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JP2018081787A - リチウムイオン二次電池用正極の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極の製造方法 Download PDF

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JP2018081787A JP2016222396A JP2016222396A JP2018081787A JP 2018081787 A JP2018081787 A JP 2018081787A JP 2016222396 A JP2016222396 A JP 2016222396A JP 2016222396 A JP2016222396 A JP 2016222396A JP 2018081787 A JP2018081787 A JP 2018081787A
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敦史 杉原
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敦史 杉原
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Abstract

【課題】オリビン型リン酸塩の混合比率が低くても、効率的に熱安定性を向上させることができる、リチウムイオン二次電池用正極の製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)第1正極活物質、導電材、バインダおよび溶媒を混合することにより、第1湿潤顆粒を調製する。(B)第1湿潤顆粒および第2正極活物質を混合することにより、第2湿潤顆粒を調製する。(C)第2湿潤顆粒を集電体の表面に配置することにより、リチウムイオン二次電池用正極を製造する。第1正極活物質は、層状岩塩型酸化物である。第2正極活物質は、オリビン型リン酸塩である。第1正極活物質および第2正極活物質の合計に対して、第2正極活物質が5質量%以上30質量%以下の質量比率を有するように、第2湿潤顆粒が調製される。
【選択図】図1

Description

本開示は、リチウムイオン二次電池用正極の製造方法に関する。
特開2016−076317号公報(特許文献1)は、2種の正極活物質(層状岩塩型酸化物およびオリビン型リン酸塩)を含む正極を開示している。正極は、集電体の表面にペーストが塗布されることにより製造されている。
特開2016−076317号公報
リチウムイオン二次電池の正極活物質として、層状岩塩型酸化物が知られている。層状岩塩型酸化物は理論容量が比較的高いため、電池の高容量化に有利である。しかし層状岩塩型酸化物は、充電状態における結晶構造が不安定である。そのため、層状岩塩型酸化物を含む正極には、充電状態の熱安定性に改善の余地がある。
リチウムイオン二次電池の正極活物質として、オリビン型リン酸塩も知られている。オリビン型リン酸塩は、強固な結晶構造を有するため、充電状態の熱安定性に優れる。さらにオリビン型リン酸塩は、たとえば内部短絡時の抵抗上昇が顕著である。これにより、たとえば内部短絡時の発熱の抑制が期待される。
そこで、特許文献1に示されるように、層状岩塩型酸化物とオリビン型リン酸塩とを混合して使用することが考えられる。しかしオリビン型リン酸塩は、層状岩塩型酸化物よりも理論容量が低い。したがって高容量と熱安定性との両立が困難である。
本開示の目的は、オリビン型リン酸塩の混合比率が低くても、効率的に熱安定性を向上させることができる、リチウムイオン二次電池用正極の製造方法を提供することである。
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし、本開示の作用メカニズムは推定を含んでいる。作用メカニズムの正否により、本開示の発明の範囲が限定されるべきではない。
本開示のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法は、以下の(A)〜(C)を含む。
(A)第1正極活物質、導電材、バインダおよび溶媒を混合することにより、第1湿潤顆粒を調製する。
(B)第1湿潤顆粒および第2正極活物質を混合することにより、第2湿潤顆粒を調製する。
(C)第2湿潤顆粒を集電体の表面に配置することにより、リチウムイオン二次電池用正極を製造する。
第1正極活物質は、層状岩塩型酸化物である。第2正極活物質は、オリビン型リン酸塩である。第1正極活物質および第2正極活物質の合計に対して、第2正極活物質が5質量%以上30質量%以下の質量比率を有するように、第2湿潤顆粒が調製される。
以下「リチウムイオン二次電池用正極」が「正極」と略記される場合がある。
