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JP2013201803A - 同期モータの制御装置、同期モータの制御方法 - Google Patents

同期モータの制御装置、同期モータの制御方法 Download PDF

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JP2013201803A JP2012067145A JP2012067145A JP2013201803A JP 2013201803 A JP2013201803 A JP 2013201803A JP 2012067145 A JP2012067145 A JP 2012067145A JP 2012067145 A JP2012067145 A JP 2012067145A JP 2013201803 A JP2013201803 A JP 2013201803A
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Abstract

【課題】ハードウェア変更を必要とせず、従来の同期モータをそのまま利用しながら、所望の出力特性を得る。
【解決手段】電流指令を基に、同期モータ10の駆動電流を生成する同期モータ10の制御装置20であって、前記電流指令を基に、同期モータ10のトルク応答特性Aを示す第一の伝達関数を打ち消して同期モータ10以外のトルク応答特性Bを示す第二の伝達関数とする補償伝達関数に従って補償電流指令を出力するモータ補正部26およびゲイン調整部27と、前記補償電流指令に応じた駆動電流を生成して同期モータ10に出力する電流制御部28とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば工作機械の主軸を駆動し、回転子の磁極として永久磁石を用いた同期モータの駆動を制御する同期モータの制御装置、制御方法に関する。
従来、工作機械等の動力源となる交流モータとして、誘導モータと同期モータとの二種類が用いられている。誘導モータは、固定子の作る回転磁界により、回転子に誘導電流が発生し滑りに対応した回転トルクを発生させる構造であるのに対して、同期モータは、加えられる交流電流が作る周囲の回転磁界によって回転子が追従し回転する構造である。
誘導モータの長所としては、構造が簡単であり、堅牢であるために故障しにくいこと、弱め界磁制御により高速回転領域の効率を向上できること、安価であること等が挙げられる。他方、誘導モータの短所としては、その機構上、同期モータに比べて周波数応答帯域を高く設定できないこと、二次誘導電流を流すために回転子発熱が大きいこと、トルクリップルが大きいこと等が挙げられる。
これに対して、同期モータの長所としては、周波数応答帯域を高く設定できること、二次誘導電流が無いので回転子発熱が小さいこと、低速域でのトルクが大きく高効率であること、誘導モータに比べて小型化を実現しやすいこと等が挙げられる。他方、同期モータの短所としては、磁石を使用するために高価となりやすいこと、磁石の磁力により高速回転領域で鉄損が大きくなること等が挙げられる。
工作機械の分野では、主に誘導モータが駆動力源として広く用いられているが、その理由は、前述の誘導モータの長所が好まれている他、誘導モータは、外乱が生じた場合にトルクが遅れて生じるスリップ現象があるために衝撃に強いこと等が重視されているからである。
しかし、工作機械の分野においても、切削条件や切削目的、装置構造体の振動系モデルや加工ワークの条件等によっては、誘導モータより同期モータの方が有利な場合も存在する。例えば、切削目的等に応じて、モータの剛性と安定性とを高めることを重視する場合には、モータの周波数応答帯域を高くすることが好ましいので、誘導モータより同期モータを採用した方が有利である。
このように、誘導モータと同期モータとでは、その特性や長短所が異なるので、必要とされる場面や目的に応じて、両者を柔軟に使い分けることができれば便利である。
