JP2013087334A - 溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 質量%で、C:0.02〜0.2%,Si:0.03〜0.5%,Mn:0.5〜2.0%,P:0.02%以下,S:0.002%未満,Al:0.005〜0.08%,Ti:0.003〜0.02%,N:0.002〜0.009%,O:0.001〜0.0035%,Ca:0.0003〜0.0045%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記の(1)式、(2)式および(3)式を満足する化学組成を有する鋼板であって、溶接熱影響部のミクロ組織において、島状マルテンサイトの面積率が1.0%未満であり、かつ鋼中にAlとCaを含む粒径5.0μm以下の介在物が存在し、その介在物のアスペクト比が1.9以下であることを特徴とする溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板。さらに、Cu,Ni,Cr,Mo,V,Nb及びBの1種以上を含有してもよい。
0.50≦Ca/O≦1.30 ・・・・・(1)、
Pcm*≦0.23 ・・・・・(2)、
Pcm*−0.75C≧0.1 ・・・・・(3)
【選択図】なし
Description
C:0.02〜0.2%,
Si:0.03〜0.5%,
Mn:0.5〜2.0%,
P:0.02%以下,
S:0.002%未満,
Al:0.005〜0.08%,
Ti:0.003〜0.02%,
N:0.002〜0.009%,
O:0.001〜0.0035%,
Ca:0.0003〜0.0045%
を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記の(1)式、(2)式および(3)式を満足する化学組成を有する鋼板であって、
溶接熱影響部のミクロ組織において、島状マルテンサイトの面積率が1.0%未満であり、かつ鋼中にAlとCaを含む粒径5.0μm以下の介在物が存在し、その介在物のアスペクト比が1.9以下であることを特徴とする溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板。
記
0.50≦Ca/O≦1.30 ・・・・・(1)、
Pcm*≦0.23 ・・・・・(2)、
Pcm*−0.75C≧0.1 ・・・・・(3)
ここで、
Pcm*=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/3+Nb/2+23{B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)}
ただし、B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)≦0のとき、B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)=0として取り扱う。
また、(1)式、(2)式および(3)式の元素記号はその元素の含有量(質量%)を示し、アスペクト比とは、鋼板の圧延方向に平行な断面で観察される介在物の長径を短径で除した値を意味する。
Cu:1.5%以下,
Ni:6.0%以下,
Cr:1.0%以下,
Mo:0.8%以下,
V:0.1%以下,
Nb:0.05%以下及び
B:0.005%以下
の中から選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)の溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板。
記
21+2.52・OM−5≦CaA≦21+2.52・OM+5・・・・・(4)
ただし、CaAは溶鋼1トン当たりのCa添加量(g)を、そしてOMは溶鋼中の酸素量(ppm)を、それぞれ表す。
以下、本発明に係る鋼板の化学組成について説明する。なお、含有量に関する「%」および「ppm」は、いずれも質量割合を意味する。
Cは、母材及び溶接部の強度、靭性を確保するため、0.02%以上含有させる必要がある。しかし、Cが多すぎると島状マルテンサイトの生成を助長しHAZ靭性を低下させるとともに溶接性を劣化させるため、その上限を0.2%とする。したがって、Cの含有量は0.02〜0.2%とする。