従来、正極の前駆体としてペーストが普及している。「ペースト」とは、正極活物質、導電材およびバインダが溶媒中に分散されることにより調製される分散液である。ペーストが集電体の表面に塗布され、乾燥されることにより正極が製造される。オリビン型リン酸塩は、凝集しやすい性質を有する。層状岩塩型酸化物およびオリビン型リン酸塩の両方を含むペーストでは、オリビン型リン酸塩が溶媒中で凝集するため、オリビン型リン酸塩が偏在した正極が製造されることになる。オリビン型リン酸塩が偏在している場合、オリビン型リン酸塩の優れた熱安定性が正極全体に反映され難いと考えられる。さらに内部短絡時のオリビン型リン酸塩の抵抗上昇も、正極全体に反映され難いと考えられる。そのため、所望の熱安定性を得るために、オリビン型リン酸塩を多量に添加する必要が生じていると考えられる。
本開示の製造方法では、正極の前駆体として湿潤顆粒が使用される。前述のようにペーストでは、溶媒中に粉粒体(正極活物質等)が分散している。他方、湿潤顆粒では、粉粒体中に溶媒が分散していると考えてよい。
第1湿潤顆粒は、第1正極活物質(層状岩塩型酸化物)、導電材およびバインダが湿式造粒されることにより調製される。第1湿潤顆粒は、複合粒子の集合体である。第1湿潤顆粒に含まれる各複合粒子は、それぞれ、第1正極活物質、導電材、バインダおよび溶媒を含む。次いで第1湿潤顆粒および第2正極活物質(オリビン型リン酸塩)が攪拌されることにより、第2湿潤顆粒が調製される。このとき第2正極活物質は、各複合粒子の表面に付着すると考えられる。すなわち、第2正極活物質が複合粒子の表面に配置されると考えられる。最後に第2湿潤顆粒が集電体の表面に配置されることにより正極が製造される。
このようにして製造された正極では、第2正極活物質が偏在することなく、略均等に分布していると考えられる。そのため第2正極活物質(オリビン型リン酸塩)の優れた熱安定性が、正極全体に反映されやすいと考えられる。さらに、この正極では、第1正極活物質が集まった区画(複合粒子に由来する部分)が、第2正極活物質によって仕切られた構造が含まれると考えられる。これにより、内部短絡時、オリビン型リン酸塩の抵抗上昇が効率よく正極全体に反映され、発熱が抑制されると考えられる。
以上より、本開示の製造方法は、オリビン型リン酸塩の混合比率が低率(すなわち5質量%以上30質量%以下)であっても、効率的に熱安定性を向上させることができると考えられる。
図1は、本開示の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極の製造方法の概略を示すフローチャートである。 図2は、第1湿潤顆粒を示す概念図である。 図3は、第2湿潤顆粒を示す概念図である。 図4は、塗布装置の一例を示す概略図である。 図5は、本開示の実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極の構成を示す断面概念図である。
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と記される)が説明される。ただし、以下の説明は、本開示の発明の範囲を限定するものではない。
<リチウムイオン二次電池用正極の製造方法>
図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極の製造方法の概略を示すフローチャートである。本実施形態の製造方法は、(A)第1湿潤顆粒の調製、(B)第2湿潤顆粒の調製、および(C)正極の製造、を含む。
《(A)第1湿潤顆粒の調製》
本実施形態の製造方法は、(A)第1正極活物質、導電材、バインダおよび溶媒を混合することにより、第1湿潤顆粒を調製することを含む。
第1湿潤顆粒は、湿式造粒により調製される。造粒操作は、一般的な攪拌混合装置により実施され得る。すなわち攪拌混合装置の攪拌槽において、第1正極活物質、導電材、バインダおよび溶媒が攪拌、混合されることにより、第1湿潤顆粒が調製され得る。第1湿潤顆粒は、たとえば、72〜85質量%の固形分率を有するように調製されてもよい。固形分率は、溶媒以外の成分の質量比率を示す。図2は、第1湿潤顆粒を示す概念図である。第1湿潤顆粒10は、複合粒子5の集合体である。各複合粒子5は、第1正極活物質1、導電材3および溶媒(図示せず)を含む。
(第1正極活物質)
第1正極活物質は層状岩塩型酸化物である。本実施形態の層状岩塩型酸化物は、層状岩塩型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物である。
層状岩塩型酸化物は下記式(I):
LiMaO2 (I)
(ただし式(I)中、Maは、Ni、Co、MnおよびAlからなる群より選択される少なくとも1種である)
によって表される。
層状岩塩型酸化物の具体例としては、たとえば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi0.5Mn0.52、LiNi0.5Co0.3Mn0.22、LiNi0.6Co0.2Mn0.22、LiNi0.4Co0.2Mn0.42、LiNi0.4Co0.4Mn0.22、LiNi1/3Co1/3Mn1/32、LiNi0.8Co0.15Al0.052、LiNi0.7Co0.2Al0.12、LiNi0.6Co0.2Al0.22等が挙げられる。
