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JP2024513376A - Mageb2結合構築物 - Google Patents

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JP2024513376A JP2023560049A JP2023560049A JP2024513376A JP 2024513376 A JP2024513376 A JP 2024513376A JP 2023560049 A JP2023560049 A JP 2023560049A JP 2023560049 A JP2023560049 A JP 2023560049A JP 2024513376 A JP2024513376 A JP 2024513376A
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Abstract

本発明は、MAGEB2に結合するドメインを含む結合構築物に関する。さらに、本発明は、結合構築物をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター及び前記ポリヌクレオチド又はベクターで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。さらに、本発明は、結合構築物を製造するプロセス、結合構築物を使用する治療方法、結合構築物の診断的使用及び結合構築物を含むキットを提供する。

Description

本発明の分野は、MAGEB2に結合する結合構築物を含む、癌の治療及び診断に関連する組成物及び方法に関する。
MAGE(メラノーマ抗原遺伝子)ファミリーは、いくつかのサブファミリに分類される約60個の遺伝子を含む。MAGE-A、-B及び-Cサブファミリは、主に精巣で発現され、様々な癌型で異常に発現される。MAGE-D、-E、-F、-G、-H、-L及び-Nサブファミリは、多様な組織で発現される。例えば、Lee and Potts,J.Mol.Biol.,2018を参照されたい。MAGEファミリーメンバーの1つであるMAGEB2は、典型的には、正常な精巣においてのみ発現する。RING型ジンクフィンガー含有E3ユビキチンタンパク質リガーゼのユビキチンリガーゼ活性を増強するように機能し得るMAGEB2は、肺癌、乳癌、黒色腫などの種々のヒト腫瘍において異常に発現することがわかっている。この異常な発現を考えると、MAGEB2は、新しい治療薬の潜在的な標的である。
癌の早期発見及び分類は、疾患の治療が成功するための重要な因子である。腫瘍抗原(例えば、MAGEB2)の検出及び定量が可能である高感度で高精度の診断アッセイは、患者における癌の早期の検出及び分類に役立ち、適切な癌治療の臨床反応及び転帰を予測することもできる。
これらの腫瘍抗原を確実に検出する能力は、疾患及び/又は疾患進行の早期の指標を提供し得る。免疫診断アッセイは、癌を含む様々な疾患状態を検出するための重要なツールである。しかしながら、そのようなアッセイは、腫瘍細胞に存在する特定の腫瘍抗原を確実に検出するのに十分に感度及び/又は特異的であるとは限らない(特にそれらの発現レベルが低く、且つ/又は腫瘍細胞の表面に発現しない場合)。
一部の例では、分子診断アッセイが望まれ、必要な特異性及び感度を提供し、したがって特定の腫瘍抗原を検出するための最良の選択肢であり得る。しかしながら、他の例では、腫瘍組織試料内の腫瘍抗原の適切な発現を確認することが望ましく、したがって免疫組織化学的アッセイがより適している場合がある。
Lee and Potts,J.Mol.Biol.,2018
したがって、悪性細胞の検出に有用な腫瘍抗原を検出し、且つ/又は関連する治療法の有効性の予測を促進し、及び安全性を改善する高感度で高精度な診断アッセイが依然として必要とされている。
一実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する単離された抗原結合構築物であって、配列番号2、3、4又は388~554から選択される配列を含むエピトープに結合する、単離された抗原結合構築物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、単離された抗原結合構築物であって、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、CDRL1は、配列番号85に記載の配列を含み、CDRL2は、配列番号86に記載の配列を含み、CDRL3は、配列番号87に記載の配列を含み、CDRH1は、配列番号229に記載の配列を含み、CDRH2は、配列番号230に記載の配列を含み、及びCDRH3は、配列番号231に記載の配列を含む、単離された抗原結合構築物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、抗原結合構築物であって、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、CDRL1は、配列番号73に記載の配列を含み、CDRL2は、配列番号74に記載の配列を含み、CDRL3は、配列番号75に記載の配列を含み、CDRH1は、配列番号217に記載の配列を含み、CDRH2は、配列番号218に記載の配列を含み、及びCDRH3は、配列番号219に記載の配列を含む、抗原結合構築物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、単離された抗原結合構築物であって、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、CDRL1は、配列番号91に記載の配列を含み、CDRL2は、配列番号92に記載の配列を含み、CDRL3は、配列番号93に記載の配列を含み、CDRH1は、配列番号235に記載の配列を含み、CDRH2は、配列番号236に記載の配列を含み、及びCDRH3は、配列番号237に記載の配列を含む、単離された抗原結合構築物を提供する。
さらなる実施形態では、本発明は、単離された抗原結合構築物であって、配列番号346に記載の配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号347に記載の配列を含む重鎖可変領域を含む、単離された抗原結合構築物を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、単離された抗原結合構築物であって、配列番号338に記載の配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号339に記載の配列を含む重鎖可変領域を含む、単離された抗原結合構築物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、抗原結合構築物であって、配列番号350に記載の配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号351に記載の配列を含む重鎖可変領域を含む抗原結合構築物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する抗体を作製する方法であって、配列番号2、3又は4から選択される配列を含むペプチドで動物を免疫することと、MAGEB2に結合する抗体を前記動物から単離することとを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、対象における腫瘍を治療する方法であって、対象から、腫瘍に由来する細胞を含む試料を取得し、その試料中のMAGEB2のレベルを、本明細書で提供される抗原結合構築物を使用して測定し、且つ対象が抗MAGEB2治療薬による治療に反応すると決定することにより、対象が抗MAGEB2治療薬による治療に反応すると決定することと、対象に有効量の抗MAGEB2治療薬を投与することとを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、対象が抗MAGEB2治療薬を必要としていると特定する方法であって、a)対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、本明細書で提供される抗原結合構築物を使用して決定することと、b)MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、その対象が抗MAGEB2治療薬を必要としていると特定することとを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、MAGEB2陽性腫瘍を有する対象に対する治療を決定する方法であって、対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、本明細書で提供される抗原結合構築物を使用して決定することと、MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、治療が抗MAGEB2治療薬を含むと決定することとを含む方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、対象における抗MAGEB2治療薬による治療の有効性を決定する方法であって、抗MAGEB2治療薬による治療前及び抗MAGEB2治療薬による治療後、対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、本明細書で提供される抗原結合構築物を使用して決定することと、抗MAGEB2治療薬による治療後にMAGEB2陽性腫瘍細胞のレベルが減少する場合、その治療が有効であると決定することとを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、腫瘍を有する対象を診断する方法であって、a)対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、本明細書で提供される抗原結合構築物を使用して決定することと、b)MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、その対象がMAGEB2陽性腫瘍を有すると診断することとを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、MAGEB2陽性腫瘍を有する対象を特定する方法であって、a)対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、本明細書で提供される抗原結合構築物を使用して決定することと、b)MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、その対象がMAGEB2陽性腫瘍を有すると特定することとを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、対象が抗MAGEB2治療薬を必要としていると特定する方法であって、a)対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、本明細書で提供される抗原結合構築物を使用して決定することと、b)MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、その対象が抗MAGEB2治療薬を必要としていると特定することとを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、MAGEB2陽性腫瘍を有する対象に対する治療を決定する方法であって、対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、本明細書で提供される抗原結合構築物を使用して決定することと、MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、治療が抗MAGEB2治療薬を含むと決定することとを含む方法を提供する。
本明細書の実施例2に記載のMAGEB2 N末端ヘリックス、N末端ペプチド及び中間ループ領域ペプチドバインダーの富化に使用されるゲート階層を示す。 免疫原ペプチド及び完全長MAGEB2タンパク質に結合する様々な抗MAGEB2抗体による結合を示す2つのプロットを示す。MAGEB2パネルは、完全長MAGEB2タンパク質に対する最高親和性バインダーを同定するために、限定された抗原スタイルアッセイ(最高濃度のみ示す)で実行された。 MAGEB2トランスフェクト細胞における免疫反応性を測定したMAGEB2 IHCアッセイの免疫組織化学的結果を示す。CHO-MAGE-B2+細胞において、4つの抗MAGEB2抗体の4G17、1J15、1C3、1I14で強いMAGEB2 IHC染色が観察されたが、IgG対照では観察されなかった。 MAGEB2トランスフェクト細胞における免疫反応性を測定したMAGEB5 IHCアッセイの免疫組織化学的結果を示す。CHO-MAGEB5+細胞では、4つの抗MAGEB2抗体の4G17、1J15、1C3、1I14及びIgG対照でMAGEB2 IHC染色が観察されなかった。 対照精巣組織における免疫反応性を測定したMAGEB2 IHCアッセイの免疫組織化学的結果を示す。精原細胞における強力なMAGEB2 IHC染色は、2ug/mlにおいて、4つの抗MAGEB2抗体の4G17、1J15、1C3、1I14で精巣において観察されたが、IgG対照では観察されなかった。抗体4G17、1J15、1C3でいくらかの核染色が見られ、抗体1J15でライディッヒ細胞染色が見られた。 正常ヒト組織における免疫反応性を測定したMAGEB2 IHCアッセイの免疫組織化学的結果を示す。肝細胞における非特異的微粒子染色は、5ug/mlにおいて、肝組織コア(正常ヒト組織)において抗MAGEB2抗体の4G17、1J15、1C3で見られたが、抗MAGEB2抗体の1I14及びIgG対照では見られなかった。 1C3抗体を減量させて、精巣及び肝臓組織における免疫反応性を測定したMAGEB2 IHCアッセイの免疫組織化学的結果を示す。2ug/mlのAb濃度では、抗MAGEB2抗体の1C3クローンは、以前に観察されたように、適切な割合の精原細胞で弱~中程度の強さの特異的染色を有する。核染色は、稀であり、強度は、より高い濃度で観察される強度よりもわずかに弱い。しかしながら、この濃度では、肝臓における非特異的バックグラウンド染色はない。
MAGEB2は、様々なヒト癌型において異常に発現する。MAGEB2は、細胞の表面には発現しない。しかしながら、MAGEB2ペプチドは、MHCクラスI分子によって腫瘍細胞の表面に提示される。特に、MAGEB2ペプチドGVYDGEEHSV(配列番号1)は、ペプチド-MHC(「pMHC」)複合体としてMHCクラスI分子によって腫瘍細胞の表面に提示される。例えば、米国特許出願公開第2016/0250307A1号(米国特許出願第14/975,952号)明細書及び同第2017/0080070A1号(米国特許出願第15/357,757号)明細書を参照されたい。MAGEB2ペプチド-MHC複合体は、細胞の表面上に提示され、潜在的に診断薬の標的になるが、このペプチド-MHC複合体の細胞表面上のコピー数は、検出するにはあまりに少なすぎる。したがって、細胞内で発現するMAGEB2に結合し、検出することができる結合構築物(例えば、抗体)が本明細書に記載される。
結合構築物
本発明は、MAGEB2タンパク質に結合するドメインを含む結合構築物を提供する。これらの結合構築物は、抗原結合構築物とも称される。
結合構築物という用語は、その特定の標的又は抗原に結合することができ、抗体又はその断片の可変重鎖(VH)及び/又は可変軽鎖(VL)ドメインを含む。典型的には、本発明による結合ドメインは、標的の結合を可能にする抗体の最小構造要件を含む。この最小要件は、例えば、少なくとも3つの軽鎖CDR(すなわちVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3)並びに/又は3つの重鎖CDR(すなわちVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3)、好ましくは6つ全てのCDRの存在によって定義され得る。抗体の最小構造要件を定義するための代替アプローチは、抗体が、特定の標的の構造内において、それぞれエピトープ領域(エピトープクラスター)を構成する標的タンパク質のタンパク質ドメインに結合するエピトープの定義又は定義された抗体のエピトープと競合する特定の抗体を参照することによる定義である。代わりに、最小構造要件は、抗体の結合ドメイン内のパラトープ配列によって定義され得る。
本発明の結合構築物は、少なくとも1つの結合ドメインを含む。「結合ドメイン」という用語は、本発明に関連して、標的分子上の所与の標的エピトープ又は所与の標的領域、例えばMAGEB2又はMAGEB2内の特定の領域に特異的に結合するか、それと特異的に相互作用するか又はそれを認識するドメインを特徴付ける。結合ドメインの構造及び機能は、抗体の構造及び/又は機能、例えば完全長又は全免疫グロブリン分子の構造及び/又は機能に基づき、抗体又はその断片の可変重鎖(VH)及び/又は可変軽鎖(VL)ドメインに由来する。特定の実施形態では、結合ドメインは、3個の軽鎖CDR(すなわちVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3)及び/又は3個の重鎖CDR(すなわちVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3)の存在を含む。特定の実施形態では、結合ドメインは、既存の(モノクローナル)抗体からのCDR配列を足場にグラフトすることによってではなく、ファージディスプレイ法又はライブラリースクリーニング法によって作製されるか又は得ることができる。
本発明による結合構築物の結合ドメインは、例えば、上記で言及したCDR群を含み得る。好ましくは、それらのCDRは、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)のフレームワーク内に含まれるが、両方を含む必要はない。Fd断片は、例えば、2つのVH領域を有し、多くの場合、インタクトな抗原結合ドメインの一部の抗原結合機能を保持している。抗体断片、抗体バリアント又は結合ドメインの形式のさらなる例としては、(1)VL、VH、CL及びCH1ドメインを有する一価の断片であるFab断片;(2)ヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を有する二価の断片であるF(ab’)断片;(3)2つのVH及びCH1ドメインを有するFd断片;(4)抗体の単一のアームのVLドメイン及びVHドメインを有するFv断片、(5)VHドメインを有するdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(6)単離された相補性決定領域(CDR)、及び(7)一本鎖Fv(scFv)が挙げられ、後者が好ましい(例えば、scFVライブラリー由来のもの)。本発明による結合構築物の実施形態の例は、例えば、国際公開第00/006605号パンフレット、国際公開第2005/040220号パンフレット、国際公開第2008/119567号パンフレット、国際公開第2010/037838号パンフレット、国際公開第2013/026837号パンフレット、国際公開第2013/026833号パンフレット、米国特許出願公開第2014/0308285号明細書、米国特許出願公開第2014/0302037号明細書、国際公開第2014/144722号パンフレット、国際公開第2014/151910号パンフレット及び国際公開第2015/048272号パンフレットに記載されている。
本発明の特定の実施形態では、結合構築物は、本明細書の以下に記載されるような完全長抗体である。
「結合ドメイン」又は「結合するドメイン」の定義には、全長抗体の断片、例えばVH、VHH、VL、(s)dAb、Fv、軽鎖(VL-CL)、Fd(VH-CH1)、重鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2又は「rIgG」(重鎖及び軽鎖からなる「半抗体」)もある。本発明による結合構築物は、抗体バリアント又は抗体誘導体とも呼ばれる抗体の修飾断片も含み得る。例としては、scFv、ジ-scFv又はビ(ス)-scFv、scFvFc、scFv-ジッパー、scFab、Fab2、Fab3、ダイアボディ、単鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(Tandab)、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFv、以下のような構造によって例示される「ミニボディ」;(VH-VL-CH3)、(scFvCH3)、((scFv)-CH3+CH3)、((scFv)-CH3)又は(scFv-H3-scFv)、マルチボディ、例えばトリアボディ又はテトラボディ及び単一ドメイン抗体、例えば他の可変領域又はドメインと無関係に抗原又は標的に特異的に結合する、VHH、VH又はVLであり得る、1つの可変領域のみを含むナノボディ又は単一可変ドメイン抗体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明による結合構築物のさらなる可能な形式は、クロスボディ、マキシボディ、ヘテロFc構築物、モノFc構築物及びscFc構築物である。これらの形式の例を本明細書において以下で説明する。
本発明によれば、結合ドメインは、1つ以上のポリペプチドの形態である。このようなポリペプチドは、タンパク質性部分及び非タンパク質性部分(例えば、化学的リンカー又はグルタルアルデヒドなどの化学的架橋剤)を含み得る。タンパク質(その断片、好ましくは生物学的に活性な断片及び通常30個未満のアミノ酸を有するペプチドが挙げられる)は、(アミノ酸の鎖をもたらす)共有ペプチド結合を介して互いに結合した2つ以上のアミノ酸を含む。
本明細書で使用する場合、用語「ポリペプチド」は、通常、30個を超えるアミノ酸からなる分子群を表す。ポリペプチドはさらに、二量体、三量体及びより高次のオリゴマーなどの多量体を形成し得、すなわち複数のポリペプチド分子からなる場合もある。このような二量体、三量体などを形成するポリペプチド分子は、同一であっても又は同一でなくてもよい。このような多量体の対応する高次構造は、したがって、ホモ又はヘテロ二量体、ホモ又はヘテロ三量体などと称される。ヘテロ多量体の例は、その天然に存在する形態において、2つの同一のポリペプチド軽鎖及び2つの同一のポリペプチド重鎖からなる抗体分子である。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などのような翻訳後修飾によって修飾がなされた天然の修飾ペプチド/ポリペプチド/タンパク質も指す。本明細書で言及される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、ペグ化などの化学修飾されたものでもあり得る。このような修飾は、当技術分野でよく知られており、本明細書で後述される。
本発明による「抗体」の定義は、生物工学的又はタンパク質工学的方法又はプロセスによって生成されたラクダ抗体及び他の免疫グロブリンも含む完全長抗体を含む。こうした完全長抗体は、例えば、モノクローナル、組換え、キメラ、脱免疫化、ヒト化及びヒト抗体並びにマウス、ハムスター、ウサギ、ラット、ヤギ又は非ヒト霊長類などの他の種からの抗体であり得る。
本明細書で提供される抗体では、免疫グロブリン鎖の可変領域は、一般に、3つの超可変領域(「相補性決定領域」又はCDRと呼ばれることの方が多い)によって連結された相対的に保存されたフレームワーク領域(FR)を含む同一の全体構造を示す。上述のそれぞれの重鎖/軽鎖対の2つの鎖に由来するCDRは、典型的には、フレームワーク領域によって整列されることで、標的のエピトープに特異的に結合する構造を形成する。N末端からC末端まで、天然に存在する軽鎖及び重鎖の可変領域の両方は、典型的には、これらの要素が以下の順序に従う:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4。これらのドメインのそれぞれの位置を占めるアミノ酸に番号を割り当てるための付番方式が考案されている。この付番方式は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(1987 and 1991,NIH,Bethesda,Md.)又はChothia&Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:878-883において定義されている。
用語「可変」は、配列内で可変性を示し、特定の抗体の特異性及び結合親和性の決定に関与する、抗体又は免疫グロブリンドメインの一部分(すなわち「可変ドメイン」)を指す。可変重鎖(VH)と可変軽鎖(VL)との対形成は、一緒に抗原結合部位を形成する。
可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均一に分布しているのではなく、重鎖及び軽鎖可変領域のそれぞれのサブドメインに集中している。これらのサブドメインは、「超可変領域」又は「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる。可変ドメインのより保存的な(すなわち非超可変)部分は、「フレームワーク」領域(FRM又はFR)と呼ばれ、抗原結合表面を形成する三次元空間内における6つのCDRのための足場を提供する。天然に存在する重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、大部分がβシート配置をとる4つのFRM領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)を含み、これらがループ接続を形成し、場合によりβシート構造の一部を形成する3つの超可変領域によって接続されている。各鎖の超可変領域は、フレームワーク領域によってごく近接して一体に保持され、通常、他方の鎖の超可変領域と一緒になって抗原結合部位の形成に寄与する。
用語「CDR」及びその複数形である「CDRs」は、相補性決定領域を指し、その3つが軽鎖可変領域の結合特性を構成し(CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3)、3つが重鎖可変領域の結合特性を構成する(CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3)。CDRは、抗体と抗原との特異的相互作用に関与する残基の大部分を含み、したがって抗体分子の機能活性に寄与する。すなわち、特定の標的に特異的に結合する主な決定基である。
CDRの境界及び長さの厳密な定義は、各種の分類及び付番方式に従う。したがって、CDRは、本明細書に記載される付番方式を含む、Kabat、Chothia、contact又は他の任意の境界定義によって表わされ得る。境界が異なっていても、これらの方式のそれぞれは、可変配列内のいわゆる「超可変領域」を構成する部分において、ある程度の重複を有する。したがって、これらの方式によるCDRの定義は、長さ及び隣接するフレームワーク領域に関する境界領域が相違する場合がある。例えば、Kabat(異種間の配列可変性に基づく手法)、Chothia(抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づく手法)及び/又はMacCallumを参照されたい(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991;Chothia et al.,J.MoI.Biol,1987,196:901-917;及びMacCallum et al.,J.Mol.Biol,1996,262:732)。抗原結合部位を特徴付けるさらに別の標準は、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されるAbM定義である。例えば、Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains,Antibody Engineering Lab Manual(Ed.:Duebel,S.and Kontermann,R.,Springer-Verlag,Heidelberg)を参照されたい。2つの残基同定技術が、重複するが、同一ではない領域を定義する限り、それらを組み合わせてハイブリッドCDRを定義することができる。しかしながら、Kabat方式による付番が好ましい。
典型的には、CDRは、カノニカル構造として分類され得るループ構造を形成する。用語「カノニカル構造」は、抗原結合(CDR)ループがとる主鎖の立体構造を指す。各カノニカル構造をポリペプチド骨格のねじれ角によって特徴付けることができる。したがって、抗体間の対応するループは、ループの大部分に高いアミノ酸配列可変性が見られるにも関わらず、非常に類似した三次元構造を有し得る(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.,1987,196:901;Chothia et al.,Nature,1989,342:877;Martin and Thornton,J.Mol.Biol,1996,263:800)。さらに、採用されたループ構造と、それを取り囲むアミノ酸配列との間には関係がある。特定のカノニカルクラスの立体構造は、ループの長さ並びにループ内及び保存されたフレームワーク内(すなわちループの外側)の重要な位置に存在するアミノ酸残基によって決定される。したがって、特定のカノニカルクラスへの割り当ては、これらの重要なアミノ酸残基の存在に基づいて行うことができる。
用語「カノニカル構造」には、例えば、Kabat(Kabat et al.)により分類されるように、抗体の線状配列に関する検討も含まれ得る。Kabatの付番スキーム(方式)は、抗体可変ドメインのアミノ酸残基を一貫した様式で付番するために広く採用されている標準であり、本明細書の他の箇所でも言及されるとおり本発明での適用に好ましいスキームである。さらなる構造的な検討も抗体のカノニカル構造を決定するために使用される場合がある。例えば、Kabatの付番では十分に反映されない相違をChothiaらの付番方式によって記載することができ、且つ/又は他の技術、例えば結晶学及び二次元若しくは三次元コンピューターモデリングによって明らかにすることができる。したがって、所与の抗体配列は、とりわけ、(例えば、種々のカノニカル構造をライブラリーに含めるという要求に基づいて)適切なシャーシ配列の同定が可能であるカノニカルクラスに分類され得る。抗体のアミノ酸配列のKabatの付番及びChothia et al.(前掲)に記載される構造的な検討並びに抗体構造のカノニカルな側面の解釈に対するそれらの意義については、文献に記載されている。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元配置は、当技術分野でよく知られている。抗体構造の概説については、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,eds.Harlow et al.,1988を参照されたい。
本明細書中で使用する場合、用語「一本鎖Fv」、「一本鎖抗体」又は「scFv」は、重鎖及び軽鎖の両方の可変領域を含むが定常領域は欠く、単一のポリペプチド鎖抗体断片を指す。通常、一本鎖抗体はさらに、VH及びVLドメイン間に、抗原への結合を可能にする所望の構造を形成できるようにするポリペプチドリンカーを含む。一本鎖抗体は、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)においてPluckthunによって詳細に論じられている。一本鎖抗体を作製する様々な方法、例えば米国特許第4,694,778号明細書及び同第5,260,203号明細書;国際特許出願公開の国際公開第88/01649号パンフレット;Bird(1988)Science 242:423-442;Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;Ward et al.(1989)Nature 334:54454;Skerra et al.(1988)Science 242:1038-1041に記載される方法が知られている。特定の実施形態では、一本鎖抗体は、二重特異性、多重特異性、ヒト及び/若しくはヒト化並びに/又は合成性でもあり得る。