Siは、脱酸作用を有し、鋼の予備脱酸によって鋼中に含有される。また、母材の強度確保に有効である。これらの効果を得るために、0.03%以上含有させる。しかし、過剰に含有させると島状マルテンサイトの生成を助長しHAZ靭性を劣化させるため、上限を0.5%とする。したがって、Siの含有量は0.03〜0.5%とする。なお、良好なHAZ靭性を得るために、Siの含有量の上限を0.4%以下にするのが望ましい。
Mnは母材及びHAZ部の強度、靭性の確保に不可欠であり、そのためにMnを0.5%以上含有させる。しかし、Mnの含有量が多すぎると、HAZ靭性の劣化や、スラブの中心偏析助長による溶接性劣化などが起こるため、Mnの含有量の上限を2.0%とする。したがって、Mnの含有量は0.5〜2.0%とする。
Pは本発明においては不純物元素である。Pの含有量が0.02%を超えると、スラブ中心の偏析が大きくなり、母材及びHAZの機械的性質を低下させ、更にはHAZの粒界破壊が起こるおそれがある。したがって、Pの含有量を0.02%以下とする。
Sは不純物として存在し、多すぎると板厚中心部で延伸したMnSが多量に生成するため、母材及びHAZの靭性が劣化する。また、SはCaとの親和力が大きくCaSを生成して、適正な複合酸化物の生成を阻害する。したがって、Sの含有量を0.002%未満とする。
Alは本発明において重要な元素の一つである。Alを溶鋼中に添加した場合、脱酸剤として作用し、Al2O3を生成する。Al2O3は溶鋼中にてクラスターを形成し、圧延を施した場合にはこれらのクラスターが分離し、点列状につらなって鋼板中に分散することとなる。この場合、点状につらなったAl2O3はシャルピー試験時のき裂の発生起点となり、母材の靭性を劣化させる。また、Al2O3は安定な酸化物であるため溶接によっても変化せず、最終的にHAZに残留するため、HAZ靭性をも劣化させる。
TiはTiNとして析出し、HAZでのオーステナイトの粗大化抑制効果を有する。また、フェライト変態の核として作用し、その粒内組織微細化効果のために、HAZ靭性が向上する。この効果を得るには、Tiを0.003%以上含有させる必要がある。一方、Tiの含有量が多くなると固溶Tiが増加し、HAZ靭性が低下するため、Tiの含有量の上限を0.02%とする。したがって、Tiの含有量は0.003〜0.02%とする。
NはTiNの析出に極めて重要な元素の1つであり、Nの含有量が0.002%未満ではTiNの析出量が不足し、冷却時に有害なTi炭化物が生成するため、Nを0.002%以上含有させる必要がある。一方、含有量が多くなると、固溶Nが過剰となりTiNが粗大化するため、0.009%以下とする。したがって、Nの含有量は0.002〜0.009%とする。なお、Nは0.004%を超えて含有させるのが好ましい。
O(酸素)は、本発明において最も重要な元素の1つであり、介在物の球状化のみならず、分散個数や介在物サイズとも直接的に関わるため、厳密に制御されなければならない。本発明においては、Oの含有量が少なければ少ないほど好ましいが、0.001%未満にすることは工業的に困難であり、コスト上昇に見合った効果が得られない。よってその下限を0.001%とした。一方、0.0035%を超える過剰なOは、粗大な酸化物を形成するとともに、介在物個数を必要以上に増加させ、鋼板の清浄性を劣化させるため母材およびHAZの靭性に悪影響を及ぼす。よって、その上限を0.0035%とした。したがって、Oの含有量は0.001〜0.0035%とする。
Caは、本発明において最も重要な元素の1つであり、介在物の球状化を達成するためには、AlおよびOとともに厳密に制御する必要がある。Caは脱酸材として作用するとともに、鋼中にAlとCaを含む酸化物を形成せしめ、介在物形態を制御するためにも必要な元素である。したがって、Caを0.0003%以上含有させる必要がある。しかし、大量に添加すると鋼の清浄性を低下させるとともに、Alを含まないCaO主体の酸化物を生成し、圧延で破砕され点列状に連なりやすい介在物へと変化するため、HAZの靭性を劣化させる。このため、Caの含有量を0.0045%以下とする。したがって、Caの含有量は0.0003〜0.0045%とする。
溶鋼中で生成されるAlとCaを含む酸化物において、CaOとAl2O3がほぼ1:1で共存した場合、酸化物の融点は溶鋼温度以下に低下し液化する。この時、酸化物には表面張力が作用し球状となる。この作用を利用してAlとCaを含む物の形態制御をするためには、Ca/Oを0.50〜1.30とする必要がある。Ca/Oが1.30を超えるとCaO主体の酸化物になり、また、Ca/Oが0.50未満であるとAl2O3主体の酸化物となって、何れの場合も酸化物の融点が溶鋼温度を超えることとなり、介在物の球状化は困難となる。なお、より球状化を促進するためには、Ca/Oを0.63〜1.13とすることが望ましい。
