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JP2016204254A - 炭素材料の架橋構造体及びその製造方法 - Google Patents

炭素材料の架橋構造体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】引張強度等の機械的強度に優れた炭素材料の架橋構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる炭素材料の架橋構造体は、カーボンナノチューブやグラファイト、フラーレン、カーボンナノコイルなどの炭素材料が相互に架橋した炭素材料の架橋構造体であって、求核性官能基を分子内に2以上有する求核性化合物に由来する連結基により、相互に連結して架橋したことを特徴とするものである。これにより、引張強度などの機械的強度に優れた炭素材料の架橋構造体を提供することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、炭素材料の架橋構造体及びその製造方法に関し、より詳細にはカーボンナノチューブ等の炭素材料に架橋構造を導入し、その機械的強度を向上させた炭素材料の架橋構造体及びその製造方法に関する。
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotubes:CNTs)はsp2結合した炭素原子のみからなる直径数nm〜数十nmの中空円筒状炭素材料である。1層構造のシングウルォールカーボンナノチューブ(Single Wall Carbon Nanotubes:SWCNTs)と多層構造のマルチウォールカーボンナノチューブの(Multi Wall Carbon Nanotubes:MWCNTs)の存在が確認されている。
カーボンナノチューブはこれまで発見された物質の中で最高の引張強度とヤング率を持つことが理論計算により示されている。また、アルミニウムの半分という軽さに由来した非常にしなやかな弾性力を持ち、その優れた機械的強度と軽量性から様々な構造材料への応用が期待されている。
ここで、カーボンナノチューブをマクロスケールの構造材料に応用する場合には、1本のカーボンナノチューブでは適用できず、多数のカーボンナノチューブを組み合わせる必要がある。そのような材料の一例としてカーボンナノチューブを紡糸したカーボンナノチューブ繊維が挙げられる。このカーボンナノチューブ繊維は、それぞれのカーボンナノチューブ同士が、sp2結合よりも弱いファンデルワールス力により接合している。そのため、カーボンナノチューブ繊維を引っ張ると、カーボンナノチューブ間が滑り抜けるため、カーボンナノチューブ繊維の引張強度がカーボンナノチューブ自身の機械的強度よりもはるかに弱く、カーボンナノチューブが持つ特性を十分に活かせないという問題がある。
カーボンナノチューブ繊維の機械的強度を向上させる方法としては、例えば、下記特許文献1に開示のものがある。即ち、当該特許文献によれば、カーボンナノチューブ繊維を紡糸する際に引き出されるカーボンナノチューブ表面に微粒子を担持し、その微粒子が形成する凹凸により、カーボンナノチューブ間の摩擦力を大きくして、カーボンナノチューブ間が滑り抜けるのを抑制し、これにより、引張強度の向上が図れるとされている。
しかしながら、当該方法における引張強度は、前記微粒子を担持しなかったカーボンナノチューブ繊維と比較して、1.3倍程度である。そのため、カーボンナノチューブが持つ特性を十分に活かすためには、引張強度等の機械的強度を一層向上させた炭素材料が必要である。
特開2011−136874号公報
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、引張強度等の機械的強度に優れた炭素材料の架橋構造体及びその製造方法を提供することにある。
本発明の炭素材料の架橋構造体は、前記の課題を解決する為に、炭素材料が相互に架橋した炭素材料の架橋構造体であって、求核性官能基を分子内に2以上有する求核性化合物に由来する連結基により、相互に連結して架橋したものであることを特徴とする。
前記の構成によれば、炭素材料は相互に連結した架橋構造体となっており、しかも当該連結は、求核性官能基を分子内に2以上有する求核性化合物に由来する連結基によりなされている。そのため、例えば、従来のカーボンナノチューブ繊維と比較して、引張強度等の機械的強度を大幅に向上させることができる。
尚、前記「求核性化合物」とは、電子密度が低い炭素原子と反応して結合を作る化学種のことであって、炭素材料同士の架橋構造を形成し得る化合物を意味する。また、前記「求核性官能基」とは、電子密度が低い炭素原子と反応して結合を形成する置換基であって、求核置換反応を行う置換基を意味する。
前記の構成に於いて、前記連結基は、少なくとも表面がハロゲン化した前記炭素材料において、当該炭素材料の表面に存在する炭素−ハロゲン結合におけるハロゲンが、求核置換反応により脱離し、前記求核性官能基に置換されることにより導入された状態の前記求核性化合物からなる。
また、前記の構成に於いては、前記求核性化合物が、鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン、グリニャール試薬、アルキルリチウム、金属アルコキシド、多価アルコール、ジチオール及び有機過酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
また、前記の構成に於いては、前記炭素材料が、活性炭、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、グラファイト、カーボンブラック、ダイヤモンドライクカーボン、炭素繊維、グラフェン、非晶質カーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ及びダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の炭素材料の架橋構造体の製造方法は、前記の課題を解決する為に、炭素材料が相互に架橋した炭素材料の架橋構造体の製造方法であって、前記炭素材料に、0.01〜100vol%のハロゲン原子含有ガスを含む処理ガスを、処理時間1秒〜24時間、処理温度0℃〜600℃の範囲内で接触させて、当該炭素材料の表面をハロゲン化処理する工程と、前記炭素材料に、求核性官能基を分子内に2以上有する求核性化合物を、処理時間1秒〜24時間の範囲内で接触させて架橋処理する工程とを有し、前記ハロゲン化処理と架橋処理は同時に、任意の順序で連続的に、又は何れかの処理中に追加して行われることを特徴とする。