高容量化の観点から、上記式(I)においてMaはNiを含むことが好ましい。たとえばNiは、1モルのMaのうち0.3モル以上を占めてもよいし、0.5モル以上を占めてもよいし、0.7モル以上を占めてもよい。上記式(I)において、1モルのMaには、たとえば、Ni、Co、MnおよびAl以外の元素が0.05モル未満含まれていてもよい。Ni、Co、MnおよびAl以外の元素としては、たとえば、F、S、Si、Ti、Cr、V、P、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Hf、W等が挙げられる。第1正極活物質は、1種の層状岩塩型酸化物を単独で含んでいてもよいし、2種以上の層状岩塩型酸化物を含んでいてもよい。
第1正極活物質は、たとえば、1〜20μmの平均粒径を有してもよい。平均粒径は、レーザ回折散乱法によって測定される体積基準の粒度分布において微粒側から累積50%の粒径を示すものとする。
導電材は特に限定されるべきではない。導電材は、たとえば、導電性の炭素材料を含む。炭素材料としては、たとえば、アセチレンブラック(AB)、サーマルブラック、ファーネスブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)等が挙げられる。導電材は、1種の炭素材料を単独で含んでもよいし、2種以上の炭素材料を含んでもよい。100質量部の正極活物質(第1正極活物質および第2正極活物質の合計)に対して、導電材は、たとえば、1〜15質量部でよい。
バインダも特に限定されるべきではない。バインダは、たとえば、結着性の高分子化合物を含む。高分子化合物としては、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)等が挙げられる。バインダは、1種の高分子化合物を単独で含んでもよいし、2種以上の高分子化合物を含んでもよい。100質量部の正極活物質に対して、バインダは、たとえば、1〜5質量部でよい。
溶媒も特に限定されるべきではない。ただし、バインダと馴染みやすい溶媒が望ましい。たとえば、PVdFがバインダとして使用される場合、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が溶媒として使用され得る。
《(B)第2湿潤顆粒の調製》
本実施形態の製造方法は、(B)第1湿潤顆粒および第2正極活物質を混合することにより、第2湿潤顆粒を調製することを含む。
第2湿潤顆粒も攪拌混合装置により調製され得る。すなわち攪拌混合装置の攪拌槽において、第1湿潤顆粒および第2正極活物質が攪拌、混合されることにより、第2湿潤顆粒が調製され得る。この際、溶媒が追加されることにより、固形分率が調整されてもよい。第2湿潤顆粒は、たとえば、72〜82質量%の固形分率を有するように調製されてもよい。図3は、第2湿潤顆粒を示す概念図である。第2湿潤顆粒20において、第2正極活物質2は、複合粒子5の表面に配置されている。
(第2正極活物質)
第2正極活物質はオリビン型リン酸塩である。本実施形態のオリビン型リン酸塩は、オリビン型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合リン酸塩である。
オリビン型リン酸塩は下記式(II):
LiMbPO4 (II)
(ただし式(II)中、Mbは、Fe、Ni、CoおよびMnからなる群より選択される少なくとも1種である)
によって表される。
オリビン型リン酸塩の具体例としては、たとえば、LiFePO4、LiMnPO4、LiMn0.5Fe0.5PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4、LiMn0.2Fe0.8PO4、LiCoPO4、LiNiPO4等が挙げられる。
熱安定性の観点から、上記式(II)においてMbは、Fe、Mnを含むことが好ましい。たとえば、Feは、1モルのMbのうち0.3モル以上を占めてもよいし、0.5モル以上を占めてもよいし、0.8モル以上を占めてもよい。上記式(II)において、1モルのMbには、Fe、Ni、CoおよびMn以外の元素が0.05モル未満含まれていてもよい。Fe、Ni、CoおよびMn以外の元素としては、たとえば、F、S、Al、Si、Ti、Cr、V、P、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Hf、W等が挙げられる。オリビン型リン酸塩は、その表面に炭素膜を含んでもよい。第2正極活物質は、1種のオリビン型リン酸塩を単独で含んでもよいし、2種以上のオリビン型リン酸塩を含んでもよい。第2正極活物質は、たとえば、1〜20μmの平均粒径を有してもよい。
