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JP2013234161A - 9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物、その製造法及びその重合物 - Google Patents

9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物、その製造法及びその重合物 Download PDF

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JP2013234161A
JP2013234161A JP2012108901A JP2012108901A JP2013234161A JP 2013234161 A JP2013234161 A JP 2013234161A JP 2012108901 A JP2012108901 A JP 2012108901A JP 2012108901 A JP2012108901 A JP 2012108901A JP 2013234161 A JP2013234161 A JP 2013234161A
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tetrahydroanthracene
bis
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acryloyloxy
meth
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Application number
JP2012108901A
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Shigeaki Numata
繁明 沼田
Akihiko Yamada
暁彦 山田
Shuji Yokoyama
修司 横山
Yuki Nagasawa
勇希 長澤
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Kawasaki Kasei Chemicals Ltd
Original Assignee
Kawasaki Kasei Chemicals Ltd
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Abstract

【課題】三環性芳香環を有するEO介在型二官能性アクリレート化合物であって、モノマーの屈折率が高く、一般的な高圧水銀ランプを用いた光照射で容易に光硬化するアクリレート化合物を提供すること。
【解決手段】9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物から成るアクリレート化合物。
【選択図】なし

Description

本発明は、9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物、その製造法、及び該9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物を重合してなる重合物に関する。
近年、光学分野においてガラス代替材料としてプラスチックが盛んに用いられている。例えば、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレート等がよく知られている。これらのプラスチック材料は、軽量性、安全性、意匠性を有している反面、屈折率は無機ガラスより低いため、分厚くなりやすいという欠点がある。そこで、近年、高屈折率を有するプラスチック材料に対する要望が高くなってきている。特に、高屈折率プラスチック材料の光学用物品への進出は著しく、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT用のプリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク、ホログラム、光ファイバー、光道波路等への検討が盛んに行われている。
プラスチックの屈折率とその原料となるモノマーの屈折率には正の相関関係にあり、高屈折率のプラスチックを得るためにはそのプラスチックを構成するモノマーが高屈折率であることが必要である。
モノマーの屈折率を高くする方法としては、分子構造中にハロゲン原子(フッ素を除く)や硫黄原子を導入することが既に広く知られている。例えば、ハロゲン原子の有する高い固有屈折率を利用し、ビフェニル環にハロゲン原子を導入した高屈折率重合体が報告されている(特許文献1)。しかし、ハロゲン化することによって、得られた重合体の耐光性が著しく劣化し、また、高比重であるという欠点があった。
また、ハロゲン以外に高い固有屈折率を有する硫黄原子を有する単量体組成物も報告されている(特許文献2)。しかし、硫黄原子を有するモノマー組成物は高い屈折率、優れた耐衝撃性を有するものの、同様に得られた重合体の耐光性が著しく劣り、また、硫黄特有の不快臭を発する等の問題があった。さらに、硫黄原子を有するモノマー組成物を用いたプラスチックが廃棄物として処理されるとき、有害なガスや硫黄化合物を生じることが懸念される。
一方、アクリレートモノマーの屈折率を高くする方法として、従来から芳香族化合物を導入することが知られており、それらの芳香環としては、ビスフェノールA環、ビフェニル環及びフルオレン環等が用いられている。これら高屈折率芳香族アクリレートを用いる方法としては、一官能性の主剤であるモノアクリレート化合物、たとえばベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、o−フェニルフェノキシエチルアクリレート等に対して、これら高屈折率芳香族化合物の二官能性アクリレートを屈折率向上のための添加剤として使用するのが一般的である。これらの高屈折率芳香族化合物の二官能性アクリレートを使用する場合、芳香環に直接アクリロイル基を導入すると骨格が剛直すぎて、主剤モノマーに対する溶解性が悪く、また、芳香族化合物の二官能性アクリレートの融点が高いため取扱にくいという欠点がある。そのため、芳香環とアクリロイル基の間にエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシド由来の二価基を介在(以下、EO介在型二官能性アクリレートと称する。)させることにより、主剤モノマーとの溶解度を改善したり、融点を低下させることにより扱いやすくした化合物を用いるのが一般的である。取扱いという点では、室温で低粘度の液状であることが好ましい。
しかし、これらEO介在型二官能性アクリレートにおいて、芳香族化合物としてビスフェノールA環やビフェニル環を有する化合物を用いた場合、骨格にハロゲン原子や硫黄原子を含まないモノマーでは屈折率が1.55を超えるものを得ることは困難であり、かつ、ビフェニル環を有するEO介在型二官能性アクリレートは室温で個体であり、液状で得られることはほとんどない。また、ビスフェノールA骨格を有するEO介在型二官能性アクリレートは室温で液状であるのは好都合であるが、それらの屈折率が低く1.55を超えることはない。一方、フルオレン環を有するEO介在型二官能性アクリレートが知られており、このフルオレン環を有するEO介在型二官能性アクリレートは1.61以上という高い屈折率を有し、室温で液状であるという点で優れているが、液状であっても粘度が非常に高く室温では流動性が著しく乏しいため、添加時に加温して粘度を下げて使用しなければいけないという問題を有していた(特許文献3,4,5、6)。
また、多環芳香環であるナフタレン環やアントラセン環、さらには1,4−ジヒドロアントラセン環にエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを介在してアクリロイル基を導入したEO介在型二官能性アクリレート化合物について報告がなされている。しかしながら、得られたナフタレン環、アントラセン環および、1,4−ジヒドロアントラセン環を含むEO介在型二官能性アクリレートは、室温では固体であった(特許文献7、8、9、10、11、12、13、14)。
特開平05−170702号公報 特開2002−20433号公報 特開2003−064025号公報 特開2004−083855号公報 特開平06−220131号公報 特開2008−001641号公報 特開2008−024694号公報 特開2007−204438号公報 特開2008−169156号公報 特開2009−040811号公報 特開2010−018746号公報 特開2010−254585号公報 特開2010−275236号公報
