SEM)観察で、さらに同試
料の比表面積が25m2/gであることをBET法によ
りそれぞれ確認した。
で粒状の高純度水酸化カリウム試薬を粉砕し、上記水酸
化コバルト標準試料に対して十分な量を混合した。その
後、混合試料をドライボックス外に取り出して110℃
の加熱容器内に入れ、空気を送り込んだ。この過程で混
合試料は水酸化カリウムの潮解性のため、空気中の水分
を少量含んだファニキュラ状となり、これに伴って酸化
が進行する。こうして加熱容器内で試料を12時間保持
して、酸化反応を完結させた。その後試料を取り出し、
十分に水洗した後、80℃で3時間かけて乾燥させ、本
発明の高次コバルト酸化物xを得た。また、水酸化カリ
ウム試薬の代わりに粒状の高純度水酸化ナトリウム試薬
を用いること以外はすべて上記と同じ処理をして、本発
明の高次コバルト酸化物yを作製した。
の以下の手法を用いて合成した。すなわち、硫酸ニッケ
ルを主成分とし、硫酸コバルト及び硫酸亜鉛を所定量だ
け含有させた水溶液に、アンモニア水で溶液pHを調整
しながら水酸化ナトリウム水溶液を徐々に滴下し、球状
の水酸化ニッケル固溶体粒子を析出させる方法を用い
た。ここで析出した水酸化ニッケル固溶体粒子を水洗、
乾燥して正極母粒子とした。なお、この水酸化ニッケル
固溶体粒子の嵩密度は約2.0g/cc、平均粒径は1
0μmであった。
溶体粒子の100重量部に、前記高次コバルト酸化物x
の7.0重量部と適量の純水とを加えて混合分散させ、
活物質スラリとした。この活物質スラリを多孔度95
%、厚み1.3mmの発泡ニッケル多孔体基板に充填
し、80℃の乾燥機内で乾燥させた。その後ロールプレ
スを用いて厚みが0.7mmとなるように圧延した。そ
して、これを所定の大きさに切断加工し、高次コバルト
酸化物xに対応するニッケル正極とした。
様に処理して、対応するニッケル正極を作製した。さら
に、水酸化ニッケル固溶体粒子の100重量部に、前記
水酸化コバルト標準試料の7.0重量部と純水とを加え
て混合分散させて活物質スラリとし、以降の手順は前述
と同様にして比較用ニッケル正極を作製した。 3.電池の作製と正極の評価 上記で作製した3種のニッケル正極について、水素吸蔵
合金を主体とした負極、親水化処理を施したポリプロピ
レン繊維不織布からなるセパレータ、7〜8Nの水酸化
カリウムを主成分とした電解液を用い、公知の方法によ
り、4/5Aサイズで公称容量1600mAhのニッケ
ル−水素蓄電池を各々作製した。それぞれの電池につい
て、次の,に記す方法で試験を行い、各ニッケル正
極の利用率および短絡保存後の容量回復率を評価した。
充電し、放電レート0.2CmAで電池電圧が1.0V
になるまで放電させるサイクルを5サイクル繰り返し、
5サイクル目の容量を測定した。こうして測定した電池
容量を、正極の理論容量(正極中に充填した水酸化ニッ
ケルの重量に水酸化ニッケルが1電子反応するとしたと
きの電気容量289mAh/gを乗じた値)で割り算す
ることにより、各ニッケル正極の利用率を算出した。
mAで1.2時間充電し、放電レート1CmAで電池電
圧が1.0Vになるまで放電させるサイクルを5サイク
ル繰り返し、5サイクル目の容量を測定した。続いてこ
の電池を1Ωの電気抵抗で短絡させ、45℃の雰囲気下
で2週間保存した。保存後の電池について、再び充電レ
ート1CmAで1.2時間充電し、放電レート1CmA
で電池電圧が1.0Vになるまで放電させるサイクルを
5サイクル繰り返し、5サイクル目の容量を測定した。
以上の測定結果から、短絡保存後の電池容量の値を短絡
保存前の電池容量で割り算することにより、各ニッケル
正極における短絡保存後の容量回復率を算出した。
の種類別に区分して(表1)に示す。
バルト酸化物x,yを用いた正極は、水酸化コバルト標
準試料を用いた比較用正極に比べて、格段に高い利用率
および容量回復率を示した。そこで、これらの原因を明
らかとするために、上記の高次コバルト酸化物x,yに
ついて詳細に解析を行った。 4.高次コバルト酸化物の解析 4.1.高次コバルト酸化物x 4.1.1.結晶構造、価数、組成の解析 本発明の高次コバルト酸化物xのX線回折図を図1に示
す。ここでX線源にはCuのKα線を使用した。図中に
印をつけたように、回折角2θが10°より70°まで
の区間に12本のピークが確認できる。そこで、これら
のピーク位置に対応する化合物の定性分析をJCPDS
無機物質ファイルからの検索により実施した。この結
果、コバルトの酸化物として登録されているものの中に
該当するものは存在しないが、ニッケルの高次酸化物と
してよく知られているγ−オキシ水酸化ニッケル(ファ
イル番号:6−75)の回折パターンにかなりよく一致
することがわかった。ここでγ−オキシ水酸化ニッケル
は、文献(よく知られたもので、P.Olivaらの
J.Power Sources,8(1982)22
9−255.等)によると、疑似的(幾何構造的)には
ほぼ六方晶系に属し、層状構造を有するもので、β−型
の水酸化物に比べてc軸方向に格子が伸長しており、さ
らにニッケルの価数が3.0よりも高次に達している酸
化物である。また、このγ−オキシ水酸化ニッケルはア
ルカリカチオンを結晶内に含有することもよく知られて
いる。
バルト平均価数を以下の要領で評価した。まず、所定量
の高次コバルト酸化物xと硫酸第一鉄アンモニウム:F
eSO4(NH4)2SO4とを混合し、これを濃塩酸に溶
解させた。この過程で、2価より大きい価数のCoイオ
ンはFe2+イオンをFe3+イオンへと酸化し、自身はC
o2+へと還元される。次に、得られた水溶液中のCo2+
の全量をICP発光分析により定量し(定量値1)、一
方で、先に生じたFe3+量を過マンガン酸カリウム水溶
液を用いた酸化還元滴定によって求めた(定量値2)。
両者の値から、高次コバルト酸化物xのコバルト平均価
数を、2.0+(定量値2)/(定量値1)となる計算で
求めると、その値は3.42価であった。
濃塩酸に溶解させ、得られた水溶液についてのICP発
光分析を実施し、同酸化物内にはK+が存在し、その含
有量はコバルト原子のモル量を100とした場合、約2
8に相当することを確認した。以上の解析結果は、高次
コバルト酸化物xが、ニッケルの場合と同様の命名に従
うならば、いわば「γ−型」の酸化物に相当するもので
あることを強く示唆する。コバルトとニッケルは原子番
号が1しか異ならず、イオン半径も類似しており、さら
に2価の水酸化物は同じ結晶構造を有するなど、両者は
結晶学的に極めて類似した挙動を示す。そこで、本発明
者らはコバルト酸化物においてもニッケル酸化物と同じ
くγ−型の高次酸化物の結晶構造が存在すると解釈し、
高次コバルト酸化物xを「γ−オキシ水酸化コバルト」
と定義した。このγ−オキシ水酸化コバルトについて、
六方晶系の層状構造(c軸方向から見たコバルト層の配
列はABCの繰り返し構造)を仮定し、X線回折図とし
て図1に示した12本のピークのうち、強度が大きくほ
ぼ正確に回折角が読みとられた6つの面(hkl)につ
いて、面間隔とその指数づけをまとめると(表2)の通
りとなる。
する考察 (表2)に記した構造は、P.Bensonらがコバル
ト電極に関する研究としてElectrochim.A
cta,9(1964)275−280.中に示した
“anodic CoOOH(1)”なる生成物に極め
て類似している。彼らは同文献中で、“anodic
CoOOH(1)”を含めて、面間隔6.8Å付近に強
いX線回折ピークを与えるコバルト酸化物を“β−Co
OOH”と定義し、水酸化コバルトを空気酸化すること
等で得られる導電性の乏しい酸化物“CoHO2”と区
別することを提案した。ここで、“CoHO2”なる酸
化物は六方−菱面晶構造を有し、六方晶の単位格子をと
った場合のc軸長は13.13Åで、c軸方向の面間隔
はその1/3の4.38Åとなる。しかし、現在水酸化
ニッケルとその酸化物に関して広く受け入れられている
H.Bodeらの分類(Electrochim.Ac
ta,11(1966)1079−1087.)に習
い、整合性のある形でコバルトの分類を行うならば、c
軸方向への格子の伸長が認められる先記の“anodi
c CoOOH(1)”や(表2)に記した高次コバル
ト酸化物xは、“γ−CoOOH”(γ−オキシ水酸化
コバルト)と命名するべきである。
添加剤の研究として、押谷らは湯浅時報,65(198
8)28−40.において、水酸化ニッケルにおける
H.Bodeらの分類と同様に、2価の水酸化コバルト
にはc軸方向の面間隔が伸長している「α−型」と伸長
していない「β−型」が存在することを示した。そし
て、正極中に添加したこれら2価のコバルト酸化物は、
初充電により酸化されるとc軸方向の面間隔が4.4Å
程度の酸化物となり、これが導電性を持つために有効に
機能することを報告した。前記のP.Bensonらと
異なり、押谷らは上記の導電性を持つ酸化物を“β−C
oOOH”と称したが、この命名はニッケルに関する
H.Bodeらの分類と整合性があり、一般にも受け入
れられている。つまり、従来の一般的解釈としては、
“β−CoOOH”とはβ−Co(OH) 2のc軸長
(4.65Å)と比較してc軸方向の面間隔に伸張が認
められず、且つ導電性を有するオキシ水酸化コバルトを
指す。そしてこの“β−CoOOH”は、おそらくは
P.Bensonらが“CoHO2”と称した酸化物
(JCPDSファイルではCoO(OH)と表記、番
号:7−169。c軸方向の面間隔は4.384Å)と
同じ結晶構造を持つものであって、且つ結晶性の低いも
のに相当すると考えられる。