前記の構成において、ハロゲン化処理の工程では、炭素材料にハロゲン原子含有ガスを含む処理ガスを接触させることにより、当該炭素材料の表面にハロゲン基の導入を図り、反応足場を形成させることができる。また、架橋処理の工程では、ハロゲン基が導入された炭素材料に求核性化合物を接触させることにより、当該求核性化合物中の求核性官能基が、反応足場となっている炭素原子と反応し、ハロゲン原子を脱離させることができる。そして、当該求核性化合物中の他の求核性官能基が、他の炭素材料においても同様に求核置換反応をすることにより、炭素材料同士が連結基により相互に連結して架橋構造を形成させることができる。その結果、前記の構成によれば、従来のカーボンナノチューブ繊維と比較して、引張強度等の機械的強度を大幅に向上させた炭素材料の架橋構造体を製造することができる。
前記の構成に於いては、前記求核性化合物として、鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン、グリニャール試薬、アルキルリチウム、金属アルコキシド及び有機過酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることができる。
また、前記の構成に於いては、前記炭素材料として、活性炭、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、グラファイト、カーボンブラック、ダイヤモンドライクカーボン、炭素繊維、グラフェン、非晶質カーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ及びダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
本発明の炭素材料の架橋構造体によれば、炭素材料が、求核性官能基を分子内に2以上有する求核性化合物に由来する連結基により相互に連結して架橋構造を形成しているので、例えば、従来のカーボンナノチューブ繊維等を比較して、引張強度等の機械的強度を大幅に向上させることができる。
また、本発明の炭素材料の架橋構造体の製造方法によれば、ハロゲン化処理により炭素材料の表面にハロゲン基を導入し、架橋処理によりハロゲン基を脱離させて、求核性化合物に由来する連結基を導入し、炭素材料同士を架橋させることができる。すなわち、本発明の製造方法であると、従来のカーボンナノチューブ繊維等と比較して、引張強度等の機械的強度に優れた炭素材料の架橋構造体を製造することができる。
本発明の実施の一形態に係る炭素材料の架橋構造体の製造方法を説明するための説明図である。 本発明の実施例1〜7、10〜17に係る未処理のカーボンナノチューブ繊維及びその架橋構造体におけるXPSスペクトル(炭素1sスペクトル)を表すグラフである。 本発明の実施例1〜7、10〜17に係る未処理のカーボンナノチューブ繊維及びその架橋構造体におけるXPSスペクトル(窒素1sスペクトル)を表すグラフである。 本発明の実施例8、9に係る未処理のカーボンナノチューブ繊維、フッ素化処理後のカーボンナノチューブ及びその架橋構造体におけるXPSスペクトル(フッ素1sスペクトル)を表すグラフである。 比較例1〜4に係る未処理のカーボンナノチューブ繊維及び架橋処理後のカーボンナノチューブ繊維におけるXPSスペクトル(窒素1sスペクトル)を表すグラフである。 本発明の実施例18、19に係る未処理のグラファイトブロック及びその架橋構造体の接着部位におけるXPSスペクトル(窒素1sスペクトル)を表すグラフである。 比較例7、8に係る未処理のグラファイトブロック及び架橋処理後のグラファイトブロックにおけるXPSスペクトル(窒素1sスペクトル)を表すグラフである。
(炭素材料の架橋構造体)
本発明の実施の一形態に係る炭素材料の架橋構造体(以下、「架橋構造体」という場合がある。)について、以下に説明する。
本実施の形態の架橋構造体は、炭素材料同士が、求核性官能基を分子内に2以上有する求核性化合物に由来する連結基により連結して相互に架橋した構造を有する。
前記炭素材料としては、炭素原子からなる炭素骨格を備えるものであれば特に限定されず、好ましくは炭素原子が環状に結合した環状骨格を備える炭素材料やダイヤモンド等が挙げられる。炭素原子の環状骨格を備える炭素材料としては、例えば、活性炭、カーボンナノコイル、グラファイト、カーボンブラック、ダイヤモンドライクカーボン、炭素繊維、グラフェン、非晶質カーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ等が挙げられる。さらに、前記カーボンナノチューブとしては、6角網目のチューブ(グラフェンシート)が1枚の構造である単層カーボンナノチューブ(SWNT:Single Wall Carbon Nanotube)や、多層のグラフェンシートから構成されている多層カーボンナノチューブ(MWNT:Maluti Wall Carbon Nanotube)、フラーレンチューブ、バッキーチューブ、グラファイトフィブリルが挙げられる。さらに、このような炭素材料の基本構造を有する類縁体も本発明にかかる炭素材料として使用可能である。また、これらの炭素材料は単独で、又は2種以上を併用することができる。尚、「炭素骨格」とは、水素原子及び置換基を含まない骨組みであって、全て炭素原子からなるものを意味する。
前記求核性化合物は、分子内に2以上の求核性官能基を有しており、炭素材料間の架橋構造の形成を可能にする化合物である。前記求核性官能基とは、電子密度が低い炭素原子と反応して結合を形成する置換基であって、求核置換反応を行うものを意味し、具体的には−NH基、−MgX(Xはハロゲンを表す。)、−Li、−O−、−OH、−SH、−O−O−又はこれらの誘導体等が挙げられる。
前記求核性官能基の数は、求核性化合物の分子内に少なくとも2以上である。求核性官能基が分子内に1つしかない場合、他の炭素材料との架橋が困難になるので好ましくない。また、前記分子内に存在する求核性官能基は同種であってもよく、異種であってもよい。
また、前記求核性官能基の含有量は、求核性化合物の全質量に対して、0.01質量%〜100質量%であることが好ましい。求核性官能基の含有量を0.01質量%以上にすることにより、炭素材料への架橋構造の導入を十分なものにすることができる。