よって、三環性芳香環を有するEO介在型二官能性アクリレート化合物であって、モノマーの屈折率が高く、取り扱いが容易で、かつ一般的な高圧水銀ランプを用いた光照射で容易に光硬化するアクリレート化合物の開発が望まれていた。
本発明者は、三環性芳香環を有するEO介在型二官能性アクリレート化合物の構造と光硬化性に関して鋭意検討した結果、9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物が、取り扱いが容易で、かつ一般的な高圧水銀ランプを用いた光照射により容易に重合すること、さらに、得られた重合物が透明でかつ高い屈折率を有していることを見出し、本発明を完成させた。
以下、発明の内容を詳述する。
第1発明では、一般式(1)に示す9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物を提供する。
(一般式(1)中、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを表し、Rは水素原子又はメチル基の何れかを示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
第二発明では、一般式(2)で示される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物を(メタ)アクリロイル化することよりなる、第一発明に記載の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物の製造方法を提供する。
(一般式(2)中、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを表し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
第三発明では、第一発明に記載の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物とラジカル重合開始剤からなる重合性組成物を提供する。
第四発明では、第一発明に記載の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物、当該9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物以外のラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤からなる重合性組成物を提供する。
第五発明では、第三発明または第四発明に記載の重合性組成物を重合してなる重合物を提供する。
本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルまたはメタクリロイルを、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリル表す。また、本発明において、アルキレンオキシとは、下記構造で示される2価基を示し、たとえば、エチレンオキシ基、2−メチルエチレンオキシ基(プロピレンオキシ基と称することもある。)、2−エチルエチレンオキシ基(ブチレンオキシ基と称することもある。)等が挙げられる。
(一般式(3)中、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを表し、*は結合手を示す。)
本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物は新規な化合物であり、かつ、一般的な紫外光源である高圧水銀ランプによる光照射により容易に重合する。また、重合により得られた重合物は透明であり高い屈折率を示す工業的に有用な化合物である。
<化合物>
本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物は下記般式(1)で示される化合物である。
(一般式(1)中、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを表し、Rは水素原子又はメチル基の何れかを示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
一般式(1)中、Xで表わされるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。
一般式(1)に示す9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物の具体例としては、例えば次のものが挙げられる。
すなわち、Xが水素原子の場合は、例えば9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン等が挙げられる。
又、Xがアルキル基の場合は、6−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、
6−エチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−エチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−エチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−エチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−エチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−エチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−エチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−エチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−エチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン等が挙げられる。
さらに又、Xがハロゲン原子の場合は、6−クロロ−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン等が挙げられる。
これらの化合物のうち、下記に示す構造式を有する、9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン(構造式1−1)、9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン(構造式1−2)が室温で液状であること、得られる生成物の屈折率が高く、さらには合成容易であることから特に好ましい。
[製造方法]
一般式(1)に示す9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物は、工業的に入手が容易な1,4−ナフトキノン化合物と1,3−ブタジエンとのディールス・アルダー反応物である1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオン化合物を異性化・水素化して得られる1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物(下記一般式(4)の化合物)をアルカリ存在下、アルキレンオキシド又はハロゲノアルカノールと反応させる第1反応(アルキレンオキシドとの反応を第1−1反応と称し、ハロゲノアルカノールとの反応を第1−2反応と称す。)と、第1−1反応又は第1−2反応で得られる、一般式(2)に示す9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物を(メタ)アクリロイル化する第2反応とにより得ることができる。
(第1−1反応式中、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
(第1−2反応式中、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
(第2反応式中、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
上記、第1−1反応式、第1−2反応式及び第2反応式における各Xで表されるハロゲン原子及びアルキル基の具体例は、いずれも式(1)におけるXと同じである。
第1−1反応又は第1−2反応において原料として用いられる1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物は、1,4−ナフトキノン化合物と1,3−ブタタジエンとのディールス・アルダー反応により合成される1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオン化合物を異性化・水素化して得られる。