の電子伝導性は乏しいため、結晶性の高いもの(これが
“CoHO2”と称される)はP.Bensonらの報
告にあるとおり、導電性が非常に低い。しかし、作製条
件を調整して結晶性を低くしてやると(つまり“β−C
oOOH”と表記されるタイプのものにしてやると)、
結晶子自身が小さくなることと結晶子−結晶子間の界面
(電子伝導面として機能)が増えることとが相まって、
導電性が発現する。この点に関する報告は近年幾つかあ
って、例えば第37回電池討論会講演要旨集,p371
(1996).で報告されたような結晶性の低いCoO
(OH)(CoOをアルカリ電解液中で電気化学酸化し
て得られたもので、一部のCo3O4を含む。)の電気化
学挙動は、要するに、導電性を有する“β−CoOO
H”の充放電挙動を示しているものと考えられる。
ての分類 以上に述べたコバルト酸化物(特に水酸化物)に関する
分類を、H.Bodeらのダイアグラムに習ってまとめ
ると、図2のようになる。従来のアルカリ蓄電池用非焼
結式正極でよく用いられる2価コバルト酸化物、すなわ
ちα−Co(OH)2,β−Co(OH)2,CoOの3
種は、α−Co(OH)2がの反応によって、またC
oOは図2中には示していないがやはり化学変化を起こ
すことによって、アルカリ電解液中で容易にβ−Co
(OH)2へと変化する。従って、これらは結局のとこ
ろは初充電時にの反応に従って酸化され、導電性を有
するβ−CoOOHに変化する。但し、一般に上記のβ
−Co(OH)2の結晶子は大きいため、大部分が固相
反応的に進行するの充電反応においては、酸化(水酸
化コバルトから電子およびプロトンを引き抜く反応)時
の反応点が少なくなることとなり、結晶内部に導電性を
有さない未反応の水酸化コバルトも残存する。(なお、
この残存量は、初充電時の充電電流の大きさや周囲温
度、さらには電解液組成といった条件に依存すると考え
られる。) このように形成されたβ−CoOOHを含
むコバルト酸化物は、の反応によって還元(放電)さ
れうるが、通常の電池の充放電電位域ではこの還元反応
は起こらない。よって、β−CoOOHを含むコバルト
酸化物は、水酸化ニッケル粒子の充放電を円滑に進める
ための導電ネットワークとして機能する。
x(すなわちγ−CoOOH)は、β−Co(OH)2
の強烈な酸化により得られたことから、図2中のの反
応パスにより生じたと考えられる。なお、水酸化ニッケ
ルではβ−NiOOHの過充電によって容易にγ−Ni
OOHが生成することが知られているが、コバルトにお
いてこれに対応する反応パス(図中の)は、一般には
起こりにくいと推測される。これは、β−CoOOHの
基本構造であるCoO(OH)結晶が、β−NiOOH
に比べて酸素−酸素間に強い水素結合を有するため、こ
の層間を広げてアルカリカチオンが結晶内に侵入し、コ
バルトがより高次な酸化状態に達するためには、非常に
大きなエネルギーを要すると予想されるからである。こ
の点はコバルトとニッケルとで異なる。
酸化物とニッケル酸化物とで異なる点がさらに2つあ
り、1つは2価コバルト酸化物の濃アルカリ水溶液に対
する溶解性、もう1つはスピネル構造Co3O4(四酸化
三コバルト)の存在である。前者について、2価コバル
ト酸化物は、さほど大きな溶解度ではないが、コバルト
錯イオン:HCoO2-として濃アルカリ水溶液に溶解す
る。但し、この挙動が、図2中の,,等の反応に
どの程度関与しているかは判明できない。後者につい
て、コバルト酸化物に特有のCo3O4は熱力学的に極め
て安定である。従って、図2中に示した水酸化物は高温
で焼成等を行うといずれもCo3O4に変化するし、ま
た、,,の酸化においては、条件によっては容易
に価数2.67のCo3O4が生成し、それより高次な状
態への酸化の進行が妨げられる。このように、コバルト
酸化物とニッケル酸化物とは、図2の如くかなり類似し
た分類ができる反面、微妙に異なる点も幾つかある。
で記された実験結果を図2で説明する。まず彼らが出発
物質とした合成した水酸化コバルトは、「青色」と記載
されていることやそのX線回折結果(c軸方向の面間
隔:8.4Å)から判断して、明らかにα−Co(O
H)2である。そして、これをKOH水溶液中で電気化
学酸化した際の“anodic CoOOH(1)”の
生成は、の反応に相当する。また、彼らが示した“a
nodic CoOOH(2)”は、γ−CoOOHに
一部のβ−CoOOHおよびCo3O4が混在したものに
相当する。このようなα→γの機構によってもγ−Co
OOHは生成しうる。但し、アルカリ蓄電池用非焼結式
正極にα−Co(OH)2を添加した場合には、電池に
注液してから初充電を施すまでにある程度の時間を要す
るので、この間にの反応が進むこととなり、の反応
は起こりにくい。一方、彼らが水酸化コバルトをKOH
水溶中で放置することで得た“CoHO2”は、出発物
質であるα−Co(OH)2がの反応によってβ−C
o(OH)2となり、続いて液中の溶存酸素によりの
酸化が進んで生じたものである。これについても、酸化
物の色の変化として記載されている観察結果:青→白→
桃→茶が、それぞれα−Co(OH)2の青色、β−C
o(OH)2の白〜桃色、CoHO2の茶色に対応してお
り、まず間違いないものと考えられる。
は、従来より報告されてきたコバルト酸化物(特に水酸
化物)の挙動のすべてが矛盾なく説明づけられる。そし
て、本発明の高次コバルト酸化物xが3価よりも高次な
γ−CoOOHであり、これは従来のアルカリ蓄電池用
正極中には存在しなかったものであることがわかる。 4.1.4.結晶構造に関する考察 図3に、γ−オキシ水酸化コバルトとして予想される結
晶構造の模式を示す。基本的にはγ−オキシ水酸化ニッ
ケルと同じ結晶構造を持つものと考え、これに関する文
献を参考にした。図3で、γ−オキシ水酸化コバルトは
疑似的にはほぼ六方晶系に属し、層状構造を有したコバ
ルト酸化物で、c軸方向に格子が伸長している。c軸方
向から見たコバルト層の周期配列はABCの繰り返しで
あり、コバルト−酸素−酸素−コバルトのパッキングで
見れば、ACCBAACBBの繰り返し構造となる。よ
って、これだけに着目すれば幾何構造的には菱面晶の単
位格子をとることもできる。図3中の三角プリズム状に
配置した6つの酸素イオン(あるいは水酸化物イオン)
間に生ずる空隙は、(表2)に示した面間隔の実測値と
一般的な有効イオン半径:rCo=0.68Å(3価−
6配位:0.685Åと4価−6配位:0.67Åとの
代表値)、rO=1.25Å(O2-の2価−6配位:
1.26ÅとOH-の2価−6配位:1.23Åとの代
表値)を用いると、幾何学計算より、半径1.64Å程
度の球を収納しうると見積もられる。そして図中に点線
の球で示したように、この空隙内はカリウムイオンによ
って部分的に占有される。このことは、カリウムの有効
イオン半径rK=1.52Å(注:三角プリズム6配位
の代表値はほとんど知られていないため、一般的な八面
体6配位の値で代用)が、計算で見積もられた空隙の大
きさとかなり近いことからも理解される。また、水分子
もこの空隙に近い大きさを持つため、さらに空隙の一部
には水分子も取り込まれていることが予想される。
した以外の位置にも幾何学的に等価な空隙が存在する
が、カリウムイオン等が実際に占有している位置を厳密
に判明することができないため、模式図として見易い範
囲で空隙位置を示した。さらに、図3では歪みのない正
確な六方晶の構造として模式を示したが、以上のような
カリウムイオン等の結晶内への占有に伴い、例えばa軸
長が図4の左に示した状態から右の状態のように微妙に
変化すると斜方晶ということになるし、c軸角度が図5
左の状態から右の状態のように90°より僅かにずれれ
ば単斜晶ということになる。しかしながら、この点の厳
密な判明についても極めて困難である。
するため、リード線を溶接した1cm×1cmの発泡ニ
ッケル多孔体基板に高次コバルト酸化物xを充填・プレ
スして試験電極とし、以下の条件でサイクリックボルタ
ンメトリー(CV)の測定を行った。
H2Oを40g/lの比率で添加したもの(20℃での
比重1.31) 対極:水素吸蔵合金負極(あらかじめ別の水酸化ニッケ
ル電極と組み合わせて充放電させ、十分に活性化したも
の) 参照極:Hg/HgO 掃引条件:浸漬電位から+500mVまで掃引した後、
+700mV(酸化側)〜−700mV(還元側)の間
で実施。掃引速度1mV/秒 周囲温度:20℃ 結果を図6に示す。a,bと符号を記したように、大き
な充放電ピークが観察される。このことは同酸化物が高
い導電性を持つことを示す。なお、+600mV付近よ
りも貴な電位領域における鋭い酸化電流は、試験電極上
での酸素発生に伴うものである。前記したダイアグラム
から考えて、図6中の還元電流ピークaはγ−オキシ水
酸化コバルトからα−水酸化コバルトへの還元(放電)
に、酸化電流ピークbはその逆の酸化(充電)に対応す
る。このγ/αシステムにおける充放電の電位は、従来
のβ/βのシステムに比べて50〜100mV程度、卑
な方向へ移行する。これはγ−オキシ水酸化ニッケルに
ついてよく知られているのと同じ現象と考えられる。
析 本発明の高次コバルト酸化物yのX線回折図を図7に示
す。印をつけたように回折角2θが10°より70°ま
での区間で、少なくとも9本のピークが確認できる。そ
こで、これらのピーク位置に対応する化合物の定性分析
をJCPDS無機物質ファイルにより行うと、Na0.6
CoO2(ファイル番号30−1181)の回折パター
ンにかなりよく一致した。このNa0.6CoO2は、C.