前記求核性化合物は、具体的には、鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン、グリニャール試薬、アルキルリチウム、金属アルコキシド、多価アルコール、ジチオール及び有機過酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
前記鎖状脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン(EDA)、プトレシン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロプレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。
前記環状脂肪族ポリアミンとしては、例えば、N−アミノエチルピベラジン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−メタン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3−BAC)等が挙げられる。
前記脂肪芳香族アミンとしては、例えば、メタキシレンジアミン(MXDA)、キシリレンジアミン、キシリレンジアミン三重体、キシリレンジアミン誘導体等挙げられる。
前記芳香族アミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。
前記グリニャール試薬としては、例えば、ペンタメチレンビス(マグネシウムブロマイド)等が挙げられる。
前記アルキルリチウムとしては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム等が例示できる。
前記金属アルコキシドとしては、例えば、シリコンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、カルシウムアルコキシド、イットリウムアルコキシド、タンタルアルコキシド等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
前記ジチオールとしては、例えば、1,2−エタンジチオール等が挙げられる。
前記有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシド、ジメチルジオキシラン等が挙げられる。
本明細書において、「求核性官能基を2以上有する求核性化合物に由来する」とは、前記に例示した求核性化合物に含まれる求核性官能基が、前記炭素材料のハロゲン化による表面処理により導入された炭素−ハロゲン結合に対し求核置換反応をすることにより形成されることを意味し、「求核性官能基を2以上有する求核性化合物に由来する連結基」とは、そのような求核置換反応により形成された、炭素材料間の連結部分を意味する。
本実施の形態の架橋構造体は、炭素材料が相互に前記連結基により連結した架橋構造となっている。そのため、引張強度等の機械的強度に優れている。尚、本明細書における「引張強度」とは破断強度であって、引張試験中に測定された炭素材料の破断点での最大の引張強度を意味する。
また、本実施の形態の架橋構造体は、例えば、複合材料、水素吸蔵材料、ガス吸蔵材料、電子材料(発光材料、光学材料、電極材料、電磁波吸収材料、半導体材料、制振材料、振動材料、研磨材料など)、電子機器材料(プローブ、センサー、照明、トランジスタ、キャパシター、コンデンサー、導体、サージアブソーバなど)、医薬品材料、バイオ材料、触媒、潤滑剤、その他化成品として適宜用いることができる。
(炭素材料の架橋構造体の製造方法)
本実施の形態の架橋構造体の製造方法について、図1に基づき以下に説明する。図1は、当該架橋構造体の製造方法を説明するための説明図である。
図1に示すように、本実施の形態の架橋構造体の製造方法は、炭素材料の表面をハロゲン化処理する工程と、当該炭素材料を架橋処理する工程とを少なくとも含む。
前記ハロゲン化処理の工程は、炭素材料に少なくともハロゲン原子含有ガスを含む処理ガスを接触させることにより、気相中でその表面をハロゲン化処理する工程である。当該工程は、例えばフッ素化処理の場合、図1に示すように、炭素材料の表面に炭素−フッ素結合によるフッ素基を導入するものである。従って、例えば、炭素六角網面のエッジ部分に水酸基、カルボニル基又はカルボキシル基等の含酸素官能基を付与する酸化処理とは異なり、炭素材料にダメージを与えたり分解させる等の構造欠陥が生じることなく、その表面をハロゲン化することができる。
前記処理ガスとしては、全体積に対し0.01〜100vol%、好ましくは0.1〜80vol%、より好ましくは1〜50vol%のハロゲン原子含有ガスを含むものが用いられる。ハロゲン原子含有ガスの濃度を0.01vol%以上にすることにより、炭素材料表面のハロゲン化が不十分となるのを防止することができる。
前記ハロゲン原子含有ガスとはハロゲン原子を含む気体を意味し、本実施の形態に於いてはハロゲン原子を含むものであれば特に限定されない。前記ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を意味する。また、前記ハロゲン原子含有ガスとしては、例えば、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、フッ化水素(HF)、塩化水素(HCl)、臭化水素(HBr)ヨウ化水素(HI)、三フッ化塩素(ClF)、四フッ化硫黄(SF)、三フッ化ホウ素(BF)、三フッ化窒素(NF)、フッ化カルボニル(COF)等が挙げられる。これらは単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。
前記処理ガスには不活性ガスが含まれていてもよい。不活性ガスとしては特に限定されないが、ハロゲン原子含有ガスと反応して炭素材料のハロゲン化処理に悪影響を与えるもの、炭素材料と反応して悪影響を与えるもの、及び当該悪影響を与える不純物を含むものは好ましくない。具体的には、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、不活性ガスの純度としては特に限定されないが、当該悪影響を与える不純物については100ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることが特に好ましい。
尚、前記処理ガス中には酸素原子を含むガスを含まないことが好ましい。酸素原子を含むガスを含有させることにより、炭素材料の表面に水酸基やカルボキシル基等が導入され、炭素材料に大きなダメージを与える場合があるからである。なお、酸素原子を含むガスとは、酸素ガスや硝酸ガスを意味する。