1,4−ナフトキノン化合物としては、例えば次のような化合物が挙げられる。すなわち、1,4−ナフトキノン、6−メチル−1,4−ナフトキノン、6−エチル−1,4−ナフトキノン、5−メチル−1,4−ナフトキノン、5−エチル−1,4−ナフトキノン、6−クロロ−1,4−ナフトキノン、5−クロロ−1,4−ナフトキノン、6−ブロモ−1,4−ナフトキノン、5−ブロモ−1,4−ナフトキノン等が挙げられる。
1,4−ナフトキノン化合物と1,3−ブタタジエンとのディールス・アルダー反応で得られる1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオン化合物は、異性化触媒存在下に異性化することにより、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物を得ることができる。異性化触媒は、酸触媒でも塩基性触媒でもよい。
そして、次に当該1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物を接触水素化触媒の存在下、2、3位の二重結合を接触水素化することにより、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物を得ることができる。
異性化反応に用いられる酸触媒としては、例えば硫酸、塩酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸のような液状の酸性化合物のほか、固体酸であるイオン交換樹脂、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。また、塩基性触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン等が挙げられる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩も塩基性異性化触媒として使用可能である。
異性化触媒の使用量は、1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオン化合物に対し、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。異性化触媒の使用量が0.1重量%未満の条件では反応速度が遅くなり、10重量%を超える条件では副反応が起きて生成物の純度が低下する。
通常、異性化は溶媒の存在下で行われ、溶媒としては、酸触媒や塩基性触媒と反応する官能基を持たなければ特に種類は選ばない。酸触媒を使用する場合は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、クロルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒が好適に使用される。また、塩基性触媒を使用する場合は、上記溶媒以外に、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、さらには水も使用可能である。特に異性化触媒として、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属塩を使用する場合は、溶媒として水が好適に使用される。
なお、芳香族系溶媒を使用する場合は、反応の進行に伴い、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物の結晶が析出するが、得られた反応混合物は、そのまま次の水素化反応に供してもよいし、また、単離した後に水素化してもよい。
溶媒の使用量は、溶媒の種類にもよるが、1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオン化合物の濃度が5〜25重量%程度になるように調節する。1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオン化合物が溶媒に完全に溶解せずにスラリー状となる場合でも反応は問題なく進行する。
異性化の反応温度は、通常80〜150℃、好ましくは90〜120℃である。反応温度が80℃未満の条件では、反応の進行が遅くなり、150℃を超える条件では生成物の純度が低下する。
このようにして得られた1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物を溶媒中、貴金属触媒存在下、水素ガスにより水素化することにより1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物を得ることができる。
接触水素化に用いられる溶媒としては、水素化される官能基を持たなければ特に種類を選ばない。特にベンゼン、トルエン、o−キシレン、クロルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。また、反応原料が1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジオールのナトリウム塩等のアルカリ金属塩である場合は、これらが水に可溶であるので水または水と水可溶性溶媒の混合溶媒も反応溶媒として好適に使用される。
水素化触媒としては、例えば、パラジウム担持活性炭、パラジウム担持アルミナ、白金担持活性炭、白金担持アルミナ等の白金属(遷移金属)触媒が挙げられる。通常、5%パラジウム担持活性炭が好適に使用される。
水素化触媒の使用量は、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物に対し、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜1重量%である。水素化触媒の使用量が0.01重量%未満の条件では反応速度が遅くなり、10重量%を超える条件では副反応が起きて生成物の純度が低下する。
水素化反応の反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜50℃である。反応温度が0℃よりも低い条件では反応の進行が遅くなり、100℃を超える条件では生成物の純度が低下する。
水素化反応終了後、窒素雰囲気下で水素化触媒を濾別して除去し、濾液を濃縮等の操作をすることにより、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物を得ることができる。
上記反応より得られた1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物の具体例としては、たとえば、次の化合物が挙げられる。すなわち、1,2,3,4,−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、6−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、5−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、6−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、5−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、5−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、6−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール、5−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール等である。
次に、第1−1反応について説明する。第1−1反応において使用されるアルキレンオキシドは、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドが用いられる。
第1−1反応において、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が用いられ、通常はそれらの水溶液が使用される。
第一反応の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。
第1−1反応において、アルキレンオキシドは1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物に対して好ましくは2モル倍以上15モル倍未満、より好ましくは4モル倍以上10モル倍未満添加する。2モル倍未満では、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物が未反応で残り、15モル倍以上では、生成物の溶解度が高くなりすぎ、収率が低下する。