特許文献1では、誘導モータとして回転するIMロータと同期モータとして回転するPMロータとを出力軸で結合して誘導同期モータとし、IMロータを回転させる誘導モータ用電流とPMロータを回転させる同期モータ用電流とを重畳して複合電流を生成し、この複合電流を固定子のコイルに流す誘導同期モータが提案されている。かかる誘導同期モータを用いれば、単一の交流モータを、誘導モータとしても同期モータとしても運転することができるので、複数のモータを準備することなく、場面や目的に応じて臨機応変に両モータの駆動特性を得ることが可能となる。
特開2009−38871号公報
しかしながら、特許文献1の誘導同期モータでは、IMロータとPMロータとの両方の回転子構成と複合電流を生成するためのハードウェア構成とを準備しなければならない。また、前記誘導同期モータは、複数の回転子を出力軸で結合しているので、モータ構成が重く大きなものとならざるを得ない。したがって、誘導同期モータの構成を実現するにはコストの増大とモータの大型化とが問題となる。
さらに、モータが大型化すると、モータを搭載する装置や機器についても、従来と異なる設計が必要となるので、設計の汎用性を欠くと共に、装置の大型化や製造コストの増大が問題となる。
本発明は、以上の事情に鑑みなされたもので、ハードウェア変更を必要とせず、従来の同期モータをそのまま利用しながら、所望の出力特性(例えば、誘導モータのような出力特性)を得ることのできる同期モータの制御装置、同期モータの制御方法を提供することを、その目的としている。
本発明は、電流指令を基に、回転子の磁極として永久磁石を用いる同期モータの駆動電流を生成する同期モータの制御装置に係る。
本発明は、前記電流指令を基に、前記同期モータのトルク応答特性Aを示す第一の伝達関数を打ち消して前記同期モータ以外のトルク応答特性Bを示す第二の伝達関数とする補償伝達関数に従って補償電流指令を出力する電流指令補償部と、前記電流指令補償部によって生成された補償電流指令に応じた駆動電流を生成して前記同期モータに出力する駆動電流生成部とを備えるものである。
上記の構成において、同期モータの制御装置は、電流指令に基づいて、回転子の磁極として永久磁石を用いる同期モータの駆動電流を生成する。前記同期モータは、その構造に応じて、制御工学上、トルク応答特性Aを示す第一の伝達関数にて記述される。換言すれば、前記第一の伝達関数は、前記同期モータの入出力関係を示す。
前記電流指令補償部は、前記第一の伝達関数を打ち消して第二の伝達関数とするような補償伝達関数、換言すれば、前記第一の伝達関数を補償する補償伝達関数、に従って、前記電流指令を補償して新たな補償電流指令を生成し、かかる補償電流指令を前記駆動電流生成部に出力する。
前記トルク応答特性Bは、回転子の磁極としてコイルを用いる誘導モータのトルク応答特性であることも好ましい。この場合、前記誘導モータは、その構造に応じて、制御工学上、トルク応答特性Bを示す第二の伝達関数にて記述される。換言すれば、前記第二の伝達関数は、前記誘導モータの入出力関係を示す。このような電流指令補償部は、機能ブロックとしてハードウェア的に実現してもよいし、ソフトウェア的に実現してもよい。また、前記トルク応答特性Bを、前記同期モータのトルク応答特性と前記誘導モータのトルク応答特性との中間のトルク応答特性としてもよい。
上記の構成によれば、前記補償電流指令は、元の電流指令と比較して、前記同期モータのトルク応答特性Aをキャンセルし、さらには、前記トルク応答特性Bを示現する指令内容に補償されているから、かかる補償電流指令を基に生成した駆動電流を、前記同期モータに出力すると、前記同期モータは、元の電流指令に対して、トルク応答特性Bを示すことになる。
それゆえ、同期モータのハードウェア変更を必要とせず、従来の同期モータをそのまま利用しながら、前記同期モータ本来の出力特性とは異なる出力特性が得られる。例えば、同期モータのトルク応答特性を、誘導モータのトルク応答特性と同等にしたり、同期モータのトルク応答特性と誘導モータのトルク応答特性との中間のトルク応答特性にしたりすることができるようになる。これにより、同期モータの利点を活かしながら、所望のトルク応答特性を実現することが可能となる。
また、前記電流指令補償部は、前記補償伝達関数を規定し、前記同期モータおよび前記誘導モータのモータ特性値を示すパラメータ群を保有しており、前記同期モータの制御装置は、ユーザの入力指示に応じて、前記電流指令補償部の保有するパラメータ群を書き換え設定するパラメータ設定部を備えることが好ましい。