前記ハロゲン化処理を行う際の処理温度は、0℃〜600℃の範囲内であり、好ましくは0℃〜150℃、より好ましくは10℃〜100℃、さらに好ましくは20℃〜50℃である。処理温度を0℃以上にすることにより、ハロゲン化処理を促進させることができる。その一方、処理温度を600℃以下にすることにより、炭素材料表面へのハロゲン基の導入に伴って発生する炭素骨格への欠陥が過度に増大するのを抑制し、炭素骨格の過度の破壊及び炭素材料の機械的強度が減少するのを防止することができる。さらに、炭素材料に熱変形が生じるのを防止し、歩留まりの低下を抑制することができる。
前記ハロゲン化処理の処理時間(反応時間)は1秒〜24時間の範囲内であり、好ましくは1分〜12時間、より好ましくは1分〜9時間である。処理時間を1秒以上にすることにより、炭素材料表面のハロゲン化を十分なものにすることができる。その一方、処理時間を24時間以下にすることにより、製造時間の長期化による製造効率の低下を防止することができる。
ハロゲン化処理を行う際の圧力条件としては特に限定されず、常圧下、加圧下又は減圧下で行うことができる。経済上・安全上の観点からは、常圧下で行うのが好ましい。ハロゲン化処理を行うための反応容器としては特に限定されず、固定床、流動床等の従来公知のものを採用することができる。
炭素材料に対する処理ガスの接触方法としては特に限定されず、例えば、当該処理ガスのフロー下で接触させることができる。
前記架橋処理の工程は、ハロゲン基が導入された炭素材料に求核性化合物を接触させることにより、炭素材料同士が連結基により連結した架橋構造を形成させる工程である(図1参照)。
前記求核性化合物としては、気体状、液体状又は固体状のものを特に制限なく使用することができる。また、液体状又は固体状の求核性化合物を溶媒に混合して使用することもできる。さらに、複数種の求核性化合物を併用してもよい。
前記求核性化合物が気体状の場合、架橋処理は、当該気体状の求核性化合物のフロー下で、又は密閉状態にした容器内の、気体状の求核性化合物の雰囲気下で、炭素材料に接触させることにより行うことができる。さらに、前記求核性化合物が液体状又は固体状の場合であって、後述の処理温度の範囲内で加熱して気化させるときにも、当該気体状の求核性化合物のフロー下で、又は密閉状態にした容器内の、気体状の求核性化合物の雰囲気下で架橋処理を行うことができる。また、前記求核性化合物が液体状の場合、又は液体状又は固体状の求核性化合物を溶媒に混合した処理液を使用する場合、架橋処理は、炭素材料を液体状の求核性化合物又は処理液に浸漬して行うことができる。
液体状又は固体状の求核性化合物を溶媒に混合する場合、使用可能な溶媒については特に限定されない。但し、求核性官能基と反応して、炭素材料への架橋処理に悪影響を与えるもの、炭素材料と反応して悪影響を与えるもの、及び当該悪影響を与える不純物を含むものは好ましくない。使用可能な溶媒としては、具体的には、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、トルエン、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、溶媒の純度としては特に限定されないが、悪影響を与える不純物については100ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることが特に好ましい。
液体状又は固体状の求核性化合物を溶媒に混合する際の当該求核性化合物の含有量は特に限定されず、当該求核性化合物及び溶媒の種類等に応じて適宜設定される。但し、求核性化合物の含有量の上限については、当該求核性化合物が溶媒に溶解する飽和溶解度以下であることが好ましい。
また、求核置換反応に伴い副生するHF等のハロゲン化水素を除去する為の試薬(ハロゲン化水素除去剤)を、液体状又は固体状の求核性化合物を混合する溶媒に予め添加しておいてもよい。あるいは、液体状又は固体状の求核性化合物を溶媒に混合した処理液に、前記試薬を添加してもよい。さらに、液体状又は固体状の求核性化合物を溶媒に混合した処理液に、ハロゲン化処理された炭素材料を接触させた後に、当該処理液に前記試薬を添加してもよい。副生するHF等を除去することにより、求核置換反応を促進し、炭素材料同士の架橋度をさらに増大させることができる。その結果、架橋構造体の機械的強度を一層向上させることができる。そのような試薬としては特に限定されず、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、メラミンなどの塩基が挙げられる。
前記試薬(ハロゲン化水素除去剤)を添加する場合、その添加量は限定されないが、通常は、架橋処理により副生し得るハロゲン化水素の当量以上が好ましい。
前記求核性化合物として液体状のものを用いて架橋処理を行う際の処理温度は、0℃〜200℃の範囲内が好ましく、0℃〜100℃の範囲がより好ましく、0℃〜80℃の範囲が特に好ましい。処理温度を0℃以上にすることにより、架橋処理の一層の促進が図れる。その一方、処理温度を200℃以下にすることにより、炭素材料に熱変形が生じるのを防止し、歩留まりの低下を抑制することができる。
前記求核性化合物として気体状のものを用いて架橋処理を行う際の処理温度は、0℃〜200℃の範囲内が好ましく、0℃〜100℃の範囲がより好ましく、0℃〜80℃の範囲が特に好ましい。処理温度を0℃以上にすることにより、炭素材料に対する架橋処理の一層の促進が図れる。その一方、処理温度を200℃以下にすることにより、炭素材料に熱変形が生じるのを防止し、歩留まりの低下を抑制することができる。
前記架橋処理の処理時間(反応時間)は、求核性化合物が液体状又は前記処理液を用いて行う場合、1秒〜24時間の範囲内であり、好ましくは30秒〜6時間、より好ましくは1分〜4時間である。処理時間を1秒以上にすることにより、炭素材料に対する架橋処理の一層の促進が図れる。その一方、処理時間を24時間以下にすることにより、製造時間の長期化による製造効率の低下を防止することができる。
また、前記架橋処理の処理時間(反応時間)は、求核性化合物が気体状のものを用いる場合、1秒〜24時間の範囲内であり、好ましくは1分〜12時間、より好ましくは1分〜9時間である。処理時間を1秒以上にすることにより、炭素材料に対する架橋処理の一層の促進が図れる。その一方、処理時間を24時間以下にすることにより、製造時間の長期化による製造効率の低下を防止することができる。