第1−1反応において、アルカリは1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物に対して、2モル倍以上、5モル倍未満添加する。2モル倍未満では、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物が未反応で残留し、5モル倍以上加えても、収率は上がらない。
第1−1反応において、反応温度は好ましくは0℃以上60℃未満、より好ましくは10℃以上40℃未満である。0℃未満では反応に時間がかかりすぎ、60℃以上では不純物が多くなり収率が低下する。
第1−1反応で得られる9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物としては、たとえば次の化合物が挙げられる。すなわち、9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン等が挙げられる。
次に第1−2反応について説明する。第1−2反応において使用されるハロゲノアルカノールとしては、たとえば、1−ブロモ−2−エタノール、1−クロロ−2−エタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、1−クロロ−2−プロパノール、1−ブロモ−2−ブタノール、1−クロロ−2−ブタノール等が用いられる。
第1−2反応において、使用されるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が用いられ、通常はそれらの水溶液が使用される。
第1−2反応において、ハロゲノアルカノールは1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物に対して好ましくは2モル倍以上4モル倍未満、より好ましくは2.5モル倍以上3.5モル倍未満添加する。2モル倍未満では、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物が未反応で残り、4モル倍以上では、生成物の溶解度が高くなりすぎ、収率が低下する。
第1−2反応において、アルカリは1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物に対して、2モル倍以上、3モル倍未満添加する。2モル倍未満では、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール化合物が未反応で残留し、3モル倍以上加えても、収率は上がらない。
第1−2反応において、反応温度は好ましくは40℃以上130℃未満、より好ましくは60℃以上100℃未満である。40℃未満では反応に時間がかかりすぎ、130℃以上では不純物が多くなり収率が低下する。
第1−2反応の反応時間は、反応温度によるが、通常2時間以上12時間未満である。
第1−2反応で得られる9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物の具体例は、第1−1反応で得られる化合物の具体例と同様である。
次に、第2反応について説明する。一般式(2)に示す9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物を(メタ)アクリロイル化することによって一般式(1)に示す9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物を得ることができる。
(一般式(1)中、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを表し、Rは水素原子又はメチル基の何れかを示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
(一般式(2)中、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを表し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
原料である、一般式(2)に示す9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物は、第1-1反応又は第1−2反応によって得られた化合物である。
第2反応で用いられる(メタ)アクリロイル化剤としては、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが用いられる。ハロゲン化(メタ)アクリロイルとしては、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、臭化アクリロイル又は臭化メタクリロイルが挙げられる。その中でも特に塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルが収率よく目的物が得られるため好ましい。
第2反応におけるハロゲン化(メタ)アクリロイルの添加量は9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物1モルに対して、通常2.0モル倍以上3.0モル倍未満、好ましくは2.2モル倍以上2.7モル倍未満である。2.0モル倍より少なすぎる場合は、原料の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物が未反応のまま残ってしまい、一方、3.0モル倍より多すぎる場合は、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが一部重合し、得られた9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物の純度が低下してしまい、いずれも好ましくない。
9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物とハロゲン化(メタ)アクリロイルとの反応では、通常は溶媒の存在下で行なう。
第2反応で用いられる塩基はアルカリ又は有機塩基が挙げられる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。有機塩基としては、ピリジン、α−ピコリン,γ−ピコリン、トリエチルアミン,トリブチルアミン,ジエチルアミン、ジブチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。中でも、トリエチルアミンが反応し易いことからより好ましい。
第2反応で用いる塩基の添加量は、9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物1モルに対して、通常1.5モル倍以上2.5モル倍未満である。塩基の使用量が1.5モル倍未満だと、ハロゲン化(メタ)アクリロイルの滴下中に水層のpHが酸性になり、選択率が低下する場合がある。一方、塩基の使用量が2.5モル倍以上だと、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが分解する場合があり好ましくない。
第2反応は、通常は溶媒の存在下で行なう。溶媒の種類は特に制限されないが、塩基が有機塩基の場合は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン等の芳香族系溶媒、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレンのようなハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドンのようなアミド系溶媒が好適に用いられる。
塩基がアルカリの場合は、水溶性溶媒が好ましく、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンのようなエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドのようなアミド系溶媒が好適に用いられる。
(メタ)アクリロイル化反応に要する時間は、特に限定されないが、塩基が有機塩基である場合は通常0.1時間以上4時間未満、特に0.4時間以上1.0時間未満の範囲が好ましく、塩基がアルカリである場合は、通常0.1時間以上2時間未満、特に0.2時間以上0.5時間未満が好ましい。