上記の構成によれば、前記電流指令補償部は、同期モータや誘導モータの容量、電圧、外形形状、コイル巻線数などにより決定されるモータ特性値(例えば、抵抗、インダクタンス、トルク定数、電流制御ゲインなど)を示すパラメータ群を保有しており、かかるパラメータ群に基づいて、前記補償伝達関数の内容を規定している。そして、前記パラメータ設定部は、ユーザの入力指示に応じて、前記電流指令補償部の保有する前記パラメータ群を書き換え設定する。
それゆえ、適宜のユーザインタフェースを通じて、実際に用いる同期モータのモータ特性値や、所望の出力特性を有する誘導モータのモータ特性値などを、ユーザが入力することにより、前記パラメータ設定部は、前記電流指令補償部の保有するパラメータ群を的確に設定することができる。
なお、ユーザの指示入力の形態は、全ての前記パラメータ群を数値入力する形態に限られず、所定の選択メニューから所望の数値セットを選択するようなものであってもよいし、固定的な数値ではなく、時間的に変化するパラメータ群を入力指示するものであってもよい。また、前記パラメータ設定部は、ユーザによる入力数値をそのまま前記電流指令補償部でのパラメータ設定に用いる他、前記入力数値に各種の演算(例えば補間処理)を施したうえで前記パラメータ設定に用いてもよい。
これにより、同期モータを用いながら、所望の特性を有する誘導モータの出力を示現することができる。
また、前記パラメータ設定部により設定されるパラメータ群の値によっては、同期モータと誘導モータとの中間の特性を有するモータ出力を得たり、モータ運転中、連続的にあるいは不連続的に同期モータの出力特性と誘導モータの出力特性とを切り換えたりすることができる。これにより、状況や場面、目的に合わせて、柔軟に、所望のトルク応答特性を得ることが可能となる。
また、前記電流指令補償部は、前記補償伝達関数に従って補償電流指令を出力するにあたり、前記第一の伝達関数と前記第二の伝達関数とを基に、前記電流指令のゲインを調整し、前記補償電流指令として出力するゲイン調整部を備えることが好ましい。かかる構成によれば、前記電流指令のゲインを調整し、ゲイン面を含めて前記第一の伝達関数を打ち消して第二の伝達関数とするような補償伝達関数を実現することにより、的確な補償電流指令を出力することが可能となる。
また、本発明は、電流指令を基に、回転子の磁極として永久磁石を用いる同期モータの駆動電流を生成する同期モータの制御方法に係る。
本発明は、前記電流指令を基に、前記同期モータのトルク応答特性Aを示す第一の伝達関数を打ち消して前記同期モータ以外のトルク応答特性Bを示す第二の伝達関数とする補償伝達関数に従って補償電流指令を出力する電流指令補償段階と、前記補償電流指令に応じた駆動電流を生成して前記同期モータに出力する駆動電流生成段階とを備えるものである。
前記電流指令補償段階では、前記第一の伝達関数を打ち消して第二の伝達関数とするような補償伝達関数、換言すれば、前記第一の伝達関数を補償する補償伝達関数、に従って、前記電流指令を補償して新たな補償電流指令を出力する。そして、前記駆動電流生成段階では、前記補償電流指令に応じた駆動電流を生成して前記同期モータに出力する。
上記の構成によれば、前記補償電流指令は、元の電流指令と比較して、前記同期モータのトルク応答特性Aをキャンセルし、さらには、前記同期モータ以外のトルク応答特性Bを示現する指令内容に補償されているから、かかる補償電流指令を基に生成した駆動電流を、前記同期モータに出力すると、前記同期モータは、元の電流指令に対して、前記トルク応答特性Bを示すことになる。
前記トルク応答特性Bは、回転子の磁極としてコイルを用いる誘導モータのトルク応答特性であることも好ましい。この場合、前記誘導モータは、その構造に応じて、制御工学上、トルク応答特性Bを示す第二の伝達関数にて記述される。換言すれば、前記第二の伝達関数は、前記誘導モータの入出力関係を示す。また、前記トルク応答特性Bを、前記同期モータのトルク応答特性と前記誘導モータのトルク応答特性との中間のトルク応答特性としてもよい。