気体状の求核性化合物を用いて架橋処理を行う際の圧力条件としては特に限定されず、常圧下、加圧下又は減圧下で行うことができる。経済上・安全上の観点からは、常圧下で行うのが好ましい。架橋処理を行うための反応容器としては特に限定されず、固定床、流動床等の従来公知のものを採用することができる。
尚、気体状の求核性化合物を用いる場合、その濃度は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
また、気体状の求核性化合物には、不活性ガスが含まれていてもよい。不活性ガスとしては特に限定されないが、気体状の求核性化合物と反応して炭素材料の架橋処理に悪影響を与えるもの、炭素材料と反応して悪影響を与えるもの、及び当該悪影響を与える不純物を含むものは好ましくない。そのような不活性ガスとして、具体的には、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、不活性ガスの純度としては特に限定されないが、当該悪影響を与える不純物については100ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることが特に好ましい。
ここで、架橋処理は、ハロゲン化処理後の炭素材料を反応容器から取り出すことなく、当該反応容器内で連続的に行ってもよい。この場合、架橋処理は、反応容器内に残存しているハロゲン化処理のための処理ガスを真空排気した後に、気体状の求核性化合物を反応容器内に導入して行うことができる。あるいは、前記処理ガスを排気することなく、気体状の求核性化合物を反応容器内に導入して行ってもよい。これにより、ハロゲン化処理後の炭素材料を反応容器から取り出す等の煩雑な作業を省略することができ、処理時間の短縮が図れる。さらに、ハロゲン化処理後の炭素材料が大気中の水分や酸素の影響を受けることなく、当該炭素材料に架橋処理を行うことができる。
また、架橋処理後は、得られた架橋構造体に対して洗浄及び乾燥工程を行ってもよい。これにより、炭素材料中に残存した求核性化合物を除去することができる。洗浄工程に用いる洗浄剤としては特に限定されず、例えば、エタノール、水、2−プロパノール、トルエン、アセトン等が挙げられる。また、洗浄条件は特に限定されないが、通常は洗浄温度0℃〜100℃、洗浄時間1分間〜60分間の範囲内で行われる。乾燥工程における乾燥方法としては特に限定されず、例えば、自然乾燥や熱風乾燥等が挙げられる。また、乾燥条件は特に限定されないが、通常は乾燥温度0℃〜100℃、乾燥時間1時間〜24時間の範囲内で行われる。
尚、ハロゲン化処理と架橋処理は同時に行うこともできる。具体的には、炭素材料を入れた反応容器内に、当該ハロゲン化処理のための処理ガスと、気体状の求核性化合物の混合ガスを導入することにより、炭素材料の架橋構造体を製造する。
また、混合ガス中には、不活性ガスが含まれていてもよい。不活性ガスとしては特に限定されないが、ハロゲン化処理の処理ガス及び気体状の求核性化合物と反応して炭素材料の架橋処理に悪影響を与えるもの、炭素材料と反応して悪影響を与えるもの、及び当該悪影響を与える不純物を含むものは好ましくない。そのような不活性ガスとして、具体的には、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、不活性ガスの純度としては特に限定されないが、当該悪影響を与える不純物については100ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることが特に好ましい。
前記混合ガスを用いてハロゲン化処理及び架橋処理を同時に行う場合の処理温度は、0℃〜200℃の範囲内が好ましく、0℃〜100℃の範囲がより好ましく、0℃〜80℃の範囲が特に好ましい。処理温度を0℃以上にすることにより、炭素材料に対するハロゲン化処理及び架橋処理の一層の促進が図れる。その一方、処理温度を200℃以下にすることにより、炭素材料に熱変形が生じるのを防止し、歩留まりの低下を抑制することができる。
また、前記混合ガスを用いてハロゲン化処理及び架橋処理を同時に行う場合の処理時間(反応時間)は、1秒〜24時間の範囲内であり、好ましくは1分〜12時間、より好ましくは1分〜9時間である。処理時間を1秒以上にすることにより、炭素材料に対する架橋処理の一層の促進が図れる。その一方、処理時間を24時間以下にすることにより、製造時間の長期化による製造効率の低下を防止することができる。
また、本実施の形態の架橋構造体の製造方法は、架橋処理を行った後にハロゲン化処理を行ってもよい。この場合、先ず、気体状の求核性化合物を炭素材料に接触させると、当該炭素材料の表面に当該気体状の求核性化合物が残存した状態となる。続いて、ハロゲン化処理においてハロゲン原子含有ガスを含む処理ガスを炭素材料に接触させると、当該炭素材料表面でハロゲン基の導入が起こり、その後、直ちに、炭素材料の表面に残存している気体状の求核性化合物の求核性官能基が、炭素−ハロゲン結合と求核置換反応を起こし、連結基が形成されて架橋構造が導入される。これにより、炭素材料の架橋構造体を製造することができる。尚、ハロゲン化処理及び架橋処理の各処理条件は、前述の各条件に準じたものとなる。
また、本実施の形態の架橋構造体の製造方法は、ハロゲン化処理の工程中に気体状の求核性化合物を導入して架橋処理を行ったり、又は架橋処理の工程中にハロゲン化処理のための処理ガスを導入して、当該ハロゲン化処理を行ってもよい。これらの場合も、処理条件は、前述の各条件に準じたものとなる。
また、本実施の形態の架橋構造体の製造方法では、ハロゲン化処理及び架橋処理の少なくとも何れかを複数回行ってもよい。ハロゲン化処理を複数回行うことにより、炭素材料の表面にハロゲン基をさらに導入することができ、また、架橋処理を複数回行うことにより、炭素材料同士の架橋度をさらに増大させることができる。その結果、架橋構造体の機械的強度を一層向上させることができる。
以上より、本実施の形態の製造方法であると、求核性官能基を2以上有する求核性化合物に由来の連結基により、炭素材料同士が相互に連結して架橋した炭素材料の架橋構造体を簡便に製造することができる。また、本実施の形態の製造方法によれば、例えば、炭素材料としてのカーボンナノチューブが、その分子配列を成長させることにより連続糸とされたカーボンナノチューブ繊維に対して、その繊維形状を維持した状態で、当該カーボンナノチューブ繊維同士の架橋構造を形成することが可能になる。その結果、引張強度等の機械的強度に優れたカーボンナノチューブ繊維を製造することも可能である。また、架橋処理に際して、気体状の求核性化合物を用いることで、垂直配向カーボンナノチューブのような炭素材料に対しても、その特徴ある構造を維持した架橋構造体を形成することが可能になる。