得られた化合物の同定は、H−NMRスペクトル、IRスペクトルを用いて行い、相当する9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物又はその前駆体9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物であることを確認した。
[重合性組成物]
かくして得られた9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物は、ラジカル重合により、重合物とすることができる。本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物のラジカル重合を促進するためには、ラジカル重合開始剤を添加することが好ましい。
このようなラジカル重合開始剤には、光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤とがある。紫外線や可視光線等の活性エネルギー線による光ラジカル重合は、硬化が速く、効率よく透明性の高い重合物を得ることができるので、特に本発明の化合物を光学用途に用いる場合は、光ラジカル重合によることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−イソプロピルチオキサントン、2−t−ブチルアントラキノン等が挙げられる。実際の工業製品としてはBASF社製のイルガキュア651、イルガキュア184、ダロキュア1173、イルガキュア907、イルガキュア369、ダロキュアTPO、イルガキュア819が挙げられる(イルガキュア、ダロキュアはBASF社の登録商標)。
そして、9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物とラジカル重合開始剤を混合することによりラジカル重合性組成物とすることができる。
本発明の光ラジカル重合性組成物において、上記の9,10−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物を単独で用いて、重合物とすることもできるが、当該9,10−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物以外の通常のラジカル重合性化合物を加えて共重合性の光ラジカル重合性組成物として共重合させることも出来る。
共重合させるラジカル重合性化合物として、例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレートさらには、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、p−トリルアクリレート、p−トリルメタクリレート、m−トリルアクリレート、m−トリルメタクリレート、o−トリルアクリレート、o−トリルメタクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、ビフェニル−4−イル−アクリレート、ビフェニル−4−イル−メタクリレート、4−フェノキシフェニルアクリレート、4−フェノキシフェニルメタクリレート、2−フェノキシフェニルアクリレート、2−フェノキシフェニルメタクリレート、2−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチルアクリレート、2−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
これらのラジカル重合性化合物と本発明の9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物とを共重合することにより、当該9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物を用いない場合に比べ、得られる重合物の屈折率向上のほか、耐熱性、耐溶剤性、硬度、あるいは酸素非透過性などを高めることができる。
また、2−(ビフェニル−4−イルオキシ)エチルアクリレート、2−(ビフェニル−4−イルオキシ)エチルメタクリレート等のビフェニル系アクリレート、9,9−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−エトキシ]フェニル}フルオレン、9,9−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシ−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのグリシジルエーテルのアクリル酸付加物等のフルオレン系アクリレート等の屈折率の高いラジカル重合性化合物と共重合させることもできる。
光ラジカル重合開始剤の添加濃度は、9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物および必要に応じて併用されるラジカル重合性化合物の合計重量に対して0.1〜5重量%の範囲から選ばれ、好ましくは0.5〜2重量%である。0.1重量%より少ないと重合速度が遅く、5重量%より多いと重合物の物性が悪化するので好ましくない。
また、9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物は熱ラジカル重合開始剤を用いて重合物となす事も出来る。
熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ系化合物等のどちらでも使用可能である。有機過酸化物としては、例えばt− ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t− ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,6−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート類等のパーオキシ エステル類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ) −3,3,6− トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、 ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド 類等を挙げることができる。またアゾ系化合物の開始剤 としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリルや、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビ (シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾニトリル類を挙げることができる。
本発明の重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、希釈剤、着色剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
[重合方法]
当該ラジカル重合性組成物の重合はフィルム状で行うことも出来るし、塊状に硬化させることも可能である。フィルム状に重合させる場合は、液状の当該重合性組成物をたとえばポリエステルフィルムなどの基材に、たとえばバーコーターなどを用いて膜厚5〜300ミクロンになるように塗布する。本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物は、薄膜だけでなく厚膜においても容易に重合させることができる。
たとえばこのようにして調製した塗布膜に活性エネルギー線を照射することにより重合させることができる。用いられる光源としては、使用する光ラジカル重合開始剤によって異なるが、250〜500nmの波長の活性エネルギー線が用いられる。したがって、上記の波長の活性エネルギー線を照射できる光源として、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、UV−LED、青色LED、白色LED等の光源が使用可能である。また、太陽光線を使用することもできる。特に、本発明の9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物は、UV硬化装置として最も広く用いられている光源である高圧水銀ランプ(波長366nm)をもちいて重合させることができることから、工業的に非常に有用な化合物である。
光ラジカル重合の判定は、タック・フリーテスト(指触テスト)に基づいて行った。すなわち、光照射によりフィルム表面の光ラジカル重合性組成物のタック(べたつき)が取れるまでの時間を硬化時間とした。
[重合物]