本実施形態では、第1正極活物質および第2正極活物質の合計に対して、第2正極活物質が5質量%以上30質量%以下の質量比率を有するように、第2湿潤顆粒が調製される。第2正極活物質の質量比率が5質量%未満であると、所望の熱安定性が得られない可能性がある。第2正極活物質の質量比率が30質量%を超えると、容量低下が大きく望ましくない。第2正極活物質の質量比率は、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。第2正極活物質の質量比率がこれらの範囲内であることにより、いっそう高容量なリチウムイオン二次電池用正極が提供され得る。
《(C)正極の製造》
本実施形態の製造方法は、(C)第2湿潤顆粒を集電体の表面に配置することにより、リチウムイオン二次電池用正極を製造することを含む。
図4は、塗布装置の一例を示す概略図である。塗布装置200は、3本の回転ロールにより構成されている。すなわち塗布装置200は、第1回転ロール201、第2回転ロール202、および第3回転ロール203を含む。各回転ロールは、図示されていない駆動装置に接続されている。各回転ロールは、各回転ロールに描かれた曲線矢印の方向に回転駆動する。第2回転ロール202は、たとえば、第1回転ロール201よりも速い周速を有してもよい。第3回転ロール203は、たとえば、第2回転ロール202よりも速い周速を有してもよい。
第2湿潤顆粒20は、第1回転ロール201と第2回転ロール202との間のロール隙に供給される。当該ロール隙では、第2湿潤顆粒20がシート状に成形される。これによりシート102が得られる。第2回転ロール202は、シート102を、第2回転ロール202と第3回転ロール203との間のロール隙に供給する。第3回転ロール203は、集電体101を、第2回転ロール202と第3回転ロール203との間のロール隙に供給する。当該ロール隙では、シート102が集電体101の表面に押し付けられることにより、シート102が集電体101の表面に配置される。すなわち、第2湿潤顆粒20が集電体101の表面に配置される。以上より、正極100が製造される。
その後、正極100が乾燥されてもよい。シート102は、集電体101の両面に配置され得る。正極100は、リチウムイオン二次電池の仕様に合わせて、所定の寸法に加工される。ここでの加工は、圧延、裁断を含む。
《リチウムイオン二次電池用正極》
図5は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極の構成を示す断面概念図である。正極100は、集電体101およびシート102を含む。集電体101は、たとえば、1〜30μmの厚さを有してもよい。集電体101は、たとえば、アルミニウム(Al)箔でよい。Al箔は、純Al箔であってもよいし、Al合金箔であってもよい。
シート102は、集電体101の表面に配置されている。シート102は、たとえば、10〜150μmの厚さを有してもよい。シート102は、いわゆる正極合材層に相当する。シート102は、第1正極活物質1、第2正極活物質2、導電材3およびバインダ(図示されず)を含む。第2正極活物質2は、第1正極活物質1および第2正極活物質2の合計に対して、5質量%以上30質量%以下の質量比率を有する。
第2正極活物質2は、シート102全体に略均等に分布している。そのため、第2正極活物質2(オリビン型リン酸塩)の混合比率が低くても、第2正極活物質2の優れた熱安定性が、シート102全体に反映されやすいと考えられる。さらにシート102には、複合粒子5(図1および図2を参照)に由来する区画が含まれる。当該区画には、第1正極活物質1が集まっている。第2正極活物質2は、区画同士を仕切るように分布している。これにより、内部短絡時、第2正極活物質2の抵抗上昇が効率よく正極全体に反映され、発熱が抑制されると考えられる。
正極100は、高容量と熱安定性と両立し得る。この正極を備えるリチウムイオン二次電池は、たとえば、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)の動力電源等に好適である。ただし、本実施形態の正極を備えるリチウムイオン二次電池の用途は、こうした車載用途に限定されるべきではない。本実施形態の正極を備えるリチウムイオン二次電池は、あらゆる用途に適用可能である。
以下、実施例が説明される。ただし以下の例は、本開示の発明の範囲を限定するものではない。
<実施例1>
以下の材料が準備された。
第1正極活物質:LiNixCoyAlz2(x>0、y>0、z>0、x+y+z=1)
第2正極活物質:LiFePO4
導電材:AB
バインダ:PVdF
溶媒:NMP
集電体:Al箔
《(A)第1湿潤顆粒の調製》
95質量部の第1正極活物質、4.3質量部の導電材、3.2質量部のバインダおよび所定量の溶媒が混合されることにより、第1湿潤顆粒が調製された。
《(B)第2湿潤顆粒の調製》