それゆえ、同期モータのハードウェア変更を必要とせず、従来の同期モータをそのまま利用しながら、前記同期モータとは異なる出力特性が得られる。例えば、同期モータのトルク応答特性を誘導モータのトルク応答特性と同等にしたり、同期モータのトルク応答特性と誘導モータのトルク応答特性との中間のトルク応答特性にしたりすることができるようになる。これにより、同期モータの利点を活かしながら、所望のトルク応答特性を実現することが可能となる。
本発明によれば、ハードウェア変更を必要とせず、従来の同期モータをそのまま利用しながら、所望の出力特性(例えば、誘導モータのような出力特性)を得ることができる。
同期モータとその制御装置の構成を示すブロック図である。 工作機械の外観を示す概略図である。 (a)(b)は、誘導モータの等価電気回路を示す説明図である。 同期モータの等価電気回路を示す説明図である。 (a)(b)は、誘導モータの入出力伝達関数を示す説明図である。 (a)(b)は、同期モータの入出力伝達関数を示す説明図である。 本発明に係る制御装置(制御方法)の入出力伝達関数を示す説明図である。 補償伝達関数の設定例を示す説明図である。 補償伝達関数の設定例を示す説明図である。 コンピュータシミュレーションの計算結果を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら、本発明を工作機械の主軸を駆動する同期モータに適用する実施形態について説明する。
図2は、本発明を適用する工作機械1の外観を示す概略図である。同図に示すように、工作機械1は、ワークWをクランプ(図示せず)で固定的に保持するテーブル2と、工具3が装着される主軸Sと、テーブル2を支持するサドル4と、テーブル2およびサドル4を、それぞれ図中のY軸方向、X軸方向に送り動作する送り装置5とを備えている。
主軸Sは、コラムCに対して図中のZ軸方向に移動する主軸ヘッドHに取り付けられており、Z軸方向に自在に摺動することができる。工作機械1は、所定の加工データに従って、送り装置5、主軸ヘッドH、主軸Sの動作を制御し、工具3によりワークWを3次元の目標形状に加工するものである。
工作機械1は、複数のモータを備えており、送り装置5や主軸ヘッドHの移動も公知のモータ駆動技術によって実現しているが、以下では、本発明の適用対象となり、主軸Sを回転駆動する同期モータ10と、同期モータ10の駆動を制御する制御装置20との構成について、図1を参照しながら説明する。
同期モータ10は、回転子の磁極として永久磁石を用いた同期モータ(Permanent Magnet Synchronous Motor,PMSM)であり、ロータリエンコーダから構成される位置検出器11と接続されている。位置検出器11は、同期モータ10の回転位置を測定し、かかる回転位置信号を制御装置20に出力する。
図1に示すように、制御装置20は、プログラム解析部21,位置生成部22,位置制御器23,速度制御器24,微分器25,モータ補正部26,ゲイン調整部27,電流制御部28,パラメータ設定部29の各機能ブロックから構成される。
プログラム解析部21は、予め作成された加工プログラム(例えばNCプログラム)を解析して、主軸Sの回転速度や回転位置などに関する指令を抽出し、抽出した指令を位置生成部22に送信する。位置生成部22は、プログラム解析部21から受信した信号を基に予め定められた時定数を加味して、主軸Sの回転目標位置に関する動作指令信号を生成し、生成した動作指令信号と位置検出器11から受信した回転位置信号との差分を位置制御器23に逐次送信する。位置制御器23は、位置生成部22から受信した動作指令信号に基づいて速度指令信号を生成し、生成した速度指令信号を速度制御器24に送信する。
微分器25は、位置検出器11から受信した回転位置信号を微分処理することによって回転速度信号を生成し、生成した回転速度信号を位置制御器23の出力に負帰還する。これにより、位置検出器11から出力される回転位置信号によって、同期モータ10の回転位置誤差が補償される。
速度制御器24は、位置制御器23から受信した速度指令信号に基づいて、電流指令を生成し、かかる電流指令をモータ補正部26に送信する。モータ補正部26およびゲイン調整部27は、速度制御器24から受信した電流指令を基に、同期モータ10のトルク応答特性Aを示す第一の伝達関数を打ち消して、誘導モータのトルク応答特性を示す第二の伝達関数Bとする、補償伝達関数に従って補償電流指令を出力する機能ブロックである。このうち、ゲイン調整部27は、補償電流指令の生成にあたってゲイン調整処理を担当する。モータ補正部26およびゲイン調整部27による電流指令の補償動作の詳細については後述する。