大入熱溶接HAZで生成される島状マルテンサイトは、Cのみならず他の合金元素が増加することによっても生成が助長される。Pcm*は、元来TMCP鋼の溶接低温割れ防止のためのパラメーターとして開発されたものである。しかし、このパラメーターはHAZの硬度と良い相関を持つことが知られており、HAZの硬度が高くなるとフェライト主体の組織からベイナイト主体の組織へと変化し、島状マルテンサイトも増加する。そこで本発明ではPcm*を島状マルテンサイト生成防止のための指標とするとともに、元来の溶接低温割れ特性を改善する指標とすることから、Pcm*を0.23以下と規定した。
一方、靭性もPcm*と関連する。ただし、靭性は鋼中のCが大きく影響する。よって、Pcm*にCの影響度を考慮し、Pcm*−0.75Cを靭性の指標とした。そして、靭性の確保を可能にするために、Pcm*−0.75C≧0.1を満足することが必要である。
Cuは、必要に応じて含有させることができる。Cuを含有させると、靭性を劣化させずに強度を上昇させることができる。しかし、その含有量が1.5%を超えると、鋼の焼き入れ性を過度に高め、HAZ靱性を損なう傾向が強くなる。したがって、Cuの含有量は1.5%以下とする。なお、Cuによる効果を得たい場合には、Cuを0.1%以上含有させることが好ましい。
Niは、必要に応じて含有させることができる。Niの適正量を添加することによって、溶接性およびHAZ靱性に悪影響を及ぼすこともなく、母材の強度、靱性を向上させることができる。しかし、その含有量が6.0%を超えると、構造用鋼板として極めて高価になって経済性を失うので、Ni含有量は6.0%以下とする。なお、Niによるこれらの効果を得たい場合には、Niを0.1%以上含有させることが望ましい。Niによる焼入性向上効果を得たい場合には、Niを0.1%以上含有させることが望ましい。特に、Cuを共存させる場合は圧延時のひび割れ(Cuチェッキング)を防止するために、0.1%以上のNiを含有させるのが望ましい。
Crは、必要に応じて含有させることができる。Crの適正量を含有させることによって、焼入性を高めることができる。一方、Crの含有量が1.0%を超えると、他の成分条件を満足させても、HAZ靭性が劣化するので、Cr含有量は1.0%以下とする。なお、Crのこの様な効果を得たい場合には、Crの含有量を0.05%以上とするのが好ましい。
Moは、必要に応じて含有させることができる。Moを含有させると、母材の強度と靱性を向上させる効果がある。一方、Moの含有量が0.8%を超えると、特にHAZの硬度が高まり靱性を損なうので、Mo含有量は0.8%以下とする。なお、Moによる効果を得たい場合には、Moを0.05%以上含有させるのが好ましい。
Vは、必要に応じて含有させることができる。Vを含有させると、主に焼戻し時の炭窒化物析出により母材の強度を向上させる効果がある。一方、Vの含有量が0.1%を超えると、母材の性能向上効果が飽和し、靱性劣化を招くので、Vの含有量は0.1%以下とする。なお、Vによる効果を得たい場合には、Vを0.005%以上含有させるのが好ましい。
Nb母材組織の微細化に有効であり、母材の機械的性質を向上させる効果がある。一方、Nbの含有量が0.05%を超えると、母材ならびにHAZの靭性が劣化するので、Nbの含有量は0.05%以下とする。なお、Nbによる効果を得たい場合には、0.0040%以上含有させることが好ましい。
Bは、必要に応じて含有させることができる。Bを含有させると焼入れ性を高めて母材やHAZの機械的性質を向上させる。一方、Bの含有量が0.005%を超えると、HAZ靭性や溶接性が劣化するので、Bの含有量は0.005%以下とする。なお、Bによる効果を得たい場合には、0.0003%以上含有させることが好ましい。
溶接熱影響部のミクロ組織において、島状マルテンサイトの面積率を1.0%未満とする。ここで、溶接熱影響部は入熱25kJ/mm以上の1層溶接により接合されたときの溶接熱影響部であり、島状マルテンサイトが1.0%以上であると、HAZ靭性が低下する。
溶鋼中にAlおよびCaを添加した場合、Al2O3およびCaOの生成は避けられないが、このような介在物が生成すると母材靭性またはHAZ靭性の低下を招く。したがって、適切に介在物を制御する必要がある。以下で述べる介在物では、点列状につらなった介在物を一つの延伸した介在物と見なして差し支えない。