上記で得られた第1湿潤顆粒の全量、および5質量部の第2正極活物質が混合されることにより、第2湿潤顆粒が調製された。すなわち、第1正極活物質および第2正極活物質の合計に対して、第2正極活物質が5質量%の質量比率を有するように、第2湿潤顆粒が調製された。第2湿潤顆粒の固形分率は78質量%とされた。第2湿潤顆粒の固形分の組成は、質量比で「正極活物質:導電材:バインダ=93:4:3」である。ここでの正極活物質は、第1正極活物質および第2正極活物質の合計を示す。
《(C)正極の製造》
図2に示される塗工装置によって、第2湿潤顆粒が集電体の表面に配置され、乾燥された。以上より正極が製造された。
<実施例2〜4、比較例1>
下記表1に示されるように、第1正極活物質および第2正極活物質の合計に対する第2正極活物質の質量比率が変更されることを除いては、実施例1と同じ製造方法により正極が製造された。実施例1〜4ならびに比較例1は、「二段階造粒」により湿潤顆粒が調製された例に相当する。
<比較例2>
100質量部の第1正極活物質、4.3質量部の導電材、3.2質量部のバインダおよび所定量の溶媒が混合されることにより、正極ペーストが調製された。正極ペーストの固形分率は70質量%とされた。正極ペーストの固形分の組成は、質量比で「第1正極活物質:導電材:バインダ=93:4:3」である。ダイコータにより、正極ペーストが集電体の表面に塗布され、乾燥された。これにより正極が製造された。
<比較例3>
95質量部の第1正極活物質、5質量部の第2正極活物質、4.3質量部の導電材、3.2質量部のバインダおよび所定量の溶媒が混合されることにより、正極ペーストが調製された。これを除いては比較例2と同じ製造方法により正極が製造された。
<比較例4〜6>
下記表1に示されるように、第1正極活物質および第2正極活物質の合計に対する第2正極活物質の質量比率が変更されることを除いては、比較例3と同じ製造方法により正極が製造された。比較例3〜6は、ペーストの調製において第1正極活物質および第2正極活物質が一括混合された例に相当する。
<評価>
各例で製造された正極を備えるリチウムイオン二次電池が製造された。電池容量が測定された。結果は、下記表1の「容量」の欄に示されている。「容量」の欄に示される数値は、比較例2の電池容量が100とされた場合の相対値である。電池の内部抵抗が測定された。結果は下記表1の「抵抗」の欄に示されている。釘刺し試験における電池表面の最高到達温度が測定された。結果は下記表1の「到達温度」の欄に示されている。到達温度が低い程、熱安定性が高いことを示している。
Figure 2018081787
<結果>
比較例2は、釘刺し試験における到達温度が高い。正極が第2正極活物質(オリビン型リン酸塩)を含まず、第1正極活物質(層状岩塩型酸化物)のみを含むためと考えられる。
実施例1〜4(湿潤顆粒)は、比較例3〜6(ペースト)に比して、温度上昇の抑制効果(熱安定性の向上効果)が顕著である。実施例の正極内では、第2正極活物質の熱安定性が正極全体に反映されやすく、なおかつ第2正極活物質の抵抗上昇が正極全体に反映されやすいように、第2正極活物質が配置されていると考えられる。したがって実施例の構成によれば、第2正極活物質の混合比率を低く抑えつつ、電池の熱安定性を高めることができる。すなわち、高容量と熱安定性との両立が可能である。
比較例1および実施例1の結果から、温度上昇の抑制効果が得られるためには、第2正極活物質の質量比率が5質量%以上であることを要すると考えられる。今回の実施例では、第2正極活物質の質量比率が30質量%までの範囲において、熱安定性の向上効果が認められた。第2正極活物質の質量比率が30質量%を超えると、容量低下が大きくなるため、電池の高容量化が困難と予想される。したがって、第2正極活物質の質量比率は5質量%以上30質量%以下であることを要する。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 第1正極活物質、2 第2正極活物質、3 導電材、5 複合粒子、10 第1湿潤顆粒、20 第2湿潤顆粒、100 正極、101 集電体、102 シート、200 塗布装置、201 第1回転ロール、202 第2回転ロール、203 第3回転ロール。

Claims (1)

  1. 第1正極活物質、導電材、バインダおよび溶媒を混合することにより、第1湿潤顆粒を調製すること、
    前記第1湿潤顆粒および第2正極活物質を混合することにより、第2湿潤顆粒を調製すること、および
    前記第2湿潤顆粒を集電体の表面に配置することにより、リチウムイオン二次電池用正極を製造すること、
    を含み、
    前記第1正極活物質は、層状岩塩型酸化物であり、
    前記第2正極活物質は、オリビン型リン酸塩であり、
    前記第1正極活物質および前記第2正極活物質の合計に対して、前記第2正極活物質が5質量%以上30質量%以下の質量比率を有するように、前記第2湿潤顆粒が調製される、
    リチウムイオン二次電池用正極の製造方法。
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