いくつかの実施形態では、本発明の結合構築物は「インビトロで生成された結合構築物」である。この用語は、可変領域の全て又は一部(例えば、少なくとも1つのCDR)が、非免疫細胞の選択、例えばインビトロファージディスプレイ、タンパク質チップ又は抗原への結合能に関して候補配列を試験することができる他のあらゆる方法において生成される、先の定義による結合構築物を指す。他の実施形態では、結合構築物配列は、動物の免疫細胞におけるゲノム再配列によって生成される。したがって、この用語は、好ましくは、動物の免疫細胞におけるゲノム再配列によってのみ生成される配列を除外する。結合構築物の第1及び/又は第2のドメインは、既存の(モノクローナル)抗体のCDR配列を足場にグラフトすることによってではなく、ファージディスプレイ法又はライブラリースクリーニング法によって作製されるか又は得ることができると想定される。
「組換え抗体」は、組換えDNA技術又は遺伝子工学の使用によって作製された抗体である。
本明細書で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」(mAb)又はモノクローナル抗体構築物は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体、すなわち少量存在する可能性がある、考えられる天然に存在する変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である集団を含む個々の抗体を指す。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、典型的には異なる抗原部位又はエピトープに対する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、抗原上の単一の抗原部位又はエピトープに対するものである。モノクローナル抗体は、その特異性に加えて、それがクローン細胞培養によって合成され、他の免疫グロブリンによって汚染されていないという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。
モノクローナル抗体の調製には、継続的な細胞株培養によって産生される抗体をもたらすあらゆる技術が使用され得る。例えば、使用されるモノクローナル抗体は、Koehler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法又は組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)によって作製され得る。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのさらなる技術の例としては、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor,Immunology Today 4(1983),72)及びEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.(1985),77-96)が挙げられる。
次に、ハイブリドーマを、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)及び表面プラズモン共鳴分析、例えばBiacore(商標)などの標準的な方法を使用してスクリーニングして、特定の抗原に特異的に結合する抗体を産生する1つ以上のハイブリドーマを特定することができる。例えば、組換え抗原、天然に存在する形態、そのあらゆるバリアント又は断片及びその抗原性ペプチドといったあらゆる形態の関連抗原が免疫原として使用され得る。Biacoreシステムで採用されている表面プラズモン共鳴を使用して、標的細胞の表面抗原のエピトープにファージ抗体が結合する効率を高めることができる(Schier,Human Antibodies Hybridomas 7(1996),97-105;Malmborg,J.Immunol.Methods 183(1995),7-13)。
モノクローナル抗体を作製する別の例示的な方法としては、タンパク質発現ライブラリー、例えばファージディスプレイ又はリボソームディスプレイライブラリーのスクリーニングが挙げられる。ファージディスプレイについては、例えば、Ladner et al.、米国特許第5,223,409号明細書、Smith(1985)Science 228:1315-1317、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)に記載されている。
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、関連抗原を使用して、非ヒト動物、例えばげっ歯類(マウス、ハムスター、ウサギ又はラットなど)を免疫化することができる。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。例えば、マウス抗体産生が欠損したマウス系統を、ヒトIg(免疫グロブリン)遺伝子座の大きい断片を用いて改変することが可能である。ハイブリドーマ技術を用いて、所望の特異性を有する遺伝子に由来する抗原特異的モノクローナル抗体を製造及び選択し得る。例えば、XENOMOUSE(商標)、Green et al.(1994)Nature Genetics 7:13-21、米国特許出願公開第2003-0070185号明細書、国際公開第96/34096号パンフレット及び国際公開第96/33735号パンフレットを参照されたい。
モノクローナル抗体は、非ヒト動物から得た後、当技術分野で知られる組換えDNA技術を使用して、例えばヒト化、脱免疫、キメラ化などの改変を行うこともできる。改変された結合構築物の例としては、非ヒト抗体のヒト化バリアント、「親和性成熟」抗体(例えば、Hawkins et al.J.Mol.Biol.254,889-896(1992)及びLowman et al.,Biochemistry 30,10832-10837(1991)を参照されたい)及びエフェクター機能が改変された抗体変異体(例えば、米国特許第5,648,260号明細書、前掲のKontermann and Duebel(2010)及び前掲のLittle(2009)を参照されたい)が挙げられる。
免疫学において、親和性成熟とは、免疫反応の過程で抗原に対する親和性の増大した抗体をB細胞が産生するプロセスである。同じ抗原への反復曝露により、宿主は連続的により高い親和性の抗体を産生する。天然のプロトタイプと同様に、インビトロ親和性成熟は、変異及び選択の原理に基づいている。インビトロ親和性成熟をうまく使用して、結合構築物、例えば抗体断片を最適化している。CDR内部のランダム変異は、放射線、化学的変異原又はエラープローンPCRを用いて導入される。加えて、チェインシャッフリングにより、遺伝的多様性を増加させ得る。ファージディスプレイのようなディスプレイ方法を用いた2又は3ラウンドの変異及び選択により、通常、低ナノモル範囲の親和性を有する抗体断片が得られる。
結合構築物のアミノ酸置換変異の好ましいタイプは、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1個以上の超可変領域残基を置換することを含む。一般に、さらなる開発のために選択されて得られるバリアントは、それらが生成された親抗体と比べて向上した生物学的特性を有することになる。そのような置換バリアントを生成するための簡便な方法には、ファージディスプレイを用いる親和性成熟が含まれる。簡潔に説明すると、いくつかの超可変領域部位(例えば、6~7部位)は、それぞれの部位で可能な全てのアミノ酸置換が生じるように変異される。そのようにして生成された抗体バリアントは、各粒子内にパッケージされたM13の遺伝子III産物との融合体として、繊維状ファージ粒子から一価形態で提示される。次に、ファージディスプレイされたバリアントを、本明細書に開示されるとおりにそれらの生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。改変のための超可変領域部位候補を特定するために、アラニンスキャニング変異導入法を実施して、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を特定し得る。代わりに又は加えて、結合ドメインと例えばヒトMAGEB2との間の接触点を特定するために、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析することが有益な場合がある。そのような接触残基及び隣接残基は、本明細書で詳述する技術による置換の候補である。そのようなバリアントを生成してから、バリアントのパネルに対して、本明細書に記載されるとおりのスクリーニングを行い、1つ以上の関連するアッセイにおいて優れた特性を有する抗体をさらなる開発のために選択し得る。
本発明の抗体には、特に、特に重鎖及び/若しくは軽鎖の一部が特定の種に由来するか、又は特定の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一若しくは相同である一方、鎖の残部は、所望の生物活性を示す限り、別の種に由来するか、又は別の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体及びそのような抗体の断片中の対応する配列と同一若しくは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)が含まれる(米国特許第4,816,567号明細書;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))。本明細書における目的のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿など)に由来する可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体が含まれる。キメラ抗体を作製するための様々な方法が記載されている。例えば、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.ScL U.S.A.81:6851,1985;Takeda et al.,Nature 314:452,1985、Cabilly et al.,米国特許第4,816,567号明細書;Boss et al.,米国特許第4,816,397号明細書;Tanaguchi et al.,欧州特許第0171496号明細書;欧州特許第0173494号明細書;及び英国特許第2177096号明細書を参照されたい。
「ヒト化」抗体、バリアント又はその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は抗体の他の抗原結合部分配列)は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有する、大部分がヒト配列である抗体又は免疫グロブリンである。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(CDRともいう)由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ハムスター又はウサギなどの非ヒト(例えば、齧歯類)種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基により置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置換される。さらに、本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基も含む場合がある。これらの改変は、抗体の性能をさらに洗練させ、最適化するためになされる。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分も含む場合がある。さらに詳しくは、Jones et al.,Nature,321:522-525(1986);Reichmann et al.,Nature,332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992)を参照されたい。
ヒト化抗体又はその断片は、抗原結合に直接関与しないFv可変ドメインの配列をヒトFv可変ドメイン由来の均等な配列で置換することによって生成することができる。ヒト化抗体又はその断片を生成するための例示的な方法は、Morrison(1985)Science 229:1202-1207;Oi et al.(1986)Bio Techniques 4:214並びに米国特許第5,585,089号明細書、米国特許第5,693,761号明細書、米国特許第5,693,762号明細書、米国特許第5,859,205号明細書及び米国特許第6,407,213号明細書により提供される。それらの方法は、重鎖又は軽鎖の少なくとも一方に由来する免疫グロブリンFv可変ドメインの全て又は一部をコードする核酸配列を単離、操作及び発現することを含む。そのような核酸は、上記のように、所定の標的に対する抗体を産生するハイブリドーマ及び他の供給源から得ることができる。次いで、ヒト化抗体分子をコードする組換えDNAが適切な発現ベクターにクローニングされ得る。
ヒト化抗体は、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現するが、内在性のマウス免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができないマウスなどのトランスジェニック動物を用いても作製され得る。Winterは、本明細書に記載されるヒト化抗体の調製に使用され得る例示的なCDRクラフト法を記載している(米国特許第5,225,539号明細書)。特定のヒト抗体のCDRの全てが非ヒトCDRの少なくとも一部分で置換され得るか、又はCDRの一部のみが非ヒトCDRで置換され得る。所定の抗原に対するヒト化抗体の結合に必要とされる数のCDRを置換することのみが必要である。
ヒト化抗体は、保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖細胞系列置換及び/又は復帰変異の導入によって最適化することができる。そのような改変された免疫グロブリン分子は、当技術分野で知られているいくつかの技術のいずれかによって作製され得る(例えば、Teng et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80:7308-7312,1983;Kozbor et al.,Immunology Today,4:7279,1983;Olsson et al.,Meth.Enzymol.,92:3-16,1982及び欧州特許第239400号明細書)。
用語「ヒト抗体」、「ヒト抗体構築物」及び「ヒト結合ドメイン」には、例えば、Kabat et al.(1991)(前掲)によって記載されているものを含む、当技術分野で知られるヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に実質的に対応する、可変及び定常の領域又はドメインなどの抗体領域を有する抗体、抗体断片及び結合ドメインが含まれる。本発明のヒト抗体、抗体断片又は結合ドメインは、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発若しくは部位特異的変異誘発により又はインビボでの体細胞変異により導入される変異)を例えばCDR、特にCDR3に含み得る。ヒト抗体、抗体断片又は結合ドメインは、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基で置換された少なくとも1、2、3、4、5又はそれを超える位置を有することができる。本明細書で使用されるヒト抗体、抗体断片及び結合ドメインの定義は、Xenomouseなどの技術又はシステムを使用することによって誘導することができる抗体の非人工的及び/又は遺伝的に改変されたヒト配列のみを含む完全ヒト抗体も企図する。好ましくは、「完全ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリンによってコードされないアミノ酸残基を含まない。
酵母人工染色体YACにおいてメガベースサイズのヒト遺伝子座をクローニングし、且つ再構築する能力及びそれらをマウス生殖細胞系列に導入する能力は、非常に大きいか又は粗くマッピングされた遺伝子座の機能的要素の解明並びにヒト疾患の有用なモデルの生成にとって強力な手法を提供する。さらに、マウス遺伝子座をそれらのヒト均等物で置換するそのような技術を使用すれば、発生期のヒト遺伝子産物の発現及び調節、それらと他の系との伝達並びに疾患の誘発及び進行へのそれらの関与について独特の見解を得ることができるであろう。
このような戦略の重要な実用化は、マウス液性免疫系の「ヒト化」である。内在性免疫グロブリン(Ig)遺伝子が不活性化されたマウスへのヒトIg遺伝子座の導入により、抗体のプログラムされた発現及び構築並びにB細胞の発生におけるそれらの役割の基礎となる機構を研究する機会が得られる。さらに、このような戦略であれば、ヒト疾患における抗体療法の可能性を実現する上で重要なマイルストーンとなる完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)の作製にとって理想的な供給源を得ることができるであろう。完全ヒト抗体は、マウスmAb又はマウス由来mAbに固有の免疫原性及びアレルギー反応を最小化し、それにより投与される抗体/コンストラクトの有効性及び安全性を増大させることが期待される。完全ヒト抗体の使用により、化合物の反復投与を必要とする炎症、自己免疫及び癌などの慢性及び再発性のヒト疾患の治療に実質的な利点が得られることが期待され得る。
この目標に向けた手法の1つは、マウス抗体の産生に欠損があるマウス系統をヒトIg遺伝子座の大きい断片を用いて操作することであり、これは、このようなマウスがマウス抗体を生じずに広範なレパートリーのヒト抗体を産生するであろうとの予測に立つものであった。大きいヒトIg断片は、可変遺伝子の広範な多様性並びに抗体の産生及び発現の適切な調節を保持すると考えられる。抗体の多様化及び選択並びにヒトタンパク質に対する免疫寛容の欠如のためにマウス機構を利用することにより、これらのマウス系統において再現されるヒト抗体レパートリーは、ヒト抗原を含む目的の任意の抗原に対して高親和性の抗体を産生するはずである。ハイブリドーマ技術を使用すれば、所望特異性を有する抗原特異的ヒトmAbを容易に作製及び選択することができるであろう。この一般的な戦略は、最初のXenoMouseマウス株の生成と関連して実証された(Green et al.Nature Genetics 7:13-21(1994)を参照されたい)。このXenoMouse系統は、可変領域及び定常領域のコア配列を含有したヒト重鎖遺伝子座及びカッパ軽鎖遺伝子座のそれぞれ245kb及び190kbサイズの生殖細胞系列配置断片を含有するYACを用いて操作された。このヒトIgを含有するYACは、抗体の再編成及び発現の両方に関してマウス系への適合性があることが証明されており、不活性化されたマウスIg遺伝子を置換することが可能であった。これは、それらがB細胞の発生を誘導して、完全ヒト抗体の成体様ヒトレパートリーを産生し、抗原特異的ヒトmAbを産生する能力によって実証された。これらの結果は、多数のV遺伝子、追加の調節エレメント及びヒトIg定常領域を含有するヒトIg遺伝子座の大部分の導入が、感染及び免疫化に対するヒト液性応答を特徴とする実質的に完全なレパートリーを再現し得ることも示唆した。最近、Greenらの研究を発展させ、ヒト重鎖遺伝子座及びカッパ軽鎖遺伝子座のそれぞれのメガベースサイズの生殖細胞系列配置YAC断片の導入により、ヒト抗体レパートリーのおよそ80%超が導入された。Mendez et al.Nature Genetics 15:146-156(1997)及び米国特許出願第08/759,620号明細書を参照されたい。
XenoMouse(登録商標)動物の作製は、米国特許出願第07/466,008号明細書、同第07/610,515号明細書、同第07/919,297号明細書、同第07/922,649号明細書、同第08/031,801号明細書、同第08/112,848号明細書、同第08/234,145号明細書、同第08/376,279号明細書、同第08/430,938号明細書、同第08/464,584号明細書、同第08/464,582号明細書、同第08/463,191号明細書、同第08/462,837号明細書、同第08/486,853号明細書、同第08/486,857号明細書、同第08/486,859号明細書、同第08/462,513号明細書、同第08/724,752号明細書及び同第08/759,620号明細書並びに米国特許第6,162,963号明細書、同第6,150,584号明細書、同第6,114,598号明細書、同第6,075,181号明細書及び同第5,939,598号明細書並びに日本特許第3068180B2号公報、同第3068506B2号公報及び同第3068507B2号公報でさらに論じられ詳述されている。Mendez et al.Nature Genetics 15:146-156(1997)及びGreen and Jakobovits J.Exp.Med.188:483-495(1998)、欧州特許第0463151B1号明細書、国際公開第94/02602号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第00/76310号パンフレット及び国際公開第03/47336号パンフレットも参照されたい。
別の手法では、GenPharm International,Inc.を含む他社が「ミニ遺伝子座」の手法を利用している。このミニ遺伝子座の手法において、外来性Ig遺伝子座は、このIg遺伝子座由来の断片(個々の遺伝子)を含めることにより模倣される。したがって、1つ以上のVH遺伝子、1つ以上のDH遺伝子、1つ以上のJH遺伝子、ミュー定常領域及び第2の定常領域(好ましくはガンマ定常領域)は、動物に挿入されるコンストラクトを形成する。この手法は、Surani et al.に対する米国特許5,545,807号明細書並びにそれぞれLonberg及びKayに対する米国特許第5,545,806号明細書、同第5,625,825号明細書、同第5,625,126号明細書、同第5,633,425号明細書、同第5,661,016号明細書、同第5,770,429号明細書、同第5,789,650号明細書、同第5,814,318号明細書、同第5,877,397号明細書、同第5,874,299号明細書及び同第6,255,458号明細書、Krimpenfort及びBernsに対する米国特許第5,591,669号明細書及び同第6,023.010号明細書、Berns et al.に対する米国特許第5,612,205号明細書、同第5,721,367号明細書及び同第5,789,215号明細書並びにChoi及びDunnに対する米国特許第5,643,763号明細書並びにGenPharm Internationalの米国特許出願第07/574,748号明細書、同第07/575,962号明細書、同第07/810,279号明細書、同第07/853,408号明細書、同第07/904,068号明細書、同第07/990,860号明細書、同第08/053,131号明細書、同第08/096,762号明細書、同第08/155,301号明細書、同第08/161,739号明細書、同第08/165,699号明細書、同第08/209,741号明細書に記載されている。欧州特許第0546073B1号明細書、国際公開第92/03918号パンフレット、国際公開第92/22645号パンフレット、国際公開第92/22647号パンフレット、国際公開第92/22670号パンフレット、国際公開第93/12227号パンフレット、国際公開第94/00569号パンフレット、国際公開第94/25585号パンフレット、国際公開第96/14436号パンフレット、国際公開第97/13852号パンフレット及び国際公開第98/24884号パンフレット並びに米国特許第5,981,175号明細書も参照されたい。さらにTaylor et al.(1992)、Chen et al.(1993)、Tuaillon et al.(1993)、Choi et al.(1993)、Lonberg et al.(1994)、Taylor et al.(1994)及びTuaillon et al.(1995)、Fishwild et al.(1996)も参照されたい。
Kirinも、マイクロセル融合によって大きい染色体片又は染色体全体が導入された、マウスからのヒト抗体の産生を実証した。欧州特許出願公開第773288号明細書及び同第843961号明細書を参照されたい。Xenerex Biosciencesは、有望なヒト抗体産生技術を開発している。この技術では、SCIDマウスをヒトリンパ細胞、例えばB細胞及び/又はT細胞で再構成する。次いで、マウスを抗原で免疫化し、抗原に対する免疫応答を生じさせることができる。米国特許第5,476,996号明細書、同第5,698,767号明細書及び同第5,958,765号明細書を参照されたい。
いくつかの実施形態では、本発明の結合構築物は、「単離された」又は「実質的に純粋な」結合構築物である。「単離された」又は「実質的に純粋な」は、本明細書に開示される結合構築物の記載に使用されるとき、その生産環境の成分から識別され、分離され且つ/又は回収されている構築物を意味する。好ましくは、結合構築物は、その生産環境由来の他の全ての成分との関連がないか又は実質的に関連がない。組換えトランスフェクト細胞から生じる成分などのその産生環境の混入成分は、通常、ポリペプチドについての診断又は治療用途を妨げる材料であり、これには、酵素、ホルモン及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を含み得る。単離されたタンパク質は、状況に応じて、広範囲のパーセント濃度、例えば総タンパク質含有量の5重量%~99.9重量%を構成し得ることが理解されている。ポリペプチドは、高い濃度レベルで作製されるように、誘導性プロモーター又は高発現プロモーターを使用することによって著しく高い濃度で作製され得る。この定義には、当技術分野で知られている多様な生物体及び/又は宿主細胞における結合構築物の産生が含まれる。好ましい実施形態では、結合構築物は、(1)スピニングカップシーケンサーを使用することによってN末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、又は(2)クーマシーブルー又は好ましくは銀染色を使用する非還元又は還元条件下でSDS-PAGEによって均一になるまで精製される。しかしながら、通常、単離された結合構築物は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
ペプチドは、共有結合ペプチド(アミド)結合によって連結されたアミノ酸モノマーの短鎖である。したがって、ペプチドは、広範な化学的クラスの生物学的オリゴマー及びポリマーに分類される。ペプチド又はポリペプチド鎖の一部であるアミノ酸は、「残基」と称され、連続番号が付され得る。環状ペプチドを除く全てのペプチドは、ペプチドの一端にN末端残基を有し、且つ他端にC末端残基を有する。オリゴペプチドは、ごく少数のアミノ酸からなる(通常、2~20)。ポリペプチドは、より長い連続した非分枝ペプチド鎖である。ペプチドは、サイズを基準としてタンパク質と区別され、独断的な基準としておよそ50以下のアミノ酸を含むと理解され得る。タンパク質は、通常、生物学的に機能的な方法で配置された1つ又は複数のポリペプチドからなる。ペプチド対ポリペプチド及びタンパク質に適用される実験技術の態様(例えば、電気泳動法、クロマトグラフィーなどの詳細)は、異なるが、ペプチドをポリペプチド及びタンパク質と区別するサイズ境界は、絶対的ではない。したがって、本発明に関連して、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、同義的に使用され得、用語「ポリペプチド」が好ましいことが多い。
ポリペプチドは、複数のポリペプチド分子からなる多量体(例えば、二量体、三量体及びより高次のオリゴマー)をさらに形成し得る。そのような二量体、三量体などを形成するポリペプチド分子は、同一であっても又は同一でなくてもよい。このような多量体の対応する高次構造は、したがってホモ又はヘテロ二量体、ホモ又はヘテロ三量体などと称される。ヘテロ多量体の例は、その天然に存在する形態において、2つの同一のポリペプチド軽鎖及び2つの同一のポリペプチド重鎖からなる完全長抗体又は免疫グロブリン分子である。「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などのような翻訳後修飾によって修飾がなされた天然の修飾ペプチド/ポリペプチド/タンパク質も指す。本明細書で言及される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、ペグ化などの化学修飾されたものでもあり得る。このような修飾は、当技術分野でよく知られており、本明細書で後述される。
結合構築物がその抗原に、表面プラズマ共鳴技術(例えば、BIACore,GE-Healthcare Uppsala,Sweden)又は速度論的排除アッセイ(KinExA,Sapidyne,Boise,Idaho)による測定で≦10-7Mの解離定数(KD)で結合する場合、その結合構築物は、その抗原に「特異的に結合する」又は「免疫特異的に結合する」と言われる。本発明によれば、結合構築物は、MAGEB2に特異的に結合するか又は免疫特異的に結合する。
しかしながら、異なる種における相同タンパク質間の配列類似性のために、その標的(ヒト標的など)に特異的に結合する結合構築物又は結合ドメインは、異なる種由来(例えば、非ヒト霊長類由来)の相同標的分子と交差反応し得る。したがって、「特異的/免疫特異的結合」という用語は、2つ以上の種のエピトープ又は構造的に関連するエピトープへの結合構築物又は結合ドメインの結合を含み得る。
「エピトープ」という用語は、抗体若しくは免疫グロブリン又は抗体若しくは免疫グロブリンの誘導体、断片若しくはバリアントなどの結合ドメインが特異的に結合する抗原又は特異的アミノ酸残基上の領域を指す。「エピトープ」は、抗原性であり、したがってエピトープという用語は、本明細書において「抗原性構造」又は「抗原決定基」と称する場合もある。したがって、結合ドメインは、「抗原相互作用部位」である。前記結合/相互作用は、「特異的認識」を定義するものとも理解される。
「エピトープ」は、タンパク質の三次元折畳みによって並列される連続したアミノ酸又は非連続アミノ酸の両方によって形成され得る。「線状エピトープ」は、連続したアミノ酸一次配列が認識されたエピトープを含むエピトープである。線状エピトープは、一般的には、特有の配列内に、少なくとも3個又は少なくとも4個、より一般的には少なくとも5個又は少なくとも6個又は少なくとも7個、多くの場合に約8個~約10個のアミノ酸又は10個を超えるアミノ酸を含む。
「立体構造エピトープ」は、線状エピトープとは対照的に、エピトープを含むアミノ酸の一次配列が、認識されるエピトープを定義する唯一の要素ではないエピトープ(例えば、アミノ酸の一次配列が必ずしも結合ドメインによって認識されないエピトープ)である。典型的には、立体構造エピトープは、線状エピトープと比較してより多くの数のアミノ酸を含み、不連続なアミノ酸配列を含む。立体構造エピトープの認識に関して、結合ドメインパラトープは、抗原、好ましくはペプチド若しくはタンパク質又はその断片の三次元構造を認識する(本発明との関連において、結合ドメインの1つに対する抗原性構造は、標的細胞表面抗原タンパク質内に含まれる)。例えば、タンパク質分子が折り畳まれて三次元構造が形成する場合、立体構造エピトープを形成する特定のアミノ酸及び/又はポリペプチド骨格が並列した状態になり、それにより抗体がそのエピトープを認識できるようになる。エピトープの立体構造を決定する方法としては、x線結晶構造解析、二次元核磁気共鳴(2D-NMR)分光分析及び部位特異的スピンラベル法並びに電子常磁性共鳴(EPR)分光法が挙げられるが、これらに限定されない。