ゲイン調整部27は、前記補償電流指令を電流制御部28に出力する。電流制御部28は、ゲイン調整部27から受信した補償電流指令に基づいて、実駆動電流を生成し、同期モータ10に出力する構成である。電流制御部28は、d軸電流とq軸電流とを独立にベクトル制御する。
以上の構成により、制御装置20は、加工プログラムの内容に応じて、主軸Sを駆動する同期モータ10の回転動作を制御する。
次いで、モータ補正部26およびゲイン調整部27による電流指令の補償動作の詳細について説明する。前述の通り、モータ補正部26およびゲイン調整部27は、補償伝達関数に従って電流指令を補償する構成である。この補償伝達関数を説明する前提として、以下、図3〜図6を参照しながら、誘導モータの入出力伝達関数GIM(s)と同期モータの入出力伝達関数GSM(s)について説明する。
図3は、誘導モータの等価電気回路を示す図である。同図(a)では、固定子側コイルの電気抵抗をR1、インダクタンスをL1、回転子側コイルの電気抵抗をR2、インダクタンスをL2、固定子側コイルと回転子側コイルとの相互インダクタンスをMとしている。そして、同図(a)の相互インダクタンスMを等価電気回路に組み入れると、同図(b)の形式となり、その回路方程式は、次式(1)のようになる。
in=(R2+sL2)/〔R1R2+s(R1L2+R2L1)+s(L1L2−M)〕・・・(1)
他方、図4は、同期モータの等価電気回路を示す図である。同期モータでは、回転子が永久磁石であるから、その等価電気回路は、固定子側コイルの電気抵抗をR10、インダクタンスをL10として、図4のようになり、その回路方程式は、次式(2)のようになる。
in=1/(R1+sL1)・・・(2)
式(1)により、誘導モータの等価電流制御伝達関数を考慮すると、電流制御ゲインをKa、モータ定数をKmとして、入力される電流指令Irefに対する出力トルクTmの様子は、図5(a)のように示される。同図(a)では、実電流によるフィードバック制御を用いているので、このフィードバック制御分を組み入れると誘導モータの入出力伝達関数GIM(s)は、同図(b)のように記述される。
これに対して、上記式(2)により、同期モータの等価電流制御伝達関数を考慮すると、電流制御ゲインをKa0、モータ定数をKm0として、入力される電流指令Irefに対する出力トルクTmの様子は、図6(a)のように示される。同図(a)では、実電流によるフィードバック制御を用いているので、このフィードバック制御分を組み入れると同期モータの入出力伝達関数GSM(s)は、同図(b)のように記述される。
制御装置20のモータ補正部26およびゲイン調整部27(図1参照)は、前述のように、速度制御器24から受信した電流指令を基に、同期モータ10のトルク応答特性Aを示す第一の伝達関数〔上記の入出力伝達関数GSM(s)に相当する〕を打ち消して、誘導モータのトルク応答特性Bを示す第二の伝達関数〔上記の入出力伝達関数GIM(s)に相当する〕とする、補償伝達関数に従って補償電流指令を出力する構成である。
具体的には、モータ補正部26およびゲイン調整部27は、図7に示すように、破線10’にて囲まれた電流制御部28および同期モータ10(図1参照)への入力前段として、速度制御器24から受信した電流指令Irefに、補償伝達関数GCM(s)を作用させて補償電流指令Icomを生成し、かかる補償電流指令Icomを出力することにより、図5(b)の入出力伝達関数GIM(s)と等価の入出力を再現している。補償伝達関数GCM(s)のうち、モータ定数の調整(Km/Km0)は、ゲイン調整に該当するので、ゲイン調整部27が実行する。このようなモータ補正部26ないしゲイン調整部27の各機能は、ソフトウェア的に信号処理することができるほか、ハードウェア的な回路構成によって実現することも可能である。
補償伝達関数GCM(s)を一般的な形式で表現すれば、次式(3)のようになる。
CM(s)=GIM(s)/GSM(s)×(Km/Km0)・・・(3)