このようにして得られた、9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物を重合させて得られるフィルム、シートもしくは塊状物は、高い屈折率を示し、またその構造から、紫外線吸収性、高い耐熱性、高硬度、高光沢性等が期待できる工業的に有用なものである。
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。特記しない限り、すべての部および百分率は重量基準である。
生成物の確認は下記の機器による測定により行った。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS K0064に準拠)
(2)屈折率:アッベ屈折率計:エルマー社製、形式ER−7MW−H
(3)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(4)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX、FTNMRSpectorometer
「合成例1」1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオールの合成
1,4−ナフトキノン22g(140ミリモル)、o−キシレン100g、t−ブチルカテコール0.05g、1,3−ブタジエン18g(333ミリモル)をオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気下120℃で6時間反応させた。反応終了後、1,3−ブタジエンを放圧し、減圧して溶媒のo−キシレンを50g留去したのち、メタノール200ml中に注いだ。白い結晶が析出するので、吸引濾過、メタノール洗い、乾燥して1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオンの白色結晶27.6g(123ミリモル)を得た。1,4−ナフトキノンに対する収率は85モル%であった。次に、攪拌機、温度計を装備した容量が200mlの耐圧ガラス容器に、上記反応で得られた1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオン10g(47.1ミリモル)、N−メチルピロリドン100ml、トリエチルアミン11.4g(113ミリモル)、ジメチルアミノピリジン0.6g(4.7ミリモル)、5%パラジウム担持活性炭0.5g(50%wet)を仕込み、窒素置換を行った。100℃に昇温し1時間攪拌を継続して異性化反応を行い、1,4−ジヒドロアントラセン−9,10−ジオール溶液を得た。上記反応で得られた反応液をそのまま、水素圧0.4MPaで100℃で6時間攪拌を継続して水素化反応を行い、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール溶液を得た。該溶液に10%硫酸水溶液を加え、液のpHを中性とし、白色沈殿を生じさせた。該沈殿を吸引濾過、乾燥、トルエン洗いし、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオールの白色結晶9.1g(42.5ミリモル)を得た。
「合成例2」9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの容量500ml中に、合成例1と同様にして得た1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール(Mw214)21.4g(100ミリモル)、ジメチルアセトアミド140g、1−ブロモ−2−エタノール37.5g(300ミリモル)を窒素雰囲気下加え、薄茶色の溶液とした。該溶液に、水酸化ナトリウム10g(250ミリモル)を水110gに溶かした溶液を加え、内温0℃で4時間加熱した。その後、反応液を冷却し、10%硫酸水溶液を加え、反応液のpHを微酸性にして、沈殿を析出させた。得られたスラリーをろ過し、水15g、トルエン15g、最後はメタノール20gで洗い、乾燥後、9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン(Mw302)の白い粉末171.g(57ミリモル)を得た。原料、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオールに対する単離収率は57モル%であった。物性値は以下のとおりである。
(1)融点:194−195℃
(2)IR(KBr,cm−1):3400,2948,2880,1596,1460,1360,1340,1082,1062,1034,932,895,768.
(3)H−NMR(400MHz、CDCl):δ=1.77−1.85(m,4H),2.28−2.36(m,4H),2.90−3.00(m,4H):4.00−4.11(m,8H),7.40−7.48(m,2H),8.00−8.07(m,4H).
「合成例3」9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの容量500ml中に、合成例1と同様にして得た1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオール(Mw214)21.4g(100ミリモル)、水140gを加えスラリーとし、そこに水酸化ナトリウム16g(400ミリモル)を水80gに溶かした溶液を加えた。次いでブチレンオキシド(Mw72)49g(600ミリモル)のメタノール130g溶液を加え、赤い溶液が得られた。次に、内温45℃で3時間加熱した。加熱1時間後には析出が生じたのでさらに2時間加熱した。その後、反応液を冷却し、10%硫酸水溶液を加え、反応液のpHを微酸性にした。得られたスラリーをろ過し、水15g、トルエン15g、最後はメタノール20gで洗い、乾燥後、9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン(Mw358)の白い粉末25.1g(70ミリモル)を得た。原料、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン−9,10−ジオールに対する単離収率は70モル%であった。物性値は以下のとおりである。
(1)融点:146−148℃
(2)IR(KBr,cm−1):3400,2946,2890,1597,1468,1458,1360,1341,1080,1068,1038,958,917,768.
(3)H−NMR(400MHz,CDCl):δ=1.06(t,J=8Hz,6H),1.57−1.70(m,4H),1.77−1.86(m,4H),2.88−2.98(m,4H),3.79−3.86(m,2H),3.86−3.94(m,2H),4.02−4.11(m,2H),7.37−7.46(m,2H),7.98−8.08(m,2H).
「実施例1」9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの50ml三口フラスコに、合成例2と同様にして得られた9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン(Mw302)2.0g(6.7ミリモル)、塩化メチレン14g、塩化アクリロイル(Mw90.5)1.53g(17ミリモル)を投入し白いスラリーとした。次いで、窒素雰囲気下、氷水で冷やしながらトリエチルアミン(Mw101)1.5g(15ミリモル)の塩化メチレン4g溶液を加えた。白いスラリーがいったん溶けて、その後次第にゾル化した。室温で2時間攪拌後、12gの水で2回洗い、次いで塩化メチレン層をメタノール60mlに投入した。シリカゲルカラムにかけて、脱色し、濃縮して9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン(Mw410)の薄黄色の水あめ状物2.0g(4.9ミリモル)を得た。原料の9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンに対する収率は72モル%であった。物性値は以下のとおりである。
(1)融点:室温液状
(2)屈折率:n=1.590
(3)IR(neat,cm−1):2948,2880,1731,1640,1596,1450,1408,1357,1300,1278,1200,1180,1080,1066,983,940,810,764.
(4)H−NMR(400MHz,CDCl):δ=1.74−1.84(m,4H),2.88−2.99(m,4H),4.13−4.23(m,4H),4.53−4.62(m,4H),5.92(d,J=9Hz,2H),6.24(dd,J=17Hz,J=9Hz,2H),6.49(d,J=17Hz,2H),7.37−7.46(m,2H),8.00−8.08(m,2H).