FouassierらがJ.Solid State
Chem.,6(1973)532−537.において
示した化合物で、層状構造を有する疑似六方晶(厳密に
は斜方晶)に属するもので、彼らがコバルト−酸素層の
配列まで考慮して提示したNa0.6CoO2の結晶構造:
コバルト−酸素−酸素−コバルトの配列がACCBAA
CBBは、図3に示したものと同じである。したがって
高次コバルト酸化物yも、基本構造としては図3の構造
を有する。
により、高次コバルト酸化物yの平均価数と、含有され
るアルカリ金属イオン(この場合はNa+)の量を測定
した。この結果、同酸化物のコバルト平均価数は3.3
9価で、コバルト原子のモル量を100とした場合のア
ルカリ金属イオンの含有量は約31に相当することがわ
かった。これらの値より判断すると、高次コバルト酸化
物yは前記のNa0.6CoO2ではない。これは、前記の
Na0.6CoO2が四酸化三コバルト(Co3O 4)と過酸
化ナトリウム(Na2O2)との焼成によって得たもので
あるのに対し、高次コバルト酸化物yがβ−水酸化コバ
ルトを出発材料とする全く別の方法で得たものである点
からも理解できる。そして、高次コバルト酸化物yの平
均価数やアルカリ金属イオン含有量は、4.1.1.で
示した高次コバルト酸化物xについての値にかなり近
い。
挙動を把握するため、4.1.5.に示したのと同じ条
件でサイクリックボルタンメトリー(CV)による解析
を行った。この結果は、図8に示す通りであり、これは
図6に示した高次コバルト酸化物xとほとんど同じ充放
電挙動である。このような実験結果は、高次コバルト酸
化物yが高次コバルト酸化物xと同様に高導電性を有す
ることを表している。また同時に、高次コバルト酸化物
yとアルカリ電解液との間でプロトンの授受が可逆的に
起こることを表しており、高次コバルト酸化物y中にプ
ロトンが存在することを示している。この観点からすれ
ば、高次コバルト酸化物yは「オキシ水酸化コバルト」
の一種である。
が、高次コバルト酸化物xと比較してc軸方向の層間距
離が少し異なる点を除けば、ほぼ同じ結晶構造・物性・
電気化学挙動を有することを強く裏付けている。つま
り、高次コバルト酸化物yもまた「γ−オキシ水酸化コ
バルト」と称するにふさわしい。そこで本発明者らは、
高次酸化物yもγ−オキシ水酸化コバルトの一種である
と捉え、これを「Na型γ−オキシ水酸化コバルト」と
定義した。このNa型γ−オキシ水酸化コバルトについ
て、図3と同じ層状構造を仮定し、X線回折図として図
7に示した9本のピークのうち、比較的強度が大きくほ
ぼ正確に回折角が読みとられた6つの面について、(表
2)同様に面間隔とその指数づけ(六方晶とした場合の
もの)をまとめると(表3)の通りとなる。
いて考察する。すでに4.1.4.において、γ−オキ
シ水酸化コバルトは疑似的にはほぼ六方晶系に属し、層
状構造を有するコバルト酸化物で、c軸方向に格子が伸
長していることや、この場合のc軸方向から見たコバル
ト−酸素−酸素−コバルトのパッキングが、ACCBA
ACBBの繰り返しであること等を、図3により説明し
た。そこで、Na型γ−オキシ水酸化コバルトについ
て、三角プリズム状に配置した6つの酸素イオン(ある
いは水酸化物イオン)間に生ずる空隙の半径を、(表
3)に示した面間隔や4.1.4.中で用いた有効イオ
ン半径に基づき幾何学計算で見積もると、約1.15Å
となる。この値は、ナトリウムの有効イオン半径rNa
=1.16Å(6配位)とほぼ一致しており、空隙内は
ナトリウムイオンにより占有される。
構造として模式を示したが、すでに4.1.4.で述べ
たように、この構造はa軸長やc軸角度の微妙な変化に
よって、斜方晶や単斜晶の構造に変化しうる。この詳細
な判明はできていないが、おそらく図1と図7のX線回
折ピークの強度比の違い(つまり、(表2)と(表3)
のI/I0obsの違い)は上記の点を反映しているもの
と推測される。さらに、4.1.4.で示した計算結果
や上記計算結果より明らかなように、γ−オキシ水酸化
コバルトの(003)面の面間隔は、基本的には、空隙
内を占めるアルカリカチオンの大きさによって強く支配
されていると考えられる。
極特性との関係 上記したように、本発明の高次コバルト酸化物xおよび
yはいずれもγ−オキシ水酸化コバルトであり、これま
でに述べた考察に基づいて、β−オキシ水酸化コバルト
と明確な区別を与える意味でまとめれば、疑似的(幾何
構造的)にはほぼ六方晶系で、より厳密には六方晶、斜
方晶、単斜晶のいずれかの結晶系に属しており、図3に
示すような層状構造を有するコバルト酸化物であって、
少なくともβ−Co(OH)2のc軸長よりも格子がc
軸方向に伸長しており(具体的には5.5〜7.0
Å)、且つコバルトの価数が3.0よりも高次に達した
ものである。そして、詳しくは判明できないが、この酸
化物はコバルトの価数が3.0よりも高次に達すること
等が主原因となって、結晶子のコバルト層に電子伝導性
が発現するため、β−オキシ水酸化コバルトよりも高い
導電性を持つものと考えられる。このため、γ−オキシ
水酸化コバルトを導電剤としたアルカリ蓄電池用非焼結
式正極では、水酸化ニッケル粒子の利用率が向上する。
学挙動は図6あるいは図8で示され、この場合のγ/α
システムの充放電の電位は、従来のβ/βの充放電シス
テムに比べて50〜100mV程度、卑な方向へシフト
する。そして、このようなγ−オキシ水酸化コバルトの
電気化学挙動は、3.で示した短絡保存後の容量回復率
と密接に関係する。すなわち、γ−オキシ水酸化コバル
トは導電性が高いため、短絡保存時においても多くの水
酸化ニッケルから集電を保つ。また、γ−オキシ水酸化
コバルトはそれ自身が3.0価を超える状態まで酸化さ
れていると同時に、前記のようにアルカリ電解液中での
還元電位がβ−オキシ水酸化コバルトに比べて卑である
ため、2.0価の状態(電解液中に溶解する状態)まで
は容易に還元されない。このため、従来正極において、
短絡保存時に基板骨格近傍部で集中的に還元が進むこと
により引き起こされた導電ネットワークの破壊を抑制で
きる。こうして、γ−オキシ水酸化コバルトを導電剤と
したアルカリ蓄電池用非焼結式正極では、従来の正極に
比べて格段に高い短絡保存後の容量回復率を与える。
池用非焼結式正極の特性と、4.で明らかにしたγ−オ
キシ水酸化コバルトの諸物性とは、明確に関連づけるこ
とができる。なお、上記で示した高次コバルト酸化物
x,yはX線回折より、ほぼ単相に近い状態で観測され
たが、X線回折結果を図9に示すように、KOH酸化の
γ−オキシ水酸化コバルト中にβ−オキシ水酸化コバル
トが一部混相として存在するもの(これらは、酸化処理
時に形成されるアルカリファニキュラの微妙な水分量の
違いが原因で生ずる)を導電剤に用いてもほぼ同じ正極
特性が得られることを、別の実験で確認した。さらに、
X線回折図は示さないが、KOH酸化のγ−オキシ水酸
化コバルト中にCo3O4が僅かに混相として存在するも
の、NaOH酸化のγ−オキシ水酸化コバルト(Na型
γ−オキシ水酸化コバルト)中にβ−オキシ水酸化コバ
ルトが一部混相として存在するもの、およびNaOH酸
化のγ−オキシ水酸化コバルト中にCo3O4が僅かに混