介在物の大きさが粗大となると、シャルピー衝撃試験において破壊の起点となるため、介在物の粒径は5.0μm以下とする。粒径が小さいほど、破壊の起点として作用しにくくなるため、介在物の粒径の下限は規定しない。
介在物が球状化し、アスペクト比(長径/短径)が1に近い場合、シャルピー試験時の同介在物および周辺組織への応力集中が緩和されるため、靭性が向上し、安定化する。一方でアスペクト比の大きい長径化した介在物がシャルピー試験片のノッチ近傍に存在する場合、応力集中源となり、そこから発生するき裂の伝播によって、靭性が著しく低下する。このため、アスペクト比を1.9以下とする。
本発明に係る鋼板は、たとえば、その製鋼段階に特徴をもたせることによって製造することができる。すなわち、溶鋼中のAlが0.005〜0.08%となるようにAlを添加して脱酸し、さらに脱ガス装置(RH)にて15分以上還流処理した後、溶鋼温度を1530〜1670℃に保った状態でCaを添加してスラブを鋳造し、圧延することによって、本発明に係る鋼板の製造方法とすることができる。
21+2.52・OM−5≦CaA≦21+2.52・OM+5・・・・・(4)
ただし、CaAは溶鋼1トン当たりのCa添加量(g)を、そしてOMは溶鋼中の酸素量(ppm)を、それぞれ表す。
Claims (3)
- 質量%で
C:0.02〜0.2%,
Si:0.03〜0.5%,
Mn:0.5〜2.0%,
P:0.02%以下,
S:0.002%未満,
Al:0.005〜0.08%,
Ti:0.003〜0.02%,
N:0.002〜0.009%,
O:0.001〜0.0035%,
Ca:0.0003〜0.0045%
を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記の(1)式、(2)式および(3)式を満足する化学組成を有する鋼板であって、溶接熱影響部のミクロ組織において、島状マルテンサイトの面積率が1.0%未満であり、かつ鋼中にAlとCaを含む粒径5.0μm以下の介在物が存在し、その介在物のアスペクト比が1.9以下であることを特徴とする溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板。
記
0.50≦Ca/O≦1.30 ・・・・・(1)、
Pcm*≦0.23 ・・・・・(2)、
Pcm*−0.75C≧0.1 ・・・・・(3)
ここで、
Pcm*=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/3+Nb/2+23{B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)}
ただし、B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)≦0のとき、B−10.8/14.1(N−Ti/3.4)=0として取り扱う。
また、(1)式、(2)式および(3)式の元素記号はその元素の含有量(質量%)を示し、アスペクト比とは、鋼板の圧延方向に平行な断面で観察される介在物の長径を短径で除した値を意味する。 - さらにFeの一部に代えて、質量%で
Cu:1.5%以下,
Ni:6.0%以下,
Cr:1.0%以下,
Mo:0.8%以下,
V:0.1%以下,
Nb:0.05%以下及び
B:0.005%以下
の中から選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板。 - 溶鋼中のAl含有量が0.005〜0.08質量%の範囲となるようにAlを添加して脱酸し、さらに脱ガス装置で15分以上処理した後、溶鋼温度1530〜1670℃で溶鋼中に下記(4)式を満足する量のCaを添加し、鋳造してなる請求項1または2の化学組成を有するスラブを熱間圧延することを特徴とする、溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板の製造方法。
記
21+2.52・OM−5≦CaA≦21+2.52・OM+5・・・・・(4)
ただし、CaAは溶鋼1トン当たりのCa添加量(g)を、そしてOMは溶鋼中の酸素量(ppm)を、それぞれ表す。
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