免疫原としての又はスクリーニングアッセイに有用であるタンパク質、タンパク質の領域又はペプチドを同定するための様々な方法が当技術分野で知られている。一実施形態では、本明細書の実施例に記載されるように、MAGEB2タンパク質アミノ酸配列のシャノンエントロピー解析は、免疫原として使用することができる特定のペプチド配列を同定することができる。
免疫原として使用されると同定された例示的なMAGEB2ペプチドには、MAGEB2ペプチドa.a.43-76:SSVSGGAASSSPAAGIPQEPQRAPTTAAAAAAGV(N末端領域ペプチド)(配列番号2)、MAGEB2ペプチドa.a.95-125:SSSQASTSTKSPSEDPLTRKSGSLVQFLLYK(MHD N末端ヘリックスペプチド)(配列番号3)、MAGEB2ペプチドa.a.185-200:DLTDEESLLSSWDFPR(MHD中間ループペプチド)(配列番号4)が含まれる。
したがって、本発明の一実施形態では、配列番号2、3又は4のペプチドのいずれかを動物に投与することを含む、動物を免疫する方法が提供される。
別の実施形態では、配列番号2、3又は4のペプチドのいずれかで動物を免疫することと、前記抗体を単離することとを含む、単離抗体を生成する方法が提供される。さらなる実施形態では、本明細書に記載される、当技術分野で認められたステップを用いて、配列番号2、3又は4のペプチドのいずれかで動物を免疫することと、さらにモノクローナル抗体を生成することとを含む、単離モノクローナル抗体を生成する方法が提供される。
さらに別の実施形態では、配列番号2、3又は4のペプチドのいずれかで動物を免疫することを含むプロセスによって生成される単離抗体が提供される。
さらに他の実施形態では、配列番号2、3又は4のペプチドの断片を免疫原として使用することができる。したがって、本発明の一実施形態では、ペプチド免疫原は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32又は33個のアミノ酸からなる、MAGEB2ペプチドa.a.43-76:SSVSGGAASSSPAAGIPQEPQRAPTTAAAAAAGV(N末端領域ペプチド)(配列番号2)の断片を含む。
本発明の別の実施形態では、ペプチド免疫原は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個のアミノ酸からなる、MAGEB2ペプチドa.a.95-125:SSSQASTSTKSPSEDPLTRKSGSLVQFLLYK(MHD N末端ヘリックスペプチド)(配列番号3)の断片を含む。
本発明の別の実施形態では、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸からなるMAGEB2ペプチドa.a.185-200:DLTDEESLLSSWDFPR(MHD中間ループペプチド)(配列番号4)の断片を含む。
本発明のさらなる実施形態では、本発明に記載の結合構築物のいずれかと結合を競合する結合構築物が提供される。競合アッセイは、当技術分野でよく知られており、例示的なアッセイは、本明細書でさらに記載される。
他の実施形態において、スクリーニングに免疫原として使用することができる代替ペプチドを以下の表1に提供する。したがって、本発明は、表1を提供する。
Figure 2024513376000002
Figure 2024513376000003
Figure 2024513376000004
Figure 2024513376000005
Figure 2024513376000006
親和性
結合ドメインと、エピトープ又はエピトープを含む領域との間の相互作用は、結合ドメインが特定のタンパク質又は抗原上のエピトープ及び/又はエピトープを含む領域に対して測定可能な親和性を示し、且つ特に他に規定がなければ、MAGEB2以外のタンパク質又は抗原に対して顕著な結合又は反応性を示さないことを意味する。この親和性は、Biacoreアッセイなどの表面プラズモン共鳴アッセイ又は細胞ベースのアッセイなど、当業者に知られた様々な技術によって測定することができる。
「測定可能な親和性」は、約10-6M(KD)以上の親和性を有する結合を含む。好ましくは、結合親和性が約10-12~10-8M、10-12~10-9M、10-12~10-10M、10-11~10-8M、好ましくは約10-11~10-9Mである場合、結合を特異的とみなす。結合ドメインが標的と特異的に反応するか又は標的に結合するかどうかは、とりわけ、標的タンパク質又は抗原に対する前記結合ドメインの反応をMAGEB2以外のタンパク質又は抗原に対する前記結合ドメインの反応と比較することにより、容易に試験することができる。好ましくは、本発明の結合ドメインは、MAGEB2以外のタンパク質又は抗原に本質的又は実質的に結合しない。
特異性
用語「あまり結合しない」は、本発明の結合構築物又は結合ドメインがMAGEB2以外のタンパク質又は抗原に結合しないことを意味する。例えば、類似のアミノ酸配列を有するタンパク質、例えばMAGEA4又はMAGEA8への結合を示す結合構築物又は結合ドメインは、望ましい結合構築物ではない。
本発明において、MAGEB2結合構築物は、標的陰性細胞への結合の欠如によって証明されるように、それらの標的に対する驚くべきレベルの特異性及び選択性を有する。例えば、本明細書の実施例2及び3を参照されたい。
この特異性及び選択性は、オフターゲット結合及び任意の潜在的な誤読を制限、低減又は排除するため、診断アッセイにおける結合構築物の特性として非常に望ましいが、それを獲得するのは、困難である。
特異的結合は、結合ドメイン及び抗原のアミノ酸配列内の特定のモチーフによってもたらされると考えられる。したがって、結合は、それらの一次、二次及び/又は三次構造の結果として且つ前記構造の二次的改変の結果として生じる。抗原相互作用部位とその特異的抗原との特異的相互作用により、抗原に対する前記部位の単純な結合が生じ得る。さらに、抗原相互作用部位とその特異的抗原との特異的相互作用により、例えば抗原の立体構造変化の誘導、抗原のオリゴマー化などにより、代替的に又は追加的にシグナルの開始がもたらされ得る。
MAGEB2結合構築物
本発明は、MAGEB2に、特定の実施形態ではMAGEB2ペプチドのa.a.43-76:SSVSGGAASSSPAAGIPQEPQRAPTTAAAAAAGV(N末端領域ペプチド)(配列番号2)、a.a.95-125:SSSQASTSTKSPSEDPLTRKSGSLVQFLLYK(MHD N末端ヘリックスペプチド)(配列番号3)又はa.a.185-200:DLTDEESLLSSWDFPR(配列番号4)に結合するドメインを含む結合構築物を提供する。
以下の表2は、例示的なMAGEB2結合構築物、VH-CDR及びVL-CDRのアミノ酸配列を提供する。以下の表3は、例示的なMAGEB2結合構築物、VHドメイン及びVLドメインのアミノ酸配列を提供する。
Figure 2024513376000007
Figure 2024513376000008
一実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する単離された結合ドメインを提供し、その結合ドメインは、以下を含む:
a)配列番号229に示されるCDR-H1、配列番号230に示されるCDR-H2及び配列番号231に示されるCDR-H3を含むVH領域並びに配列番号85に示されるCDR-L1、配列番号86に示されるCDR-L2及び配列番号87に示されるCDR-L3を含むVL領域;又は
b)配列番号217に示されるCDR-H1、配列番号218に示されるCDR-H2及び配列番号219に示されるCDR-H3を含むVH領域並びに配列番号73に示されるCDR-L1、配列番号74に示されるCDR-L2及び配列番号75に示されるCDR-L3を含むVL領域;又は
c)配列番号235に示されるCDR-H1、配列番号236に示されるCDR-H2及び配列番号237に示されるCDR-H3を含むVH領域並びに配列番号91に示されるCDR-L1、配列番号92に示されるCDR-L2及び配列番号93に示されるCDR-L3を含むVL領域。
一実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する結合ドメインを含む単離された結合構築物を提供し、その結合ドメインは、以下を含む:
a)配列番号229に示されるCDR-H1、配列番号230に示されるCDR-H2及び配列番号231に示されるCDR-H3を含むVH領域並びに配列番号85に示されるCDR-L1、配列番号86に示されるCDR-L2及び配列番号87に示されるCDR-L3を含むVL領域;又は
b)配列番号217に示されるCDR-H1、配列番号218に示されるCDR-H2及び配列番号219に示されるCDR-H3を含むVH領域並びに配列番号73に示されるCDR-L1、配列番号74に示されるCDR-L2及び配列番号75に示されるCDR-L3を含むVL領域;又は
c)配列番号235に示されるCDR-H1、配列番号236に示されるCDR-H2及び配列番号237に示されるCDR-H3を含むVH領域並びに配列番号91に示されるCDR-L1、配列番号92に示されるCDR-L2及び配列番号93に示されるCDR-L3を含むVL領域。
一実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する単離された結合ドメインを提供し、その結合ドメインは、以下を含む抗体又は結合構築物と同じエピトープに結合する:
a)配列番号229に示されるCDR-H1、配列番号230に示されるCDR-H2及び配列番号231に示されるCDR-H3を含むVH領域並びに配列番号85に示されるCDR-L1、配列番号86に示されるCDR-L2及び配列番号87に示されるCDR-L3を含むVL領域;又は
b)配列番号217に示されるCDR-H1、配列番号218に示されるCDR-H2及び配列番号219に示されるCDR-H3を含むVH領域並びに配列番号73に示されるCDR-L1、配列番号74に示されるCDR-L2及び配列番号75に示されるCDR-L3を含むVL領域;又は
c)配列番号235に示されるCDR-H1、配列番号236に示されるCDR-H2及び配列番号237に示されるCDR-H3を含むVH領域並びに配列番号91に示されるCDR-L1、配列番号92に示されるCDR-L2及び配列番号93に示されるCDR-L3を含むVL領域。
一実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する結合ドメインを含む単離された結合構築物を提供し、その結合ドメインは、以下を含む抗体又は結合構築物と同じエピトープに結合する:
a)配列番号229に示されるCDR-H1、配列番号230に示されるCDR-H2及び配列番号231に示されるCDR-H3を含むVH領域並びに配列番号85に示されるCDR-L1、配列番号86に示されるCDR-L2及び配列番号87に示されるCDR-L3を含むVL領域;又は
b)配列番号217に示されるCDR-H1、配列番号218に示されるCDR-H2及び配列番号219に示されるCDR-H3を含むVH領域並びに配列番号73に示されるCDR-L1、配列番号74に示されるCDR-L2及び配列番号75に示されるCDR-L3を含むVL領域;又は
c)配列番号235に示されるCDR-H1、配列番号236に示されるCDR-H2及び配列番号237に示されるCDR-H3を含むVH領域並びに配列番号91に示されるCDR-L1、配列番号92に示されるCDR-L2及び配列番号93に示されるCDR-L3を含むVL領域。
一実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する単離された結合ドメインを提供し、その結合ドメインは、以下を含む:
a)配列番号347を含むVH領域及び配列番号346を含むVL領域;又は
b)配列番号339を含むVH領域及び配列番号338を含むVL領域;又は
c)配列番号351を含むVH領域及び配列番号350を含むVL領域。
一実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する結合ドメインを含む単離された結合構築物を提供し、その結合ドメインは、以下を含む:
a)配列番号347を含むVH領域及び配列番号346を含むVL領域;又は
b)配列番号339を含むVH領域及び配列番号338を含むVL領域;又は
c)配列番号351を含むVH領域及び配列番号350を含むVL領域。
一実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する単離された結合ドメインを提供し、その結合ドメインは、以下を含む抗体又は結合構築物と同じエピトープに結合する:
a)配列番号347を含むVH領域及び配列番号346を含むVL領域;又は
b)配列番号339を含むVH領域及び配列番号338を含むVL領域;又は
c)配列番号351を含むVH領域及び配列番号350を含むVL領域。
一実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する結合ドメインを含む単離された結合構築物を提供し、その結合ドメインは、以下を含む抗体又は結合構築物と同じエピトープに結合する:
a)配列番号347を含むVH領域及び配列番号346を含むVL領域;又は
b)配列番号339を含むVH領域及び配列番号338を含むVL領域;又は
c)配列番号351を含むVH領域及び配列番号350を含むVL領域。
別の実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する結合ドメインを含む単離された結合構築物を提供し、その結合ドメインは、本明細書の表21~23の配列のいずれかに示される任意のVH領域及び対応するVL領域からなる群から選択されるVH領域を含む。
別の実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する結合ドメインを含む単離された結合構築物を提供し、その結合ドメインは、本明細書の表23の配列のいずれかに示される任意のVH領域及び対応するVL領域からなる群から選択されるVH領域を含む抗体又は結合構築物と同じエピトープに結合する。
別の実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する結合ドメインを含む単離された結合構築物を提供し、その結合ドメインは、本明細書の表22の配列のいずれかに示される任意のVH領域からなる群から選択されるVH領域のCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3を含み、さらに、本明細書の表21の配列のいずれかに示される任意のVL領域からなる群から選択されるVL領域の対応するCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3を含む。
別の実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する結合ドメインを含む単離された結合構築物を提供し、その結合ドメインは、本明細書の表22の配列のいずれかに示される任意のVH領域からなる群から選択されるVH領域のCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3を含み、さらに、本明細書の表21の配列のいずれかに示される任意のVL領域からなる群から選択されるVL領域の対応するCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3を含む抗体又は結合構築物と同じエピトープに結合する。
別の実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する結合ドメインを含む単離された結合構築物を提供し、その結合ドメインは本明細書の表25の配列のいずれかから選択されるVH及びVL領域コンセンサス配列を含む。
別の実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合する結合ドメインを含む単離された結合構築物を提供し、その結合ドメインは、本明細書の表25の配列のいずれかに示される任意のVH領域からなる群から選択されるVH領域コンセンサス配列のCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3を含み、さらに、本明細書の表25の配列のいずれかに示される任意のVL領域からなる群から選択されるVL領域コンセンサス配列の対応するCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3を含む。
例示的な結合構築物の完全配列を以下に示す。
1C3_LC(配列番号555)
Figure 2024513376000009
1C3_HC(配列番号556)
Figure 2024513376000010
1I14_LC(配列番号557)
Figure 2024513376000011
1I14_HC(配列番号558)
Figure 2024513376000012
1H17_LC(配列番号559)
Figure 2024513376000013
1H17_HC(配列番号560)
Figure 2024513376000014
競合的結合
抗体又は結合構築物が別の所与の抗体又は結合構築物と抗原(MAGEB2など)への結合に関して競合するか否かは、競合ELISAなどの競合アッセイで測定することができる。アビジン結合マイクロ粒子(ビーズ)を使用することもできる。アビジンでコーティングされたELISAプレートと同様に、ビオチン化タンパク質と反応させる場合、これらのビーズのそれぞれを、アッセイを実施し得る基質として使用することができる。抗原をビーズにコーティングし、次に、第1の抗体でプレコーティングする。二次抗体を加え、任意のさらなる結合を決定する。フローサイトメトリーによって読み出しを行う。好ましくは、MAGEB2を天然に発現する細胞又はMAGEB2で安定に若しくは一過性に形質転換した細胞を使用して、細胞内で発現したMAGEB2への結合を可能にする細胞ベースの競合アッセイを用いる。「結合について競合する」という用語は、これに関連して、上に開示したアッセイのいずれか1つ、好ましくは細胞ベースアッセイによって決定した場合に2個の試験抗体間の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%で競合が起こることを意味する。
競合的抗体結合アッセイには、細胞表面に結合した抗原に対する2個の抗体/結合構築物の競合的結合を決定するアッセイが含まれる。一般的な方法は、細胞によって発現する同じ抗原への2個の抗体/結合構築物A及びBの結合を検出することを目的として、
細胞を抗体/結合構築物Aとプレインキュベートすることにより抗原をブロックした後、標識した抗体/結合構築物Bを最大下で添加し、Aの非存在下における結合と比較したBの結合を検出するステップ;
標識した抗体/結合構築物Bの最大下量の存在下で抗体/結合構築物Aのタイトレーション(すなわち種々の量を添加)を行い、Bの結合に及ぼす影響を検出するステップ;又はA及びBをコタイトレーションするステップであって、両方の抗体/結合構築物を最大濃度で一緒にインキュベートし、全結合がA又はB単独の場合の結合と等しいか又はそれを超えるかどうかを検出する、ステップ
を含み得、すなわち抗体/結合構築物の添加の順序又は相対量によって影響される可能性のない方法である。
2個の抗体/結合構築物A及びBが抗原に対して競合する場合、抗体は、抗体の添加の順序とは無関係にブロッキングアッセイにおいて互いに競合することが非常に多い。換言すれば、アッセイがいずれかの方向で行われた場合、競合が検出される。しかしながら、常にそうであるとは限らず、ある状況下では、抗体の添加順序又はアッセイの方向が生成されるシグナルに影響を及ぼし得る。これは、潜在的に競合する抗体/結合構築物の親和性又はアビディティの違いによるものであり得る。添加の順序が生成されるシグナルに有意に影響する場合、少なくとも1つの順序で競合が検出されたなら、2個の抗体/結合構築物は競合すると結論付けられる。
エピトープアミノ酸残基
標的ポリペプチドと、例えば本明細書で企図される構築物の結合ドメインとの間の相互作用の構造分析は、結合相互作用に関与する標的エピトープのアミノ酸残基を提供する。特定の実施形態では、標的-結合剤相互作用の結晶構造は、これらのアミノ酸残基を提供することができる。他の実施形態では、結合相互作用に関与するアミノ酸残基を確認するために様々な他の分析を行うことができる。例えば、Xscan、アラニンスキャニング、アルギニンスキャニング及び当業者に知られた他の技術である。本発明において、結合構築物は、特定のペプチド免疫原を用いて作製され、したがってこれらの特定のペプチド配列に結合しなければならない。
本明細書において配列番号2、3又は4で提供されるペプチドなど、ペプチドが免疫原として使用される実施形態では、単離される抗体は、ペプチド免疫原の全て又はその断片を含むエピトープに結合すると予想される。このエピトープは、ペプチド免疫原アミノ酸配列の全て又はその断片を含む線状エピトープであり得る。代わりに、より長いペプチド免疫原の場合により可能性が高いが、このエピトープは、ペプチド免疫原内からの不連続アミノ酸配列を含む立体構造エピトープであり得る。したがって、本発明の一実施形態では、結合構築物(例えば、抗体)が結合するエピトープは、MAGEB2ペプチドa.a.43-76:SSVSGGAASSSPAAGIPQEPQRAPTTAAAAAAGV(N末端領域ペプチド)(配列番号2)を含む。
別の実施形態では、結合構築物(例えば、抗体)が結合するエピトープは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32又は33個のアミノ酸からなる、MAGEB2ペプチドa.a.43-76:SSVSGGAASSSPAAGIPQEPQRAPTTAAAAAAGV(N末端領域ペプチド)(配列番号2)の断片を含む。
別の実施形態では、結合構築物(例えば、抗体)が結合するエピトープは、MAGEB2ペプチドa.a.43-76:SSVSGGAASSSPAAGIPQEPQRAPTTAAAAAAGV(N末端領域ペプチド)(配列番号2)の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又は少なくとも5つの不連続なアミノ酸配列断片を含み、各不連続なアミノ酸配列断片は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸からなる。
本発明の別の実施形態では、本発明の結合構築物が結合するエピトープは、MAGEB2ペプチドa.a.95-125:SSSQASTSTKSPSEDPLTRKSGSLVQFLLYK(MHD N末端ヘリックスペプチド)(配列番号3)を含む。
別の実施形態では、結合構築物(例えば、抗体)が結合するエピトープは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個のアミノ酸からなる、MAGEB2ペプチドa.a.95-125:SSSQASTSTKSPSEDPLTRKSGSLVQFLLYK(MHD N末端ヘリックスペプチド)(配列番号3)の断片を含む。
別の実施形態では、結合構築物(例えば、抗体)が結合するエピトープは、MAGEB2ペプチドa.a.95-125:SSSQASTSTKSPSEDPLTRKSGSLVQFLLYK(MHD N末端ヘリックスペプチド)(配列番号3)の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又は少なくとも5つの不連続なアミノ酸配列断片を含み、各不連続なアミノ酸配列断片は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸からなる。
本発明の別の実施形態では、本発明の結合構築物が結合するエピトープは、MAGEB2ペプチドa.a.185-200:DLTDEESLLSSWDFPR(MHD中間ループペプチド)(配列番号4)を含む。
別の実施形態では、結合構築物(例えば、抗体)が結合するエピトープは、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸からなるMAGEB2ペプチドa.a.185-200:DLTDEESLLSSWDFPR(MHD中間ループペプチド)(配列番号4)の断片を含む。
別の実施形態では、結合構築物(例えば、抗体)が結合するエピトープは、MAGEB2ペプチドa.a.185-200:DLTDEESLLSSWDFPR(MHD中間ループペプチド)(配列番号4)の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又は少なくとも5つの不連続なアミノ酸配列断片を含み、各不連続なアミノ酸配列断片は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸からなる。
一実施形態では、本発明は、配列番号2、3、4又は388~554のいずれかのペプチドを含むエピトープに結合する結合構築物を提供する。
エピトープに結合する結合ドメインの領域は、「パラトープ」と呼ばれる。特異的結合は、結合ドメイン及び抗原のアミノ酸配列内の特定のモチーフによってもたらされると考えられる。したがって、結合は、それらの一次、二次及び/又は三次構造の結果として且つ前記構造の潜在的な二次的改変の結果として生じる。
用語「Fc部分」又は「Fc単量体」は、本発明との関係では、免疫グロブリン分子のCH2ドメインの機能を有する少なくとも1つのドメイン及びCH3ドメインの機能を有する少なくとも1つのドメインを含むポリペプチドを意味する。「Fc単量体」という用語から明らかなように、それらのCHドメインを含むポリペプチドは、「ポリペプチド単量体」である。Fc単量体は、少なくとも重鎖の第1の定常領域免疫グロブリンドメイン(CH1)を除く免疫グロブリンの定常領域の断片を含むが、少なくとも1つのCH2ドメインの機能的部分及び1つのCH3ドメインの機能的部分を維持しており、CH2ドメインはCH3ドメインのアミノ末端側にあるポリペプチドであり得る。
この定義の一実施形態では、Fc単量体は、Ig-Fcヒンジ領域、CH2領域及びCH3領域の一部を含むポリペプチド定常領域であり得、ヒンジ領域はCH2ドメインのアミノ末端側にある。本発明のヒンジ領域は二量体化を促進することが想定される。このようなFcポリペプチド分子は、例えば、免疫グロブリン領域のパパイン消化(当然のことながら、2つのFcポリペプチドの二量体を生じる)によって入手され得るが、これに限定されない。本定義の別の態様において、Fc単量体は、CH2領域及びCH3領域の一部を含むポリペプチド領域であり得る。このようなFcポリペプチド分子は、例えば、免疫グロブリン分子のペプシン消化によって入手され得るが、これに限定されない。
一実施形態では、Fc単量体のポリペプチド配列は、IgG1 Fc領域、IgG2 Fc領域、IgG3 Fc領域、IgG4 Fc領域、IgM Fc領域、IgA Fc領域、IgD Fc領域及びIgE Fc領域のFcポリペプチド配列と実質的に同様である。(例えば、Padlan,Molecular Immunology,31(3),169-217(1993)を参照されたい)。免疫グロブリン間にいくつかの変種が存在するため、且つ単に明確性のために、Fc単量体は、IgA、IgD及びIgGの末尾の2つの重鎖定常領域免疫グロブリンドメイン並びにIgE及びIgMの末尾の3つの重鎖定常領域免疫グロブリンドメインを指す。述べたように、Fc単量体は、これらのドメインのN末端側に柔軟なヒンジも含み得る。IgA及びIgMの場合、Fc単量体は、J鎖を含み得る。IgGの場合、Fc部分は、免疫グロブリンドメインCH2及びCH3並びに最初の2つのドメインとCH2との間のヒンジを含む。
Fc部分の境界は、機能的ヒンジを含むヒトIgG重鎖Fc部分の一例を変化させ得るが、CH2及びCH3ドメインは、例えば、(ヒンジドメインの-以下の表4のD234に対応する)残基D231~P476、それぞれCH3ドメインのカルボキシル側末端のL476(IgG4の場合)を含むと定義することができる(ここで、付番は、Kabatに従う)。ペプチドリンカーを介して互いに融合された2個のFc部分又はFcモノマーは、scFcドメインとも定義され得る本発明の結合構築物の第3のドメインを定義する。
本発明の一実施形態では、本明細書に開示されるscFcドメイン、それぞれ互いに融合されたFcモノマーは、結合構築物の第3のドメインにのみ含まれることが想定される。いくつかの実施形態において、IgGヒンジ領域は、表4に示されるようなKabatの付番を使用する類推によって同定することができる。上記に沿って、本発明のヒンジドメイン/領域の場合、最小要件は、Kabat付番によるD231 D234~P243のIgG1配列ストレッチに対応するアミノ酸残基を含むことが想定される。同様に、本発明のヒンジドメイン/領域は、IgG1ヒンジ配列DKTHTCPPCP(配列番号4)を含むか又はそれからなることが想定される(以下の表4に示すストレッチD234~P243に対応する-ヒンジ領域が依然として二量体化を促進する場合、前記配列の変形も想定される)。本発明の好ましい実施形態において、結合構築物の第3のドメイン内のCH2ドメインのKabat位置314のグリコシル化部位は、N314X置換によって除去される(ここで、Xは、Q以外の任意のアミノ酸である)。前記置換は、好ましくは、N314G置換である。より好ましい実施形態では、前記CH2ドメインは、以下の置換(位置は、Kabatに従う)V321C及びR309Cを含む(これらの置換は、Kabat位置309及び321にドメイン内システインジスルフィド架橋を導入する)。
Figure 2024513376000015
本発明のさらなる実施形態では、ヒンジドメイン/領域は、IgG2サブタイプヒンジ配列ERKCCVECPPCP(配列番号5)、IgG3サブタイプヒンジ配列ELKTPLDTTHTCPRCP(配列番号6)若しくはELKTPLGDTTHTCPRCP(配列番号7)及び/又はIgG4サブタイプヒンジ配列ESKYGPPCPSCP(配列番号8)を含むか又はそれからなる。IgG1サブタイプヒンジ配列は、以下の1つのEPKSCDKTHTCPPCP(配列番号9)であり得る。したがって、これらのコアヒンジ領域も本発明に関連して想定される。
IgG CH2及びIgG CH3ドメインの位置及び配列は、表5に記載されるKabat付番を用いた類似性によって同定され得る。
Figure 2024513376000016
本発明の一実施形態では、第1のFc単量体又は両方のFc単量体のCH3ドメイン内の太字で強調表示されたアミノ酸残基は、欠失される。
古典的な完全長抗体又は免疫グロブリンでは、各軽(L)鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重(H)鎖に連結される一方、2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて1つ以上のジスルフィド結合によって互いに連結される。VHに最も近い重鎖定常(CH)ドメインは、通常、CH1と呼ばれる。定常(「C」)ドメインは、抗原結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び補体活性化(補体依存性細胞傷害、CDC)などの様々なエフェクター機能を示す。抗体のFc領域は、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体及び補体系のいくつかのタンパク質と相互作用する古典的抗体の「テール」領域である。IgG、IgA及びIgD抗体アイソタイプでは、Fc領域は、抗体の2個の重鎖の第2及び第3の定常ドメイン(CH2及びCH3)に由来する2個の同一のタンパク質断片から構成される。IgM及びIgEのFc領域は、各ポリペプチド鎖で3つの重鎖定常ドメイン(CH2、CH3及びCH4)を含む。Fc領域は、1つ又は複数のジスルフィド及び非共有結合性相互作用により一体に保持されたいわゆる「ヒンジ」領域の一部も含む。天然に存在するIgGのFc領域は、高度に保存されたN-グリコシル化部位を担持している。Fc断片のグリコシル化は、Fc受容体媒介活性に必須である。