相として存在するもの、の3つに関しても、同様の実験
結果を得た。つまり、γ−オキシ水酸化コバルトが主成
分であれば、このような一部の不純物は正極特性に大き
な影響を及ぼさない。
文献の中には、その理想構造式をK(NiO2)3とする
ものや、これとはやや異なりNi0.75K0.25OOHとす
るもの等が幾つかある。γ−オキシ水酸化コバルトにつ
いても同様の理想構造式:M(CoO2)3ないしはCo
0.75M0.25OOH (MはKかNaのいずれか)を考え
れば、M/Coのモル比率は上限で33%と予想され、
これは4.1.1.や4.2.1.中で得られた実測値
からもさほど離れていない。しかし、完全な理想構造の
酸化物が得られることはめったに無い。上記した一部の
不純物を含むγ−オキシ水酸化コバルトのM/Co値
は、いずれも約20%(実測値)であった。従って、同
比率が20〜33%程度の範囲にあれば、正極特性とし
ては変わらないと言える。
酸化コバルト標準試料とアルカリ粒状試薬の粉砕粉とを
混合し、空気を送りながら加熱する方法としたが、これ
は、微粒子の水酸化コバルト(粒径が0.2μm、BE
T比表面積が25m2/gで、液に対する濡れ性が非常
に大きい)を単独で酸化するにあたっては、この方法
が、酸化に適したアルカリファニキュラを作るという点
で最も容易だからである。したがって、次の実施例2で
示す、Co(OH)2被覆Ni粒子(粒径や比表面積が
異なり、液に対する濡れ性が全く異なる)の酸化処理方
法や細かな処理条件は、上記とは異なるものになる。
作製した。まず、母粒子となる水酸化ニッケル固溶体粒
子は、周知の以下の手法を用いて合成した。すなわち、
硫酸ニッケルを主成分とし、硫酸コバルト及び硫酸亜鉛
を所定量だけ含有させた水溶液に、アンモニア水で溶液
pHを調整しながら水酸化ナトリウムを徐々に滴下し、
球状の水酸化ニッケル固溶体粒子を析出させる方法を用
いた。この方法で析出した水酸化ニッケル固溶体粒子を
水洗、乾燥して母粒子とした。
を硫酸コバルト水溶液中に投入し、水酸化ナトリウム水
溶液を徐々に加え、35℃でpHが12を維持するよう
に調整しながら攪拌を続けて固溶体粒子表面に水酸化コ
バルトを析出させてCo(OH)2被覆Ni粒子とし
た。ここで水酸化コバルトの被覆量については、Co
(OH)2被覆Ni粒子の総重量に対する被覆層重量の
比率が5.0重量%となるように調整した。作製したC
o(OH)2被覆粒子は水洗した後、真空乾燥を行っ
た。
子は、平均粒径が約10μmであることをレーザー回折
式粒度分布計の測定で確認した。さらに被覆層の水酸化
コバルトが厚み約0.1μmで粒子全面を被覆している
ことを、走査電子顕微鏡(SEM)および透過電子顕微
鏡(TEM)の観察より確認した。また、同粒子のBE
T比表面積は約7m2/gであった。
酸化処理 7.1.反応装置の説明 次に、上記のCo(OH)2被覆Ni粒子に対して酸化
処理を施した。まず、処理に際して用いた装置を詳しく
説明する。 (酸化処理装置)図10に本発明で用いた酸化処理装置
の概観断面図を示す。1はステンレス鋼製の容器、2は
ステンレス鋼製の蓋で、いずれも壁面にジャケットが取
り付けられていて、熱水あるいはスチーム等をジャケッ
ト内に通すことで内壁面を加熱保温することができる。
3はアジテータ羽根、4はチョッパー羽根で容器1内に
投入した粒子を混合攪拌する。これらの羽根軸部には
5,6で点線に示したように空気の流入口が取り付けら
れており、容器1内に圧縮空気を送り込むことができ
る。7は排風口で、8のバグフィルターを通った空気を
排風バルブ9を開くことで容器外に排出できる。ここで
図には示していないが、8のバグフィルターには結露を
防ぐための加熱機能と、目詰まりを防ぐための粒子払い
落とし機能(パルスエア方式)とが備えられている。1
0は温湿度計で、主に排気された空気の湿度を測定する
ことにより、容器内での粒子の湿潤状態をモニターす
る。11はアルカリ水溶液を容器内に滴下する滴下口
で、液タンク12に入れた所定量のアルカリ水溶液を滴
下バルブ13を開いて容器内に投入する。14はマイク
ロ波発生装置で、15はマイクロ波を容器内に導く導波
管である。マイクロ波は図中の点線矢印で示すような形
で照射され、容器内の粒子を加熱する。またマイクロ波
発生装置14は、容器壁面に取り付けた接触式温度計1
6(粒子の温度を測定)の指示値が設定した温度を保つ
ように、自動制御によってその出力が調整される。な
お、図には示していないが、排風口をはじめとする各部
位は装置内からのマイクロ波の漏れ出しを防止するため
に金属メッシュでシールドされ、保護されている。17
は処理後の粒子を取り出す排出シュートである。
用として用いた酸化処理装置(回分式流動造粒装置)の
概観断面図を示す。18は円筒状の装置筺体であり、そ
の下の円錐状部19の壁面にはジャケットが備え付けら
れており、ジャケット内に熱水あるいはスチーム等を通
すことにより内部を加熱保温することができる。20は
装置筺体内に加熱空気を送り込むための送風機で、21
は空気を加熱するためのヒータ、22は送風機と筺体を
接続する配管である。23は粒子を攪拌するための攪拌
羽根であり、24は粒子を流動させる際の気流の整流板
である。25はアルカリ水溶液を噴霧するための噴霧ノ
ズルで、26はアルカリ水溶液を噴霧する際の圧縮空気
を移送する配管、27はアルカリ水溶液を移送する配
管、28はアルカリ水溶液を貯蔵するタンクと、圧縮空
気を作るコンプレッサーである。29は粒子が流動した
際に微粒子が筺体外部へ排出されないようにするバグフ
ィルターで、図には示していないが、目詰まりを防ぐた
めの粒子払い落とし機能(パルスエア方式)が備え付け
られている。30は配管で、31の排風機に接続されて
いる。また、32は接触式の温度計で、流動している粒
子の温度をモニターすることができる。
の「マイクロウェーブドライヤーFMD型」(商品名)
を用いた。ここでの操作については、図10を用いて詳
しく説明する。
備えられたジャケットに110℃のスチームを通すこと
で容器内を保温し、ここにCo(OH)2被覆Ni粒子
6.0kgを投入した。次に蓋2を閉めて、排風バルブ
9は開いたままの状態で、アジテータ羽根3およびチョ
ッパー羽根4を回転させて粒子を混合攪拌し、滴下口1
1よりアルカリ水溶液を容器内に投入した。ここでアル
カリ水溶液は濃度45重量%の水酸化カリウム水溶液
(室温)を使用し、その滴下量は700gとした。その
後滴下バルブ13を閉じ、3分程度の混合を続けて第1
工程を終了した。
キュラ状態の湿潤粒子となる。次に空気の供給を絶ち、
排風バルブ9を絞って容器内がほぼ気密化された状態に
なるようにし、導波管15よりマイクロ波(周波数24
50MHz)を照射しながら混合を続け、湿潤粒子を加
熱した。湿潤粒子は第1工程の終了時点ですでに容器壁
面からの熱で加熱されて70℃程度となっていたが、続
く約3分のマイクロ波照射によって設定温度(この場合
は110℃)にまで達した。以上のような粒子温度の変
化は、容器内壁に取り付けた接触式温度計16によって
モニターした。これで第2工程が終了する。
ジテータ羽根の軸部5およびチョッパー羽根の軸部6よ