(実施例1)
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)容器(容量5mL)に、カーボンナノチューブ繊維((株)プラネット製、直径30μm、100mm長さにカット)を導入し、本容器を電解研磨されたSUS316L製チャンバー(容量30mL)に設置した。更に、チャンバー内を窒素に真空置換し、窒素気流(20mL/min)下、4℃/minで25℃に昇温して、1時間の恒温処理を行った。
次に、窒素でフッ素ガスを20vol%に希釈した処理ガスに真空置換し、流量25mL/minで前記チャンバー内に流して、25℃、4時間フッ素化処理をした。その後、チャンバー内を窒素に真空置換し、窒素気流(20mL/min)の下、室温でフッ素化処理後のカーボンナノチューブ繊維を取り出した。
次に、スライドガラス上にエチレンジアミン(EDA)1mLを滴下し、フッ素化処理後のカーボンナノチューブ繊維を液滴内に処理温度25℃で5分間浸漬させ、架橋構造の導入処理を行った。その後、カーボンナノチューブ繊維を液滴から引き上げ、エタノールによる洗浄を行い、大気下で乾燥させた。乾燥温度は25℃、乾燥時間は2時間とした。これにより、本実施例に係るカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を製造した。
(実施例2)
実施例2においては、ハロゲン化水素除去剤としてのピリジンを予め5滴滴下したエチレンジアミン(EDA)を使用した。それ以外は、実施例1と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例3)
実施例3においては、フッ素化処理の際の処理温度を50℃に変更した。それ以外は、実施例1と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例4)
実施例4においては、架橋処理で使用する求核性化合物を1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3−BAC)に変更した。それ以外は、実施例1と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例5)
実施例5においては、フッ素化処理の際の処理温度を50℃に変更した。それ以外は、実施例4と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例6)
実施例6においては、架橋処理で使用する求核性化合物をメタキシレンジアミン(MXDA)に変更した。それ以外は、実施例1と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例7)
実施例7においては、フッ素化処理の際の処理温度を50℃に変更した。それ以外は、実施例6と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例8)
実施例8においては、架橋処理で使用する求核性化合物を、エチレンジアミンと1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを質量比1:1で混合したものを使用した。それ以外は、実施例1と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例9)
実施例9においては、架橋処理で使用する求核性化合物として、テトラヒドロフラン溶液に0.5Mのペンタメチレンビス(マグネシウムブロマイド)を添加したものを用いた。それ以外は、実施例1と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例10)
実施例10においては、フッ素化処理の際の処理温度を50℃に変更した。それ以外は、実施例9と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例11)
実施例11においては、架橋処理の際の処理温度を80℃に変更した。それ以外は、実施例1と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例12)
ガラスビーカー(容量100mL)にエチレンジアミン1gを導入し、本容器を電解研磨されたSUS316L製チャンバー(容量600mL)に設置した。続いて、前記チャンバー内を窒素気流(60mL/min)下、15分間フローすることでチャンバー内に残留する余分の水蒸気と酸素をパージした。
一方、前記チャンバーと同型の他のチャンバー内にて、実施例1と同様にして、カーボンナノチューブ繊維のフッ素化処理を行った。その後、他のチャンバー内を1Pa以下の真空とした後、前記エチレンジアミンの入ったチャンバーからエチレンジアミンガスを25℃(処理温度)で導入した。他のチャンバーは密閉状態とし、フッ素化処理後のカーボンナノチューブ繊維を、エチレンジアミンガスに4時間接触させ、架橋処理を行った。これにより、本実施例12に係るカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例13)
実施例13においては、架橋処理の際の処理温度を80℃に変更した。それ以外は、実施例12と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例14)
実施例14においては、カーボンナノチューブ繊維に対し、フッ素化処理と架橋処理を同時に行った。すなわち、PTFE容器に、実施例1と同様のカーボンナノチューブ繊維を導入し、本容器を電解研磨されたSUS316L製チャンバーに設置し、さらに、前記チャンバー内を1Pa以下の真空とした。その後、フッ素ガスとエチレンジアミンガスの混合ガスを25℃で前記チャンバー内に導入し、未処理のカーボンナノチューブ繊維を当該混合ガスに4時間接触させることにより、カーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。尚、フッ素ガスとエチレンジアミンガスの混合ガスの混合比(体積比)は1:1とした。
(実施例15)