本発明のいくつかの実施形態では、第3のドメインの1つ又は好ましくは各々(両方)のポリペプチド単量体のCH2ドメインは、ドメイン内システインジスルフィド架橋を含む。当技術分野で知られているように、用語「システインジスルフィド架橋」は、一般構造R-S-S-Rを有する官能基を指す。この結合は、SS結合又はジスルフィド架橋又はシステインクランプとも呼ばれ、システイン残基の2つのチオール基の結合によって誘導される。特定の実施形態では、成熟抗体構築物中でシステインジスルフィド架橋を形成するシステインは、309及び321(Kabat付番)に対応するCH2ドメインのアミノ酸配列に導入される。他の実施形態では、システインクランプは、結合構築物の他のドメインにおいて導入される。例えば、米国特許出願公開第2016/0193295号明細書も参照されたい。
本発明の一実施形態では、CH2ドメインのKabat位置314のグリコシル化部位が除去される。このグリコシル化部位の除去は、N314X置換によって達成されることが好ましく、ここで、Xは、Q以外の任意のアミノ酸である。前記置換は、好ましくは、N314Gである。より好ましい実施形態では、前記CH2ドメインは、以下の置換(位置は、Kabatに従う)V321C及びR309Cを含む(これらの置換は、Kabat位置309及び321にドメイン内システインジスルフィド架橋を導入する)。
結合構築物の共有結合修飾も本発明の範囲内に含まれ、常にではないが、一般に翻訳後に行われる。例えば、結合構築物の特定のアミノ酸残基を、選択された側鎖又はN末端若しくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることにより、結合構築物のいくつかのタイプの共有結合修飾が分子に導入される。
システイニル残基は、最も一般的には、α-ハロアセテート(及び対応するアミン)、例えばクロロ酢酸又はクロロアセトアミドと反応して、カルボキシメチル又はカルボキシアミドメチル誘導体を得る。
システイニル残基は、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(5-イミドゾイル)プロピオン酸、リン酸クロロアセチル、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロメルクリ安息香酸、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノール又はクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応によっても誘導体化される。
ヒスチジル残基は、pH5.5~7.0でのジエチルピロカーボネートとの反応によって誘導体化され、なぜなら、この薬剤は、ヒスチジル側鎖に対して比較的特異的であるためである。パラ-ブロモフェナシルブロミドも有用であり、この反応は、好ましくは、pH6.0の0.1Mカコジル酸ナトリウム中で行われる。リシニル及びアミノ末端残基は、コハク酸又は他のカルボン酸無水物と反応する。これらの薬剤による誘導体化は、リシニル残基の電荷を反転させる効果を有する。アルファ-アミノ含有残基を誘導体化するための他の好適な試薬としては、ピコリンイミド酸メチルなどのイミドエステル、リン酸ピリドキサール、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O-メチルイソ尿素、2,4-ペンタンジオン及びグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応が挙げられる。
アルギニル残基は、1つ又は複数の従来型の試薬、とりわけフェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン及びニンヒドリンとの反応により修飾される。グアニジン官能基のpKaが高いため、アルギニン残基の誘導体化は、反応をアルカリ条件下で実施する必要がある。さらに、これらの試薬は、リシンの基及びアルギニンイプシロン-アミノ基と反応し得る。
チロシル残基の特異的修飾は、特に芳香族ジアゾニウム化合物又はテトラニトロメタンとの反応によるチロシル残基へのスペクトル標識の導入を目的として行われる場合がある。最も一般的には、N-アセチルイミダゾール及びテトラニトロメタンがそれぞれO-アセチルチロシル種及び3-ニトロ誘導体を形成するために使用される。放射免疫アッセイに使用するための標識タンパク質を調製するために125I又は131Iを使用してチロシル残基をヨウ素化し、上記のクロラミンT法が適している。
カルボキシル側基(アスパルチル又はグルタミル)は、カルボジイミド(R’-N=C=N-R’)との反応によって選択的に修飾され、ここで、R及びR’は、任意選択的に、異なるアルキル基、例えば1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-4-エチル)カルボジイミド又は1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドである。さらに、アスパルチル及びグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニル及びグルタミニル残基に変換される。
二官能性物質による誘導体化は、本発明の結合構築物を、様々な方法に使用するための非水溶性の支持マトリックス又は支持表面に架橋するのに有用である。一般的に使用される架橋剤としては、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、例えば4-アジドサリチル酸とのエステルなどのN-ヒドロキシスクシンイミドエステル、3,3-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)などのジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル及びビス-N-マレイミド-1,8-オクタンなどの二官能性マレイミドが挙げられる。メチル-3-[(p-アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートなどの誘導体化剤は、光の存在下で架橋を形成することができる光活性化可能な中間体を生じる。代わりに、臭化シアン活性化炭水化物などの反応性非水溶性マトリックス並びに米国特許第3,969,287号明細書、米国特許第3,691,016号明細書、米国特許第4,195,128号明細書、米国特許第4,247,642号明細書、米国特許第4,229,537号明細書及び米国特許第4,330,440号明細書に記載される反応性基質がタンパク質固定化に利用される。グルタミニル及びアスパラギニル残基は、多くの場合、脱アミド化されて、それぞれ対応するグルタミル残基及びアスパルチル残基になる。代わりに、これらの残基は、弱酸性条件下で脱アミド化される。これらの残基のいずれの形態も本発明の範囲内に含まれる。
他の修飾としては、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman&Co.,San Francisco,1983,pp.79-86)、N末端アミンのアセチル化並びに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
本発明の範囲内に含まれる結合構築物の別の種類の共有結合修飾は、タンパク質のグリコシル化パターンを変化させることを含む。当技術分野で知られているように、グリコシル化パターンは、タンパク質の配列(例えば、以下で論じる特定のグリコシル化アミノ酸残基の存在又は非存在)又はそのタンパク質を産生する宿主細胞若しくは生物体の両方に依存し得る。特定の発現系について以下で論じる。
ポリペプチドのグリコシル化は、通常、N結合又はO結合のいずれかである。N結合は、糖鎖のアスパラギン残基側鎖への結合を指す。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への糖鎖の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を生成する。O結合型グリコシル化は、糖であるN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロースの1つがヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はトレオニンに結合することを指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリシンも使用され得る。
結合構築物へのグリコシル化部位の付加は、上記のトリペプチド配列の1つ又は複数を含むようにアミノ酸配列を変更することによって都合よく達成される(N結合型グリコシル化部位の場合)。改変は、1つ以上のセリン残基若しくはトレオニン残基の開始配列への付加又はこれによる開始配列への置換によってもなされ得る(O結合型グリコシル化部位の場合)。容易にするために、結合構築物のアミノ酸配列は、好ましくは、所望のアミノ酸に翻訳するコドンが生成されるように、特にポリペプチドをコードするDNAを予め選択された塩基で変異させることにより、DNAレベルでの変化によって変更される。
結合構築物上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、グリコシドのタンパク質への化学的又は酵素的結合によるものである。これらの手順は、N及びO結合型グリコシル化のためのグリコシル化能力を有する宿主細胞においてタンパク質の産生を必要としないという点で有利である。使用される結合様式に応じて、糖は、(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)例えばシステインなどにおける遊離スルフヒドリル基、(d)例えばセリン、トレオニン又はヒドロキシプロリンなどにおける遊離ヒドロキシル基、(e)例えばフェニルアラニン、チロシン又はトリプトファンなどにおける芳香族残基、又は(f)グルタミンのアミド基に結合され得る。これらの方法は、国際公開第87/05330号パンフレット及びAplin and Wriston,1981,CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259-306に記載されている。
出発結合構築物上に存在する糖鎖の除去は、化学的に又は酵素で達成され得る。化学的脱グリコシル化には、化合物トリフルオロメタンスルホン酸又は均等な化合物へのタンパク質の曝露が必要となる。この処理により、ポリペプチドは無傷な状態のままで、結合している糖(N-アセチルグルコサミン又はN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんど又は全ての糖が切断される。化学的脱グリコシル化については、Hakimuddin et al.,1987,Arch.Biochem.Biophys.259:52及びEdge et al.,1981,Anal.Biochem.118:131によって説明されている。ポリペプチド上の糖鎖の酵素的切断は、Thotakura et al.,1987,Meth.Enzymol.138:350によって説明されているように、種々のエンドグリコシダーゼ及びエキソグリコシダーゼの使用によって達成することができる。潜在的なグリコシル化部位でのグリコシル化は、Duskin et al.,1982,J.Biol.Chem.257:3105によって記載されているように、化合物ツニカマイシンの使用によって妨げられ得る。ツニカマイシンは、タンパク質-N-グリコシド結合の形成を遮断する。
結合構築物の他の修飾も本明細書で企図されている。例えば、結合構築物の別の種類の共有結合修飾は、米国特許第4,640,835号明細書、同第4,496,689号明細書、同第4,301,144号明細書、同第4,670,417号明細書、同第4,791,192号明細書又は同第4,179,337号明細書に記載されている方法において、結合構築物を、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーなどの様々なポリオール(これらに限定されない)を含む様々な非タンパク質性ポリマーに連結させることを含む。さらに、当技術分野で知られているように、例えばPEGなどのポリマーの添加を容易にするために、結合構築物内の様々な位置でアミノ酸置換を行うことができる。
いくつかの実施形態では、本発明の結合構築物の共有結合修飾は、1つ以上の標識の付加を含む。潜在的な立体障害を低減するために、様々な長さのスペーサーアームを介して標識基を結合構築物に結合し得る。タンパク質を標識するための様々な方法が当技術分野で知られており、本発明を実施する際に使用することができる。「標識」又は「標識基」という用語は、任意の検出可能な標識を指す。一般に、標識は、これが検出されることとなるアッセイに応じて、種々のクラスに分けられ、以下の例が挙げられるが、これらに限定されない:放射性同位体又は放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、89Zr、90Y、99Tc、111In、125I、131I)などの放射性又は重同位体であり得る同位体標識、磁気標識(例えば、磁性粒子)酸化還元活性部分、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、化学発光基及び「低分子」蛍光体又はタンパク質性蛍光体であり得るフルオロフォアなどの光学色素(発色団、蛍光体及びフルオロフォアを含むが、これらに限定されない)、酵素群(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、ビオチン化基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)。
「蛍光標識」は、その固有の蛍光特性によって検出され得る任意の分子を意味する。好適な蛍光標識としては、以下に限定されないが、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン類、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、Cascade BlueJ、テキサスレッド、IAEDANS、EDANS、BODIPY FL、LC Red 640、Cy 5、Cy 5.5、LC Red 705、オレゴングリーン、Alexa-Fluor色素(Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680)、Cascade Blue、Cascade Yellow及びR-フィコエリトリン(PE)(Molecular Probes、Eugene、OR)、FITC、ローダミン及びテキサスレッド(Pierce、Rockford、IL)、Cy5、Cy5.5、Cy7(Amersham Life Science、Pittsburgh、PA)が挙げられる。フルオロフォアを含む好適な光学色素は、Richard P.HauglandによるMolecular Probes Handbookに記載されている。
好適なタンパク質性蛍光標識としては、以下に限定されないが、ウミシイタケ属(Renilla)、ヒロバネウミエラ属(Ptilosarcus)又はオワンクラゲ属(Aequorea)種のGFP(Chalfie et al.,1994,Science 263:802-805)、EGFP(Clontech Laboratories,Inc.、Genbankアクセッション番号U55762)を含む緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質(BFP、Quantum Biotechnologies,Inc.1801 de Maisonneuve Blvd.West,8th Floor,Montreal,Quebec,Canada H3H 1J9;Stauber,1998,Biotechniques 24:462-471;Heim et al.,1996,Curr.Biol.6:178-182)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP、Clontech Laboratories,Inc.)、ルシフェラーゼ(Ichiki et al.,1993,J.Immunol.150:5408-5417)、βガラクトシダーゼ(Nolan et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2603-2607)及びRenilla(国際公開第92/15673号パンフレット、国際公開第95/07463号パンフレット、国際公開第98/14605号パンフレット、国際公開第98/26277号パンフレット、国際公開第99/49019号パンフレット、米国特許第5,292,658号明細書、同第5,418,155号明細書、同第5,683,888号明細書、同第5,741,668号明細書、同第5,777,079号明細書、同第5,804,387号明細書、同第5,874,304号明細書、同第5,876,995号明細書、同第5,925,558号明細書)も挙げられる。
ロイシンジッパードメインは、それらが見出されるタンパク質のオリゴマー化を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは元来、種々の異なるタンパク質において発見されて以来、いくつかのDNA結合タンパク質において同定された(Landschulz et al.,1988,Science 240:1759)。知られたロイシンジッパーの中には、天然に存在するペプチド及び二量化する又は三量化するその誘導体がある。可溶性オリゴマータンパク質を製造するのに好適なロイシンジッパードメインの例がPCT出願の国際公開第94/10308号パンフレットに説明されており、且つ肺サーファクタントタンパク質D(SPD)に由来するロイシンジッパーがHoppe et al.,1994,FEBS Letters 344:191に説明されている。それに融合した異種タンパク質の安定した三量化を可能にする修飾ロイシンジッパーの使用は、Fanslow et al.,1994,Semin.Immunol.6:267-78に記載されている。
本発明の結合構築物は、例えば、分子の単離に役立つか、又は分子の適合した薬物動態プロファイルに関する追加のドメインも含み得る。結合構築物の単離に役立つドメインは、単離方法、例えば単離カラムにより捕捉できるペプチドモチーフ又は二次的に導入される部分から選択され得る。そのようなさらなるドメインの非限定的な実施形態は、Myc-タグ、HAT-タグ、HA-タグ、TAP-タグ、GST-タグ、キチン結合ドメイン(CBD-タグ)、マルトース結合タンパク質(MBP-タグ)、Flag-タグ、Strep-タグ及びそれらのバリアント(例えば、StrepII-タグ)及びHis-タグとして知られるペプチドモチーフを含む。本明細書で開示される結合構築物の全ては、分子のアミノ酸配列中の連続するHis残基、好ましくは5つ、より好ましくは6つのHis残基(ヘキサヒスチジン)のリピートとして一般に知られるHisタグドメインを含み得る。Hisタグは、例えば、結合構築物のN末端又はC末端に位置し得、好ましくはC末端に位置する。最も好ましくは、ヘキサ-ヒスチジンタグ(HHHHHH)(配列番号30)は、ペプチド結合を介して本発明による結合構築物のC末端に連結される。加えて、持続放出用途及び薬物動態プロファイル向上のために、PLGA-PEG-PLGAのコンジュゲート系をポリヒスチジンタグと組み合わせ得る。
診断方法
本明細書で提供される結合構築物は、生物学的試料中のMAGEB2を検出するために有用であり、MAGEB2に関連する疾患及び/又は病態を検出、診断又はモニターする診断目的のために使用することができる。
開示される結合構築物は、例えば、当業者に知られた古典的な免疫組織学的方法(例えば、Tijssen,1993,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,Vol 15(Eds R.H.Burdon and P.H.van Knippenberg,Elsevier,Amsterdam);Zola,1987,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147-158(CRC Press,Inc.);Jalkanen et al.,1985,J.Cell.Biol.101:976-985;Jalkanen et al.,1987,J.Cell Biol.105:3087-3096)を使用して、試料中のMAGEB2の存在を検出する手段を提供する。MAGEB2の検出は、インビボでもインビトロでも行うことができるが、患者から得られた細胞を含む試料に対してインビトロで行うことが好ましい。ヒト組織、例えば腫瘍組織におけるMAGEB2発現を検出するために使用される方法は、定性的、半定量的又は定量的であり得る。例えば、生物学的試料中のタンパク質レベルを検出するための当技術分野で認められた抗体に基づく方法としては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ、電気化学発光(ECL)アッセイ、表面プラズモン共鳴、ウェスタンブロット、免疫沈降、蛍光活性化細胞選別(FACS)、免疫蛍光、免疫組織化学などが挙げられるが、これらに限定されない。生物学的試料中のMAGEB2発現を検出する方法は、対照試料(陰性対照及び陽性対照)を含み得る。例えば、陰性対照試料は、MAGEB2タンパク質を含有しない試料であり得、陽性対照試料は、MAGEB2タンパク質を含有する試料である。結果を陰性対照及び陽性対照と比較することにより、生体試料中のMAGEB2の有無を確認することができる。
特定の実施形態では、結合構築物は、免疫組織化学(IHC)アッセイで使用することができる。これらのIHCアッセイは、一部の例では自動化されている、最新の高スループットプラットフォーム上で実施することができる。例えば、Roche-Ventana BenchMark ULTRAシステム。
IHCは、組織試料中の標的抗原に特異的に結合する抗体などの結合構築物の使用を含む、一般に使用されるアッセイである。これにより、アッセイユーザは、標的抗原が組織試料中に存在するか否かを確認することができる。
免疫組織化学的方法は、当技術分野でよく知られており、例えばImmunohistochemical Staining Methods 6th Edition 2013,Taylor C R,Rudbeck L,eds.,Dako North America(www.dako.comで教育ガイド「Immunohistochemical Staining Method guide」として入手可能)に記載されている。免疫組織化学的染色は、固定組織切片又は凍結組織切片で行うことができる。固定組織切片、例えばホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片を使用する場合、手順は、一般に、以下の例示的な行程を使用することができる:(例えば、生検による)腫瘍組織試料の取得、腫瘍試料の固定、包埋(例えば、パラフィン中);切片化及びマウント;抗原回復;一次抗体(例えば、本明細書に記載のMAGEB2抗体)とインキュベーション、(例えば、抗原/抗体複合体シグナルの増幅後に)検出及び熟練した専門家による解釈(例えば、当技術分野で認められたスコアリングシステムを使用)。
好適な非限定的固定剤としては、例えば、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、酢酸、アセトン、テトロキシドオスミウム、クロム酸、塩化水銀、ピクリン酸、アルコール(例えば、メタノール、エタノール)、ジェンダー液、ロスマン液、B5固定液、ブアン液、カルノア固定液及びメタカンが挙げられる。一実施形態では、腫瘍試料をホルムアルデヒド(例えば、緩衝溶液中の4%ホルムアルデヒドに対応する10%中性緩衝ホルマリン)中で固定する。固定したなら、腫瘍試料をアルコール又はキシレンを使用して連続的に脱水し、パラフィンに包埋し、ミクロトームで切断して、腫瘍組織切片(例えば、約4~5μmの厚さを有する)を生成し、次いで顕微鏡スライド(例えば、接着剤をコーティングしたガラススライド)上にマウントし得る。例示的な包埋材料としては、パラフィン、セロイジン、OCTTM化合物、寒天、プラスチック又はアクリルが挙げられる。別の例示的な材料は、本明細書の実施例に記載するように、アガロース/グリセリンを含有するヒストゲル(ThermoFisher Scientific)である。
生物学的試料、例えばヒト腫瘍組織試料中のMAGEB2発現を、本明細書に記載の重鎖及び軽鎖可変領域CDR配列又は本明細書に記載の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗MAGEB2抗体などの抗MAGEB2抗原結合構築物と試料を接触させることであって、抗原結合構築物は、ヒトMAGEB2に特異的に結合する、接触させることと、試料中の抗体のMAGEB2への結合を例えば免疫組織化学によって検出することとによって検出する方法が本明細書において提供される。
したがって、本発明は、腫瘍を有する対象を診断する方法であって、a)対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを決定することと、b)MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、対象がMAGEB2陽性腫瘍を有すると診断することとを含む方法を提供する。
MAGEB2陽性腫瘍を有する対象を特定する方法であって、a)対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを決定することと、b)MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、対象がMAGEB2陽性腫瘍を有すると特定することとを含む方法が本明細書において提供される。
抗MAGEB2治療薬を必要とする対象を特定する方法であって、a)対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを決定することと、b)MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、対象がMAGEB2陽性腫瘍を有すると特定することとを含む方法が本明細書において提供される。
MAGEB2陽性腫瘍を有する対象に対する治療法を決定する方法であって、対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを決定することと、b)MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、治療が抗MAGEB2治療薬を含むと決定することとを含む方法が本明細書において提供される。
特定の実施形態では、例示的な生物学的試料として、血液試料、血清試料、細胞、外科的に切除された組織及び癌患者から得られた生検組織(例えば、癌組織)が挙げられる。本明細書に記載の方法で使用するための生物学的試料は、新鮮試料、凍結試料又は固定試料であり得る。生物学的試料、例えば腫瘍試料は、以下に限定されないが生検、外科的切除又は吸引などの日常的な方法を使用して、患者から得ることができる。
組織、例えば腫瘍の試料におけるMAGEB2タンパク質の発現は、直接的又は間接的方法を用いて検出することができる。例えば、結合構築物が抗体であるアッセイでは、一次抗体は、本明細書に記載されるように、酵素西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)又は蛍光標識(例えば、FITC、TRITC)などの検出可能な部分を含み得る。特定の実施形態では、一次抗体は、それ自体は検出可能な部分を含まないが、代わりに、間接的な免疫組織化学のために、二次抗体がそれに結合することによって検出される。したがって、特定の実施形態では、二次抗体は、検出可能な標識、例えば酵素標識、発色標識又は蛍光標識を含む。特定の実施形態では、一次抗体は、ヒト可変領域配列及び非ヒトFc領域を含むキメラ抗体である。バックグラウンド染色を減少させるために、一次抗体の非ヒトFc領域の認識に二次抗体を使用することができる。
他の実施形態では、アビジン-ビオチン複合体法(ABC法)を使用して、MAGEB2タンパク質発現を検出することができる。これらの実施形態では、例えば結合構築物が抗体である場合、二次抗体は、ビオチン化され、一次抗体とビオチン-アビジン-ペルオキシダーゼ複合体との間の架橋として機能することができる。免疫組織化学のための他の好適な非限定的な方法としては、Immunohistochemical Staining Method guideの第6章に記載されている方法、例えばChilosi et al.,Biotech Histochem 1994;69:235;Sabattini et al.,J Clin Pathol 1998;51:506-11;及びGross et al.,JBC 1959;234:1622に記載されている方法が挙げられる。
凍結組織切片を作製し染色するための一般的な方法は、当技術分野でよく知られており、例えばImmunohistochemical Staining Method guide、Immunohistochemistry and Methodsの第3章(Buchwalow and Bocker,Springer-Verlag Berlin Heidelberg 2010)及びTheory and Practice of Histological Techniquesの第21章(Bancroft and Gamble,6.sup.th Edition,Elsevier Ltd.,2008)に記載されている。いくつかの実施形態では、例えば本明細書に記載の抗MAGEB2抗体で染色されたスライドを、当技術分野でよく知られた方法を使用して、例えばヘマトキシリン及び/又はエオシンでさらに対比染色することができる。
免疫組織化学によって検出されたMAGEB2タンパク質発現を(例えば、本明細書の実施例に記載されるように)デジタル的にスキャンし分析するか、又は他に当技術分野で認められたスコアリング方法を使用して評価し、スコア化することができる。スコアリング方法の非限定的な例を以下に記載する。
例えば、特定の実施形態では、Hスコア(組織化学的スコア)システムを使用してMAGEB2発現を評価することができ、このシステムは、当技術分野で広く使用されており、そのダイナミックレンジ及び加重パーセンタイルの使用を考慮すると有用である。Hスコアは、次式に基づく半定量的スコアリングシステムである:3×強染色細胞の割合(3+染色)+2×中程度染色(2+染色)細胞の割合+1×弱染色(1+染色)細胞の割合+0×非染色(0染色)細胞の割合(スコア範囲は0~300である)。例えば、McCarty et al.,Cancer Res 1986;46:4244-8;Bosman et al.,J Clin Pathol 1992;45:120-4;Dieset et al.,Analyt Quant Cytol Histol 1996;18:351-4を参照されたい。
対照組織には、例えば、同じ対象からの一致する非腫瘍組織が含まれ得る。したがって、特定の実施形態では、本明細書の結合構築物(例えば、抗体)を使用してMAGEB2に対して陽性に染色する細胞の数及び染色の強度を使用して、Hスコアを決定することができる。