り容器内に空気(温度50℃、湿度は0.01kgH2O
/kgdry-air)を送り込んだ。この間も湿潤粒子の混
合は続け、またマイクロ波については接触式温度計16
の指示値が110℃で一定となるように制御しながら照
射を行った。この状態で約20分間処理を行ったとこ
ろ、粒子はほぼ完全乾燥され、反応も完結した。なお粒
子の乾燥状態の判定については、排風口に取り付けた温
湿度計10をモニターすることによって行った。以上で
第3工程を終了する。
一に被覆層が酸化された藍色の金属光沢を帯びた活物質
であった。この粒子を製品排出シュート17より取り出
し、過剰のアルカリ成分を除去するための水洗、および
乾燥を行って正極活物質とした。水洗・乾燥に伴う粒子
の色の変化はほとんど観察されなかった。これを、活物
質粒子Aとする。
酸化ナトリウム水溶液を用いること以外はすべて上記と
同じとして、活物質粒子Bを作製した。この粒子もやは
り藍色の金属光沢を呈した。 (比較用の活物質)一方、前記のCo(OH)2被覆N
i粒子に対して、比較用の装置を用いた酸化処理を施し
た。ここでは装置として、不二パウダル(株)製の「ニ
ューマルメライザーNQ型」(商品名)を用いた。図1
1により、この装置を用いた酸化処理の動作を詳しく説
明する。
トに80℃の熱水を通して筺体内を保温し、ここに実施
例1で用いたのと同じCo(OH)2被覆Ni粒子を9
50g投入した。続いて攪拌羽根23を回転させ、ヒー
タ21、送風機20、および排風機31を作動させて筺
体内に上昇熱気流を発生させた。この際、整流板24を
通った熱風は、投入したCo(OH)2被覆Ni粒子を
加熱しながら流動化させることとなる。このように粒子
が流動した状態で、噴霧ノズル25を用いてアルカリ水
溶液を噴霧した。ここでアルカリ水溶液としては、25
重量%の水酸化カリウム水溶液を使用し、噴霧量は10
分間で200gとした。噴霧し終わるまでの間にアルカ
リ水溶液は粒子の表面に浸透し、熱風との作用によって
被覆層の水酸化コバルトは高次の酸化物になる。噴霧終
了後、さらに15分程度熱風中で粒子を流動させ、処理
を完結した。これら一連の操作の間、処理温度が設定値
(この場合80℃)となるよう、接触式温度計32で粒
子温度をモニターし、熱風条件等を操作した。この後、
装置を停止させ粒子を筺体から取り出し、過剰のアルカ
リを除去するための水洗と乾燥を行って正極活物質とし
た。これを活物質粒子Cとする。なお、この粒子は黒色
を呈した。
酸化ナトリウム水溶液を用いること以外はすべて上記と
同じとして、正極活物質Dを作製した。同活物質は暗茶
色を呈した。 8.電池の作製と評価 上記手法によって得られたA〜Dの正極活物質の諸特性
を確認するため、以下に記す手順で電池の作製と評価を
行った。まず、試料A〜Dのそれぞれに適量の純水を加
えて活物質ペーストを調整し、この活物質ペーストを多
孔度95%、厚み1.3mmの発泡ニッケル多孔体基板
に所定量だけ充填した。続いてこれを80℃の乾燥機内
で乾燥させた後、ロールプレスを用いて厚み約0.7m
mに圧延し、さらにこれを所定の大きさに切断加工し
て、4種の活物質A〜Dに対応するニッケル正極を作製
した。
吸蔵合金負極、親水化処理を施したポリプロピレン不織
布セパレータ、7〜8Nの水酸化カリウムを主成分とし
たアルカリ電解液を用い、公知の方法により、4/5A
サイズで公称容量1600mAhのニッケル−水素蓄電
池を作製した。それぞれの電池について、実施例1中の
で示した方法により各正極の利用率を測定した。さら
に、以下のに示す方法により各正極の短絡保存後の容
量回復率を評価した。
mAで1.2時間充電し、放電レート1CmAで電池電
圧が1.0Vになるまで放電させるサイクルを5サイク
ル繰り返し、5サイクル目の容量を測定した。続いてこ
の電池を1Ωの電気抵抗で短絡させ、45℃の雰囲気下
で保存した。ここで保存する期間については、3日(短
期),2週間(中期),1ヶ月(長期)の3水準とし、
それぞれ異なる電池を用いて実施した。保存後の電池に
ついて、再び充電レート1CmAで1.2時間充電し、
放電レート1CmAで電池電圧が1.0Vになるまで放
電させるサイクルを5サイクル繰り返し、5サイクル目
の容量を測定した。以上の測定結果から、短絡保存後の
電池容量の値を短絡保存前の電池容量で割り算すること
により、各正極活物質の3つの保存期間における短絡保
存後の容量回復率を算出した。
を(表4)に示す。
理で得られた正極活物質A,Bは、比較活物質C,Dよ
りも利用率が高く、その値は100%よりも大きくな
る。つまり、水酸化ニッケルの充放電反応が1電子反応
よりも大きくなる。また短絡保存後の容量回復率につい
てもA,BはC,Dよりも優れており、特に長期保存の
場合でその差が顕著である。これは、活物質粒子A,B
を用いた正極の導電ネットワークの集電性能がC,Dよ
りも一層向上したためと考えられ、同時にA〜Dの活物
質粒子間で被覆層を形成しているコバルト酸化物の物性
等にかなりの差があることを示唆した。そこで、この原
因を明らかとするため、上記4種の活物質粒子およびこ
れらに関連すると考えられるコバルト酸化物について、
以下に記す粉末解析を行った。
の違いを明確にするため、分光測色計(ミノルタ製CM
−3500d)を用いて拡散反射法に基づく測色を実施
した。ここで測定に際して、各活物質粒子は粉体試料測
定用シャーレ(ミノルタ製CM−A128)に十分な量
を入れて、押し固めることなく粉状のままで測定した。
(なお、押し固めてもスペクトルはほとんど変わらな
い。) 諸条件の設定は以下の通りとした。
°方向受光),SCE(正反射光除去) 光源:D65 視野:10° 測定径:直径約30mm(ミノルタ製シャーレ用ターゲ
ットマスクCM−A127を使用) シャーレによる反射光は、校正ガラス(ミノルタ製CM
−A129)を用いて除外した。
す。肉眼で藍色金属光沢を持つと識別された本発明の活
物質粒子AおよびBは、全域にわたって反射率が高く
(つまり全域にわたって明るく)、波長450nm付近
に反射率の極大を示す。(このために藍色に見える。)
肉眼で黒色と識別された比較活物質Cは全域にわたる反
射率が低く、また肉眼で暗茶色と識別された比較活物質
Dは波長の大きい赤色領域の反射が強い。このように同
手法を用いると、肉眼で感ずる微妙な粒子の色の違いに
ついても明確に定量化することができる。
しては、次の2つの可能性が考えられる。 (1)活物質粒子の粒径や比表面積、さらにはコバルト
酸化物層の被覆状態等、粒子形状の違いを反映してい
る。 (2)粒子被覆層を形成するコバルト酸化物の電子状態
の違いを反映している。
るため、4種の活物質粒子A〜Dについて、粒径および
粒度分布の測定(レーザー回折式粒度分布計を使用)、
比表面積の測定(BET法)、走査電子顕微鏡(SE
M)による粒子表面の観察、透過電子顕微鏡(TEM)
による粒子断面の観察、電子線プローブマイクロアナラ
イザ(EPMA)による粒子表面・断面のCo分布状態
の観察を行った。この結果、A〜Dで活物質粒子の粒径
や比表面積、コバルト酸化物層の被覆状態等にほとんど
差は観測されず、各活物質粒子はいずれも平均粒径が1
0μmで同一の粒度分布をもち、その表層は厚み約0.