「実施例2」9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの100ml三口フラスコに、合成例2と同様にして得られた9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン(Mw302)6.04g(20ミリモル)、塩化メチレン35g、塩化メタクリロイル(Mw104.5)5.20g(50ミリモル)を投入し白いスラリーとした。次いで、窒素雰囲気下、氷水で冷やしながらトリエチルアミン(Mw101)4.04g(40ミリモル)の塩化メチレン8g溶液を加えた。白いスラリーがいったん溶けて、その後次第にゾル化した。室温で3時間攪拌後、15gの水で2回洗い、次いで塩化メチレン層をメタノール70glに投入した。シリカゲルカラムにかけて、脱色し、濃縮したところ無色の結晶が析出した。該結晶を吸引濾過・乾燥して、9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン(Mw438)の無色結晶5.7g(13ミリモル)を得た。原料の9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンに対する収率は65モル%であった。物性値は以下のとおりである。
(1)融点:103−104℃
(2)屈折率:n=1.579
(3)IR(KBr,cm−1):2940,2870,1728,1640,1458,1390,1378,1360,1323,1302,1196,1180,1090,1042,932,771.
(4)H−NMR(400MHz,CDCl):δ=1.76−1.86(m,4H),2.02(s,6H),2.90−2.98(m,4H),4.14−4.22(m,4H),4.52−4.60(m,4H),5.65(s,2H),6.22(s,2H),7.36−7.44(m,2H),8.02−8.09(m,2H).
「実施例3」9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの50ml三口フラスコに、合成例3と同様にして得られた9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン(Mw358)3.58g(10ミリモル)、塩化メチレン25g、塩化メタクリロイル(Mw104.5)2.6g(25ミリモル)を投入し白いスラリーとした。次いで、窒素雰囲気下、氷水で冷やしながらトリエチルアミン(Mw101)2.02g(20ミリモル)の塩化メチレン6g溶液を加えた。白いスラリーがいったん溶けて、その後次第にゾル化した。室温で2時間攪拌後、14gの水で2回洗い、次いで塩化メチレン層をメタノール80mlに投入した。シリカゲルカラムにかけて、脱色し、濃縮して9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン(Mw494)の薄黄色の水あめ状物3.5g(7.1ミリモル)を得た。原料の9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンに対する収率は71モル%であった。物性値は以下のとおりである。
(1)融点:室温液状
(2)屈折率:n=1.556
(3)IR(neat,cm−1): 2980,2945,2890,1720,1640,1457,1362,1322,1300,1170,1134,1078,940,819,768.
(4)H−NMR(400MHz,CDCl):δ=1.04(t,J=8Hz,6H),1.75−1.82(m,4H),1.86−1.96(m,4H),2.01(s,6H),2.86−2.95(m,4H),3.95−4.09(m,4H),5.27−5.36(m,2H),5.63(s,2H),6.22(s,2H),7.35−7.42(m,2H),7.97−8.05(m,2H).
<熱重合実施例>
「実施例4」9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンの熱重合
温度計、攪拌機つきの200ml三口フラスコに、窒素雰囲気下、実施例1と同様の方法で得られた9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン2.0gを仕込み、ついでトルエン6g加え、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを20mg添加した。内温を106℃に保ち加熱したところ、5分後大量に白い沈殿が生じた。さらに5分間加熱し、冷却して白色のスラリーをえた。メタノール50mlを投入し、十分攪拌し、吸引ろ過、乾燥し、1.80gの白い粉末状物を得た。単離収率は90モル%であった。モノマーである9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロメタノアントラセンは液状であるが、得られた白色粉末は250℃まで加熱しても、融解しなかった。また、9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンを良く相溶するトルエン、アセトン、ジメチルアセトアミドにも全く溶解しなかった。IRを測定したところ、1730cm−1のCO伸縮振動は1738cm−1へ移動していた。よって、この得られた白色粉末は、9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンの重合物であることがわかる。
「実施例5」9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンの熱重合
温度計、攪拌機つきの200ml三口フラスコに、窒素雰囲気下、実施例2と同様の方法で得られた9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン2.0gを仕込み、ついでトルエン6g加え、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを20mg添加した。内温を106℃に保ち加熱したところ、10分後大量に白い沈殿が生じた。さらに5分間加熱し、冷却して白色のスラリーをえた。メタノール50mlを投入し、十分攪拌し、吸引ろ過、乾燥し、1.7gの白い粉末状物を得た。単離収率は85モル%であった。モノマーである9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンの融点である103℃以上、250℃まで加熱したが、融解しなかった。また、9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンを良く溶解するトルエン、アセトン、ジメチルアセトアミドにも全く溶解しなかった。IRを測定したところ、1720cm−1のCO伸縮振動は1730cm−1へ移動していた。このことから、得られた白色粉末は9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンの重合物であることがわかる。
「実施例6」9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンの熱重合
温度計、攪拌機つきの200ml三口フラスコに、窒素雰囲気下、実施例3と同様の方法で得られた9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン0.6gを仕込み、ついでトルエン3g加え、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを7mg添加した。内温を106℃に保ち加熱したところ、14分後大量に白い沈殿が生じた。さらに5分間加熱し、冷却して白色のスラリーをえた。メタノール20mlを投入し、十分攪拌し、吸引ろ過、乾燥し、0.52gの白い粉末状物を得た。単離収率は87モル%であった。モノマーである9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロメタノアントラセンは液状であるが、得られた白色粉末は250℃まで加熱しても、融解しなかった。また、9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンと良く相溶するトルエン、アセトン、ジメチルアセトアミドにも全く溶解しなかった。IRを測定したところ、1720cm−1のCO伸縮振動は1728cm−1へ移動していた。よって、この得られた白色粉末は、9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンの重合物であることがわかる。
<光重合実施例>