他の実施形態では、MAGEB2発現を、オールレッドスコアリングシステムを用いて評価することができる(Allred et al.,Mod Pathol 1998;11:155-68;Harvey et al.,J Clin Oncol 1999;17:1474-91)。このスコアリングシステムには、割合スコアと強度スコアを加算して、総スコアを得ることが含まれる。したがって、いくつかの実施形態では、割合スコアは、MAGEB2に陽性である腫瘍細胞の推定割合に基づいて得られ(0:なし、1:<1/100、2:1/100~1/10、3:1/10~1/3、4:1/3~2/3及び5:>2/3)、強度スコアは、陽性腫瘍細胞におけるMAGEB2発現の平均強度に基づいて得られる(0:なし、1:弱、2:中間、3:強)。オールレッドスコアは、0~8の範囲であり、3~8の範囲のスコアは、陽性とみなされる(すなわち陽性検出)。したがって、特定の実施形態では、MAGEB2染色について3~8、例えば3、4、5、6、7又は8のオールレッドスコアを有する腫瘍は、MAGEB2陽性腫瘍とみなされる。
他の実施形態では、本明細書において上述したように、スコアリングシステムは、自動化、例えばコンピュータ化され、画像分析によって定量化され得る。自動化方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、255の染色強度レベルの平均を得る平均閾値測定(ATM)スコアは、例えば、Choudhury et al.,J Histochem Cytochem 2010;58:95-107、Rizzardi et al.,Diagnostic Pathology 2012;7:42-52に記載されているように計算することができる。別の自動スコアリングシステムは、AQUA(登録商標)(自動定量分析)であり、これは、例えば、組織マイクロアレイ(TMA)を連続スケールで使用して行われる。AQUA(登録商標)は、1~255の範囲の客観的数値スコアを提供する標準的な免疫組織化学及びフローサイトメトリーのハイブリッドであり、抗原回復、一次抗体及び二次抗体の使用並びに多重蛍光検出を含む。最適なカットオフ点は、Camp et al.Clin Cancer Res 2004;10:7252-9に記載されるように決定することができる。AQUA(登録商標)スコアリングシステムは、Camp et al.,Nat Med 2002;8:1323-7;Camp et al.,Cancer Res 2003;63:1445-8;Ghosh et al.,Hum Pathol 2008;39:1835-43;Bose et al.,BMC Cancer 2012;12:332;Mascaux et al.,Clin Cancer Res 2011;17:7796-807に詳細に記載されている。他の好適な自動免疫組織化学プラットフォームには、Leica BOND RX染色プラットフォームなどの市販のプラットフォームが含まれる。プラットフォームは、以下のスケールで染色強度に基づいて腫瘍組織における標的タンパク質発現を検出する:最小、20×対物視野あたり<1セル;軽度、20×対物視野あたり1~10セル;中等度、20×対物視野あたり10~50セル;重度、20×対物視野あたり50~200セル;及び最重度、20×対物視野あたり>200セル。
いくつかの実施形態では、腫瘍は、MAGEB2陽性とみなされ、腫瘍の試料が同じ癌患者由来の一致する正常組織よりも多くのMAGEB2陽性細胞を有する場合、MAGEB2を標的とする治療薬から恩恵を受ける可能性が高い。
特定の実施形態では、腫瘍試料中のMAGEB2陽性細胞の数が閾値レベルを超えた場合、癌患者はMAGEB2を標的とする治療薬から恩恵を受ける可能性があるか又は恩恵を受けると予測される。閾値レベルは、所与の検出システム、例えば本明細書の実施例などにおいてさらに記載されるような免疫組織化学で決定されるMAGEB2の最低レベルであり得る、特定の実施形態では、上記の当技術分野で認められたスコアリングシステムを使用して、腫瘍試料中のMAGEB2陽性細胞の数が閾値数又は割合を超えた場合、癌患者が、MAGEB2を標的とする治療薬から恩恵を受ける可能性が高いか又は恩恵を受けると予測される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のスコアリングシステムを使用して、MAGEB2陽性細胞の数又は割合が特定の閾値数又は割合を超えた場合、試料は、「MAGEB2陽性」であると定義することができる。
特定の実施形態では、腫瘍内の細胞の少なくとも1%、例えば少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%がMAGEB2を発現する腫瘍試料は、「MAGEB2陽性」であるとされ、癌患者が、MAGEB2を標的とする治療薬に応答する可能性が高いか又は応答すると予測されることを示す。
いくつかの実施形態では、腫瘍試料についてHスコアを計算することができる。したがって、特定の実施形態では、少なくとも5、例えば少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275又は少なくとも290のHスコアを有する腫瘍試料は、「MAGEB2陽性」であるとされ、癌患者が、MAGEB2を標的とする治療薬に応答する可能性が高いか又は応答すると予測されることを示す。
いくつかの実施形態では、腫瘍試料についてオールレッドスコアを計算することができる。したがって、特定の実施形態では、少なくとも3、例えば少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7又は8のオールレッドスコアを有する腫瘍試料は、「MAGEB2陽性」であるとされ、癌患者が、MAGEB2を標的とする治療薬に応答する可能性が高いか又は応答すると予測されることを示す。
いくつかの実施形態では、AQUAスコアを計算することができる。したがって、特定の実施形態では、少なくとも5、例えば少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225又は少なくとも250のAQUAスコアを有する腫瘍試料は、「MAGEB2陽性」であるとされ、癌患者が、MAGEB2を標的とする治療薬に応答する可能性が高いか又は応答すると予測されることを示す。
特定の実施形態では、上記のスコアリングシステムの1つと、FISHなどの別の検出モダリティとの組み合わせを使用して、腫瘍がMAGEB2陽性であるかMAGEB2陰性であるかを決定する精度を高める。
特定の実施形態では、患者は、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)、非扁平上皮NSCLC、神経膠腫、消化管癌、腎臓癌(例えば、明細胞癌)、卵巣癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌(例えば、腎細胞癌(RCC))、前立腺癌(例えば、ホルモン不応性前立腺腺癌)、甲状腺癌、神経芽腫、膵臓癌、神経膠芽腫(多形膠芽腫)、子宮頸癌、胃癌(stomach cancer)、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、頭頸部癌(又は癌腫)、胃癌(gastric cancer)、胚細胞腫瘍、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、黒色腫(例えば、皮膚又は眼内の悪性黒色腫などの転移性悪性黒色腫)、骨癌、皮膚癌、子宮癌、肛門部の癌、精巣癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰部の癌、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、副甲状腺癌、副腎の癌、軟部組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児の固形腫瘍、尿管の癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発される癌を含む環境誘発癌、ウイルス関連癌又はウイルス起源の癌(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV関連又はHPV起源の腫瘍)、2つの主要な血液細胞系統、すなわち(顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージ及びマスト細胞を産生する)骨髄細胞系又は(B細胞、T細胞、NK細胞及び形質細胞を産生する)リンパ系細胞系(B細胞、T細胞、NK細胞及び形質細胞を産生する)に由来する血液悪性腫瘍、例えばあらゆる種類の白血病、リンパ腫及び骨髄腫、例えば急性、慢性、リンパ球性及び/又は骨髄性白血病(例えば、急性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、未分化AML(M0)、骨髄芽球性白血病(M1)、骨髄芽球性白血病(M2;細胞成熟を伴う)、前骨髄球性白血病(M3又はM3バリアント[M3V])、骨髄単球性白血病(M4又は好酸球増加を伴うM4バリアント[M4E])、単球性白血病(M5)、赤白血病(M6)、巨核芽球性白血病(M7)、孤立性顆粒球肉腫並びに緑色腫);リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞血液悪性腫瘍、例えばB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ形質細胞様リンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、未分化(例えば、Ki 1+)大細胞リンパ腫、成人T細胞リンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸管T細胞リンパ腫、縦隔原発B細胞リンパ腫、前駆体Tリンパ芽球性リンパ腫、Tリンパ芽球性リンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)、末梢T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、移植後リンパ球増殖性障害、真性組織球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、B細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、リンパ系造血腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽球性大細胞リンパ腫、前駆体Bリンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTLC)(菌状息肉症又はセザリー症候群とも呼ばれる)及びワルデンシュトレームのマクログロブリン血症を伴うリンパ形質細胞様リンパ腫(LPL));骨髄腫(例えば、IgG骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、くすぶり骨髄腫(無痛性骨髄腫とも呼ばれる)、孤立性形質細胞腫、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリーセルリンパ腫);骨髄細胞系の造血腫瘍、線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;精上皮腫、奇形癌、星状細胞腫、神経鞘腫を含む中枢神経及び末梢神経の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫及び骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;黒色腫、色素性乾皮症、角化皮腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌及び奇形癌を含む他の腫瘍、リンパ系の造血腫瘍、例えばT細胞及びB細胞腫瘍(例えば、以下に限定されないが、小細胞型及び脳様細胞型を含むT前リンパ球性白血病(T-PLL)などのT細胞障害);好ましくはT細胞型の大粒状リンパ球白血病(LGL);a/d T-NHL肝脾リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性及び免疫芽球性サブタイプ);血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫、頭頸部の癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、急性骨髄性リンパ腫並びに前記癌の任意の組み合わせからなる群から選択される癌を有する。特定の実施形態では、癌は、転移性癌、難治性癌又は再発癌である。
患者の治療
癌患者が、MAGEB2発現腫瘍を標的とする治療薬による治療から恩恵を受ける可能性が高いと同定される(すなわちMAGEB2陽性腫瘍を有する)と、患者は、抗MAGEB2治療薬(例えば、抗MAGEB2免疫療法薬、例えば2020年5月19日に出願された「MAGEB2 Binding Constructs」という名称の米国特許出願第63/027,148号明細書及び2020年12月21日に出願された「MAGEB2 Binding Constructs」という名称の米国特許出願第63/128,773号明細書に見出されるもの)で治療することができるしたがって、対象における腫瘍を治療する方法であって、対象から、腫瘍に由来する細胞を含む試料を取得し、その試料中のMAGEB2のレベルを測定し、且つ対象が抗MAGEB2治療薬による治療に反応すると決定することにより、対象が抗MAGEB2治療薬による治療に反応すると決定することと、対象に有効量の抗MAGEB2治療薬を投与することとを含む方法が本明細書において提供される。
癌患者を治療する方法であって、(a)癌患者の腫瘍がMAGEB2陽性であるかどうかを、本明細書に記載の方法を用いて、例えば患者からの腫瘍試料を本明細書に記載の結合構築物と接触させることであって、抗体又はその抗原結合断片は、ヒトMAGEB2に特異的に結合する、接触させることと、試料中のMAGEB2に対する抗体の結合を検出することと、試料中のMAGEB2タンパク質発現のレベルを決定することであって、腫瘍細胞中の閾値レベルを超えるMAGEB2タンパク質のレベルは、腫瘍がMAGEB2陽性であることを示す、決定することとによって決定することと、(b)腫瘍がMAGEB2陽性であると決定された場合、MAGEB2を発現する細胞を標的とし、それらを死滅させる薬剤の治療有効量を投与することとを含む方法が本明細書において提供される。
対象における腫瘍を治療する方法であって、対象の腫瘍は、MAGEB2レベルについて試験されており、対象の腫瘍は、MAGEB2陽性であり、方法は、抗MAGEB2治療薬を対象に投与することを含む、方法が本明細書において提供される。
対象における抗MAGEB2治療薬による治療の有効性を決定する方法であって、抗MAGEB2治療薬による治療前及び抗MAGEB2治療薬による治療後、対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを決定することと、抗MAGEB2治療薬による治療後にMAGEB2陽性腫瘍細胞のレベルが減少する場合、その治療が有効であると決定することとを含む方法が本明細書において提供される。
対象における抗MAGEB2治療薬による治療をモニターする方法であって、第1の時点で対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを決定することと、第2の時点で対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを決定することと、任意選択的に、第2の時点でのMAGEB2のレベルが第1の時点でのレベルと比較して減少する場合、抗MAGEB2治療薬による治療を継続することとを含む方法が本明細書において提供される。
抗MAGEB2治療薬による治療に反応すると対象を特定する方法であって、対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを決定すること、抗MAGEB2治療薬による治療でMAGEB2のレベルが減少する場合、対象が抗MAGEB2治療薬による治療に反応すると特定することを含む方法が本明細書において提供される。
上記の実施形態の具体的な実施形態では、対象又は患者は、2020年5月19日に出願された「MAGEB2 Binding Constructs」という名称の米国特許出願第63/027,148号明細書及び2020年12月21日に出願された「MAGEB2 Binding Constructs」という名称の米国特許出願第63/128,773号明細書(これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれるに開示された分子のいずれかの治療有効量で治療される。
上記の実施形態のさらなる具体的な実施形態では、患者の試料中のMAGEB2の様々な参照レベルを互いに比較することができる。例えば、第1の時点で取得された第1の参照レベルを、第2の時点で取得された第2のレベルと比較することができる。さらに、例えば、MAGEB2レベルは、薬物治療前及び薬物治療後に比較することができる。この例では、薬物による治療が成功すると、治療前に測定された参照MAGEB2レベルと比較して、治療後に測定されるMAGEB2レベルが低下することが想定され得る。第1及び第2の組織試料は、例えば、互いに3~7日以内、1週間~3週間以内若しくは1か月~3か月以内又はさらにより長い時間で得ることができる。
特定の実施形態では、癌患者におけるMAGEB2発現腫瘍をモニターする方法は、(a)抗MAGEB2抗体又はその抗原結合部分を使用することにより、組織(例えば、腫瘍)試料中のMAGEB2タンパク質発現を第1の時点で検出することと、(b)第1の時点でのMAGEB2タンパク質発現のレベルを決定することと、(c)ステップ(a)で使用された同じ抗体を使用して、第2の時点での組織(例えば、第1の時点で生検されたものと同じ腫瘍であり得る腫瘍)試料中のMAGEB2タンパク質発現を検出することと、(d)第2の時点の腫瘍中のMAGEB2タンパク質発現のレベルを決定することとを含む。
MAGEB2陽性腫瘍を有する患者における抗MAGEB2免疫療法(例えば、2020年5月19日に出願された「MAGEB2 Binding Constructs」という名称の米国特許出願第63/027,148号明細書及び2020年12月21日に出願された「MAGEB2 Binding Constructs」という名称の米国特許出願第63/128,773号明細書に提供される分子の1つ)の有効性をモニターする方法であって、(a)抗MAGEB2抗体を使用することによる抗MAGEB2免疫療法を開始する前又は開始した後の第1の時点でMAGEB2陽性腫瘍におけるMAGEB2タンパク質発現を検出すること、(b)第1の時点の腫瘍におけるMAGEB2タンパク質発現のレベルを決定すること、(c)ステップ(a)と同じ抗体を用いて抗MAGEB2免疫療法を開始した後の第2の時点でMAGEB2陽性腫瘍におけるMAGEB2タンパク質発現を検出すること、(d)第2の時点の腫瘍におけるMAGEB2タンパク質発現のレベルを決定すること、(e)第1及び第2の時点で決定されたMAGEB2タンパク質発現のレベルを比較することを含み、第2の時点と比較して第1の時点でのレベルがより高いことは、抗MAGEB2免疫療法が有効であることを示し得、第2の時点と比較して第1の時点でのスコアがより低いことは、抗MAGEB2免疫療法の効果がないことを示し、且つ第2の時点と比較して第1の時点でのスコアが変わらないことは、抗MAGEB2免疫療法が安定化していることを示し得る方法が本明細書において提供される。MAGEB2発現は、腫瘍、腫瘍組織又は腫瘍細胞において決定され得る。
特定の実施形態では、MAGEB2発現腫瘍の状態が初期診断後(すなわち腫瘍がMAGEB2陽性であると判定された後)、例えば初期診断の1か月後、初期診断の2か月、初期診断の3か月後、初期診断の4か月後、初期診断の5か月、初期診断の6か月後、初期診断の1年後など、繰り返しモニターすることができる。他の実施形態では、MAGEB2発現腫瘍に対する抗MAGEB2免疫療法の有効性は、抗MAGEB2免疫療法を開始した後、例えば治療開始1か月後、治療開始2か月後、治療開始3か月後、治療開始4か月後、治療開始5か月後、治療開始6か月後、治療開始1年後など、繰り返しモニターすることができる。
MAGEB2結合構築物の配列の改変
用語「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」は、典型的には、アラニン(Ala又はA);アルギニン(Arg又はR);アスパラギン(Asn又はN);アスパラギン酸(Asp又はD);システイン(Cys又はC);グルタミン(GIn又はQ);グルタミン酸(GIu又はE);グリシン(GIy又はG);ヒスチジン(His又はH);イソロイシン(Ile又はI);ロイシン(Leu又はL);リシン(Lys又はK);メチオニン(Met又はM);フェニルアラニン(Phe又はF);プロリン(Pro又はP);セリン(Ser又はS);トレオニン(Thr又はT);トリプトファン(Trp又はW);チロシン(Tyr又はY);及びバリン(VaI又はV)からなる群から選択されるアミノ酸などの当技術分野で認められた定義を有するアミノ酸を指すが、必要に応じて改変アミノ酸、合成アミノ酸又は希アミノ酸を使用し得る。異なる側鎖によって決定されるアミノ酸には、基本的に4つの異なるクラスがある:
(1)非極性及び中性(非荷電):Ala、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Val
(2)極性及び中性(非荷電):Asn、Cys(わずかに極性である)、Gln、Ser、Thr、Trp(わずかに極性である)、Tyr
(3)酸性及び極性(負荷電):Asp及びGlu
(4)塩基性及び極性(正荷電):Arg、His、Lys。
疎水性アミノ酸は、脂肪族側鎖を有するか又は芳香族側鎖を有するかに応じて分けられ得る。Phe及びTrp(非常に疎水性である)、Tyr及びHis(疎水性が低い)は、芳香族アミノ酸として分類される。厳密には、脂肪族とは、側鎖が水素及び炭素原子のみを含むことを意味する。この厳密な定義により、脂肪族側鎖を有するアミノ酸は、アラニン、イソロイシン、ロイシン(ノルロイシンでもある)、プロリン及びバリンである。アラニンの側鎖が非常に短いということは、それが特に疎水性ではなく、プロリンがタンパク質において特別な役割を与える異常な幾何学的形状を有することを意味する。硫黄原子も含有するが、イソロイシン、ロイシン及びバリンと同じカテゴリーのメチオニンを考慮することが多くの場合に好都合である。統一的なテーマは、これらのアミノ酸が主に非反応性で柔軟な側鎖を含むことである。アミノ酸のアラニン、システイン、グリシン、プロリン、セリン及びトレオニンは、いずれもサイズが小さいという理由から、多くの場合に一緒にまとめられる。Gly及びProは、鎖配向に影響し得る。
アミノ酸改変には、例えば、結合構築物のアミノ酸配列からの残基の欠失、結合構築物のアミノ酸配列への残基の挿入及び/又は結合構築物のアミノ酸配列内の残基の置換が含まれる。最終結合構築物に到達するために、欠失、挿入及び/又は置換のあらゆる組み合わせがなされるが、最終構築物が所望の特性、例えば未改変の親分子の生物学的活性(例えば、MAGEB2への結合)を有する場合に限る。アミノ酸の変化は、グリコシル化部位の数又は位置の変化など、結合構築物の翻訳後プロセスも変化させ得る。
例えば、CDRの各々において(当然のことながら、それぞれの長さに応じて)、1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸が挿入、欠失及び/又は置換され得る一方、FRの各々において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は25個のアミノ酸が挿入、欠失及び/又は置換され得る。アミノ酸配列挿入には、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10残基~10個を超える、例えば100個以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ酸のN末端及び/又はC末端付加並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入も含まれる。本発明の結合構築物の挿入バリアントには、結合構築物のN末端又はC末端への結合構築物の血清半減期を増加又は延長させるポリペプチドの融合が含まれる。このような挿入は、結合構築物内において、例えば第1のドメインと第2のドメインとの間で起こることも考えられる。
アミノ酸の改変、特にアミノ酸の置換に最も有利な部位としては、重鎖及び/又は軽鎖の超可変領域、特に個々のCDRが挙げられるが、重鎖及び/又は軽鎖におけるFRの改変も企図される。置換は、本明細書に記載されるとおりの保存的置換であり得る。好ましくは、CDRにおいて、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸が置換され得る一方、フレームワーク領域(FR)において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は25個のアミノ酸がそれぞれCDR又はFRの長さに応じて置換され得る。例えば、CDR配列が6個のアミノ酸を包含する場合、これらのアミノ酸の1個、2個又は3個が置換されることが想定される。同様に、CDR配列が15個のアミノ酸を包含する場合、これらのアミノ酸の1個、2個、3個、4個、5個又は6個が置換されることが想定される。
変異誘発に好ましい位置にある結合構築物内の特定の残基又は領域を特定するのに有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれ、例えばCunningham B.C.and Wells J.A.(Science.1989 Jun 2;244(4908):1081-5)に記載されている。ここでは、結合構築物内にある残基又は残基群が特定され(例えば、Arg、His、Lys、Asp及びGluなどの荷電残基)、中性又は非極性アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)に置き換えられ、標的タンパク質のエピトープとのそれぞれのアミノ酸の相互作用に影響が及ぶ。アラニンスキャニングは、所与のタンパク質の安定性又は機能に対する特定の残基の寄与を決定するために使用される技術である。アラニンの、他のアミノ酸の多くが有する二次構造優先性を模倣するにも関わらず、嵩高くなく化学的に不活性なメチル官能基に起因して、アラニンが使用される。ときに、変異残基のサイズの保存が必要である場合、バリン又はロイシンなどの嵩高いアミノ酸が使用され得る。この技術は、特定の残基の側鎖が生物活性において重要な役割を果たすかどうかの決定にも有用であり得る。アラニンスキャニングは、通常、部位特異的変異誘発により達成されるか、又はPCRライブラリーの作成により無作為に達成される。さらに、理論的アラニン置換に基づいて熱力学的パラメータを推定する計算的方法が開発されている。データは、IR、NMR分光法、数学的方法、バイオアッセイなどにより試験することができる。
次いで、置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置(例えば、アラニンスキャニングによって決定される)を、置換部位において又は置換部位のために、さらなるバリアント又は他のバリアントを導入することによって精密にすることができる。したがって、アミノ酸配列変異を導入する部位又は領域は予め決定されているが、変異自体の性質は予め決定されている必要はない。例えば、所与の部位における変異の性能を分析又は最適化するために、アラニンスキャニング又はランダム変異誘発を標的コドン又は標的領域で行うことができ、発現した結合構築物バリアントを所望の活性の最適な組み合わせについてスクリーニングする。既知の配列を有するDNA内の所定部位に置換変異を行う技術は、よく知られており、例えばM13プライマー変異誘発及びPCR変異誘発がある。変異体のスクリーニングは、例えば、抗原(例えば、MAGEB2)結合活性及び/又は細胞傷害活性のアッセイを用いて行われる。
一般に、アミノ酸が重鎖及び/又は軽鎖のCDRの1つ又は複数又は全部において置換されている場合、その後得られる「置換」配列は、「元の」又は「親の」CDR配列と少なくとも60%又は65%、より好ましくは70%又は75%、より一層好ましくは80%又は85%、特に好ましくは90%又は95%同一/相同であると想定される。これは、元の配列と置換後の配列との間の同一性/相同性の程度がCDRの長さに依存することを意味する。例えば、合計5個のアミノ酸を有し、1つのアミノ酸置換を含むCDRは、「元の」又は「親の」CDR配列と80%同一であるが、合計10個のアミノ酸を有し、1つのアミノ酸置換を含むCDRは、「元の」又は「親の」CDR配列と90%同一である。したがって、本発明の結合構築物の置換CDRは、それらの元の配列に対して異なる程度の同一性を有し得、例えば、CDRL1は、80%の相同性を有し得るが、CDRL3は、90%の相同性を有し得る。フレームワーク領域並びにVH領域及びVL領域全体に同じ考慮事項が適用される。
「バリアントCDR」は、本発明の親CDRと特定の配列相同性、類似性又は同一性を有するCDRであり、親CDRと生物学的機能を、例えば親CDRの特異性及び/又は活性の、限定はされないが、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%共有する。一般に、個々のバリアントCDR間のアミノ酸の相同性、類似性又は同一性は、本明細書に示される親配列に対して少なくとも60%であり、より典型的には少なくとも65%又は70%、好ましくは少なくとも75%又は80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、99%及びほぼ100%という増加した相同性、類似性又は同一性を有する。「バリアントVH」及び「バリアントVL」についても同様である。一実施形態によれば、「バリアントVH」及び/又は「バリアントVL」内の配列変異は、CDRに及ばない。したがって、本発明は、本明細書で定義される特定の配列(「親」VH及びVL)に対して特定の配列相同性(上記を参照されたい)を有するVH及びVL配列を含む、本明細書で定義される結合構築物であって、CDR配列は、本明細書で定義される特定のCDR配列(「親」CDR)と100%同一である結合構築物を対象としている。
好ましい置換(又は置き換え)は、保存的置換である。しかしながら、結合構築物がMAGEB2に結合する能力を保持する限り、且つ/又はCDR、FR、VH及び/若しくはVLの配列が元の配列若しくは親配列と少なくとも60%若しくは65%、より好ましくは少なくとも70%若しくは75%、より一層好ましくは少なくとも80%若しくは85%、特に好ましくは少なくとも90%若しくは95%の程度の同一性を有する場合、あらゆる置換(非保存的置換又は以下の表6に列挙される「例示的置換」の1つ若しくは複数を含む)が想定される。
保存的置き換え(保存的変異又は保存的置換とも呼ばれる)は、所与のアミノ酸を類似の生化学的特性(例えば、電荷、疎水性、サイズ)を有する異なるアミノ酸に変化させるアミノ酸置き換えである。タンパク質における保存的置き換えは、非保存的置き換えと比べてタンパク質機能に及ぼす影響が小さいことが多い。保存的置換を表6に示す。例示的な保存的置換は、「例示的な置換」として示されている。そのような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、アミノ酸クラスに関して本明細書でさらに説明するように、より実質的な変化が導入され得、産物は、所望の特性に関してスクリーニングされ得る。
Figure 2024513376000017
本発明の結合構築物の生物学的特性における実質的な改変は、(a)置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えばシート若しくはらせん構造、(b)標的部位における分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖のバルクの維持に対する効果が有意に異なる置換を選択することによって達成される。非保存的置換は、通常、上で定義されたアミノ酸クラスの1つのメンバー(例えば、極性、中性、酸性、塩基性、脂肪族、芳香族、小さい...)を別のクラスと交換することを伴う。結合構築物の適切な立体構造の維持に関与しない任意のシステイン残基を一般にセリンで置換して、結合構築物の酸化安定性を改善することができる。