1μmのコバルト酸化物によって全面が完全に被覆され
ていることを確認した。従って、活物質粒子の色の違い
は前記(1)の理由によるものではなく、(2)の理由
に基づくと判断した。
(2)、すなわち粒子被覆層を形成するコバルト酸化物
の電子状態の違いを反映するのであれば、活物質粒子の
電気伝導度の値に相違が見られるはずである。次にこの
点を確認するため、A〜Dそれぞれの活物質粒子をペレ
ットに成形し、直流4端子法を用いて電気伝導度を測定
した。この結果、電気伝導度の値はAとBがほぼ等し
く、A・B>C>Dの順となり、藍色を呈した活物質粒
子A,Bはいずれも、黒色のCに比べて約5倍、暗茶色
のDに比べて10倍以上の値を示した。従って、前記し
た粒子の色の違いは被覆層を形成するコバルト酸化物の
電子状態の違いを反映しており、図12で示したような
藍色を呈する活物質粒子(より具体的に言えば、可視全
域での分光反射率が3.5%よりも大で、且つ波長45
0nm近傍に分光反射率4.0%以上の極大値を持った
活物質粒子)は、コバルト酸化物の電子伝導性が極めて
高い。このため、正極の利用率を大きく向上させる。な
お、活物質A,Bを用いて作製した電池では、数サイク
ルの充放電を行った後に電池を分解して正極から分離し
た活物質粒子(水洗・乾燥したもの)も藍色を呈し、や
はり前記した測色結果が得られることを確認した。つま
り、電池内で水酸化ニッケルの充放電反応をさせた際
も、被覆層を形成するコバルト酸化物の電子状態にはさ
ほど変化がなく、高い電子伝導性を保持する。
るコバルト酸化物の構造を明らかとするため、X線回折
の測定を行った。しかしながら、先述のように同被覆層
は粒子の表面を約0.1μmという極めて薄い厚みによ
って被覆したものであるため、回折図は実質上、母粒子
である水酸化ニッケルだけを反映したものとなって、被
覆層を形成するコバルト酸化物に関連する回折ピークは
満足に観測できなかった。そこで、先の実施例1中で準
備した水酸化コバルト標準試料を、水酸化カリウムある
いは水酸化ナトリウムと水と空気(酸素)の共存雰囲気
に置いて各種条件で酸化させ、X線回折測定と分光測色
計による色の測定を実施した。
に基づく考察 KOH酸化のγ−オキシ水酸化コバルト:作製方法は
実施例1中に記した通りで、X線回折図は図1である。
藍色の金属光沢を呈し、分光測色計による反射スペクト
ルは図13である。実施例1のときと同様、以下ではこ
れをコバルト酸化物xと表記する。
ト:作製方法は実施例1中に記した通りで、X線回折図
は図7である。藍色の金属光沢を呈し、分光測色計によ
る反射スペクトルは図14である。実施例1のときと同
様、以下ではこれをコバルト酸化物yと表記する。 CoO(OH) (3−1)結晶性の高いもの(すなわちCoHO2):
水酸化コバルトを3重量%の水酸化ナトリウム水溶液に
含浸した後、80℃で15時間加熱処理して得られた酸
化物。以下ではこれをコバルト酸化物zと表記する。処
理後に水洗・乾燥してから測定したX線回折図を図15
の上段に示す。肉眼で観察される酸化物zの色は茶色で
あり、その分光測色計による反射スペクトルを図16中
に示す。実施例1中に記した滴定法による測定では、そ
のコバルト価数は2.98と確認された。
−CoOOH):水酸化コバルトを25重量%の水酸化
ナトリウム水溶液に含浸した後、80℃で6時間加熱処
理して得られた酸化物。以下ではこれをコバルト酸化物
uと表記する。処理後に水洗・乾燥してから測定したX
線回折図を図15の下段に示す。本来20°(4.4
Å)近傍にあるべき(003)面回折ピークのみが若干
シフトして19°(4.6Å)近傍に観察されている
が、基本的な回折パターンは酸化物zと同じである。こ
のシフトの原因は、現時点では詳しく判明できない。肉
眼で観察される酸化物uの色は黒色であり、その分光測
色計による反射スペクトルを図16中に示す。実施例1
中に記した滴定法による測定では、そのコバルト価数は
2.91と確認された。
の水酸化ナトリウム水溶液に含浸した後、100℃で6
時間加熱処理して得られた酸化物。以下ではこれをコバ
ルト酸化物vと表記する。処理後に水洗・乾燥してから
測定した試料のX線回折図は図17である。Co3O4と
して一般に市販されている試薬のものに比べると、かな
り結晶性が低い。肉眼で観察される酸化物vの色は黒色
であり、その分光測色計による反射スペクトルは図18
である。実施例1中に記した滴定法による測定では、そ
のコバルト価数は2.62と確認された。また、水酸化
ナトリウムの代わりに水酸化カリウムを用いた場合に
も、ほぼ同じものが得られることを確認した。
ットに成形し、直流4端子法を用いて電気伝導度を測定
したところ、その値はxとyがほぼ等しく、x・y>u
>v>zの順であった。つまり、γ−オキシ水酸化コバ
ルト(酸化物xおよびy)は他に比べて高い電子伝導性
を有する。これは、コバルトの価数が3.0よりも高次
に達すること等が主原因となってコバルト酸化物に電子
伝導性が発現したためと考えられる。
れた分光測色計による反射スペクトル:図13、図14
(藍色の金属光沢という色)について考察する。これら
のスペクトルは基本的には粉末の拡散反射に基づくもの
であるため、その原理としては、図19に模式を示すよ
うに、結晶表面で反射された光aと結晶内を透過した光
bとが合わさって測定される。そして、吸光度の大きい
吸収帯を可視域に有する遷移金属化合物においては、拡
散反射法によると、その吸収帯の光が非常に強く選択反
射されて(つまり反射光aが、化合物の吸収スペクトル
に近いものとなって)、この光が観察されることが知ら
れている。(典型的な例として、電荷移動遷移による強
い吸収帯を緑色領域(530nm )にもつ過マンガン
酸カリウム:KMnO4は、水溶液であれば透過光が見
えて赤紫色(緑の補色)に見えるが、細かい結晶では、
吸収帯である緑色領域の光が強く選択反射され、光沢を
帯びた緑色に見える。そして、この緑色領域に拡散反射
スペクトルの反射率極大が生ずる。) ここで、J.Electrochem.Soc.,13
6(1989)613−619.においてD.A.Co
rriganらは、γ−オキシ水酸化ニッケルが波長4
50nm(藍色)の領域に強い吸収帯を持ち、これが金
属−酸素間の電荷移動遷移に帰属されるものであって、
さらにγ−オキシ水酸化ニッケル中の4価のニッケル種
の存在に関連するとの見解を示している。従って、仮に
γ−オキシ水酸化ニッケル対して拡散反射法によるスペ
クトル測定を行ったならば、上記した原理によって波長
450nmの領域に反射率の極大が現れることとなり、
これが4価ニッケル種の存在を示す証拠となりうる。
判明はできないものの、本発明者らはγ−オキシ水酸化
コバルトにおいてもγ−オキシ水酸化ニッケルと同様、
450nm近傍に金属−酸素間の電荷移動遷移に基づく
吸収帯が存在するものと解釈した。この吸収帯は吸光度
が大きいため、拡散反射法によると、対応する450n
m近傍の光が非常に強く選択反射されることとなって、
同酸化物に藍色の金属光沢という色をもたらす。そし
て、これが図13、図14で印をつけた反射率極大とし
て定量的に表される。さらに、前記のD.A.Corr
iganらの解釈に習えば、この結果はγ−オキシ水酸
化コバルト中に存在する4価のコバルト種の存在を反映
していると言うこともできる。
ル(図12中のA,B)と、γ−オキシ水酸化コバルト
の反射スペクトル(図13および図14)の反射率の極
大位置の類似性や、これらがいずれも極めて高い電子伝
導性を有するという実測結果を合わせると、本発明の活
物質粒子A,Bの被覆層を形成するコバルト酸化物は、
γ−オキシ水酸化コバルトを主成分としたものと考えら
れる。また同様の考察から、前述した比較用の活物質粒
子C,Dの被覆層を形成するコバルト酸化物は、上記で
示したz,u,vに相当するような3.0価以下の酸化
物と推測される。
バルト酸化物の酸化状態に差が生じたのは、酸化処理装
置に際しての製造方法の違いによると考えられる。前述
したように、Co(OH)2被覆Ni粒子の被覆層の酸
化反応には2つの反応プロセスが推測され、いずれのプ
ロセスにおいても、系内の水と酸素(空気)の状態によ
って酸化の進行度合いが大きく変化する。そして、この
酸化の進行度合いを大きくするには、アルカリ水溶液を
表面に持つことでファニキュラとなった粒子を、比較的
高温多湿な環境下から、ある程度の時間をかけて完全乾
燥に導くことが重要である。
用いた方法)においては、粒子を流動化させるために随
時大量の熱風を送り込む必要があり、また流動化してい
るが故にアルカリ湿潤粒子が空気に触れる面積が大きく
なって、粒子表面からのアルカリ水溶液の乾燥が非常に
早い。つまり、前記したプロセス1やプロセス2の反応
が十分に進行する以前に、粒子表面のアルカリ水溶液が
枯渇する傾向が強い。従って、処理に伴う粒子塊の発生
や装置内壁への粒子の付着等は抑制し易いが、水酸化コ
バルト被覆層を完全に高次な状態まで酸化するのは困難
となる。以上の観点からすると、本発明の製造方法は加
熱手法としてマイクロ波を使用するためアルカリ水溶液
が迅速に高温まで達し、必然的にプロセス1および2の
進行に好適な、高温多湿で酸素量も十分に確保された環