「実施例7」9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンとトリメチロールプロパントリアクリレートとの光重合
モノマーとして、実施例1と同様の方法で得られた9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン25重量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート75重量部を加え、さらにラジカル重合開始剤として2−ベンジルメチル2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(BASF社製、商品名:イルガキュア369)3重量部を加え、均一な重合性組成物とした。この重合性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)表面に、膜厚80ミクロンになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、高圧水銀ランプ(365nmでの照射強度は1mw/cmであった。)を照射した。10分光照射後、モノマー混合物が重合した平滑なフィルムが得られた。
得られたフィルムの屈折率を測定したところ、1.532(n)であり、光照射前の9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンとトリメチロールプロパントリアクリレートとの混合物の屈折率の1.497(n)より高くなっていること、また、トリメチロールプロパン単独の重合物の屈折率1.518よりも高くなっていることから、共重合していることが確認された。
「実施例8」9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンとトリメチロールプロパントリアクリレートとの光重合
モノマーとして、実施例2と同様の方法で得られた9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン25重量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート75重量部を加え、さらにラジカル重合開始剤として2−ベンジルメチル2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(BASF社製、商品名:イルガキュア369)を3重量部を加え、均一な重合性組成物とした。この重合性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン)表面に、膜厚80ミクロンになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、高圧水銀ランプ(365nmでの照射強度は1mw/cmであった。)を照射した。10分光照射後、モノマー混合物が重合した平滑なフィルムが得られた。
得られたフィルムの屈折率を測定したところ、1.530(n)であり、光照射前の9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンとトリメチロールプロパントリアクリレートとの混合物の屈折率の1.494(n)より高くなっていること、また、トリメチロールプロパン単独の重合物の屈折率1.518よりも高くなっていることから、共重合していることが確認された。
「実施例9」9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンとトリメチロールプロパントリアクリレートとの光重合
モノマーとして、実施例3と同様の方法で得られた9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン25重量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート75重量部加え、さらにラジカル重合開始剤として2−ベンジルメチル2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(BASF社製、商品名:イルガキュア369)3重量部を加え、均一な重合性組成物とした。この重合性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン)表面に、膜厚80ミクロンになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、高圧水銀ランプ(365nmでの照射強度は1mw/cmであった。)を照射した。10分光照射後、モノマー混合物が重合した平滑なフィルムが得られた。
得られたフィルムの屈折率を測定したところ、1.520(n)であり、光照射前の9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンとトリメチロールプロパントリアクリレートとの混合物の屈折率の1.493(n)より高くなっていること、また、トリメチロールプロパン単独の重合物の屈折率1.518よりも高くなっていることから、共重合していることが確認された。
以上の結果より、次のことが明らかである。すなわち、実施例1,2,3より、本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物は、高い屈折率を持つ化合物であることが分かる。また、特に、実施例1の9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンや実施例3の9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセンが室温で液状の化合物となることから、本発明の化合物において、R、Rの組み合わせを選ぶことにより、室温で液状のモノマーとすることも可能であり、取り扱いという点でも優れている化合物となる。
そして、実施例4乃至9から明らかなように、本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物は、熱でも光でも重合可能な化合物であることがわかる。
また、実施例7、8、9からわかるように、本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物が高圧水銀ランプでも重合可能な工業的に有利な化合物であることがいえる。また、トリメチロールプロパントリアクリレートの単独重合物の屈折率(n)が1.518であることから、本願発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物を共重合させることにより、重合物の屈折率を高めることができることが分かる。

Claims (5)

  1. 一般式(1)に示す9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物。


    (一般式(1)中、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを表し、Rは水素原子又はメチル基の何れかを示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
  2. 一般式(2)で示される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物を(メタ)アクリロイル化することよりなる請求項1に記載の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物の製造方法。

    (一般式(2)中、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを表し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
  3. 請求項1に記載の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物及びラジカル重合開始剤からなる重合性組成物。
  4. 請求項1に記載の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物、当該9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン化合物以外のラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤からなる重合性組成物。
  5. 請求項3または請求項4に記載の重合性組成物を重合してなる重合物。
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