図7に示した補償伝達関数GCM(s)を構成する各係数〔Ka,Ka0,R1,R2,L1,L2,R10,L10,M,Km,Km0〕の意義は、既に説明した通りである。制御装置20において、モータ補正部26およびゲイン調整部27は、補償伝達関数GCM(s)を規定し、同期モータおよび誘導モータの容量、電圧、外形形状、コイル巻線数などにより決定されるモータ特性値(例えば、抵抗、インダクタンス、トルク定数、電流制御ゲイン)を示すパラメータ群として、上記の各計数値をメモリやテーブルなどに保有している。
制御装置20は、モータ補正部26およびゲイン調整部27の保有するパラメータ群を書き換え設定するパラメータ設定部29を備えている。図1に示すように、パラメータ設定部29は、制御装置20の外部の入出力部30と接続されている。入出力部30は、ディスプレイやキーボード、マウス等を備え、ユーザに情報を提示すると共に、ユーザからの指示入力を受け付けるユーザインタフェースである。
パラメータ設定部29は、入出力部30を介して、前記パラメータ群の書き換え設定に関するユーザの指示入力を受け付けると、かかる指示入力の内容に応じて、モータ補正部26およびゲイン調整部27の保有する前記パラメータ群を書き換え設定する。これにより、ユーザが実際に用いる同期モータのモータ特性値や、所望の出力特性を有する誘導モータのモータ特性値などを入力することが可能となる。
具体例として、パラメータ設定部29が、ユーザの指示入力に応じて、前記パラメータ群〔補償伝達関数GCM(s)の各係数〕として、R1=87mΩ,L1=0.8mH,R2=87mΩ,L2=0.8mH,R10=9mΩ,L10=0.1mH,M=0.4mH,Km=0.8,Km0=1.6,Ka=1,Ka0=1を設定したときの補償伝達関数GCM(s)を図8に示す。同図において、例えばe−3は、10−3の意味である。このような補償伝達関数GCM(s)を設定することにより、同期モータの出力特性を、目的とする誘導モータの出力特性と等価なものとすることができる。
また、前記パラメータ群の設定内容によっては、誘導モータと同期モータの中間の特性を有するモータ出力を得たり、モータ運転中、連続的にあるいは不連続的に同期モータの出力特性と誘導モータの出力特性とを切り換えたりすることなども可能となる。
図9に、図8と同一の同期モータを用いることを前提として、誘導モータと同期モータとの中間の特性を有するモータ出力を得るために設定される補償伝達関数GCM(s)の係数例を示しておく。
最後に、コンピュータシミュレーションの結果により、本発明の有効性を検証しておく。図10は、矩形波の電流指令に対して、同期モータと誘導モータとのトルク応答がどのように変化するのかを計算したシミュレーション結果を示すグラフである。シミュレーション計算には、図8のパラメータ設定時と同じ、モータの諸特性値(抵抗、インダクタンス、トルク定数、電流制御ゲイン)を用いた。
図10において、太実線は電流指令を表し、破線は同期モータのトルク応答、一点鎖線は誘導モータのトルク応答を示している。同図に示されるように、誘導モータと同期モータとのトルク応答特性は異なる。図8に示した伝達関数に従って補償動作を適用した同期モータのトルク応答をシミュレーションしたところ、かかるトルク応答は、上記一点鎖線で示した誘導モータのトルク応答と完全に一致した。なお、トルク応答だけでなく、速度応答についても、外乱がある場合を含めてシミュレーションを別途実行したが、上記補償動作を適用した同期モータの速度応答は、誘導モータの速度応答と完全に一致した。
上記のシミュレーション結果により、本実施形態によって同期モータを制御した場合、同期モータは、元の電流指令に対して、誘導モータと等価の出力特性を示すことが確認された。したがって、本実施形態によれば、従来の同期モータをそのまま用いながら、誘導モータと等価の出力特性を実現することが可能となる。また、一台の同期モータにおいて、状況や場面、目的に合わせて、柔軟に出力特性を変更し、誘導モータと等価の出力特性を得たり、同期モータの出力特性に戻したりすることが容易となる。