境を作り出すことができる。このような環境を上記した
形で制御することによって、水酸化コバルト被覆層は完
全に酸化を受け、3.0価よりも高次なγ−オキシ水酸
化コバルトにまで達する。
よれば、 Co(OH)2被覆Ni粒子の被覆層を効率
的にγ−オキシ水酸化コバルトに変換することができ
る。 9.3 活物質粒子の解析(その2) 続いて、本発明の活物質粒子AおよびBを酸に溶解さ
せ、ICP発光分析を利用して活物質内に含有されるア
ルカリ金属(カリウムあるいはナトリウム)の量を測定
した。また、電子線プローブマイクロアナライザ(EP
MA)で活物質粒子の断面観察を行い、活物質粒子A,
Bでは、アルカリ金属は被覆層部のみに存在していて、
内部の母粒子に存在しないことを確認した。以上より、
前記のICP発光分析の測定値は、被覆層を形成してい
るコバルト酸化物内に含有されるアルカリ金属の量をそ
のまま反映している。この点に基づき、活物質粒子A,
Bの被覆層を形成するコバルト酸化物に含有されるアル
カリ金属量を見積もると、いずれもコバルト原子のモル
量を100とした場合、約27であった。これら解析結
果は、活物質粒子A,Bの被覆層を形成するコバルト酸
化物がγ−オキシ水酸化コバルトを主成分としたもので
あるという、前記の推測に矛盾しない。
を把握するため、リード線を溶接した1cm×1cmの
発泡ニッケル多孔体基板に活物質粒子A,Cをそれぞれ
充填・プレスして試験電極とし、以下の条件でサイクリ
ックボルタンメトリー(CV)の測定を行った。 電解液:濃度31重量%のKOH水溶液に、LiOH・
H2Oを40g/lの比率で添加したもの(20℃での
比重1.31) 対極:水素吸蔵合金負極(あらかじめ別の水酸化ニッケ
ル電極と組み合わせて充放電させ、十分に活性化したも
の) 参照極:Hg/HgO 掃引条件:浸漬電位から+600mVまで掃引した後、
+600mV(酸化側)〜−800mV(還元側)の間
で実施。掃引速度3mV/秒 周囲温度:20℃ 2つの活物質粒子に関する結果を合わせて、図20に示
す。ここで、+400mVよりも貴な電位での鋭い酸化
電流ピークは母粒子である水酸化ニッケルの充電(酸素
発生も併発している)に、+300mV付近での還元電
流ピークは水酸化ニッケルの放電に対応する。ゆえに、
a,bと符号を記したピークが被覆層のコバルト酸化物
の充放電ピークに対応するが、図より明らかなように、
本発明の活物質粒子Aにおけるコバルト酸化物では比較
活物質粒子Cのものに比べて50〜100mV程度、酸
化還元電位が卑な方向にシフトする。活物質粒子Bにつ
いても同じ実験を行ったところ、活物質粒子Aと同じ結
果を示すことを確認した。これらの挙動は、実施例1中
で示した図6や図8の挙動とまったく同じであり、この
点からも活物質粒子A,Bの被覆層を形成するコバルト
酸化物が、γ−オキシ水酸化コバルトを主成分としたも
のであることが強く裏付けられている。
との関係 上記したように、本発明の活物質粒子A,Bの被覆層を
形成するコバルト酸化物は、γ−オキシ水酸化コバルト
を主成分としたものである。γ−オキシ水酸化コバルト
はコバルトの価数が3.0よりも高次に達すること等が
主原因となって電子伝導性が発現するため、β−オキシ
水酸化コバルト等の酸化物よりも高い導電性を持つ。こ
のため、本発明の活物質粒子A,Bを用いたアルカリ蓄
電池用非焼結式正極は、比較活物質粒子C,Dを用いた
ものよりも利用率が高い。なお、この活物質粒子A,B
を用いた正極の利用率が、実施例1中のx、yを用いた
正極の利用率よりも高くなるのは、活物質粒子A,Bの
出発材料がCo(OH)2被覆Ni粒子であるため、以
下の(1),(2)の効果が現れたためと考えられる。
性が高いため、正極中の基板骨格から離れた位置にある
多くの水酸化ニッケル固溶体粒子からの集電を保つこと
ができた。 (2)酸化処理時に母粒子の水酸化ニッケル固溶体粒子
と被覆層との界面が接合され、個々の固溶体粒子からの
集電がされやすくなった。
るγ−オキシ水酸化コバルトは導電性が高いため、短絡
保存時においても多くの水酸化ニッケルから集電を保
つ。さらに、γ−オキシ水酸化コバルトはそれ自身が
3.0価を超える状態まで酸化されていると同時に、充
放電の電位が従来のコバルト酸化物に比べて50〜10
0mV程度、卑な方向へシフトしているため、2.0価
の状態(電解液中に溶解する状態)までは容易に還元さ
れない。このため、従来の正極において、短絡保存時に
基板骨格近傍部で集中的に還元が進むことにより引き起
こされた導電ネットワークの破壊を抑制できる。こうし
て、活物質粒子A,Bを用いたアルカリ蓄電池用非焼結
式正極では、従来正極に比べて格段に高い短絡保存後の
容量回復率を与える。
池用非焼結式正極の特性と、9.で明らかにした活物質
粒子A,Bの諸物性とは、明確に関連づけることができ
る。なお、活物質粒子の有する細孔分布に関して、特開
平8−148145号公報等に幾つかの記載がある。本
発明の活物質粒子との関係を明確にする意味で、上記実
施例中で用いた活物質粒子A〜DのBET法にて行った
細孔分布測定結果を(表5)に示す。
細孔の空間総和体積の20%以上が直径60Å以上の細
孔により占められることが、利用率向上のために重要で
あるとの記載がある。(表5)より明らかなように、基
本的には、本発明の活物質粒子A,Bは上記記載には該
当していない。しかしながら、作為的に細孔分布が上記
記載に該当するような試料を作製しても(これはCo
(OH)2被覆Ni粒子の合成条件、あるいはその後の
酸化処理条件のいずれかを変えれば、作製することがで
きる。)、顕著な利用率の向上は認められなかった。こ
のことから、本発明者らは、先の公報中に記載されたよ
うな活物質粒子の細孔分布と利用率との関連性は、特に
無いものと考えている。
Ni粒子の作製に際し、液相法による被覆層形成を行っ
たが、その際の被覆条件等はここで記したものに限定さ
れるものではなく、また水酸化ニッケル固溶体粒子と水
酸化コバルト粉末とを混合し、機械混合時におけるせん
断力や衝撃力を利用して粒子表面を水酸化コバルトで被
覆させる方法(機械混合法)等を用いても、本発明の活
物質粒子を作製することができる。
リ蓄電池は、その正極活物質がγ−オキシ水酸化コバル
トを主成分とした高次コバルト酸化物と、水酸化ニッケ
ルを主成分した固溶体粒子とで構成されるものであり、
γ−オキシ水酸化コバルトが極めて高次でかつ高導電性
を有するため、高い正極利用率を達成しつつ、過放電や
短絡状態での放置、長期保存や高温の保存後も高容量を
維持することが可能なアルカリ蓄電池を提供することが
できる。
価数との関係を示す図
晶構造の模式図
を示す模式図
係を示す模式図
メトリー(CV)で得られた電流−電位曲線図
メトリー(CV)で得られた電流−電位曲線図
化コバルトが一部混相として存在する酸化物のX線回折
図
面図
造粒装置の概観断面図
質粒子の反射スペクトル図
コバルトの反射スペクトル図
水酸化コバルトの反射スペクトル図
回折図
反射スペクトル図
ペクトル図
リックボルタンメトリー(CV)で得られた電流−電位
曲線図
Claims (35)
- 【請求項1】六方晶、斜方晶、単斜晶のいずれかの結晶
系に属し、層状構造を有していてその(003)面の面
間隔が5.5〜7.0Åであり、且つコバルト平均価数
が3.0よりも大であることによって定義されるγ−オ
キシ水酸化コバルトを主成分とした高次コバルト酸化物
と、水酸化ニッケルを主成分とした固溶体粒子とで構成
されることを特徴とするアルカリ蓄電池用非焼結式正極
の活物質。 - 【請求項2】六方晶、斜方晶、単斜晶のいずれかの結晶
系に属し、層状構造を有していてその(003)面の面
間隔が5.5〜7.0Åであり、且つコバルト平均価数
が3.0よりも大であることによって定義され、さらに
K+あるいはNa+を結晶内に含有したγ−オキシ水酸化
コバルトを主成分とした高次コバルト酸化物と、水酸化
ニッケルを主成分とした固溶体粒子とで構成されること
を特徴とするアルカリ蓄電池用非焼結式正極の活物質。 - 【請求項3】前記γ−オキシ水酸化コバルトは、コバル
ト原子に対して20〜33mol%のK+を結晶内部に
含有することを特徴とする請求項2記載のアルカリ蓄電
池用非焼結式正極の活物質。 - 【請求項4】前記γ−オキシ水酸化コバルトは、コバル
ト原子に対して20〜33mol%のNa+を結晶内部
に含有することを特徴とする請求項2記載のアルカリ蓄
電池用非焼結式正極の活物質。 - 【請求項5】前記γ−オキシ水酸化コバルトを主成分と
した高次コバルト酸化物の量は、水酸化ニッケルを主成
分とした固溶体粒子の量に対して2〜10重量%である
ことを特徴とする請求項2記載のアルカリ蓄電池用非焼
結式正極の活物質。 - 【請求項6】コバルト酸化物の被覆層を有する水酸化ニ
ッケル固溶体粒子であって、その被覆層を形成するコバ
ルト酸化物は、六方晶、斜方晶、単斜晶のいずれかの結
晶系に属し、層状構造を有していてその(003)面の
面間隔が5.5〜7.0Åであり、且つコバルト平均価
数が3.0よりも大であることによって定義されるγ−
オキシ水酸化コバルトを主成分とした高次コバルト酸化
物であることを特徴とするアルカリ蓄電池用非焼結式正