上記の置換に加えて、結合に寄与するCDR内の他の置換を行うことができる。例えば、本明細書の表25に示すコンセンサス配列は、そのような置換を提供する。特定の実施形態では、提供されるコンセンサス配列によって導かれる欠失も行われ得る。当業者は、表25に示すコンセンサス配列によって本明細書に提供される指針を用いて、様々なアミノ酸置換及びその機能的均等物又は欠失を容易に行うことができる。
アミノ酸配列の配列同一性、相同性及び/又は類似性は、当技術分野で知られている標準的な技術(例えば、以下に限定されないが、好ましくはデフォルト設定を使用する、Smith and Waterman,1981,Adv.Appl.Math.2:482の局所配列同一性アルゴリズム、Needleman and Wunsch(J Mol Biol.1970 Mar;48(3):443-53)の配列同一性アラインメントアルゴリズム、Pearson及びLipman(Proc Natl Acad Sci USA.1988 Apr;85(8):2444-8)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WisのGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)、Devereux et al.(Nucleic Acids Res.1984 Jan 11;12(1 Pt 1):387-95)に記載されているBest Fit配列プログラム)を使用して決定されるか、又は目視検査により決定される。同一性パーセントは、下記のパラメータに基づくFastDBにより算出されることが想定される:ミスマッチペナルティ1;ギャップペナルティ1;ギャップサイズペナルティ0.33;及び結合ペナルティ30。“Current Methods in Sequence Comparison and Analysis,”Macromolecule Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications,pp 127-149(1988),Alan R.Liss,Inc.も参照されたい。
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、プログレッシブペアワイズアラインメントを使用して、関連する配列の群から複数の配列アラインメントを作成する。アラインメントを作成するために使用されるクラスタリング関係を示すツリーをプロットすることもできる。PILEUPは、Feng及びDoolittleのプログレッシブアラインメント法(J Mol Evol.1987;25(4):351-60)を簡略化したものを使用するが、その方法は、Higgins and Sharp(Comput Appl Biosci.1989 Apr;5(2):151-3)により説明されているものと類似している。有用なPILEUPパラメータとしては、デフォルトギャップ加重3.00、デフォルトギャップ長加重0.10及び加重付き末端ギャップが挙げられる。
有用なアルゴリズムの別の例は、Altschul et al.(J Mol Biol.1990 Oct 5;215(3):403-10.);Altschul et al.,(Nucleic Acids Res.1997 Sep 1;25(17):3389-402)及びKarlin and Altschul(Proc Natl Acad Sci USA.1993 Jun 15;90(12):5873-7)に記載されているBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、WU-Blast-2プログラムであり、これは、Altschul et al.,(Methods Enzymol.1996;266:460-80)から得られた。WU-Blast-2は、いくつかの検索パラメータを使用し、その大部分は、デフォルト値に設定される。調整可能なパラメータは、以下の値に設定される:重複範囲=1、重複割合=0.125、ワード閾値(T)=II。HSP Sパラメータ及びHSP S2パラメータは、ダイナミック値であり、特定の配列の組成及び目的の配列が検索される特定のデータベースの組成に依存して、プログラム自体により確立され、しかしながら、感度を増加させるために値が調整され得る。
追加の有用なアルゴリズムは、Altschul et al.(Nucleic Acids Res.1997 Sep 1;25(17):3389-402)により報告されているようなギャップ付きBLASTである。ギャップのあるBLASTは、BLOSUM-62置換スコアを使用し、閾値Tパラメータを9に設定し、非ギャップ拡張を引き起こすためのtwo-hit法、電荷ギャップ長kは10+kのコスト、Xuは16に設定され、Xgはアルゴリズムのデータベース検索段階については40に設定され、出力段階については67に設定される。ギャップのあるアラインメントは、約22ビットに対応するスコアによって引き起こされる。
結合構築物をコードするヌクレオチド
本発明は、本発明のポリペプチド構築物をコードするポリヌクレオチド/核酸分子を提供する。核酸分子は、ヌクレオチドからなるバイオポリマーである。ポリヌクレオチドは、鎖中で共有結合した13個以上のヌクレオチドモノマーから構成されるバイオポリマーである。DNA(cDNAなど)及びRNA(mRNAなど)は、異なる生物学的機能を有するポリヌクレオチド/核酸分子の例である。ヌクレオチドは、DNA又はRNAのような核酸分子のモノマー又はサブユニットとして機能する有機分子である。本発明の核酸分子又はポリヌクレオチドは、二本鎖又は一本鎖、線状又は環状であり得る。核酸分子又はポリヌクレオチドはベクターに含まれることが想定される。さらに、そのようなベクターは、宿主細胞に含まれることが想定される。前記宿主細胞は、例えば、本発明のベクター又はポリヌクレオチド/核酸分子による形質転換又はトランスフェクション後、結合構築物を発現することができる。この目的のために、ポリヌクレオチド又は核酸分子は、制御配列に作動可能に連結されている。
遺伝子コードは、遺伝子材料(核酸)内にコードされた情報をタンパク質に翻訳するルールのセットである。生細胞における生物学的解読は、リボソームによって行われ、これは、アミノ酸を運搬し、且つmRNAの3つのヌクレオチドを一度に読み取るために、tRNA分子を使用して、mRNAによって指定された順にアミノ酸を連結する。コードは、タンパク質合成中に次にいずれのアミノ酸が付加されることとなるかを、コドンと呼ばれる三つ組のヌクレオチドの配列がどのように指定するかを定義する。いくつかの例外があるが、核酸配列内の3ヌクレオチドのコドンは、1つのアミノ酸を指定する。大部分の遺伝子は、厳密に同じコードでコード化されているため、この特定のコードをカノニカル遺伝子コード又は標準遺伝子コードと称することが多い。
コドンの縮重は、アミノ酸を指定する3塩基対コドンの複数の組み合わせとして示される遺伝コードの重複性である。縮重は、コード可能なアミノ酸と比べてコドンが多数であるために生じる。1つのアミノ酸をコードするコドンは、その3つの位置のいずれかにおいて異なり得るが、ほとんどの場合、この違いは、2番目又は3番目の位置である。例えば、コドンGAA及びGAGは両方ともグルタミン酸を指定し、且つ重複性を呈するが、いずれもいかなる他のアミノ酸も指定せず、したがって曖昧さを示さない。様々な生物の遺伝子コードは、他のものと比べて、同一のアミノ酸をコードするいくつかのコドンの1つを使用するように偏り得、すなわち、ある1つは、偶然に予想されるよりも高頻度に見られ得る。例えば、ロイシンは、6つの別個のコドンにより指定され、そのいくつかは、ほとんど使用されない。ほとんどの生物についてのゲノムコドン使用頻度を詳述するコドン使用表が利用可能である。組換え遺伝子技術では、コドン最適化と称される技術を実施することにより、この効果がよく利用され、ここで、例えばタンパク質発現を増加させるために、このコドンを使用して、それぞれの宿主細胞(例えば、ヒト、ハムスター由来の細胞、大腸菌(Escherichia coli)細胞又はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞)が優先するポリヌクレオチドを設計する。したがって、本開示のポリヌクレオチド/核酸分子は、コドン最適化されることが想定される。
それにも関わらず、本発明の結合構築物をコードするポリヌクレオチド/核酸分子は、所望のアミノ酸をコードする任意のコドンを使用して設計され得る。
本明細書に沿って、本明細書で同定される結合構築物をコードする核酸配列に関する「核酸配列同一性/相同性/類似性パーセント(%)」という用語は、結合構築物のコード配列中のヌクレオチド残基と同一である候補配列中のヌクレオチド残基のパーセンテージと定義される。2つの配列をアラインし、それによりその相同性を決定する1つの方法は、オーバーラップスパン及びオーバーラップフラクションをそれぞれ1及び0.125に設定したデフォルトパラメータ設定のWU-Blast2のBLASTNモジュールを使用する。一般に、個々のバリアントCDRをコードするヌクレオチド配列と本明細書に示されるヌクレオチド配列との間の核酸配列の相同性、類似性又は同一性は、少なくとも60%であり、より典型的には少なくとも65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%及びほぼ100%の増加した相同性、類似性又は同一性を有する。ここでも、「バリアントVH」及び/又は「バリアントVL」をコードする核酸配列に同じことが当てはまる。
一実施形態では、本発明による結合構築物又はこれらの結合構築物の第1及び第2のドメイン(結合ドメイン)のヒト生殖系列に対する同一性のパーセンテージは、70%以上又は75%以上、より好ましくは80%以上又は85%以上、より一層好ましくは90%以上、最も好ましくは91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上又は96%以上である。ヒト抗体生殖細胞系列遺伝子産物に対する同一性は、治療用タンパク質が治療中の患者の薬物に対する免疫反応を誘発するリスクを低減するための重要な特徴であると考えられる。Hwang W.Y.及びFoote J.(Methods.2005 May;36(1):3-10)は、薬物結合構築物の非ヒト部分の減少が、治療中に患者において抗薬物抗体を誘導するリスクの減少をもたらすことを実証している。網羅的な数の臨床的に評価された抗体薬物とそれぞれの免疫原性データとを比較することにより、抗体/結合構築物の可変領域のヒト化が、変化していない非ヒト可変領域を有する抗体/結合構築物(患者の平均23.59%)よりもタンパク質の免疫原性を低くする(患者の平均5.1%)という傾向が示されている。したがって、ヒト配列に対するより高い程度の同一性は、可変領域に基づく結合構築物の形態のタンパク質治療薬にとって望ましい。生殖系列同一性を決定する目的のため、ベクターNTIソフトウエアを用いて、VLのV領域をヒト生殖系列のセグメント及びJセグメントのアミノ酸配列(http://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/)とアラインし、同一のアミノ酸残基をVLのアミノ酸残基の総数で割る(%)ことによってアミノ酸配列を計算することができる。VH CDR3がその高い多様性と既存のヒト生殖系列VH CDR3アラインメントパートナーの欠如のために除外され得ることを除いて、同じことがVHセグメント(http://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/)に対して行われ得る。次いで、組換え技術を使用して、ヒト抗体生殖系列遺伝子に対する配列同一性を高めることができる。
一実施形態によれば、本発明の結合構築物をコードする本発明のポリヌクレオチド/核酸分子は、1個の単一分子の形態又は2個以上の別個の分子の形態である。本発明の結合構築物が一本鎖結合構築物である場合、そのような構築物をコードするポリヌクレオチド/核酸分子も1つの単一分子の形態である可能性が最も高い。
本発明のポリヌクレオチド/核酸分子を含むベクターについても同様である。本発明の結合構築物が一本鎖結合構築物である場合、1個のベクターは、結合構築物をコードするポリヌクレオチドを1つの単一の場所に(1つの単一のオープンリーディングフレーム、ORF、として)含み得る。1個のベクターは、(個々のORFを有する)別々の位置に2個以上のポリヌクレオチド/核酸分子も含み得、それらの各々は、本発明の結合構築物の異なる構成要素をコードする。本発明のポリヌクレオチド/核酸分子を含むベクターは、1個の単一ベクター又は2個以上の別個のベクターの形態であることが想定される。一実施形態では、結合構築物を宿主細胞で発現させる目的のために、本発明の宿主細胞は、結合構築物をコードするポリヌクレオチド/核酸分子又はそのようなポリヌクレオチド/核酸分子を全体に含むベクターを含むべきであり、これは、結合構築物の全ての構成要素は(単一分子としてコードされるか、別々の分子/位置にコードされるかに関わらず)翻訳後に集合し、本発明の生物学的に活性な結合構築物を一緒に形成することを意味する。
本発明は、本発明のポリヌクレオチド/核酸分子を含むベクターも提供する。ベクターは、通常、複製及び/又は発現を目的として、(外来性)遺伝物質を細胞に移入させるための媒体として使用される核酸分子である。用語「ベクター」には、限定されないが、プラスミド、ウイルス、コスミド及び人工染色体が包含される。いくつかのベクターは、クローニングのために特別に設計され(クローニングベクター)、他のベクターは、タンパク質発現のために設計される(発現ベクター)。いわゆる転写ベクターは、主にそのインサートを増幅するために使用される。DNAの操作は、通常、大腸菌(E.coli)ベクターに対して行われ、このベクターは、大腸菌(E.coli)内でのその維持に必要な要素を含有する。しかしながら、ベクターは、それらが酵母、植物又は哺乳動物細胞などの別の生物において維持されることを可能にする要素も有し得、これらのベクターは、シャトルベクターと呼ばれる。
標的又は宿主細胞へのベクターの挿入は、通常、細菌細胞の場合に形質転換と呼ばれ、真核細胞の場合にはトランスフェクションと呼ばれ、さらにウイルスベクターの挿入は、形質導入と呼ばれることが多い。
一般に、操作されたベクターは、複製起点、多クローニング部位及び選択可能マーカーを含む。ベクター自体は、一般的には、インサート(導入遺伝子)と、ベクターの「骨格」としての役割を果たすより大きい配列とを含むヌクレオチド配列、通常、DNA配列である。遺伝子コードは、所与のコード領域のポリペプチド配列を決定するが、他のゲノム領域は、これらのポリペプチドがいつどこで生成されるかに影響を及ぼし得る。そのため、現代のベクターは、導入遺伝子インサート及び骨格の他に、以下の追加の特徴を包含し得る:プロモーター、遺伝子マーカー、抗生物質耐性、レポーター遺伝子、ターゲティング配列、タンパク質精製タグ。
発現ベクター(発現構築物)と呼ばれるベクターは、具体的には、標的細胞における導入遺伝子の発現のためのものであり、一般に制御配列を有する。
用語「制御配列」は、特定の宿主生物における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。例えば、原核生物に好適な制御配列としては、プロモーターが挙げられ、任意選択的にオペレーター配列及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、コザック配列及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、この核酸が別の核酸配列と機能的関連性をもって置かれる場合、「作動可能に連結されて」いる。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、このDNAがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、このポリペプチドのDNAに作動可能に連結されているか、プロモーター又はエンハンサーは、これが配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されているか、又はリボソーム結合部位は、このリボソーム結合部位が翻訳を促進するような位置に置かれる場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結されている」とは、連結されているヌクレオチド配列が連続的であり、分泌リーダーの場合に連続的であり且つ読み取りフェーズにあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、連続している必要はない。連結は、都合のよい制限部位でのライゲーションによって達成される。このような部位が存在しない場合、従来の慣例に従い、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを使用する。
「トランスフェクション」は、標的細胞に核酸分子又はポリヌクレオチド(ベクターを含む)を意図的に導入するプロセスである。この用語は、真核細胞における非ウイルス性の方法に主に用いられる。形質導入は、核酸分子又はポリヌクレオチドのウイルスを介した移入を説明するために使用されることが多い。動物細胞のトランスフェクションは、典型的には、細胞膜に一過性の細孔又は「穴」を開けて材料の取り込みを可能にすることを伴う。トランスフェクションは、生物学的粒子(例えば、ウイルス形質導入とも称されるウイルストランスフェクション)、化学ベースの方法(例えば、リン酸カルシウム、リポフェクション、Fugene、カチオン性ポリマー、ナノ粒子を使用する)又は物理的処理(例えば、電気穿孔、マイクロインジェクション、遺伝子銃、細胞スクイージング、マグネトフェクション、静水圧、インペイルフェクション、音波処理、光学的トランスフェクション、熱ショック)を使用して実行することができる。
用語「形質転換」は、細菌、また植物細胞などの非動物真核細胞への核酸分子又はポリヌクレオチド(ベクターを含む)の非ウイルス移入を説明するために使用される。したがって、形質転換は、細胞膜を通じたその周辺からの直接的取り込み及びそれに続く外来性遺伝子材料(核酸分子)の組み込みから生じる細菌又は非動物真核細胞の遺伝的改変である。形質転換は、人為的手段によって生じさせることができる。形質転換が起こるには、細胞又は細菌が形質転換受容状態でなければならず、これは、飢餓及び細胞密度などの環境条件に対する時間的に限られた反応として起こる可能性があり、人為的に生じさせることもできる。
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチド/核酸分子又は本発明のベクターで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」又は「レシピエント細胞」という用語は、本発明の結合構築物をコードするベクター、外来性核酸分子及び/若しくはポリヌクレオチドのレシピエントであり得るか若しくはレシピエントであった任意の個々の細胞若しくは細胞培養物並びに/又は結合構築物自体のレシピエントを含むことを意図している。細胞内への個々の材料の導入は、形質転換、トランスフェクションなどにより行われる(上記を参照されたい)。「宿主細胞」という用語は、単一細胞の継代又は潜在的な継代を含むことも意図する。後続の世代において、天然の、偶然の又は意図的な変異のいずれかに起因したか又は環境の影響に起因した特定の改変が生じ得ることから、そのような子孫は、実際には親細胞と(形態又はゲノム若しくは全DNA相補体が)完全に同一でないこともあり得るが、それもなお本明細書で使用されるこの用語の範囲内に含まれる。好適な宿主細胞としては、原核細胞又は真核細胞が挙げられ、限定されないが、細菌(大腸菌(E.coli)など)、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞及び動物細胞(例えば、昆虫細胞及び哺乳動物細胞、例えばハムスター、マウス、ラット、マカク又はヒト)も挙げられる。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核微生物は、本発明の結合構築物のための好適なクローニング又は発現の宿主である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)又は一般的なパン酵母が下等真核生物宿主微生物の中で最も一般的に使用されている。しかしながら、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、K.ラクティス(K.lactis)、K.フラギリス(K.fragilis)(ATCC 12424)、K.ブルガリクス(K.bulgaricus)(ATCC 16045)、K.ウィッカラミイ(K.wickeramii)(ATCC 24178)、K.ワルティイ(K.waltii)(ATCC 56500)、K.ドロソフィラルム(K.drosophilarum)(ATCC 36906)、K.サーモトレランス(K.thermotolerans)及びK.マルキサヌス(K.marxianus)などのクリベロマイセス属(Kluyveromyces)宿主;ヤロウイア属(yarrowia)(欧州特許第402226号明細書);ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(欧州特許第183070号明細書);カンジダ属(Candida);トリコデルマ・レシア(Trichoderma reesia)(欧州特許第244234号明細書);ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa);シュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)などのシュワニオミセス属(Schwanniomyces);並びに糸状菌、例えばニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)及びアスペルギルス属(Aspergillus)宿主(A.ニデュランス(A.nidulans)及びA.ニガー(A.niger)など)など、多くの他の属、種及び株が一般に入手可能であり、本明細書において有用である
グリコシル化結合構築物の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞及び昆虫細胞が含まれる。多くのバキュロウイルスの株及びバリアント並びに宿主由来の対応する許容される昆虫宿主細胞(例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(イモムシ)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ショウジョウバエ)及びカイコ(Bombyx mori))が同定されている。トランスフェクションのための様々なウイルス株、例えばオートグラファカリフォルニア(Autographa californica)NPVのL-1バリアント及びカイコ(Bombyx mori)NPVのBm-5株が公的に入手可能であり、そのようなウイルスを、本発明による本明細書のウイルスとして特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用し得る。
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、シロイヌナズナ及びタバコの植物細胞培養物も宿主として使用することができる。植物細胞培養物におけるタンパク質の産生に有用なクローニング及び発現ベクターは、当業者に知られている。例えば、Hiatt et al.,Nature(1989)342:76-78、Owen et al.(1992)Bio/Technology 10:790-794、Artsaenko et al.(1995)The Plant J 8:745-750及びFecker et al.(1996)Plant Mol Biol 32:979-986を参照されたい。
しかしながら、最も高い関心が持たれてきたのは、脊椎動物細胞であり、培養下(細胞培養下)での脊椎動物細胞の増殖は日常的手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系統(例えば、COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓系統(例えば、293細胞又は懸濁培養物中での成長のためにサブクローニングされた293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));仔ハムスター腎臓細胞(例えば、BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(例えば、CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(例えば、TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980));サル腎細胞(CVI ATCC CCL 70など);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL1587など);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2など);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34など)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442など);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75など);ヒト肝細胞(Hep G2、1413 8065など);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL-51など);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y Acad.Sci.(1982)383:44-68);MRC 5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞腫株(Hep G2など)である。
結合構築物の製造
さらなる実施形態において、本発明は、本発明の結合構築物を作製する方法を提供し、前記方法は、本発明の結合構築物の発現を許容する条件下において、本発明の宿主細胞を培養することと、産生された結合構築物を培養物から回収することとを含む。
本明細書で使用する場合、用語「培養」は、培地中の好適な条件下におけるインビトロでの細胞の維持、分化、成長、増殖(proliferation)及び/又は増殖(propagation)を指す。細胞は、適切な温度及び混合気体において細胞成長培地中で成長して維持される。培養条件は、細胞型毎に幅広く異なる。典型的な成長条件は、約37℃の温度、約5%のCO濃度及び約95%の湿度である。成長培地のレシピは、例えば、pH、炭素源(例えば、グルコース)の濃度、成長因子の性質及び濃度並びに他の栄養素(例えば、アミノ酸又はビタミン)の存在が異なり得る。補足培地に使用される成長因子は、動物血液の血清(例えば、胎仔ウシ血清(FBS)、仔ウシ血清(FCS)、ウマ血清及びブタ血清)に由来することが多い。細胞を浮遊培養液中において又は付着培養物としてのいずれかで成長させ得る。浮遊培養下で生存可能であるように改変されており、したがって付着条件で可能であろうよりも高密度に成長し得る細胞株もある。
「発現」という用語には、本発明の結合構築物の製造に関与するあらゆるステップが含まれ、例えば、以下に限定されないが、転写、転写後修飾、翻訳、折畳み、翻訳後修飾、特定の細胞内又は細胞外位置へのターゲティング及び分泌が含まれる。「回収する」という用語は、細胞培養物から結合構築物を単離することを意図した一連のプロセスを指す。「回収」又は「精製」プロセスは、細胞培養物のタンパク質部分と非タンパク質部分とを分離し、最終的に所望の結合構築物を他の全てのポリペプチド及びタンパク質から分離することができる。分離ステップは、通常、タンパク質サイズ、物理化学的特性、結合親和性及び生物学的活性の違いを利用する。分取精製は、その後の使用のために比較的大量の精製タンパク質を生成することを目的とするが、分析精製は、様々な研究又は分析目的のために比較的少量のタンパク質を生成する。
組換え技術を使用する場合、結合構築物は、細胞膜周辺腔において細胞内で産生されるか又は培地中に直接分泌され得る。結合構築物が細胞内で産生される場合、第1段階として、例えば遠心分離又は限外濾過により、宿主細胞又は溶解した断片の粒子状の細片を除去する。本発明の結合構築物は、例えば、大腸菌(E.coli)などの細菌中で産生され得る。発現後、構築物を細菌細胞ペーストから可溶性画分で単離し、例えばアフィニティークロマトグラフィー及び/又はサイズ排除によって精製することができる。最終精製は、哺乳動物細胞において発現され、培地中に分泌される結合構築物を精製するためのプロセスと同様の方法で行うことができる。Carter et al.(Biotechnology(NY)1992 Feb;10(2):163-7)は、大腸菌(E.coli)の細胞周辺腔に分泌される抗体を単離する手順を説明している。
抗体が培地に分泌される場合、そのような発現系からの上清は、一般に、まず市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えば限外濾過ユニットを使用して濃縮される。
宿主細胞から調製された本発明の結合構築物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析及びアフィニティークロマトグラフィーを使用して回収又は精製することができる。イオン交換カラムでの分画、混合モードイオン交換、HIC、エタノール沈殿、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンセファロースでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフィー、免疫親和性(プロテインA/G/Lなど)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、超遠心分離及び硫酸アンモニウム沈殿などのタンパク質精製のための他の技術も、回収される結合構築物に応じて利用可能である。
タンパク質分解を阻害するために、プロテアーゼ阻害剤が前述のステップのいずれかに含まれ得、夾雑物の増殖を防止するために抗生物質が含まれ得る。
製剤
さらに、本発明は、本発明の結合構築物又は本発明のプロセスにより製造された結合構築物を含む組成物又は製剤を提供する。
本発明の組成物には、液体、凍結及び凍結乾燥組成物が含まれるが、これらに限定されない。
組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。一般に、本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、薬剤投与、特に非経口投与と適合性のある、ありとあらゆる水性及び非水性溶液、滅菌溶液、溶媒、緩衝液、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)溶液、水、懸濁液、油/水エマルションなどのエマルション、各種湿潤剤、リポソーム、分散媒及びコーティングを意味する。医薬組成物におけるそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野でよく知られており、そのような担体を含む組成物は、よく知られる従来法によって製剤化することができる。