本実施例15においては、カーボンナノチューブ繊維に対し、求核性化合物を接触させた(架橋処理)後に、フッ素化処理のための処理ガスを接触させて、当該カーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。すなわち、未処理のカーボンナノチューブ繊維が入ったチャンバーに、実施例12と同様の方法でエチレンジアミンガスを導入した。その後、チャンバー内を真空排気し、さらに、窒素でフッ素ガスを20vol%に希釈した処理ガスを、流量25mL/minで導入し、4時間フッ素化処理を行った。フッ素化処理の終了後、チャンバー内の処理ガスを真空排気し、その後、窒素を流量20mL/minで導入し、室温で処理後のカーボンナノチューブ繊維を取り出した。これにより、本実施例に係るカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例16)
実施例16においては、実施例12に示すフッ素化処理及び架橋処理をそれぞれ2回繰り返した。それ以外は、実施例12と同様にして本実施例に係るカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例17)
実施例17においては、実施例12に示すフッ素化処理及び架橋処理をそれぞれ4回繰り返した。それ以外は、実施例12と同様にして本実施例に係るカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例18)
実施例18においては、実施例4に示すフッ素化処理及び架橋処理をそれぞれ3回繰り返した。それ以外は、実施例4と同様にして本実施例に係るカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体を作製した。
(実施例19)
実施例19においては、10mm×10mm×厚み5mmのグラファイトブロック(東洋炭素(株)製、IG11)2枚に対し、実施例1と同様の条件にてフッ素化処理を行った。その後、2枚のフッ素化グラファイトブロックを重ね合わせ、0.006MPaの力で押圧した状態で架橋処理を行った。架橋処理は、処理温度を80℃にしたこと以外は、実施例12と同様にした。これにより、本実施例に係るグラファイトブロックの架橋構造体を作製した。当該架橋構造体を観察すると、2枚のグラファイトブロック同士が接合していることが確認された。
(実施例20)
実施例20においては、実施例19中に記載のグラファイトブロック2枚、及びカーボンナノチューブの粉体(Nanolab社製、商品名:Multiwall Carbon Nanotubes,Hollow Structure)に対し、実施例1と同様の条件にてフッ素化処理を行った。その後、2枚のフッ素化グラファイトブロックの間にフッ素化カーボンナノチューブ粉体を介在させた状態で重ね合わせ、0.006MPaの力で押圧し、この状態で架橋処理を行った。架橋処理は、実施例19と同様にした。これにより、本実施例に係るグラファイトブロック及びカーボンナノチューブ粉体の架橋構造体を作製した。当該架橋構造体を観察すると、2枚のグラファイトブロック同士が接合していることが確認された。
(比較例1)
比較例1においては、カーボンナノチューブ繊維に対してフッ素化処理を行わず、架橋処理のみを行った。それ以外は、前記実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ繊維体を作製した。
(比較例2)
比較例2においては、カーボンナノチューブ繊維に対してフッ素化処理を行わず、架橋処理のみを行った。それ以外は、前記実施例12と同様にしてカーボンナノチューブ繊維体を作製した。
(比較例3)
比較例3においては、架橋処理で使用する求核性化合物を1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンに変更した。それ以外は、比較例1と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維体を作製した。
(比較例4)
比較例4においては、架橋処理で使用する求核性化合物として、テトラヒドロフラン溶液に0.5Mのペンタメチレンビス(マグネシウムブロマイド)を添加したものを用いた。それ以外は比較例1と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維体を作製した。
(比較例5)
比較例5においては、架橋処理で使用する求核性化合物として、分子内に求核性置換基を1つだけ有するトリデシルアミンに変更した。それ以外は実施例1と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維体を作製した。
(比較例6)
比較例6においては、架橋処理で使用する求核性化合物として、テトラヒドロフラン溶液に、分子内に求核性置換基を1つだけ有する1.0Mのペンチルマグネシウムクロライドを添加したものを用いた。それ以外は実施例1と同様の方法にてカーボンナノチューブ繊維体を作製した。
(比較例7)
比較例7においては、実施例19中に記載のグラファイトブロック2枚に対しフッ素化処理を行わずに重ね合わせ、0.006MPaの力で押圧した状態で架橋処理を行った。架橋処理は、実施例19と同様にした。架橋処理後、重ね合わせた2枚のグラファイトブロックを観察すると、両者が接合していないことが確認された。
(比較例8)
比較例8においては、実施例19中に記載のグラファイトブロック2枚に対し、実施例1と同様の条件にてフッ素化処理を行った。その後、2枚のフッ素化グラファイトブロックを重ね合わせ、0.006MPaの力で押圧した。但し、その後、架橋処理は行わなかった。重ね合わせた2枚のフッ素化グラファイトブロックを観察すると、両者は接合していないことが確認された。
(引張強度の測定)
実施例1〜18及び比較例1〜6でそれぞれ得られたカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体について、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名;VHX−5000)による観察を行い、20点直径を測定しその平均値を直径として、断面積を算出した。
次に、フォースゲージ(株式会社イマダ製、商品名;ZTS−5N)を用いて、それぞれのカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体の引張試験を行い、最大破断強度を測定した。さらに、最大破断強度を前述の断面積で割ることにより、それぞれの引張強度を算出した。尚、フッ素化処理及び架橋処理を行っていないカーボンナノチューブ繊維について引張強度を求めたところ、0.153GPaであった。