極の活物質。 - 【請求項7】前記コバルト酸化物の被覆層を有する水酸
化ニッケル固溶体粒子は平均粒径が5〜20μmであ
り、前記被覆層はその厚みが0.2μm以下で粒子全面
を被覆していることを特徴とする請求項6記載のアルカ
リ蓄電池用非焼結式正極の活物質。 - 【請求項8】コバルト酸化物の被覆層を有する水酸化ニ
ッケル固溶体粒子であって、その被覆層を形成するコバ
ルト酸化物は、六方晶、斜方晶、単斜晶のいずれかの結
晶系に属し、層状構造を有していてその(003)面の
面間隔が5.5〜7.0Åであり、且つコバルト平均価
数が3.0よりも大であることによって定義され、さら
にK+あるいはNa+を結晶内に含有したγ−オキシ水酸
化コバルトを主成分とした高次コバルト酸化物であるこ
とを特徴とするアルカリ蓄電池用非焼結式正極の活物
質。 - 【請求項9】前記コバルト酸化物の被覆層を有する水酸
化ニッケル固溶体粒子は平均粒径が5〜20μmであ
り、前記被覆層はその厚みが0.2μm以下で粒子全面
を被覆していることを特徴とする請求項8記載のアルカ
リ蓄電池用非焼結式正極の活物質。 - 【請求項10】前記コバルト酸化物は、コバルト原子に
対して20〜33mol%のK+を結晶内部に含有する
ことを特徴とする請求項8記載のアルカリ蓄電池用非焼
結式正極の活物質。 - 【請求項11】前記コバルト酸化物は、コバルト原子に
対して20〜33mol%のNa+を結晶内部に含有す
ることを特徴とする請求項8記載のアルカリ蓄電池用非
焼結式正極の活物質。 - 【請求項12】コバルト酸化物の被覆層を有する水酸化
ニッケル固溶体粒子であって、拡散反射法を用いた測色
における可視全域(波長400〜700nm)の分光反
射率が3.5%以上で、さらに波長450nm近傍(藍
色)に分光反射率4.0%以上の極大値を持ち、且つ被
覆層を形成するコバルト酸化物のコバルト平均価数が
3.0よりも大であることを特徴とするアルカリ蓄電池
用非焼結式正極の活物質。 - 【請求項13】前記コバルト酸化物の被覆層を有する水
酸化ニッケル固溶体粒子は平均粒径が5〜20μmであ
り、前記被覆層はその厚みが0.2μm以下で粒子全面
を被覆していることを特徴とする請求項12記載のアル
カリ蓄電池用非焼結式正極の活物質。 - 【請求項14】前記コバルト酸化物は、コバルト原子に
対して20〜33mol%のK+を結晶内部に含有する
ことを特徴とする請求項12記載のアルカリ蓄電池用非
焼結式正極の活物質。 - 【請求項15】前記コバルト酸化物は、コバルト原子に
対して20〜33mol%のNa+を結晶内部に含有す
ることを特徴とする請求項12記載のアルカリ蓄電池用
非焼結式正極の活物質。 - 【請求項16】六方晶、斜方晶、単斜晶のいずれかの結
晶系に属し、層状構造を有していてその(003)面の
面間隔が5.5〜7.0Åであり、且つコバルト平均価
数が3.0よりも大であることによって定義されるγ−
オキシ水酸化コバルトを主成分とした高次コバルト酸化
物と、水酸化ニッケルを主成分とした固溶体粒子とで構
成された活物質を備える非焼結式正極と、 負極と、 セパレータと、 アルカリ電解液よりなるアルカリ蓄電池。 - 【請求項17】六方晶、斜方晶、単斜晶のいずれかの結
晶系に属し、層状構造を有していてその(003)面の
面間隔が5.5〜7.0Åであり、且つコバルト平均価
数が3.0よりも大であることによって定義され、さら
にK+あるいはNa+を結晶内に含有したγ−オキシ水酸
化コバルトを主成分とした高次コバルト酸化物と、水酸
化ニッケルを主成分とした固溶体粒子とで構成された活
物質を備える非焼結式正極と、 負極と、 セパレータと、 アルカリ電解液よりなるアルカリ蓄電池。 - 【請求項18】前記γ−オキシ水酸化コバルトは、コバ
ルト原子に対して20〜33mol%のK+を結晶内部
に含有することを特徴とする請求項17記載のアルカリ
蓄電池。 - 【請求項19】前記γ−オキシ水酸化コバルトは、コバ
ルト原子に対して20〜33mol%のNa+を結晶内
部に含有することを特徴とする請求項17記載のアルカ
リ蓄電池。 - 【請求項20】前記γ−オキシ水酸化コバルトを主成分
とした高次コバルト酸化物の量は、水酸化ニッケルを主
成分とした固溶体粒子の量に対して2〜10重量%であ
ることを特徴とする請求項17記載のアルカリ蓄電池。 - 【請求項21】六方晶、斜方晶、単斜晶のいずれかの結
晶系に属し、層状構造を有していてその(003)面の
面間隔が5.5〜7.0Åであり、且つコバルト平均価
数が3.0よりも大であることによって定義されるγ−
オキシ水酸化コバルトを主成分とした高次コバルト酸化
物によって表面が被覆された水酸化ニッケル固溶体粒子
を主体とした非焼結式正極と、 負極と、 セパレータと、 アルカリ電解液よりなるアルカリ蓄電池。 - 【請求項22】前記コバルト酸化物の被覆層を有する水
酸化ニッケル固溶体粒子は平均粒径が5〜20μmであ
り、前記被覆層はその厚さが0.2μm以下で粒子全面
を被覆していることを特徴とする請求項21記載のアル
カリ蓄電池。 - 【請求項23】六方晶、斜方晶、単斜晶のいずれかの結
晶系に属し、層状構造を有していてその(003)面の
面間隔が5.5〜7.0Åであり、且つコバルト平均価
数が3.0よりも大であることによって定義され、さら
にK+あるいはNa+を結晶内に含有したγ−オキシ水酸
化コバルトを主成分とした高次コバルト酸化物によって
表面が被覆された水酸化ニッケル固溶体粒子を主体とし
た非焼結式正極と、 負極と、 セパレータと、 アルカリ電解液よりなるアルカリ蓄電池。 - 【請求項24】前記コバルト酸化物の被覆層を有する水
酸化ニッケル固溶体粒子は平均粒径が5〜20μmであ
り、前記被覆層はその厚さが0.2μm以下で粒子全面
を被覆していることを特徴とする請求項23記載のアル
カリ蓄電池。 - 【請求項25】前記コバルト酸化物は、コバルト原子に
対して20〜33mol%のK+を結晶内部に含有する
ことを特徴とする請求項23記載のアルカリ蓄電池。 - 【請求項26】前記コバルト酸化物は、コバルト原子に
対して20〜33mol%のNa+を結晶内部に含有す
ることを特徴とする請求項23記載のアルカリ蓄電池。 - 【請求項27】拡散反射法を用いた測色における可視全
域(波長400〜700nm)の分光反射率が3.5%
以上で、波長450nm近傍(藍色)に分光反射率4.
0%以上の極大値を持ち、且つコバルト平均価数が3.
0よりも大であるコバルト酸化物で被覆された水酸化ニ
ッケル固溶体粒子を主体とした非焼結式正極と、 負極と、 セパレータと、 アルカリ電解液よりなるアルカリ蓄電池。 - 【請求項28】前記コバルト酸化物の被覆層を有する水
酸化ニッケル固溶体粒子は平均粒径が5〜20μmであ
り、前記被覆層はその厚さが0.2μm以下で粒子全面
を被覆していることを特徴とする請求項27記載のアル
カリ蓄電池。 - 【請求項29】前記コバルト酸化物は、コバルト原子に
対して20〜33mol%のK+を結晶内部に含有する
ことを特徴とする請求項27記載のアルカリ蓄電池。 - 【請求項30】前記コバルト酸化物は、コバルト原子に
対して20〜33mol%のNa+を結晶内部に含有す
ることを特徴とする請求項27記載のアルカリ蓄電池。 - 【請求項31】マイクロ波加熱手段および混合攪拌手段
を備えた容器内で、水酸化コバルトの被覆層を有した水
酸化ニッケル固溶体粒子を混合しながら、これにアルカ
リ水溶液を滴下して粒子表面がアルカリ水溶液で濡れた
湿潤粒子にする第1工程と、 この容器内を気密にしてマイクロ波照射を主として加熱
を行いながら混合を続け、前記湿潤粒子を所定温度まで
昇温する第2工程と、 所定温度に達した後に気密を解いて容器内に空気を流入
させ、粒子温度が一定となるよう前記マイクロ波出力を
制御しながら混合を続けて、前記湿潤粒子を完全乾燥ま
で導く第3工程とよりなるアルカリ蓄電池用非焼結式正
極活物質の製造方法。 - 【請求項32】前記容器の内壁面部分には加熱手段が備
えられており、前記第1工程から第3工程の間、前記加
熱手段により補助的に容器内壁面を加熱することを特徴
とする請求項31記載のアルカリ蓄電池用非焼結式正極
活物質の製造方法。 - 【請求項33】前記水酸化コバルトの被覆層を有した水
酸化ニッケル固溶体粒子は、その平均粒径が5〜20μ
mであり、且つ前記の被覆層はその厚みが0.2μm以
下で粒子全面を被覆しており、且つこの粒子はBET比
表面積が5〜12m2/gであることを特徴とする請求
項31記載のアルカリ蓄電池用非焼結式正極活物質の製
造方法。 - 【請求項34】前記第2工程および第3工程における加
熱温度は、90〜130℃であることを特徴とする請求
項31記載のアルカリ蓄電池用非焼結式正極活物質の製
造方法。 - 【請求項35】前記アルカリ水溶液はKOHあるいはN
aOHの水溶液であって、その濃度は40重量%より大
であり、且つその滴下量は、水酸化コバルトの被覆層を
有した水酸化ニッケル固溶体粒子の乾燥重量に対するア
ルカリ溶質の重量比率が4〜6%となる範囲であること
を特徴とする請求項31記載のアルカリ蓄電池用正極活
物質の製造方法。
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