特定の実施形態は、本発明の結合構築物及びさらに1つ以上の賦形剤、例えば本節及び本明細書の他の箇所に例示的に記載されているものを含む医薬組成物を提供する。本発明では、賦形剤を多様な目的(例えば、製剤の物理的特性、化学的特性若しくは生物学的特性の調整(例えば、粘度の調整))のために使用し得、且つ/又は有効性を改善し、及び/若しくは例えば製造、出荷、貯蔵、使用前調製、投与及びその後に生じるストレスに起因する分解及び変質に対してそのような製剤及びプロセスを安定化させるために本発明のプロセスで使用し得る。賦形剤は、一般に、最も低い有効濃度で使用されるものとする。
特定の実施形態では、組成物は、pH、モル浸透圧濃度、粘度、透明度、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解速度又は放出速度、吸着又は浸透などの組成物の特定の特性を改変、維持又は保存する目的のための製剤材料を含み得る(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18”Edition,1990,Mack Publishing Companyを参照されたい)。そのような実施形態では、好適な製剤材料としては、以下に限定されないが、例えばアミノ酸、抗菌剤及び抗真菌剤などの抗菌薬、酸化防止剤、緩衝液、緩衝系及び緩衝剤(これらは、組成物を生理学的pH若しくはそれよりわずかに低いpH、典型的には約5~約8若しくは9のpH範囲内で維持するために使用される)、非水性溶媒、植物油及び注射用有機エステル、水、アルコール/水溶液を含む水性担体、エマルション又は懸濁液(生理食塩水及び緩衝媒体を含む)、生分解性ポリマー(ポリエステルなど)、増量剤、キレート剤、等張剤及び吸収遅延剤、錯化剤、充填剤、炭水化物、(低分子量)タンパク質、ポリペプチド若しくはタンパク質担体(好ましくはヒト起源のもの)、着色剤及び香味剤、硫黄含有還元剤、希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー、塩形成対イオン、防腐剤、金属錯体、溶媒及び共溶媒、糖及び糖アルコール、懸濁化剤、界面活性剤又は湿潤剤、安定性向上剤、等張性向上剤、非経口送達ビヒクル又は静脈内送達ビヒクルを挙げることができる。
組成物の種々の構成成分は、異なる効果を有し得、例えば、アミノ酸は、緩衝液、安定剤及び/又は酸化防止剤としての役割を果たし得、マンニトールは、増量剤及び/又は等張化促進剤としての役割を果たし得、塩化ナトリウムは、送達媒体及び/又は等張化促進剤としての役割を果たし得るなどである。
本発明の特定の実施形態において、例えば組成物若しくは製剤のイオン強度及び/若しくは等張性を調整し、且つ/又は本発明に係る組成物の結合構築物若しくは他の成分の溶解度及び/若しくは物理的安定性を向上させるために塩が使用され得る。イオンは、タンパク質の表面上の帯電した残基に結合することにより、且つタンパク質の帯電した基及び極性基を遮蔽し、その静電相互作用、引力及び斥力相互作用の強度を低減させることにより、天然状態のタンパク質を安定化させることができる。イオンは、特にタンパク質の変性ペプチド結合(--CONH)に結合することによって変性状態のタンパク質を安定化することもできる。さらに、タンパク質中の荷電基及び極性基とのイオン相互作用は、分子間静電相互作用を低減し、それによりタンパク質の凝集及び不溶化を防止又は低減することもできる。
イオン種は、タンパク質に対するその効果が著しく異なる。イオン及びタンパク質に対するその効果の分類上の順位付けがいくつか立案されており、これを本発明による医薬組成物の製剤化に使用することができる。一例は、イオン性溶質及び極性非イオン性溶質を溶液中のタンパク質の立体構造安定性に対する効果によって順位付けするホフマイスター系列である。安定化する溶質は、「コスモトロピック」と称される。不安定化溶質は、「カオトロピック」と称される。コスモトロープは、一般に、溶液からタンパク質を沈殿させるため高濃度で使用される(「塩析」)。カオトロープは、一般に、タンパク質を変性及び/又は可溶化させるために使用される(「塩溶」)。「塩溶」及び「塩析」に対するイオンの相対的な効果により、ホフマイスター系列でのイオンの位置が定義される。
遊離アミノ酸は、増量剤、安定剤及び酸化防止剤として且つ他の標準的な使用のために、本発明の様々な実施形態による本発明の結合構築物を含む製剤又は組成物において使用することができる。特定のアミノ酸は、製剤中のタンパク質を安定化するために使用することができ、他のアミノ酸は、有効成分の正しいケーキ構造及び特性を確実にするために凍結乾燥中に有用である。いくつかのアミノ酸は、液体製剤及び凍結乾燥製剤の両方でタンパク質凝集を阻害するのに有用であり得、他のアミノ酸は酸化防止剤として有用である。
ポリオールは、コスモトロピックであり、液体製剤及び凍結乾燥製剤の両方で安定剤としてタンパク質を物理的及び化学的な分解過程から保護するのに有用である。ポリオールは、製剤の張性を調整するために、且つ輸送中の凍結融解ストレスから保護するか又は製造過程中のバルク調製のために有用である。ポリオールは、本発明に関連して凍結保護物質としても機能することができる。
本発明の結合構築物を含む製剤又は組成物の特定の実施形態は、界面活性剤を含むことができる。タンパク質は、表面に吸着しやすく、変性しやすく、結果的に、気-液界面、固-液界面及び液-液界面で凝集しやすい。これらの有害相互作用は、概してタンパク質濃度と逆比例して規模が増減し、典型的には、製品の配送及び取り扱い中に生じるものなど、物理的動揺によって悪化する。界面活性剤は、表面吸着を防止するか、最小限にするか又は低減するために日常的に使用されている。
界面活性剤は、タンパク質の立体配座の安定性を制御するためにも通常使用される。これに関して、1つの特定の界面活性剤が典型的には一部のタンパク質を安定させ、他のタンパク質を不安定にするであろうことから、界面活性剤の使用は、タンパク質特異的である。
本発明の結合構築物を含む製剤又は組成物の特定の実施形態は、1つ以上の酸化防止剤を含むことができる。医薬製剤中のタンパク質の有害な酸化は、適切なレベルの周囲酸素及び周囲温度を維持し、且つ光への曝露を回避することにより、ある程度まで防止することができる。酸化防止賦形剤は、タンパク質の酸化分解を防止するために使用することもできる。本発明による治療用タンパク質製剤に使用するための酸化防止剤は水溶性であり、製品(結合構築物を含む組成物)の貯蔵寿命を通してそれらの活性を維持することができることが想定される。
酸化防止剤は、タンパク質を損傷する可能性もあり、したがってとりわけ酸化防止剤が製剤中の結合構築物又は他のタンパク質を損傷する可能性を排除又は十分に低減するように選択されるべきである。
本発明による製剤は、タンパク質の補因子であり、タンパク質配位化合物を形成するのに必要とされる金属イオン、例えば特定のインスリン懸濁液を形成するのに必要とされる亜鉛を含み得る。金属イオンは、タンパク質を分解するいくつかのプロセスを阻害することもできる。しかしながら、金属イオンは、タンパク質を分解する物理的及び化学的プロセスも触媒する。マグネシウムイオン(10~120mM)は、アスパラギン酸のイソアスパラギン酸への異性化を阻害するために使用することができる。Ca+2イオン(最大100mM)は、ヒトデオキシリボヌクレアーゼの安定性を増大させ得る。しかしながら、Mg+2、Mn+2及びZn+2は、rhDNaseを不安定化し得る。同様に、Ca+2及びSr+2は、第VIII因子を安定化することができ、これは、Mg+2、Mn+2及びZn+2、Cu+2及びFe+2によって不安定化されることがあり、その凝集は、Al+3イオンによって増大し得る。
本発明の結合構築物を含む製剤又は組成物の特定の実施形態は、1つ以上の保存剤を含むことができる。保存剤は、例えば、同じ容器から2回以上取り出すことが関わる複数回用量非経口製剤の開発時に必要である。その主な機能は、製剤の貯蔵寿命又は使用期間にわたって微生物の増殖を阻害し、製品の無菌性を確保することである。保存剤には、小分子非経口物質で使用されてきた長い歴史があるが、保存剤を含むタンパク質製剤の開発は難題であり得る。保存剤は、タンパク質に不安定効果(凝集)を及ぼすことが極めて多く、これは、複数回用量タンパク質製剤におけるその使用が制限される主因になっている。保存処理された剤形の製剤化及び開発中、いくつかの態様を考慮する必要がある。製品中の有効保存剤濃度は、最適化されなければならない。これには、タンパク質安定性を損なうことなく抗微生物有効性を付与する濃度範囲に関して投薬形態における所与の保存剤を試験する必要がある。
保存剤を含有する液体製剤の開発は、凍結乾燥製剤よりも困難である。凍結乾燥製品は、保存剤なしに凍結乾燥させ、使用時に保存剤を含有する希釈剤で再構成することができる。これにより、保存剤が結合構築物と接触している時間が短縮され、付随する安定性リスクが大幅に小さく抑えられる。液体製剤では、製品の全貯蔵寿命にわたって保存剤の有効性及び安定性が維持されなければならない。注意すべき重要な点は、防腐剤の有効性が、活性薬物及び全ての賦形剤成分を含有する最終製剤において実証されるべきであることである。医薬組成物が製剤化されると、溶液、懸濁液、ゲル、エマルション、固体、結晶として又は脱水粉末若しくは凍結乾燥粉末として無菌バイアル中に保存され得る。そのような製剤は、即時使用が可能な形態又は投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥)で保存され得る。
キット
さらなる実施形態では、本発明は、MAGEB2に結合し、腫瘍試料中のMAGEB2の検出に有用である結合構築物を含むキットであって、結合構築物は本明細書に開示される結合構築物のいずれかを含むキットを提供する。一実施形態では、MAGEB2の検出に有用な結合構築物は、MAGEB2に結合するモノクローナル抗体である。さらなる実施形態では、キットは、MAGEB2を発現する癌を治療するのに有効な治療薬をさらに含む。特定の実施形態では、キットは、MAGEB2を検出し、癌治療薬を投与するための説明書を含む添付文書を任意選択的に提供することができる。
さらなる実施形態では、キットは、MAGEB2以外の様々なバイオマーカーを検出するのに有用な結合構築物(例えば、抗体)をさらに含み、例えばMAGEA4結合構築物又はMAGEA8結合構築物をさらに含む。
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」には、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形の言及が含まれる。したがって、例えば、「試薬」に対する言及は、1つ以上のそのような種々の試薬を含み、「方法」に対する言及は、本明細書に説明される方法のために改変され得るか又はそれと置換され得る、当業者に知られた均等のステップ及び方法に対する言及を含む。
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、その一連の中にあるあらゆる要素に言及していると理解されるものとする。当業者は、本明細書で説明されている本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又はルーチンに過ぎない実験を使用して確認し得るであろう。そのような均等物は、本発明に包含されることが意図されている。
用語「及び/又は」は、本明細書のいずれの箇所で使用されるにしても、「及び」、「又は」及び「用語によって連結される要素の他のあらゆる組み合わせ」の意味を含む。
本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、所与の値又は範囲の±20%以内、好ましくは±15%以内、より好ましくは±10%以内、最も好ましくは±5%以内を意味する。これには、具体的な値も含まれ、例えば「約50」には値「50」が含まれる。
本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、文脈上特に要求されない限り、「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる」などの変化形は、説明されている整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含むが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を除外しないことを含意すると理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、「含有する」若しくは「包含する」という用語で置換され得るか、又は本明細書で使用される場合、ときに「有する」という用語で置換され得る。
本明細書で使用される場合、「からなる」は、特許請求の範囲の要素において指定されていないいかなる要素、ステップ又は成分も除外する。本明細書で使用される場合、「から実質的になる」は、特許請求の範囲の基本的且つ新規の特徴に事実上影響を与えない材料又はステップを除外しない。
本明細書における各例において、「含む」、「から実質的になる」及び「からなる」のいずれも他の2つの用語のいずれかに置き換えられ得る。
上述の説明及び以下の例は、例示的構成を提供するが、しかし、本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、技法、プロトコール、材料、試薬、物質などに限定されず、したがって変更し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図せず、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。本発明の態様は、独立請求項で提供される。本発明のいくつかの任意選択的な特徴は、従属請求項に提供される。
本明細書の本文全体において引用されている全ての刊行物及び特許(全ての特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様書、説明書などを含む)は、上記又は下記を問わず、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書中のいかなる内容も、先行発明による開示に本発明が先行する権利を有しないことを承認するものとして解釈されるべきではない。参照により組み込まれる資料が本明細書と矛盾するか又は不一致となる範囲において、本明細書がそのようないずれの資料よりも優先される。
本発明及びその利点のより適切な理解が以下の実施例から得られるが、実施例は、例示目的で提供されるに過ぎない。実施例は、本発明の範囲を決して限定することを意図されず、且つそのように解釈されるべきではない。
実施例1:MAGEB2免疫原設計
以下の35のH.サピエンス(H.sapiens)MAGEファミリーメンバーのタンパク質配列をUniProtKB(www.uniprot.org)からダウンロードした:MAGEA1(P43355)、MAGEA2(P43356)、MAGEA3(P43357)、MAGEA4(P43358)、MAGEA5(P43359)、MAGEA6(P43360)、MAGEA8(P43361)、MAGEA9(P43362)、MAGEA10(P43363)、MAGEA11(P43364)、MAGEA12(P43365)、MAGEB1(P43366)、MAGEB2(O15479)、MAGEB3(O15479)、MAGEB4(O15481)、MAGEB5(Q9BZ81)、MAGEB6(Q8N7X4)、MAGEB10(Q96LZ2)、MAGEB16(A2A368)、MAGEB17(A8MXT2)、MAGEB18(Q96M61)、MAGEC1(O60732)、MAGEC2(Q9UBF10)、MAGEC3(Q8TD91)、MAGED1(Q9Y5V3)、MAGED2(Q9UNF1)、MAGED4(Q96JG8)、MAGEE1(Q9HCI5)、MAGEE2(Q8TD90)、MAGEH1(Q9H213)、MAGEF1(Q9HAY2)、MAGEL2(Q9UJ55)、NSE3(Q96MG7)、TROP(Q12816)及びNECD(Q99608)。クレードを、Geneious v10.2のNeighbor-Joining Tree Builderアルゴリズムを使用して決定した。
アラインメント内の所与の位置で観察されるアミノ酸の多様性を表す定量的メトリックであるシャノンエントロピーを使用して、全MAGEファミリー及びMAGE-Bクレード(B1、B2、B3、B4、B5、B17)にわたってアミノ酸保存性の低いMAGEB2ペプチド免疫原を選択した。MAGEファミリー又はMAGE-Bクレードメンバーを、MUSCLEを用いてアラインした(R.C.Edgar.Nucleic Acids Res.2004;32(5),1792-1797)。シャノンエントロピーを、アラインメント内の各位置において、H(j)=-Σij logij(ここで、HS(j)は、位置jにおけるシャノンエントロピーであり、fijは、位置jにおけるAAiの頻度である)を用いて計算した。シャノンエントロピーを、各原子のPDB b因子を、その対応する残基についての正規化されたシャノンエントロピー値で置き換えるカスタムスクリプトを使用して、MAGEA4(PDB ID 2wa0)のMAGE相同性ドメイン(MHD)の構造又はMAGEB2のMHDのロゼッタ相同性モデルにマッピングし、次いでb因子による色を使用してPyMOL v1.8(PyMOL Molecular Graphics System、Version 1.8 Schroedinger、LLC)において可視化した。
カスタムスクリプトを使用して、スライディングウィンドウ法により、アラインメント内の長さn(n=5~40アミノ酸)の領域を平均シャノンエントロピーの最高~最低(保存性の最低~最高)に決定的にランク付けした。MAGEファミリー全体では、ファミリー全体にわたって最も低い保存性を有する長さ10~30の領域が3つの異なる領域にクラスター化する。すなわち、2つの領域がMHDのN末端側にあり、1つの領域がMHDのN末端ヘリックス内にある。MAGE-Bクレードの分析により、MHDの2つの球状葉の界面のループ上に位置する低保存性のクレード特異的領域が明らかになった。MAGEB2ペプチド免疫原を、低保存性の以下の3つの同定された領域から選択した:MHDのN末端領域、MHDのN末端ヘリックス及びMDH界面ループ領域。これらの領域内のペプチド範囲を、平均シャノンエントロピースコア、配列アラインメントの目視検査、溶媒接近性及びPSIPREDによって予測される単離されたペプチドとしての二次構造の保存(Jones DT.(1999)Protein secondary structure prediction based on position-specific scoring matrices.J.Mol.Biol.292:195-202)などの構造的特徴の考慮並びに非還元体のh.サピエンス(h.sapiens)プロテオームに対するシーケンスblastにより、非MAGEタンパク質において高い相同性を有するヒットが明らかになったかどうかに基づいて精密化した。ペプチド免疫原として選択されたMAGEB2の領域は、MAGEB2a.a.43-76:SSVSGGAASSSPAAGIPQEPQRAPTTAAAAAAGV(N末端領域ペプチド);MAGEB2a.a.95-125:SSSQASTSTKSPSEDPLTRKSGSLVQFLLYK(MHDのN末端ヘリックスペプチド);及びMAGEB2a.a.185-200:DLTDEESLLSSWDFPR(MHDの中間ループペプチド)であった。
MAGEB2免疫原に対して>50%のペアワイズ同一性を有するMAGEホモログからのペプチドを実験カウンタースクリーニングのために選択した。さらなるMAGEB2ホモログペプチドをカウンタースクリーニングのために選択した。MAGEB2a.a.43-76(N末端領域ペプチド)では、選択されたカウンタースクリーニングペプチドは、MAGE-B1、B4、B17、A4、A1、A5、A12、A6、A3、A2、A11及びA8に由来した。MAGEB2a.a.95-125(MHDのN末端ヘリックスペプチド)では、選択されたカウンタースクリーニングペプチドは、MAGE-B4、B5、B17、C3、A11、A8、A9、A3、A10、F1、A4、A5、A12、C2、A2、E1及びC1に由来した。MAGEB2a.a.185-200(MHDの中間ループペプチド)では、MAGEB1由来の単一カウンタースクリーニングペプチドを選択した。
実施例2:抗体の生成及び選択
免疫化
標準的なプロトコールに従ってウサギを免疫し、脾細胞を単離し、免疫動物から凍結した。
抗原特異的選別のためのペプチドの調製
27のビオチン標識MAGEカウンタースクリーニングペプチド(表7)を等モル濃度で一緒にプールして、ワーキングカクテルを作製した。カクテルを、2%FBS FACS緩衝液(2v/v%FBSを含むカルシウム及びマグネシウムを含まないPBS)中、ニュートラアビジン(Fisher:PI31000)に4:1(ニュートラアビジン:ペプチド)のモル比で複合化した。混合物を4℃で15時間インキュベートした。3つのビオチン標識MAGEB2標的ペプチド(N末端領域ペプチド、中間ループ領域ペプチド、N末端ヘリックスペプチド、表8を参照されたい)のそれぞれを、2%FBS FACS緩衝液中、異なる蛍光タグ付きストレプトアビジンと、同じ4:1(ストレプトアビジン:ペプチド)モル比を使用して複合体化し、次いで4℃で15分間インキュベートした。MAGEB2 N末端ペプチドをBV421ストレプトアビジン(BD:563259)に複合体化し、MAGEB2中間ループ領域ペプチドをBV605ストレプトアビジン(BD:563855)に複合体化し、MAGEB2 N末端ヘリックスペプチドをAlexa Fluor 647ストレプトアビジン(Jackson:016-600-084)に複合体化した。
未結合のストレプトアビジン又はニュートラアビジンを、過剰量のD-ビオチン(Fisher:BP232-1)を600:1(D-ビオチン:ストレプトアビジン又はニュートラアビジン)のモル比で添加することによってクエンチし、次いでペプチドを4℃でさらに15分間インキュベートした。3つのMAGEB2標的ペプチドを使用直前に一緒にプールした。
Figure 2024513376000018
Figure 2024513376000019
抗原特異的選別のためのウサギ脾細胞の調製
ウサギ脾細胞を10%ICM(免疫細胞培養培地)に解凍し、Miltenyi Biotec MACS死細胞除去キット(Miltenyi:130-090-101)を用いて死細胞を除去した。次いで、細胞を10mLの冷2%FBS FACS緩衝液中で洗浄した。400Gで4分間、遠心分離した後、血清用ピペットを用いて上清を除去し、ニュートラアビジン複合体化MAGEカウンタースクリーニングペプチドのカクテルを添加した。細胞を4℃で30分間インキュベートした後、3つのストレプトアビジン複合体化MAGEB2標的ペプチドを5μgのFITC結合ヤギ抗ウサギIgG Fc抗体(Serotec:STAR121F)と共に添加し、IgG発現抗原特異的細胞を染色した。1mLの反応体積中のペプチドの最終濃度は、カウンタースクリーニングペプチドのカクテルは120nMであり、各標的ペプチドは16.5nMであった。細胞をさらに30分間4℃でインキュベートし、次いで10mLの冷2%FBS FACS緩衝液中で洗浄し、再度遠心分離した。上清を除去した後、細胞を2mLの10%ICMに再懸濁し、次いで40μmの細胞ストレーナーに通して、凝集塊を除去した。10μLの7-AAD生存率染色液(Fisher:00-6993-50)を選別の10分前に細胞に添加した。
抗原特異的細胞の選別及び培養
405nmレーザー(検出:450/50nm、610/20nm)、488nmレーザー(検出:530/30nm、695/40nm)及び640nmレーザー(検出:730/45nm)を備えたBD FACSAria IIIで、100ミクロンノズルを用い、20Psiシース圧で細胞を選別した。死細胞を、7-AADにおいて蛍光性ではない集団上でゲーティングすることによって除外し、MAGEB2標的ペプチドバインダーを、以下の選択基準を用いて3つのゲートを引くことによって選別した:FITC+/BV421+、FITC+/BV605+、FITC+/Alexa Fluor 647+(図1を参照されたい)。最初の選別は、収率精度モードを用いて行い、標的集団を約0.1%から約50%に濃縮し、これに続いて、純度精度モードを用いて第2ラウンドの選別を行い、4%ウサギT細胞上清を補充した10%ICM、2μL/mLの抗ウサギIgGマイクロビーズ(Miltenyi:130-048-602)及び437,500細胞/mLの密度でガンマ線照射EL4細胞を予め充填した384ウェル組織培養プレートにMAGEB2標的ペプチドバインダーを単一細胞選別した。プレートを組織培養インキュベーター(37℃、5%CO)内に保管し、7日後、倒立顕微鏡を用いて目視スコアリングにより増殖を評価した。8日後、組織培養プレートから上清を回収し、細胞を緩衝液RLT(Qiagen:79216)中に溶解し、-80℃で凍結した。
MAGEB2抗体の初期検出
B細胞培養上清を、ウサギIgG捕捉ELISAを用いて陽性分泌抗体の存在についてスクリーニングした。ヤギ抗ウサギIgG(Fc)(Jackson、カタログ番号111-005-046)を、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、4℃で一晩、Corning 3702 384ウェルポリスチレンプレート上にコーティングした。
プレートを、Titertekプレート洗浄機を用いて4サイクル洗浄し、1×PBS/1%乳でブロッキングした。次いで、プレートを吸引し、B細胞培養上清を最終的に1:5で1×PBS/1%乳で希釈し、室温で1時間インキュベートした。プレートを4サイクル洗浄し、次いで1×PBS/1%乳で調製した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ヒトIgG(Fc)(Jackson、カタログ番号111-035-046)を添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを4サイクル洗浄し、次いで1ステップTMB(Neogenカタログ番号319177)を室温で30分間添加し、続いて1N塩酸でクエンチした。プレートをMultiscan AscentプレートリーダーによりOD450nmで読み取り、計129個のウサギ抗体が陽性であり、領域ごとのヒット数の内訳を以下の表9に示す。
Figure 2024513376000020
MAGEB2特異的抗体の同定
xMAP LumAvidinマイクロスフェア又はLuminexビーズ(Luminexカタログ番号L100-LXXX-01)にコーティングされたビオチン化MAGEB2ペプチドを用いて、MAGEB2抗体の結合を試験した。これらのアビジン結合微粒子はスペクトル的に異なる領域に色分けされており、独自の蛍光色素の組み合わせにより、ビオチン化タンパク質の非共有結合が可能である。ウサギIgG捕捉ELISA結果を第1のビーズベースのFACSアッセイにおいて検証するために、129のウサギ抗体のパネルを、以下のウサギを免疫したのと同じ3つのペプチドに対して試験した:MAGEB2中間ループ領域ペプチド、MAGEB2 N末端ヘリックスペプチド及びMAGEB2 N末端領域ペプチド。3つのビオチン化ペプチドを、FACS緩衝液[1×PBS+2%ウシ胎児血清(Hycloneカタログ番号SH30396.03)]中の3つの異なるLumAvidinビーズを用いて、暗所において室温で30分間コーティングした。次いで、3500RPMで2分間遠心分離することにより、ビーズをFACS緩衝液中で2回洗浄した。コーティングされたビーズを再懸濁し、一緒にプールし(3部分)、Corning 3897 96ウェルV底ポリスチレンプレート上のB細胞培養上清に1:2の最終希釈で添加し、暗所において室温で1時間インキュベートした。FACS緩衝液中でさらに2回洗浄した後、FACS緩衝液中で作製したAlexa 488結合ヤギ抗ウサギIgG(Fc)(Jackson、カタログ番号111-545-046)を添加し、暗所において室温で15分間インキュベートした。最終洗浄を行った後、プレートを、Intellicyteオートサンプラーを備えたiQue FACS装置で読み取り、製造業者の推奨に従ってフローサイトメトリー測定値を得、Intellicyt ForeCyt(登録商標)Enterprise Client Edition6.2(R3)でデータの分析を行った。合計82個のウェルがMAGEB2陽性であると同定され、領域ごとのヒット数の内訳は以下の表10に示すとおりであった。
Figure 2024513376000021
第2のビーズベースのFACSアッセイにおいて、129個のウサギ抗体のパネルを以下の同様の配列の9個の他のペプチドに対して試験して、MAGEB2特異性を決定した:MAGEB1中間ループ領域ペプチド、MAGEB4 N末端ヘリックスペプチド、MAGEB5 N末端ヘリックスペプチド、MAGE17 N末端ヘリックスペプチド、MAGEF1 N末端ヘリックスペプチド、MAGEE1 N末端ヘリックスペプチド;MAGEB1 N末端ペプチド、MAGEB4 N末端領域ペプチド及びMAGEB17 N末端領域ペプチド。9つのビオチン化ペプチドを、FACS緩衝液[1×PBS+2%ウシ胎児血清(FBS)]中の9つの異なるLumAvidinビーズを用いて、暗所において室温で30分間コーティングした。次いで、3500RPMで2分間遠心分離することにより、ビーズをFACS緩衝液中で2回洗浄した。コーティングされたビーズを再懸濁し、一緒にプールし(9部分)、Corning 3897 96ウェルV底ポリスチレンプレート上のウサギB細胞培養上清に1:2の最終希釈で添加し、暗所において室温で1時間インキュベートした。FACS緩衝液中でさらに2回洗浄した後、FACS緩衝液中で作製したAlexa 488結合ヤギ抗ウサギIgG(Fc)(Jackson、カタログ番号111-545-046)を添加し、暗所において室温で15分間インキュベートした。最終洗浄を行った後、プレートを、Intellicyteオートサンプラーを備えたiQue FACS装置で読み取り、製造業者の推奨に従ってフローサイトメトリー測定値を得、Intellicyt ForeCyt(登録商標)Enterprise Client Edition6.2(R3)でデータの分析を行った。計43個のウェルがMAGEB2特異的であると同定され、領域ごとのヒット数の内訳は以下の表11に示すとおりであった。43個のウェル全てで重鎖及び軽鎖の配列決定が行われた。
Figure 2024513376000022
MAGEB2高親和性抗体の同定
43個のMAGEB2特異的抗体のいずれをクローニングに進めるかを決定するために、完全長MAGEB2タンパク質を用いてLumAvidinビーズで限定抗原(LA)動態FACSアッセイを行い、パネルをランク付けし、親和性が最も高い抗体を選択した。
pET23中のhuMAGEB2(1-319)をBL21(DE)-star pLysS株(Invitrogen)に形質転換した。単独コロニーを使用してカルベニシリン(50μg/mL)及びクロラムフェニコール(34μg/mL)を添加した2mLのルリアブロスに接種し、混濁するまで37℃で数時間振盪させながら増殖させた。200マイクロリットルの培養物を使用して、選択抗生物質及び消泡剤204(Sigma)を補充した400mLのルリアブロス(Teknova)に接種した。これらの培養物を24℃で一晩振盪させながら増殖させた。混濁培養物を用いて、1%(w/v)グルコース、2mM MgSO、17μg/Lカルベニシリン、12μg/Lクロラムフェニコール及び消泡剤204を補充した1リットルのテリフィックブロス(Teknova)(4Lバッフル付き振盪フラスコ中)にOD600=0.2まで播種した。これらの培養物をOD600=1.0になるまで37℃で振盪させながら増殖させ、その後、16℃にシフトし、OD600=2.0まで増殖させた。この時点で100μMのIPTGを用いてタンパク質発現を16時間誘導した。遠心分離により細胞をペレット化し、処理するまで-80℃で保存した。