(元素分析)
実施例1〜8、11〜18において使用した未処理のカーボンナノチューブ繊維と、その架橋構造体について、X線光電子分光法(アルバック・ファイ株式会社製、商品名;PHI5000 VersaProbe II)を用いて元素分析を行った。その結果、図2及び3に示すように、これらの架橋構造体には、新たにC−N結合が生成していることが、C1s及びN1sピークから確認することができた。これにより、各架橋構造体には、求核性化合物に由来する連結基が結合されていることが確認できた。
また、実施例9、10については、図4に示すように、未処理のカーボンナノチューブ繊維、フッ素化処理後のカーボンナノチューブ繊維及びその架橋構造体に対して、XPSによる元素分析を行った。その結果、フッ素化処理後のカーボンナノチューブ繊維の測定により確認したC−F結合ピークが、架橋処理後では減少することを確認した。これにより、これらの各架橋構造体についても、求核性化合物に由来する連結基が結合されていることが確認できた。
その一方、比較例1〜4では、未処理のカーボンナノチューブ繊維及び架橋処理後のカーボンナノチューブ繊維についてXPSによる元素分析を行った結果、図5に示すように、C−N結合が生成していることを示すピークは確認されなかった。
また、実施例19、20については、図6に示すように、未処理のグラファイトブロックと、その架橋構造体に対してXPSによる元素分析を行った。その結果、これらの架橋構造体には、新たにC−N結合が生成していることが、N1sピークから確認することができた。これにより、各架橋構造体には、求核性化合物に由来する連結基が結合されていることが確認できた。
その一方、比較例7、8では、未処理のグラファイトブロックと、その架橋構造体についてXPSによる元素分析を行った結果、図7に示すように、C−N結合が生成していることを示すピークは確認されなかった。
Figure 2016204254
Figure 2016204254
(結果)
表1、及び元素分析の結果から分かる通り、実施例1〜17では、引張強度に優れたカーボンナノチューブ繊維の架橋構造体が得られることが確認された。特に、実施例15〜17に示す通り、フッ素化処理及び架橋処理を複数回行って製造した場合には、引張強度を一層向上させることが確認された。
その一方、比較例1〜6のカーボンナノチューブ繊維体では、フッ素化処理及び架橋処理を行っていないカーボンナノチューブ繊維と比較して引張強度が低下するか、あるいは引張強度が増大しても不十分なものであった。
また、表2、及び元素分析の結果から分る通り、実施例19、20では、引張強度に優れた架橋構造体が得られることが確認された。特に、実施例20では、2枚のフッ素化グラファイトブロック間にフッ素化カーボンナノチューブ粉体を介在させて積層することにより、グラファイトブロック間、及びグラファイトブロック−カーボンナノチューブ粉体間で架橋構造を形成させ、その結果、引張強度を著しく増大させることが確認された。
その一方、比較例7の架橋処理を施したグラファイトブロックや、比較例8のフッ素化グラファイトブロックでは、相互に接合させることができず、引張強度が不十分であることが確認された。

Claims (7)

  1. 炭素材料が相互に架橋した炭素材料の架橋構造体であって、
    求核性官能基を分子内に2以上有する求核性化合物に由来する連結基により、相互に連結して架橋した炭素材料の架橋構造体。
  2. 前記連結基は、少なくとも表面がハロゲン化した前記炭素材料において、当該炭素材料の表面に存在する炭素−ハロゲン結合におけるハロゲンが、求核置換反応により脱離し、前記求核性官能基に置換されることにより導入された状態の前記求核性化合物からなる請求項1に記載の炭素材料の架橋構造体。
  3. 前記求核性化合物が、鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン、グリニャール試薬、アルキルリチウム、金属アルコキシド、多価アルコール、ジチオール及び有機過酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1又は2に記載の炭素材料の架橋構造体。
  4. 前記炭素材料が、活性炭、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、グラファイト、カーボンブラック、ダイヤモンドライクカーボン、炭素繊維、グラフェン、非晶質カーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ及びダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3の何れか1項に記載の炭素材料の架橋構造体。
  5. 炭素材料が相互に架橋した炭素材料の架橋構造体の製造方法であって、
    前記炭素材料に、0.01〜100vol%のハロゲン原子含有ガスを含む処理ガスを、処理時間1秒〜24時間、処理温度0℃〜600℃の範囲内で接触させて、当該炭素材料の表面をハロゲン化処理する工程と、
    前記炭素材料に、求核性官能基を分子内に2以上有する求核性化合物を、処理時間1秒〜24時間の範囲内で接触させて架橋処理する工程とを有し、
    前記ハロゲン化処理と架橋処理は同時に、任意の順序で連続的に、又は何れかの処理中に追加して行われる炭素材料の架橋構造体の製造方法。
  6. 前記求核性化合物として、鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン、グリニャール試薬、アルキルリチウム、金属アルコキシド及び有機過酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いる請求項5に記載の炭素材料の架橋構造体の製造方法。
  7. 前記炭素材料として、活性炭、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、グラファイト、カーボンブラック、ダイヤモンドライクカーボン、炭素繊維、グラフェン、非晶質カーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ及びダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる請求項5又は6に記載の炭素材料の架橋構造体の製造方法。
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