また、図10においては、図9に示した誘導モータと同期モータとの中間の出力特性を有するモータ(中間特性モータ)のトルク応答を二点鎖線で示している。このような誘導モータと同期モータとの中間の出力特性は、従来の誘導モータや同期モータによっては実現することができず、本実施形態の補償動作によって実現される特有のものである。このような中間の出力特性を実現することにより、モータ運転中、その出力を同期モータの出力特性と誘導モータの出力特性との間で連続的に変化させたりすることも可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の採り得る具体的な態様は、何ら上記に限定されるものではない。
例えば、上記の実施形態では、前記パラメータ群の書き換え設定を、入出力部30を介したユーザの指示入力に基づいて実行する構成を示したが、上記パラメータ群の書き換え設定は、ユーザの指示入力に基づくのではなく、前記加工プログラムに含まれる情報に基づいたり、所与のアルゴリズムに従ったりすることにより、同期モータの制御装置が自動実行する構成としてもよい。
また、上記の説明において限定していない事項は、本発明において任意に設計することができる事項である。例えば、第二の伝達関数で記述される誘導モータの種類は、三相交流電力を入力とする三相型であってもよいし、単相交流電力を入力とする単相型であってもよく、任意である。
本発明は、例えば工作機械の主軸を駆動し、回転子の磁極として永久磁石を用いた同期モータの駆動を制御する同期モータの制御装置、制御方法に好適に利用できるものである。
1 工作機械
2 テーブル
3 工具
4 サドル
5 送り装置
10 同期モータ
11 位置検出器
20 制御装置
21 プログラム解析部
22 位置生成部
23 位置制御器
24 速度制御器
25 微分器
26 モータ補正部
27 ゲイン調整部
28 電流制御部
29 パラメータ設定部
30 入出力部
B ベッド
C コラム
H 主軸ヘッド
S 主軸
W ワーク

Claims (6)

  1. 電流指令を基に、回転子の磁極として永久磁石を用いる同期モータの駆動電流を生成する同期モータの制御装置であって、
    前記電流指令を基に、前記同期モータのトルク応答特性Aを示す第一の伝達関数を打ち消して前記同期モータ以外のトルク応答特性Bを示す第二の伝達関数とする補償伝達関数に従って補償電流指令を出力する電流指令補償部と、
    前記補償電流指令に応じた駆動電流を生成して前記同期モータに出力する電流制御部とを備えることを特徴とする同期モータの制御装置。
  2. 前記トルク応答特性Bは、回転子の磁極としてコイルを用いる誘導モータのトルク応答特性であることを特徴とする請求項1に記載の同期モータの制御装置。
  3. 前記電流指令補償部は、前記補償伝達関数を規定し、前記同期モータおよび前記誘導モータのモータ特性値を示すパラメータ群を保有しており、
    前記同期モータの制御装置は、ユーザの入力指示に応じて、前記電流指令補償部の保有するパラメータ群を書き換え設定するパラメータ設定部を備えることを特徴とする請求項2に記載の同期モータの制御装置。
  4. 前記電流指令補償部は、前記補償伝達関数に従って補償電流指令を出力するにあたり、前記第一の伝達関数と前記第二の伝達関数とを基に、前記電流指令のゲインを調整し、前記補償電流指令として出力するゲイン調整部を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の同期モータの制御装置。
  5. 電流指令を基に、回転子の磁極として永久磁石を用いる同期モータの駆動電流を生成する同期モータの制御方法であって、
    前記電流指令を基に、前記同期モータのトルク応答特性Aを示す第一の伝達関数を打ち消して前記同期モータ以外のトルク応答特性Bを示す第二の伝達関数とする補償伝達関数に従って補償電流指令を出力する電流指令補償段階と、
    前記補償電流指令に応じた駆動電流を生成して前記同期モータに出力する駆動電流生成段階とを備えることを特徴とする同期モータの制御方法。
  6. 前記トルク応答特性Bは、回転子の磁極としてコイルを用いる誘導モータのトルク応答特性であることを特徴とする請求項5に記載の同期モータの制御方法。
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