MAGEB2ペレットを、Polytron PT2100ホモジナイザーを用いて、溶解緩衝液(100mMトリス pH8.0、500mM NaCl、15mM bME、5mM ベンズアミジン、0.01mg/mLリゾチーム、0.05mg/mL Dnase1、5%(v/v)グリセロール及びHaltプロテアーゼ阻害剤錠(Pierce))に再懸濁した。ホモジナイズした細胞を、マイクロフルイダイザーM-110Y(Mircofluidics)を用いて3回のパスで溶解した。溶解物をベックマン遠心分離機のJLA-16.250ローターにより13,000rpmで遠心分離し、清澄化した。清澄化した溶解物を0.22μmフィルタで濾過した後、HisTrap Excelカラム(Cytiva)に適用した。樹脂を25mMトリス pH8.5、0.5M NaCl、10mM BME、5%グリセロール、10mMイミダゾールで洗浄し、MAGEB2を25mMトリス pH8.5、0.5M NaCl、10mM BME、5%グリセロール、500mMイミダゾールで溶出した。
捕捉された親和性MAGEB2を20mMトリス pH8.5、0.5M NaCl、5%(v/v)グリセロール、1mM TCEPに対して透析し、20mMトリス pH8.5、5%(v/v)グリセロール、1mM TCEPに25倍希釈した後、Q-sepharose HP(Cytiva)を用いたイオン交換クロマトグラフィーを行った。結合したMAGEB2を、20mM~500mMのNaCl勾配を用いて20CVにわたってカラムから溶出した。ピーク画分をSDS-PAGEによって分析し、低分子量バンドの非存在に基づいてプールした。1mM EDTA及び0.1%CHAPSの添加後、カスパーゼ3プロテアーゼを1:100(w/w)比で使用して、n末端6×HisタグをMAGEB2から除去した。消化を4℃で一晩進行させた。消化物を20mMトリス pH8.5、0.25M NaCl、1mM TCEPに対して透析してCHAPS及びEDTAを除去した後、イオン交換クロマトグラフィーを行った。
透析したMAGEB2を20mMトリスpH8.5、1mM TCEP中に10倍希釈し、Q-sepharose HP樹脂(Cytiva)に適用した。結合したMAGEB2を、20mM~500mMのNaCl勾配を用いて20CVにわたってカラムから溶出した。ピーク画分をSDS-PAGEによって分析し、高分子量バンドの非存在に基づいてプールした。このプールを、50mMビシン pH8.3、10mM酢酸Mg、10mM ATP及び50μM d-ビオチンを含む組換えBirAを用いてビオチン化した。反応を4℃で一晩進行させ、MAGEB2へのビオチンの付加をモニターするために、5μgのタンパク質を質量分析(装置及び方法をDylanに依頼)により分析した。
ビオチン化反応物を20mMトリス pH8.5、150mM NaCl、1mM TCEPに対して透析して、過剰なATP及びビオチンを除去した。透析後、試料を20mmトリス pH8.5、1mM TCEPで10倍に希釈し、Q-sepharose HP(Cytiva)に適用した。結合したMAGEB2を、20mM~500mMのNaCl勾配を用いて20CVにわたってカラムから溶出した。ピーク画分をSDS-PAGEによって分析し、37Kdバンドの存在に基づいてプールした。プールした画分を、10Kd MWCOスピンフィルター(Sartorius)を用いて濃縮した。濃縮したMAGEB2を30mM HEPES pH8.2、0.15M NaCl、1mM TCEPに対して透析し、0.22μm Posidyneシリンジフィルター(Pall)に通して濾過し、-80℃で保存した。
精製中、質量分析を用いて、インタクトなMAGEB2、カスパーゼ-3切断MAGEB2及びビオチン化MAGEB2の同一性を確認した。精製中間体及び最終タンパク質ロットの均質性を、Agilent 1200 LCシステムにより、YARA 3μm SEC 2000カラム(Phenomenex)を使用して、サイジングHPLC分析を行って測定した。タンパク質濃度は、Spectramax分光光度計(Molecular Devices)を使用して、A280吸光度によって決定した。
ビオチン化MAGEB2完全長タンパク質を、6つの異なる限定された抗原濃度にわたって1:2で滴定し、次いでFACS緩衝液[1×PBS+2%ウシ胎児血清(Hycloneカタログ番号SH30396.03)]中の6つの異なるLumAvidinビーズ上に、暗所において室温で30分間コーティングした。次いで、3500RPMで2分間遠心分離することにより、ビーズをFACS緩衝液中で2回洗浄した。コーティングされたビーズを再懸濁し、一緒にプールし(6部分)、Corning 3897 96ウェルV底ポリスチレンプレート上のウサギB細胞培養上清に1:2の最終希釈で添加し、暗所において室温で一晩インキュベートした。翌日、FACS緩衝液中で2回洗浄した後、FACS緩衝液中で作製したAlexa 488結合ヤギ抗ウサギIgG(Fc)(Jackson、カタログ番号111-545-046)を添加し、暗所において室温で15分間インキュベートした。最終洗浄を行った後、プレートを、Intellicyteオートサンプラーを備えたiQue FACS装置で読み取り、製造業者の推奨に従ってフローサイトメトリー測定値を得、Intellicyt ForeCyt(登録商標)Enterprise Client Edition6.2(R3)でデータの分析を行った。LAデータを配列データとアラインし、形24個の最高親和性、配列多様性抗体を同定した。領域ごとのヒット数の内訳を以下の表12及び本明細書の図2に示す。
Figure 2024513376000023
抗体の重鎖及び軽鎖の配列決定
メッセンジャーRNA(mRNA)を、mRNAキャッチャプラスキット(Invitrogen)を用いて、抗体産生細胞を含むウェルから精製した。精製したRNAを用いて、逆転写によるcDNA合成、続いてポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により抗体重鎖及び軽鎖の可変領域(V)遺伝子を増幅した。ウサギ抗体ガンマ重鎖を、Qiagen1ステップ逆転写酵素PCRキット(Qiagen)を用いて得た。この方法を用いて、RNA鋳型から最初のcDNA鎖を生成し、次いでマルチプレックスPCRによりガンマ重鎖の可変領域を増幅した。5’ガンマ鎖特異的プライマーを抗体重鎖のシグナル配列にアニーリングした一方、3’プライマーをガンマ定常ドメインの領域にアニーリングした。ウサギカッパ軽鎖を、1ステップ逆転写酵素PCRキット(Qiagen)を用いて得た。この方法を用いて、RNA鋳型から最初のcDNA鎖を生成し、次いでマルチプレックスPCRによりカッパ軽鎖の可変領域を増幅した。5’カッパ軽鎖特異的プライマーを抗体軽鎖のシグナル配列にアニーリングした一方、3’プライマーをカッパ定常ドメインの領域にアニーリングした。
PCR産物を配列決定し、アミノ酸配列を対応する核酸配列からバイオインフォマティクス的に推定した。観察されたいずれの変異もPCRの結果ではないことを確認するために、各試料について、2つの追加の独立したRT-PCR増幅及び配列決定サイクルを行った。次に、得られたアミノ酸配列を分析して、抗体の生殖細胞系列配列起点を決定し、生殖細胞系列配列からの差異を特定した。重鎖及び軽鎖配列のそれぞれとそれらの元の生殖系列配列との比較を本明細書の配列表4に示す。アミノ酸配列を用いて、類似性によってクローンをグループ分けした。
選択された抗体の可変領域カッパ軽鎖DNA配列を合成遺伝子として作製した。これらの合成遺伝子を、ウサギカッパ定常領域と共に、pTT5に基づく発現ベクターにクローニングした。選択された抗体の可変領域重鎖DNA配列を合成遺伝子として作製した。これらの合成遺伝子を、ウサギIgG定常領域と共に、pTT5に基づく発現ベクターにクローニングした。クローニング後、これらの抗体をPEIでトランスフェクトしたHEK2936E細胞中で発現させた。
実施例3:免疫組織化学的アッセイ
目的
ヒトMAGEB2に対する24個のウサギ抗ヒトMAGEB2抗体の特異性及び他のMAGE-B及びMAGE-Aファミリーメンバーに対する潜在的交差反応性を免疫組織化学的(IHC)染色によって評価する。
概要
24のウサギ抗ヒトMAGEB2上清をトランスフェクトしたヒトMAGEB2+対照細胞上のヒトMAGEB2への結合についてIHCによって評価した。最初のスクリーニングアッセイ後、所望の属性を有する4つのMAGEB2クローン(4G17、1J15、1C3、1I14)からの小バッチ精製抗体アリコートを、トランスフェクトされたヒトMAGE-A+及びMAGE-B+ファミリーメンバー対照細胞、正常ヒト精巣組織、正常ヒト組織TMA並びに既知の内因性MAGEB2 RNA発現レベルを有する13のヒト癌細胞株についてIHCにより評価した。MAGEB2抗体クローン1I14及び1C3は、IHCに望ましい特性を示した。
材料及び方法
対照細胞及び組織
陰性対照細胞には、親チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、mCherryベクター対照(-Myc/DDKタグ)で安定にトランスフェクトされたCHO細胞、mCherry-ヒトDCAF4L2(+Myc/DDKタグ)で安定にトランスフェクトされたCHO細胞が含まれた。交差反応性対照細胞には、ヒトMAGE-B又はMAGE-Aファミリーメンバー(MAGEA1、MAGEA2、MAGEA3、MAGEA4、MAGEA5、MAGEA6、MAGEA8、MAGEA9、MAGEA11、MAGEA12、MAGEB1、MAGEB3、MAGEB4、MAGEB5、MAGEB6、MAGEB10、MAGEB16、MAGEB17、MAGEB18)の1つを含むmCherryベクター対照(+Myc/DDKタグ)でトランスフェクトされたCHO細胞が含まれた。陽性対照細胞には、ヒトMAGE-B2を含むmCherryベクター(+Myc/DDKタグ)でトランスフェクトされたCHO細胞又はヒトMAGEB2を含むmCherryベクター(オープンリーディングフレーム(ORF);-Myc/DDKタグ)でトランスフェクトされたCHO細胞及びMAGEB2の既知の内因性RNA発現レベルを有する13のヒト癌細胞株(U266B1、T98G、KMM-1、U2OS、CFPAC-1、SCaBER、UACC-257、CFPAC-1、VMRC-LCD、NCI-H1703、UM-UC-3、NCI-H1395、NCIH82)が含まれた。
細胞ペレットを10%中性緩衝ホルマリンに固定し、アガロース/グリセリン(カタログ番号HG-4000-12、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を含有するHistogelTMに懸濁し、パラフィンブロックに加工した。Human Tissue Science Center(HTSC)から入手した2つのFFPE正常ヒト精巣組織及び1つのFFPE正常ヒト肝組織をそれぞれ陽性対照及び陰性対照として使用した。
Figure 2024513376000024
Figure 2024513376000025
組織マイクロアレイ
FFPE正常TMAスライド(正常ヒトマルチプル臓器組織マイクロアレイ)をUS BioMax(FDA999x、Crabbs Branch Way、Derwood、MD;https://www.biomax.US/FDA999x)から得た。
抗体
24のヒトMAGEB2クローン上清(モノクローナルウサギIgG1抗体)を、IHC染色により、ヒトMAGEB2への結合並びに対照細胞上の他のMAGE-A及びMAGE-Bファミリーメンバーに対する潜在的交差反応性について評価した。24のヒトMAGEB2クローンの4つ(4G17、1J15、1C3、1I14)は、IHC染色によるMAGEB2特異性及び感度のさらなる評価のための最も有望な候補であった。4つのMAGEB2クローン(4G17、1J15、1C3、1I14)からの小バッチ精製抗体アリコートをMAGE-A及びMAGE-Bファミリー交差反応性対照細胞、対照精巣組織並びに正常ヒト組織TMAでIHCによって評価した。ウサギモノクローナルIgG1アイソタイプ対照(EPR25A)は、Abcam(カタログ番号ab172730、ロット番号GR3235749-11、Cambridge、United Kingdom;https://www.abcam.com/rabbit-igg-monoclonal-epr25a-isotype-control-ab172730.html)から購入した。
免疫組織化学アッセイ
FFPE試料を4μmで切片化し、正に帯電したスライドガラス上に載置した。載置後、パラフィン切片を室温で風乾した。FFPE TMA試料を新たに切片化したものとして受け取り、スライドガラス上に載置した。完全自動化IHCアッセイを、Discovery Ultra Stainer(Ventana Medical Systems、Tucson、AZ)で、Ventana抗ウサギHQ(カタログ番号760-4815)、Ventana抗HQ HRP(カタログ番号760-4820)及びカゼインを含むVentana抗体希釈液(カタログ番号760-219)(Ventana Medical Systems、Tucson、AZ)を用いて実行した。スライドをDiscovery Ultra Stainerにより60℃で8分間ベーキングし、Ventana Discovery洗浄液(カタログ番号950-510)により69℃で3サイクル(各8分間)脱パラフィンし、CC1緩衝液(カタログ番号950-500)中、95℃で16分間(細胞アレイの場合)又は32分間(組織又はTMA)、細胞コンディショニング(標的回復)を行った。その後、スライドをVentana Option Prepキット(カタログ番号771-751)中でバックグラウンドスナイパー(カタログ番号BS966M、Biocare Medical、Pacheco、CA)と共に28分間インキュベートし、CM阻害剤(Ventana DABキット(カタログ番号760-159)の一部)と共に12分間インキュベートし、Ventana Prepキット(カタログ番号770-001)中でカゼインを含むVentana希釈液で希釈したMAGE-B2抗体(細胞ペレットでは0.1μg/mlの実施濃度、組織では1~5μg/mlの実施濃度)と共にRTで1時間インキュベートするか、又は対応濃度のアイソタイプ対照ウサギIgG1抗体と共にインキュベートした。続いて、スライドをVentana抗ウサギHQ(カタログ番号760-4815)と共にRTで28分間インキュベートし、Ventana抗HQ HRP(カタログ番号760-4820)と共にRTで28分間インキュベートし、Ventana DAB色原体キット(カタログ番号760-159)によりRTで5分間シグナルを検出した。スライドをVentanaヘモキシリンll(カタログ番号5266726001)で8分間対比染色し、Ventana青み試薬(カタログ番号526676900)で4分間対比染色した。スライドをカバースリップし、Aperio AT2スキャナー(Leica Biosystems Inc、Buffalo Grove、IL)を用いてデジタル化した。
Figure 2024513376000026
結果
24のウサギ抗ヒトMAGEB2抗体上清をMAGEB2への結合並びに他のMAGE-A及びMAGE-Bファミリーメンバーに対する潜在的交差反応性についてIHCによって評価した。24のヒトMAGEB2抗体上清の5つ(5H20、1J13、1J14、714、7J6)は、ヒトMAGEB2+トランスフェクト細胞のIHCでは、MAGEB2を検出しなかった。24の抗体上清の19は、ヒトMAGEB2+トランスフェクト細胞のIHCでMAGEB2を検出し、他のヒトMAGEA+及びMAGEB+ファミリーメンバー交差反応性対照細胞で評価した。19の上清の4つ(4G17、1J15、1C3、1I14)は、ヒトMAGEB2+トランスフェクト対照細胞で最も強いIHCシグナルを示し、他のMAGE-A及びMAGE-Bファミリーメンバーでは交差反応性が最低であるか/又は交差反応性を示さず、さらなる評価のための候補として選択された。
24のMAGEB2抗体上清は、精製抗体ではなかったことに留意されたい。廃棄されたクローンの1つの偽陽性交差反応性の結果は、上清による非特異的染色によるものであり得る。4つのMAGEB2クローン(4G17、1J15、1C3、1I14)からの小バッチ精製抗体アリコートを、トランスフェクトされたヒトMAGEA+及びMAGEB+ファミリーメンバー対照細胞について再試験し、既知の内因性RNA発現レベルのMAGEB2を有する対照精巣組織、正常組織TMA及び13のヒト癌細胞株についてIHCにより試験した。
4つの抗MAGEB2抗体(4G17、1J15、1C3、1I14)でトランスフェクトされたヒトMAGEB2+細胞において強い膜/細胞質染色があり(図3)、他のヒトMAGE-A+及びMAGE-B+ファミリーメンバー交差反応性対照細胞に対して交差反応性がなかった(図4、表15)。精巣では、精原細胞の細胞質から膜への染色を特徴とした強いMAGEB2 IHC染色が認められた。精巣生殖細胞のサブセットにおける核染色は、4G17、1J15及び1C3クローンで観察され、ライディッヒ細胞における免疫染色は、1J15及び4G17クローンで観察された。ライディッヒ染色は非特異的である可能性が高い(図5)。核染色は、精巣組織においてのみ観察されたことから、おそらく特異的であると考えられ、核局在化は、E2F転写活性、細胞増殖及びリボ毒性ストレスに対する耐性の増強において役割を果たすと考えられる(Peche et al 2015)。
4つの抗MAGEB2抗体(4G17、1J15、1C3、1I14)を正常組織TMAで評価した。MAGEB2特異的免疫染色は、精巣コアにおいてのみ観察された。肝臓、副腎及び腸などの他の組織において4G17、1J15及び1C3クローンで観察された免疫染色は、非特異的であると推定された。MAGEB2抗体(1I14)は、免疫グロブリンG(IgG)アイソタイプ対照と比較した場合、最も低い非特異的/バックグラウンド免疫染色を示した(表16、17、18、19)。抗体クローン1I14は、MAGEB2を検出するための優れたIHC試薬であることを示す特性を示す(図6)。さらに、MAGEB2(1C3)抗体のダウンタイトレーションは、肝臓組織において観察される非特異的バックグラウンド免疫染色を完全に低下させたが、精巣におけるMAGEB2特異的免疫染色は依然として保持された(図7)。
抗MAGEB2抗体4G17、1J15、1C3、1I14は、13のヒト癌細胞株において様々なレベルのMAGEB2発現を検出した。MAGEB2 IHC発現頻度は、U266B1細胞では高く(約90%)、T98G、KMM-1、U2OS細胞では中程度(約70%)であり、CFPAC-1、UACC-257、CFPAC-1、VMRC-LCD、NCI-H1703、UM-UC-3、NCI-H1395、NCI-H82細胞株では検出不能であった。SCaBER細胞におけるMAGEB2 IHC発現頻度は、4つのMAGEB2クローン(4G17、1J15、1C3、1i14)で一致せず、おそらく各抗体の結合強度が異なるか、又はIHCアッセイ条件が最適化されていないことによるものであろう(表20)。
結論
24のウサギ抗ヒトMAGEB2抗体を、MAGEB2に対する特異性及びFFPE組織上のIHC染色による他のMAGEファミリーメンバーに対する潜在的交差反応性について評価した。24のうちの19は、対照MAGEB2+細胞においてIHCによりMAGEB2を検出した。19の抗体の4つ(4G17、1J15、1C3、1I14)を徹底的に試験し、他のMAGE-A又はMAGE-Bファミリーメンバーとの交差反応性を示さず、対照精巣組織において強いIHCシグナルを示し、既知の内因性RNA発現レベルのMAGEB2を有する13種のヒト癌細胞株においてMAGEB2 IHCシグナルを検出した。4つのMAGEB2抗体の3つ(4G17、1J15、1C3)は、正常なヒト組織TMAで肝臓及び副腎においていくらかの非特異的バックグラウンドIHC染色を示した。データを本明細書の表15~20に要約する。
配列
ヒトMAGEB2アミノ酸配列(配列番号1):
>sp|O15479|MAGB2_ヒトメラノーマ関連抗原B2 OS=ホモ・サピエンス(Homo sapiens)OX=9606 GN=MAGEB2 PE=1 SV=3
Figure 2024513376000027
3つの例示的なモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の完全アミノ酸配列は、以下のとおりである。
>1C3_LC(配列番号555)
Figure 2024513376000028
>1C3_HC(配列番号556)
Figure 2024513376000029
>1I14_LC(配列番号557)
Figure 2024513376000030
>1I14_HC(配列番号558)
Figure 2024513376000031
>1H17_LC(配列番号559)
Figure 2024513376000032
>1H17_HC(配列番号560)
Figure 2024513376000033
本発明のさらなる例示的な配列を本明細書の表21~23に提供する。
Figure 2024513376000034
Figure 2024513376000035
Figure 2024513376000036
Figure 2024513376000037
Figure 2024513376000038
Figure 2024513376000039
Figure 2024513376000040
Figure 2024513376000041
Figure 2024513376000042
Figure 2024513376000043
Figure 2024513376000044
Figure 2024513376000045
Figure 2024513376000046
Figure 2024513376000047
Figure 2024513376000048
Figure 2024513376000049
Figure 2024513376000050
Figure 2024513376000051
Figure 2024513376000052
Figure 2024513376000053
Figure 2024513376000054
Figure 2024513376000055
Figure 2024513376000056
Figure 2024513376000057
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Figure 2024513376000059
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Figure 2024513376000069
Figure 2024513376000070
Figure 2024513376000071
Figure 2024513376000072
Figure 2024513376000073
Figure 2024513376000074
Figure 2024513376000075
Figure 2024513376000076
Figure 2024513376000077
Figure 2024513376000078
Figure 2024513376000079
Figure 2024513376000080
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Figure 2024513376000085
Figure 2024513376000086

Claims (27)

  1. MAGEB2に結合する単離された抗原結合構築物であって、配列番号2、3、4又は388~554から選択される配列を含むエピトープに結合する、単離された抗原結合構築物。
  2. CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、前記CDRL1は、配列番号85に記載の配列を含み、前記CDRL2は、配列番号86に記載の配列を含み、前記CDRL3は、配列番号87に記載の配列を含み、前記CDRH1は、配列番号229に記載の配列を含み、前記CDRH2は、配列番号230に記載の配列を含み、及び前記CDRH3は、配列番号231に記載の配列を含む、請求項1に記載の単離された抗原結合構築物。
  3. CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、前記CDRL1は、配列番号73に記載の配列を含み、前記CDRL2は、配列番号74に記載の配列を含み、前記CDRL3は、配列番号75に記載の配列を含み、前記CDRH1は、配列番号217に記載の配列を含み、前記CDRH2は、配列番号218に記載の配列を含み、及び前記CDRH3は、配列番号219に記載の配列を含む、請求項1に記載の単離された抗原結合構築物。
  4. CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、前記CDRL1は、配列番号91に記載の配列を含み、前記CDRL2は、配列番号92に記載の配列を含み、前記CDRL3は、配列番号93に記載の配列を含み、前記CDRH1は、配列番号235に記載の配列を含み、前記CDRH2は、配列番号236に記載の配列を含み、及び前記CDRH3は、配列番号237に記載の配列を含む、請求項1に記載の単離された抗原結合構築物。
  5. 配列番号346に記載の配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号347に記載の配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の単離された抗原結合構築物。
  6. 配列番号338に記載の配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号339に記載の配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の単離された抗原結合構築物。
  7. 配列番号350に記載の配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号351に記載の配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の単離された抗原結合構築物。
  8. モノクローナル抗体又はその抗体断片である、請求項1~7のいずれか一項に記載の単離された抗原結合構築物。
  9. IgG1又はIgG2アイソタイプのものである、請求項8に記載の単離された抗体。
  10. 標識基に結合されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の単離された抗原結合構築物。
  11. 請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合構築物又はその断片をコードする核酸分子。
  12. 請求項11に記載の核酸分子を含むベクター。
  13. 請求項12に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
  14. 請求項13に記載の宿主細胞によって産生される抗原結合構築物又はその断片。
  15. 請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合構築物又はその断片を作製する方法であって、前記抗体を分泌する宿主細胞から前記抗体又はその断片を調製するステップを含む方法。
  16. 請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその断片とMAGEB2への結合について競合する単離された抗体又はその断片。
  17. MAGEB2に結合する抗体を作製する方法であって、
    配列番号2、3又は4から選択される配列を含むペプチドで動物を免疫するステップと、
    MAGEB2に結合する抗体を前記動物から単離するステップと
    を含む方法。
  18. 請求項17に記載の方法によって作製された抗体。
  19. 対象における腫瘍を治療する方法であって、
    前記腫瘍に由来する細胞を含む試料を前記対象から取得し、前記試料中のMAGEB2のレベルを、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合構築物を使用して測定し、前記対象が抗MAGEB2治療薬による治療に反応すると決定することにより、前記対象が抗MAGEB2治療薬による治療に反応すると決定するステップと、
    前記対象に有効量の前記抗MAGEB2治療薬を投与するステップと
    を含む方法。
  20. 対象が抗MAGEB2治療薬を必要としていると特定する方法であって、
    a)前記対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合構築物を使用して決定するステップと、
    b)前記MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、前記対象が前記抗MAGEB2治療薬を必要としていると特定するステップと
    を含む方法。
  21. MAGEB2陽性腫瘍を有する対象に対する治療を決定する方法であって、
    前記対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合構築物を使用して決定するステップと、
    前記MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、前記治療が抗MAGEB2治療薬を含むと決定するステップと
    を含む方法。
  22. 対象における抗MAGEB2治療薬による治療の有効性を決定する方法であって、
    抗MAGEB2治療薬による治療前及び抗MAGEB2治療薬による治療後、前記対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合構築物を使用して決定するステップと、
    前記抗MAGEB2治療薬による治療後にMAGEB2陽性腫瘍細胞のレベルが減少する場合、前記治療が有効であると決定するステップと
    を含む方法。
  23. 腫瘍を有する対象を診断する方法であって、
    a)前記対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合構築物を使用して決定するステップと、
    b)前記MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、前記対象がMAGEB2陽性腫瘍を有すると診断するステップと
    を含む方法。
  24. MAGEB2陽性腫瘍を有する対象を特定する方法であって、
    a)前記対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合構築物を使用して決定するステップと、
    b)前記MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、前記対象がMAGEB2陽性腫瘍を有すると特定するステップと
    を含む方法。
  25. 対象が抗MAGEB2治療薬を必要としていると特定する方法であって、
    a)前記対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合構築物を使用して決定するステップと、
    b)前記MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、前記対象が前記抗MAGEB2治療薬を必要としていると特定するステップと
    を含む方法。
  26. MAGEB2陽性腫瘍を有する対象に対する治療を決定する方法であって、
    前記対象から取得された試料中のMAGEB2のレベルを、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合構築物を使用して決定するステップと、
    前記MAGEB2のレベルが対照と比較して増加する場合、前記治療が抗MAGEB2治療薬を含むと決定するステップと
    を含む方法。
  27. MAGEB2は、IHCアッセイを使用して検出される、請求項19~26のいずれか一項に記載の方法。
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